('A`)ドクオが夢を紡ぐようです

3: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:05:02.96 ID:PISThagh0

踊るように風に舞う、軽い栗色の髪が欲しかった。
世界の全てを映し出すような、大きな瞳が欲しかった。
ハイヒールを履くのに躊躇しないでもいい、平均以下の身長が欲しかった。
楽しい時には頬を緩めて、寂しい時には顔を歪める、そんな器用さが欲しかった。

誰かに、シロツメクサの花冠をかぶせて貰える様な、愛らしさが欲しかった。


川 ゚ -゚) 「ここじゃないのか…?おい。杉浦」

( ФωФ)「はいお嬢様。間違いございません。確かにこのアパートの二階201号室かと…」

川 ゚ -゚) 「その情報は確かなのか?」

( ФωФ)「はい。我輩自ら調べましたので間違いはないかと…。
       しかし幾分最後に確認したのが2年ほど前になりますので、
       その間に引越した可能性も御座いますね」

川 ゚ -゚) 「それを早く言わんか。何故来る前に確認しない」

(;ФωФ)「や、だってそれはお嬢様が昨日突然訪問すると言い出されたのでそんな暇は…」

川 ゚ -゚) 「ふむ…。言われればそうだな。すまない」

(;ФωФ)「いえ…」



4: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:05:42.89 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「しかしこれは…。このアパートは彼どころか人っ子一人住んでないんじゃないのか?
      そもそも人の気配がまるでしないぞ?」

( ФωФ)「そうで御座いますね…」


私が踏み込んだその部屋はいくらかの家財道具が残ってはいたものも、
少なくともここ数ヶ月は人の出入りは全く感じられない荒れようだった。
部屋中にうっすらと積もった埃は家主の不在を象徴しており、天井の一部は剥がされ梁が剥き出しですらあった。

私は手近にあった箪笥の引き出しを開ける。
後ろで杉浦が情けない声を上げたような気がしたが気にせず引き出しの中を漁る。
そこには、ところどころ虫に食われた色褪せた服が数着あっただけだった。
他にも置いてあった戸棚の中を確認したり、
押入れの中身をひっくり返したりしてみたが、
この部屋には彼の手がかりになりそうなものは何もなかった。



5: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:06:34.61 ID:PISThagh0
(;ФωФ)「ああ、お嬢様そんな勝手に…」

川 ゚ -゚) 「目ぼしい物は何もないな…」

(;ФωФ)「お願いですからそんな盗人のような事を仰らないで下さい…。
       だから鍵を使うの嫌だったのですよ」

川 ゚ -゚) 「ふん。他人の家の鍵を所持しておいてどちらが盗人だ」

(;ФωФ)「それは…。お嬢様が昔、彼の行方を調べさせた時点で、
       いつかは必要になるかもしれないと思いましたので…」

川 ゚ -゚) 「ほら、今必要になってるじゃないか。
      安心しろ。お前は有能だ」

(;ФωФ)「お嬢様…」

川 ゚ -゚) 「ふむ…。ここに私が求めるものは何もないようだな。
      行くぞ杉浦。周辺住民に聞き込みだ」



10: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:09:18.29 ID:PISThagh0

(;ФωФ)「は?聞き込み?」

川 ゚ -゚) 「ああ。彼の行方を追わねばなるまい。
     幸いにも小さなアパートだから一軒一軒尋ねてもそう時間はかからないだろう」

(;ФωФ)「お嬢様がですか!?そんな危険な真似を!?」

川 ゚ -゚) 「危険危険て。杉浦。私は小さな子どもじゃないのだから自分の安全くらい自分で守れる。
      ほら。早く行くぞ。ここは埃っぽくて不快だからな」

(;ФωФ)「ちょっ…!待って下さいお嬢様…」


なにやら文句を垂れている杉浦を無視して私は部屋を出る。
ざっと見たところ二階建ての、この小さなアパートには部屋は10もないようだった。


川 ゚ -゚) 「とりあえず隣の部屋から聞き込みを始めるか。降りるぞ。杉浦。」

(;ФωФ)「聞き込みなら我輩がやりますから、どうかお嬢様はホテルに戻られて下さい!」

川 ゚ -゚)「お前こそホテルに戻ったらどうだ杉浦。私は確かにお前に彼の居場所を聞きはしたが、
     別に東京までついて来いとは一言も言ってないぞ。
     大体お前いくらうちに住み込みで働いてると言っても休暇中だろう?
     ホテル代と食事代くらいは出してやれるが休日手当ては出さんぞ?」



12: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:10:14.21 ID:PISThagh0

(;ФωФ)「だってお嬢様一人でこんな長距離出歩かれた事ないじゃないですか!
       旦那様が知られたら何と仰られるか…」

川 ゚ -゚) 「父は関係ない。そもそも私を何歳だと思ってる?四捨五入したらもう30だぞ?
     いくら未婚だからと言って父もお前も私を心配し過ぎるのだ。全く…」

(;ФωФ)「だって…お嬢様、我輩がいないと買い物も満足に出来ないじゃないですか…」

川 ゚ -゚) 「買い物くらい出来るさ。この前だって白桃ゼリーとアポロを買って食べたぞ」

(;ФωФ)「お嬢様いつも万札出してお釣り貰うの忘れて帰ってくるじゃないですか。
       毎回毎回念のため我輩がコンビニに確認に行ってるんですよ?
       可哀想にコンビニ店員、ネコババしときゃいいのにレジで真っ青になってたんですから…」

川 ゚ -゚) 「む…」

( ФωФ)「ホテルの手配だって結局は我輩がやりましたし…。
       思い付きで旅行されるのは結構ですが、危ない事はしないで頂きたいものですね」

川 ゚ -゚) 「杉浦」

( ФωФ)「はい?」

川 ゚ -゚) 「お前、屋敷に帰れ。あとは私一人でやる」

( ФωФ)「無理です」

川 ゚ -゚) 「無理じゃない。一人で出来る!」



13: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:11:05.87 ID:PISThagh0

( ФωФ)「いえ。我輩がお嬢様を一人残すのが無理です。
       さ、聞き込みされるのでしょう?
       我輩がやりますからお嬢様は後ろで見てて下さいね」

川#゚ -゚) 「………っけ」

( ФωФ)「またそのような子どもっぽい事を仰って…」

杉浦は曖昧に微笑んだあと、彼の隣の部屋、202号室のチャイムを押した。
私は無理やり杉浦と扉の前に割り込む。
後ろで見ててたまるか。

(;ФωФ)「あぁ…」

しかし住人が不在なのか、はたまた誰も入居してないのか、
チャイム連打も虚しく反応はゼロだった。
後ろで杉浦がはしたないだの教養が感じられないだの文句を言うが無視を決める。

(;ФωФ)「いらっしゃらないようですね」

川 ゚ -゚) 「次だ。次」

こうして次々とチャイム連打を重ねて行ったがどこも反応はまるでなかった。
ついに二階の反対側の角部屋まで到達する。

川 ゚ -゚) 「二階はここで最後だな」

( ФωФ)「そうで御座いますね」



15: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:11:47.61 ID:PISThagh0

しかし、その部屋はドアにイノシシが力の限り突進したような跡が残っており、どことなく荒んだ空気がただよっている。
とても人が住んでいるようには思えなかった。

川 ゚ -゚) 「まぁ、一応。一応な」

もう若干指が痛くなっているが私はチャイムを連打する。
うん。こんなに立派にチャイムを連打するなんて、私社会に溶け込んでるな。
杉浦もチャイムを連打するたびに今まではブツブツと文句を言っていたが、
今回は何も言わなかった。きっと、文句を言う事に疲れたのか、住人などいないと思っているのだろう。
そして、連打が段々と337拍子のリズムになって来たあたりで、

