('A`)ドクオが夢を紡ぐようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/23(木) 23:57:02.25 ID:xUsRlGhP0
数日前にやっと恋人が出来た。
冗談抜きに体力を削りながら情熱を注ぎ込み試行錯誤を繰り返した末にやっと出来た恋人だった。
だから、彼女のためにたくさんの服を作ってあげようと思って、たくさんの布を買いに出かけた。

いくつかの手芸屋を渡り歩き、イメージに合致する布を買い漁る。
部屋に残してきた恋人のことを思いながら布を選ぶのはくすぐったくなるような幸いの時間だった。手に取った布で作った服を着た恋人の

笑顔を頭に思い浮かべるだけで、じわじわと喜びが込み上げる。

買い物を終えて電車に乗り込む頃には外はすっかり暗くなっていた。

丸められた色とりどりの布たちが紙袋から顔を出していて、それが花束のように見えたから、重みで肩の間接がぎしぎしと悲鳴をあげてい

ても足取りは軽かった。


lw´‐ _‐ノv 「ツーちゃんのたーめなーらえーんやこーら♪」

早く部屋に帰ってツーちゃんの服を作りたい。
出来上がったら綺麗に着せてあげて写真も撮ろう。そうだ。デジタルの一眼レフを買おう。ウェブページにあげるためにも最高の写真を撮

らないと。
ツーちゃんの魅力を余すことなく万人に伝えなくては。それが僕の指名なのだから。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:00:02.10 ID:97Bl00Ak0
lw´‐ _‐ノv 「しまった…。靴はどうしようかな。既製品は嫌だ。合皮で作れるかな…。僕のミシンなら固めの皮も縫えるし、どうにかなるかも…。早速勉強しないと…。」

ツーちゃんの事をあれこれと考えているうちに電車はあっという間に最寄り駅へと到着していた。
駅から僕の部屋までは5分もかからない。僕は意気揚々とホームへと降り立った。

そこで、女神に遭遇した。

(*゚∀゚)「あ、シューじゃん。シューも今帰りか?」

lw;‐ _‐ノv 「ツーちゃん!?」

(*゚∀゚)「ん?何だその大荷物。布?なんか作るのか?」

lw;‐ _‐ノv 「これは…」

(*゚∀゚)「あーわかった!お前、ごすろりだろ!」

lw;‐ _‐ノv 「は?」

(*゚∀゚)「違うのか?服を作るのはこすぷれかごすろりだって前に兄者から聞いたんだ!」

lw;‐ _‐ノv 「いや…、えっと…」

(*゚∀゚)「ごすろりってあれだろ?たまに見かけるスカートがぶわーってなってるフランス人形みたいな服だろ?シューが着るのか?楽しみだなー」

lw;‐ _‐ノv「え、あ、そうじゃなくて…」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:01:58.07 ID:97Bl00Ak0
(*゚∀゚)「出来たら見せてくれよな!じゃあ、またなー!」
 
女神はそう言って颯爽と駅の階段を降りていった。
僕は鳴り止まぬ心臓の音を聞きながら、荷物の重みも忘れて呆然とホームに立ち尽くすしか出来なきない。

どうしよう。やっぱりツーちゃんは美しすぎる。心の準備が出来てないと折角会えても上手く話が出来ない。

しまった。忘れないうちに会話を全部メモしておかなければ。普段ならレコーダーを使ってツーちゃんの声を全て記録しておくんだが、出かける時にツーちゃんと会話する事を想定していなかったからレコーダーを持っていなかった。

いや、それよりも、彼女は何を言った?ゴスロリ?僕が?スカート一枚持ってないのに?作るのか?いや、作るのは全然余裕だけど、着るのか?


 (*゚∀゚)「可愛いシューの可愛いゴスロリ姿、楽しみにしてるからな!絶対出来たら見せろよ!」


僕は女神の宣託を思い出す。


lw´‐ _‐ノv 「…作ろう」

そうだ。どうせだったら、ツーちゃんとお揃いで作ろう。それで、イベントの日は一緒にお出かけするんだ。
幸いにも、布はどれも多めに買ったからきっと間に合うだろう。

lw´‐ _‐ノv 「ふふ……」

メモ帳に先ほどの会話を書き写しながら、お揃いの服を着てイベントにお出かけする僕らの姿を想像する。

嗚呼。
これこそが幸せ。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:05:55.61 ID:97Bl00Ak0




lw´‐ _‐ノv 「ただいまー」

(*゚∀゚)「お帰り。遅かったなー待ちくたびれたぞー」

僕の恋人は手作りのベッドの上でリラックスしながら僕を待っていてくれた。僕が出かけた時と同じ寝巻きを着ている。
この寝巻きは僕が家にあった布で簡単にあつらえたモノで出来があんまり良くない。
なので本当はツーちゃんに着せたくないのだが、優しいツーちゃんは他でもない僕が作ったものだから、と嬉しそうに袖を通してくれた。

lw´‐ _‐ノv 「ごめんねツーちゃん。つい買い物に夢中になっちゃって」

(*゚∀゚)「おお。たくさん買ったなー」

lw´‐ _‐ノv 「うん。ツーちゃんの服だからね。いくらでもイメージが沸いてきて、布もどんどん欲しくなっちゃって……」

(*゚∀゚)「楽しみだなー。でも、このパジャマも好きだぞー。なんてったって、シューが始めて俺に作ってくれた服だからなー」

lw´‐ _‐ノv 「ツーちゃん……」

僕はなんて幸せなんだろう。
目の前にいる恋人がとてつもなく愛しく思えて思わず手を伸ばしたが、僕の汚い手でツーちゃんを汚してしまったら大変だと理性が告げて、なんとか思い留まる。
代わりに買ってきたばかりの布をツーちゃんの目の前に一枚ずつ広げて見せてやる。やはり服を作るなら彼女の希望も聞かないとならない。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:06:40.52 ID:97Bl00Ak0

(*゚∀゚)「あ、この色いいな。綺麗な夕日色。うーん…でもこれを服にするとなると、少し派手かな」

lw´‐ _‐ノv 「そんな事ないさ。ツーちゃんは色が白いから、よく似合う」

(*゚∀゚)「えへへ。照れるんだぜ」

lw´‐ _‐ノv 「しばらくは寝る暇ないな。ミシンフル稼働で頑張るから、ね?」

(*゚∀゚)「愛してるんだぜシュー」

lw´‐ _‐ノv 「ぼ、く、も」

ツーちゃんのとろけるような笑顔を原動力に、僕は早速型紙を作り始める。少なくとも今日は、眠る気はなかった。

大好きな恋人、そして愛する女神。
僕は、こんなに満たされた世界に生きていていいんだろうか。




('A`)「あんた……狂ってるよ」

lw´‐ _‐ノv 「さっき僕の分のゴスロリ服が出来たんだ。これでやっとツーちゃんの服にとりかかれる。もちろん、合間にツーちゃんの服を下着含めて3着ほど仕上たけど」

('A`)「俺、あんたのHPをブクマしてるよ。あんたがラマたんの写真をうpった時にはラマたんがこの世に降り立ったかと思った。感動したんだ」

lw´‐ _‐ノv 「それよりも模造紙が足りないんだ。布は足りなくならないように大量に買ったのに。全く持って盲点だった。代わりになるような紙なかったかな。また買い物に出ないと。あ、一眼レフは注文していたのがそろそろ届いたはず」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:09:12.80 ID:97Bl00Ak0

