('A`)ドクオが夢を紡ぐようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 20:42:43.17 ID:X2JuycG90

質問:あれ?兄者?弟者?どっち?

答え:どうぞときめいて下さい。
あなたの心をときめかせる事が出来たのなら、
それは兄者に他なりまs(´<_` )「人の友人にちょっかいを出すとは流石だな兄者」

( ´_ゝ`)「なんだ弟者来てたのか。それならそうと早く言えばいいものを」

(´<_` )「俺は兄者と違って平日はほぼ毎日大学に来てるさ」

( ´_ゝ`)「まるで俺が全然大学に来ていないような言い草だな」

(´<_` )「本当だ。不思議だな。世の中不思議な事でいっぱいだ兄者。
       で、前回大学に来たのはいつだ?」

( ´_ゝ`)「…先々週…?いや、その前の週…?」

(´<_` )「兄者はそろそろ人間をやめて阿呆の星に帰れ」

(*゚∀゚) 「あひゃー。弟者が二人いるぞー」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 20:44:02.48 ID:X2JuycG90

( ´_ゝ`)「どうも。かっこいい方の弟者こと兄者です」

(´<_` )「つーさん、こいつは気にしなくていいです。
       電池で動く楽しい産業廃棄物とでも思って下さい」

( ´_ゝ`)「どうも。リサイクルも出来ないとかけまして、
       他の何者にもかえ難い兄者です」

(*゚∀゚) 「やーよろしくー。弟者と同じゼミのつーなんだー」

( ´_ゝ`)「つーちゃんか…。うちの弟がいつもお世話になっております。
       弟のついでに俺の息子のお世話もしてくr」

(´<_` )「ちょっと黙れ兄者。それと呼吸も止めてくれ。地球の酸素が減る」

( ´_ゝ`)「俺が消費した分の酸素は弟者が広葉樹林に生まれ変わって生産してくれるって信じてる」

(´<_` )「たわけが。自分でアオミドロにでも生まれ変わって酸素を作ればいいだろうが」

( ´_ゝ`)「すまんな。俺はイケメンに生まれ変わって14歳の金髪碧眼の美少女と添い遂げると決めているんだ」

(´<_` )「今すぐ家に帰れ。そして二度と社会に出てくるな」

( ´_ゝ`)「今の台詞後悔するなよ。俺の引きこもりスキルを舐めてると痛い目に合うぞ」

(´<_` )「主に兄者がな。一体何年で大学を卒業するつもりなんだ?」

( ´_ゝ`)「いやぁそれにしてもつーさんは可愛いですねー。それでうちの弟者に何の御用で?」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 20:45:09.92 ID:X2JuycG90

(*゚∀゚) 「あーそーだ。弟者携帯教えてくれないかー。俺今度ゼミの飲み会の幹事やるんだー」

(´<_` )「あれ?教えてなかったか…?すまん」

(*゚∀゚) 「別にいいぞー。赤外線出るか赤外線ービームー」

(´<_` )「ああ。ちょっと待ってくれ。今送る」

(*゚∀゚) 「どんと来いやー」

(´<_` )「ちょっと待ってくれ…赤外線は不慣れで…」

(*゚∀゚) 「なんだ弟者ー友達少ないのかー」

(´<_` )「こっちの自動孤独製造機ほど少なくはないが多くはないな」

(*゚∀゚) 「あひゃ。そうかー。じゃあ、今度ゼミじゃなくて個人的に飲まないかー」

(´<_` )「誘ってくれるなら是非」

(*゚∀゚) 「約束なー。お、アドレス来たぞー。ありがとなー」

(´<_` )「お。無事届いたか。それは何より」

( ´_ゝ`)「………」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 20:46:17.11 ID:X2JuycG90

(*゚∀゚) 「それじゃーまた次のゼミでなー。あとでメール送るぞー」

(´<_` )「ああ。頼む」

(*゚∀゚) 「またなー」

(´<_` )「また」

(*´_ゝ`)「……つーちゃん…いいな…」

(´<_` )「それ以上見るな彼女が汚れる」

(*´_ゝ`)「ふふ…」

(´<_` )「笑うな気色悪い。俺は今から講義だが兄者も何か授業入ってるのか?」

( ´_ゝ`)「………多分」

(´<_` )「貴様は一体何をしに大学に来たんだ」

( ´_ゝ`)「たまに来ないと学校の場所を忘れそうで…」

(´<_` )「そのまま心臓を動かすことごと忘れてしまえばいいと思う」

俺たちは、双子。
お互いがお互いのクロンである、
世にも珍しい、
他人同士。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 20:49:04.43 ID:X2JuycG90





タイトル:
つーです。
本文:
届きましたでしょうか?
約束通りメールを送らせて頂きます。
番号は080-××××-××××になります。
登録の方よろしくお願いします。

ps:
来週、個人的に飲みに行きませんか?
良い店を紹介します。


(;´_ゝ`)「文章かったいなぁ…こんな子だったっけ…」

今日会った時は、もっとこう、ざっくばらんとしてたような気がするのだが。
しかしメールでキャラ変わる人って意外にいるからな。
例えば君がいつも見ている黒髪眼鏡で楚々とした気になるあの子だって、
【○○君今日ゎ楽しかったね^^
 また、ぃっぱぃェッチしよぉね^^】
とか彼氏にメールしてるんだぜ!もうどうしろと!俺にどうしろと!想像して抜けってか!
ビクビク駄目でも感じちゃうブピュゥっ!



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 20:52:35.22 ID:X2JuycG90

…悪くないな。

違う話が逸れた。
うん。ちっちゃい「ぁ」とか「ぅ」に比べれば敬語良い。全然良い。むしろギャップ萌えすら感じる。
そんなわけでつーちゃんの携帯に弟者の代わりに無断で赤外線を送って、
未だ登録人数5人(父者、母者、姉者、弟者、マイパソコン)の我が携帯電話のアドレス帳におにゃのこの名前を増やそう大作戦。
通称【カッコウは他の鳥の巣に卵を産み付けて子どもを育てさせるんだぜ坊や作戦】
あれ?通称長いな。略して【卵子作戦】は見事無事に成功を収め、
こうして頑なに沈黙を守り続ける我が携帯におにゃのこからのメールが届いたわけだが!

さて、これからどうしよう?

1、可及的速やかに弟者のふりをしてメールを返す→仲良くなる→ねじ込む
2、正直に自分が兄者である旨を説明するメールを返して謝る→仲良くなる→ねじ込む
3、ねじ込む

なんだ。こうやって並べてみると俺の未来は明るいじゃないか。
では、早速ねじ込む練習をするために、
エロ画像をせっせと集めなくては。

おっぱいスレで腕を振る準備はいつだって出来てるんだz

(´<_` )「兄者。母者にお使いを頼まれた。一人じゃ持ち切れそうもないから手伝ってくれないか」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 20:56:05.60 ID:X2JuycG90

(;´_ゝ`)「お。お、弟者。急に部屋に入ってくるんじゃないそんなに着替えドッキリイベントに遭遇したいかこのムッツリめ」

(´<_` )「部屋は共用なんだからノックしなくても構わないだろうが。
       それと兄者の貧相な裸なぞ見たくもない」

( ´_ゝ`)「貧相だと。俺の魅惑の桃色乳首を目にしても同じ事が言えるかな」

(´<_` )「男の桃色乳首なぞ何の価値もないわ」

( ´_ゝ`)「たわけが。俺が乳首うpスレでどれだけの賛美を浴びているか見せてやりたいわ」

(´<_` )「そんな大衆の前に乳首を晒すな。身内の恥め。
       兄者の乳首が1と0に変換されてネットの海を漂ってると思うと消えてしまいたくなる」

( ´_ゝ`)「恥などとな。むしろ誇りに思え。兄の桃色乳首を」

(´<_` )「死んでもごめんだ。ほら、とっとと買い物に行くぞ
       母者がざらめと三温糖と餡子をキロ単位でご所望だ」

(;´_ゝ`)「…甘ぁ。何の甘味祭りが開催されるんだそれは」

(´<_` )「知るか。『なんだか甘いものが食べたいね。弟者ちょっとこれ買ってきて』だそうだ」



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 20:57:10.73 ID:X2JuycG90

(;´_ゝ`)「母者の買い物は相変わらず業務用だな…」

(´<_` )「わかったら早く行くぞ」

弟者の様子を見るとメールを返信するまで待ってくれそうもない。
俺は携帯を閉じてジーンズのポケットに仕舞うと立ち上がり弟者の後を追った。

(*´_ゝ`)「あぁん待ってぇ〜」

(´<_` )「きもい。寄るな。変態の国へ帰れ」




タイトル:
弟者だよ
本文:
返信遅くなってごめんね
ちょっと餡子買いに行ってたんだ
余談だけど餡子と餃子って似てるよね
来週の日曜なら丸々暇なので、
飲みとは言わずどこかに遊びに行きませんか?



