('A`)ドクオは方舟に乗るようです
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:38:56.05 ID:zUOw04I8O
『第二話 飛んで火にいる夏の虫』
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:40:56.48 ID:zUOw04I8O
- 畑仕事を終えて二人は家に戻り水を飲む。
川 ゚ -゚)「あ、そうだ……ここに来たもう一つの目的を忘れる所だった」
('A`)「ん?」
川 ゚ -゚)「今日、日が落ちてから三度目の鐘が鳴ったら広場に来るんだ」
('A`)「なんでだ……?」
川 ゚ -゚)「詳しくは知らないが村人全員が集まるそうだ」
('A`)「村人全員!?祭でもあんのかよ」
川 ゚ -゚)「行けば分かるだろう……私は確に伝えたからな。それじゃあまた後で」
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:42:09.29 ID:zUOw04I8O
- 少女はそう伝えると帰っていった。
少年は一人椅子に座って考える。
('A`)(別に……俺がいく必要はないよな………家族もいないし、ほとんど世間から離れて暮らしているし………)
少年は不意に視線の先の弁当箱に気付く。
二人分の食事は裕に入る大きさだ。
('A`)「あいつ忘れて帰ったのか……」
少年は大きく深呼吸をして弁当箱を台所へと持っていく。
('A`)「しょうがないな……あいつに夜ご飯でも作ってやるついでに……集会に行くか…」
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:45:09.02 ID:zUOw04I8O
- 太陽が西へ落ちてから三度鐘がなった。
少年はランタンを灯もし手に取り上げ、もう片方の手で弁当を抱えて家を出た。
外に出るとほとんどの民家から明かりは消えていて、それが妙に静けさと暗さを増していた。
足音が一つ一つ辺りに響く中彼は広場へと向かった
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:45:52.77 ID:zUOw04I8O
- 彼が広場につくと真ん中に何本かの松明が火柱をあげていて、それを囲むようにして村民が集まっている。
('A`)(ほとんど集まっているな……)
ドクオの到着に気付いた一人が彼に向かって歩いてくる。
('A`)「…………」
( ゚∀゚)「よお〜ドクオ君じゃないか〜」
('A`)(チッ………やな奴にみつかったな)
( ゚∀゚)「久しぶりじゃないの〜、どうしたんだよこんなとこに顔出して?お前はお呼びじゃないぞ」
('A`)「………」
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:46:36.75 ID:zUOw04I8O
- ドクオに声をかけた男はジョルジュといい、ドクオとクーと同い年でいわば村の学校のガキ大将である。
ドクオは明らかに不機嫌な顔を浮かべて押し黙る。
そしてジョルジュを素通りしようとすると彼に肩を掴まれた。
( ゚∀゚)「お前学校やめてクーの家で働いているんだってな?」
('A`)「………」
(♯゚∀゚)「何黙ってやがんだ!気分悪い面しやがって!」
('A`)「殴れよ…そうすりゃ気がすむんだろ大将?」
ドクオは嘲笑しながらジョルジュを挑発する。
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 21:51:46.20 ID:zUOw04I8O
- (♯゚∀゚)「ケッ、そりゃあお前みたいな子供は親も捨てたくなるよなあ」
そのジョルジュの一言でドクオの顔色が変わる。
カッと顔を赤らめ、ジョルジュに拳を振り上げる。
(#゚A゚)「!!!」
しかしドクオの拳はジョルジュに当たることなく空を切り、同時にジョルジュはドクオの足を払いドクオは地に伏す。
ジョルジュがドクオに馬乗りになり拳を振り落とそうとする。
川 ゚ -゚)「何をしている!!」
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 22:25:05.67 ID:zUOw04I8O
- 拳はドクオの顔に当たる前に勢いを無くす。
( ゚∀゚)「く、クー!」
('A`)「…………」
川 ゚ -゚)「………」
彼女は無言でジョルジュを睨みつけ、ドクオを抱き起こす。
(;゚∀゚)「はは…そんなに怒らないでよ……元はコイツが俺に殴りかかってきたんだぜ?」
川 ゚ -゚)「暴力は嫌いだといつもいっている」
(;゚∀゚)「わ、わかった!俺が悪かったよ!」
ジョルジュはしつこい程クーに頭をさげて集団の方へ消えていった。
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 22:26:00.03 ID:zUOw04I8O
- 川 ゚ -゚)「全く……ドクオに謝れというのに。一体何があったんだ?」
('A`)「………」
ドクオはふてくされた顔をしてクーに一言「これ」と、弁当箱を渡した。
クーは何かを言おうとしたがその前に彼は走って人だかりへ消えていった。
川 ゚ -゚)「………」
村人達が集まる中心には村長と、例のスーツの男達が立っていた。蝶ネクタイの男は夜だというのにサングラスをかけている。
/ ,' 3「皆の者……よく聞け。この方達は遥か彼方この王国の首都より遣わされたものだ」
村長の言葉に村人がざわめく。
彼等にとって王国……つまり国王からの遣いは神の遣いにも等しかった。
/ ,' 3「さあ、彼等が承った詔を心して聞け」
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 22:30:15.77 ID:zUOw04I8O
- ('A`)(変わった服だな……王国………小さい時に母ちゃんに聞いた事がある……王国の国王様のおかげで俺達は平和に暮らしていると……)
( ^ω^)「我々は王国の使者だお。今から言うことをよく聞くお」
一斉に村民全員静まり帰る。
固唾を飲んで肥えた男の声に耳を傾ける。
('A`)(何百年とこの村に人はきてないらしいのに、それも王国の使者だって?……今頃なぜ……?)
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 22:31:36.49 ID:zUOw04I8O
- いいかお。
いまこの国は大きな災厄に見舞われて滅びの運命を向かえようとしているお。
そこで王国は総力をあげ新天地『エデン』を見つけたお。
国王の願いは若い一組の男女がノヴィス・ノア……箱舟に乗って『エデン』に向かいそこで暮らし、滅びゆく王国を救う手段を見付けてきて欲しい。
ということだお。
そこでその名誉あるクルーの選出に選ばれたのがこの村というわけだお。
我々は救世主を探しにきたお。
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 22:32:20.19 ID:zUOw04I8O
- 肥えた男が話したそのオトギ噺のような信じられない話に村人達は騒然とする。
国の災厄を憂れう者、名誉ある選出に喜ぶ者。
あちらこちらで声が飛び交う。
( ^ω^)「………」
(´●ω●`)「………」
/ ,' 3「それではその名誉ある乗り組み員に志願する勇気ある者はいないか!」
鶴の一声のように村長の問掛けにまた一同は沈黙する。
村の子供達の親が考えている事は一つ。
我が子の心配、内の子供は出したくないという願いだった。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 22:33:32.84 ID:zUOw04I8O
- ('A`)「……………」
そこで村人の視線がドクオの方へ向くのは自然且つ必然であった。
('A`)「………」
村人は心中を言葉には現さないもドクオには手にとるようにわかっている。
オマエガイケ
残酷な沈黙が広場を支配する。
松明の火に夏虫達が飛込んでは灰になる。
ドクオは悲しいといった表情でもなく、憤慨している様子もない。
ただ力なく口をあけ、
('A`)「俺……行きます」
と、
村人達の耳に言葉が飲み込まれていった。
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/11(土) 22:37:49.52 ID:zUOw04I8O
- 第二話 終
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