('A`)「あんた、あの世界では神だよね。俺は何も作れないから、本当に尊敬してる」

lw´‐ _‐ノv 「眠ってる場合じゃないんだよ。本当、眠らない体になればいいのに。やりたいことが多すぎる」

('A`)「だけどあんたはおかしいよ」

心地よい浮遊感に意識が戻るのを感じると、酷く不細工な男が僕の目の前に立っていた。こんな不細工な男がこの世に存在するはずはないから、これが夢だと気付いた。
男はしきりに、気持ちの悪い声で淡々と僕が狂っていると糾弾する。

lw´‐ _‐ノv 「おかしいのはお前の顔だ不細工」

(;'A`)「は…?」

lw#‐ _‐ノv 「あああああっ糞っ。睡眠は一日二時間でいいのに。今日の分の睡眠はもうとったんだ。たまにこうやって意識が落ちるのが我慢ならない。僕の時間をとるな。僕とツーちゃんの時間をとるな!」

僕は地団駄を踏みながら目の前の不細工に怒りをぶつける。
作ったばかりの黒いひらひらのゴスロリ服を躍らせながらこの世の理不尽を吐き出していく。

lw#‐ _‐ノv 「そもそもなんでお前みたいな不細工の顔を見なくちゃいけないんだよ!僕は美しいものに囲まれていたいのに!これだから男は嫌いなんだよ!美しくない!分かるか?あの男性器の間抜けなこと!精子を作れるからって偉そうな顔しやがって!」

(;'A`)「ひぃいい!すいません」

lw#‐ _‐ノv 「それなのにツーちゃんはあの弟者とか言う糞ちんこに心奪われる始末だ!あんな糸目のどこがいいんだ!しかもこの前ゼミを二人で休んでからますます仲良さげにしやがって!」

(;'A`)「え!?もしかしてあの後仲良くなったのかあいつら!ありえねぇ…」

lw#‐ _‐ノv「は?不細工お前何か知ってるのか!?」

(;'A`)「はひぃいいい何でもないっす!すいません!」



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:10:06.92 ID:97Bl00Ak0

lw´‐ _‐ノv 「いや…、ツーちゃんが何をしようといいんだ…。僕は、ツーちゃんの意思を尊重するから…うん…そうだ」

(;'A`)「もうやだ…。何この人…」

lw´‐ _‐ノv 「そうか…。この不細工は僕の醜い嫉妬心の塊なんだな。わざわざ夢に出てきて僕に警告をくれるんだ。つまり僕はこの不細工を抱きしめて、そして殺さなくてはならないんだ。わかった。わかったぞ。」

(;'A`)「もう、お願いだから日本語通じて下さい…」

lw´‐ _‐ノv 「よし来い不細工。抱きしめて僕のこの豊満な胸で圧死させてやろう。醜い嫉妬心もその身に受け入れて、僕はより高みへと行くんだ。ツーちゃんを幸せにするために」

僕は両手を広げて不細工に慈悲を見せてやる。
今まで僕の無意識の中で育てられた愛を知らぬ不細工に光を与えようと思った。
しかし不細工は初めて触れる優しさが信じられぬようで不安げに僕を見つめている。

(;'A`)「なんかもう……ギブです」

瞬間。世界が変わった。
心地よい眩暈に目を瞑ると、塩素の臭いが漂っているのを確認出来た。瞼を押し上げると、そこは温水プールのようだった。
25メートルだろうか。長方形の極一般的なプールの水面が、壁の高い位置に取り付けられた窓から差し込む光を受けてゆらゆらと輝いている。
僕は今までの人生で、この青で統一された空間が人で溢れていないのを見た事がなかったので、その静寂さに思わずうっとりと息を吐いた。
ツーちゃんも連れて来たかった。是非スクール水着を着せて良いカメラで撮影したい。そうだ。スクール水着も作ってあげよう。生地は僕が昔使ってた水着を使えばどうにかなるだろう。

lw´‐ _‐ノv 「あれ……そういえば不細工は?」

僕はぐるりと見回す。見通しの良いこの空間に不細工はもう見当たらないようだった。やはり醜い嫉妬心を受け入れるのには一筋縄じゃいかないようだ。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:12:56.43 ID:97Bl00Ak0

それはそれとして、今はプールを独り占め出来るようだし、折角だから水の中に入ろうと思った瞬間に。

目の前に女神が落ちてきた。

(*゚∀゚)「きゃっほーーーーーい!!」

女神の可愛らしい叫びが轟く水音に変わる。
誰もいないプールに飛び込む女神の姿は奇跡のように危うく美しかった。とびちる水しぶきさえ、女神の美しさを写し取るかの如くキラキラと輝く。

(*゚∀゚)「っぷは!」

女神が水面に頭を出してぷるぷると首を振る。濡れて頭に張り付いた髪が黒く艶めいて僕を誘う。ああ、今カメラを持ち合わせていたならば!

(*゚∀゚)「あひゃひゃひゃひゃひゃ!きもちー!」

女神は笑う。僕には祝福の鐘の音に聞こえた。否、確かに女神の笑い声は祝福の鐘の音だ。その声を聞けるのは僕にとってこの上ない祝福なのだから。

(*゚∀゚)「ん?シューなんだよいたのか。約束通りごすろり着てくれたんだなー」

屈託のない笑顔をこちらに向ける女神。僕はそこで女神が何も身に着けていない事に気がついた。肌色の肢体が水の中で揺らめいている!

lw;‐ _‐ノv「ツーちゃん! 服は…!」

(*゚∀゚)「あひゃー?シューしかいないんだったら別にいらないだろー!それよりもその服可愛いなー」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:16:12.51 ID:97Bl00Ak0

水の中をゆらゆらと歩きながら一糸纏わぬツーちゃんがこちらに近付いてくる。何度彼女の体を夢想したろう。何度フォトショを使って服を脱がせようとして思いとどまった事だろう。

lw;‐ _‐ノv 「あ、ありがとう。ツーちゃんも、可愛いよ。凄く…。綺麗だ」

もう、僕とツーちゃんの距離は5メートルを切っていて、プールサイドの僕には水の衣でぼかされているツーちゃんの乳首の色まで確認出来た。ちょっと濃い目の桃色。下の毛は茶色がかっていて少し薄めかな…。

(*゚∀゚)「あひゃ?なんだか女の子にそんな事言われると照れるなー。ありがとー。俺はシューの大きい胸が羨ましいぞー」

lw;‐ _‐ノv 「そ、そそ、そんな…。こんなの…、何するにも、邪魔な、だけ…」

距離が2メートル切った。ツーちゃんはプールのへりに両手をついて、今まさにプールから上がろうとしている。水の中で何度かジャンプをして勢いをつけ、ついに……。



(*'A`*)「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」



瞬間。全ての光がなくなった。

(*゚∀゚)「ん?起きたかシュー。おはようなんだぜー」

lw;‐ _‐ノv 「す、凄い夢を見てしまった……」

僕はミシンの前に突っ伏して眠っていたらしい。
左頬がじんじんと痛むと思ったらミシンのボビンが深々と刺さっていた。鏡で確認するとくっきりと跡がついている。これは、跡がとれるまで時間がかかりそうだ。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:18:44.61 ID:97Bl00Ak0