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 20:59:52.48 ID:X2JuycG90


タイトル:
是非!
本文:
日曜なら私も暇なので
是非とも遊びに行きたいです
餡子は無事買えましたか?


タイトル:
餡子は
本文:
肩が外れそうだったよ
どこに遊びに行くか俺が決めてもいい?
夜はお勧めのお店に連れて行って下さい


(;´_ゝ`)「お、おぉぉおおおお」

こんなにすんなり事が運ぶとは流石俺。
なんだよリア充の扉は存外ぱっくり開いてるじゃないか。この淫乱め。
そんなに突っ込んで欲しかったのか雌豚が!さぁやらしい声で鳴いてみるがいい!
とりあえずお前らも赤外線を無差別に送ってみろ!絶対お勧め!



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:02:34.16 ID:X2JuycG90

(´<_` )「兄者…五月蝿い…動くな…喋るな…」

俺の下で寝ている弟者が声をかけてくる。
だがリア充である今の俺には弟者なぞ敵ではない。
ここぞとばかりに体を揺らしまくる。
ゆさゆさと揺れまくる二段ベッド。

(´<_`#)「この糞兄者が!」

その時、突如として現れる弟者の生首!
しかし恐れる事はない今の俺はリア充だ。
変わり果てた弟者を包容力満点の手つきでそっと撫でてやる。

( ´_ゝ`)「大丈夫…怖くないわ…早く成仏しなさい…坊や」

(´<_`#)「兄者こそ早く成仏したらどうだ。兄者は既に死んでるぞ。社会的に。」

( ´_ゝ`)「うふふ。怖いのね、大丈夫よ。何も恐れる事はn」

(´<_`#)「触るな気色悪い。手が湿ってる」

( ´_ゝ`)「あらあら弟者の生首は生意気な恥ずかしがりやさんなのね」

(´<_`#)「………」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:03:20.87 ID:X2JuycG90

弟者の生首が消えた。
良かった。成仏してくれたのか。
やはりこの兄の愛で包んであげたのが良かったのだな。うん。
刹那。ガコン、と音が聞こえる。

(;´_ゝ`)「弟者何をしてるんだ梯子外したら降りられなくなるじゃないか」

(´<_` )「知るか。そのまま死ね。つーか梯子なしじゃ降りられないのに、
       二段ベッドの上に寝たがるな」

(;´_ゝ`)「ほんとまじすまんかった。二段ベッドの上で餓死とか洒落にならないから。
       死ぬから。生まれたての子羊のようにぷるぷる震えて死ぬから」

(´<_` )「はいはい。おやすみ兄者。静かにしてくれよ」

(;´_ゝ`)「弟者!ちょ!おま!」

(´<_` )「いい子だから黙って寝ような」

(;´_ゝ`)「………。」

本当に梯子戻さないで寝やがった馬鹿弟者め。
ここでまさかの強制篭城フラグか。
俺の引きこもりスキルを舐めるなよ。ああ。引きこもってやるさ超引きこもってやる。
怖くない高いところなんか怖くないもんねー。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:03:54.71 ID:X2JuycG90

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ。

(´<_` )「だからさっきから五月蝿い…兄者…オナニーならバイブ機能ついてない奴でしてくれ…」

( ´_ゝ`)「携帯だろ常識的に考えて」

(´<_` )「先に言っておくが童貞を5万で買ってくれる欲求不満のマダムなぞ存在しないからな…」

(;´_ゝ`)「し、知ってるもん!」

別に待ち合わせ場所で5時間待ったりしてないもん。


タイトル:
楽しみにしてます。
本文:
わかりました。
弟者君にお任せします。
待ち合わせ場所など決まりましたら連絡下さい。
それではおやすみなさい。


( ´_ゝ`)「みwwなぎwwwってwwきたwww」

(´<_` )「だからオナニーなら黙ってしてくれ…」

ふふん。下でおにゃのこからメールの来ない弟者が負け犬の遠吠えをあげている。
リア充となった兄がまぶしくて仕方が無いのだろう。哀れな奴め。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:05:29.24 ID:X2JuycG90

( ´_ゝ`)「弟者…。結婚式のスピーチは頼んだぞ」

(´<_` )「兄者と嫁では次元が違うから残念ながら結婚は無理だ」

( ´_ゝ`)「馬鹿が。この俺がそんな薄っぺらい女どもと結ばれると思うか」

(´<_` )「ああ…。部屋が一緒なんだからフィギアを飾りまくるのは勘弁してくれな」

じゃあ、今度こそおやすみ。と結んで弟者は黙り込んでしまった。
弟者は実の兄をキモオタと勘違いしている節がある。
俺はキモオタではなく、孤高の現代表現の捕食者だと言うのに。わからん奴め。
そして今まさにそこで得た知識を現実に還元する時が来ているのだ。
Hey!三択カモン!テーマはデートスポット!

1、カラオケ
2、水族館
3、遊園地

まずはカラオケ。カラオケに行くと高確率で起こるのが、【ヒロインの歌が物凄く下手】イベント。
才色兼備のヒロインに多く発生するイベントである。いわゆる一つのギャップ萌えって奴だ。
次に水族館。これは物静かなヒロインが好む傾向にある。
シリアスなイベントが発生しやすく、ヒロインが変な魚を好むお約束も微笑ましい。
しかしキス以上のエロシーンに発展し辛く抜きゲーよりは泣きゲーに適したスポットだ。
最後に遊園地。これが曲者で、迷子イベントや観覧車イベントなどその多様性は他の追随を許さない。
非常に玄人好みの選択と言えよう。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:07:09.67 ID:X2JuycG90

つーちゃんは見たところ明るくて元気なタイプだ。と言う事で必然的に2は却下になる。
うむ。別にエロシーンに発展し辛いから弾いたわけではない。念のため。
そうなると残るは、1か3になるわけだが…。

………。

よし!

(*´_ゝ`)「弟者ー!明日一緒に遊園地に行くぞ!」

(´<_`#)「いい加減にしろこの糞あに……は?!」

( ´_ゝ`)「カラオケは行ったことないからな。遊園地だ。
       下見だ下見。この兄が奢ってやろうほーら嬉しかろう」

(´<_` )「何が楽しくて兄者と二人で遊園地なぞ行かなくてはならんのだ」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:07:50.84 ID:X2JuycG90

( ´_ゝ`)「ただの遊園地じゃないぞ?」

(´<_` )「そりゃ遊園地は有料だ」

( ´_ゝ`)「かの有名なねずみーらんど、だ」

(´<_` )「………本当に奢りだろうな」

( ´_ゝ`)「兄に二言はない」

がたん、と音がする。
見ると弟者が梯子をベッドに戻したようだ。
うむ。やはり持つべきものは弟だな。




まどろみの中にぽっかりと歌声だけが浮かんでいた。
確かに、何処かで、聞いた事のある歌だった。

(´<_`*)「ねずみーまうすーねずみーまうすーねずみねずみまうすー♪
       ねずみーまうすーねずみーまうすーねずみねずみまうすー♪
       ねずみまうすー♪ねずみまーうす♪まっもろう著作権♪へい!へい!」

