( ´_ゝ`)兄者の宇宙ヤバイwwwのようです

4: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 21:35:36.66 ID:I6K9T7g70

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ああ、ぴったりじゃないか」

( ´_ゝ`)「ふむ…」


学ランのままでは目立つといわれ、
父者から手渡されたツナギに着替えた。
姉者、父者の着ているものと同じ傾向のデザインのものだ。

薄い黄色を基調とし、前に股間のあたりまで降ろせるジッパー。
父者はそれを下げ、上半身部分を脱いで
腰で結び動きやすくしている。
胴体だけでなく足部分や腕にも
小さいポケットや謎のボタン、コードがたくさんついていて
軽装の宇宙服といった様子。
首まわりの造りを見たところ、どうやら
ヘルメットを装着できるようにもなっているようだ。



7: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 21:38:12.08 ID:I6K9T7g70

( ´_ゝ`)「なんかちょっと恥ずかしいな」

∬´_ゝ`) 「何言ってるのよ、プリキュア変身セットも着こなすアンタが」

(#´_ゝ`)「それとこれとは話が別だ!」


コスプレは然るべき場所でやるのが俺のポリシー!(※秋葉原除く)



父者曰く、


 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)『まずは最寄の航行ステーションで航行登録をしておかないと
       降りられない星もあるし、あとあと面倒なんだ。
       そこで弟者についての情報収集もしよう』

とのことで、
発進した我が流石家の自家用宇宙船FROWSTONE号は
現在地球の月に向かっている。
わかりやすい解説で、前回を忘れてしまった人も安心だね。



9: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 21:41:11.99 ID:I6K9T7g70

( ´_ゝ`)「あとどれくらいで到着予定なんだー?」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「2時間もすれば着くだろう」


この世界での宇宙の距離感はまだよくわからないが、
自家用船があるくらいだ。
車と変わらないくらいの感覚なのかもしれない。

実家のリビングと同じくらいの広さのコクピットで、
おのおのくつろぎながら時間を潰す。


ああ、それにしても惜しむらくは……





( ´_ゝ`)「家族旅行みたいで盛り上がらない」



10: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 21:43:28.69 ID:I6K9T7g70




第5話「トータル・リコールみたいでしょ」




13: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 21:47:23.62 ID:I6K9T7g70

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「着いたぞ。着陸するから、
       席に着いてシートベルトをしなさい」

( つ_ゝ`)「おお…?」


変わらない景色に少々ウトウトしはじめたところを
父者に起こされた。
目を擦り全面窓を見ると、月―――
クレーターだらけでデコボコの、一面の地平線。

灰色の見るからに硬そうな地表に
ゴロゴロと岩が転がり、
夜の砂漠以上の荒廃した寒さを思わせる。
生命のある可能性なんて、微塵も感じられない。
地球から見た時に
黄色く暖かい光を纏った月とは大違いだ。


(;´_ゝ`)「ぅわ…まるで地獄だな」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「大気のない衛星なんて、
       見た目は隕石と変わらんからね。
       港のあたりは賑わってるよ…ほら」



15: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 21:49:47.19 ID:I6K9T7g70

正面前方、地平線の向こうが光っている。

太陽の光ではなく、
ギラギラと色とりどりのドぎつい明らかな人工の光。
灯台のような光線状の光もグルグルと周っている。


∬´_ゝ`)「あれは…郊外のパチンコ店!!」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「否定はできんが失敬な!」



間近に来てみると、
ますます郊外のパチンコ店を大きくしたような様相だった。
荒れ果てた周囲を、ヤケになったように照らすネオン。
ドーム型の巨大な建物からにょきにょきと生えた丸い塔に、
透明のパイプ型通路。
城のような大きさの、ガラス張りの格納庫。
ラスベガスもかくやというような派手っぷりだ。

うち一本の滑走路に着陸。
そのままドーム型の建物の中に進んでいく。



17: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 21:53:12.99 ID:I6K9T7g70



パ パ ポ ピ ポ

『船舶IDを確認致しました。エンジンを停止してください』



1世代前の携帯着信音のような
気の抜けた安い電子音と機械的な女性の声が響いてきた。
父者が言われた通りエンジンを停止させると
船が軽く震動する。
上下からなにかに固定されたらしい。
ここで父者が操縦席から立ち上がり、伸びをした。



