( ´_ゝ`)兄者の宇宙ヤバイwwwのようです

3: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 21:27:14.36 ID:FdnhPXVx0

( ´_ゝ`)「ふぅ……」



朝の光がジワジワと体力を奪っていく。
ひさびさに腕を通した学ランも
熱をよく吸収するし、窮屈だ。
ただでさえ生気のない顔に
無表情をはりつかせて通学路を歩く。

周りには、おなじく制服を着て
友人と再会を喜ぶ者や、
欠伸をかましている者がチラホラ見られる。


そう、今日から新学期だ。



4: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 21:30:56.72 ID:FdnhPXVx0



第3話 『ならば兄として、迎えに行かなくては』



7: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 21:34:11.38 ID:FdnhPXVx0

俺たちの通うVIP高校は、
偏差値で言えばさほど高いほうではない。

しかし自由な校風と、
比較的ゆるい校則のおかげで
県内での人気は高かった。
部活動の多様さ、認定の甘さも人気のひとつ。
あのセクシーコマンドー部だって
我が校ならばふたつ返事で設立できただろう。

幸いにも我が家は
そんなVIP校の徒歩圏内だったため、
俺たちは特に苦労することもなく
進学することができた。


……まぁ、その「俺たち」のうちの
一人は現在行方不明になっているわけだが。



9: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 21:38:26.49 ID:FdnhPXVx0

弟者の捜索は依然進まないまま
この日を迎えた。

たったひとつの、
情報というにも心もとない手がかり以外は。
脳裏に浮かぶのは、
昨夜の母者たちとの会話。


、@#_、_@
 (  ノ`) 『弟者は、もうひとつの世界の月にいるよ』

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)『なんと言っても、こっちでいう魔法のような力が
       普通に存在している世界だ』


( ´_ゝ`)「そりゃそうそう信じられるような話じゃないが…」



11 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/24(木) 21:40:53.81 ID:FdnhPXVx0
正直今朝起きたときは、
すべて夢だったんじゃないかと思った。

しかしおそるおそるリビングに降りてみると、
すでに3人は揃って
父者の長期有給休暇願いのことを話していた。
夢のような話が本当に夢なのは
二次元世界の中のほうが多いんだよな、とぼんやり思う。


少々葉っぱも混じるようになった桜に
彩られた校門をくぐると、
生徒が学年別に掲示板に群がっていた。
クラス割の張り出しがはじまってるらしい。

( ´_ゝ`)「どれどれ……」

特に友人も多くない俺にとっては、
毎年それほど一喜一憂するほどのものでもない。
可愛いおにゃの子と同じクラスだったらラッキー、程度だ。
流し読みで自分の名前を探す。



14: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 21:42:47.67 ID:FdnhPXVx0

( ´_ゝ`)「さ…さ……あった」

流石兄者、の名前のすぐ下に並ぶ
流石弟者の名前も確認する。

( ´_ゝ`)「…同じクラスじゃないか」

双子なんて見分けのつけづらいもの、
同じクラスになる事があるなんて思ってなかった。
現に、小学校中学校高校とずっと同じだったのに
同クラスになったのははじめてだ。


一緒に登校していたら、弟者はどんな反応をしただろうか。



15: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 21:45:35.02 ID:FdnhPXVx0

( ^ω^)「あ、兄者。おはようだお。また同じクラスだお!」

( ´_ゝ`)「内藤。そっかまたか」

みんなにはブーンと呼ばれている内藤は、
去年から同じクラスになった人気者だ。
俺と特に親しいというよりは、皆と親しいという
クラスの中心タイプ。

よく話せる相手だったが、最近は彼女ができたらしいので
「裏切り者」に降格した。
俺の脳内で。

ξ゚听)ξ「いこ、ブーン!」

( ^ω^)「うんだお。じゃあクラスでまた会おうお」


・・・ほらな。



17: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 21:48:26.35 ID:FdnhPXVx0
普段だったら「許せん!裏切り者が!!」とか喚くところだが、
内藤本人はもう行ってしまった。
反応してくれる奴がいないところで暴れる気にはなれない。

