( ^ω^)は霊探偵になったようです
- 5: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 00:34:38.59 ID:Z+qiXqpa0
- 零章 「black, white, or RED」
1
――――誰かの声が聞こえる。
何を言っているのかはよく分からない。
名前を呼ぶわけでも、目覚めを促すわけでもなく、ただ声がするだけ。
うるさい、迷惑だなどと感じながらも、
その声を聞いていると、なぜか安心してしまう自分が存在していた。
――――これは誰の声なのだろう。
思い切って瞼を開く。
そこにあったのは人の姿ではなく、太陽の光だった。
- 6: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 00:37:40.31 ID:Z+qiXqpa0
- ( うω`)「……朝かお」
荒れたアスファルトの上、毛布にくるまった少年は目を覚ました。
照りつける陽光がまだはっきりしていない視界を更に眩ませる。
( うω^)「またあの声だお……しつこいお」
揺れる頭で先程の出来事を振り返る。
これで何度目だったか、それすらも把握できない。
気付いた頃にはこの声が聞こえていた。
以来、頻度に開きはあれど、絶えずこの現象が起こっている。
しかし。
それは果たして、現実なのだろうか。
( ^ω^)「まあ、目覚まし時計代わりになって丁度いいお!」
あっけらかんとした様子で明るく言い放つ。
これはただの夢、大したことではない。少年はそう考えていた。
- 7: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 00:40:30.50 ID:Z+qiXqpa0
- 毛布を剥いで、軽く一伸び。
爽やかな目覚めではないが、かといって気分が悪いわけではない。
少年の周りにある物は、いくつかのダンボール箱と汚らしいポリバケツ。
毛布は毛羽立ち、枕にはいたる部分に穴が開いていた。
太陽は白らかに輝いている。
ダンボール箱の一つから歯抜けの櫛を取り出し、彼なりに身だしなみを整える。
ギシギシと髪に絡み付き、逆効果なのではないかと少年自身さえも思えてくる。
使用後、また新たに歯が抜けていることに気が付いた。
少年は「やれやれ」と言いながらポリバケツの中にそれを放り込み、
区別なくゴミが捨てられたその容器に、蓋をした。
- 8: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 00:43:51.81 ID:Z+qiXqpa0
- 体を起こした少年は、ひとまず公衆水道を目指した。
足元は履き潰したボロボロのスニーカー。
路上に転がる缶や瓶をその足で転がしながら歩いた。
入り組んだ迷路のような通りを抜け、目的の場所に到着する。
( ^ω^)「ふぃ〜、気持ちがいいお」
バシャバシャと勢いよく顔を洗う。
弾ける水は光を浴びて、砕けたガラスのように煌きながら飛び散った。
着古したシャツで顔を拭く。
同時に、腹の鳴る音を聞いた。
(;^ω^)「腹減ったお……今日は朝食にありつけるかお」
腹部をさすりながら来た道を戻る。
寂れた建物の間をぬって、彼の居場所である「ストリート」へと入っていった。
- 10: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 00:46:30.65 ID:Z+qiXqpa0
- 子育ての出来ない親の増加、所得格差の拡大。
それに伴い、ここ日本でも急激に増加したストリートチルドレン。
そうした人々が成長し、若年層のホームレスとして一種の生活圏を築いている。
主な特徴として、仕事や金銭の有無に関わらず、
生まれ育った路上で集団生活を送っている事などが挙げられる。
このことは近年、社会現象にもなっていた。
都心の外れ、少年の住まう街はこうした人間達で溢れていた。
彼らはグループを組み、それぞれのストリートを持ち暮らしている。
時にはグループ内外での争いもあれど、ある程度の自治を保って共存していた。
そして少年もまた、そんな奇妙で、当てもない生活を送る一人であった。
- 11: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 00:50:21.65 ID:Z+qiXqpa0
- ( ^ω^)ノ「おいすー」
( ><) 「ブーンさんおはようなんです!」
朝の光が建物の隙間から差し込む裏通り。
少年は片手を上げ、裏通りに腰掛けた別の少年に挨拶をした。