(*゚∀゚)「頑張るのもいいけど、倒れるまでやっちゃ駄目だぞ。シューは頑張り屋さんすぎて俺は心配なんだぞー」

lw´‐ _‐ノv 「ツーちゃん…」

恋人の優しい言葉に何か暖かいものが込み上げてくる。

lw´‐ _‐ノv 「ごめんねツーちゃん。心配させちゃったね。ツーちゃんのためだと思うと、つい頑張りすぎちゃうのは僕の悪い癖だね」

(*゚∀゚)「俺はシューが一番大事なんだからなー。いくら服やお友達があってもシューがいなかったら意味なんてないんだからな!」

lw´‐ _‐ノv 「ツーちゃん……ありがとう。僕、もう少し休むよ。睡眠はこれから三時間にするし、ご飯も面倒くさくてもちゃんと一日一回は食べる!」

(*゚∀゚)「あひゃー。嬉しいんだぜー」

lw´‐ _‐ノv 「ああ、恋人がいると、健康まで良くなるんだね。ツーちゃんは本当、僕の天使だよ」

(*゚∀゚)「あひゃー。照れるんだぜ。シューはいつも大げさだなぁ。まあ、そこが可愛いけどなー」

lw´‐ _‐ノv 「そんな…ツーちゃんの方が一万倍可愛いよ」

(*゚∀゚)「あひゃひゃ。恥ずかしがりやさんめー」

lw´‐ _‐ノv 「よし。そうと決まったら服を作ろう。いい子にして待ってるが良かろう。ツーちゃんの分のゴスロリ服をこしらえるからね」

(*゚∀゚)「楽しみにしてるんだぜー」

軽く顔を洗い再び衣装作りに励もうとミシンに向かう。散乱している布切れの中から裁断済みの生地を手に取る。事前に自分の分を製作していたため、イメージは完璧に出来ていた。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:20:00.05 ID:97Bl00Ak0

lw´‐ _‐ノv 「おk。みなぎってまいりました」

(*゚∀゚)「ちゃんとご飯も食べるんだぞー」

僕の意識は目の前のミシンの針に集中する。自分が鍛え抜かれた一振りの刀のように研ぎ澄まされるのが分かった。このまま6時間は休憩なしで作業が出来るだろう。

(*゚∀゚)「なあなあ、ところで今日は大学に行かなくていいのかー」

lw´‐ _‐ノv 「大丈夫。僕大学は6年スパンで通ってるから」

(*゚∀゚)「あひゃー。シューは別に医学部じゃないよなー。のんびり屋さんめー」

lw´‐ _‐ノv 「いいんだ。僕は将来フリーでやっていく予定だから、脛を齧れるうちは大学でゆっくりやろうと思って」

(*゚∀゚)「へぇー。流石俺の恋人だなー。人生設計が将来BLで食っていけると思ってるピコサークルの腐女子の考えより甘いんだぜ」

lw´‐ _‐ノv 「て、れ、る……」

ツーちゃんと会話しながらも僕の手が止まることがない。
不思議な事に集中すればするほど、ツーちゃんの声がクリアに聞こえるような気がする。可愛いツーちゃんの声を聞きながらだと余計に作業がはかどる。それが僕が作業にのめり込む理由でもあった。

lw´‐ _‐ノv 「でも明日のゼミは絶対行かなきゃなぁ……」

大学にゴスロリ服を着て行くのは少し恥ずかしいが、女神のためなら仕方ない。僕はきっと彼女ためならどんな辱めでも受けられるだろう。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:25:06.00 ID:97Bl00Ak0





(´<_` )「シューちゃん。今日は随分可愛い格好してるな。どうしたの?」

lw´‐ _‐ノv 「そこはかとなくイメチェン…」

(´<_` )「思い切ったイメチェンだな」

lw´‐ _‐ノv 「諸行無常だからね…」

(´<_`;)「そう……」

ゼミが始まる15分前。女神をお出迎えしようと早めにゼミ室へ向かうと、そこには女神をたぶらかした糞弟者が一人で漫画を読んでいた。

(´<_` )「ところで、そーゆー服ってどこで買うの?普通の服屋に売ってないよな?」」

lw´‐ _‐ノv 「作った」

(´<_`;)「作ったって?自分で?」

lw´‐ _‐ノv 「おふこーす」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:26:52.37 ID:97Bl00Ak0

(´<_`;)「はー。シューちゃんには凄い特技があったんだなぁ。前から只者ではないと思ってたけど」

lw´‐ _‐ノv 「多、趣、味、ですから」

(´<_`;)「なんで強調するの?アピールポイントなの?多趣味」

lw´‐ _‐ノv 「まぁね」

(´<_`;)「シューちゃんは相変わらず不思議だなぁ」


(*゚∀゚)「お。なんだ二人とも来てたのかー」


(´<_` )「や。ツーちゃん」

lw´‐ _‐ノv 「おはようツーちゃん。ご機嫌如何?」

女神が現れても今日の僕はうろたえない。
何故なら今日はイメージトレーニングがばっちりだから。

(*゚∀゚)「あれ…?それ、約束のごすろりだよな…?」

lw;‐ _‐ノv 「そうだけど」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:29:11.73 ID:97Bl00Ak0

女神は不思議そうな顔でこちらを見つめている。
しまった。最低限引かれないように平均的なゴスロリよりは控えめに作ったつもりだったが気に食わなかったか?もっと気合入れてふりふりさせるべきだったのかもしれない。

(*゚∀゚)「あひゃー…。俺、超能力に目覚めたかもしれないぞ」

しかし、女神は意外なことを口走った。

(´<_` )「超能力?」

(*゚∀゚)「シューがその格好してるの、俺、夢でも見た」

lw;‐ _‐ノv 「もしかして…プール?」

(*゚∀゚)「あひゃ!?シューも超能力か!?」

(´<_`;)(あれ…?なんか俺この現象に心当たりがある気がするぞ…)

lw;‐ _‐ノv「う、運命かもしれない……」

大変です。どうやら僕の女神への想いが強すぎて、新たな世界が開けたようです。あれ?てことはあの夢で見た美しくしなやかな肢体も実際の女神の…。

lw´‐ _‐ノv 「………」

(*゚∀゚)「ん?どうした?シュー?シュー?」

(´<_`;)「うわ!シューちゃん顔赤いぞ!大丈夫か!?」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:36:37.68 ID:97Bl00Ak0

(*゚∀゚)「あひゃ!?風邪か!?ちょっとごめんなーおでこ借りるぞ」

女神は僕の頭に手を回して顔を近づける。そしてそのまま白い額をそっと僕の額に押し当てた。

lw;‐ _‐ノv 「………っ!!!」

(*゚∀゚)「んー…ちょっと熱いかもなぁ。具合悪くないか?大丈夫か?ちょっと休むか?」

lw;‐ _‐ノv 「だだだ、大丈夫……」

(´<_` )「なんだ体調悪いのかシューちゃん。無理はよくないぞ」

(*゚∀゚)「ゼミ出られるのか?大丈夫か?」

lw;‐ _‐ノv 「なんでもない。大丈夫、大丈夫だから……」

これは想定外だった。イメージトレーニングには入っていないパターンだ。
心配そうに僕の顔を覗き込む女神の白い裸が頭にちらつく。血液が体中を駆け巡るの音がハイテンポになって僕を急かした。焦燥感と罪悪感が僕を貫いて、なけなしの思考能力を奪っていく。