まぶたをこじ開けると俺の耳元で弟者が楽しげな歌声を披露している(掛け声付き)。
俺は携帯電話で時間を確認すると無言で弟者の顔に枕を押し付けた。

(´<_` )「〜♪ ねずみーまうsフガ!!」



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:12:07.75 ID:X2JuycG90

(#´_ゝ`)「今何時だと思っている。くそぅ。ちょっと純文学風なモノローグとか出した結果がこれか。
       なんでげっ歯類を称える歌で目覚めなきゃならんのだ。
       哺乳類馬鹿にすんな歯が伸びるのがなんぼのもんじゃい」

(´<_`*)「兄者こそ何をする。もう起きる時間だぞ」

( ´_ゝ`)「馬鹿言え。繊細な俺は最低でもタモさんが颯爽と階段を降りる時間にならないと体が起動せんのだ」

(´<_` )「馬鹿を言っているのは兄者の方だ。そんな事したら並べないだろうが!」

( ´_ゝ`)「は?並ぶ?」

(´<_`*)「ねずみーらんど」

( ´_ゝ`)「………」

(´<_`*)「ねずみーらんど」

大事なので二回言いました。そう言わんばかりの瞳で俺を見つめる弟者。
ああ、畜生。我が弟ながら変態だなぁ。殴り倒してやりてぇ。
俺は再び布団に潜り込んで沈黙を決めこむ。
ねずみーらんどはタモさんを見てからでも遅くなかろう。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:13:43.62 ID:X2JuycG90

(´<_`*)「こーのお寝坊さんめー♪」

布団を引っぺがしマウントを決め込む弟者。
痛い。痛い。その拳中指立ってる!立ってるから!

(; )_ゝ`)「おk弟者。時に落ち着け。俺が死ぬ。
       しかも二段ベッドの上で暴れられると揺れて怖い。超怖い」

(´<_` )「おー寝坊さん♪おめめはぱっちり覚めたかなー?」

超笑顔で爽やかな目覚めを演出する弟者。
流石変な店でバイトしているだけはある。
駄目だこいつ早く何とかしないと。

(;´_ゝ`)「…ねずみーらんど、原油高騰によりアトラクション稼働率50%減…」

(´<_`*)「馬鹿だな兄者。ねずみーらんどのアトラクションは魔法で動くから原油高なんて関係ないんだぞ」

(;´_ゝ`)「夢の国SUGEEEEEEEEEEEE!」



確かに夢の国は凄かった。
電車とバスを乗り継ぐ事おおよそ一時間。
門の前でじりじり弟者とネガティブな言葉しりとりを続ける事一時間。
そしていよいよ開門。不自然に笑顔のお姉ちゃんに促され、一歩足を踏み入れると、そこは。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:14:15.96 ID:X2JuycG90

(´<_` )「何をしている兄者走るぞ!最初はブーンテッドマンションに待ち時間0で乗るって決めてるんだ!」

(;´_ゝ`)「ちょwwwおまwwww」

マラソン会場だった。

無言で開園直後の夢の国を全力疾走する21歳と21歳。
すげぇ夢の国。このメルヘンな景色の中に居ると普通はムサい光景が益々地獄絵図に見えるぜ。

(;´_ゝ`)「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…」

遠かった。ブーンテッドマンションは引きこもりスキルの高い俺を走らせるにはあまりにも遠かった。
一方弟者は息一つ乱す事なく意気揚々とアトラクションに乗り込む。

(´<_`*)「ほらほら。ここに座るんだぞ兄者。ああ、安全ベルトはそこな。
       これが終わったら次はイッツアブーンワールドでその次がブーンさんのハニーランドだから」

(;´_ゝ`)「………」

(´<_` )「心配するな。待ち時間含めて俺の計画は完璧に練られている。
       今日は兄者を完璧にエスコートしてやろう」

( ´_ゝ`)「帰っていい?」

ごめん。俺正直夢の国がこんなにも辛いものだとは思わなかった。
瞳を輝かせる弟を眺めるのが、こんなにも居たたまれないだなんて知らなかった。

なんかもう…ごめんなさい。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:16:37.72 ID:X2JuycG90


 Ω Ω
(´<_`*)「ほら。兄者の分のねず耳買ってやったぞ。つけろ」

 Ω Ω
(´<_`*)「ポップコーンはサワークリーム味が良いな。うん」

 Ω Ω
(´<_`*)「案ずるな。パレート用にレジャーシートと座布団ならちゃんと用意してある」

 Ω Ω
(´<_`*)「思ったより空いてたな。この分ならあと3つは余計にアトラクションいけるな」

 Ω Ω
(´<_`*)「チュロスがあるぞ兄者。買ってくるからちょっと待っててくれ。」

先ほどから広い園内を駆けずり回ってると言うのに弟者は一向に疲れた様子を見せない
地図もなしに目的地にゴリゴリと押し進んでは行列に加わり、行列に加わっている間も他の行列に加わり、
もう、行列に加わるのが楽しくて仕方ない様子で目をキラキラさせている。病気か。

  Ω Ω
(;´_ゝ`)「「夢の国侮ってたわ……」」(;'A`)

  Ω Ω
( ´_ゝ`)「ん?」

(;'A`)「あ……」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:19:02.18 ID:X2JuycG90

振り返ると、貧相な男と目が合った。
どうやら彼が俺と見事なハモりを果たしたソウルブラザーらしい。

(;'A`)「弟者…?何してんの?こんなところで…」

川 ゚ -゚) 「む、何だ知り合いか」

(;'A`)「あ、はい。大学に行ってた頃の知り合いです。久しぶり…」

 Ω Ω
(;´_ゝ`)「なっ…!?」

諸君、おわかり頂けるだろうか。
てっきり一人で並んでると思っていた、すこぶる貧相な男に美人が親しげに話しかけるこの衝撃を。
この顔からして、一人で遊園地に来ては自分の孤独っぷりを楽しむ深刻なマゾヒストだとばっかり思っていたのに。

( ФωФ)「ほら、お嬢様。知り合いの知り合いですよ。挨拶なさって下さい」

 Ω Ω
(;´_ゝ`)「なんと」

しかも、もう一人いた。
なんだよ。男2で女1とかどんな比率だ。どう頑張っても男が一人余るじゃないか。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:19:55.20 ID:X2JuycG90

川 ゚ -゚) 「初めまして。ところで君は一人でここに来たのか?」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「…はい?」

(;ФωФ)「お嬢様!例え彼が一人で遊園地に来ては自分の孤独っぷりを楽しむ深刻なマゾヒストだとしても、
       そんな失礼な質問をしてはいけません!!」

川 ゚ -゚) 「遊園地に一人で来てる人間に一人で来てるかと尋ねるのは失礼な事なのか?」

( ФωФ)「お嬢様は一人乗りの遊園地のアトラクションを見た事がありますか?」

川 ゚ -゚) 「…ないな」

( ФωФ)「それが答えで御座います」

川 ゚ -゚) 「なるほど。納得した。悪かったな。楽しんでくれ」

 Ω Ω
(;´_ゝ`)「……ちょ」

何か今俺、物凄い高等な羞恥プレイを仕掛けられたぞ。
そんな事されたら、ちょっと気持ちよくなっちゃうじゃないか。

ああ、やめてお嬢さんそんな虫を見るような目で俺を見つめないで。
興奮しちゃう!俺の愚息がたぎってきちゃう!
こんな幸せな奴らばっかりのリア充御用達スポットで!!



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:20:47.04 ID:X2JuycG90

川 ゚ -゚) 「じー………」

 Ω Ω
(;´_ゝ`)「生まれてきてすいませんでしたぁああーーーー!!」

もう駄目無理だわ!だって僕男の子だもん!!
俺は行列から離脱すると、どこ行く当てもなく人混みの中を駆けていく。
ねぇ見て風にたなびく私のねず耳!今なら何処までだって飛べるわ!性的な意味で!

