( ´_ゝ`)兄者の宇宙ヤバイwwwのようです
- 4: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 21:36:37.19 ID:HWYNhi7I0
空が揺れた。
いや、揺れたのは重力に逆らって浮かんでいる
俺らの乗ってる船であり、その窓から見える景色だ。
ミシミシと音をたてる壁は、よく見たら
ネジの頭が並んで付いてるのが見えるほどの安普請だし、
計器類も松本零次漫画かよってくらいレトロな
丸いメーターだらけ。
なにやらピコーンピコーンという呑気な音まで聞こえる。
今時、アニメに出てくる船だって
こんなに古臭くない。
そんないっぱいいっぱい感満載の船が、
突然きた下からの衝撃にますます大きく揺れて
Gをかけてきたのだ。
- 5: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 21:40:23.78 ID:HWYNhi7I0
((;´_ゝ`))「がばばばばばぞんなにがぎまわしぢゃらめええぇえ」
ラリーだって絶対こんなに揺れねぇよ。
なんたって上下左右自由にシェイクされてるのだ。
この船の耐久度はよく知らないが、
このまま落下する可能性だって、
空中分解する可能性だってあるんだ。
吐き気が喉元までせりあがってきたが、
抑えようにも踏ん張るための地すら揺れている始末。
ハイ、もう駄目です。
吐きます。
1、2、3…
- 7: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 21:45:11.75 ID:HWYNhi7I0
バシュゥゥ!
(;´_ゝ`)「!?」
口からよくないものが発射される寸前、
好き勝手回転していた船がガクンと止まった。
浮き輪の栓を外した時のような
空気が勢いよく噴出する音が聞こえる。
…ゥゥゥ…ゥ…
その音がゆっくりとひいていき、
そのまま訪れた静寂。
凄まじい揺れは嘘のようにひき、
かわりに不思議な浮遊感を感じる。
おそるおそる目を開いてみると、
そこには
(;´_ゝ`)「………うぉ…」
巨大な地球が浮かんでいた。
- 9: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 21:50:15.96 ID:HWYNhi7I0
第4話『あー、アロー?アロー?』
- 12: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 21:52:25.04 ID:HWYNhi7I0
墨をこぼした様に真っ黒な窓の外、
その真ん中にぽっかりと浮かんでいる青い星。
白く霞がかっているようなものは雲だろう、
茶色と緑の土地の部分が模様のように盛り上がっていて。
実際に見るのは初めてだが、それは
(;´_ゝ`)「どう見ても地球です。本当にありがとうございました…?」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ああ、そうだよ」
前の席の父者がこちらを振り向いて言った。
その顔色と落ち着いた声色は、
さっきまで同じくシェイキングされてた
人間とは思えないほど平静だ。
なにか裏技でも持ってたんだろうか。
(;´_ゝ`)「は、そういえば姉者は?」
横を向くと、座席に座った姉者が
顔面蒼白でこちらを向いた。
- 13: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 21:54:55.70 ID:HWYNhi7I0
∬lli_ゝ`)「…ぎ、ギモチ悪…」
(;´_ゝ`)「うおお!こっち向くな!!」
彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「中で吐くな中で!!向こうにトイレが
あるから行って来い!!」
姉者は一触即発っぽい口を押さえながら
シートベルトを外し、父者が指差した後方部へ
歩いていった。
その足がフラフラしているだけでなく、
フワフワと随分と軽そうなことに気がつく。
( ´_ゝ`)「む…無重力ってやつか」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ああ、そうだ」
- 15: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 21:57:44.65 ID:HWYNhi7I0
同じくベルトを外して立ち上がった父者が答える。
その向こうにある前面窓、
そこから差し込む地球からの青い光に照らされて
見慣れた顔がなんだか違うもののように見えた。
…ついでに薄い頭がますます光っていた。
( ´_ゝ`)「本当にきたんだな…宇宙に」
俺もベルトを外し、立ち上がる。
頭はグラグラするし口の中は胃酸で酸っぱいし
膝も立ちくらんだ。気分は最悪だ。
しかしこんな景色を見せられちゃあ
そんなもんにかまっていられない。
完全無重力というほど浮かびはしないが、
水中にいるようにフワフワするため
壁にしがみつきながらゆっくり前へ出、窓辺に立つ。
- 16: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:01:19.18 ID:HWYNhi7I0
( ´_ゝ`)「……凄いな…」
綺麗、とか美しさ、とか、
そういったもの以上に
なにかこみ上げてくるものがある。
それは、落としたZipファイルを開く時のような
紛れもないdkdkと高揚感。
( ´_ゝ`)「…しかし、地球から飛び出してきたのに
なぜ地球が目の前にあるんだ?
