( ^ω^)ブーンが学校の七不思議に挑戦するようです
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 00:39:04.06 ID:JD+F9ZTV0
白い、ヒトガタの何か。
全身を覆う異様な白い皮膚は、蛹から羽化した直後の昆虫を彷彿とさせる。
立ち上がったそいつの姿は、返り血を浴びて、ところどころ赤い斑点を作ってい
た。
「あはぁ……あは、あはぁああ」
真っ赤に染まった口が、いびつに歪み、笑いとも呼吸ともつかない声が漏れた。
頭髪と呼べるモノは無く、本来眼があるべき場所には窪みしかない。
しかし、体の向きだけはしっかりとブーン達を捉えていた。
('A`)「うわ……わ……」
( ^ω^)「なんだおアレ……」
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 00:43:58.94 ID:JD+F9ZTV0
- (;´・ω・`)「に、逃げるんだ!!早く!!」
(;^ω^)「はっ」
(;'A`)「お、おう!!」
三人は弾かれるように走りだした。
後ろから、化け物の不気味な声が響く。
「あははは!!なんでぇ!?あははっ!!ねぇなんでなんで!?」
(;'A`)「な、なんだよアイツ!!何言ってんだ!?」
(;´・ω・`)「わかんないよ!!いいから走るんだ!!」
(;゚ω゚)「うわ!!おおおお追ってきたお!!」
ブーンの言葉に、ドクオは走りながら首だけ後ろを振り向いた。
手に持つ懐中電灯をの光を後ろに向ける。
薄暗い廊下の奥から、人の形をした白い何かが浮かび上がった。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 00:48:28.86 ID:JD+F9ZTV0
- そいつは、ブーンの言った通り、三人の後を追ってきていた。
両腕をめちゃくちゃに振り回しながら、理解不能の言葉を撒き散らしながら。
「あははぁやわらかいねっあはははねぇねぇねぇねぇねぇねぇなんであははは!!」
(;'A`)「うわ、うわぁぁっ!!」
腹の底から湧き上がる恐怖。
ドクオはたまらず叫び声をあげる。
しかし、それは震えをますます激しくさせるだけだった。
ドクオは一刻も早くこの恐怖から逃げ出したかったが、
どうしても背後の化け物から目を逸らせない。
後ろを向きながら走っていたドクオは、足がもつれて転んでしまった。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 00:50:30.48 ID:JD+F9ZTV0
- (;'A`)「うわっ!?」
(;^ω^)「ちょ、ドクオーッ!!」
(;´・ω・`)「ドクオッ!!早く立ち上がるんだっ!!」
しかし、ショボンの言葉も空しく化け物はすぐに追いつき、尻餅をついているドクオに飛び掛かった。
(;'A`)「ひぃぃいぃぃっ!!」
化け物の爪がドクオの体に届く寸前。
「あがっ!?」
ショボンが放ったバックが化け物の顔に直撃していた。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 00:54:45.59 ID:JD+F9ZTV0
- バックには重いモノでも入っていたのだろう、鈍い音が響いた。
空中でバランスを失った化け物は、背中から地面に落ちる。
「あ、はぁはははぁ」
(;^ω^)「やったお!!」
もぞもぞと仰向けのまま蠢く化け物。
しかし、致命的なダメージは与えられなかったのか、跳ねるように飛び上がった。
怒りの矛先は、自分に痛みを与えた相手。
(;´・ω・`)「うわわっ」
もちろんショボンだった。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 00:59:43.36 ID:JD+F9ZTV0
- (;^ω^)「うわああああ!!」
横から、ブーンが懐中電灯で殴りかかった。
それは軽々と腕で弾かれ、飛んでいった懐中電灯は廊下の窓を突き破った。
派手な音を立て、割れたガラスが周りに飛び散る。
(;^ω^)「うぐっ、ドクオ!!早く、立つお!!逃げるんだお!!」
(;'A`)「お、おう!!」
後ろから羽交い締めにするブーン。
化け物の白い皮膚は、想像どおりぬるりとした感触があった。
「ん゛〜なんでなんでなんでっ!!ん゛〜っ!!」
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 01:01:16.96 ID:JD+F9ZTV0
- 拘束から逃れようと、頭や腕を振り回す。
その度に、化け物の爪が服を破り、肉を抉っていった。
(;^ω^)「クッ、ううぅ……!!」
羽交い締めにしていた片腕を外し、股に後ろから腕を差し入れる。
もう片方の腕は腰に回し、プロレスよろしくそのまま上に持ち上げた。
(;'A`)「おわ、ブーン、すげ……!!」
(;゚ω゚)「うおあああっ!!」
割れた窓へと突進するブーン。
渾身の力を込め、窓の外へと放り投げた。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 01:04:22.76 ID:JD+F9ZTV0
しかし。
「……まぁぁだだよぉぉ」
両腕で、がっちりと窓の縁を掴んでいた。
(;^ω^)「……ッ!!」
(;'A`)「ッ!!クソ!!」
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 01:04:49.99 ID:JD+F9ZTV0
「あはははははははは!!まぁだだよ!!」
(;^ω^)「うう……逃げ、逃げるお……」
(;'A`)「ちくしょう!!かかってこいよこの野郎!!」
ドクオが立ち上がり、化け物に向かって叫び声を上げる。
その声に反応するかのように、再び校舎の中へと戻り始めた次の瞬間。
ブーンの顔の横から、どす黒い何かが飛び出た。
先端が曲がっているソレは、吸い込まれるように化け物の顔にめり込んだ。
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 01:09:14.15 ID:JD+F9ZTV0
「あ……はぁ……?」
動きが止まり、腕からも力が失われていく。
後ろにのけぞり、めり込んだ黒い物体が顔から離れ、潰れた化け物の顔が見える。
化け物はそのまま吸い込まれるように窓の外へ消えていった。
呆気にとられたブーンは、背後へと続く黒い棒を目で追っていく。
(;^ω^)「お、お?」
( ^ω^ )
(^ω^ )!
