(#゚;;-゚) でぃが笛を吹くようです

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 01:34:05.08 ID:IpG2Im2OO

「……どうした?」

(;#゚;;-゚) 「……あ、すいません。あの私、浸透者に追われて……」

「……そうか、奴らはまだこの付近にも居る。
 今我々が食い止めているが何分数が多くてな、手が離せないのだ」

女の騎士さんはそう言うと馬を降り、首に手を当て兜を剥ぎ取った。

それは一見で分かる、綺麗な女性。
目は青く透き通り、鼻もスッと通っている。
輝く金の長髪は、首を振りながら掻き上げるとサラサラと綺麗に流れた。

川 ゚ -゚)「ん? そこに誰か倒れているが」

(#゚;;-゚) 「あ、あれは……母です」

兜を脇に構え、騎士さんはお母さんへと歩んでいく。
全身を覆う銀の鉄鎧が光を反射し、彼女の美しさに拍車をかける。

川 ゚ -゚)「……亡くなっているな」

(# ;;- ) 「……はい。先日病気で……」

川 ゚ -゚)「……そうか、辛かったな」

騎士さんは母の亡骸に十字を切ると、懐から布を取出しその顔に巻いた。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 01:38:04.23 ID:IpG2Im2OO

川 ゚ -゚)「擦り剥いたようだ。……君もだが。
      手当ては必要か?」

(#゚;;-゚) 「あ、大丈夫です……」

川 ゚ -゚)「わかった。君は強い子だな」

お母さんをお姫さまのように抱き、こちらへと来る騎士さん。
その表情は全く変わらないが、無感情という訳でもないようだ。

川 ゚ -゚)「私はここに残らなければならない。まだ浸透者は居るからな。
      だから馬を貸す。よく調練しているから、王都まで真っすぐ行ってくれる筈だ」

(#゚;;-゚) 「あ……ありがとうございます」

ブルル、と応えるように鳴く黒馬。
毛並みがとても美しく、目が力強い。流石彼女の馬、という感じだ。

川 ゚ -゚)「馬は乗れるか?」

(#゚;;-゚) 「いえ……」

川 ゚ -゚)「手綱を掴み、ただ乗っているだけでいい。
      下手に足は動かすなよ?」

騎士さんはお母さんを馬の後ろに乗せ縄で固定すると、私の腰を掴み押し上げ乗せてくれた。
暖かい黒馬のその脈動は、初めて感じる不思議なものだった。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 01:40:03.76 ID:IpG2Im2OO

川 ゚ -゚)「そうだ、君の名は?」

(#゚;;-゚) 「でぃです。あの……本当にありがとうございます」

川 ゚ -゚)「気にするな。では、生きていればまた合おう。
      行けッ! さらばだ、でぃ!!」

騎士さんが馬を叩くと、勢いよくそれは駆け出した。
ひどい振動が私を襲い、今にも振り落とされそうになる。

なんとか手綱を掴み踏張ると、まだ騎士さんの名を聞いていない事に気付いた。

(;#゚;;-゚) 「あのッ!! あなたのお名前はッ!?」

川 ゚ -゚)「クールだッ!! クーで構わんよッ!!」

騎士さん、もといクーさんのその声を背に受け、私は激しく揺られながら王都を目指した。







42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 01:42:03.73 ID:IpG2Im2OO



随分と長い間馬に揺られていた。
さっきまで頭上にあった太陽は地平線に沈み始め、橙色の光が辺りを覆っている。

しかしその幻想的な光景に感動する間もなく、腰や首、腕が悲鳴をあげる。
もう身体は、とっくのとうに限界を迎えていた。

でも、私は助かったんだ。
クーさんがあそこに通りかかってくれなかったら、どうなっていたか分からない。
今になって、もっと感謝するべきだったと後悔した。


(#゚;;-゚) 「あ……見えてきた……!」

ずっと草原ばかりが続いていたが、やっと正面に少しずつ、大きな石壁が姿を現した。
王都はその壁に囲まれた円形をしているが、私は丁度正面の門へと着いたようだ。
少し、身体の疲労が治まった気がする。