( ^ω^)「今日は何か貰ってこれたかお?」
( ><) 「ばっちりなんです! 賞味期限切れのおにぎりをたくさん頂いたんです!」
( ^ω^)「うはwwwwwwktkrwwwwwww」
ブーンと呼ばれた少年は嬉々としておにぎりの入った袋の中を漁る。
二、三個ほど取り出しビニールを乱雑に剥がすと、早速ぱくついた。
( ^ω^)「米うめぇwwwwwwwww」
( ><)「コンビニの店長さんのおかげです!」
( ^ω^)「いやいや、ワカンナインデスのおかげだお」
(*><)「そんなことないんです! 照れるんです!」
真っすぐな言葉に、ワカンナインデスは照れて頭を掻く。
海苔のパリッとした音が響いた。
- 12: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 00:53:24.97 ID:Z+qiXqpa0
- ( ><)「あっ、ワカッテマスとちんぽっぽちゃんも来たんです!」
ワカンナインデスが突然声を上げ、ストリートの入り口を指差す。
ブーンはその差す方に目を向けた。
( <●><●>)「おはようございます」
(*‘ω‘ *)「おはようっぽ! 今日はいい天気だっぽ」
見ると、確かに仲間である二人が歩いて来ていた。
一人は、吸い込まれそうなほど深い瞳を持った大柄な男。
もう一人は、ニコニコと天真爛漫に笑う少女。
二人とも少年とは違い、多少マシな服装に身を包んでいる。
とは言え、それはあくまで「多少」であり、
一般人が抱く感想は、みすぼらしい、その一言で片付けられるだろう。
ブーンは軽い挨拶をし、彼らにおにぎりをいくつか手渡した。
- 13: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 00:56:00.89 ID:Z+qiXqpa0
- ( ^ω^)「朝ごはんだお。遠慮せず食べるお!」
(*‘ω‘ *)「ありがとっぽ!」
( <●><●>)「有難く頂きます」
おにぎりを受け取り、二人が微笑む。
感謝の言葉を受けてブーンは自慢げに振る舞った。
(;><)「貰ってきたのは僕なんです! 手柄の横取りはずるいんです!」
( ^ω^)「ちぃっ、ばれたお」
(;><)「朝早く起きて、いっぱい頭下げたんです! 苦労したんです!」
( ^ω^)「ごめwwwwwwwww」
少年同士の騒々しくも和やかな掛け合いを、
ちんぽっぽとワカッテマスは、「微笑ましい光景だ」と思いながら見ていた。
おにぎりを頬張りながら、揃って笑いあう四人。
その楽しげな光景はとてもホームレスのそれとは関連付けられなかった。
- 14: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 00:59:02.32 ID:Z+qiXqpa0
- ( ><)「それじゃ、僕たちは空き缶拾いに行ってくるんです!」
( <●><●>)「昼過ぎには戻ります。あくまで予定ですが」
( ><)「そのお金で食べ物も買ってきます!」
( ^ω^)ノシ「がんばってくるおー。お昼ごはん楽しみに待ってるお!」
食後、ビニール袋と火ばさみを手に二人はストリートを後にした。
週に三回、空き缶を集めて鉄くず業者に換金して貰っているのだ。
彼らに出来るような仕事は、下方向にのみ限られている。
(*‘ω‘ *)「帰ってくるまで暇だっぽ」
本当に退屈そうに欠伸混じりに囁くちんぽっぽ。
残された二人は顔を見合せて、この後の予定を話し合う。
( ^ω^)「こんなに天気がいいんだし、日向ぼっこでもするお」
(*‘ω‘ *)「それがいいっぽ。賛成だっぽ」
( ^ω^)「おっおっおっ」
- 15: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 01:02:05.72 ID:Z+qiXqpa0
- 心地よい日差しが、穏やかに大地に降り注いでいる。
その下で、ブーンとちんぽっぽは空を眺めながら世間話をしていた。
( ^ω^)「にしても、最近は平和だお」
ぼーっとした表情でブーンが呟いた。
(*‘ω‘ *)「本当だっぽ。争い事が全く起こらないっぽ」
( ^ω^)「ちょっと前までは、別のストリートから喧嘩をふっかけられてばかりだったお……」
(*‘ω‘ *)「でも今じゃ誰もそんな事はしてこないっぽ。
みんなブーンに勝負を挑む事がいかにバカな事か分かったみたいだっぽ」
( ^ω^)「おっおっwwwwwwwwww
確かにそんな命知らずの奴らは激減したお。むしろ遅いぐらいだお」
ブーンはちんぽっぽの言葉を受けて、けらけらと笑う。