(;´・ω・`)「はぁ……はぁ……や、やった……!!」
ショボンの手には、バール(のようなもの)が握られていた。
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 01:14:58.61 ID:JD+F9ZTV0
(;'A`)「はは……は……た、助かった……」
(*^ω^)「やったお!!ショボンすごいお!!でもどこからそんなモノを」
(´・ω・`)「バックに入れておいたんだ。護身用に」
('∀`)「どちらかというと犯罪用じゃねwww」
( ^ω^)「まぁ何はともあれ、最後はソイツのおかげだおwwww」
('∀`)「はははwwwはは……」
('A`)「……はぁ……」
三人は気が抜けたようにその場にへたりこんだ。
助かったという安堵感と、化け物への恐怖がごちゃまぜになって、しばらく誰も口を開けなかった。
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 01:19:46.08 ID:JD+F9ZTV0
- ('A`)「……で、アレはなんなんだ」
(´・ω・`)「……話し合うだけ無駄だと思うよ」
( ^ω^)「……」
廊下に広がっていた血。
白い化け物。
そして、管理人室の惨状。
これらが意味するモノは、三人とも口に出さなくともわかっていた。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 01:21:23.30 ID:JD+F9ZTV0
- ('A`)「アレ、他にもいんのかな」
(´・ω・`)「わからない。でも、警戒はした方がいい」
('A`)「いっぱいいたら、やだな」
( ^ω^)「気持ち悪いコト言うなお。ツンがこの学校にいたら最悪だお」
('A`)「そうだよな。ツンを探して、出口を……」
三人は目を合わさず、それでも会話だけは続いていた。
その会話も、ブーンの腹の虫の音で中断されることになった。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 01:24:29.21 ID:JD+F9ZTV0
- ( ^ω^)「そうだお!!忘れてたお!!おかし持ってきてたんだお!!」
表情を一転させ、ブーンは背負っていたリュックから次々に菓子や飲み物を取り出す。
('A`)「お。いいねいいね。そういや喉渇いてたわ」
三人は床にちらばった食糧に、思い思いに手を伸ばす。
ペットボトルのお茶に口をつけてから、ショボンが神妙な面持ちで口を開いた。
(´・ω・`)「……実は、三人にまだ言っていないコトがある」
('A`)「ん?なんだよあらたまって」
( ^ω^)「早くしないとポテチなくなるおwwwwwwwwwwwwww」
ブーンに勧められたポテチには目もくれず、ショボンは二人に話し出した。
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 01:28:30.34 ID:JD+F9ZTV0
- (´・ω・`)「まず一つ。探さなくちゃいけないのは、ツンだけじゃないかもしれない」
('A`)「……へ?」
(´・ω・`)「七不思議をやってる最中、皆には黙っていたけど、実はしぃ達もついてきてたんだ」
(;^ω^)「……mjかお」
(´・ω・`)「しぃと兄者、弟者。モナーと荒巻は……ギリギリセーフだったみたいだね」
('A`)「はぁ……まぁ、ホラ。皆で力合わせりゃ、なんとかなるかもしれんし」
(´・ω・`)「もう一つ」
ショボンは、ドクオとブーンから目を逸らしてうつむいた。
(´・ω・`)「……双子の兄も、ココにいるかもしれないんだ」
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 01:35:13.87 ID:JD+F9ZTV0
- ('A`)「へあ!?お前双子だったの!?」
(;^ω^)「初耳だおwwwwwってかなんでココにいるかもなんだお?ついてきてたのかお?」
(´・ω・`)「いや。二週間前位から行方不明なんだ」
('A`)「おいおい。それだけでココにいるってのは考えすぎじゃね?」
(´・ω・`)「話しちゃったんだよ。VIP高校七不思議の事。その夜、シャキンはいなくなった」
( ^ω^)「……シャキンっていうのかお」
('A`)「……」
- 71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 01:48:26.63 ID:JD+F9ZTV0
- (´・ω・`)「方々探したんだけどね。見つからなかった。それで馬鹿らしいとは思ったけど、最近深夜の学校を探してたんだ」
('A`)「そうか……二週間、か」
( ^ω^)「きっと見つかるお!!ショボンの双子の兄っていうくらいだから、相当しぶといはずだお!!」
(´・ω・`)「ブーン……」
('A`)「……そうさ。もしかしたら、全く関係ないところで女と駆け落ちしてたりしてな」