ツーちゃんのおでこ…すべすべだなぁ。

lw´‐ _‐ノv 「ご、ち、そ、う、さ、ま、です……」

瞼の裏で白い光が点滅するのが見えた。
ああ、女神の清らかな後光に違いない……。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:41:35.49 ID:97Bl00Ak0

(;*゚∀゚)「どうした!?」

(´<_`;)「あー。駄目そうだな。さっきまで何でもないように見えたんだが。俺が医務室運ぶわ」

(*゚∀゚)「お、俺もついて行くんだぞ!」

(´<_` )「そうしてくれ。女の子に居て貰えると助かる。さて、ちょっとごめんな。シューちゃん」

lw;‐ _‐ノv 「ふあ?」

唐突に重力から開放された。
ついに僕は女神の加護を受けて浮遊能力を手に入れたようだ。

(;*゚∀゚)「あ、あひゃ……。弟者、力持ちさんだなー」

(´<_`;)「シューちゃん軽っ!俺が力持ちじゃなくて、シューちゃんが軽いんだ。ちゃんと食ってるのかこれ」

(*゚∀゚)「おっぱい大きいのになー」

(´<_`;)「ツーちゃん、思っててもそーゆー事は言わないようにしような」

女神の声が聞こえるような気がするが、今の僕にはそれを言葉として認識する事が出来ないで居た。
浮いた体が何かにふわふわと揺り動かされるのが気持ち良い。白い光が頭の中に広がって、それに押されるように意識が散っていくのを感じた。
駄目だ。ゼミは出ないと……。女神…が……。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:46:16.34 ID:97Bl00Ak0






lw;‐ _‐ノv 「……ゼミ、ゼミ行かなきゃ……」

(*゚∀゚)「お、大丈夫か!?シュー」

清冽なる白い光を振り切って瞼を上げると、そこには女神が居た。
僕は慌てて寝かされていたベッドから上半身を起こす。あまりにも急に動くものだから、少し眩暈がした。

(*゚∀゚)「ゼミならもういいぞー。弟者が教授に事情話してくれるって言ってたから心配せずに休めー」

lw;‐ _‐ノv 「め…、ツーちゃん……?あれ?ここは…?」

(*゚∀゚)「医務室なんだぜ。今先生いないみたいだから、勝手にベッド借りたんだ。弟者はシューの事運んだ後ゼミに戻ったけど俺は残ったんだ。気がついたとき誰もいないと寂しいからな」

慈悲溢れる僕の女神はゼミを棒に振ってまで僕に付き添ってくださった!
なんという寵愛!なんという幸い!僕の頭には祝いの賛美歌が鳴り響く。

lw´‐ _‐ノv 「ありがとう…ツーちゃん…僕…」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:51:56.00 ID:97Bl00Ak0

(*゚∀゚)「でもなー。俺なー。シューの事ちょっと恨んじゃうかもしれないぞ」

lw;‐ _‐ノv 「え?」

(*゚∀゚)「弟者にさ。お姫様抱っこされてたんだ。シュー」

lw;‐ _‐ノv 「なんと…」

(*゚∀゚)「ずるいよなー羨ましいんだぜ」

僕は女神があの糞弟者にご執心なのを思い出す。全く余計な事しやがって糞弟者め。

lw;‐ _‐ノv 「全然覚えてないから…後でお礼言わないとだね」

(*゚∀゚)「ずるいよなーずるいよなーずるいよなー。弟者は優しいから誰にでもそうやって優しくするんだけど、たまにその弟者の優しさに付け込むあばずれがいるんだ」

lw;‐ _‐ノv 「つーちゃん……?」

(*゚∀゚)「わざわざ弟者の居るところで倒れるなんてシューちゃんはずるいな。いくら弟者が優しいからってそこまでして男に媚びたいのか?」

僕の女神は、僕を心配してくれたのと同じ表情で、同じトーンで、僕を呪う。

(*゚∀゚)「その服も弟者に見せるためにわざわざ今日着てきたんだろ?そんでわざわざ弟者と二人きりになるために早めに来たんだろう?楽しそうに話してたもんな」
 
lw;‐ _‐ノv 「違う…これは、ツーちゃんに、見せるために……」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:57:55.24 ID:97Bl00Ak0

ベッドの傍の丸椅子に腰掛けていた女神は、こらえ切れないように静かに立ち上がった。
今まで同じ視線だったのが、自然、僕が見下される形になる。
そして今までベッドの陰になって見えなかった女神のその白魚のような美しい指にはしっかりと、
白銀に煌く、可愛らしい果物包丁が握られていた。

(*゚∀゚)「嘘吐き」

女神の腕はその聖剣に光を集めるように振り上げられる。
その可愛らしく曲げられた肘には僕を破壊せんとする力が蓄積されている。

lw;‐ _‐ノv「え……?」

彼女は振り下ろす。その右手に確実な悪意を携えて。
鋭い剣先は僕の脇腹に喰らいついた。
作ったばかりのゴスロリ服の防御力は勇者の初期装備にも劣るらしい。
可愛らしい果物包丁は易々と僕の皮膚を捕らえ僕の肉を捕らえ僕の内臓を捕らえ僕の血を啜った。

lw;‐ _‐ノv「いた…い…?」

(*゚∀゚)「嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐きあばずれ」

lw;‐ _‐ノv 「あ………」



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 00:59:53.97 ID:97Bl00Ak0

女神は僕の身体に穴が開いたことなど気にも止めない。
彼女はまるでそれが当然と言わんばかりに、右手を自身の身体に引き寄せた。
水っぽい音と共に僕の身体は尖った金属から開放される。
どくん、どくんと僕の鼓動に合わせて脇腹から血液が流れ出る。

ああ、僕の服が汚れる。
折角、僕、女神のために……。

(*゚∀゚)「あひゃ。このあばずれ!売女!牛みたいなだらしない乳をぶら下げて男を誘ってるんだろう淫売!穴としてしか男にアピール出来ない哀れな牝牛の癖に!弟者に近付くな肉便器!!」

鈴を転がすような可愛らしい声でおぞましい言葉を吐き出される女神。
宇宙の最高傑作である儚くも美しいかんばせで下世話な台詞を仰られる女神。
創造主が与えたもうた透き通るような至高の身体で悪意をぶちまけられる女神。

lw;‐ _‐ノv 「女神は……気性が荒くていらっしゃる」



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:07:25.55 ID:97Bl00Ak0


刹那、女神の甲高い叫び声と共に僕らごと医務室は溶けた。
次の瞬間、そこはコンクリートで囲まれただだっ広い倉庫のような空間だった。


lw´‐ _‐ノv 「なるほど…」

ここはかの有名なイベントが毎年開催される会場だろう。倉庫中に折りたたみの簡素な長机とパイプ椅子が並べられていた。
しかし、そこに居るはずの人間は今は居ない。
僕と、女神以外には。

(*゚∀゚)「弟者はな。俺の事が好きなんだ。だってあんな事があっても俺の事許してくれるって、今まで通りにって、言ったんだぞ?」

lw´‐ _‐ノv 「そう」

(*゚∀゚)「弟者はな!俺の事を愛してるんだ!だけど弟者は恥ずかしがりやで優柔不断だから、お前みたいなあばずれにも構っちゃうんだ!全く弟者はどうしようもないなぁ!」

lw´‐ _‐ノv 「そう」

(*゚∀゚)「俺は弟者を愛してるんだ!弟者も俺を愛してるんだ!弟者も俺を愛してるんだ!弟者も俺を愛してるんだ!」

lw´‐ _‐ノv 「恐れ多くも女神」

僕は膝をつく。
今までのような友達としてではなく、
高貴なる女神の僕(しもべ)たる哀れな愚民として、
女神に申し上げなくてはならない事がある、と感じた。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:08:52.60 ID:97Bl00Ak0