うふふあはは―――。

 Ω Ω
(´<_` )「おーい兄者買って来たぞー。タルタルソース味と豆腐味どっちが…
       ……あれ?すいませんここに俺と同じ顔の男いませんでした?」

川 ゚ -゚) 「………それがルパンか?」

 Ω Ω
(´<_`;)「は?」

('A`)「弟者…だよな…?」

 Ω Ω
(´<_` )「そう言うお前はドクオか?えらい久しぶりだが。学校やめてから何してたんだお前」

川 ゚ -゚) 「お前こそ何をしてるんだ。いくら先ほどまで並んでいたと言っても一旦列から抜けた以上、
     きちんと並びなおさないと駄目じゃないか」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:24:01.96 ID:X2JuycG90

Ω Ω
(´<_` )「いや…だから双子の兄が並んでた筈なんですが…」

( ФωФ)「双子の兄とか…今時小学生でもそんな手口使いませんよ?」

Ω Ω
(´<_`;)「…兄者?
どこ行ったんだ……?」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:25:24.95 ID:X2JuycG90



タイトル:
何してますか?
本文:
突然のメールごめんなさい。
弟者君が以前に今日は全休だと言っていたのを思い出したので、
思い切ってメールさせて頂きました。
日曜日のフライングになってしまうんですが、
もし、お暇なようでしたら、
今からどこかで待ち合わせて遊びに行きませんか?

タイトル:
お願いします
本文:
ありがとう。
一時間後に大学の図書室で待ってるよ。


 Ω Ω
( ´_ゝ`)「もしもし弟者…?俺、帰るわ」

Ω Ω
(´<_` )「それよりも今何処にいるんだよ兄者。おかげで並びなおさなければならなくなったぞ。
       早く戻って来い。豆腐味のチュロスが待ってるぞ」
  
 Ω Ω
( ´_ゝ`)「豆腐味のチュロスよりも大事なものがあるって気付いたんだ。ごめん」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:26:23.34 ID:X2JuycG90

Ω Ω
(´<_` )「そうか…。気をつけろよ。ねずみーらんどは兄者の分まで俺が楽しんでやるから」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「そうしてくれ。例え遊園地に一人乗りのアトラクションが存在しないとしても、
       弟者は強く生きるんだぞ」

Ω Ω
(´<_` )「ああ。夜のパレードの写メは送ってやるからな」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「お前…一人で夜までいる気なのか…」

我が弟ながら本当に気持ち悪いな。







(*゚∀゚) 「おーとーじゃー!!ここにいるぞー!!」

図書室のドアをくぐった途端、静寂に衣擦れとページをめくる音をまぶした図書室につーちゃんの声が響く。
俺は周りからの好奇と迷惑の視線を感じつつ彼女に歩み寄った。

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「お待たせつーちゃん。ごめん。待った?」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:28:44.48 ID:X2JuycG90

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「お待たせつーちゃん。ごめん。待った?」

(*゚∀゚) 「あひゃひゃひゃ。こんなの待ったうちに入んないぞー」

声のトーンを落としきれない様子のつーちゃん。
大変に可愛らしいのだがさっきから周りの視線が心なしか痛いんだ。
と言うか電車に乗って移動する間も随分と視線を感じた気がする。
笑いながら携帯で写真を撮って来る女子高生の集団まで居た。
何て言うかやばかった。何あの笑い声。何のご褒美かと思ったぜ。

 Ω Ω
(;´_ゝ`)「それはそうと…移動しない?もう夕方だし晩御飯でも食べに行こうよ」

(*゚∀゚) 「あひゃー。そうだなー。なあなあ弟者ー。それならうちにご飯食べに来ないかー?
     実家から牛肉が届いたんだけど食べきれないんだぜー?」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「なんと」

おぜうさん。何ですかその急展開。
ちょっと急ぎすぎじゃないですか。
体験版のエロゲだってもうちょっとプロセス大切にするぜ?



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:29:57.25 ID:X2JuycG90

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「それは是非ご馳走にならねばな」

(*゚∀゚) 「じゃあ、今から案内するんだぜー」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「把握した」

弟者ごめん。
お兄ちゃん、大人の階段先に上るわ。



そうして大学を出た俺たちは、はたから見たら立派にカップルなので、
俺のテンションも否応なく上昇を果たしてしまうのです。

つーちゃんも、電車のつり革に捕まりながら、
紅潮した頬をこちらに向けて楽しげに言葉に紡いでいく。

(*゚∀゚) 「あのなー。実家から届いた牛肉なー。凄いんだぞー。
     なんか大会で3位に入賞した牛さんでなー。名前はタロベェって言ってなー。
     牧場のお嬢さんに一等可愛がられてた愛嬌のある牛さんなんだってなー」

嬉しげにこれから食す牛の死骸の経歴を披露していくつーちゃん。
おkおk。電波ちゃんだな。お兄さん守備範囲、宮崎県知事のデコよりも広いから全然大丈夫なんだぜ。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:30:32.29 ID:X2JuycG90

 Ω Ω
(*´_ゝ`)「そうだな。二人でタロベェにありがとうしながら食べような」

(*゚∀゚) 「うん!楽しみなんだぜー!」

移動する事大学から電車で4駅。そこから徒歩7分ほどのところにつーちゃんの部屋はあった。

(*゚∀゚) 「ちらかってるけど入って欲しいんだぜー」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「お邪魔しまーす」

つーちゃんの部屋は特別に散らかっていることもなければ、
トリッキーな置物も、スイーツな小説も、パソコンもなかった。
ん?パソコンないのか。今時の子にしては珍しい。

(*゚∀゚) 「じゃあ、作るから弟者はそこに座って待ってて欲しいんだぜー。」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「何か手伝える事はある?」

(*゚∀゚) 「大丈夫なんだぜー。そこの本棚に漫画とか入ってるから読んで待ってて欲しいんだぜー」
  
 Ω Ω
( ´_ゝ`)「把握した」



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:32:32.61 ID:X2JuycG90

それにしても流石おにゃのこの部屋。なんかいい匂いがする。
香ばしくて、こう、食欲をそそる様な、
例えるなら牛肉を焼いたような……。

(*゚∀゚) 「すぐ出来るからちょっと待ってなー」

てゆーか肉じゃねーか。
タロベェごめん。お前すげぇいい匂いするわ。

このままフライパンを振るうつーちゃんを眺めているのも良いが、
リア充がそんなキモヲタみたいな所業をしたら不審に思われるかもしれない。
俺はお言葉に甘えて漫画を読むことにした。

 Ω Ω
(;´_ゝ`)「『ベルサイユの薔薇』がある」

これはオスカルとアンドレがどっちがどっちだか分からなくなる俺への挑戦に違いない。
俺は一巻を手に取りページをめくる。

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「絵が濃ゆいな……」

(*゚∀゚) 「あひゃー。弟者はご飯とパンどっちが良いー?」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「夕飯には是非ともご飯で攻めたいところです」

(*゚∀゚) 「わかった任せろー」



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:33:19.30 ID:X2JuycG90

ああ、なんかいいなぁ。こう言うの。
今頃一人ねずみーらんどでおおはしゃぎの弟者には一生わかるまい。

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「ええいアンドレは!アンドレはまだ出てこないのか!!」

(*゚∀゚) 「おー。ベル薔薇読んでたのか弟者ー。出来たぞステーキ」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「なんと」

美味しそうなステーキの皿を持ってつーちゃんがこちらに向かってくる。
俺はベル薔薇を本棚に戻すと、皿を運ぶのを手伝うために立ち上がった。
あらやだ何この共同作業。ラブラブ?ねぇ、私たちラブラブかしら?
もうカップル板に言って涙を流す事もなくなるのかしらん?