 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ぅ〜〜っ 2人ともお疲れ。着いたよ」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ここが地球月星間空港だ」



18: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 21:55:58.07 ID:I6K9T7g70

船のハッチを開くと、外は薄暗い物置のような場所。
どうやら個別立体駐車場のようだ。
ここはまだ重力が少ないらしく、
高めの位置にあるハッチから飛び降りてもゆっくり降下することができた。

出入り口のボタンを押すと自動ドアが開き、
まず小さ目の部屋に通される。
ここにはもう重力があった。
気だるく感じる体をストレッチさせながら、
父者がいよいよ空港内への扉を開く。



(;´_ゝ`)「おおお…」



20: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 21:59:47.23 ID:I6K9T7g70

まず俺の目に飛び込んできたのは、明るすぎるくらいの白色光。
長い時間暗い風景しか見ていなかったので
それは目を焼く勢いで飛び込んできた。

次に、ツルツルとした素材の通路。
宇宙空間の見えるガラス張りの壁に、
吹き抜けになっている巨大なホール。
そこに整然と並ぶ飲食店や土産物屋、なにかの機械を売っている店。
少々SF要素が強いが、その様子はもとの世界の空港と大差なかった。

そんな中を歩き回る大勢の人々。
こちらはわかりやすく、あきらかに異様だ。
人型をしたものから、リアルにケモ耳、尻尾の生えた人物。
毛まみれのムックみたいなやつから、なんか魚介っぽいやつ。
黒、白、赤、青緑なんて肌をした人間。
老若男女、人種差別ってレベルじゃない。
正直、人間なのか動物なのか両生類なのか俺には区別がつかない。

ちなみにケモ耳幼女はたまらなく萌えたが、
幼女を連れ歩いている父親にも同様の耳と尻尾が生えてたので
マイサン急激に萎えた。


(;´_ゝ`)「ネトゲの世界みたいだ……!」

∬´_ゝ`) 「トータル・リコールみたいでしょ」


俺が思わずこぼした言葉と、姉者の台詞が被る。



23: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 22:03:50.65 ID:I6K9T7g70

( ´_ゝ`)「…え? トータ…リコ?なに?」

∬´_ゝ`)「え、知らないの?結構有名なSF映画だったんだけどなぁ…
      1990年に公開された、シュワちゃん主演の」

( ´_ゝ`)「…1990年………」

ちょっと自分の年と逆算。


( ´_ゝ`)「……あー、姉者。そりゃ俺知らなくてしょうがないわ。
       だって俺その頃ギリギリ生まゲボォッ」


油断しきった俺の腹に姉者の手刀が突き刺さった。


∬#´_ゝ`) 「世代の差を感じさせる生き物・即・斬」

(lli _ゝ )「り、理不尽っ……」


自分からふった話題じゃん、とかいう理屈は通用しない。
俺はただ地面に伏して
手刀に息を吹きかけて満足そうな顔をしている姉を見つめるしかなかった。
やっぱりツッコミは弟者じゃないと駄目だ。
姉者のツッコミは重過ぎる。



25: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 22:08:50.81 ID:I6K9T7g70

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「なにやってんだお前等……」


お前等はどこに行ってもやること変わらないな、と
ぼやかれながら父者の背中を追う。
見るものすべてが珍しいため、俺はなにかと足を止めたり
耳付き少女や魚介系セクシーお姉さんを
写メろうとするたびはたかれた。


(;´_ゝ;)つ白「た、頼む!あのフェリシアみたいな
         獣娘さんだけでも撮らせてくれっ……!!」
 
∬#´_ゝ`)「異世界だって盗撮は犯罪よ愚弟!」

( ;_ゝ;)「『一枚お願いしまーす』って言うからぁぁ!!」

∬#´_ゝ`)「アキバでやれ!!」


実の姉にアキバ系呼ばわりされたことで
心に深く傷を負った。
姉者と父者が、体育座りで鬱になっている俺の
首根っこを引きずったり転がしたりして連れてきたのは
デパートのサービスカウンターを大きくしたような一画。

