('A`)ドクオは方舟に乗るようです
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/02(日) 20:39:10.75 ID:sLkqBTImO
- 内藤は管制室に設置された幾つものモニターを眺めていた。
勿論方舟を監視しているのである。監視カメラは各部屋、廊下と至る所に設置されていて監視カメラの存在自体を知らない彼等はこうって監視されている事は夢にも思わないだろう。
( ^ω^)「ぶひひ……」
(´・ω・`)「……」
ショボンは内藤が下品な笑みを浮かべて画面を覗いている事に嫌悪感を抱いていた。
(´・ω・`)「……」
しかし同時に、こうして一緒に自分も子供達を監視している事にも嫌悪する。
( ^ω^)「いやぁ愉快だお」
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/02(日) 20:40:34.48 ID:sLkqBTImO
- 内藤はステーキにフォークをさし、カチャカチャと不快な音を立てる。
まるで家でくつろぎながらテレビの娯楽番組を見ている様だ。
( ^ω^)「……うむ、旨い」
人に見せびらかせる様に旨いものをくちゃくちゃと音を鳴らして食べる。
それが彼にはこの上ない喜びであった。
( ^ω^)「どうだお? 君にも一切れあげるお?」
(´・ω・`)「……いえ」
最初から内藤に肉を分ける気など毛頭ない事を知っている。
それにもし内藤が快く自分に差し出したとしても受け取る気はない。
(´・ω・`)(こんな男の汚い唾液がついたものなど……)
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/02(日) 20:42:50.47 ID:sLkqBTImO
- ( ^ω^)「しかしあのジョルジュとかいう餓鬼。
なかなかおもしろい事をしてくれそうだお」
フォークでステーキに切れ込みをいれると肉汁が滲み出し、その匂いが部屋中に溢れる
( ^ω^)「さて……あのニダーをどう使うかだお」
内藤はモニターを見つめながら算段する。
(´・ω・`)(この男のしている事は既に国から出された指令の範疇を越えている……)
(´・ω・`)(まるで子供達を玩具扱い)
毒づきながらも彼にはどうする事もできなかった。
上司の言う事は絶対。そしてこの村は国が作り上げた陽炎の村。
誰も知らない、地図にもない村。言わば法の及ぶ事のない場所。
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/02(日) 20:47:00.43 ID:sLkqBTImO
- つまり内藤がここで何をしようと任務を遂行すれさえすれば誰も責任も罪も問えない。
そしてショボンは下手に彼との関係に波風を立てる事はしたくなかった。
内藤に少しでも不信感を抱かせる事はあってはならない。自分がこの任務にわざわざ名乗り出たのには、ある目的があった。
そのためには多少の事には目をつぶらなくてはいけなかった。
(´・ω・`)「……」
( ^ω^)「ぶひひ。こんなに心躍る任務は今までなかったお」
( ^ω^)「僕はシミュレーションゲームが好きだけど、前から本物の人間を使ってやってみたかったんだお」
(´・ω・`)「……」
( ^ω^)「さて、後は僕の作ったシナリオ通りに動いてもらうだけだお」
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/02(日) 20:48:55.90 ID:sLkqBTImO
- プシュウと後ろから空気の漏れる音が聞こえる。
二人はすぐにそれが扉の開閉だと気付き、咄嗟にモニターの画面表示をオフにする。
( ^ω^)「おっ…割と早かったお」
<ヽ`∀´>「あの……ウリに何か用が……」
(´・ω・`)「……」
内藤はチラリとショボンを一瞥する。
( ^ω^)「君は席を外してくれお」
(´・ω・`)「わかりました。では私は少し村の方へいってきます」
ショボンはサングラスをかけると部屋を出た。
ニダーは急に内藤に呼ばれてどうも落ち着かない様子だ。
<ヽ;`∀´>(ウ、ウリは何もしてないはずニダ……
まさか、ハインリッヒに方舟の乗組員に選ばれた事を話そうとしたのがバレたニダか……?)