内側から扉が開いた。

('A`)「あの、俺、実は熱心なゾロアスター教の信者で自分はザラスシュトラの生まれ変わりだと信じてるので、
    宗教の勧誘なら…」

川;゚ -゚) 「う、うわぁああああああああああああああ!!」

(;ФωФ)「に゛ゃぁあああああああああああああああ!!」

(;'A`)「は?え?何!?」



17: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:13:00.41 ID:PISThagh0

川;゚ -゚) 「ひ、人だ!人がいたぞ杉浦!どうなっている!」

(;ФωФ)「お嬢様とりあえず我輩の後ろに隠れてください!危険人物やもしれませぬ!」

(;'A`)「mjd!?危険人物どこですか!?そこの美人なお嬢さんとりあえず中へ!」

( ФωФ)「なりません!地雷も確認せずに踏み込むなど!我輩が行きます!!」

川 ゚ -゚) 「よし!では先頭は任せた杉浦!靴は脱げよ!」

(;'A`)「あ、汚いところですけどどうぞ!」

(;ФωФ)「いえいえこちらこそ土産も用意せずに申し訳ない」

(;'A`)「いやそんなお気になさらず!あ、でもちょっと待って下さい!
     オナカップとかエロ本とか隠して来ますんで!」

男はそう言うとバタバタと部屋の中に戻って行った。



18: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:14:22.37 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「杉浦!オナカップって何だ!?」

( ФωФ)「お稲荷さん簡単製造カップの略で御座いますよお嬢様。
       一般家庭に広く普及しております」

川 ゚ -゚) 「何故隠す必要があるのだ」

( ФωФ)「昔から稲荷神社にあやかって、神聖なお稲荷さんを作る姿やその道具は
       人に見せないのが慣わしなので御座います」

川 ゚ -゚) 「ふぅん…稲荷寿司にそんな事情があったとは」

(;'A`)「お待たせしました!どうぞ!」

( ФωФ)「ではお邪魔させて頂きます。お嬢様、玄関がとんでもなく狭いですが驚かないように。
       それと男性の一人暮らしの部屋は往々にして変な匂いがする事が御座いますが、
       どうしても我慢出来ないようでしたら、そうっと退室して下さって結構ですよ」

川 ゚ -゚) 「わかった。大丈夫だ。変な匂いってロマネスクの部屋のみたいなアレか?」

(;ФωФ)「アレって何ですかアレって!わ、我輩の部屋は消臭剤もファブリーズもばっちりですよお嬢様!!」

('A`)「俺の部屋も変な匂いしませんよ!極めてフローラルです!!フローラル!」

(;ФωФ)「我輩の部屋だって漂う塩素の香りですよ!ほら!清潔清潔!」



21: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:16:35.93 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「お邪魔するぞ。む?玄関はどこだ…?」

('A`)「あぁああ!そこ廊下です!!玄関過ぎてますよお嬢さん!!」

(;ФωФ)「ほらぁ!だから玄関狭いって言ったじゃないですか!
       我輩絶対やると思ったんですからお嬢様!!」

('A`)「はい!そこで脱ぐんです靴!!そうです!そのとおりです!よく出来ました流石お嬢さんです!!」

( ФωФ)「そこの家主!早くスリッパを用意するのだ!まさかお嬢様にこのような汚い床を靴下で歩かせるつもりか!?」

(;'A`)「すすす、スリッパ…えっと…お、俺今すぐ新しい靴下買ってくるので帰る時に履き替えて下さいお嬢さん!
    ついでに履き替えた古い靴下は俺に下さい!!是非とも譲って下さい!
    あ、それとも俺がおみ足をお舐め致しましょうか!?誠心誠意舐めさせて頂きますが!」

川 ゚ -゚) 「いや、大丈夫だ。先ほどは悪かったな。土足で上がってしまって…。出来れば案内して欲しいのだが…駄目か?」

(;'A`)「滅相もございません!そのまま奥にお進み下さい!!コタツがありますので適当にくつろいで下さいませ!」

( ФωФ)「では我輩もお邪魔させて頂きます」

その部屋は先ほどの彼の部屋よりも数段狭かった。
間取りは同じはずなのだが部屋中に物が広がっており、どうにも雑然とした印象を受ける。
しかし、見慣れない珍しい小物が多く飾られており私には新鮮に感じられた。
とりあえずコタツに座ると後から入ってきた杉浦が私の斜め後ろ。そして家主が私の向かいに腰を下ろした。



24: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:19:38.73 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「突然訪問して悪かったな」

('A`)「いえいえ。お嬢さんみたいな綺麗な方なら大歓迎ですよ。
    最近は宗教の勧誘も可愛い女の子はまともに来てくれなくて…」

川 ゚ -゚) 「宗教の勧誘…?私の家にはそんなもの一度も来た事がないぞ…?
      本当に存在するのかそんなもの」

( ФωФ)「お嬢様、宗教の勧誘は古くから存在しております。
       日本ではフランシスコ・ザビエルなどがメジャーですね」

川 ゚ -゚) 「なるほど。家にザビエルが来るのか。それは怖いな」

(;'A`)「あの…それで…何しにうちにいらっしゃったんですか?」

川 ゚ -゚) 「おおそうだ。忘れるところだった。えぇと…」

( ФωФ)「このような場合は自己紹介からするものですよお嬢様」

川 ゚ -゚) 「ああなるほど。家主。私の名前はクーと言う。
      後ろに居るのは杉浦。うちの使用人だ。
      今日は探し人をしていてな。何か手がかりがないかと思って尋ねたのだ」

('A`)「あ、俺はドクオと申します。
    黒髪ロングストレートとかど真ん中です。
    すげぇ可愛いんでちょっとツインテールにしてみませんか?」

川 ゚ -゚) 「は?ツインテール」



27: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:21:12.47 ID:PISThagh0

('A`)「何でも御座いません申し訳御座いませんクー様」

川 ゚ -゚) 「ふむ…?それでお前、早速だが内藤ホライゾンと言う男を知らないか?
      少なくとも二年前まではここのアパートに住んでいた筈なんだが」

('A`)「内藤…ホライゾン…」

川 ゚ -゚) 「うむ。どうやら部屋を引き払っていたようでな。
      どこに行ったのか同じアパートの住人なら聞いていないかと思って」

( ФωФ)「…何かご存知ですか?」

('A`)「…ええ」

川 ゚ -゚) 「何!?奴が今どこに居るのかわかるか!?」

( ФωФ)「お嬢様…少し落ち着かれて下さい」

('A`)「ブーン…いえ、内藤ホライゾンさんは現在、残念ながら…」

川 ゚ -゚) 「え?」

残念ながら?
何が残念なのだ?
行方を知らない事がか?

( ФωФ)「………」



31: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:22:11.62 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「なぁ、すまない。ちょっと…聞こえなくて…もう一度…」

ドクオは困惑したような顔で私を見た。

('A`)「ですので、内藤ホライゾンさんは…」

え?

何だ?

やっぱり聞こえないんだ。
もう一度言ってくれ。
杉浦?杉浦は聞こえたか?
もしお前に聞こえていたのなら、
私にわかりやすく説明してくれないか?