ζ(゚ー゚*ζ「ご用件を承ります」



27: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 22:13:00.18 ID:I6K9T7g70

耳にメカメカしいイヤホンをつけた
美少女が微笑んできた。


 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「手持ちを両替してくるから。
       姉者、兄者の言葉を頼むよ」

∬´_ゝ`) 「了解」

(;´_ゝ`)「わかった!姉者、ちゃんと立つから
       蹴り上げるのはやめてくれ!」


姉者が更なる力技で俺を動かそうとするので
仕方なく立ち上がり、周りを見渡した。
ズラリと円形状に並んでいるカウンターには、
よく見ると皆同じ顔の美少女が並んでいる。
ロボットかなにかなのだろうか。

一見ちょっと怖い光景だが、金髪ゆる巻き毛の彼女達は
仕草も表情も人間そのもの。
声も、録音ボイスやミク以上の自然さなせいか
それほどの恐ろしさは感じさせなかった。

むしろ一体ください。



29: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 22:15:19.38 ID:I6K9T7g70

(*´_ゝ`)「いや……あれがもし本当にロボットならば
       セクハラしたって法には問われないのでは!?」

∬´_ゝ`) 「こんな場所であえてアンドロイドが使われてる理由を
       よく考えてから行動しなさい、愚弟」


なにやら不穏な事を言われた。

父者はうちひとつのカウンターで
どうやら金をこっちのものに両替しているらしい。
流れるような動きのロボット達を見ていると、
姉者に首根っこを掴まれた。


∬´_ゝ`) 「なにボンヤリしてるのよ、あんたはこっち」

( ´_ゝ`)「え?なに?」


並ばされたのは、ちょっと離れたところにある
同様のカウンター。
姉者が「地球出身です。彼と2人分お願いします」と
金髪ロボットに告げると、別室に通され
マッサージチェアみたいなのに座らされた。
頭には床屋でパーマかけるおばちゃんが被ってるような機械を当てられる。
隣りでは姉者も同様にしていた。



32: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 22:17:13.86 ID:I6K9T7g70

(;´_ゝ`)「あ、姉者。なんだこれは」

∬´_ゝ`) 「いいから目つぶって。ちょっと我慢しなさい」



  パリッ



(lli _ゝ )「ぎゃあああああああああああああ!!!!」


一瞬、頭に電流のような刺激が走った。

∬;´_ゝ`)「ビビリすぎでしょ」


ぺしっと姉者にオデコをはたかれた感触がして、
硬くつぶっていた目をおそるおそる開いてみる。


(;´_ゝ`)「……なんともない。」

俺はてっきり電気椅子かなにかなのかと…



34: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 22:23:18.12 ID:I6K9T7g70

姉者が お馬鹿、と
溜息をつきながら引き起こす。

体にはなんの変化もない。
頭の刺激も、思い起こしてみれば大したものではなかったし
続く痛みもない。
えらく大きな悲鳴をあげてしまったのが
ちょっと恥ずかしくなる。


∬´_ゝ`) 「ちょっと落ち着いてみなさい。
      なにか感じない?」

( ´_ゝ`)「? ………あ…」


心を落ち着かせて辺りを見渡すと


( ´_ゝ`)「周りが日本語に」


ザワザワと聞こえていた雑踏の声がクリアになっていた。
さっきまでの、外国に来ていたような感覚が
一気に身近に感じられる。
声質も違和感なく、ご丁寧にどこか方言のような
イントネーションで喋っている人もいる。



35: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 22:27:03.19 ID:I6K9T7g70

∬´_ゝ`) 「あんたの頭が脳内翻訳してくれるようになったのよ」

( ´_ゝ`)「おお…これも魔法なのか?」

∬´_ゝ`) 「一種のね」


こういう常用する魔法は、
機械を通すことによって安定した供給が可能になるそうだ。


( ´_ゝ`)「凄いなーテスト勉強とか必要ないなもう」

∬´_ゝ`) 「そんなわけないでしょ。
      電子辞書ができたって英語のテストは無くならないわ」

(;´_ゝ`)「夢も希望もなくなる事を……」



ζ(゚ー゚*ζ「ご気分はいかがでしょうか?」


アフターフォローを
完璧にしてくる金髪ロボットと話している姉者。
父者はまだカウンター待ちしているようだ。



36: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 22:29:47.09 ID:I6K9T7g70