(*‘ω‘ *)「そんな事言って、本当は喧嘩がしたいんじゃないのかっぽ?」
( ^ω^)「まあ、刺激が減ったのはつまんないお」
- 16: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 01:05:26.07 ID:Z+qiXqpa0
- (*‘ω‘ *)「だったら、ブーンから仕掛ければいいっぽ!」
ぱちん、と手を叩き、ちんぽっぽは少年に提案を持ちかける。
(*‘ω‘ *)「他所のストリートを奪うのもいいんじゃないかっぽ?」
( ^ω^)「冗談じゃないお。やめとくお」
首を横に振り、彼女の提案をきっぱりと否定するブーン。
(*‘ω‘ *)「何でだっぽ? ブーンならそのぐらい簡単に出来るっぽ」
( ^ω^)「僕は今の生活で十分だお。
刺激は平穏には及ばない、これ以上もこれ以下も望まないお」
(*‘ω‘ *)「ブーンらしいっぽw」
そう言って、くすっと笑う。
自分にとっては、このストリートでの共同体が全て。
その和を乱す気は毛頭なかったし、もし仮に乱す要素があれば全力で排除する。
それが彼の考え方だった。
- 18: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 01:09:08.61 ID:Z+qiXqpa0
- 遠くから聞こえる車のエンジン音やけたたましい喧噪の声を聴きながら、
二人、正午を回るまで日向ぼっこを満喫していた。
(*‘ω‘ *)「何か騒がしいっぽ。喧嘩でもしているのかっぽ」
( ^ω^)「うーん、分からないお」
どこかのストリートで争いが起こっているのだろうか、
先程聴こえた喧噪はよりその音量を上げていた。
( ^ω^)「でも、僕らには関係のない事だお」
――――そう、関係ない。
あくまでこの場所と違うどこかで起きている事象だ。
首を突っ込む必要など、どこにもない。
(*‘ω‘ *)「楽しそうだなー、とか思ってるんじゃないかっぽ?」
(;^ω^)「おっおっ、勘弁してくれお」
- 19: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 01:11:56.61 ID:Z+qiXqpa0
- (*‘ω‘ *)「それにしても遅いっぽ」
ちんぽっぽがちらりと古びた腕時計を見る。
短針と長針の配置を確認すると、呆れたように声を漏らした。
(*‘ω‘ *)「もう二時前だっぽ。そろそろ帰ってきてもいい頃だっぽ」
確かに、もうそろそろ戻ってきてもおかしくない時間だ。
太陽は空の頂点から段々と下り始めている。
( ^ω^)「ちょっと探してくるお」
少しだけ不安になったブーンは、ゆっくりと手足を伸ばしながら立ち上がった。
ちんぽっぽに背を向け、一歩目を踏み出す。
(*‘ω‘ *)ノシ「気をつけるっぽ!」
その背中に手を振り、さりげなく安否を気遣う言葉を掛ける。
ブーンは適当に返事を済ませると、ストリートを抜けて大通りに出ていった。
- 20: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 01:15:25.60 ID:Z+qiXqpa0
- この街のの大通りは、彼らにとって所謂「メインストリート」である。
様々なストリートの人間が行き違う場。
当然のように、グループ同士での諍いが絶えず起こっている。
恐らく、先程の騒ぎもここでの出来事だろう。
ブーンは道行く三人組に声を掛けた。
( ^ω^)「ちょっとすまんお、空き缶拾いをしていた二人組を見なかったかお?」
「あぁ!? 気安く話しかけてんじゃねぇぞコラぁ」
三人組のうち、一人がいきり立ってブーンを威圧した。
顔、声、構え。全てが敵意に満ちている。
「ちょ、馬鹿野郎! こいつの顔知らねぇのかよ!」
「聞いたことあるだろ、この一帯にいる化け物の事……」
慌てた様子で、残りの男たちが一人を必死で諌める。
どうやらブーンの実態、隠れた物を知っているようだ。
こうして名が知られている事はブーンにとっては不愉快だった。
――――それが例え、悪い噂ではなかったとしても。
- 21: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 01:18:21.60 ID:Z+qiXqpa0
- 「なっ……おい、マジかよ!? こんな雑魚そうな奴が―――?」
( ^ω^)「……見なかったのかお?」
さっきよりも少々力を込めて、再度男に問い掛ける。
「あっ、あぁ! 見なかったよ、うん。マジマジ」
( ^ω^)「本当かお?」
「ほ、本当だって!