船が一回転したのか…」
隣でおなじく、目を細めて地球を見ていた父者に聞く。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「いいや、1回転もしてないし
間違いなく地球から飛び出したよ。
今見ているこの地球は、わし等が住んでいた地球じゃない。
異世界側の地球さ」
( ´_ゝ`)「kwsk」
- 18: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:06:23.25 ID:HWYNhi7I0
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「下から衝撃が来て、加速が強まった時があったろう?
あれが母者がぶつけてきた
エネルギーの後押しだったんだ。
それを受けて、成層圏突破と同時にワープを行った」
(;´_ゝ`)「随分と軽く言ってくれるが…じゃあつまり、
ここはもうただの宇宙ですらなく、異世界の宇宙だというのか?」
半信半疑でジト目になる俺に、父者はさらに続ける。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「わし等の住んでる世界とこの異世界とはけっして別物じゃあない。
表裏一体で繋がっている。
空間を跳んだ時の位置によって対象物の軸がひっくり返ったり、
向こうにはない星や生態系の発達もみられるが
基本は親戚みたいなもんなんだよ」
「わしは、この2つの世界はどこかで枝分かれした
パラレルワールドの一種だと思っている」
と、皺の刻まれた頬を吊り上げ得意そうな顔をして言う。
スーツを着て毎日会社に行っていた時とはまったく違う表情だ。
- 19: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:11:49.79 ID:HWYNhi7I0
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「そうでなければ、こちらの世界にも地球が、
ましてや日本やアメリカといった同じ名前の国が
存在していることの説明がつかない」
(;´_ゝ`)「そんな…国まで一緒なのか?」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「もちろんなにもかも一緒じゃないけどね。
住んでる人間や文化、宗教なんかは
共通してるところもあれば全然違うところもある。
まぁ、科学だけでなく魔法も発達している世界だし
他星との交流もあるんだから
違っていて当然だが」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「私が知ってる限りでは、日本はかなりの魔力軍事国家だったな。
民族的に魔力もなかなか強いうえ、縄張り意識が強かったからね。
よく英国の海賊と戦争してたなぁ…
対して米国人は魔法力があまりないほうだったので、
代わりに兵器武装が発達していた。
しかし地球人の中で一番力を持っていたのは
ダントツで印度人だね。
あそこの連中は宇宙的にみてもけっこうな魔力の持主揃いだったよ」
(;´_ゝ`)「インド人SUGEEEEEE!!」
- 23: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:15:39.40 ID:HWYNhi7I0
脳内でヨガファイアが噴き乱れる。
ああ、なんとなく納得できる気がするな…たしかにアイツの強さといったら
( ´_ゝ`)「…それにしても、父者は何故そんなにこちらの世界の事に詳しいんだ?
もともとは俺らの世界の人間だったんだろう?
母者とはこちらで出会ったような口ぶりだったが…
どうやってこの魔法の世界に足を踏み入れたんだ?」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「まぁ、それもおいおい話していこうじゃないか。
今はとりあえずー…」
∬´_ゝ`)「おまたせ〜あぁスッキリした!」
( ´_ゝ`)「お、姉…ぉぉ」
- 24: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:20:42.96 ID:HWYNhi7I0
ゴツい、非常扉のようなドアを開けて
出てきた姉者はすっかりスッキリした顔をしていた。
そして先ほどまで着ていたジーンズとシャツから
ピッチリとしたボディスーツに着替えている。
黄色を基調とした布地に赤の縁取りや模様が鮮やかで、
胸を強調したデザインが
ナイスバディボンキュッボンな姉者によく似合っていた。
SF的なよくできたコスプレのようにも思える。
レイタンのプラグスーツみたいに
ハイレグに切り込んだ股部分まで伸びた亜麻色の髪が
軽重力の中ふわりと広がった。
(*´_ゝ`)「……コレデアネデサエナケレバ」
∬´_ゝ`)「服、臭くなっちゃったから着替えさせてもらったわよ。
これ、もと母者のでしょ?よかったかしら」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ああ、かまわないよ。ピッタリじゃないか
昔の母者にそっくりだ」
∬´_ゝ`) 「……フクザツね」
(lli´_ゝ`)
- 27: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:23:12.28 ID:HWYNhi7I0
(#´_ゝ`)「POOW!!」
ズガン!