( ´_ゝ`)「………」


見渡す。
言語が同じになった事で、
人外の見た目の方々もあまり怖くなくなった。
勝手に俺のイメージで変換してるそうなだけあって、
おねーちゃん達は「だしぃ〜マジィ〜w」とか
ギャルっぽい喋り方をしているし
黒い肌の方はエディ・マーフィーみたいな声で早口で喋っている。


治安も悪くないみたいだし、
これなら多少俺だけで歩いたって大丈夫なんじゃあるまいか?


尻ポケットを確認する。
携帯はちゃんとまだ持っている。
流石に電波は通じないが、写メ機能なら大丈夫だ。


目の前を、白い肌にフサフサ耳尻尾の生えた
幼女が歩いていった。


(*´_ゝ`)「………フヒッ」


ち、ちょっと。ちょっと撮るだけ………



39: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 22:34:16.30 ID:I6K9T7g70

父者と姉者の位置を確認。
2人ともまだその場を動いてはいないし、
まだ時間がかかりそうだ。
方向さえ間違わなければすぐに帰ってこれるし、
いざとなったらそのへんの人に聞けばいい。

トコトコと可愛い音をたてて歩く幼女を追いかけて
角を曲がった。

(*´_ゝ`)ノシ「ね、ねーーぇ、そこのお嬢ちゃ…「いてっ!」

(;´_ゝ()「おぶ!」


顔面になにかがぶち当たった。
角を曲がりざま人とぶつかったらしい。

(;´_ゝ`)「あでで…あ…」


顔をあげると、そこにいたのは


(,,゚Д゚)

筋肉モリモリな怖ーいおっさんだった。



41: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 22:38:30.45 ID:I6K9T7g70

(#゚Д゚)「いってーな、おい…」

Σ(;´_ゝ`)「ひっ…」


ギラリと光る大きな目で睨まれて思わず体がすくむ。
おっさん越しに、幼女が軽い足取りで行ってしまったのが見えた。


(;´_ゝ`)「ああああ、す、すいませ、前よく見てなくて…っ」

(,,゚Д゚)「………」

(;´_ゝ`)「……すいません……」


ちゃんと謝ったというのに、
おっさんはまだ興味深そうにじろじろと俺を眺め回してくる。

このおっさん、頭髪が半分ほど白髪になっているところから
まぁまぁなご高齢だとは思うが、
赤黒く日焼けしたシュワちゃんみたいなゴツい体と
顔や腕にちらほら見える盛大な傷跡が怖すぎる。
俺も背は高いほうなのに、
顔がぶつかったのはおっさんの胸板だ。

これは絶対俺のほうが席を譲られるレベル。



42: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 22:41:30.47 ID:I6K9T7g70

(#゚Д゚)「ゴルァア!!」

Σ(;´_ゝ`)「ヒャウン!」

いきなり怒鳴るもんだから変な声出た。

おっさんはそのまま俺の頭を鷲づかみにして上を向かせ、
酒臭い息をふきかけながら

(,,゚Д゚)「兄ちゃん…ひょろいなぁ…」

とのたまった。


(;´_ゝ`)「え……」

(,,゚Д゚)「なんなんだそのひょろい体は!モヤシか!?
      そんなんでこの宇宙で生きていけると思ってんのか!?」

(;´_ゝ`)「う、宇宙で生きるつもりはないっていうか
        臭い!酒臭い!!は、離せっ…」


俺を掴むおっさんの太い腕を引き剥がそうと
両手で抵抗するが、ビクともしない。
どころかますますアームロックが強くなってくる始末だ。
これはまさにゴッドフィンガー…
待っているのは間違いなく頭部破裂。



43: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 22:48:40.63 ID:I6K9T7g70

キリキリキリ((;´_ゝ`))「GYAAAAA!!痛い痛いやめて死ぬぅぅ!!」

(#゚Д゚)「簡単に死ぬとかいうんじゃねえゴルァ!!
      俺の親友に似たツラしてやがる癖に
      そのヘタレた根性…気にいらねぇゴルァ!」

(( ;_ゝ;))「しるかああーー!!」


完全なる私情じゃねえか!!