(´・ω・`)「ははっ、ソレだったら見つけ出してぶち殺す」
( ^ω^)「ちょwwww真顔で言うなおwwwwwwwwwwww」
- 74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 01:54:56.19 ID:JD+F9ZTV0
- (´・ω・`)「……だから、元はと言えば僕が七不思議に誘ったのがいけなかったんだ」
(´・ω・`)「皆は、絶対に元の世界に戻してみせる」
ショボンは再び床に視線をうつし、両の拳を硬く握った。
無表情だったが、元来の責任感の強さを二人は知っていた。
そして、一人で思い詰めてしまう悪い癖も。
(;^ω^)「そ、そんなコトないお!!悪いのはショボンじゃないお!!」
('A`)「そ、そうだよ。元々、ショボンに悪気はなかったんだからさ」
「まぁだだよ」
('A`)「……え?」
- 81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 02:03:42.91 ID:JD+F9ZTV0
- 声がした。
ドクオが振り向く。
あまりの近さに、ソレにピントが合わない。
ソレは、視界いっぱいの、化け物の顔。
('A`)「なんで」
ドクオの声は、白い化け物の抱擁に飲み込まれた。
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 02:07:56.40 ID:JD+F9ZTV0
- 割れた窓から身を乗り出す化け物。
ドクオはその真下に座っていた。
(;゚ω゚)「うわああああああああっ!!」
「あはぁぁああぁ、ねっ、痛いねっあっははは」
耳元で囁かれる、生臭い声。
ドクオは完全に身動きが出来なかった。
('A`)「たす、け」
それでも喉の奥から搾り出した精一杯の言葉。
それに弾かれる様に反応したのは、
(;´・ω・`)「ドクオッ!!」
バール(のようなもの)を持つ、ショボンだった。
- 86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 02:12:59.98 ID:JD+F9ZTV0
- 「ぎゃっ!!あっ!!」
二発。
三発と、続けて凶器が化け物の頭に放たれる。
次第に歪んでいく化け物の頭部。
ぱっくりと割れた隙間からは、中身が完全にはみ出ていた。
それでも死ぬ気配のない化け物は、ドクオを開放すると、標的を変えた。
(;´・ω・`)「っ!!」
全く怯む様子のないショボンは、その勢いのまま化け物に突進していく。
- 94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 02:18:17.70 ID:JD+F9ZTV0
- バールを前に突き出し、化け物の胸に突き刺す。
勢いを止めずに、なかば体当たりするように割れた窓に叩き付けた。
(;´・ω・`)「今度こそっ!!」
ブーンのように、股座に腕を差し込み、化け物をカチあげる。
再び化け物は窓の外へと放り出された。
「あははははははははははははは!!」
(;´・ω・`)「あっ!?」
……しかし、今度はショボンを道連れにして。
- 98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 02:24:20.07 ID:JD+F9ZTV0
- 放り出される瞬間、化け物はショボンの腕を掴んでいた。
振り払う間もなく、体勢を崩したショボンは窓の外へと引きずり出される。
( ^ω^)「――ッ」
反射的に駆け寄ったブーンは、外へ腕を差し出すが、窓の外は闇が広がっているだけだった。
( ^ω^)「……嘘……だお?」
('A`)「は……?」
( ^ω^)「だって。だって、普通は、漫画なんかだと、間に合うじゃないかお」
呟きながら、ブーンは窓から身を乗り出す。
('A`)「嘘だろ……って、おい、ブーン?」
- 101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 02:29:37.27 ID:JD+F9ZTV0
( ^ω^)「間に合うはずだお……こんなのおかしいお……」
(;'A`)「おい!!やめろブーン!!落ちちまうよ!!」
( ;ω;)「嘘だお!!こんなの嘘に決まってるお!!」
(;'A`)「やめろって!!落ち着け!!」
やがて、二人は揉み合うように廊下に転げた。
仰向けになり、放心状態のドクオと。
うつ伏せになって拳を握り締め、嗚咽を堪えているブーン。
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/27(水) 02:31:51.22 ID:JD+F9ZTV0
「……探さなきゃ……」
「……そうだ……」
やがて二人は、どちらともなしに立ち上がる。
心を支配しているのは恐怖心ではなく、強い怒りと、抱えきれない悲しみだった。
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