単純な言葉でも、冷たい一瞥でもいい。
相手にしてくれる人間がいないというのは
こんなにも寂しいものだったか。


( ´_ゝ`)「……これはゆゆしき問題だ」

もう一度掲示板を仰ぎ見て、心を決めた。
どんなことでもいい、
帰ったら母者達に着いていこう。


一際強い風が吹き、始業ベルが鳴り響いた。



20: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 21:52:08.97 ID:FdnhPXVx0
新しいクラスはまだ落ち着かない雰囲気で、
もともと仲良かった人同士以外は
まだくっつききれてない様子だった。

( ^ω^)「兄者遅いおー」

友達と大きなリアクションで喋っていた内藤が
俺を見つけて駆け寄ってくる。

( ^ω^)「あの…ニュース見たお。
       まだ見つかってないんだお…?」

出席番号順、男女交互に並べられた机の
俺の2つ後ろの席をチラリと見ながら言った。
俺が、ああ、と返すと少し辛そうな顔をして
なんと言っていいかわからないけど、と付け加えた。

( ^ω^)「頑張ってお…」



22: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 21:54:56.23 ID:FdnhPXVx0
( ´_ゝ`)「ああ、ありがとう。大丈夫、
       手がかりがないこともないんだ。

ξ゚听)ξ「本当?捜査進んでるのね、よかったわ」

いつのまにか内藤の彼女、ツン嬢がうしろにいた。
日本人離れした顔つきに金色の髪が似合っていて凄く可愛い。
学校内でも3本の指に入る美少女だ。
内藤はたしかにいい奴だが、これは…

背が低いため、背の高い俺相手に
大きな瞳を上目遣いにして覗き込んでくる。
こんな風に見られたら恋に落ちるほかどうしろと…!
ほんと怖い。自覚ない可愛いおにゃの子の誤解のさせ方怖い!


(#´_ゝ`)「ソバチャ!」

ボインッ コキャッ

(;^ω^)「!?」

唐突に、内藤の突き出た腹に手刀を打ち込んだ。



25: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 21:58:05.95 ID:FdnhPXVx0
(;^ω^)「え?え?なんだお?」

ピザ気味で柔らかそうな体をしてるくせに
予想外に弾力がありやがった。
まったくダメージになってない。
むしろ俺の指のほうが不吉な音を立てた気がする。

( ;_ゝ`)「くっ……」

指の痛みに涙が出てきた俺に、内藤が焦って謝ってきた。

(;^ω^)「ごめんお、なにか悪い事言ったかお!?」

( つ_ゝ;)「なんでもない…お前のせいじゃねぇよっ……」


向こうに行け、と手で示すと、
ツン嬢が「1人にしておいてあげましょ」、と
内藤を連れて離れていった。
あああそうじゃないんだけど、まぁいっかもう。



27: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 22:00:35.73 ID:FdnhPXVx0
退屈な始業式が終わり、HRになだれこむ。
担任がしょっぱなから
3年生である今年が最後の追い込みであり云々、
気の抜けない毎日を云々と
欝になるような挨拶をしてくれた。


/ ,' 3「はい、それじゃあ委員と係を決めておくぞー」

俺は適当に楽そうな委員に立候補し、決まった。
弟者はまぁ…あまったポジションにでも
入れればいいだろう。
先生も事情は聞いているようで、触れてくる事もなかった。
あいつは俺と違って器用な奴だったから、
どこになったとしても特に問題なくこなすだろうし。


そんなことより帰ってからの事考えようぜ!と
脳内俺が騒ぐので、
悶々と帰宅後のことを考えていると


ゴ ゴ ン


(;´_ゝ`)「!?」


突如、轟音とともに床が揺れた。



28: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 22:03:17.99 ID:FdnhPXVx0
/; ,' 3 「じ、地震か!?」


女子の小さな悲鳴があがり、教室内は怯えた空気に包まれた。
突然の異変にみな立ち上がりざわつきはじめる。
続く揺れに備えようと
いち早く机の下に潜った者もいた。

…しかし数分たっても、それ以降地が揺れる気配はない。


(;^ω^)「な、なんだお?大丈夫なのかお?」

一通りざわ…ざわ…したところで、
とりあえず余震はなさそうだと緊張感がとけていく。


/; ,' 3 「全員席につきなさい。ちょっと先生別クラスの様子を見てくる」

(;´_ゝ`)「馬鹿野郎お前等死にたいのか!
       こういう時は臆病なやつが生き残るんだぞ!」


俺はカンペキに安全が保障されるまで動かない覚悟で
机の下で唸っていた。



29: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 22:06:43.53 ID:FdnhPXVx0