よく、聞こえないんだ。



34: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:22:51.10 ID:PISThagh0


( ФωФ)「−−−」

('A`)「−−−」

杉浦。だから、説明してくれてと…。
お願いだ。私を抜いて話を進めないでくれないか?
私もいるんだ。
私も。

なぁ。

なぁ!


( ФωФ)「お嬢様、大丈夫で御座いますか?」


川 ;゚ -゚)「え…?杉浦…なぁ、説明してくれないか?
      どういう事だか…ちょっと…わからなくて…」

( ФωФ)「お嬢様。大丈夫で御座いますか?」

川 ;゚ -゚)「大丈夫…大丈夫だ…ただ、なぁ、ちょっと、よく聞こえなくて…」

( ФωФ)「はい。大丈夫で御座いますよお嬢様。
       時間はたっぷり御座いますから。
       今日はとりあえず、もうホテルに戻りましょう?
       我輩、タクシー呼びますから」



37: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:23:38.56 ID:PISThagh0

('A`)「だだだ、大丈夫ですかクー様。顔、真っ青ですけど…。
    何か飲みますか?そう言えば俺飲み物も何も出さずに…」

( ФωФ)「助かります。何か冷たい飲み物を頂けますか?
       我輩、タクシーを呼んで参ります故」

('A`)「あ、はい。ちょっと待ってて下さい。
    確かミネラルウォーターが残ってた筈…」

川;゚ -゚)「いや、気遣いは無用だ…。おい!杉浦!行くぞ!」

( ФωФ)「お嬢様。もう少し休まれて下さい」

川;゚ -゚) 「いい…ホテルに戻る…」

( ФωФ)「どちらにしろタクシーが来るまで間があります。
       それとも外の空気を吸われますか?」

川;゚ -゚) 「ああ、ああ、そうさせて貰う」

('A`)「あぁ、すいません。俺何の気遣いも出来ませんで…」

( ФωФ)「いえいえ。こちらこそ貴重な情報を有難う御座いました。
       もし他にも詳しい事をご存知でしたら、こちらまでご連絡頂けると助かります」

そう言うと杉浦はドクオに名刺を渡した。
ドクオが慣れない手つきでそれを受け取る。



39: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:24:40.20 ID:PISThagh0

('A`)「あの…」

( ФωФ)「はい?」

('A`)「ちっちゃくて…こう、髪がくるくるした…ツンさん…?て、方、ご存知ですか?」

川;゚ -゚)「…っ!?」

( ФωФ)「…その情報は内藤さんからお聞きに?」

(;'A`)「あ、ああ、はい。そうです。以前に聞いた事があって…。
     それで、彼女は、元気ですか?俺も気になってて…」

( ФωФ)「そうですか。お気遣いありがとうございます。
       ツン様はクー様の妹に当たられる方です。
       使用人であった内藤さんとは仲が良くてあられました。
       現在もお元気でいらっしゃいますよ」

('A`)「そうですか…。それなら…良かった」

( ФωФ)「ええ。それでは我々はこれで失礼させて頂きます。
       本当にありがとうございましたドクオさん
       お嬢様、行きましょう?立てますか?」

川;゚ -゚)「あ、あぁ…大丈夫だ…」

私はコタツに手をついて立ち上がる。
しっかりと立ち上がったつもりだったのだが、
気がついたら杉浦に支えられていた。



41: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:25:21.29 ID:PISThagh0

( ФωФ)「行きましょう?お嬢様」

川;゚ -゚) 「あぁ…」

('A`)「お気をつけてクー様。あ、ロマネスクさんも」

川;゚ -゚) 「面倒をかけたな…」

(;'A`)「いえっ滅相も御座いません!」

( ФωФ)「それでは」




それから、どうやってホテルまで行ったのかはよく覚えていない。




杉浦が手配したホテルは二部屋からなる洋室だった。
部屋全体は落ち着いた色でまとまっていたが、
普段、純和風の家に住む私には少し落ち着かなかった。

( ФωФ)「手狭ですが我慢されて下さいね。
       スイートだとセキュリティが厳しいので別室の我輩が邪魔出来ないんですよ。
       ご気分はどうですか?お嬢様。顔色は少しマシになったようですが…」

洋服のままでベッドに寝転がる私に杉浦が声をかける。



43: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:26:11.31 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「大丈夫だ…。大丈夫…」

( ФωФ)「それは良かった。何か飲みたいものは御座いますか?
       ルームサービスを取りましょう。
       出来れば何か食べて下さると安心なのですが…。
       お嬢様、昼食も召し上がっていないんですから。」

川 ゚ -゚) 「ああ…。私は水でいい…。お前は…何か食べろ。
      空腹だろうに…」

( ФωФ)「いえ。我輩は大丈夫です。
       水、持って参りますね」

杉浦は私に背を向け水を取りに行った。
どうして私はこんなところで水など欲しているのだろう。
水なんかより、ずっとずっと大切な用事があるのに…。

( ФωФ)「お嬢様、ほら、少し起き上がって下さい。水ですよ」

私は言われるまま起き上がり水を受け取った。
一口飲み干すと私の体内に涼やかな風が吹いた。

川 ゚ -゚) 「あぁ…ありがとう…」

( ФωФ)「今日はもう休まれて下さいねお嬢様。
       我輩。お嬢様が休まれるまでついていますから」

川 ゚ -゚) 「杉浦…。なぁ、私、今日、ドクオの言う事がよく…聞こえなかったんだ…」



46: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:29:22.92 ID:PISThagh0

( ФωФ)「はい。大丈夫ですよお嬢様。我輩が聞いておりましたから」

川 ゚ -゚) 「そうか。ありがとう。なぁ、内藤は?内藤は何処に行ったんだ?
      あそこにいないのなら…また探さねばなるまい…」

( ФωФ)「お嬢様。内藤ホライゾンは亡くなられておりました」

川 ゚ -゚) 「え?」

杉浦?お前、今何を言った?

( ФωФ)「内藤ホライゾンは亡くなりました。もう何処にもおりません」

内藤ホライゾンは、もう何処にも いない? 
いないって何だ?
どういう意味だ?

あれ?

川 ゚ -゚) 「…それは、つまり、内藤は、ツンと結婚をしにうちに戻ってくる事は、ないと言う事か?」

( ФωФ)「そうなりますね」

川 ゚ -゚) 「…彼は…若く…健康だったはずだ…。何故、いなくなる?事故か?病気か…?」



50: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:30:27.31 ID:PISThagh0

( ФωФ)「ドクオさんもそこまではご存知ないそうです。
       ただ、死亡した場所が病院ではなかったため、
       警察がドクオさんの家にも事情聴取に訪ねられて、
       そこで初めて知ったのだと仰っておりました」

川 ゚ -゚) 「そう…そうか…」

( ФωФ)「はい。我輩がわかっているのはここまでです。お嬢様」

川 ゚ -゚) 「杉浦…頼まれてくれるか…?」

( ФωФ)「はい。詳しい事情で御座いますね。わかりました」

川;゚ -゚) 「頼…む。私は、これでは、あの子に…。ツンに、何て言っていいか…」

( ФωФ)「ツン様には我輩から説明致しましょうか?」

川 ゚ -゚) 「いや…いい…。私の役目だ…。私の…」

( ФωФ)「お嬢様。泣いておられますよ?」

川 ゚ -゚) 「え!?」

慌てて目元に手を当て確かめると、確かに液体が指に触れた。

川 ゚ -゚) 「そうか…私…泣いているのか…。久しぶりだな…」

( ФωФ)「お嬢様。我輩、やっぱり昼飯を食べて参ります故、
       一時間ほど外出して参ります。」



53: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:31:40.29 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「…ああ。気をつけろよ」

