(´・ω・`)ショボン船長と迷子のツンのようです

1: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:30:06.35 ID:kTcy30rQ0

(´・ω・`)「さあて、漁に出かけるか」

朝日が昇る頃、僕は漁の準備をして家を出る。
今日の海の機嫌はどうかな? 快晴だから、昨日よりは穏やかかもしれないな。

(´・ω・`)「おはよう」

('A`)「おっす、ショボン」

船場に行くと、丁度、ドクオも漁の準備をしている



2: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:30:51.18 ID:kTcy30rQ0

('A`)「昨日は荒れに荒れたな」

(´・ω・`)「うん。まだ時期じゃないのに、珍しく大荒れだったね。
      漁に悪い影響が出なければいいんだけど」

('A`)「なーに、心配すんなって。荒れた日の翌日の方が、珍物が獲れるかもな」

そう言いながら、ドクオは船に道具を乗せる。

ドクオは、この道10年のベテランだ。小さい頃から、人一倍海が好きだった。
小さい頃、よく素もぐりで魚を獲っては、僕に食べさせてくれたものだ。

('A`)「そう言えばよ……ブーンっていたじゃん?」

(´・ω・`)「うん」

('A`)「あいつ、今は東京で会社のお偉いさんやってるらしいぜ。
    この間、手紙が着てたよ」



3: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:32:19.20 ID:kTcy30rQ0
 
(´・ω・`)「へええ。東京に行ってから、しばらく連絡が無いからどうしたのかと思ってたけど、
      出世したんだね」

ブーンは、僕の幼馴染の一人だ。
高校を出た後、東京の大学に行って、それからしばらくは連絡が途絶えていたけれど、
どうやら元気に生活しているようだ。

('A`)「今度、帰ってくるらしいからお祝いでもしてやらないか?」

(´・ω・`)「うん。久々に地元の魚料理を食べさせてあげよう」

僕は、それからドクオと少し雑談した後、自分の船の元へ向かった。



6: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:34:26.96 ID:kTcy30rQ0
 
(´・ω・`)「……あれ?」

船に乗り込もうとして、ふと砂浜に何かが横たわっているのに気付いた。
魚や昆布にしては大きすぎる。僕は気になって、その横たわっている物の方へ近づいてみた。

(´・ω・`)「……? あっ!」

僕はソレの正体に気付いてしまった。
砂浜にあるそれは、紛れも無く人間だった。

(;´・ω・`)「す、水死体……?」

恐る恐る、覗き込んでみる。
小さな体だ。どうやら女の子のようである。
しかし、腐乱した様子や、水死体特有の膨らみも無い。



7: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:35:05.61 ID:kTcy30rQ0
  
ξ゚听)ξ「う……」

(;´・ω・`)「うわっ! う、動いた!」

彼女はうめき声をあげ、しかし再び動かなくなる。

ξ゚听)ξ「うぅ……」

(´・ω・`)「生きてる……よね?」

もう一度、顔を覗き込む。
耳を近づけてみると、すうすうと呼吸をしているのが確認できた。

(;´・ω・`)「って、大変だ! おーい、君、大丈夫かーい!」

……





8: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:36:10.11 ID:kTcy30rQ0


砂浜に倒れている女の子を発見した後、僕は出航しようとしていたドクオに助けを要請した。
とりあえず、僕の家に連れて行き、応急処置(といっても、布団に寝かせるだけだが)をし、大急ぎで島の医者を呼んだ。