酔っ払ってるせいか、手加減ってものがまったく感じられない。
暴れるたびに締め付けはどんどん増してきて両足はもうつま先立ちだ。
両腕の力が抜け、だらんと下に落ちる。


( ;_ゝ;)「すまん弟者…おにいちゃんはもう駄目かもしれん…」

(#゚Д゚)「駄目じゃねえ!そんな簡単に駄目とか言う男に
      育てた覚えは−−…」

∬;´_ゝ`) 「なにやってんのアンタら」



47: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 22:56:30.91 ID:I6K9T7g70

薄れる意識の中、現れた女神……いや、姉者の冷静な声。


( ;_ゝ;)「あっ…姉者ぁぁ…たすけてぇ…」

∬;´_ゝ`) 「うわっベショベショできもっ!
       てかちょ、なにしたのアンタ!」

おっさんに少々怯えながら姉者がこっちに向かってくる。
その後ろには騒ぎに気づいたらしい父者の姿もある。

 彡⌒ミ 
(;´_ゝ`)「なんだなんだどうした……」


息子が死にかけてるというのに
緊張感のない声色でひょこひょこ歩いてくる父者。
駄目だ、こんな女、老人じゃ
このおっさんに適うはずもない……

と、絶望したところで
突然アームロックが外された。

(;´_ゝ`)「いでっ」

全体重おっさんの腕にかかっていた俺は
床にしりもちをつく。



49: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:01:03.79 ID:I6K9T7g70

∬;´_ゝ`) 「大丈夫?」

姉者に助け起こされながら何事かと見上げると、
怖いおっさんが両目をこれでもかとかっぴらいて
父者をガン見していた。


 彡⌒ミ 
(;´_ゝ`)「・・・・・・」

(#゚Д゚)「・・・・・」


もう俺のほうに興味は微塵もないようだ。
一方父者は蛇に睨まれたカエルのように固まっている。


(;´_ゝ`)「よ、よし姉者!父者が時間を稼いでくれてるうちに
       2人で逃げよう!」

∬´_ゝ`) 「最低ねアンタ」



51: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:05:21.87 ID:I6K9T7g70

こそこそと俺が姉者に耳打ちをしてる間に
おっさんは一気に父者との間合いを詰め、両腕を大きく振り上げていた。


(#゚Д゚)「お前っ……!!」

Σ(;´_ゝ`)「ちちっ………!」


俺が 危ない と口に出すより早く
おっさんの俺の太腿なみにごつい腕が父者のか細い肩を捕らえ、
自らの胸元へ抱き込んだ。



(* ゚Д゚)「父者じゃねぇかああああああ!!!」





∬;´_ゝ`);´_ゝ`)「・・・・・・へ?」



53: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:11:00.39 ID:I6K9T7g70

 彡⌒ミ
(* ´_ゝ`)「ギッコー!!ハッハハハハ!まだ生きてたかお前!」

(* ゚Д゚)「こっちの台詞だぜ馬鹿野郎!
      禿げ散らかしやがって、まるでお前の方が年寄rグボッ」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「なにか言ったか?」