(;*゚∀゚)「な、なんだよ」

女神は跪いた僕を不気味に思ったらしく言葉を詰まらせる。
全く、可愛くていらっしゃる。

lw´‐ _‐ノv 「女神は、勘違いをしていらっしゃいます。」 

(;*゚∀゚)「な、なんだ!?言い訳しても無駄だぞ!?わかってるからな!!」

女神の声がこの無駄に広い空間に響き渡る。
女神がいらっしゃるのなら、飾り気のない殺風景なイベント会場でさえ、荘厳な教会に変わる。

lw´‐ _‐ノv 「そう簡単に、愛を、語られてはいけません」

(*゚∀゚)「うるさい!お前に言われる事じゃない!」

lw´‐ _‐ノv 「愛を語るのは、本当に愛するよりも、簡単な事ですから」

(;*゚∀゚)「……な」

 
ぐらりと、地面が揺れる。
そこは、黄色く変色した畳と、それを仕切る襖によって形成された空間だった。
100畳はあるだろうか。開けられた襖の向こうにも無限に続くかのような畳が見える。

lw´‐ _‐ノv 「ああ、いいロケーションだ……。本当、夢で撮影が出来たらいいのに」

(;*゚∀゚)「は?」



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:10:02.97 ID:97Bl00Ak0

lw´‐ _‐ノv 「女神、僕は申し上げます。愛は口に出すには、あまりにも汚くて、不安定なものです」

(;*゚∀゚)「違う!違う!愛は、俺と弟者の愛は、綺麗で、強くて、完璧で、凄いんだ!」

lw´‐ _‐ノv 「女神、僕は申し上げます。そのような幻想を打ち捨てて、利己的な妄想を取り払って、やっとの事で、想いは愛へと昇華するのですよ」

(;*゚∀゚)「い、意味わかんねーぞ!!」

lw´‐ _‐ノv 「つ、ま、り」

すとん、涼やかな音がこの場に響き当たる。
今まで開かれていた四方の襖たちが見えない手に導かれるように閉じていった音だった。
12畳の部屋に閉じ込められた僕らは対峙する。互いの愛を武器にして。



lw´‐ _‐ノv 「僕には、貴女の憎悪すら愛おしい」



(;*゚∀゚)「あひゃ……」

lw´‐ _‐ノv 「恐れてくれるな僕の女神。愛はここにある」

僕は女神の足にキスをしようと跪く。彼女の幼い柄の靴下を脱がそうと手を伸ばした。

(;*゚∀゚)「ちか、近づくなぁぁあ!」

瞬間、世界が虚無へと落下する。



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:12:30.91 ID:97Bl00Ak0




lw´‐ _‐ノv 「ん………」

(*-∀-)「ん………?」

目を開くとそこは大学の医務室のベッドだった。僕の傍らには丸椅子に腰掛けた女神が僕のベッドに突っ伏していた。
どうやら、僕と一緒に眠っていたらしい。

lw´‐ _‐ノv 「………」

僕は夢の余韻もさることながら、その大層可愛らしい寝顔に心奪われる。
是非とも形として残そうと懐のポケットに手を入れた。そこにはデジカメが収まっている。

(;*゚∀゚)「あひゃ……?起きたかー?具合はどうだ?熱は?」

しかし、それは叶わなかった。目の覚めたらしい女神が僕の顔を覗き込む。
そして、その右手をおずおずと僕の額に合わせるべく僕の顔と同じ位置まで持ち上げた。
当然、彼女の手の中には何も存在しなかった。

そして女神は壊れ物でも扱うように、遠慮がちに僕の額に手を合わせる。
それは冷たくて、酷く気持ちがよかった。

(;*゚∀゚)「あひゃ。もう熱はないみたいだな。大丈夫だ」

lw;‐ _‐ノv 「ごめん…僕…」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:14:30.37 ID:97Bl00Ak0

(;*゚∀゚)「ん?何がだ?ゼミなら大丈夫だぞ。弟者に事情話してもらったからなー。俺は目が覚めたときシュー一人だと心細いかと思ってついてたんだ!い、一緒に寝ちゃったけどな!」

lw;‐ _‐ノv 「あ、ありがとう……」

(;*゚∀゚)「じゃ、じゃあ俺行くからな。ゆっくり休んでろよ!」

lw;‐ _‐ノv 「ありがとう。弟者にも、ありがとうって伝えといて貰えると嬉しい」

(;*゚∀゚)「わかったんだぜー!じゃあな!」

女神は傍らの鞄を手に取ると足早に医務室を後にした。

残された僕は、自分の夢を、額に合わせられた冷たい掌を思い出して、
一人赤面した。

恋人が出来てからと言うものの僕の無意識は少し暴走し過ぎかもしれない。
心なしか女神も何かぎこちない感じだった気がする。いやそんな女神ももちろん可愛いのだが。

しかしそこでふと、女神の今日の言葉を思い出す。

『俺、超能力に目覚めたかもしれないぞ』

lw;‐ _‐ノv 「まさか……」

最近の僕の心臓の稼働率は本当に異常だ。
そのうち、死ぬかもしれない。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:18:17.87 ID:97Bl00Ak0




(*゚∀゚)「おーかえりー。ゼミどーだったんだ?楽しかったか?」

lw;‐ _‐ノv 「ただいまー…。なんかもう……僕は駄目かもしれない」

黒地に鮮やかな藍色の桔梗をあしらった浴衣に紅色の帯。夏を連想させる華やかな衣装を身に纏った恋人は僕の瞳を心配そうに覗き込む。
布切れやら、粘土で作られた小さな手足やら、描きかけのイラストやらが散乱した僕の部屋で、彼女の周りだけ神聖な空気が漂っていた。
僕の恋人には空気を清浄化させる特技がある。彼女は狭苦しい僕の部屋のオアシスだった。

(;*゚∀゚)「どうした!?大丈夫かシュー!?疲れてるなら今日はもうゆっくり休んだ方がいいぞ!」

ふらふらと帰宅した僕に労わりの言葉をかけるツーちゃん。自分のために語気を荒げて心配してくれる恋人の存在にひしひしと幸せを感じる。
だけど今はそれに甘えている場合じゃないだろう。

何せ僕は、眠りたくないのだ。

lw;‐ _‐ノv 「駄目だ……寝られない!今日から僕は本気になろう!いっぱい服を作るんだ!生地なら余ってるし!」

(;*゚∀゚)「む、無理しなくていいんだぞ!俺なら今持ってる服全部気に入ってるから大丈夫だし!」

lw´‐ _‐ノv 「駄目。次のイベントまでに30着は作らないと。30分ごとにお着替えさせてお客を呼ぶんだ。写真もたくさん撮って新作のROMと冊子の内容も充実させないと…。ああ、そうだスタジオ借りての撮影もあったんだ。折角一眼レフ買ったんだし構図も研究しないと…」

