('A`)ドクオと雪の街のようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/22(木) 23:42:54.20 ID:ucb4MTlB0

朝の日差しが、眠っている俺の意識を呼び覚ます。

……寒い。むちゃくちゃ寒い。
体を起こして窓の外に目をやると、雪が降っていた。

('A`)「寒い訳だよ……」

いよいよ本格的な冬将軍の到来らしい。
俺は寒さに耐え切れず、再び暖かい布団へと舞い戻る。

「ドクオー」

('A`)「……ん?」

「早く起きないと遅刻するお」

('A`)「何だよ、今日は休みだろ……」

( ^ω^)「まだ寝ぼけてるのかお? 今日から三学期の始まりだお」

目を開けると、幼馴染(男)のブーンが俺の顔を覗き込んでいた。



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/22(木) 23:43:36.52 ID:ucb4MTlB0

             ※


(;'A`)「やばいっ! 遅刻だ!」

(;^ω^)「おっお。ドクオが中々起きないからギリギリになっちゃうんだお!」

俺達は、雪の積もった通学路を走る。
時刻は8時40分。朝のHRに間に合うかどうかはかなりきわどい。

('A`)「近道だ、とうっ!」

( ^ω^)「おkだお!」

フェンスを越えて、VIP高校へと走る。
雪に足を取られ、思うように前に進めない。

('A`)「ブーン、門が見えたぞ!」

( ^ω^)「おお! 奇跡的にまだ閉まってないお!」



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/22(木) 23:44:28.05 ID:ucb4MTlB0

ブーンは最後の直線に入ると、手を広げながら走った。

⊂二二二( ^ω^)二⊃「ぶーんだお!」

('A`)「おまwww置いてくなっ!」

どんどん距離を離され、ブーンは一足先に門の中へと入る。

(#'A`)「ぬおおおおっ! あと一分!」

門の前に立っている教師が、腕時計を見る。
まずい、閉める気だ!

(#'A`)「どりゃ――――!」


俺は歯を食いしばりながら、閉まり行く門を見つめ、そして――――

('A`)「うぎゃっ!!」

転んだ。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/22(木) 23:45:22.59 ID:ucb4MTlB0

川д川「はい。君、遅刻ね。ここに学年とクラスと名前書いて」

('A`)「ハイ……」

健闘むなしく、俺は遅刻となった。
どうせ遅刻するなら、走らなきゃよかった。

('A`)「あの、走った分だけ努力賞とかないんですか?」

川д川「ありません」

即答された。
わかってたよ、わかってたけどさ……。

生徒指導の貞子先生に、そんな寛大さが無い事なんてわかってたさ。

(;^ω^)「ドクオー。どんまいだおー」

('A`)「やかましい。裏切り者はさっさと教室に行ってしまえ!」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/22(木) 23:47:01.77 ID:ucb4MTlB0

川д川「あら、あなたも遅刻ね。この髪……じゃなくて、この紙に学年クラス名前を書いて」

川 ゚ -゚)「はい」

凛とした声が、俺の隣から放たれた。
俺はふと、視線をそっちへ向ける。

('A`)「あ……」

川 ゚ -゚)「……」

さらりとした黒い長髪。
美しい顔立ち。ナイスプロポーション。

同じクラスのクーが、そこにいた。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/22(木) 23:47:49.81 ID:ucb4MTlB0

川 ゚ -゚)「ん? 君は……」

え、お、俺ですか?
俺に話しかけてるのか!?

待て。これは孔明の罠だ。
これで俺が返事して、実は後ろの人に話しかけてた、なんて事になったらとても恥ずかしい。

川 ゚ -゚)「確か、ドクオだったな」

(;'A`)「え、あ、は、はい!」

やっぱり俺だった。
俺にとっては高嶺の花であり、それでいて憧れのクーが、俺に話しかけてる。
これは神か。神の気まぐれなのか。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/22(木) 23:49:32.66 ID:ucb4MTlB0

川 ゚ -゚)「君も遅刻か?」

('A`)「え、あ、うん」

緊張の余り、声を出すのもキツイ。
その綺麗な瞳、さらさらの髪。ほのかに漂ういい香り。

それら全てが俺を刺激し、頭の中は真っ白になっていた。

川 ゚ -゚)「じゃあ、一緒に行こうか。早くしないと始業式が始まってしまうぞ」

('A`)「え、あ、はい! ぜひ!」

俺はよくわかってないまま、返事をしクーの後を追う。
俺の心臓の鼓動は、未だにハイスピードで鳴り続けていた。


川д川「憎たらしいほど若いわ……! 呪まーす」



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/22(木) 23:51:20.86 ID:ucb4MTlB0

(;'A`)(ああ、やばいやばいやばい! これは現実か!?)