(・∀ ・;) 「おい、アレ!!」

突然窓際の生徒が声をあげた。
どうした事かとみんながそちらに集まる。

 「ちょ……!!」
 「なにあれ…!」 


クラスメイトの息を飲む声が聞こえてきた。
そんな怖い反応をされては仕方ない。
ようやく俺も机の下から這い出し窓の外に目をやった。


(;´_ゝ`)「なっ…!?」



32: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 22:10:33.46 ID:FdnhPXVx0
窓から見える住宅街の一部が煙で覆われている。

それも、焚き火とかそういうやつの
白く軽い煙じゃない。
濃い灰色の重たそうな煙がもこもこと雲状に膨らんでいた。
その部分にあった家々は、煙の下で完全に姿が見えない。

ξ;゚听)ξ「ガ、ガス爆発!?」

さっきの揺れはあれだったのか、と誰かが口にした。
確かにあんなに煙の出るような爆発なら
あれだけ揺れてもおかしくない。
五月蝿さに横を見ると、隣りのクラス、いや
ほとんどの教室の窓に生徒がはりついて騒いでいた。


(;^ω^)「近いお…」

ああ、確かに近い…っていうか……

ξ;゚听)ξ「あれ、兄者の家のほうじゃないの!?」



33 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/24(木) 22:14:47.64 ID:FdnhPXVx0

ツンの叫びに、周りのクラスメイトが
悲痛な顔でこちらを向いた。

(;´_ゝ`)「……や」

やっぱりそうだよな…いや、そんな気はしたんだが……
恐ろしさのあまり、違うという可能性ばかり考えていた。
震える手を口元にあてる。


(;^ω^)「ほ、本当にそうだお!!兄者!!見に行くお!!」

ξ;゚听)ξ「そのほうがいいわ。先生には言っといてあげるから、早く!」

内藤に肩を強く叩かれ、ようやく我にかえる。
本当だ、帰らないと。
窓から見たところでは、間違いなく我が家は煙の下だ。

(;´_ゝ`)「スマン!頼む!」

ツンに返す言葉もそこそこに教室を飛び出した。
カバンの事とか考えてなかったが、まぁ後からどうとでもなるだろう。
見ると、呼び止める先生をあしらいながら
内藤が隣りについてきていた。



37: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 22:19:34.72 ID:FdnhPXVx0
(;^ω^)「なにかあったら手助けするお!」

(;´_ゝ`)「ありがたい…」


主婦らしき人達が家から出て口々に騒いでいる。
信号をふたつ無視して横断歩道を越えると、
煙の範囲にはいったのだろう、
灰色の濃いキノコ雲に覆われたようになっていた。

(;´_ゝ`)「ゥゲッホ!これは…!」

(;^ω^)「ひどい煙だお…!」

熱気こそないものの、近づくと喉がひどく痛んだ。
目も開けていられそうにない。
涙目を腕でかばいながら
どうする事もできずに立ち往生する。

(;^ω^)「ゴホッ! これは…
       消防隊がこないと進めなさそうだお…」



39: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 22:24:13.83 ID:FdnhPXVx0
(;´_ゝ`)「くっ……」


母者達は、3人とも家にいた筈だ。
無事なんだろうか。
弟者も行方不明な時に、こんな…

焦る心に歯噛みしながら煙を睨む。
と、その奥でなにかが揺らめくのが見えた。


( ´_ゝ`)「!なんだ…?」

降ってくる灰を扇ぎ、目を凝らす。
すると見慣れたパーマ頭のシルエットが
煙を切るようにこちらに近づいてくるのが見えた。

(;´_ゝ`)「は、母者か!?」

( ^ω^)「おばさん!?無事なのかお!?」

、@#_、_@ 「・・・・・」


ズシン… ズシン…



40: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 22:29:04.96 ID:FdnhPXVx0