(;*゚∀゚)「お、お、落ち着けって!!そんな頑張らなくてもいいだろ!シューお前倒れちゃうって!」

lw;‐ _‐ノv 「倒れないように気合入れる!」



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:22:32.85 ID:97Bl00Ak0

(;*゚∀゚)「あ、あひゃー…」

lw´‐ _‐ノv 「おk。み、な、ぎ、ってきた」

(;*゚∀゚)「お願いだから身体壊さないでくれ。な?」

僕は作業に夢中になると部屋の片づけをしなくなる。
既に僕の部屋はツーちゃんの写真を撮るためのスペースを除いてほとんど足の踏み場のない状態にまで達していた。
当然散らかるものは作業に関連のあるものがほとんどなので、腐ったり匂ったりの心配はいらないが、恋人と共に暮らすにはいささか趣に欠ける部屋になっている。

さて、これ以上部屋が酷い状態になるのは久々だ。
生活出来る範囲なら良いのだが。



(;´・_ゝ・`)「シューちゃん…。なんか疲れてるね。顔色悪いよ?」

某日。レンタルのスタジオに足を踏み入れた瞬間、挨拶もそこそこにデミタスさんが心配するように声をかけてきた。
今までも何度か僕の可愛い子たちの写真を撮るためにスタジオを借りる事があり、写真が趣味のデミタスさんにはそれを手伝ってもらっていた。

lw´‐ _‐ノv 「あー…デミタスさんお久しぶりっす。今日はよろしくお願いしまーす…」

(;´・_ゝ・`)「うわ、隈出来てるじゃないか!駄目だよ女の子が疲れた顔してちゃ」



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:24:34.99 ID:97Bl00Ak0

lw´‐ _‐ノv 「ちょっと作業が立て込んでて…。今回のROMは全部オリジナルで行くんでがっつり衣装作ろうと思いまして…」

(´・_ゝ・`)「衣装も自作か!相変わらず懲るねぇ。毎度写真撮らせて貰って光栄だ」

lw´‐ _‐ノv 「いえいえこちらこそデミタスさんみたいな上手な方に撮って頂いて助かります。
       前回は好意に甘えさせて頂きましたけど、今回はちゃんとROMと冊子の売り上げ何割かお渡ししますんで後で相談しましょう」

(´・_ゝ・`)「ああ、それは心配しなくてもいいよ。俺は印刷代もROM作りも手出してないんで。それに前回、名前載せて貰って大分宣伝になったから」

lw´‐ _‐ノv 「うーん…。しかしそう言うわけには。レタッチも手伝って貰いましたし…」

(´・_ゝ・`)「俺は俺でコスプレCGのROM出してるし気にしないでね。それに学生さんと違って本業あるから」

lw´‐ _‐ノv 「むぅ。本当にいいんですか…?正直、今回相当布代に突っ込んじゃって結構厳しかったんです。あと、念願の一眼レフも買っちゃいましたし……」

(´・_ゝ・`)「おぉ。それは楽しみだ。わからない事があれば何でも聞いて。カメラの事なら力になれると思うから」

lw´‐ _‐ノv 「助かります。それで、今回はこの子なんですけど…」

(*゚∀゚)「………」

(*´・_ゝ・`)「おぉ!可愛い〜!名前は何ですか?」

デミタスさんはツーちゃんの姿を見るなり破顔した。僕もその反応が嬉しくて、思わず顔がにやけてくる。
やはり、恋人を人に褒めて貰うというのは、とても良い事だ。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:27:32.54 ID:97Bl00Ak0

(*゚∀゚)「………」

lw´‐ _‐ノv 「ツーちゃんですよ。ふふふ。今日が始めてのスタジオ撮りなんですよ。緊張してるみたいですね」

(´・_ゝ・`)「ツーちゃんかぁ。可愛いなぁ。前の子よりも可愛いんじゃない?この服も全部自作?」

ツーちゃんは僕とお揃いのゴスロリ服を身に纏っていた。黒を基調にした比較的オーソドックスなものだが、僕が着るよりもツーちゃんが着た方が断然映えるに決まっている。
僕はと言うと、ジーンズに無地のカッターシャツと言う普段仕様の地味な服を着ていた。女神以外の人間と会うのに着飾っても無意味だ。

lw´‐ _‐ノv 「おふこーすですよ。あと、お着替えは両手の指でも足りないくらいさせる予定なんで、今日は覚悟して下さい」

(;´・_ゝ・`)「あー…。それで隈作ってるんだね。全く若い娘っ子が美容を捨ててまで頑張っちゃ駄目だよ」

lw´‐ _‐ノv 「僕よりもこの子を可愛くしたいもんで」

(´・_ゝ・`)「いやはや……。シューさんも裏方ばっかりじゃなくて表に出れば良いのに。そうだ!俺が作るコスプレCGROMにモデルとして参加してよ。衣装はこっちで用意してもいいし、自分で作ってもいい。折角可愛いんだから記念と思ってどうだろう?」

lw´‐ _‐ノv 「で、み、た、す、さん。冗談も大概にしないと、うちの子が嫉妬で良い写真撮らせてくれませんよ?」

(;´・_ゝ・`)「ああ、それは困るね。ごめんねツーちゃん。」

(*゚∀゚)「………」

lw´‐ _‐ノv 「気をつけて下さいね。この子、結構気分屋さんですから」

(;´・_ゝ・`)「ふぅむ。参ったなぁ…」



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:29:37.09 ID:97Bl00Ak0

その日の撮影は順調に進んだ。デミタスさんはカメラを構えると途端に真剣な表情になり、空間を慈しむようにシャッターを切る。
僕は彼の指示に従ってツーちゃんを着替えさせたり、ポーズをとらせたりする事に忙しく、買ったばかりの一眼レフでツーちゃんを覗く事はほとんど叶わなかった。
折角のスタジオ撮影でそれを許すのは、僕がデミタスさんの腕を信用しているからに他ならない。データを見るのが今から楽しみだ。

(´・_ゝ・`)「ふぅ……お疲れ様。これで、衣装一通り撮り終わったかな?」

lw´‐ _‐ノv 「お疲れ様です。有難う御座いましたデミタスさん」

(*゚∀゚)「………」

(´・_ゝ・`)「ああ、ツーちゃんもお疲れ様。スタジオ結構熱くなってたけど大丈夫かい?」

lw´‐ _‐ノv 「大丈夫だと思います。温度よりも湿気がの方がヤバイですね。梅雨の時期なんか今から憂鬱です」

(*゚∀゚)「………」

(´・_ゝ・`)「そうだねぇ。カメラもその時期は手入れに気を使わないといけないしね」

lw´‐ _‐ノv 「その点、衣装なんかは保存が楽ですね。レイヤーの方が羨ましい」

(*゚∀゚)「………」

(´・_ゝ・`)「ん?レイヤーが羨ましいならモデルやろうよ!絶対綺麗に撮るからさ!」

lw´‐ _‐ノv 「お断りさせて頂きます。あ、ノートパソコン持って来たんで後でデータ頂けますか?ここ出たらファミレス行きましょう。コンセント付いてる店知ってますんで」