川 ゚ -゚)「……」

そう思い、俺はふと隣を見る。
そこには、背筋をす、と伸ばし、一歩一歩しっかりと歩くクーの姿。

いつも遠くで見ていたクーが、すぐ傍にいる。

川 ゚ -゚)「こっちだ」

('A`)「え、あ、はい!」

俺はクーの後を追い、グラウンドを横切り裏庭へと進む。

……ん? 裏庭?
どうして裏庭なんかに向かうんだ?



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/22(木) 23:52:43.98 ID:ucb4MTlB0

川 ゚ -゚)「ここら辺ならいいかな」

(;'A`)「え、あ、あの……クー?」

クーは鞄を置き、俺のほうを見る。

川 ゚ -゚)「すまない、ちょっと君に助けて欲しい事があってな……」

('A`)「た、助けて欲しいこと?」

まさか……。

能力バトルか!?
クーは悪の組織に狙われてるとか、そういうノリか!?

('A`)「よ、よし。俺に任せてくれ!」

川 ゚ ー゚)「本当か? ありがとう、ドクオ。
      こいつもきっと喜ぶぞ」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/22(木) 23:53:43.17 ID:ucb4MTlB0

('A`)「お、おう。俺に出来ることならなんでも……って、こいつ?」

川 ゚ -゚)「ほら、よかったな。ドクオも協力してくれるそうだ」

そう言い、クーが鞄から取り出したのは

ミセ*゚ー゚)リ「ニャー」

子猫だった。

('A`)「え、あの……猫?」

川 ゚ -゚)「今日、学校に来る途中に捨てられていてな。
     凍えていて可愛そうだったからつれて来たんだ」

('A`)「えーっと、それで助けて欲しいっていうのは?」

川 ゚ -゚)「ああ。私が飼おうと思ったんだが……。
     うちはマンションだからペットが飼えないんだ。
     そこで、里親を見つけるのをドクオに手伝って欲しい」



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/22(木) 23:55:16.16 ID:ucb4MTlB0

('A`)「な、なんだそんな事かぁ。ハハハ」

いや、てっきり俺は能力バトルとか……。
裏庭だから告白とか……そういうのかと思ってたんだけどな。

川 ゚ -゚)「どうした?」

('A`)「あ、いや何でもない。それで、里親探すって言っても具体的にはどうするの?」

川 ゚ -゚)「ネットで募集をかけようかと思ってるんだ。だが、私はパソコンを持ってないし
     やり方もよくわからない。ドクオはそういうの詳しいか?」

('A`)「ネットで里親募集かぁ。うん、いいと思うよ。
    ググればそういうサイト、出てくると思うし」

川 ゚ -゚)「ググる?」

(;'A`)「あ、えーっと、探すってことかな」

いかん、ついネット用語が出てしまった。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 00:00:05.29 ID:UDM9KzUZ0

川 ゚ -゚)「む、そろそろ始業式が始まってしまうな。
     今日の放課後、ドクオの家にお邪魔してもいか?」

('A`)「え? お、俺ん家!?」

川 ゚ -゚)「ああ。善は急げと言うだろう? この子の親を、すぐにでも探してやりたいんだ」

('A`)「……」

俺の家に、クーが来る?

マジかよ……それって。

(;'A`)「ちょ、まっままマジで?」

川 ゚ -゚)「ん? 今日は都合が悪いか?」

('A`)「いや、そんなことないです。もういつでもどうぞ!!」



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 00:02:55.90 ID:UDM9KzUZ0

川 ゚ -゚)「そうか。それじゃ、放課後に校門前でな」

('A`)「お、おう」

そう言うと、クーは鞄に子猫を入れ、小走りで体育館へと走っていった。

('A`)「……」

('∀`)

うおおおお!!
勝った!! 第三部完ッ!!

俺は一人、雪のふる中でガッツポーズを決めていた。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 00:05:31.08 ID:UDM9KzUZ0

           ※


(;^ω^)「ドクオ、何かいい事でもあったのかお?」

('A`)「別にー」

(;^ω^)「さっきから髪の毛気にしすぎだお。そんないじっても変わらないお」

(*'A`)「ふふん、おしゃれ心のわからんやつめ」

始業式を終え、俺は教室で何度も髪型をチェックしていた。
携帯のカメラに映る俺の顔は、なんだかいつもとは違って見えた。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 00:08:42.11 ID:UDM9KzUZ0

('A`)(クーが俺の家に来る俺の家に来る俺の家に……)

('∀`)

(;^ω^)「……」

あぁ……寒いね、クー。
何、私が暖めてやる。
あぁ、クー。愛してるよ……ふふ……チュッチュ

('A`)「んー、んふふふ」

ついに彼女いない暦=16年の俺にも、一足はやい春が来たようだ。
しかも、相手は……。

('∀`)(クラスのマドンナ、クーだぜ!! ざまあwwwww)