…今度は脳内に、
そのセクシーボディスーツを着た母者が降臨しかけたが
壁に頭を打ちつけてそれを消去する。
∬´_ゝ`) 「…なにやってんのよ…」
( ´_ゝ`)「…男にはやらねばならん時があるんだ…」
こめかみから血をダラダラ流しながらも、
あくまでニヒルに答えてやった。
と、溜息をついた姉者の
太もものところにコミカルなマークが入ってるのを発見する。
ポケモンのようにデフォルメされた竜のマークに
flows stone というロゴ…
( ´_ゝ`)「あ」
どこかで見たような、と思ったら
( ´_ゝ`)「これこの船についてたのと同じだな」
- 30: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:25:48.98 ID:HWYNhi7I0
彡⌒ミ
(*´_ゝ`)「よく気がついたな!」
父者が嬉しそうに叫んだ。
彡⌒ミ
(*´_ゝ`)「それは、航行の守り神だ。
安全を祈って、この船の名を守るように
尻尾がロゴに巻きついているだろう?」
彡⌒ミ
(*´_ゝ`)「それがわしの船の名。
その名もFLOWS STONE(流れる石)号!!」
着ていた薄水色のツナギの上を脱いで
天井を指差し、ズビシッ!とポーズをとった。
白いタンクトップ(紳士用肌着)の下のひなびた体が痛々しい。
( ´_ゝ`)「・・・・・・ダッセェ」
∬´_ゝ`)「よしなさい兄者……父者の唯一誇れるマイカーなんだから。
休日はウチの地下の格納庫でそりゃもう幸せそうに磨いてたのよ…
今回発進させた時、衝撃で煙まみれ埃まみれになって
もう父者涙目で」
彡⌒ミ
( ;_ゝ`)「黙りなさい!姉者!!」
- 31: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:29:16.29 ID:HWYNhi7I0
涙目どころか実際にグズグズ泣きだす父者。
俺は車とか興味ないからわからんが、
こだわる人間には大事なんだろうな…
まぁでもやっぱり名前はださいと思うけど。
彡⌒ミ
( ;_ゝ;)「馬鹿にするなら乗らなくてもいいんだぞ!!
でもローンまだ50年は残ってるんだ!
覚悟しろよ、ワシが死んだら
自動的にお前等に引き継がれるんだからな!」
∬;´_ゝ`)
(;´_ゝ`)「ちょwwwひでえwwwww」
確実に二世代ローンじゃねぇか!!
大体この船はそんなに高額なのか、と文句を言おうとすると
突然コクピット天井の赤いサイレンが鳴りはじめた。
ビーヨン ビーヨン
(;´_ゝ`)「な、なんだ!?なにか問題でも起きたのか!?」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「いや、これは……通信だな。誰かが話しかけてきてる」
- 34: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:32:55.93 ID:HWYNhi7I0
ビビりまくる俺をよそに、父者は
黒いマイク…レインボーブリッジ封鎖できません!って
言う時のアレみたいなものを口に当てた。
姉者が地上で俺に話しかけていたのと同じやつだ。
( ´_ゝ`)「…やっぱりどこかレトロだよな…」
レトロな機器を魔力で補う事で
現代科学以上のことをやってのけている。
まるで昭和の特撮のような風景だ。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「あー、アロー?アロー?」
( )『アロー。そちらは民間船か?』
相手からの声は、部屋上部のスピーカーから出ているようだ。
広くもない船内によく通る男の低音。
翻訳機かなにかを通しているのか少々ノイズが混じっていた。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「そうだが。そちらは?」
( )『海賊だ』
- 38: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:36:43.08 ID:HWYNhi7I0
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)( ´_ゝ`)∬´_ゝ`) 「・・・・・・」
思わず顔を見合わせる俺ら一家。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「……………パードゥン?」
( )『パードゥンだ!!!そこ動くなオルァア!!』
関西の方顔負けの巻き舌で怒号が響いた。
ビリビリと窓が震えた気さえする。
(;´_ゝ`)「い、い、いやぁあぁあああ!!