あれこれ自分が呼び出された理由を考えていると内藤が口を開く。
( ^ω^)「朗報だお……」
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/02(日) 20:52:01.16 ID:sLkqBTImO
- <ヽ`∀´>「え?」
( ^ω^)「君はパートナーのハインリッヒが病に侵されている事を知ってるお?」
<ヽ`∀´>「は、はい」
( ^ω^)「実は王国に頼んで彼女が良くなる薬がこの方舟に届いたお」
<ヽ`∀´>「ほ、本当ですか!?」
ニダーの表情がさっきとはうってかわって花が咲いた様に明るくなる。
( ^ω^)「すぐにでも彼女に投与できるお」
( ^ω^)「……その代わり」
内藤は声を低くして目を見開きニダーの瞳を覗きこむ。
( ^ω^)「お使いをしてもらうお……」
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/02(日) 20:52:43.73 ID:sLkqBTImO
- 从 ゚∀从「ゴホッ……ゴホッ…」
ハインリッヒはベットで横になりながらニダーの事を考えていた。
彼女はもともと体が弱かったのとこの病気が合間って、何処にいても煙たがられる存在だった。
学校では周りの子供達は、一緒にいてもいつも体調が悪くなる彼女と好んで付き合うものはおらず、先生も彼女を腫れ物に触るように扱った。
そんな自分に本気になって心配してくれているニダーに暖い感情を抱く。
从 ゚∀从(あいつは信頼できるよな……裏切らないよな)
また、境遇は違えど孤独を味わってきた者同士特有の共感もあった。
それは互いの傷を舐め合うだけの弱者の行為だと分かっているが、彼女にはそれが心強さに繋がるならかまわなかった。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/02(日) 20:56:58.70 ID:sLkqBTImO
- 「ぶひひ……」
从 ゚∀从「……!!」
突然内藤が部屋に入ってくる。
その後ろに白衣を着た男とニダーもいる。
ハインリッヒは何事かといった顔でニダーを見る。
( ^ω^)「君はパートナーが素晴らしい人物でよかったお」
从 ゚∀从「……え? どういう事だニダー?」
<ヽ`∀´>「安心していいニダ
内藤さんは君の病気が治る薬を持ってきてくれたニダ」
从 ゚∀从「え!! 本当に!?」
( ^ω^)「安心していいお。もう苦しまなくていいお」
穏やかな表情を見せ、医師に目配をせする。
医はハインリッヒの側までくると、彼女の腕をまくりアルコールの染み込んだガーゼで消毒し始めた。
从 ゚∀从「冷たいな……」
次の瞬間彼女の表情が変わる。
从;゚∀从「な、何すんだ!!」
医師の手を払いのけて毛布を被り身を守ろうとする。
彼女は医師の取り出した注射器に異常な反応を示した。
ニダーも緊張で体を強張らせていた。
<ヽ;`∀´>「な、内藤さん……何故彼女に針なんて刺そうとするニダ」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/02(日) 20:59:55.67 ID:sLkqBTImO
- ( ^ω^)「ん?」
怯える二人の様子を見て内藤はその理由に気付く。
( ^ω^)「あ、そうか……よく考えたら君達は注射を知らないんだお
びっくりするのも無理はないお」
从 ゚∀从「注射……?」
( ^ω^)「簡単に言ったら薬を直接体に入れる事だお。
少しチクッとするけど安心していいお」
内藤の説明に少し安心して、恐る恐る震える腕を医師に差し出す。
医師はハインリッヒの手を取り血管のある場所を探った。
从;゚∀从「ひぇー……」
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/02(日) 21:01:22.16 ID:sLkqBTImO
<ヽ;`∀´>「頑張れニダ」
医師は注射器を今度こそ彼女の腕にさし、ゆっくりと薬を注入していく。
彼女は針が刺さる痛みに一瞬体を震わせたが、痛みが一瞬だけだと分かると後は不思議そうに自分の腕を眺めた。
医師は注射を終えると内藤に会釈して部屋を出ていった。
从;゚∀从「あー怖かった……」
<ヽ`∀´>「よかったニダ……これでよくなるニダ」
从 ゚∀从「う……うーん…」
彼女は小さな吐息を漏らしながら脱力してベットに横たわった。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/02(日) 21:02:59.35 ID:sLkqBTImO
- <ヽ`∀´>「どうしたニダ?」
从 ゚∀从「なんだか……眠たくなってきて……」
そのまま彼女はゆっくりと瞼をとじると静かに眠りについた。
<ヽ`∀´>「……!」
( ^ω^)「安心するお。薬が効いてきた証拠だお」
( ^ω^)「これで彼女は楽になるお」
内藤はぽんとニダーの肩に手を置くと部屋を出るように促した。
ニダーはベットで眠る彼女を愛しげに見つめると内藤と一緒に部屋を出た。
<ヽ`∀´>(……彼女を助けれてよかったニダ)
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/02(日) 21:04:02.63 ID:sLkqBTImO
『第十四話 針』 完
戻る