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 00:12:03.15 ID:UDM9KzUZ0

俺はちらりとクーの方を見る。
友人と談笑している彼女は、何度見ても美しい。

('A`)「ブーン」

( ^ω^)「お?」

('A`)「朝はあんなこと言ってすまなかったな。
    これからも俺達は友達だぜ?」

(;^ω^)「え、あぁ……お」

('A`)「朝の日差し、優雅に微笑む、気持ち良し。なんてな」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 00:16:56.64 ID:UDM9KzUZ0

(;^ω^)「ドクオがおかしくなってしまったお」

( ,,゚Д゚)「そんなん元からだろ」

( ^ω^)「ギコ、おはようだおー」

何やら芋臭い男達が、俺の優雅な振る舞いにけちをつけているようだ。

('A`)「ふ……。お子様にはわからんさ。俺の今の気持ちはね」

( ,,゚Д゚)「わかりたくもねーっつーの。頼むから犯罪だけは起こすなよ」

( ^ω^)「おっお」

二人は笑って、俺の方を見つめていた。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 00:21:34.59 ID:UDM9KzUZ0

('A`)「まったく、これだからお子様は困る」

放課後。
俺は約束通り、校門の前でクーを待っていた。

('A`)「さて、愛しのクーが来る前に最終チェックだ、ドクオ」

きょどっていては、せっかくの美男が台無しだ。
まずは台詞の確認をしなければ。

('A`)「やあ。ん? いやいや全然待ってないよ。今来たとこだからさw」

('A`)「何だよ、そんなにくっつくなよ。寒い? じゃあしょうがねえな……
    ほら、こうすればもっと暖かくなるよ」

('A`)「ふふ、続きは俺の家で」

川 ゚ -゚)「何の続きだ?」

('A`)「そりゃ決まってるでしょ。甘美な一時を……」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 00:25:23.99 ID:UDM9KzUZ0

川 ゚ -゚)「甘美な一時?」

(;'A`)「どわあああああっ!!!」

突然の襲来に、俺はつい絶叫をあげてしまった。
クーはまるで驚いた様子も無く、首をかしげている。

川 ゚ -゚)「誰と喋っていたんだ?」

('A`)「あ、いや、その。……劇の練習デス」

川 ゚ -゚)「劇?」

('A`)「な、なんでもないっ! それより、お、俺も今来たとこだよっ!?」

落ち着け! まだ慌てるような時間じゃない!
台詞を、台詞を思い出し、冷静に対処するんだ!



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 00:31:04.59 ID:UDM9KzUZ0

川 ゚ -゚)「そうか、よかった……ふぅ」

('A`)「あ、あれ? クー、どうした?」

クーは息を荒げ、顔がやや赤くなっていた。

川 ゚ -゚)「いや、遅くなってしまったから走ってきたんだ。
     少し息切れしてるだけだから、大丈夫だ」

('A`)「!!!」

クーの吐息が、白い息となって大気に消える。
火照ったクーの頬は、やや熱を帯びているのか赤く染まっている。

きりっとした顔立ちとのギャップが、俺のツボに入ってしまった。

川 ゚ -゚)「……? 私の顔に何かついてるのか?」

(*'A`)「……」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 00:34:00.71 ID:UDM9KzUZ0

川 ゚ -゚)「ドクオー」

(*'A`)

川 ゚ -゚)「おい」

(*'A`)

川 ゚ -゚)「ドクオ!」

('A`)「あ、は、はい何!?」

俺の意識が現在へと戻る。
いかん、後少しであちら側へ行くところだった。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 00:37:42.72 ID:UDM9KzUZ0

川 ゚ -゚)「そろそろ行こうか。雪がまた降ってきた」

('A`)「あ、えっと、俺の家だっけ。うん」

俺は冷静になり、我が家へと向かうことにした。
俺はクーと並んで、通学路を歩いていく。

ミセ*゚ー゚)リ「にゃっ」

(;'A`)「うわっ!」

川 ゚ -゚)「おっと、出てきてしまった。元気だなミセリは」

('A`)「ミセリって、この猫の名前?」

川 ゚ -゚)「ああ。私が勝手に名づけたんだがな」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/23(金) 00:40:24.55 ID:UDM9KzUZ0

('A`)「ふーん、可愛い名前だな」

ミセ*゚ー゚)リ「……」

ミセ* ー )リ「う、うにゃにゃにゃっ!!」

(;'A`)「うぎゃっ! 引っかかれた!」

川;゚ -゚)「大丈夫か?」

ミセ*゚ー゚)リ「むふー」

何で褒めたのに引っかかれるんだ。
もしかして、この猫ツンデレなのか?

俺はミセリとクーを連れて、雪の積もった道を歩いていった。



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