            .@@@
            @# _、_@
            (#  ノ`)   「兄者かい?」
           __〃` ^ 〈
      γ´⌒`、'' ー--‐~-⌒ヽ
     ./  / ミ ー☆‐´  `)
    ./      /   .il \\ j
    ,|   /     ,/\   ヽ
    ,| //   ,/__,+、_\  /
    /    // =┬─┬〈ソ ζ
    |    /|〈 ヽ.| S. |, |.| ヾ
    |   /‖/"" | E |: |  |
   ./     | レ   ,|X.  .| リ ノ
   |   /  |/   ノ|.Y...| |  |
   | |  |  || ,, ソ|__|  〉 ,|
   | |    /,ゝ   〉  イ ヽ ノ  |
   |    | y `レl   〈´  リ ‖
   |    ,/   ノ    |   |   ‖
  ,/    ||l  /     l;;  |   ‖           
  |     ||,〉 〈       〉  |   ‖         
  |    ||/  ::|jijijijijijiji(ヽ \ zijij           
  jijijijijjiji(。mnノ      `ヽnm。



43: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 22:33:18.46 ID:FdnhPXVx0

(;´_ゝ`)(;^ω^)「UWAAAAAAAAAAAAA!!」


煙を効果的にその身に纏わせて出てきたのは、
凄い格好の母者だった。


黒く光沢のあるエナメル素材の長いマントを翻し、
それと同じ素材の超ハイレグなパンツ、
その股間を申し訳程度に隠す褌状のスカート。
面積の少ない三角ビキニに
ところどころ黄色い星型の飾りがついている。

魔女っ子とボンテージを足したようなその衣装は、
2Mはあろうかという背丈に
シュワちゃんといい勝負な筋肉の持ち主である母者を包むには
あまりにも心もとない。
いまにもヒモ部分が千切れとんでしまいそうだ。

似合う似合わないという問題じゃない。
これはもう一種の視覚攻撃と言えるだろう。



44: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 22:37:33.04 ID:FdnhPXVx0

、@#_、_@
 (  ノ`) 「いいところに帰ってきたね」

(;´_ゝ`)(;^ω^)「GYAAAAAAAAA!!!」

母者が ズシン…と地を響かせて
こちらに一歩踏み出すと同時に、
俺と内藤はUターンして逃げ出した。


(;^ω^)「あ、兄者、なに逃げてるんだお!?
       おばさんがいたんだお!」

(;´_ゝ`)「何言ってるんだ、母者なんかいなかったぞ。
       あれはどっかの買い物帰りの主婦だろう!」

(;^ω^)「ちょwwww なに誤魔化してるんだお!認めろお!
       あんな噴煙の似合うセガール主婦、兄者んちのお母さん以外にいないお!」

(;´_ゝ`)「認めてなるものか!!俺はなにも見なかった!!!」



46: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 22:44:18.23 ID:FdnhPXVx0
口々に叫びながら走っていると、フッと視界が薄暗くなった。
頭上をなにか大きなものが通って光を遮ったらしい。
思わず足を止めると、その物体が眼前に回りこみ
旋回してこちらを向いた。


( (+) ) ヴ ュ ヲ ォ ォ ォ ヲ ン!


(;´_ゝ`) 「のあっ… なんだぁ!!?」

突然前から凄い風がきた。
体を持っていかれそうになり慌てて踏ん張る。

バタバタと砂煙が舞い上がって、
両側の民家の洗濯物や庭木の葉が
引っ張られるように空へと舞い上がっていった。
制服が脱水機にでもかけられているように激しく扇られて
体を締め付けてくる。

両腕で必死に頭をかばい、おそるおそる前を見た。


( (+) ) ウォン… ウォン… ウォン…


俺達を通せんぼするように道を塞いで浮かんでいるのは
巨大な黄色い船だった。



48: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 22:48:36.69 ID:FdnhPXVx0
(;^ω^)「なっ なんだお!これ!?」

どういう原理なのか、その船は
プロペラもないのに周囲に風を撒き散らしながら
地面から数メートル浮いて制止している。

(;´_ゝ`)「せ、潜水艇?」


それはなにか、と問われたら
潜水艇とくらいしか思えなかった。

全体的に丸っこいフォルムに、
前面中央にある鼻面と前面上部分にある広い窓。
そして側面と背中?部分から
小さいひれのような翼が突き出した形は
まるでフグのようだ。