あ、俺ら用事があるんだった! それじゃあな!」
そう言い残して、そそくさと三人組は去っていった。
( ^ω^)「うーむ、聞き込み失敗だお」
はぁ、と溜息をつくと、誰かに尋ねるのを諦めたのか、
ひたすらにその足で歩きワカンナインデスとワカッテマスの行方を追った。
- 22: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 01:21:02.45 ID:Z+qiXqpa0
- (;^ω^)「いないお……」
大通り中を隈なく歩き、散々探し回ったが、
結局二人は見つからず、ブーンは一人脇道に設置されたベンチに腰掛け途方に暮れていた。
この辺りは人通りも少なく、大通りの中で唯一ともいえる安らぎを感じられる場所。
ここに来る度に、ブーンは落ち着きを得られるのだった。
( ^ω^)「……ま、その内きっと見つかるお」
そう、楽観的に独り言を呟く。
二人が自分のグループに属していることは既に知れ渡っている。
だとしたら、自分を知る人間は報復を恐れて二人を襲撃したりはしないだろう。
望んだ事ではなかったが、偶には役に立つ事もあるものだ。
そんな事を考えながら、歩き回って疲労の蓄積した足を休めた。
- 23: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 01:24:11.54 ID:Z+qiXqpa0
- 「あー! 見つけたんです!」
( ^ω^)「おっ?」
離れた所から飛んで来る、突き抜けるような声。
声のする方向を向くと、そこには見知った顔があった。
( ><) 「こんな所にいたんですか! 分かんなかったです!」
(;^ω^)「ちょっ、それはこっちのセリフだお。どこにいたんだお?」
( ><) 「どこにいたも何も、僕たちは二時過ぎには帰ってたんです!
ところがブーンさんはどこかに行っちゃってたんです!
だから、ちんぽっぽちゃんに言われてずっと探してたんです!」
入れ違い。
その事実を知ったブーンは、脱力してベンチにもたれこんだ。
「しまったなぁ」といった顔をする彼を、ワカンナインデスはぷっと笑った。
(;^ω^)「笑うのは酷いお……」
( ><)「ごめんなんです! お詫びにこれをあげるんです!」
( ^ω^)「むむ、何だお?」
- 25: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 01:27:58.04 ID:Z+qiXqpa0
- ワカンナインデスはがさがさと紙袋からとっておきの一品を取り出した。
( ><)「じゃーん! コロッケなんです!」
(*^ω^)「うはwwwwwwwこwwれwwはwwwwwwww」
黄金色に輝くその姿。
久々に見る御馳走を目の前に、ブーンのテンションは急上昇。
一気に興奮のるつぼへと突入した。
( ><)「今日はたくさん空き缶を拾えたから奮発したんです!
……実は、値切り交渉をしていて遅くなったんです!w」
(*^ω^)「ありがとうだお!」
( ><)「でも、安物だからきっと豚肉入りなんです!」
( ^ω^)「ダンボールよりはマシだお」
( ><)「言えてるんです!w」
くだらない冗談を言い合う二人。
漂っていた虚無感はすっかり消え去っていた。
- 26: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 01:30:58.09 ID:Z+qiXqpa0
- ほくほくとした潰したじゃがいもの食感。
それを更に引き立てているのが、サクッとした荒目の衣。
油を吸いすぎず、絶妙のバランスで揚がっている。
冗談で茶化していた肉も、ちゃんとと言うべきか当然と言うべきか、牛肉100%。
旨味において牛肉に勝るものはない。
量はさほど多くないが、十分な旨味が閉じ込められていた。
( ><)「冷めても美味しいんです!」
夢中でかぶりついて、満足そうな笑みを零す。
自らの努力の結晶だ。より一層格別な味に感じられるのだろう。
( ^ω^)「おっおっwwwwww神の食べ物だおwwwwwwwww」
( ><)「あと一個しかないんです! 半分に分けるんです!
……ちょっと失敗しちゃったけど気にしちゃダメなんです!」」
(;^ω^)「おまwwwwwでかい方取るなおwwwwwwwwww」
- 27: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 01:33:22.98 ID:Z+qiXqpa0
- ( ><)「ごちそうさまなんです!」
行儀良く手を合わせ、食後の儀式を済ませるワカンナインデス。
その目に映る景色は既に茜色に染まりかけていた。
( ><)「帰りに夕ごはんを頂きに行くんです!」
( ^ω^)「あっ、僕も手伝うお」
( ><)「助かるんです! 今朝と違うコンビニに行くからついてきて欲しいんです!」
( ^ω^)「把握したお」
やおら立ち上がり、ブーンとワカンナインデスの二人はベンチを発った。
あぁ、なんて代り映えのなく、
なんて幸福な毎日なのだろうか。
ホームレスという現状にも関わらず、ブーンはただそれだけを感じていた。
ワカンナインデスもまた、そう感じていた。
- 30: ◆zS3MCsRvy2 :2007/09/04(火) 01:35:51.66 ID:Z+qiXqpa0
- この生活はいつまでも続いていく。
狂わせるものは何一つない。
そんな風に思える時間が、彼らにとって何よりも安心感を与えていた。
永遠なる安息の日々。
それは例えるならば、快晴の蒼天に輝く太陽である。
遮るものは存在しないのだ。
――――ただ一つ。
影が光を覆う、皆既日食の時を除いては。
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