(*゚∀゚) 「さぁ食べてくれー」

 Ω Ω
(*´_ゝ`)「うむ。頂こう」

つーちゃんは自分は箸を持つことなく、俺が食べるのを期待に満ちた目で待っていた。
俺は、箸でも食べやすいように一口大に切り分けられたステーキを口に含む。
濃厚なステーキソースの旨みに柔らかな牛肉の歯ざわり。
それらが口内で合わさって、そしてさらりと溶ける。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:33:56.09 ID:X2JuycG90

 Ω Ω
(*´_ゝ`)「うまい!」

(*゚∀゚) 「本当かー!?流石タロベェだなー!!」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「タロベェもこんな料理上手なつーちゃんに料理してもらって幸せだな」

(*゚∀゚) 「照れるんだぜー」

それから二人でタロベェの人生に思いを馳せつつ夕食は和やかに進んだ。
二人の皿がおおかた空になるところでつーちゃんは、ずいと身を乗り出す。

(*゚∀゚) 「それでなー。弟者にお願いがあるんだぜー」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「ん?何だ?」

ほーら来たぞ来た来た来た来た。
見えるかいジョン!マイケル!ソニー!ついでに弟者!
そびえ立つこのフラグの雄雄しいことを!
夕日を受けて輝くその姿の美しいことを!

(*゚∀゚) 「ずっと、この部屋にいてくれないか?」

 Ω Ω
(;´_ゝ`)「は?」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:36:05.24 ID:X2JuycG90

おぜうさん?
告白接吻性交倦怠期仲直りすっ飛ばしていきなり同棲ですか?
あなた、少し急展開すぎやぁしませんかねぇ?

(*゚∀゚) 「あひゃー。てゆーかな。弟者、今日からこの部屋から出ちゃ駄目なんだぜ?」

 Ω Ω
(;´_ゝ`)「あー…なんだっけこーゆーの…」

なんか、喉まで出掛かってるんだけどさー。
俺、二次元でこーゆーの結構見てる気がするんだよー。

(*゚∀゚) 「あひゃひゃひゃひゃ。もしなー。逃げるようなことがあったら、痛い思いすることになるんだぜ?
     もちろん弟者だけに痛い思いさせるわけにもいかないからその時は俺もお揃いの傷をつけるんだー。
     弟者が逃げようとするたび、お揃いの傷が増えて二人の愛も深まるって寸法なんだぜ?
     でも、もちろん弟者が逃げないってわかってるけどなー。でも、なんにしろ愛に間違いや障害は付き物だからなー」

あーあーあー。思い出した……。

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「ヤンデレだ…」

大人の階段一段目。思ってたよりもきっついなぁ……。
それにしても、いつもこんな世界にいるリア充は凄いな。
流石、リアルが充実してるだけあるぜ。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:36:59.31 ID:X2JuycG90

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ。

その時、妙な静寂に支配されていた部屋に俺の携帯電話のバイブ音が響き渡る。
それはタイトル、本文共になしの素っ気無いメールで、唯一添付ファイルの画像が一枚だけついていた。
それは多くの電飾に飾られたねずみーのパレードが鮮やかに映し出された見事な一枚だったが、
当然の如くその携帯電話は希代の萌え娘、つー嬢により逆パカ(携帯電話を通常開く方向と逆方向にパキっとする技)され、
その後永遠の沈黙を約束される事となる。

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「卵子作戦……失敗だったな……」

(*゚∀゚) 「あひゃひゃひゃ。それよりも弟者一緒にテレビ見ようぜテレビー」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「うむ。こうなれば深夜のアニメまで付き合ってもらおう」

(*゚∀゚) 「なんだー?深夜にアニメなんかやってるのかー?」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「この世には夜中にアニメを見る、大きいお友達と言う種族がいるんだよ」

(*゚∀゚) 「そうかー。弟者は大きいお友達なんだなー。でも弟者はお友達じゃなくて恋人だからなー」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:37:41.18 ID:X2JuycG90

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「あーそれなんだけどさ。俺、弟者じゃなくて、双子の兄の方の兄者なんだけど、帰っていい?」

(*゚∀゚) 「そんなつまらない冗談言うと、悲しくて泣いちゃうぞー?」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「ですよねー」

(*゚∀゚) 「次言ったら背中にカッターで『嘘吐き』って書くからなー」

 Ω Ω
(;´_ゝ`)「ハイワカリマシタ。ボクウソツキマセン」



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:38:48.49 ID:X2JuycG90

(*゚∀゚) 「なーところでその耳いつまでつけてるんだー?可愛いぞー?」

 Ω Ω
( ´_ゝ`)「耳?」

(*゚∀゚) 「弟者はおっちょこちょいだなーもー」

つーちゃんは手を伸ばして俺の頭の耳を外してくれた。
え?俺これつけてさっきまで生活してたの?

(;´_ゝ`)「やっちまったぜ……」

拝啓家族様。
彼女いない暦21年のこんな俺にも、
可愛い恋人が出来ました。





('A`)「あれ…?また弟者…?」

( ´_ゝ`)「よう。ソウルブラザー」

そこは大学の構内だった。
玄関ホールの掲示板の前。貧相な男がこちらを訝しげに伺っている。

('A`)「あっちにも弟者でこっちにも弟者…?あれ?」



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:42:22.60 ID:X2JuycG90

( ´_ゝ`)「そんな事よりも早くあの美人との関係を教えろ。
       何をどうすれば美女にムサい男二人と言うエロ同人みたいな布陣になるのか、
       気になって夜も眠れないではないか」

(;'A`)「いや…寝てんじゃん…」

( ´_ゝ`)「ああ。しかも可愛い子の添い寝つきだった。
       手首縛られたのには驚いたが、あれはあれでとても良いものだ。
       今日は総合的に見ればご褒美の方が多かったから良しとしよう。
       明日は……わからんが」

(;'A`)「なんだかわからんけど……。どうしたの?」

( ´_ゝ`)「なんでもない。『二次元の属性を持った女が実際にいると立派な困ったちゃん』と言う教訓を身をもって体験しただけだ。
       お前、なんだかわからんが弟者の友達だろう?しばらく帰らないが心配ないと伝えておいてくれ。
       何しろ連絡手段も破壊されてな。せめてパソコンがあれば良かったんだが……」

Ω Ω
(´<_` )「人の友人にちょっかいを出すとは流石だな兄者」

( ´_ゝ`)「なんだ弟者来てたのか。それならそうと早く言えばいいものを」

(;'A`)「あれ!?弟者が二人……」

( ´_ゝ`)「どうも。格好よくて遊園地に一人で遊びに行ったりしない方の弟者こと兄者です」



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:45:01.93 ID:X2JuycG90


Ω Ω
(´<_` )「だから言ったろう?ドクオ、あれから何度言っても双子だと信じてくれなくて、俺はちょっと泣きそうだったぞ」

(;'A`)「ごめん…。だって見たことなかったから…お兄さん」

Ω Ω
(´<_` )「まあ、今納得してくれればそれでいいさ」

( ´_ゝ`)「それよりも弟者。俺は事情によりしばらく帰らないが心配しないでくれと母者に言っといてくれ」

Ω Ω
(´<_` )「把握した。なるべく早く帰れよ」

(;'A`)「えっとさ……。普通に話してるけど……これ夢だよ?」

( ´_ゝ`)「それがどうした?」

Ω Ω
(´<_` )「別に夢だろうと話すくらい、いいじゃないか」

(;'A`)「いや、そうだけど……実はこれ、夢だけどさ、夢じゃないんだよね」

( ´_ゝ`)「お前はどこのトトロだ。メイちゃんのパンツで抜くのだけは許さんぞ」

Ω Ω
(´<_` )「落ち着け兄者。とりあえず事情を説明してくれ。兄者も、ドクオもな」



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:46:56.71 ID:X2JuycG90

( ´_ゝ`)「別に説明する事など何も無い。ちょっとヤンデレの子に愛されちゃっただけだ」

(;'A`)「えっと……俺は……他人の夢を繋げる事があって……それで……」

Ω Ω
(´<_`;)「お前ら……。そう言うのは中学二年生までに終わらせておかないと恥ずかしいぞって習わなかったか…?」

(#´_ゝ`)「誰が中二病だ」

(;'A`)「ごめんなさい……あ、なんか俺今、素直に傷付いたわ……」

( ´_ゝ`)「まあ、あれだ。案ずるな」

Ω Ω
(´<_` )「無事に帰って来いよ」

( ´_ゝ`)「善処する」

Ω Ω
(´<_` )「ん」



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:47:45.06 ID:X2JuycG90

( ´_ゝ`)「あとお前耳つけっぱなしだぞ」

Ω Ω
(´<_` )「大丈夫。わざとだから」

( ´_ゝ`)「そうか。変態だな」

Ω Ω
(´<_` )「違う。夢見る年頃だと言ってくれ」

( ´_ゝ`)「わかった。変態だな」

Ω Ω
(´<_`#)「違うと言っておろうに!」

(;'A`)「………」



(*゚∀゚) 「おはよう弟者ー。よく眠れたかー?」

ああ、夢だったんだよなぁ。
可愛らしいおにゃのこが包丁片手に起こしてくれるシチュエーション。

( ´_ゝ`)「んなわけあるかい」

包丁に驚いて折角のモーニング勃起も萎む思いなんだぜ。
全く朝からハードだなぁ。俺の可愛いつーちゃんは。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:48:22.78 ID:X2JuycG90