しかしそのプラスチックのような質感と
玩具のような形は、
とてもリアルに使われていたものとは思えない。
鳥山明が描いた車のような雰囲気がある。

パステルイエローの外壁に、側面に白く縁取られた赤い星。
その上にスカイブルーで
ポケモンのカイリュウのような絵がコミカルに描かれている。
『FROWS STONE』という文字も見えた。



50: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 22:54:09.99 ID:FdnhPXVx0
竜巻の中心のような周囲の様子に、
後方に迫る噴煙+母者。
前方に謎の空飛ぶ船。

前にも後ろにも行けず冷や汗を流す俺達に、
緊張感のそぐわないのん気な声がかけられた。


『はーい、兄者ー。帰ってきたのね、
 拾いに行く手間が省けたわ〜』

(;´_ゝ`)「あ、姉者!?どこにいるんだ!」

エコーがかった姉の声に周囲を見回す。

『目の前よ、目の前。船の中〜見て見て〜』

(;´_ゝ`)「はぁ!?」



51: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 22:56:13.45 ID:FdnhPXVx0

謎の船をよく見ると、前方の広窓の中に
こちらに向かって手を振る姉者の姿が見えた。
片手に、ドラマで警察が使ってる無線機みたいなのを持っている。

∬´_ゝ`) 『はーい☆』


(;´_ゝ`)「ちょ、ええええええええ?」

(;^ω^)「あれは兄者のお姉さんかお!?どうなってんだお!」

自家用車にしては派手じゃないかお、などと
とぼけたことを言う内藤を無視して船に向かって声を張り上げる。

(;´_ゝ`)「な、何に乗ってるんだ姉者!!それはなんなんだ!?」

∬´_ゝ`) 『なにって、宇宙船よ〜。言ったでしょ?向こうに行く準備してるって。
      思ったより早く用意できたから、善は急げで発進したのよー。
      アンタは学校まで迎えに行けばいいわ、と思って』

(;´_ゝ`)「がっ…学校内へそんなもんで来るつもりだったのか!?」

思わず返した後、よく姉者の言葉を脳内反芻させてもう一度声を張り上げる。



52 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/24(木) 23:00:08.57 ID:FdnhPXVx0

(;´_ゝ`)「うっ…宇宙船だとぉ!?」

∬´_ゝ`) 『そうよー。自家用宇宙船よ。私も乗るのはハジメテだけどね!』

なるほどそのせいか、いつもより姉者のテンションが高い。
そんな、日産マーチすら持ってなかった我が家に
自家用宇宙船だって?
贅沢ってレベルじゃねーぞ!


(;^ω^)「兄者…きみ一体何者なんだお…?」

隣りを見ると、内藤が呆然とした顔で俺を見ていた。
それはすでに慣れ親しんだクラスメイトを見る目ではなくなっている。

(;´_ゝ`)「いや、俺も昨夜知って…なにがなんだか……」

なんだか居たたまれない気持ちになって弁解をはじめる。

実際俺だって、こんな明らかに
今のこの世界の現代科学を超越したものを見せ付けられるまで、
信じきれてなかったんだ。
母者達の言葉を。



55: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 23:04:27.80 ID:FdnhPXVx0

( ´_ゝ`)「内藤、俺しばらく学校休むわ。
       先生に伝えておいてくれ」

(;^ω^)「おっ…?ど、どこに行く気だお?」

ドクン と、
心臓が強く脈打った。


( ´_ゝ`)「宇宙…」

(;^ω^)「おっ?」


興奮のせいか台詞の恥ずかしさのせいか、
顔に急激に血液が溜まってきた。
見なくてもわかる、多分今顔真っ赤になってる。



56: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 23:06:35.25 ID:FdnhPXVx0
( ´_ゝ`)「弟者が、行ってるらしいんだ。
       遠いところに」