レイプ陵辱はいやあああああああ!!」
∬;´_ゝ`)「それは私の台詞よ!」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「うちの息子たちをレイプなんかさせんぞ!
やるならわしをやれ!!」
( )『フッ泣かせてくれるな…って、お前オッサンだろ』
- 40: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:41:46.41 ID:HWYNhi7I0
突然の敵意に思い思いに叫ぶ俺ら。
海賊とかおかしいよね。宇宙なのにね。
宇宙の海は俺の海、ってね。
とにかく怖い声の方は俺らを蹂躙するつもりでいるらしい。
そしてこちらの戦力はジジィ1人ヘタレ1人ナイスバディ1人だ。
こんななにもない船で俺らが持ってるものといえば…
命と体くらいしかない。
- 41: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:42:56.20 ID:HWYNhi7I0
- 間違いなく父者はこの場で殺されるだろう。
姉者は、俺としてはヒロインが実の姉しかいないとか
どんな糞ゲーストーリーだよと言いたいところだが、
他人から見れば彼女は十分な美人ボインちゃん。
「へっへっへ、こいつは上玉だぜ…」
「先に俺らが楽しませてもらってもいいですよね、ボス?」
「好きにしろ」
ああ、そんな言葉が聞こえてくるかのようだ…
そしてここで思うさまレイプされたあと売りに出されて、
その一生を性奴隷として過ごす事になるんだろう…
姉で勃起したら負けだと思っている。
ちなみに俺は、
これでもまぁまぁのイケメンだと自負しているから
好色な金持ちババァかその手のオッサンのところに
売りに出されるだろうな。
そしてその一生を哀れな稚児として終えるんだ…
そうやって人生を諦めていた俺の前に現れる一人の美少女。
金髪縦ロールでちょっとSっ気あり。
「アラ、この犬は毛並みがいいわね。私が飼ってあげるわ」
きゃんきゃん!と嬉しそうに鳴いて顔を舐める俺。
「うふふ、可愛い子。一生可愛がってあげるわ…」
キャイン!首輪嬉しいワン!バター美味しいワン!
そうして俺は金持ち令嬢の犬として死ぬまで
幸せなペット(性的な意味での)として暮らしましたとさ。
やっべ!!人生薔薇色!!異世界万歳!!
(*´_ゝ`)「弟者…ごめん。俺、新しい人生見つけたから…」
- 46: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:45:54.60 ID:HWYNhi7I0
∬;´_ゝ`)「なに考えてるのか想像つくけど、お馬鹿!!
それどころじゃないでしょ、逃げないと!」
彡⌒ミ
(#´_ゝ`)「いいや、わしは戦うぞ!わしをおっさん呼ばわりしたこと
後悔させてやる」
∬#´_ゝ`) 「おっさんじゃなかったらなんなのよこの加齢臭!
早く操縦なさい!!」
彡⌒ミ
( _ゝ )「カレー臭……」
(;´_ゝ`)「ああ、父者の目から光が消えた!」
姉者の一言に膝から崩れ落ち、隅っこで体育座りしだす父者。
(;´_ゝ`)「姉者、ほら謝れよ!」
∬´_ゝ`) 「正直スマンかったわ父者…だから私だけでも助けて?」
(;´_ゝ`)「さすが流石家の峰不二子…」
- 47: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:48:10.70 ID:HWYNhi7I0
( )『逃がすと思ってんのかコラ…
と言いたいところだが、冗談だから話聞けタコ』
無視されかけていた海賊の方が、若干声のトーンを変えた。
父者はまだ隅っこで落ち込んでいるので
仕方なく俺が通信機を手に取る。
さりげに異世界ファーストコンタクトだ。
( ´_ゝ`)「話とは?海賊の方」
( )『本来ならお前らの言うとおり陵辱しつくしてやりたいとこだがな。
今回はもっと大きな用事が待ってるんで雑魚にかまってらんねんだ』
彡⌒ミ
(#´_ゝ`)「雑魚だと…?若造が、わしを誰だと…」
∬#´_ゝ`) メコ
彡⌒ミ
( _ゝ )~゜ キュウ
立ち上がって文句を言いかけた父者を
無言のまま姉者が沈めた。
なんの自信があって海賊に歯向かおうなどと考えてるんだこのオッサンは…
どうもこちらに来てから父者のテンションおかしい。
- 48: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:52:14.77 ID:HWYNhi7I0
( ´_ゝ`)「見逃してくれるんですか?」
( )『ああ、だからちょっとそこ避けろ。邪魔なんだよ。
俺の船に傷がつく』
( ´_ゝ`)「…だそうだ。父者」
父者はブツクサ言いながら、でも姉者が怖いのか
大人しく操縦席に着いた。