(*゚∀゚) 「ん?緊張してあんまり眠れなかったのか?実は俺もなんだぜ。お揃いだなお揃いー」

( ´_ゝ`)「つーちゃん…?その包丁は…?」

(*゚∀゚) 「ああ、朝ごはん作ったんだー。ご飯と目玉焼きと玉子焼きにしてみたんだぜー。
     顔洗ったら一緒に食べようなー」

( ´_ゝ`)「あれ?それ心なしか卵率高くないか?」

(*゚∀゚) 「目玉焼きと玉子焼きどっちにしようか凄く迷ったんだー」

( ´_ゝ`)「そうか。ところで手首の縄ほどいてくれないか。これだと顔を洗えない」

(*゚∀゚) 「わかったんだぜー」

つーちゃんは包丁を片手に素直に縄をほどいてくれた。
うむ。高感度アップだ。

( ´_ゝ`)「洗面台借りさせて貰う」

(*゚∀゚) 「あひゃー。メンズ用の洗顔フォームも用意してあるんだぜー」

( ´_ゝ`)「用意がいいな」

(*゚∀゚) 「あひゃひゃ。ずっと用意してたからなー」

( ´_ゝ`)「そうか。男なんて石鹸で十分なのにな」



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:50:15.66 ID:X2JuycG90

(*゚∀゚) 「そうなのかー。なぁなぁ弟者ー?」

( ´_ゝ`)「何だ?」

(*゚∀゚) 「愛してるんだぜー?」

( ´_ゝ`)「知っている」

(*゚∀゚) 「…あひゃー♪」

だけど、残念だったねつーちゃん。
君の事はとても可愛いけれど、
俺と弟者も見分けられない人間が俺の事を、
愛せるはずなんてないだろう?

(*゚∀゚) 「なぁなぁ。今日は俺も講義ないからずっと一緒にいられるんだぜー」

( ´_ゝ`)「俺も引きこもるの大好きだから一緒にいられるんだぜー」

(*゚∀゚) 「あひゃー♪一緒だな」

( ´_ゝ`)「うむ」

(*゚∀゚) 「何する何するー?」

( ´_ゝ`)「アンニュイな言葉しりとり」



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:50:48.92 ID:X2JuycG90

(*゚∀゚) 「わかったー。でもその前にご飯を食べなきゃなー」

( ´_ゝ`)「うむ」

朝ごはんを食べてアンニュイな言葉しりとりをしながらテレビを見る。
NHKの教育番組を鑑賞しながらのアンニュイな言葉しりとりは中々にシュールで悪くなかった。
つーちゃんは時折擦り寄ってきては頭を撫でろと命令する。とても可愛い。
そして包丁やらカッターやらをちらつかせては一緒にいろと命令する。とても可愛い。

(*゚∀゚) 「ずぅっと一緒なー。弟者はこれから俺以外と話しちゃ駄目なんだからなー」

( ´_ゝ`)「泣き寝入り」

(*゚∀゚) 「リュックあるだろー。弟者が持ってきたやつー。あれ、弟者が寝てる間に捨てちゃったけど許して欲しいんだぜー」

( ´_ゝ`)「喘息持ち」

(*゚∀゚) 「超迷ったんだけどなー。でも、俺以外の女の声の入ったCD入ってたから我慢できなくてごめんなー。」

( ´_ゝ`)「生肉」

(*゚∀゚) 「繰り返すんだけど、弟者これから俺以外と話しちゃ駄目だからなー。
     退屈だろうからテレビだけは見ていいけど、部屋から出るのも駄目だからなー」

ああ、弟者。
俺、すげぇ愛されてるわ。
お前に代わって欲しいくらいだぜ。



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:54:10.26 ID:X2JuycG90

( ´_ゝ`)「なぁ、つかぬ事を聞くけどさ。俺のどこが好きなの?」

もとい、弟者のどこが好きなの?
我が弟は今でさえリア充の皮を被っているが、
昔は俺以上の立派な引きこもりの上、
酷いどもりでツッコミも満足に入れられない、へたれだったと言うのに。
何ゆえこのように情熱的に愛されているのか。

(*゚∀゚) 「んー。弟者はなー。凄いんだー」

( ´_ゝ`)「そうか凄いか。流石だな」

(*゚∀゚) 「覚えてるかー?ゼミで会ってなー。初めて話した時なー。
     俺が可愛くないから彼氏が出来ないんだーって言ったらなー。
     その時弟者『どうしてそう思うんだ?』って聞いたんだー。
     俺びっくりしたんだー。普通はなー。『そんなことないよー』ってお世辞言ってなー。
     みんな俺を騙すのになー。弟者は凄かったんだー」

( ´_ゝ`)「そんな…事、あったのか?」

(*゚∀゚) 「覚えてないのかー?」

( ´_ゝ`)「いや…覚えている」

俺は記憶の糸を探る。
扉の向こうの弟者。
その頃には、まだあてがわれていた一人部屋の中で、
小さくなっているであろう弟の、小さな小さな声。



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:55:05.91 ID:X2JuycG90

『だ、だ、だだって……お、おお俺が行ったら、み、みんな……わら、わ、笑う、んだ』

『なんて?』

『ま、まままた、あに、あ、兄者の、に、ににせ、偽者が、来たって……』

『偽者?』

『あ、あ、あ、兄者と、そ、そそそっくり、なのに、お、お俺、
 う、うううまく、喋れなくて……。べ、勉強も、うんど、運動も……』

『そうか』

『お、おお、俺、だか、だから、だ、だ駄目、だから、ああ兄者と、違う……』

思い出す。
その時ちりちりと、俺の胸を焦がした、いらつき。
下らない妄言で、弟の居場所を奪った学校の馬鹿どもと、
俺の存在ごときに打ちひしがれてる馬鹿な弟と、
そして、大事な弟を、『偽者』にした俺自身の存在に対する、怒り。


『どうして、そう思うんだ?』



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 21:55:49.66 ID:X2JuycG90

次の日から俺は、どうしたかと言うと、学校で土下座した。
目に付いた女子に、片っ端から縦笛を舐めさせてくれと土下座しまくった。
そしてそれを弟者の部屋の前で誇らしげに語る。
今日は二組の○○ちゃんが一時間半に渡る土下座の末、少し舐めさせてくれた。凄かった。
お兄ちゃんもうエレクチオンしまくり。弟者にもこの興奮を味わわせてやりたいのに残念だ。
早くお前も学校に来ればいいのに。一緒に土下座しようぜ。楽しいぞ。

弟者。泣き叫んでた。

そしてそんな生活が一週間ほど続いた後、弟は学校に来た。
何故かどもりも改善されてた。
必死で俺の行動を止めようとしていた。

しかし俺の関心はもう、馬鹿な弟などから、女子の縦笛へと移った後だったので、
彼のツッコミは、小鳥のさえずり、川のせせらぎ、タモリの知識自慢のように右から左に抜けていく。