ξ--)ξ「……」

( ∵)「うーん、こりゃあまいったねー」

(´・ω・`)「どうなんですか? ビコーズさん」

vip島の数少ない医者であるビコーズさんは、首を捻る。

( ∵)「こりゃまいった。体が冷えてる事以外、全くの健康体だ」

(´・ω・`)「えぇ!? 海に打ち上げられていたのに!?」

( ∵)「まぁそう言う事だから。治療は必要ないよ。んじゃ診察代はつけとくよー。
    落ち着いたら払いに来てちょ」

そう言うと、ビコーズさんは白衣を翻して、帰ってしまった。
さり気なく診察代を要求するところは、相変わらずしっかりしている。



9: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:36:50.19 ID:kTcy30rQ0
 
('A`)「あれ? ビコーズさんは帰っちゃったのか?」

タオルを洗っていたドクオが、部屋に入ってくる。
ドクオは彼女の額に当てているタオルを取替え、僕の隣に座った。

(´・ω・`)「それが、どこも悪くないらしいんだ」

('A`)「えぇ? 嘘だろ?」

ドクオも、その診察結果に驚いた様子だ。

('A`)「行き倒れなのか、それとも砂浜で眠りこけてただけなのか……。
    いまいち状況がわからんな」



10: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:37:18.02 ID:kTcy30rQ0
 
(´・ω・`)「まあ、でも生きてて何よりだよ」

('A`)「うーん、まさか宇宙人……深海人とか……。
    足を手に入れた人魚ってのはどうだ?」

(;´・ω・`)「何それ。おとぎ話じゃないんだから」

ドクオはうーん、と顎に手を当てて、何やら考えている。

ξ゚听)ξ「う……ん」

(´・ω・`)「あ、起きた!」

('A`)「お?」

彼女は目を擦りながら、ゆっくりと上体を起こす。



11: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:37:37.53 ID:kTcy30rQ0
 
ξ゚听)ξ「うにゅー……」

妙な声をあげながら、ぐっと体を伸ばす。

ξ゚听)ξ「ぐぅー……」

そして、再び布団に体を預ける。

('A`)「おい、二度寝し始めたぞ」

(´・ω・`)「本当だ」

ξ--)ξ「くぅ」



13 名前: ◆zo9RB4gGxk 投稿日: 2008/04/07(月) 21:37:56.32 ID:Rh7QEvjE0
('A`)「昨日は荒れに荒れたな」

(´・ω・`)「うん。まだ時期じゃないのに、珍しく大荒れだったね。
      漁に悪い影響が出なければいいんだけど」

('A`)「なーに、心配すんなって。荒れた(´・ω・`)「さあて、漁に出かけるか」

朝日が昇る頃、僕は漁の準備をして家を出る。
今日の海の機嫌はどうかな? 快晴だから、昨日よりは穏やかかもしれないな。日の翌日の方が、珍物が獲れるかもな」

そう言いながら、ドクオは船に道具を乗せる。

ドクオは、この道10年のベテランだ。小さい頃から、人一倍海が好きだった。
小さい頃、よく素もぐりで魚を獲っては、僕に食べさせてくれたものだ。

('A`)「そう言えばよ……ブーンっていたじゃん?」



14: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:38:07.59 ID:kTcy30rQ0

(´・ω・`)「おーい、起きてー」

ξ゚听)ξ「んにゃ?」

軽く体を揺さぶると、再び彼女は目を覚ました。
そして、眠け眼で僕の顔を見る。

(´・ω・`)「おはよう。このお茶はサービスだから、まずはこれを飲んで落ち着いて欲しい」

ξ゚听)ξ「……?」

彼女は、ぽかん、と口を開けたまま僕を見つめる。
刺激しないよう、なるべく優しく語りかけたつもりだったのだけれど、大丈夫だろうか。



15 名前: ◆A6EwObiPYc 投稿日: 2008/04/07(月) 21:38:20.38 ID:Rh7QEvjE0
 
(´・ω・`)「まあ、でも生きてて何よりだよ」

('A`)「うーん、まさか宇宙人……深海人とか……。
    足を手に入れた人魚ってのはどうだ?」
('A`)「あれ? ビコーズさんは帰っちゃったのか?」

タオルを洗っていたドクオが、部屋に入ってくる。
(;´・ω・`)「何それ。おとぎ話じゃないんだから」

ドクオはうーん、と顎に手を当てて、何やら考えている。

ξ゚听)ξ「う……ん」

(´・ω・`)「あ、起きた!」

('A`)「お?」

彼女は目を擦りながら、ゆっくりと上体を起こす。



16: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:38:37.95 ID:kTcy30rQ0

('A`)「おい、もう体は大丈夫なのか? おじょうちゃん」

ξ゚听)ξ「……」

ドクオが、顔を覗かせる。
彼女の視線は、その声に反応し、ドクオへと向けられる。


しばしの沈黙。そして、

ξ゚听)ξ「キャ――――!!」

耳を貫く、甲高い悲鳴が、僕の家に木霊した。
思わず耳を塞ぐと、今度は脱兎の如く走り出し、部屋の柱に頭をぶつけた。