( ФωФ)「お嬢様も何かありましたらすぐ連絡を。
       外出は我輩が戻るまで、我慢して下さいね」

川 ゚ -゚) 「わかった」

( ФωФ)「行って参ります」

川 ゚ -゚) 「ああ」

( ФωФ)「お嬢様」

川 ゚ -゚) 「何だ?」

( ФωФ)「きっちり一時間で戻ります」

川 ゚ -゚) 「…わかった」




3600秒。
それが杉浦が私に与えた時間だ。

その間に、私は、

もっと上手に泣かなければならないのだろう。



54: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:32:24.79 ID:PISThagh0

考えよう。
今日、私が失ったもの。
内藤。
内藤ホライゾン。
ブーン。
あのにやけ顔。
妙な喋り方。
妙に不味いお茶。
だらしない体型。

大事な大事な私の妹の、
幸せな、花婿。

川 ゚ -゚) 「…ツンに、何て言おうか…」

もし、親が認めないのなら、駆け落ちだってさせるつもりだった。
時間が無かったのだ。
モナー君とツンとの結婚の準備はこれから着々と進んで行くのだろう。
三ヵ月後には結納。来春には結婚だと聞いた。
だから一刻でも早く連れ帰って、籍を入れさせるつもりだった。

例え無理やりにでも。

幸せに、なって欲しかった。
大事な大事な、私の、
たった一人の、妹なのだから。

川 ゚ -゚) 「………」



56: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:33:04.61 ID:PISThagh0



偽善者め。



私は頭まで布団を被る。
暗闇に隠して貰おう。
後ろめたい時はいつだって、
闇の手に抱いて貰うのだ。

内藤。

恨むぞ。

勝手に死にくさりおって。

お前には、何としてもツンと結婚して貰う必要があったのだ。



他でもない、私のために。



58: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:33:39.40 ID:PISThagh0


3600秒。

そんなにたくさんの時間はいらない。
私が失った、
私の幸せのために、
私が泣く必要はない。

川 ゚ -゚) 「内藤…」

内藤ホライゾン。

恨ませろ。



( ФωФ)「お嬢様。ただいま戻りました」

本当に杉浦は3600秒で戻ってきた。
馬鹿な奴だと思う。

川 ゚ -゚) 「おかえり。きちんと食べたか?」

( ФωФ)「はい。おかげさまで。お嬢様は食欲は?」



60: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:34:46.44 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「いや…気分は良くなったが食欲は沸かないな」

( ФωФ)「そうですか…。何かさっぱりした物だったら食べられそうですか?
       我輩、買ってまいりますよ?ゼリーとかプリンとか桃缶とか」

川 ゚ -゚) 「全く…風邪を引いた子どもじゃないんだから…。
     心配をかけてすまないな」

( ФωФ)「いえ。心配をするのが我輩の仕事ですから」

川 ゚ -゚) 「それは随分割に合わん仕事だな…」

( ФωФ)「相応の代価は頂いておりますよ。
       さて、お嬢様とりあえず今日は泊まるとして、
       明日にはお屋敷に戻られましょうね?」

川 ゚ -゚) 「いや、残る」

(;ФωФ)「そう言うと思いましたよ…。
       内藤の詳細なら我輩が調べますから、お嬢様は戻られて下さい」

川 ゚ -゚) 「東京でやり残した事があるんだ」



62: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:35:37.46 ID:PISThagh0

( ФωФ)「観光ですか?」

川 ゚ -゚) 「そうだ。観光だ」

(;ФωФ)「は!?冗談でしょう!?」

川 ゚ -゚) 「いや、明日はねずみーらんどに行こう」

(;ФωФ)「はぁ…」

川 ゚ -゚) 「ふん。相変わらず反応の面白くない奴だな。冗談だ。
      明日は新都(にいと)大学に行く」

(;ФωФ)「えぇ!?」

川 ゚ -゚) 「妹の婚約者に会いに行こう」

(;ФωФ)「モナー様にで御座いますか?」

川 ゚ -゚) 「あぁ、今日中に電話でアポを取っておいてくれ。
      こちらから出向く。時間は30分程度で十分だ。
      何。相手は社会人ではないんだ。どうにかなるだろう」

( ФωФ)「はぁ…わかりました」

川 ゚ -゚) 「よし、今日はもう休む。お前も部屋に戻っていいぞ杉浦」

( ФωФ)「…いえ。我輩はもう少しここに」



66: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:36:33.00 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「何だ?何かあるのか?」

( ФωФ)「お嬢様が寝つかれるまで、ここにおります」

川 ゚ -゚) 「馬鹿か。まだ夕方だぞ。お前はいつまでこの部屋にいるつもりだ」

(;ФωФ)「え…えっと…」

川 ゚ -゚) 「いいから早く部屋に戻ってモナー君に連絡を取っておいてくれ。
      私はもう少し一人になりたいんだ」

( ФωФ)「新都大学へはタクシーを手配してよろしいですか?」

川 ゚ -゚) 「いや、電車で行く」

( ФωФ)「わかりました。そのように」

川 ゚ -゚) 「お前は少しお洒落をしろよ。折角のデートなんだからな」

(;ФωФ)「我輩はそのような服は持ち合わせておりません…」

川 ゚ -゚) 「仕方ないな…。では私の服を貸してやろう」

(;ФωФ)「サイズが合いませんお嬢様…」



68: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:37:17.03 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「冗談だ。それじゃあ、一人にしてくれ」

(;ФωФ)「………」

杉浦は困ったような顔をして、その場から動こうとはしなかった。
その愚直な態度に私は少しの苛立ちといくらかの安堵を感じる。

川 ゚ -゚) 「わかった…。じゃあ、せめて座ってくれ。
      私は休むぞ。うるさくするなよ」

( ФωФ)「はい。そのように」

そう言うと杉浦は馬鹿正直にその場に正座した。

川 ゚ -゚) 「…ソファに座れよ」

( ФωФ)「いえ。ここで」

川 ゚ -゚) 「…馬鹿が」

( ФωФ)「馬鹿では御座いません。
       モナー様への連絡は
       今日中に終わらせておきます故」

川 ゚ -゚) 「私は思うんだ。
      お前が居るから私はいつまで経っても世間知らずと呼ばれるのではないのか?」

( ФωФ)「いいえ。お嬢様が世間知らずなのは、
       お嬢様が世間に興味がない故で御座います」



70: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:38:14.27 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「人を世捨て人のように言ってくれるな」

( ФωФ)「はい。いっそ世なぞ捨ててしまえばよいのです。お嬢様」

川 ゚ -゚) 「ふん。私に出家でもいろと?」

( ФωФ)「いいえ。お嬢様はもっとご自分の世界に生きられて下さい」

川 ゚ -゚) 「芸術家のような事を言うんだな」

( ФωФ)「お嬢様」

川 ゚ -゚)「何だ?」

( ФωФ)「例え悲しみ方が分からなくても、悲しんでいない事にはなりません。
       お嬢様は自分が冷酷な人間だとでも思われているのですか?」

川 ゚ -゚) 「………」

( ФωФ)「我輩。一時間をとても後悔しています。
       あれ以上、泣けなかったのですね。お嬢様」

杉浦が立ち上がって私を見つめた。
それはいつもの困った顔だった。



72: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:38:46.01 ID:PISThagh0

( ФωФ)「やはり我輩。用事を済ませに行って参ります。」

川 ゚ -゚) 「ああ。頼む」

( ФωФ)「仰せのままに」

そして杉浦は部屋を出て行った。
私は布団を堅く握り締めていた事に気がついて、
その汗ばんだ手をじっと見つめる。

杉浦はまた、3600秒で戻ってくるのだろうか。
いや、そもそも戻ってくるのだろうか。

もちろん、待っているわけではない。
耳の中に静寂がヌルヌルと侵入してきて
私の脳を圧迫しているような気がした。

いつかこの静寂に潰されて、
私は心ごとぺしゃんになってしまうのだろう。

目を瞑る。

誰だって、暗闇をこんなに近くに飼い慣らしているのに、
どうしてそれを恐れる事が出来る?