( ´_ゝ`)「ならば兄として、迎えに行かなくては」


内藤が、ゆっくり俺と宇宙船とを交互に見て、船を指差した。

(;^ω^)「あ、あれでかお?」

(;´_ゝ`)「…らしい…」

まぁ、俺もまだまだよくわからない事ばかりなんで
あまりツッコまないでほしい。
まず、あの今悠長に浮かんでる
風呂場に浮かべる玩具みたいなやつで、
本当に宇宙まで行けるの?とか、
安全性は??とか。



58: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 23:09:15.42 ID:FdnhPXVx0

∬´_ゝ`) 『決めたみたいね。じゃあいらっしゃい。梯子出すから』


姉者がスピーカー越しに促してきた。
船内にいて、しかも風音が凄いってのに
俺等の会話が聞こえるのか。
どういう造りになってるんだろう。

( ´_ゝ`)「じゃあ、行ってくるわ内藤。色々ありがとうな」

二次爆発のおそれもあっただろうに、
ここまで着いてきてくれた内藤に
心から感謝を言い、進んだ。

船の下あたりに来ると、
側面の出入り口らしき部分が真上にガパッと開き、
そこから姉者が顔を出す。
まもなく金属製の伸縮梯子がカシンカシンと鳴りながら降りてきた。

…こういうとこはアナログなんだな。
宇宙船らしく、光でみゅーんって拾い上げてくれたりしないんだ…。



59: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 23:11:28.47 ID:FdnhPXVx0
(;^ω^)「あ、兄者!」

梯子を半分くらい登ったところで、
内藤が下から声をかけてきた。
足を止めて下を見る。


(;´_ゝ`)「びゃあ゛ぁ゛゛ぁた゛か゛ひぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」

自分の体が乗ってるのが
細くて小さい梯子だけだという事実を今更思い出した。
少々尿漏れを起こしながら冷たい梯子にしがみつく。

(;´_ゝ`)「バカバカバカやろ内藤お前不意打ちで声かけんじゃない殺す気か!」

(;^ω^)「よくわかんないけど、危険だお!ぼ、僕も行くお!」

(;´_ゝ`)「えっ?」

予想外の申し出。
それは…ありがたいが、えーと…


、@#_、_@
 (  ノ`) 「やめときな」



60 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2008/04/24(木) 23:14:51.22 ID:FdnhPXVx0
( ´_ゝ`)「母者!」

( ^ω^)「おばさん…」

、@#_、_@
 (  ノ`) 「気持ちはありがたいけどね。
      何があるかわからない事に、よそ様のお子さんは連れて行けないよ」


帰ってきたらまたよろしくしてやっておくれ、と
優しく肩に手を置かれて
内藤が体の力を抜いたのがわかる。
俺達には鬼神のような母者だが、よそには基本優しいのだ。

(;^ω^)「兄者…気をつけてお」

内藤も優しい男だと思う。
人気者になるわけだ。

( ´_ゝ`)「ああ、授業のノートは頼んだ」

( ^ω^)「それはツンに頼んでおくお」

軽く笑いあい、俺はハッチから船内へと乗り込んだ。



61: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 23:18:46.78 ID:FdnhPXVx0
 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「きたね、兄者」

コクピットでは父者が
正面の操縦席らしきところでハンドルを握っていた。
車のように丸くなく、ギアチェンジのようなT字状のハンドルが
シート両側に設置されている。
思っていたより計器はシンプルで車と大差なかった。

( ´_ゝ`)「父者が操縦するのか?」

ちょっと不安の滲んだ声が出る。
父者が乗り物を操縦するところを見た事がない。

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「なめてくれるな。腕は保障するぞ」

言うと、ハンドルを前方に倒す。
船がグラリと揺れて上昇をはじめた。
姉者がハッチを閉めて、慣れた様子でシートに座る。

∬´_ゝ`) 「ほら、アンタも座りなさい。シートベルト閉めてね」

シートベルトも、あんまり車のと変わらない
袈裟懸けの簡単なタイプだった。
ジェットコースターのベルトでももうちょと頑丈だ。

(;´_ゝ`)「ほ、ほほほんとにこんなんで大丈夫なのか…」



62: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 23:22:20.32 ID:FdnhPXVx0
窓から見える景色がグングンと降りていく。