それに比例するように黒馬が速度を落とし、門へと向かう。
本当に頭の良い子だ。
でもクーさんは、馬が無くて帰って来られるのだろうか……。

「おーい、止まれー!」

門の両脇に槍を持った二人の兵。その内の一人が、手を大きく振りながら叫んだ。
ただ止まれと言われても、止め方などは分からない。
足は動かすなというクーさんの忠告もあったし、下手に何かしない方がいいのだろうか。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 01:44:18.02 ID:IpG2Im2OO

しかしそんな心配も、この黒馬には不要だった。
門まで来ると自分で止まり、着いた事を知らせるように一つ鳴いた。

「これは……隊長の馬じゃないか」

(#゚;;-゚) 「あ、あの……私、クーさんにこの馬を借りて……」

兵士さんは、クーさんの馬に私みたいなのが乗ってきた事に驚いたようで、
少し怪しむような目でこちらを見つめている。
そんな私は馬から一人で降りれずに、とりあえず事情を拙い言葉で伝えようとしていた。

「なぜ隊長の馬にお前が乗っているんだ?
 隊長はどうした」

(;#゚;;-゚) 「えーと……浸透者から逃げてたら、クーさんが通りかかってくれて……」

口下手が災いして、上手く説明ができない。
そんな私を睨む兵士さん。
そんな目で見られると、更に私は喋れなくなってしまった。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 01:46:05.97 ID:IpG2Im2OO

(;#゚;;-゚) 「あの……えと……」

「クーが帰って来たってッ!?」

(;#゚;;-゚) 「……?」

閉じられた門の向こうから、女性の声がした。

正面門だからかそれはなかなか大きく、わざわざ人一人が通る度に開けるのは面倒だ。
その為か門の隅には小さな扉がある。常時はあそこを使うのだろう。

そんな事を考えていると、扉が勢い良く開かれ、剣を腰に差した女性が現われた。

从 ゚∀从「クー……ん? 誰だお前。
     なんでクーの馬に乗ってんだよ」

(;#゚;;-゚) 「あ、あの……私……」

どこか威圧的な女性に対し言葉が詰まっていると、突然黒馬が暴れるように前脚を上げ、高らかに鳴いた。

(;#゚;;-゚) 「キャッ!? な、何?」

从 ゚∀从「早く降りろ、ってよ。オラ、手伝え」

門番の二人にそう言うと、彼女は私に手を差し出し、降りろ、と顎で指図する。
黒い手袋で覆われたその手を掴むと、強い力で引かれ無理矢理馬から降ろされた。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 01:48:03.32 ID:IpG2Im2OO

从 ゚∀从「そっちは何だ?」

(;#゚;;-゚) 「あ、あの……母の」

「遺体、ですね……」

从 ゚∀从「……ヘッ、変わんないね、アイツも」

彼女は腰の短剣を抜き縛っている紐を切ると、母さんを馬から降ろし抱いた。
またお姫様のように抱かれた母さんだったが、人形のようにだらりとする腕を見て、少し切なくなった。

从 ゚∀从「ふぉら、ひゃぶにぇきゃらひゃなれろ」

短剣の柄を噛みながら言った所為か聞き取りにくかったが、離れろ、と言ったのだろう。
言われるがまま、後退りで黒馬から少し距離を置く。
……足が痛い。

と、黒馬がまた高らかに鳴き、思わず私はビクッとしてしまう。
それを余所に黒馬はゆっくり方向転換すると、背に誰も乗せず草原を駈けていった。

夕暮れの草むらを駆けるそれは絵にできそうな程に美しく、私は少し見惚れてしまう。

从 ゚∀从「ふぉい、ふぉれふぉれ」

そんな私に掛けられる、どこか間抜けな声。
え?と振り向くと、また彼女はふぉれを連呼する。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 01:50:19.34 ID:IpG2Im2OO