静寂の方が恐ろしいに決まっているじゃないか。



76: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:40:03.17 ID:PISThagh0





川 ゚ -゚) 「…む」

そこは、シロツメクサの花が一面に広がる野原だった。

川 ゚ -゚) 「…安っぽい花畑だな」

私はつま先でその白い花をつつきながら悪態を吐く。
しかし、耳を澄ますと心地よい風の音が聞こえ、
それは私の髪の毛を揺らして走り去っていく。

川 ゚ -゚) 「…悪くないな」

('A`)「クー様!」

突然の呼びかけに驚いて振り向くと、
そこには貧相な男が一人、立っていた。
その手には何故かシロツメクサの花冠が握られている。

川 ゚ -゚) 「…えーと」

誰だ。こいつ…。
絶対に見た事あるんだが…。

('A`)「ドクオです!クー様、今日我が家にいらっしゃったじゃないですか!」



78: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:40:40.59 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「ああ、そうだ。ドクオだドクオ。どうした?」

('A`)「クー様好きです!」

川 ゚ -゚) 「そうか。頑張れ」

('A`)「はい!それで、クー様にこれを!」

ドクオはそう言って私にシロツメクサの花冠を差し出す。
何をしているのだこいつは?

川 ゚ -゚) 「それは?」

('A`)「カンムリです!」

川 ゚ -゚) 「それで?」

('A`)「クー様は、これが欲しくてここにいらっしゃってるんですよ?」

川 ゚ -゚) 「は?どういう事だ?」

('A`)「恐れながら。クー様。ここが何処だかわかりますか?」

川 ゚ -゚) 「花畑。」

('A`)「いいえ。ここは夢の中です」

川 ゚ -゚) 「夢?」



79: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:41:26.05 ID:PISThagh0

あたりを見渡す。
咲き誇るシロツメクサ。
それを引き立てる鮮やかな緑。

川 ゚ -゚) 「違う。ここは夢ではない。野原だろう?」

('A`)「クー様…」

次の瞬間。
そこは殺風景な古ぼけた狭い部屋の中だった。

川 ゚ -゚) 「ここは…?」

('A`)「わかりませんか?」

川 ゚ -゚) 「いや…」

そこは、今日訪れた内藤が住んでいたというアパートの一室だった。

('A`)「クー様。これは夢です」

川 ゚ -゚) 「なるほど。おかしな夢だな」

('A`)「俺が、作りました。この夢は、俺の意思で動いています」

川 ゚ -゚) 「お前の?」

('A`)「だから、俺は、クー様が、何を望むか、知っています」



81: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:42:07.89 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「それが、その花カンムリか?」

('A`)「はい。でも、駄目でした。やっぱり、クー様は彼からこれが欲しいんですね?」

川 ゚ -゚) 「彼?」

('A`)「教えてあげません。そして会わせてもあげません。
    俺は、初めて俺のために夢を作ります。
    クー様好きです。そしてどうか目覚めるまでこの虚ろな夢を楽しんで下さい」

川 ;゚ -゚) 「おい!」

私の質問に答えぬまま、ドクオはその場から、文字通り消えてしまった。
取り残された私はその場に立ち尽くす。
足元を見ると土足だった。また、杉浦に怒られるかもしれない。

川 ゚ -゚) 「なんなんだ。一体…」

ドクオの言葉を思い出す。
「彼」。
ドクオは彼に会わせない、と言った。
会わせない。つまり、ここでドクオが望めば会うことが出来るという前提条件があるわけだ。
こことは?この夢の中?つまり、この夢の中にドクオと、私と、その彼は少なくとも存在している事になる。

川 ゚ー゚) 「…ふふ」



83: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:42:46.37 ID:PISThagh0

何を真面目に考えているのだ。馬鹿馬鹿しい。
所詮は、夢じゃないか。

私は踏み出す。とりあえずこの陰気な部屋から外に出て、夢の中を探索しよう。
もしかしたら、くだんの彼とも運良く接触出来るかもしれない。

川 ゚ -゚) 「これは…」

扉を開く。そこは、シロツメクサの花畑だった。

川 ゚ -゚) 「戻ったな…」

だが今度はドクオはいない。見渡す限り誰もいない。
確かに花畑は綺麗だが、探索しようにもこれでは面白みがない。
見渡す限りに人がいないんだったら、探しようもない。

川 ゚ -゚) 「つまらんなぁ…」

後ろを振り向く。いつの間にか出てきた筈の内藤の部屋はなくなっていた。

風が吹いてシロツメクサの波が走る。
心地よい葉摺れの音。緑の匂い。

川 ゚ -゚) 「東京に来ているのになぁ」

これではまるで自宅の近くの野っ原だ。
私はつくづく家から離れ難いらしい。因果な事だ。



85: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:45:37.79 ID:PISThagh0

その場に座る。一瞬、服が汚れるのが気になったが、どうせ夢だ。構いやしない。
目線がいくらか低くなったが、何も変わらない。
戯れにシロツメクサの花を一本、摘み取る。
そう言えばあのドクオのカンムリもこうやって一本一本摘み取って作ったのだろうか。
私は、二本三本とどんどん花を摘み取って行く。
その懐かしい感触に思わず、

思わず、昔の事を思い出した。

あの時も、こんな花畑で、遊んでいたんだ。
私と、ツンと、無理やりくっついて来た杉浦と、ツンに連れられてきた内藤と、
そして、たまたまうちに遊びに来ていたモナー君。



86: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:46:04.86 ID:PISThagh0

「お嬢様ー!走ると転びますよー!」

「お前だって走ってるじゃないか」

「ツン様!ツン様!お花のカンムリ作るお!!かぶせてあげるお!!」

「モナもカンムリ作るモナー!」

「じゃあ、私はブーンのおちんちん作るー!」

「ツン様!?」

「お前は作らんのか」

「我輩は作らなくてもついてます故」

「そうか…」

………。

冷静に考えるとロクな思い出じゃないな。
思い出した。あの後ツンが内藤の下半身を丸出しにして花畑を駆けずり回ったんだ。



88: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:47:08.93 ID:PISThagh0

「ツン様ー!ツン様ー!パンツ返しておー」

「駄目ー!私の作ったおちんちん入れるんだからー!」

「おーん!おーん!」

「出来たモナー!早速被るモナー!」

「お嬢様!虫を無差別に殺しちゃいけません!」

「無差別じゃない。殺したい虫を殺してるんだ。」

「お嬢様ー!」

「おーんおーん!!ブーンのパンツー!!」



なんだか、考えれば考える程地獄絵図じゃないか。



川 ゚ -゚) 「ん…」



92: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:48:59.27 ID:PISThagh0

体が急に重くなった。
酷い喉の乾きを感じる。
薄暗い。おぼろげに見える見覚えの無い天井。
いや、違う。知っている。

そうだ。ホテルだった…。

カーテンの隙間から光が差し込んでこないところを見ると夜になったらしい。

川 ゚ -゚) 「何時だ…」

枕元の時計を確認する。
夜と言うよりは、早朝と言った方が差し支えの無い時刻だった。

川 ゚ -゚) 「あれから何時間寝たのだ…」

そう言えば杉浦はモナー君に連絡をとってくれただろうか。
今日は彼に会いに行くんだ。きちんと、しなくては。
ああ、それにしても腹が減ったなぁ…。
あとで杉浦に頼んで何かさっぱりしたものを買って来て貰おう。