益々ツッコミが激しくなる弟者。
鋭いアッパーをかまして俺をダウンさせる弟者。
ついにマウントまで取り出す弟者。

マウントを取られついでに女子のスカートを覗く俺。
目潰しにかかる弟者。
目を潰されたので、がむしゃらに腕を動かして女子の太ももを触ろうとする俺。
両手をがっちり掴んで鈍い音が鳴るまで捻ろうとする弟者。
なんだかこいつ、母者に似てきたなぁと薄れかけた意識で思う俺。


……懐かしいなぁ。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:00:40.63 ID:X2JuycG90


(*゚∀゚) 「だからなー。弟者は凄いんだー。誠実なんだー。だから恋人なんだー」

( ´_ゝ`)「マウントとるけどな」

(*゚∀゚) 「マウント?」

( ´_ゝ`)「何でもない」

(*゚∀゚) 「それでな。それでな。今日は何食べたいんだー?昼ごはんはな。オムライスにしようと思うんだけどなー。
     晩御飯はな。まだお肉が余ってるからそれで何か作ろうと思うんだぜー?何がいい?何がいい?」

( ´_ゝ`)「オムライス」

(*゚∀゚) 「それじゃーオムライス続いちゃうだろー。わかったじゃあ、牛丼にするんだぜー。
     卵落としてなー。美味しい奴作るからなー。楽しみにしててなー」

(;´_ゝ`)「卵率高いなぁ……」

それは、ケチャップで『弟者のエサ』と描かれたオムライスを食べ終わってすぐの事だった。
『ごきげんよう』を鑑賞していた俺たちの平和を打ち破る、チャイムが鳴った。
つーは動かないで声もあげないように、との命令を出し玄関へと急ぐ。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:01:12.91 ID:X2JuycG90

(*゚∀゚) 「どなたですかー」

「お届けものでーす」

(*゚∀゚) 「はいはい今開けまーす」

ガチャリとドアが開いて荷物のやり取りをする音が聞こえる。
その後つーちゃんは満面の笑みを浮かべて戻ってきたー。

(*゚∀゚) 「実家からまた食料届いたんだぜー。これで買出し行かなくてもいいなー」

( ´_ゝ`)「引きこもり放題だな……」

それから、ベルサイユの薔薇を全巻読破したり、牛丼を食べたり、
芸人が切り売りされているお笑い番組を横目に二人で大富豪をしたり、
続き物で展開がなんとなく想像出来るドラマを眺めているうちに夜になった。

希代の萌え娘であるつーちゃんは、膝の上に乗って来ては俺に頭を撫でさせたり、
『愛してる』だの『傍にいる』だの単調な台詞を吐かせては喜んでいたが、
残念ながら俺の息子はそんな事で満足したりしないわけで。

折角人生に一度あるかないかのヤンデレイベントだと言うのに。
時折刃物片手に見せるどS発言と、本気で殺る目だけがご褒美だと思うと……。

( ´_ゝ`)「割に合わん……」

(*゚∀゚) 「んー?どうしたー?手首痛かったかー?もうちょっと緩めて縛るかー?」



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:02:41.44 ID:X2JuycG90

( ´_ゝ`)「問題ない。むしろもっときつく縛ってくれ」

(*゚∀゚) 「よし来たー」

(*´_ゝ`)「あぁん」

いやでも、これはこれで悪くないかもわからんね……。

そして、今日発見した事実。
パソコンがなくても、結構時間は潰せる。



そこは、大学のゼミ室だった。
窓際にはソウルブラザーがこちらを向いて立っている。

( ´_ゝ`)「よう。ソウルブラザー」

(;'A`)「あ、大丈夫?もしかしてさ。結構大変な事になってるんじゃない?」

Ω Ω
(´<_` )「こいつは心配いらん。ドクオ」

(;'A`)「だって携帯も通じないんだろ?俺も大惨事になったら責任感じちゃうし……」



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:04:32.09 ID:X2JuycG90

Ω Ω
(´<_` )「全く……。こんな変態捨て置けばいい」

(;'A`)「それなんだけどさ。君ら。不思議じゃないの?」

( ´_ゝ`)「何が?」

(;'A`)「いや、夢がさ、繋がってるの……。会いに行ったら弟者も普通に受け入れてるし……」

Ω Ω
(´<_` )「まあ、そんな事もあるだろう」

(;'A`)「ああ、そう……」

( ´_ゝ`)「考えてもみろ。俺と弟者だって違う人間だと言うのに、高々血が繋がっている、
       それだけの理由でこんなにそっくりなんだ。そっちの方が不思議じゃないか?」

Ω Ω
(´<_` )「世の中不思議でいっぱいだ」

(;'A`)「それでいいの?」

( ´_ゝ`)「構わん。それよりも未だにねず耳つけている変態にどう制裁を与えるか我々は考えるべきだ」



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:05:07.99 ID:X2JuycG90

Ω Ω
(´<_` )「夢の世界くらい、自分を解き放つ必要があると思う」

( ´_ゝ`)「わかったから誇らしげな顔をするな。不快だ」

(;'A`)「えっと……」

Ω Ω
(´<_` )「それで、いつ帰ってくるんだ?」

( ´_ゝ`)「希代の萌え娘にときめきを与えられたら」

Ω Ω
(´<_` )「把握した。昨日は勢いに任せて早く帰って来いと言ってしまったが、
       存外帰ってこなくても大丈夫だから心配するなよ」

( ´_ゝ`)「ああ。俺のコレクションには触るなよ」

Ω Ω
(´<_` )「誰が触るかあんな汚いもん」

(#´_ゝ`)「汚いだと!!俺の神聖なコレクションを指して言うに事書いて汚いだと!!
       俺が精子をつけないようにどれだけ気をつけて扱っているのかわかっているのか!?」

Ω Ω
(´<_` )「よしわかった。明日燃やしとくわ」

(#´_ゝ`)「てめぇ」



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:08:37.98 ID:X2JuycG90

(;'A`)「あのさ……。俺、どうすればいいかな……?」

( ´_ゝ`)「その事なんだがソウルブラザー。相談があるんだ」

(;'A`)「え、何何?」

( ´_ゝ`)「『経済ヴィーナスハイン様』を見忘れた。データ持ってないか?」

(;'A`)「あ、それならばっちり。CMカットもしてある」

(*´_ゝ`)「おぉ。流石ソウルブラザー。弟者はいくら頼んでもアニメの録画してくれないんだ」

Ω Ω
(´<_` )「アニメはリアルタイムで見てこそだろ。兄者は何もわかってない」

(;'A`)「ああ、そう……」



(*゚∀゚) 「おはよー弟者ー!今日も愛してるんだぜー!!」

曰く。君は、わかっていない……。

( ´_ゝ`)「愛してるなら玉を蹴るとか、顔面騎乗位とかすべきだろうが!」

(;*゚∀゚) 「……そう言うのは、まだちょっと……籍を入れてからにしようかなって……」

新ジャンル。貞操観念ヤンデレ。



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:09:28.22 ID:X2JuycG90

( ´_ゝ`)「需要無ぇ……」

(*゚∀゚) 「それよりもなー。今日も講義サボるから一緒にいられるんだぜー」

( ´_ゝ`)「俺も引きこもるの大好きだから一緒にいられるんだぜー」

(*゚∀゚) 「なーなー。今日の朝ごはんはパンと卵サラダとゆで卵なんだぜー」

( ´_ゝ`)「うむ。大丈夫大丈夫。俺卵大好きだから!」

(*゚∀゚) 「あひゃー!!じゃあ、縄を解いてやるからなー!!」

しかし、縄を解こうとするつーちゃんの手がふと止まる。

(*゚∀゚) 「……その前に、おはようのちゅーとか、しなきゃなー……」

(*´_ゝ`)「なんと」

(*゚∀゚) 「……あひゃー」

やっべ、つーちゃん照れてる。超可愛い。
手をばたばたさせてこっちを伺うように見つめた後。
手首を縛られてごろごろしてる俺の顔につーちゃんの顔が近づく……。

その時、不躾なチャイムが鳴った。

(#´_ゝ`)「あ゛ー……」



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:10:30.58 ID:X2JuycG90

(;*゚∀゚) 「ちょちょちょ、ちょっと見てくるなー!大人しくして待っててなー」

そうしてベッドを後にするつーちゃん。
俺は成すすべもなく無様に転がりながら玄関から漏れる声を聞く。
どちら様ですかー。すいませんうちの馬鹿を迎えに来ました。

(*゚∀゚) 「は?どういう意味だー?」

「とりあえず玄関開けて貰えないかな?つーちゃん」

(*゚∀゚) 「ん?兄者かー?なんか勘違いしてるみたいだけど、どうしたんだー?」

「うん。いいからドア、開けてくれない?」

つーちゃんは慌しく戻ってくると、俺に耳打ちをする。
いい子にしててな、弟者。
そうしてタオルを俺の口の中に押し込み、更に上から猿轡をかますと、
再び玄関に向かった。