(*゚∀゚)「………」



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:34:13.97 ID:97Bl00Ak0

(´・_ゝ・`)「ああ、もちろん。しかし勿体無いなぁ」

lw´‐ _‐ノv 「僕は全てをこの子と、女神に捧げてますから」

(´・_ゝ・`)「女神?」

(*゚∀゚)「………」

lw´‐ _‐ノv 「ええ。僕の唯一神です。ああ、新興宗教じゃないですよ。押し付けるつもりはないんで安心するがいいです」

(;´・_ゝ・`)「そうなんだ。シューちゃんは変わってるなぁ。まあ、モデルの話は気が変わったらいつでも言ってよ」

lw´‐ _‐ノv 「はい。気が変わったら」

その後、ファミレスで撮りたての写真を眺めながら話していると、知らず知らずのうちにたくさんの時間が零れ落ちていった。
解散する時にはすっかり終電間近となっており、僕はノートパソコンなどの重い荷物を抱え疲れた身体を引き摺るように帰路についた。
だから部屋に辿り着くと、ほぼ無意識にベッドに倒れこむように眠ってしまった。
夢の中で僕は、それに気が付いた。



そこは電車のホームだった。
僕の最寄り駅の殺風景なロケーション。空は群青色に染まっており夜を予感させている。
人の気配のないその場所で僕は改札へと出る階段に向かい走っている。

女神を探すためだった。

自分の胸が上下するのを鬱陶しく思いながら階段を駆け下りる。エスカレーターは止まっていた。
僕は視線を右へ左へ巡らせて愛しい女神の姿を探す。



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:35:27.19 ID:97Bl00Ak0

彼女は必ずここにいる、と何故か僕は確信していた。
そもそも女神がこの駅を利用していると知ったから、僕は近くに越してきたのだ。

きっと女神と僕は同じ夢を見ているのだろう。
女神を探すために走り出した自分を感じた時、僕の中でその仮説が確定事項となった。

もし、そうでないのなら、
あまりも僕に、救いがないじゃないか。

(*゚∀゚)「………」

lw´‐ _‐ノv 「やっぱり、いらっしゃった…」

女神は自動改札機にぼんやりと腰掛けて天井を見上げていた。
僕に気づくと、気だるげに右手を上げる。挨拶のつもりだろうか。

(*゚∀゚)「なあ、弟者見なかったか?」

lw´‐ _‐ノv 「いえ。見ておりません」

(*゚∀゚)「ずぅっと、探してるんだけど、いないんだ。おかしいだろ?」

lw´‐ _‐ノv 「ここに、弟者はおりませんよ。女神」

(*゚∀゚)「煩い黙れ」

女神は自動改札機から飛び降りる。
そして何処までも何処までも落ちていっていつしか見えなくなってしまった。



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:38:52.30 ID:97Bl00Ak0

次に僕が立つのはゼミ室だった。
自動改札機から華麗に着地を決めた女神は、ホワイトボードの後ろを確かめたり机の下を覗き込んだりして必死に弟者を探している。

僕はそんな女神が愛おしくてたまらなくて、思わず彼女を抱きしめようとしたのだけれど。
女神の泣き声が、それを許してくれなかった。

(*;∀;)「うわぁあああああああああん!弟者ぁああああああああああ!」

十数人が座ると満杯になってしまう狭い狭いゼミ室の何処にも弟者が居ないと分かると、女神は白いリノリウムの床に座り込んで幼子のように泣き始めた。

(*;∀;)「いるんだろ弟者ぁあああああ!俺を置いていくなよぉおおおお!なあ、愛してるんだろぉおお!」

女神の泣き顔もそれはそれは可愛らしく、その大粒の涙は真珠ごときじゃ表現出来ない高貴さを纏っていた。
それを拭い去ってしまうのは世界的な喪失かと思われたが、僕は女神の下僕として彼女をお慰めしなくてはならない。

lw´‐ _‐ノv 「落ち着かれてください。僕は貴女に言いたい事があるのです。女神」

僕は跪き、床に崩れ落ちてしまいそうな女神の顔を両手で包み込む。
柔らかな涙が僕の手をも伝い、女神の召し物を濡らした。

(*;∀;)「触るな……あばずれ……どっか……行け……」

lw´‐ _‐ノv 「あなたは、そのような事を僕に言わなかった」

(*;∀;)「煩い…消えろ…肉便器……」

吸い付くような女神の両頬を、僕は無理やりこちらに向ける。
ぶつぶつと汚い言葉を仰られる女神の目が涙に潤んでおり、その可憐さに思わず口付けしたくなる衝動を必死で押さえながら言葉を紡ぐ。



88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:42:49.94 ID:97Bl00Ak0

lw´‐ _‐ノv 「女神。これは夢です。僕も夢で、僕の醜い嫉妬心と対峙しました」

(*;∀;)「なんだよ…うるさいな…俺の、弟者に触ったくせに…」

lw´‐ _‐ノv 「貴女は夢で間違った愛に我を失い、僕の身体に穴を開けられた。僕は貴女の僕(しもべ)ですから、あのような事でも純然たる恵みに違いありません」

(*;∀;)「う……ひっく……」

lw´‐ _‐ノv 「だけど、目が覚めた時、現実の貴女は僕を気遣われる言葉を下さった」

涙を隠そうとせずに、女神はじっと僕の事を見つめる。
長い睫を震わせながら、儚げに瞬きをする。

(*;∀;)「だって…シューは…友達なんだ…」

それは消え入るような声だった。
暴走する愛に隠されていた、女神の本当の慈悲から零れた言葉に僕には思えた。

そしてその慈悲は、僕を酷くうろたえさせた。

lw;‐ _‐ノv 「有難う御座います…女神…。貴女は……優しい」

(*;∀;)「ぅ……うわぁあああああん!」

しかし彼女はその言葉を聞くと、尚更に涙で顔を濡らした。
喉元から溢れる嗚咽に抗うことなく、痛々しい泣き声を僕に聞かせる。



90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:46:01.59 ID:97Bl00Ak0

僕はそんな彼女を手放しはしないと、片手を彼女の頬から離し、代わりに腰を支える。
その腰の細さに驚きつつも、今にも崩壊せんとする危ういバランスの彼女を支えようと踏ん張った。

この尊さを、誰かに分かって貰えるだろうか。
しっかりと見詰め合った僕らは、互いの涙に視界を濁らせて、今手探りで真実を探り合っている。

(*;∀;)「違うそうじゃない!俺は、優しくない……。だって、シューになんかしたら、弟者に、こんどこそ、嫌われ……。
     俺…弟者に、弟者のお兄ちゃんに、あんな事したのに、許してもらって……。
     だから、ちゃんとしようと、ちゃんと、普通に、友達としてでも…って思ったのに…思ったから……」

lw;‐ _‐ノv 「ああ……」

そこで僕は、今僕の手の中にあるのは、高貴な女神などではないと、気付く。気付かされる。
否、それは元々分かっていた、知っていた事だ。見ない振りをしていたのは、他でもない僕だ。
顔をぐちゃぐちゃにしながら、必死になって自分を表現する言葉を捜す彼女は、紛れもなく生身の人間だ。

僕と同じように、愛によく似た狂気を抱えた、弱くも脆い、女の子だ。

彼女と僕は同じモノだ。

彼女と弟者の間に何があったのか分からないが、それが彼女の狂気だろう。
同性を好きになってしまった辻褄合わせに、僕が彼女を神聖化するのと、きっと同じ狂気だろう。

いや、違う。

彼女と僕は違うモノだ。

今、彼女は自らの狂気に真っ向から立ち向かおうとしている。戦う涙で僕の手を濡らしている。
同性を好きになってしまった辻褄合わせに、スケープゴートを作り出した僕とはまるで違う潔さだ。