17: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:39:00.05 ID:kTcy30rQ0
 
ξ゚听)ξ「あうっ!」

(;´・ω・`)「ちょ、ちょっと、大丈夫? 落ち着いて、僕は怪しいものじゃない」

ξ゚听)ξ「う……」

彼女は、怯えた目つきで僕を見る。

(;'A`)「そ、そうそう。俺はドクオ! vip島一のナイスガイな漁師さ!」

ξ゚听)ξ「キャ――――!!」

(#'A`)「おい! なんで俺の顔を見て泣き叫ぶ!」



18: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:39:29.77 ID:kTcy30rQ0
 
それから数十分ほど、部屋の中で一悶着あり、ようやく彼女は落ち着きを取り戻したようだ。

(´・ω・`)「落ち着いたかい? まずは僕の名刺を見て欲しい」

僕は、いつだか業者さんに作ってもらった名刺を差し出す。
彼女はじっとそれを見つめ、再び僕の方を見る。

ξ゚听)ξ「しょぼん?」

(´・ω・`)「そう、僕の名前はショボンだ。君の名前は?」

名前を聞いてみると、彼女は消えそうなくらい小さな声で呟いた。

ξ゚听)ξ「ツン」



19: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:39:46.56 ID:kTcy30rQ0
 
(´・ω・`)「ツンちゃんか、なるほど。いい名前だね」

そう言うと、ツンの警戒心マックスの険しい顔が、少しだけ柔らかくなった。

('A`)「俺はドクオ。よろしくな」

ξ゚听)ξ「……変な名前」

(#'A`)「何ぃ!?」

ξ゚听)ξ「きゃあっ! キャ――!」

(;´・ω・`)「ドクオ、そんな気持ち悪……失礼、怖い顔したらダメだって!」



20: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:40:07.33 ID:kTcy30rQ0
 
('A`)「あ、ああ。悪い、大人気なかったな」

ξ゚听)ξ「うー……」

気を取り直し、質問を続ける。

(´・ω・`)「ツンちゃんはいくつなのかな?」

ξ゚听)ξ「八つ。もう大人なんだから、ちゃん付けはやめて」

とげとげした口調で、ツンはそう言った。

(´・ω・`)「ああ、ごめんごめん。それで、ツン……は、どこからきたの?」



21: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:40:44.88 ID:kTcy30rQ0

ξ゚听)ξ「とーきょー」

(;´・ω・`)「えぇ? 東京から!?」

('A`)「こりゃまた、遠くから来たもんだ」

日本の最果てにあるvip島から、東京までは相当な距離がある。
こんな小さな子が一人で来るとは考えがたい。

(´・ω・`)「君のご両親……お父さんやお母さんは、今どこにいるかわかる?」

ξ゚听)ξ「とーきょー」

('A`)「いや、そうじゃなくてよ。お前さんは、お母さん達と一緒にこの島に来てるんだろ?
    この島のどこにいるか、わかるか?」



22: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:41:01.78 ID:kTcy30rQ0
 
ξ゚听)ξ「だから、とーきょーだって言ってるでしょ。このタコおやじ」

(#'A`)「タコぉ!?」

(;´・ω・`)「お、おおお落ち着いて。子供の言う事だから、ね?」

うぎぎ、と歯軋りするドクオを押える。

(´・ω・`)「……どういう事か、僕達に分かりやすく教えてくれないかな?
      どうして、君はあの砂浜に倒れていたの?」

ξ゚听)ξ「ん? 別に倒れてたんじゃないよ。寝てたの。
     おかーさん達はとーきょーにいるよ。だって、船に乗って帰るとこみたもん」



23: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:41:16.63 ID:kTcy30rQ0
 
(;´・ω・`)「えぇ? じゃあ本当に、君のご両親は東京に?」

ξ゚听)ξ「うん」

僕とドクオは、思わず顔をあわせる。
八つの子供を残して、親だけ東京に帰る。俄かには考えがたい話だ。

('A`)「どういう事だ?」

(´・ω・`)「うーん、親戚の家に預けるつもりで、この子だけ途中で迷子になったとか?」

('A`)「ああ、可能性としてはソレが一番本命だな。おい、おじょうちゃん。
    お前さん、親戚の家に行く途中だったんじゃないか?」

ドクオがその事を聞いてみると、ツンは首を横に振った。



24: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:42:37.81 ID:kTcy30rQ0
 
ξ゚听)ξ「ううん。この島には、旅行できたの。
     でね、お父さんとお母さんが喧嘩して、家に帰るっていうから、こっそり抜け出したの。
     それでね、知らないおじさんに海に行きたいって言ったら、トラックに乗せてもらったの」