『…ね!死ね!』



94: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:50:13.29 ID:PISThagh0

その時。女の声が聞こえた。

『跪いて無様に死ね!足を舐めろ!どうした!そんな事も出来んのか負け犬!!』

『はははははは!!!醜いな!醜い姿だな!よくそんな姿で存在出来るな!よぉし私が殺してやろう!死ねぇ!』

なんだ?
私はベッドから飛び出す。声は向こうの部屋から聞こえた。

川 ゚ -゚) 「おい!!」

从 ゚∀从 『デフレスパイラルビーム!!
     とどめだぁ!!ビルト・イン・スタビライザァアアアアアアー!』

そこでは、赤い髪の女が理不尽な飛び道具をぶっ放しながら戦っていた。
そして、それを映し出すテレビに噛り付いている杉浦がいた。

川 ゚ -゚) 「………おい」

(;ФωФ)「お。お、お、お嬢様…。お目覚めで御座いますか」

川 ゚ -゚) 「おい!」

(;ФωФ)「………てへ」

川 ゚ -゚) 「てへじゃない。何をしているんだ」



95: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:51:01.25 ID:PISThagh0

(;ФωФ)「テレビ鑑賞…」

川 ゚ -゚) 「何だそれは?」

(;ФωФ)「『経済ヴィーナスハイン様』」

川 ゚ -゚) 「そうか…」

(;ФωФ)「ち、違うんですお嬢様これは…えっと…」

川 ゚ -゚) 「何が違うんだ」

(;ФωФ)「ハイン様は普通のアニメじゃないんですよぅ。
       作画、音楽、声優含めてもう芸術の域で…。そう、総合芸術なんです!!
       特にハイン様の中の人のさーたんが最高なんです!!
       まだ新人なんですけどハイン様の力強さと可愛さと、どえすっぷりと
       ほんの少しのツンデレを、それはもうこれでもかって言うくらい見事に表現してて!!
       そ、そうだお嬢様もご覧になればきっと良さをわかられるはずです!!」

川 ゚ -゚) 「………」

(;ФωФ)「………」

从 ゚∀从 『ふぅはははー!ケツの穴広げるしか能の無い豚どもめー!』

川 ゚ -゚) 「モナー君に連絡は?」



97: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:53:14.13 ID:PISThagh0

(;ФωФ)「はい。今日の午後5時に新都大学の裏手のファミレス「ぱっくりモンキー」に来てくれとのことです」

川 ゚ -゚) 「ありがとう。ご苦労だったな。ところで腹が減ったんだ。
     その番組が終わってからでいいから、何かあっさりしたもの用意してくれ」

(;ФωФ)「かしこまりました。あ、ゼリーとプリンと桃缶なら冷蔵庫に入っておりますよ」

川 ゚ -゚) 「む。買っといてくれたのか。気が利くな。ではお前はもう少し音量を絞れ」

(;ФωФ)「はい…」

私は冷蔵庫からスポーツドリンクとプリンを取り出し、ソファに座る。
杉浦は私の方を気にしながらも少し音量を下げたテレビから視線を外そうとはしない。

川 ゚ -゚) 「録ってくれば良かっただろうに」

(;ФωФ)「お嬢様が急に仰られるから余裕がなかったので御座いますよ…」

川 ゚ -゚) 「そうか。悪かったな…」

(;ФωФ)「いえ…」

私はプリンに口をつけながらテレビを観賞する杉浦の背中を鑑賞する。

休みでもあまり部屋から出ない無趣味な奴だと思っていたがこんな趣味があったのか。
…今度、どこか公園にでも弁当を作らせてピクニックに行くか。



98: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:53:47.01 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「あ、おい。杉浦」

( ФωФ)「何で御座いますか?」

川 ゚ -゚) 「お前、もしかして秋葉原とか興味あるのか?」

(;ФωФ)「に゛ゃっ!?」

川 ゚ -゚) 「………悪かった」

(;ФωФ)「………申し訳ありません」

ああ、プリンは美味しいなぁ。
流石東京のプリンは一味違うなぁ。



( ´∀`)「おー。クーちゃん久しぶりモナ。杉浦君もー。元気してたモナか?」

( ФωФ)「お久しぶりで御座いますモナー様。モナー様こそお元気そうで何よりです」

川 ゚ -゚) 「うむ。モナー君、修士論文の方は順調か?」

( ´∀`)「おかげさまで今年度中には完成させられそうモナ」

( ФωФ)「それはよう御座いましたね」



100: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:54:46.60 ID:PISThagh0

(´<_` )「ご注文お決まりですかにゃー?」

川 ゚ -゚) 「私はこの『これでもかと苺を乗せましたハンバーグセット』を頼む」

( ´∀`)「あ、じゃあモナは『餓死したくない気持ちで作ったハンバーグセット』を」

( ФωФ)「我輩は『チーズハンバーグセット』を」

(´<_` )「以上でよろしいですかにゃー?」

( ´∀`)「よろしいですもにゃー」

(*ФωФ)(もにゃー)

( ´∀`)「しかしクーちゃんが東京に来るなんて珍しいモナ。観光にでも来たモナ?」

川 ゚ -゚) 「いや。内藤を訪ねに来たんだ」

( ´∀`)「内藤君?屋敷の使用人やめて東京に出てきてたモナ?」

川 ゚ -゚) 「ああ、でも死んでいた」

( ´∀`)「モナ?」

川 ゚ -゚) 「詳しい事はこれから調べる」

( ´д`)「モナ!?死んだって内藤君がモナ!?」



102: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:55:36.17 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「ああ。私も昨日知って驚いたんだ」