从 ゚∀从「ふぉれだひょ!」

(;#゚;;-゚) 「……?」

从#゚∀从「ふぁひふをふぉれッ!!」

(;#゚;;-゚) 「あ、これを取れ、ですか……」

珍言の意味をやっと理解した私は、背伸びをして彼女が咬む短剣を取った。
どうやら唾液が溜まっていたらしく、彼女は横に唾を吐き捨て、私を睨み付ける。

从#゚∀从「ったく、ちょっと考えりゃわかんだろうが。
     これだからガキは嫌なんだよ」

(;#゚;;-゚) 「ご……ごめんなさい」

从 ゚∀从「ほら、戻せ」

右腰をこちらに向け、ナイフを鞘に入れろと促す。
私は何故か震える手でそれを戻し、彼女を見上げた。

少しクーさんより背は低いだろうか、でも彼女はクーさんの数倍威圧的だ。
それを思わせるのは、右目だけを見せているからかもしれない。

肩に付かない程度の金髪で左目を隠し、それだけでは飽き足らず黒い眼帯まで付けている。
眉間には皺の後が濃く残っているし、頬にも薄いが傷がある。

クーさんが綺麗なら、この人は格好いいだろうか。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 01:54:03.77 ID:IpG2Im2OO

軽装で胸を強調した服だから女性だと分かったが、
ちょっと低めの声から出される男言葉だけ聞けば、普通は間違えるだろう。

クーさんとは知り合いのようだが、見事に対極。馬鹿っぽいし。

从 ゚∀从「……何ジロジロ見てんだ。とっとと行くぞ」

(#゚;;-゚) 「行くって……何処にですか?」

从 ゚∀从「墓地だよ。その為に連れて来たんだろ?
     分かったら着いてこい。日が暮れちまう」

背の低い扉を抜け、王都に入った女性の後を追う。
彼女は身体を横にしくぐっていたが、私には少し小さいくらいで簡単に抜けれた。

門の先は砂利が敷き詰められ、すぐに王都が広がっていた。
夕方だというのに露天は賑わい、行き交う人の多さからまるで別世界に来たような錯覚を覚えた。

从 ゚∀从「そうだ、お前の名前は?」

(#゚;;-゚) 「あ、でぃです……」

从 ゚∀从「俺はハインリッヒ。ハインでいい。
     離れんじゃねぇぞ、迷子探しなんざ勘弁だからな」

そう名乗ると振り向き歩いていくハインさん。
私は彼女を早足で追いながら、町を見回した。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 01:56:04.27 ID:IpG2Im2OO

布の上に果物を並べ、威勢のいい声を張りお客を呼び込むおばさん。
その隣の木台の上には色とりどりな商品が並んでおり、見ているだけでも退屈しなさそうだ。

こんなご時世こんな状況なのに、村から出た事のない私は、初めて見る城下町に少し興奮していた。

从 ゚∀从「なにキョロキョロしてんだよ」

(#゚;;-゚) 「あ……こういう賑やかな所、初めてで……」

从 ゚∀从「慣れりゃあ煩くてしょうがねぇよ」

ハインさんはそう言うが、むしろ私には安心できる賑やかさだ。

幅の広い道は真っすぐに続き、遠くにはお城が見える。
丁度その真ん中辺りに広場があり、大きな噴水が忙しなく水を吹き出している。
私の村のそれよりも二回りは大きく、少し嫉妬した。

広場からは村と同じく十字に道が別れ、左手は家の密集地帯へと、正面は城へ繋がる道に行けるようだ。
ハインさんは迷う事なく右を行き、私も並ぶように駆け足で着いていく。

少し人通りが減り、幾分かは静かになる。
少し間が淋しくなり、私はハインさんに話し掛けてみた。

(#゚;;-゚) 「ハインさんは……クーさんのお知り合いなんですか?」

从 ゚∀从「あぁ、同じ騎士だよ。
     ま、アイツは隊長、俺は副長補佐だがな」



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 01:58:03.75 ID:IpG2Im2OO

副長補佐という初めて聞いた単語に首を捻っていると、ハインさんは前を見ながら話を続けた。

从 ゚∀从「今回はVIPからも遠くねぇし、クー自ら出たんだよ。
     俺も副長もお留守番ってやつだな。だからって暇な訳じゃねぇぞ」

(#゚;;-゚) 「あ、ありがとうございます……」

从 ゚∀从「礼ならクーに言え。俺は真似してるだけだ」

……真似?