(;´_ゝ`)「って!ちょっと待て、母者がまだ乗ってないぞ!?」

慌てて叫ぶが上昇は止まらない。

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「母者は乗っていけないんだよ。
       この船は魔力動力だが、残っている分では
       宇宙までは行けても向こうの世界まで行けない」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「だから、母者には下から押し上げる役をしてもらう。
       膨大な魔力の持ち主の母者にしかこれはできないんだ。
       ワシ等を送った後、単身追ってきてくれるそうだよ。
       ちょっと時間はかかるかもしれないけどね」

本来宇宙船ナシでの航行は非常に危険なんだ、と
父者がちょっと辛そうな顔をした。

(;´_ゝ`)「…母者がいないとなると不安倍増だ…」

∬´_ゝ`) 「あんたマザコンだったの?」



63: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 23:26:15.92 ID:FdnhPXVx0

あの母者をもってそんな訳がないだろう。
しかし、頼りになるという点ではあの人の右に出るものはないんだ。
大分街並が小さくなり、
母者と内藤の姿はもう見えなくなっていた。
その高度にあらためて心臓が握りつぶされるが、
拳をぎゅっと握って耐える。

(;´_ゝ`)「…まったく、部屋から出るのも一苦労な俺が、
       宇宙とはな・・・」

揺れる船内に、怖さで自嘲気味に口が震える。

(;´_ゝ`)「まぁ、弟者が先に行ってるんじゃしかたない……」

(;´_ゝ`)「覚悟は決めた!安全運転で頼む!!」


前に座っている父者がこっちを見ずに親指を立てた。



66: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 23:32:30.63 ID:FdnhPXVx0

、@#_、_@
 (  ノ`) 「さ、どいてな。巻き込まれるよ」

(;^ω^)「……はいですお」

素直に下がる内藤を確認して母者は拳を空に向ける。
母者を中心に風が吹き、静電気が走ったように
肌がピリピリと震えた。

、@#_、_@
 (  ノ`)  「……ぶ」


           ド ン !

         MMMMMMMMM
         <iiii,--iiii|>.
            ii(i  )ii i
     i       ||||_|||| .
           i||i| ||@@ i
           |ii/ /#_、 _@
       i    / /#  ノ`)  ぶるぁぁああぁぁああぁああ!!
          i /.∧_ ^ (_     
        |||    ☆ ヽ_
    i  ||| ヽ(▲ 人 ▲) __,っ-、 ii
     |||||  彡 /"i"|ヽ 二l__i_ノ  ||
  i  |||||  )_"i__|  |||||||



67: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 23:42:30.75 ID:FdnhPXVx0
もう小さくなっていた
はるか上空の宇宙船に向かって、
不可視の大気の層が追い討ちをかける。

一瞬、空に
池に石を投げた時のような波紋が広がり
雲がぶわりと形を変えた。
音を発しないエネルギーの波紋はそのまま静かに収束し、
収まったときにはもう兄者達の乗る宇宙船の姿は
影も形もなかった。

、@#_、_@
 (  ノ`) 「……」

額に玉の汗を浮かべた母者から力が抜け、
静かにマントがなびく。

その姿に、騒ぎを聞きつけ
いつのまにか集まっていたご近所の主婦の面々と
通報を受けて駆けつけた警察も固唾を飲む。

、@#_、_@
 (  ノ`) 「……あの子によろしくね」

ドッ

(警察)「か、確保ー!!」

母者がその場に倒れこむと同時、
警察官の震えた咆哮とが響きわたった。



69: ◆9vvTcFj.a. :2008/04/24(木) 23:46:17.21 ID:FdnhPXVx0
――――――――――――――――――
―――――――――――――
――――――――
― ―― ―


(-@∀@)「おーい弟者ー。えーと、アレどこ置いたか知らねーか?
       ほら、アレだよアレ」

(´<_` )「スパナなら、作業場の机の上に置いてありましたよ」

(-@∀@)「おお、それそれ!いやー、お前はつくづく気がつく奴だな!
       本当にお前さえよけりゃあ、俺の技術を全部教え込んで
       跡を継がせるのによう!」

(´<_` )「ありがとうございます。でも、それは……」

(-@∀@)「やっぱりかー残念だなー」

(´<_` )「本当にすいません。……帰る予定があるので」



戻る第4話