( ´д`)「それは気の毒に…。事故か何かモナ?」

川 ゚ -゚) 「わからないんだ」

( ´д`)「そうモナか…。ツンちゃんはこの事は?」

川 ゚ -゚) 「まだ伝えていない。帰ったら直接伝えるつもりだ。
      あまり激しく落ち込まないといいのだが…」

( ´д`)「モナも!モナも一緒にお屋敷に行かせて下さいモナ!
       ツンちゃんが心配モナ!あんなに仲が良かったのに…」

モナー君は身を乗り出さん勢いで私に詰め寄る。
ああ。ツンは慕われているなぁ。

( ФωФ)「モナー様。大学の方は…」

( ´д`)「文系の院生なんていてもいなくても一緒モナ!!」

川 ゚ -゚) 「気持ちは嬉しいが妹をそっとしておいてやって欲しいんだ。
      きっと内藤の事を知ったら一人で泣きたくなると思う」

( ´д`)「モナ…」



103: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:56:06.60 ID:PISThagh0

(´<_` )「お待たせ致しましたにゃー」

( ´∀`)「あ、来たモナ」

(´<_` )「『これでもかと苺を乗せましたハンバーグセット』のお客様ー」

川 ゚ -゚) 「私だ」

( ФωФ)「苺でハンバーグが見えませんね…」

川 ゚ -゚) 「ふむ。美味そうだ」

(´<_` )「『餓死したくない気持ちで作ったハンバーグセット』のお客様ー」

( ´∀`)「モナモナ」

川 ゚ -゚) 「でかいな…」

( ФωФ)「でかいですね」

(´<_` )「『チーズハンバーグセット』のお客様ー」

川 ゚ -゚) 「普通だな」

( ´∀`)「普通モナ」

(;ФωФ)「普通を罪のように言わないで下さい」



105: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:56:43.92 ID:PISThagh0

( ´∀`)「食べるモナー」

川 ゚ -゚) 「そうだな」

それからハンバーグを食べながら、とりとめのない世間話を交わした。
モナー君はよく笑った。昔と何一つ変わっていなかった。

川 ゚ -゚) 「モナー君」

( ´∀`)「モナ?」

川 ゚ -゚) 「あの子が、ツンが落ち着いたら、是非尋ねてやって欲しい」

( ´д`)「もちろんそのつもりだモナ」

川 ゚ -゚) 「うん。頼む。モナー君」

( ´∀`)「任せるモナ」

川 ゚ -゚) 「うん。私は、君が好きだから、君と、家族になれるのは、とても嬉しい。
      だから、頼む」

( ФωФ)「………」



106: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:57:42.17 ID:PISThagh0




川 ゚ -゚) 「今日は苺の森か…」

鬱蒼と生い茂る森の中だった。
大小様々な木々のそこかしこに苺がなっている。

('A`)「クー様…。今日は一段とメルヘンですね」

川 ゚ -゚) 「メルヘン?何がだ?そもそもこの夢はお前が作っているんじゃないのか?」

('A`)「いいえ。この夢はクー様と、彼のモノです。
    俺はそれを繋ぎ合わせているだけに過ぎません」

川 ゚ -゚) 「ふむ。よくわからんが、ここが私の心象世界と言う事か…」

('A`)「そう言う事になります!」

川 ゚ -゚) 「苺が美味かったからな…」

('A`)「はい!それでクー様。今日はこれを」

彼はそう言うと編みかご一杯に入った苺を私に渡した。

川 ゚ -゚) 「いらん。そのへんにたくさんぶら下がってるからな」

('A`)「そうですか…」



108: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:58:30.13 ID:PISThagh0

川 ゚ -゚) 「それよりも、いい加減彼とやらに会わせては貰えないのか?」

('A`)「会いたいのですか?」

川 ゚ -゚) 「興味がある」

('A`)「俺じゃ駄目ですか?俺なら、今だけは、こんな事だって出来るんですよ?」

次の瞬間。
ドクオが大きくなった。
いや、極端に大きくなったわけじゃない。
ほんの少しだと思う。
しかし先ほどまでは、私とほとんど同じ目線だったのが、
今は見上げなくてはならない。

ξ゚听)ξ「どうした?小さくなって」

('A`)「これを」

そう言って、彼は私に小さい手鏡を渡す。

ξ゚听)ξ「…っな!?」

それは、妹の姿だった。
私の、たった一人の、可愛い妹の。

('A`)「クー様…。」

ξ゚听)ξ「お前は…何で…これを…」



110: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/11(水) 23:59:26.12 ID:PISThagh0

('A`)「クー様が、ずっと望まれていた事です」

何を、言っているんだこいつは。

ξ゚听)ξ「お前は…。お前、は…」

('A`)「クー様。どうぞお手を」

手を差し伸べるドクオ。
私の上から。
私の上からの目線で。

('A`)「ここでなら、俺は何でもあなたの望む事を何でも。
    クー様が好きなんです!あのどえすっぷりが正直たまらないんです!」

ξ゚听)ξ「………消えろ」

('A`)「え…」

ξ゚听)ξ「消えろぉ!!消えてしまえ!!私をかきまわすな!!私を見るなぁ!!!」

ドクオは一瞬、自分が何を言われているのかわからない、そんな顔をした。
手に持っていた苺のカゴを地面に落とす。色鮮やかな苺が私の足元にも広がる。
そして彼は、酷く傷ついた顔をすると、泣いた。

(;A;)「クー様…」

泣くな。やめろ。
吐き気がする。



112: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:00:07.89 ID:+UoLNw7n0

川 ゚ -゚)「泣くな!カスが!泣ける人間が偉いとでも思っているのか!!
     そうやって分かりやすく傷つけば許して貰えるとでも!?」

(;A;)「ごめ…なさ…クー様…俺…違…だって…クー様が…」

川 ゚ -゚) 「うるさい!!言い訳をするな!!言葉を重ねれば何かが変わるとでも思っているのか!?」

私は足元の苺を踏み潰しながら喚く。
彼は泣き叫ぶ。

ああ、いつもと同じだ。
これでは、私が。

(;A;)「あ、あぁああああああああ!!!」

川 ゚ -゚) 「やめろ!!その目で私を見るなぁああ!!!」

私が、
加害者ではないか。



114: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:00:57.12 ID:+UoLNw7n0


次の瞬間。
そこには何も無い、ただ真っ暗な空間だった。

何も見えない。
ただ耳には、ドクオの断続的な泣き声が聞こえてくる。

「っぐす、…ぅ様ぁ…ごめん…なしゃ…ぐすっ嫌わないで…下さ…」

子どものような哀れな声を出すドクオ。

川 ゚ -゚) 「わかった…。だから、もう泣くな…」

「…ごめんなしゃい…許して…許してくださっ…」

川 ゚ -゚) 「…わかった。わかったから…」

「俺…ほんとに、クー様…好きで…だから…夢が繋がった時…嬉しくて…それ、で…」

川 ゚ -゚) 「もういい…」

「クー様ぁ…好き、なんです…ほ、ほんとに…」



115: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:01:51.90 ID:+UoLNw7n0

川 ゚ -゚) 「お前は無様だな…」

「よく…言われます…」

川 ゚ー゚)「羨ましいよ」

「…クー様?」

川 ゚ -゚) 「そうやって、無様に、人に好きと言えたら、どんなにか良かっただろうな…」

「クー様…。ごめんなさい」

川 ゚ -゚) 「だからもういいと」

「彼に、会ってください」

次の瞬間。
そこはシロツメクサの花畑だった。

( ´∀`)「お、クーちゃんが来たモナ。待ってたモナー。何してたモナ?」

川 ゚ -゚) 「モナー君…」

彼、がいた。
シロツメクサの花カンムリを手に、こちらにニコニコと笑いかける。

( ´∀`)「じゃ、一緒に作るモナ」

川 ゚ -゚) 「作るって…何をだ?」



117: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:02:45.06 ID:+UoLNw7n0

( ´∀`)「? 決まってるモナ。これだモナ」

モナー君はカンムリをぶんぶんと振り回す。

川 ゚ -゚) 「シロツメクサの花カンムリ…」

( ´∀`)「クーちゃん、これ、羨ましそうに見てたモナ。
       作り方、教えて欲しいんだったらそう言えばいいモナ」

川 ゚ -゚) 「作り方…?」

( ´∀`)「そうモナ。一緒に作った方が楽しいモナ」

川 ゚ -゚) 「だって…そんなもの…私には…似合わない…」

( ´∀`)「モナ?」

川 ゚ -゚) 「似合わないのに…作っても…仕方ない」

ましてや、他人に被せて貰いたいなんて、そんな事は…。

( ´∀`)「クーちゃん何言ってるモナ?」

ニコニコと、モナー君はこちらを見つめる。

( ´∀`)「似合わないのは当たり前モナ。
       こんなメルヘンで可愛い物が似合うのなんてそこらじゅう探しても、
       このモナくらいしかいないモナ」