聞き返そうかと思ったけど、ハインさんに着いたぞ、と先を越され、私は言葉を呑んだ。

着いた先は、墓地。
黒い鉄柵とその延長の簡易な門は、先程までの城下と違い落ち着いた雰囲気を放つ。

ハインさんが門を身体で押し開くと、キィ、と小さく音が鳴った。
ハインさんを先頭に墓地に入るともうそこには喧騒などなく、不気味な程に静かだった。

(#゚;;-゚) 「………すごい数……」

墓地内は薄い草が広がり、定期的に並ぶ、盛られた土と黒い十字の墓石。
緑に映えるそれらの数は、とても数え切れるものじゃなかった。

从 ゚∀从「皆VIPに埋めたがるからな。
     まぁ最後まで残るのは此処だろうし、当然っちゃ当然だな」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 02:00:16.24 ID:IpG2Im2OO

ハインさんは広い墓地内の奥を目指し歩く。
お墓には白いお花が添えられていたり、手を合わせ祈る人も数人居た。

从 ゚∀从「ほら、それ持ってけ」

(#゚;;-゚) 「あ、はい……」

それ、とは細い木の下に立て掛けてあったシャベル。
二本あったがハインさんが一つでいいと言うので、それを両手に持ち彼女の後を追った。

暫らく歩くと、土穴が並ぶ場所へと着いた。
おそらく空きの墓なのだろう。

从 ゚∀从「よし、ちょっと向こう行ってな」

(#゚;;-゚) 「……いえ、私もやります」

从 ゚∀从「……分かった」

それなりに深く掘られた穴に、ハインさんはお母さんを静かに降ろす。
私はシャベルを横に置き、手を合わせ、母が天国へ逝けるよう願った。

父が早くに亡くなり、お母さんはずっと一人で私を育ててくれた。
命が消える直前まで、お母さんは微笑み、私の手を握っていた。
今はその顔は見れないけど、ずっと、ずっと私の心に生き続ける。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 02:02:11.24 ID:IpG2Im2OO

(# ;;- ) 「ありがとう、お母さん。さようなら……」

从 -∀从「……」

目を瞑り、ハインさんは黙祷をしていてくれた。
私は立ち上がり涙を拭くと、ハインさんを呼ぶ。

从 ゚∀从「……それじゃ、埋めるぞ?」

(#゚;;-゚) 「……はい」

シャベルを持ち、脇に固めてある土を掬い母に掛けるハインさん。
私も手で取り、穴へと入れる。
ほんのちょっとの量で、埋める行為に大した影響はないけど、
少しでも身体を動かしていないとまた泣きそうだったから、私は黙々とそれを続けた。

暫らくの間、私たちは無言で土を入れていた。

悲しくはなかった。
だって、あのまま一人で逃げていたら、お墓も作れなかったから。
今こうやって母の墓を作れる事が嬉しかった。

……けど、もう会えないと思うと、淋しい。

だからずっと、手で土を掬っていた。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 02:04:03.51 ID:IpG2Im2OO

从 ゚∀从「……よし、こんなもんでいいだろ」

(#゚;;-゚) 「……はい」

横に盛ってあった土はなくなり、代わりに墓石の前に茶色の山が出来た。
本当ならお父さんの隣にお墓を作ってあげたかったけど、それは叶わなかった。
心の中で、お母さんに小さく謝る。