(メ゚Д゚)「い、いやなにも……」

 彡⌒ミ
(* ´_ゝ`)「ハハッ」

(* ゚Д゚)「は、ははははははは!!」


 彡⌒ミ
(* ´_ゝ`)人(* ゚Д゚)「えへへうふふあはははは!」





∬;´_ゝ`);´_ゝ`)「(おっさん達きめえ……)」



54: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:14:36.03 ID:I6K9T7g70



見せられたのは一枚の古ぼけた写真。
大分色褪せてしまっているが、そのセピア色の風合いが
デジタル高画質のjpgデータにはない
暖か味を醸し出していた。


背景は宇宙。
被写体は数名の男女。

ちょうど、出発前に母者達に見せられた写真と
似たような雰囲気だ。
同じときに撮られたものかもしれない。

写真の真ん中に、今よりも若い父者と母者。
父者にはフサフサに髪があるし、
母者は大柄なれど優しい笑顔をしている。

そして、隣りで父者の首を絞めつつ
豪快に笑っている大男……



(,,゚Д゚)「なっつかしいなぁー」


目の前でウィスキーを煽っているこの男だ。



55: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:19:49.49 ID:I6K9T7g70

異様な雰囲気に人が集まってきた通路から移動し、
奥のほうにあった安そうな酒場に入った。
現在4人、丸テーブルで顔を突き合わせている。

紺色の照明にところどころネオンが光っている内装、
中央カウンターの中ではゴツいおっさんがシェイカーを振りながら
柄の悪そうな怖い人達と離している。
古いアメリカ映画のような光景だが、
客がみなコスプレまがいの格好なので
(いや、彼らにとっては普通なんだろうけど)
どちらかというとコスプレダンパのようでちょっと興奮。
ここのステーション的に今が何時なのかはわかり辛いが、
この店内は確実に夜の雰囲気を演出している。


(,,゚Д゚)「まさか父者の息子だったとはな。似てる筈だ。
     気をつけろよ、お前も将来禿げrゲボッ」

 彡⌒ミ
(#´_ゝ`)「黙れこの」


すかさず父者が酒瓶を男の口に押し込んだ。
俺と姉者は思わず体を縮こませるが、
当の男は楽しそうな目で大人しく酒瓶を再び煽りはじめた。
父者も#マークを飛ばしながらも
その顔はまちがいなく楽しげに輝いていることから、
2人が浅い仲ではない事が伺える。



57: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:25:43.27 ID:I6K9T7g70


(,,゚Д゚)「俺はギコ・ゴリャンだ。よろしくな流石ジュニア?」

( ´_ゝ`)「兄者です…」


ジュニアとか欧米か。


(,,゚Д゚)「そっちの嬢ちゃんは随分ベッピンだな!母者似か?」


∬´_ゝ`)


(;´_ゝ`)「……」


一瞬姉者の周りの空気が数℃下がった。
気持ちはわからないでもない。



59: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:28:47.66 ID:I6K9T7g70


数回深呼吸をしてからギコさんに手を差し出す姉者。


∬#´、_ゝ`) 「よろしく。ギコ・ゴリャンさん?」

(;´_ゝ`)(笑顔KOEEEEEEEEE!)


 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「正しくはギコ・ゴルァンな。お前まだラ行まともに言えないのか」


(,,^Д^)「だっはっは、そうそうそうだった!
      それにしてもお前に似ず美人な娘さんに育ってよかったなー
      ……しかも熱烈な握手だ!熱烈すぎて痛い!痛いくれえだぜ!離して!!」

∬# 、_ゝ )キリキリ 「……」


姉者は艶やかな笑顔を浮かべたままだが、
握手を解かれたギコさんの手は真っ赤になっていた。
ギコさんはそれすら楽しそうにニヤニヤと笑っている。
こええ…



61: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:34:27.07 ID:I6K9T7g70

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ギコは腕のいい造船技師でね、よく世話になったもんだよ。
       フロウストーン号の80%は彼の手によるものだ」

(,,゚Д゚)「おいおい、一緒に銀河を駆け抜けた仲じゃねぇか。
      紹介する肩書きは『仲間』にして欲しいもんだな」


赤ら顔を膨らませて子供のように膨れるギコさん。
50は超えてそうなおっさんが
そんな可愛らしい仕草したら殺意が芽生える。


( ´_ゝ`)「…『銀河を駆け抜けた』?
       そういえば聞き逃してたが、父者は一体なんで
       こっちの世界にきたんだ?何してたんだ?」


現状についていくのに必死で忘れてたが、
考えてみればおかしな話だ。
俺の当然の疑問に
何故かギコさんは目を剥いて俺を見、
父者はなんとなく気まずそうな顔で目を逸らした。

(,,゚Д゚)「父者お前…実の息子になんも話しちゃいないのか!?」



63: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:38:39.94 ID:I6K9T7g70

私は知ってるけどね、と涼しい顔で
ソーダグラスを傾ける姉者。
そうだ、姉者は幼い頃こちらに住んでいた、と言っていた。
では、父者はこちらの世界になんらかの理由で来訪し、
母者と出会い、姉者を産んでから
俺らが生まれるまでの間にまたもとの世界に戻ったという事になる。