119: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:05:05.22 ID:+UoLNw7n0

川 ゚ -゚) 「………」

( ´∀`)「………」

川 ゚ -゚) 「そうか。それなら仕方ないな」

( ´∀`)「そうモナ。わかったらとっとと作るモナ。
       簡単だからすぐ出来るモナ」

川 ゚ -゚) 「うむ。ご教授願おう」

( ´∀`)「まずはこう、一本目の花に二本目の花を、くるってするモナ。
       次はその二本目の花を押さえるように、くるってするモナ。
       これの繰り返しだモナ」

彼が教えてくれた花カンムリは
本当に、笑えるほど簡単だった。

ああ、私は。
こんな簡単なものを、ずっと欲しがっていたのか。

川 ゚ -゚) 「モナー君」

( ´∀`)「モナ?」

川 ゚ -゚) 「好きだ」



121: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:06:07.69 ID:+UoLNw7n0

( ´∀`)「ごめんモナ。モナはツンちゃんが好きだモナ」

川 ゚ -゚) 「うん。それは知っている。済まないな」

( ´∀`)「でも気持ちは嬉しいモナ。嬉しいからこれはご褒美モナ」

そう言って彼は私に作ったばかりの花カンムリを被せてくれた。
ちなみに彼が元々持っていた方の花カンムリは既に彼の頭の上だ。

川 ゚ -゚) 「ありがとう。しかし意地悪を言うとツンが好きなのは内藤だ」

( ´∀`)「知ってるモナ」

川 ゚ -゚) 「そうか知ってるか」

( ´∀`)「モナモナ」

川 ゚ -゚) 「…悪かったな」

( ´∀`)「何がだモナ」

川 ゚ -゚) 「意地悪を言って」

( ´∀`)「別に意地悪じゃないモナ」



124: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:06:52.45 ID:+UoLNw7n0

川 ゚ -゚) 「うちの妹を頼む」

( ´∀`)「それはツンちゃんが決める事モナ。
       落ち込んだツンちゃんを励ます事くらいは出来るけど、
       それ以上はツンちゃんが望まないと踏み込めないモナ」

川 ゚ -゚) 「しかし君とツンとの結婚は決定事項だ」

( ´∀`)「子どもじゃないんだからモナもツンちゃんも結婚相手くらい自分で決めるモナ」

川 ゚ー゚) 「そうか…。そうだな…。私が、馬鹿だ…」

本当に、本当に私は馬鹿だ。
どうして、ツンが内藤と結婚したら、
自分がモナー君と、添い遂げられるなんて思ったのだろう。

川 ;-;) 「…あれ」

( ´∀`)「どうしたモナ」

川 ;-;) 「わからない…悲しい…んだ…どうして…」

( ´∀`)「…内藤君の事モナ?」



126: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:07:45.40 ID:+UoLNw7n0

内藤。
内藤ホライゾン。
ブーン。
あのにやけ顔。
妙な喋り方。
妙に不味いお茶。
だらしない体型。

大事な大事な私の妹の、
幸せな、使用人。

彼がこの世にもういないと知ったら、
ツンは、どれだけ悲しむ事だろう。

川 ;-;)「そうだ…。内藤…気の毒だ…まだ、若かったのに…。
     それに、どうしよう…ツンが、きっと悲しむ…」

( ´∀`)「モナがいるモナ」

川 ;-;)「頼む…本当に…繊細な子なんだ…私の、大事な妹…」

( ´∀`)「モナモナ」

川 ;-;) 「うわぁああああん!!」

風が吹く。

私が泣いていても、泣いていなくても、同じように、風は吹いた。
シロツメクサの花の波が、私の足をくすぐって、去っていく。



127: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:08:38.64 ID:+UoLNw7n0



ああ、
ごめん内藤。
安らかに。



128: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:09:39.83 ID:+UoLNw7n0




川 ゚ -゚) 「………」

( ФωФ)「お嬢様。お早う御座います」

川 ゚ -゚) 「お前、別室を取ったとか言ってなかったか?なんでずっと私の部屋に居るんだ」

(;ФωФ)「えっと…それは…」

川 ゚ー゚) 「冗談だ。ありがとう。感謝してる。」

(;ФωФ)「に゛ゃっ!?どうされたんですかお嬢様!?熱でも!?」

川 ゚ -゚) 「お前は…」

( ФωФ)「何か、良い夢でもご覧になられたんですか?」

川 ゚ -゚) 「…うん。そうだな。良い夢だった。ところで杉浦」

( ФωФ)「なんで御座いましょう」

川 ゚ -゚) 「お前、花カンムリ、作れるか?」

( ФωФ)「作れますよ?練習しましたから」



130: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:10:34.77 ID:+UoLNw7n0

川 ゚ -゚) 「練習?」

(;ФωФ)「あ゛、に゛ゃ…」

川 ゚ -゚) 「やっぱりお前は馬鹿だな。杉浦。
      …それにしても、私はそんなに花カンムリを物欲しそうに見てたか…?」

(;ФωФ)「えっと…そ、そりゃぁもう…」

川 ゚ -゚) 「そうか。悪かった。ありがとう」

(;ФωФ)「お嬢様ぁ…」

川 ゚ -゚) 「ふむ。ついでに聞いてもいいか?」

( ФωФ)「ええ。何でも」

川 ゚ -゚) 「私は内藤とツンが結婚したら、自分がモナー君と結婚出来るかもしれないと思ったんだ。
      内藤は、許してくれると思うか?そしてお前は、こんな浅ましい私に、仕えられるか?」

( ФωФ)「お嬢様…」

ロマネスクが、いつもの困った顔でこちらをじっと見つめる。

川 ゚ -゚) 「どうだ?杉浦…」

( ФωФ)「お嬢様。震えておられます」



132: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:11:06.17 ID:+UoLNw7n0

川 ゚ -゚) 「え?」

自分の手を見る。確かに小刻みに震えていた。

( ФωФ)「大丈夫で御座いますよ。内藤はそんな事で怒ったりするような人間ではありません。
       使用人はそんな狭い心でやっていける仕事じゃありませんから」

川 ゚ -゚) 「杉浦…」

( ФωФ)「そしてお嬢様。使用人は人間です。完璧な主人など、恐ろしいだけです。
       我輩は、お嬢様の浅ましさも、弱さも、そのクーデレっぷりも、愛しく思います」

川;゚ -゚) 「お、おおお、お前は何を言っている!」

(*ФωФ)「………ぽ」

川;゚ -゚) 「照れるな!!」

( ФωФ)「それよりもお嬢様。今日こそ家に帰られますよね?」

川 ゚ -゚) 「いや、帰らない」

(;ФωФ)「あぁああ…」

川 ゚ -゚) 「今日はねずみーらんどへ行く」

(;ФωФ)「へ!?」



134: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:11:33.42 ID:+UoLNw7n0

川 ゚ -゚) 「そしてあれだ。ドクオ、いただろう?情報提供のお礼に彼も誘おう」

(;ФωФ)「それも冗談で御座いますかお嬢様…」

川 ゚ -゚) 「いや、本気だ」

(;ФωФ)「はぁ…それにしても何故にまたねずみーらんど」

川 ゚ -゚) 「ん?決まってるだろう?」

(;ФωФ)「はい?」

川 ゚ー゚)「夢の国、だからだよ」



136: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/12(木) 00:12:36.45 ID:+UoLNw7n0
('A`)ドクオが夢を紡ぐようです 第四話 了



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