そんな中ハインさんは足元にシャベルを寝かすと、墓石に近付き短剣を抜いた。

从 ゚∀从「母親の名前は?」

(#゚;;-゚) 「しぃです。……ハインさんが彫るんですか?」

从 ゚∀从「お前字書けるのかよ」

(;#゚;;-゚) 「い、いえ……」

从 ゚∀从「なら俺に任せろ」

そう言うとハインさんは、また目を閉じ胸に手を当て、何かを唱え始めた。

从 -∀从「VIP騎士団ハインリッヒが、しぃの冥福を祈り、此処に刻む」

短剣を逆手に持ち、十字が広がる真ん中の、少し広くなった所に彫り進める。
何処か神聖な雰囲気の中、カリ、カリと音が続く。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 02:05:14.28 ID:IpG2Im2OO

从 ゚∀从「……」

(#゚;;-゚) 「……」

無言のまま、ハインさんを見守る。
最初は恐かったけど、今はそんな事思わない。

ハインさんは、優しい良いひtガリッ

从;゚∀从「あ゙……」

(;#゚;;-゚) 「……え?」

从;゚∀从「……ごめん」

……御免で済むか。

(#゚;;-゚) 「いえ、気にしないでください」

从;゚∀从「ホント……ごめんな。
      でも! ちょっと間違えただけだからさ!!」

(#゚;;-゚) 「気にせず続けてください」

从;゚∀从「ご……ごめんなさい……」

失敗を踏まえ慎重になったのか、ハインさんの手はかなり遅くなった。
どうせなら最初からそうやって欲しかったが、そこまで言うのは忍びない。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 02:06:23.97 ID:IpG2Im2OO

ハインさんへの恩は大きい。

从;゚∀从「……よし、出来たぜ」

(#゚;;-゚) 「……ハインさん」

从;゚∀从「あ、ごめん! ホントちょっとなんだ!
      いや言い訳か……ごめんな!」

(# ;;- ) 「……ありがとうございました」

从;゚∀从「……?」

ハインさんに向かい頭を下げ、深く礼をする。
感謝の仕方が礼だけってのが情けないけど、これが精一杯の感謝だ。

少ししてから、草を踏みしめる音が聞こえた。
下を見つめる視界にも、長く伸びた影が見える。

从 ゚∀从「……頭上げろよ」

(#゚;;-゚) 「……はい」

言われ、上げた私の頭に、ハインさんが手を乗せる。

从 ゚∀从「言っただろ? 俺はただ、真似してるだけ。
     それより怪我してるみたいだし、とりあえず城行こうぜ?」



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 02:08:03.34 ID:IpG2Im2OO

(#゚;;-゚) 「え……お城、ですか……?」

从 ゚∀从「なんだ、嫌なのか?」

(;#゚;;-゚) 「いえ、嫌というか……私みたいなのが入っても……」

私がそう言うと、ハインさんは乗せたままの手を動かし、私の頭をぐらんぐらん揺らした。

从 ゚∀从「お前なー……副長補佐舐めんじゃねぇよ。
     こう見えて結構偉いんだぞ?」

(;#゚;;-゚) 「そ、そうなんですか……」

从 ゚∀从「それに身体も汚れてるみたいだしな。城行こうぜ」

(;#゚;;-゚) 「そ、それじゃぁお言葉に甘えさせて頂きます……」

从 ゚∀从「かってぇなぁ、お前は」

今度は私の髪をぐしゃぐしゃっと乱暴に撫で、笑いながらハインさんは歩き出した。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/30(日) 02:10:04.86 ID:IpG2Im2OO

私は揺れる視界が元に戻るのを待って、お墓の前に立つ。
目を閉じると、お母さんの笑顔がすぐに浮かんできた。

(# ;;- ) 「……お母さん、また来るからね?
      今度はお花、持ってくるから」

「おーい、追いてくぞー?」

(#゚;;-゚) 「あ、すみません。今行きます!」

シャベルを拾い、私は駆け足でハインさんを追った。

……さよなら、お母さん。

お父さんに、私を守ってくれて、ありがとうって言っておいてね。



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