( ´_ゝ`)「なにか理由があるのか?
       …弟者がこちらの世界に突然飛ばされたこととも
       なにか関係が?」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「いや、それは…関係ないと思うんだけどね……」

どうもハッキリしない。

( ´_ゝ`)「それにしたって、こんな異世界の存在も知らなかった
       弟者が突然巻き込まれているのに
       まったく関係ないなんてこと……」

(,,゚Д゚)「ないと思うぜ、俺も」


語尾をギコさんが代弁した。
父者は うーん、と唸りながら禿げ散らかした頭を
ポリポリと掻いている。



65: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:43:03.27 ID:I6K9T7g70

その様子にギコさんがイラついた様子で酒瓶をテーブルに叩きつけた。
ダンッと鈍い音が響き、おつまみの乗った皿が一瞬浮きあがる。


(#゚Д゚)「なにを隠すことがあんだよ、
      お前がした事ぁ誇りこそすれ、
      恥じるようなもんじゃねぇだろ。
      俺なんか相手が嫌がったって毎日語ってるぜ!」


(#゚Д゚)「昔、あのヒーロー
     『流石父者』と一緒の船に乗りこの銀河を救った
      ってことをな!」



67: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:49:23.75 ID:I6K9T7g70


店内が静まり返った。


酒を煽っていた刺青塗れのマッチョなお兄サン、
露出の多いお姉さん、カードゲームをしていた男達、
全員目を皿のようにしてこのテーブルを見て固まっている。

ドンドンと腹に響いていたBGMすらも
今は止まってるような気分だ。


(;´_ゝ`)「……な、」




 彡⌒ミ
(;*´_ゝ`)「あぁん〜……だからそういうの嫌なんだってば…」



その注目の的の中心は、顔を鶏ガラのような腕で覆い
ひたすらキモくくねくねしていた。



68: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:51:48.60 ID:I6K9T7g70


――――――――――――――――――
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(´<_`;)「………」

(-@∀@)「大丈夫か弟者?手ブルブルしてっぞ」


作戦までまだ時間はあるというのに
情けなくも震えが止まらない。
ガコンガコンと機械の稼動する音のうるさい中、
それ以上に響いている自分の胸をギュッと掴む。


(´<_`;)「いえ、大丈夫です。すいません…」

(-@∀@)「無理はしなくていいんだぞー?
       俺たちだけで十分仕事は終わらせてくるし」

(´<_`;)「……いえ、そういうわけには」



70: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:52:49.91 ID:I6K9T7g70

自分が乗せてもらっている海賊船。
海賊というからには、綺麗な事柄だけでできている訳がない。
乗組員は驚くほど優しく接してくれるし、
船長も悪い人には思えないが…

現に、『仕事』の場に
自分を出そうともしない。
むしろこうやって、船内で待ってるよう薦めてくれるくらいだ。

しかし、彼らに助けてもらっている以上は


(´<_`;)「俺も…見てみぬふりは嫌っていうか……」


眼鏡の男は溜息をついて俺の肩をポンポンと叩く。


(-@∀@)「固いねぇー。優しさには乗っておいたほうが得だぜ?」

(-@∀@)「まぁそう緊張しなくていいって。
       うちらはどちらかっていうと金品どうこうよりも
       暴れるのが好きって馬鹿ばっかりだからw」



71: ◆9vvTcFj.a. :2008/07/11(金) 23:54:50.93 ID:I6K9T7g70

まぁ俺から離れないことだなww

そう楽しそうに笑いながら、
俺が淹れたコーヒーを満足そうに飲んでいる男。
しかし、その「暴れる」こと自体が
初体験の人間からするとそう軽くは考えられない。


(´<_` )「あと数時間……」


二人のいる動力室は広さは相当なものだが、
小さなビルほどの大きさのある巨大な黒々と光るエンジンと
それと繋がる巨大な歯車、パイプ等が
室内のほとんどを占めていて狭苦しい。

冷たそうな金属剥き出しの壁に
一定間隔で並んだ丸小窓。

船が停止しているため、
覗く光景は少し前から変わっていない。

荒れ果てた月の砂漠の中、
唯一派手にあたりを照らしている地球月星間空港。


鯨は、今はまだ静かにそれを見つめていた。



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