足元が軽く振動し船が移動する。
( )『…よし。運がよかったなお前ら』
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「フン。運がよかったのはどちらかな…?」
∬´_ゝ`) 「どう考えてもこっちでしょ」
父者の捨て台詞とともに通信の切れる音がし、
やがて側面窓からの地球光が遮られた。
見ると、そこには巨大な影。
- 49: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:54:42.53 ID:HWYNhi7I0
(;´_ゝ`)「…う、うっわぁ」
俺たちの乗る船のすぐ隣を
悠々と通過する姿は、まるで鯨…
いや、比喩でなくその船は本当に鯨の形をしていた。
宇宙の闇に溶け込むような真っ黒な体に
巨大なドクロマーク。
星の海を泳いでいるような光景は、
ここが深海であるかのような錯覚を起こさせる。
その大きさ、形はマッコウクジラそのもので、
俺達のフロウストーン号と比べると
まさに像とアリンコ…クジラVSハコフグだ。
(*´_ゝ`)「やべぇ…かっこいい…」
∬*´_ゝ`)「かわいい…」
彡⌒ミ
(#´_ゝ`)「フン、大鑑巨砲主義なんて古臭い…」
- 51: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:56:55.11 ID:HWYNhi7I0
メインカメラなのか、
目の位置にある赤い光を放つ窓が
こちらを嘲笑うかのように数回瞬き、
その船は静かに通り過ぎていった。
あとに残ったのは、
マンタに出会った時のダイバーのような感動と興奮。
そして静寂。
( ´_ゝ`)「……」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「…なんだ、その目は」
( ´_ゝ`)「…いやぁ、なんでもないけどねぇ〜?
あんな心くすぐるもの見せつけられちゃあねぇ〜」
∬´_ゝ`) 「この船のショボさが際立ったわね」
彡⌒ミ
(#´_ゝ`)「あれは海賊船だぞ!!どうせ汚い金で作られた船だぞ!」
- 55: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 22:59:13.22 ID:HWYNhi7I0
( ´_ゝ`)「そう言いましてもねぇ〜」
∬´_ゝ`) 「どうせローン残すなら、あれくらいのブツを
残してもらいたいもんだわ」
彡⌒ミ
(#´_ゝ`)「これだから!これだから最近の若者は!!
見た目の派手さにばかり惑わされおって!
大体、船本来の性能なら
このFLOWS STONE号に適うものなどないんだぞ!!」
( ´_ゝ`)「またまた、そんなハッタリを…」
彡⌒ミ
(#´_ゝ`)「うおおおお!!オッサンなめたら痛い目見るぞおお!!」
暴れだした父者を姉者が宥める…
というより力づくで黙らせている。
見事なアイアンクローを決められ
だんだん反応が薄くなっていく父者にそっと黙祷を送った。
( ´_ゝ`)「とはいえ、海賊なんてものがいるとは…
宇宙も安全じゃないんだな」
- 58: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 23:01:25.07 ID:HWYNhi7I0
∬´_ゝ`) 「そうね。私は子供の頃こちらにいたけれど…
あまり治安はいいほうじゃなかった記憶があるわ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「…え、姉者はこっちの世k(||i _ゝ )「ガユ…ウマ…」
姉者の手元で、父者が紫色になっていた。
( ´_ゝ`)「…姉者、そろそろ離してやらないか。
操縦者が死んだら困る」
∬´_ゝ`) 「まぁ、そうね」
ドサッ グエ
手をほどかれて倒れこみ、ゲホゲホ咳きこむ父者。
彡⌒ミ
(;゚´_ゝ`)「姉者…どんどん母者に似て…」
( ´_ゝ`)ブルッ
∬#´_ゝ`) 「野郎ども」
- 62: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 23:06:53.32 ID:HWYNhi7I0
∬´_ゝ`) 「とにかく、そろそろ動くわよ。
まずは……どうするの?」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「そうだな、まずは……地球の月にいく」
髪をかきあげてセクシーに胸を張る姉者に、
ふむ、と少し考えてから答えた。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「兄者の夢で言われていた、というのもあるが…
月は他の星にも無数にあるからな。