93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:49:03.45 ID:97Bl00Ak0

lw´‐ _‐ノv 「ツーちゃん」

僕は、彼女の名前を呼ぶ。
愛しくて可愛くて、大好きな彼女の名前を。

lw´‐ _‐ノv 「愛してます」

(*;∀;)「う…るさい…」

lw´‐ _‐ノv 「どうか、貴女の愛が、貴女を蝕みませんように」

ああ、神様。心の底から願います。
願わくば、彼女が僕のようにならないように。

ああ、神様。心の底から感謝致します。
夢の中で、彼女の事をこんな風に抱きしめさせて頂いて。



目が覚めた時、外はもう茜色に染まっていた。
どうやらほぼ丸一日眠っていたらしい。ぎしぎしと痛む身体を無理やり伸ばして起き上がる。
カーテンを開けようと、窓へと近付いた時、いつもの恋人の声が聞こえない事に気が付いた。

lw;‐ _‐ノv 「ごめんツーちゃん!僕、鞄の中入れっぱなしで…」

僕は慌てて鞄の中から恋人を掬い上げる。

(*゚∀゚)「………」



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:50:10.87 ID:97Bl00Ak0

ツーちゃんはいつもと同じ笑みを浮かべたまま、僕を見つめていた。

lw;‐ _‐ノv 「………ツーちゃん」

ツーちゃんは何も言わない。
まるで人形のように、どこか焦点の合わない瞳で僕を見つめている。

lw;‐ _‐ノv 「ツーちゃん…?スタジオでは人形の振りしてねって言った事、怒ってる?もう、おうちだから話しかけてもいいんだよ?ツーちゃん?ツーちゃん?」

(*゚∀゚)「………」

lw;‐ _‐ノv 「ああ…そうか」

(*゚∀゚)「………」

lw;‐ _‐ノv 「君は、喋らないんだったね…」

(*゚∀゚)「………」

好きな人を模して作った人形の顔を見つめながら、僕はここ数日間で壊滅的に散らかった部屋を片付ける事を考えていた。



98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:54:30.89 ID:97Bl00Ak0




('A`)「あの……新作のROMと冊子、一部ずつ下さい」

時刻は既に午後4時を回っていた。
人気のサークルは既に撤収作業に入り、売り上げを纏め、ダンボールを整理している。
そうでないサークルも販売の方は見切りをつけ始め、他のドール仲間とお喋りに興じたり、互いのスペースでドールの撮影をしているところも珍しくない。
そんな時間に彼は、そんな事を言いながら僕のスペースにやって来た。

lw´‐ _‐ノv 「すいません。そこに書いてあるとおり今日は完売……不細工?」

僕もご多分に漏れずスペースの片付けをしており、荷物がまとまったら他のドール仲間のところへ挨拶に伺おうと思っていたところだった。
だからしゃがみ込んで作業しているところへかけられた言葉を鬱陶しく思いながら顔を上げたのだが、そこには予想だにしなかった顔があった。

('A`)「あ、すいません。じゃあいいです……」

lw´‐ _‐ノv 「………ちょっと」

僕はちょいちょいと手招きをする。
彼が僕の嫉妬心の塊でなかった事に驚きながら、あるいは彼のような不細工がこの世に存在した奇跡を思いながら。

(;'A`)「な、なんですか……」

lw´‐ _‐ノv 「ちょっと、そこの机の下くぐって中まで入ってきなさい。上にツーちゃん乗ってるから揺らさないように気をつけて。」

(*゚∀゚)「………」



102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:58:58.88 ID:97Bl00Ak0

僕のスペースの長机の上にはドールサイズの椅子にちょこんと座ったツーちゃんが居た。
今回新作として出したROMと冊子の中身は丸ごとこのツーちゃんの写真であり、おかげさまで完売させて頂いた。
これでどうにか布代も回収出来そうだ。

(;'A`)「いや、え、だって……」

lw´‐ _‐ノv 「い、い、か、ら」

(;'A`)「じゃあ、お邪魔します」

押し切られた不細工は小柄な身体をますます小さく丸め、長机の下をくぐる。

lw´‐ _‐ノv 「はい。これ。あげよう」

僕は新作のROMと冊子を渡す。
彼は受け取らずに驚いた顔でそれを見つめていた。

(;'A`)「え。だってさっき完売って…」

lw´‐ _‐ノv 「仲の良いドール仲間さんにあげる分とか、HPでどうしても欲しいってメールしてくる人のために全部売らないでいくらか残しておくのだよ不細工。君は特別だから両方あげよう」

(;'A`)「いいんですか?そんな、俺、初対面なのに……」

lw´‐ _‐ノv 「初、対、面……?」

(;'A`)「ひぃぃ……」



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 01:59:51.65 ID:97Bl00Ak0

lw´‐ _‐ノv 「うん。まあ初対面でもいい。君はちょっと珍しいくらいの不細工だから、それくらい受け取りたまえ」

(;'A`)「ひでぇ……」

不細工は僕の言葉に傷ついたように顔を崩したが、それでもやっと納得したようで恐る恐る僕の手から新作のROMと冊子を受け取った。
中身が気になるようで冊子をパラパラとめくっている。その顔はヲタらしく大変気持ちが悪かった。

lw´‐ _‐ノv 「うん。いくらなんでもこんな不細工が僕の嫉妬心の塊のわけないよな……。僕の勘違いだった」

(*゚∀゚)「ただいまシュー!なんかお前の本買った人から俺写真撮られまくったぞー!楽しかったー!」

lw*´‐ _‐ノv 「おかえり。楽しかったなら良かった。なんかこの不細工が留守番してくれるみたいだから、お人形のツーちゃんも連れて他のサークルさんのところ回ってこようか。ツーちゃんと一緒ならきっと楽しい事になると思うんだ」

(*゚∀゚)「お、人形ツーと一緒にお出かけしていいのか?実は一緒に歩いてみたかったんだよ!楽しみだなー!」

(;'A`)「嘘ぉ!?」

不細工はスペースに戻ってきたツーちゃんを信じられないように見つめている。
不細工が益々不細工になっていっそ愉快ですらあった。

lw´‐ _‐ノv 「じゃあ、よろしく頼むな不細工」

(*゚∀゚)「ん……?お前……」

lw´‐ _‐ノv 「不細工の事は気にしなくていいよツーちゃん。ほら、行こう行こう」

僕は長机の下を潜り抜け、お人形のツーちゃんをそっと抱きかかえる。
ツーちゃんは本当に嬉しそうな笑顔で興奮気味に僕に語りかけてきた。



105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 02:01:38.14 ID:97Bl00Ak0

(*゚∀゚)「おう!それにしても誘ってくれてありがとなシュー!お人形いっぱいで楽しいぞ!」

lw´‐ _‐ノv 「うん。そう言ってくれたなら僕も誘った甲斐があったよ。帰りに美味しいレストラン知ってるからご飯食べていこうね。売り子してくれた御礼に奢るから」

(*゚∀゚)「おー。酒も飲もうなー」

lw´‐ _‐ノv 「勿論」

(;'A`)「あ、あの……」

僕は振り返らない。
抱きかかえた人形ツーちゃんがとろけるような笑顔を浮かべている。
隣には楽しげに僕に話しかけるツーちゃん。
両手に花とは、まさにこの事だろう。

嗚呼。
これこそが幸せ。



106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/24(金) 02:02:27.78 ID:97Bl00Ak0
('A`)ドクオが夢を紡ぐようです 第八話 了



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