(*゚∀゚) 「なぁ、どうしたんだよー?お前、兄者だよなー?声でわかるぞー。何かあったのかー?
     あれ?そう言えばどーしてうちの場所知ってるんだー?」

「ゼミで名簿作ってたろ?あれに住所も入ってたから」



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:13:37.97 ID:X2JuycG90

ベッドに転がりながら俺は思う。つーちゃん。君は可愛い萌えキャラだけど、頭が足りない。
全く。ヤンデレ娘は賢いと相場は決まっているだろうが。
弟者も弟者だ。捨て置くと言いながらわざわざ尋ねおって。ツンデレめ。

ドアを開ける音。
元どもりの弟者の、格好つけた声。

(´<_` )「ごめん。変態で馬鹿で救いよう無いけどさ。あれでも家族は家族だから、返して貰える?」

(*゚∀゚) 「何のことだー?」

必死にとぼけるつーちゃん。
だけど残念な事に君はもう、どうしようもない程に詰んでいるんだよ。

(´<_` )「あのさ。なんで俺が兄者だってわかったの?」

(*゚∀゚) 「え?」

(´<_` )「教えてくれる?」

(*゚∀゚) 「あ………」



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:15:05.35 ID:X2JuycG90

つーちゃんは、阿呆な声をあげて固まっている。
そう。もし、つーちゃんが俺を連れ込んでいないのなら、

扉の向こうの弟者を兄者だと思う筈はない。

双子のどちらかが訪ねてきたら、普通は親交のある方だと思うだろう。
まず、先日会ったばかりの他人だとは考えない。

(´<_` )「ごめん。上がるね」

(;*゚∀゚) 「待てっ!!待てってばー!!!」

焦るつーちゃんの声が聞こえる。
ばたばたと、こちらに近づくふたつの足音。
大学生の一人暮らしだ。
リビングと、寝室。キッチン。トイレ。洗面台。風呂。
それだけの間取りで、迷うはずはない。

寝室の扉を開く弟者。

(;*゚∀゚) 「やめろぉおおおおおお!!!」

( ´ ゝ`)「むぐぅ」

目が合った。

(´<_` )「………」

寝室の扉を閉める弟者。



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:31:14.58 ID:X2JuycG90

(´<_` )「つーちゃんごめん。勘違いだったわ」

(*゚∀゚) 「は?」

(´<_` )「俺にこんな兄弟はいない。ごめん。うん全然勘違いだった。
       楽しいプレイの邪魔してごめんね。俺、ほんと何も見なかったから。いや、マジで」

(#´ ゝ`)「もがががががーーー!!!」

(*゚∀゚) 「………」

(´<_` )「帰るわ。うちの馬鹿兄者をよろしく。つーちゃん」

(*゚∀゚) 「え?馬鹿兄者って………」

(´<_` )「じゃあね。今日のゼミでまた」

(*゚∀゚) 「お前……兄者じゃないのかー……?」

(´<_` )「そう言うと思って。ほら。学生証と運転免許
       ああ、それよりもこれを言うのが確実か。 
       覚えてる?初めて会った時にさ、つーちゃん言ったよね。
       『可愛くないから彼氏が出来ない』って。
       俺、『どうして、そう思うんだ?』って返したと思うんだけど」

(*゚∀゚) 「え……?」

寝室の扉を開けてこちらを確認するつーちゃん。
何度か、彼女の視線が俺と弟者を往復する。



97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:35:17.72 ID:X2JuycG90

そのうちに彼女の体はカタカタと震え始め、
そして、吼えた。

(*゚∀゚) 「あ、ああああぁああああ!!」

(#*゚∀゚) 「な、何だよー!騙したのかよー!二人して!!二人して俺を!!
      なんで?何で何で何で?愛してるって!!愛してるのに!!弟者!弟者!弟者!!
      やっと、やっとやっと捕まえて、部屋に入れて、もう二度と、外に出さないで!!
      一緒で!!ずぅっと一緒で!!愛してる!!愛してるのに!!
      あ、あ、ああぁああああああ!!!」

弟者にすがり付くつーちゃん。

(´<_` )「いや。大丈夫。兄者の方がそーゆープレイ好きだから。結果オーライ」

(*;∀;)「そーじゃねーだろぉおお!!」

つーちゃんの目には大粒の涙が溜まっている。
弟者は涼しい顔で今にも帰ろうと俺に背を向けやがった。てめぇ。
その時、玄関からもう一つの人影がぬるりと出てきた。

(;'A`)「一応、連れて帰った方がいいと思うよ?うん」



99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:37:04.82 ID:X2JuycG90

(´<_` )「女の子の部屋に勝手に入っちゃ駄目だろうが。待ってろと言ったのに」

(;'A`)「だって今、弟者めちゃめちゃ帰る気満々だったじゃん」

(´<_` )「今の兄者を見てみろ。あんなに輝いてる兄者を邪魔する事なんて俺には出来んよ」

ソウルブラザーがこちらを見る。
彼は驚いたように目を見開いて、そして数秒俯いた後、

(;'A`)「いやいやいや!!あれ普通に考えてプレイじゃなくて拉致監禁されてるんだと思うよ!?」

(´<_` )「マジで?」

ああ。
こいつら駄目だ。
変態の馬鹿ばっかりだ。
全く。

そんなもん。
俺一人で十分だろうが。



101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:40:06.76 ID:X2JuycG90



ソウルブラザーが恐る恐る近づいてきて、俺の猿轡と手首の縄を外す。
つーちゃんは、床に座り込んでほろほろと泣いていた。
俺は彼女に近づくと、おもむろに彼女に向かい土下座した。
誰が見ても惚れ惚れする、ナイスな土下座だったと思う。

( ´_ゝ`)「お願いします!ストッキングを履いた足で俺のたまたま踏んでください!!」

(*;∀;)「は………?」

彼女は信じられないと言った顔でこちらを向いて、
再び、喚いた。

(*:∀;)「み、み、みんな出てけぇええええ!!!」

向こうで、だから俺の言った通りだろう、と言う弟の声が聞こえた。





結局つーちゃんは、俺にときめく事はなかった。
それなら、俺らの見分けがつかなくても仕方ない。
そして弟者に、何故迎えに来たのかを尋ねたら、『母者におつかいを頼まれたから』らしい。
何故かついてきたソウルブラザーを引き連れて、キロ単位のウスターソースを運びながら、
弟者はどこか不満そうに俺に言った。



103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:40:45.70 ID:X2JuycG90

(´<_` )「兄者、つーちゃんに勝手に赤外線送っただろう」

( ´_ゝ`)「ばれたか」

(´<_` )「貴重なおにゃのこの登録件数を一件減らしやがって」

( ´_ゝ`)「許せ」

(´<_` )「条件がある」

( ´_ゝ`)「何だ」

(´<_` )「ねずみーr( ´_ゝ`)「断る」

(;'A`)「………なぁ」

( ´_ゝ`)「「何だ?」」(´<_` )

(;'A`)「お前ら、仲いいな」

( ´_ゝ`)「「まさか」」(´<_` )

俺たちは、双子。
お互いがお互いのクロンである、
世にも珍しい、
他人同士。



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/04(金) 22:41:37.23 ID:X2JuycG90
('A`)ドクオが夢を紡ぐようです 第五話 了



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