あまりあてにはしていない。
それよりも、まずは最寄の航行ステーションで航行登録をしておかないと
降りられない星もあるし、あとあと面倒なんだ。
そこで弟者についての情報収集もしよう」
(;´_ゝ`)「登録とか……マンドクセェ〜〜〜」
もっとこう、
さっきの海賊じゃないけど自由に動けないのか、とブーたれる。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「魔法の世界にだって法律やルールはあるんだよ」
- 63: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 23:09:34.89 ID:HWYNhi7I0
よっこいせとオヤジらしく掛け声をかけて立ち上がり
操縦席に座る。
姿勢をただし、前方の窓…その中の星空に向けて
少し懐かしそうな表情をする。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ひさしぶりだな…この宇宙(そら)を飛ぶのも」
深く深呼吸。
両側のレバーを強く掴む。
彡⌒ミ
(*´_ゝ`)「FLOWS STONE号!発進!!」
ゴ、ゴンという重い音を響かせて船が動き出した。
( ´_ゝ`)「…その掛け声、必要なのか?」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「もちろんだよ」
∬´_ゝ`) 「次回からやめてね」
彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「はい…」
- 65: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 23:12:56.54 ID:HWYNhi7I0
――――――――――――――――――
―――――――――――――
――――――――
― ―― ―
(´<_` )「…動き出しましたね」
(-@∀@)「ああ、邪魔者がのいたらしいな。
まったくどこから現れたんだろうなー?
さっきまでレーダーにもひっかからなかったのに」
巨大な歯車が絶えず回り続け、
無数のパイプから煙の噴出すエンジン部分。
その暑苦しい部屋の中で2人の男が話していた。
分厚いビン底眼鏡の男がぶちぶちと呟きながら星図を広げ、
手元の立体的なコンパスと照らし合わせている。
(´<_` )「そんな古そうなもの使わなくても、
最新のレーダーがあるんじゃないですか?」
(-@∀@)「わっかってないなー、弟者。これだから若いもんは。
黙って結果だけ出してくる機械を信用するようになっちゃおしまいだぜ?」
- 66: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 23:16:29.51 ID:HWYNhi7I0
俺ってどんなことでも自分で確認したいタイプなんだよねー、
と、今度はなにやら計算機を操りだした男を見て
弟者は曖昧な顔で首を傾ける。
(´<_` )(パソコンに慣れきっていた兄者に聞かせてやりたい台詞だな…)
「若いもんは」などと言っているが、眼鏡の男も
それほど年をとっているわけではなさそうだ。
声の感じでもせいぜい20代後半といったところだろう。
(-@∀@)「そういう意味では、さっきの邪魔な船は
なかなか気骨のあるやつが乗ってると思うね」
(´<_` )「あの小さな反応の船ですか?」
(-@∀@)「ああ、ありゃ古い船だよー。
あの型は、むかーしむかしの英雄が乗ってたのと同タイプだから
今でも人気はあるんだけどね。
ペイントからパーツの作られた時代まで、
あそこまで忠実に再現してるのは珍しいよ。余程のマニアだろうな」
しゃべくりながらも、片手は凄い勢いで計算機を叩き続けている。
これからちょっとした仕事があるそうだから、
時間の遅れに対する計画の微調整をしてるんだろう。
- 68: ◆9vvTcFj.a. :2008/05/18(日) 23:20:41.51 ID:HWYNhi7I0
自分がいては邪魔かもしれない、と弟者は
そっとテーブルから離れた。
(´<_` )(コーヒーでも入れてくるか…)
鋼板打ちっぱなしの廊下に
足音を響かせて給湯室に向かう。
途中、なんの気なしに壁に並んだ
手の平サイズの丸小窓から外を覗きこんだ。
相変わらずの真っ暗な星の海。
そこにぽっかりと、黄色いフグのような形をした
丸っこい船が浮かんでいるのが見えた。
(´<_` )「あれか…」
なるほど、確かに古そうだ。
それに小さい。
自分の乗る鯨型海賊船と比べるのは少々酷だが、
地球の青い光に照らされたその姿は
随分と頼りなく見えた。
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