(;´・ω・`)「えええ!? じゃ、じゃあ君はものすんごい迷子じゃないか!
       スーパー迷子どころじゃない! ウルトラ迷子レベルだよ!」

普通、迷子といっても、八つくらいの子供であれば行動範囲は限られるだろう。
しかし、この子はどうやら事情が違うようだ。
海を渡った先に両親がいるとなると、ただの迷子どころではない。



25: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:43:51.64 ID:kTcy30rQ0
 
('A`)「おいおい、とんでもないおじょうちゃんだな」

ξ゚听)ξ「子供扱いしないでってば!」

('A`)「いて! こ、こら、人のスネを蹴るんじゃない!」

ツンは、その小さな足でドクオのスネを蹴飛ばす。
と、その時ぐぅ、という音がどこからともなく聞こえた。

ξ゚听)ξ「お腹空いた」

唐突に、ツンがそう呟いた。

(´・ω・`)「あらら。じゃあ、とりあえず一息ついてから色々話そうか。
      ちょっとまっててね」

僕は台所に行き、残っていたご飯でおにぎり作る。
シャケを入れた、自家製のおにぎりだ。
素早く手軽に作れるので、僕の朝飯は、いつもおにぎりである。



26: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:44:10.08 ID:kTcy30rQ0
 
(´・ω・`)「やあ、このおにぎりはサービスだから、遠慮しないで食べて欲しい」

盆に載せ、ツンの元へとおにぎりを運ぶ。

ξ゚听)ξ「いいにおいー。もぐっ……。うん、いい塩加減!
     おじさん、いい腕してるねー」

(;´・ω・`)「おじさんて……僕はまだ20代なんだけどな」

ツンは、おにぎりを頬張りながら、ぐっと親指を立てる。
よほどお腹が空いていたのか、三個もあったおにぎりをペロリと食べてしまった。

ξ゚听)ξ「ふー。まんぷく。シンプルな味付けで、けっこう美味しかったよ、おじさん」

(´・ω・`)「そうか。それはよかった」



27: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:44:24.88 ID:kTcy30rQ0

('A`)「で、ショボン。これからどうする?」

お盆を片しに台所へ行くと、ドクオがついてきた。

(´・ω・`)「そうだなぁ。とりあえず、観光だったら都心の船着場で迷子になったんだと思うから、
      とりあえず船着場に連絡してみるよ。あと、派出所のギコさんにも言っておこうと思う」

('A`)「それが一番だな。全く、とんだ珍客だぜ」

ξ゚听)ξ「ねー、ショボンー」

ふと、台所にツンがやってきた。

(´・ω・`)「どうしたんだい?」

ξ゚听)ξ「テレビのリモコンがないの。これじゃ、テレビアニメ見れないー」

(;´・ω・`)「ああ、うちのテレビは古いから、直接回さないとチャンネルが変わらないんだ」



29: ◆yPHuwKoaKE :2008/04/07(月) 21:45:44.36 ID:kTcy30rQ0
   
和室に戻り、テレビのチャンネルを回す。

(´・ω・`)「これかな?」

チャンネルを回すと、子供向けのアニメがやっていた。

ξ゚听)ξ「あ、これだー。あれ? でも、このお話見た事あるよ」

(´・ω・`)「地方だから、東京とは番組の進行が違うからかな……?」

ξ゚听)ξ「ふーん。何か変なのー」

('A`)「やれやれ、お守りは大変だな、ショボン」

ニヤニヤと笑いながら、ドクオがそう呟く。

ξ゚听)ξ「だから子供扱いするなー!」

(;'A`)「いてぇ! だからスネ蹴るなって!」

やれやれ、何だか嵐のような子がやってきたもんだ。
そう思いながら、僕は元気に動き回るツンを見つめていた。



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