('A`)と恩返しのようです

4: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/16(月) 21:02:21.37 ID:GNHnJKIF0
誰かが楽しげに話しているようだ。
優しそうな女の人の声、それに男の人の声もする。

その声を酷く懐かしく思い、体を起こす。


――――――――――――誰・・・?

小さな子どもの声が響く。
俺は違和感を覚えた。
なぜならその言葉は、今俺が言おうとした言葉だったからだ。

何故だろう、不思議とその子供の声にも聞き覚えがあるような気がする。


J( 'ー`)し「ドクオ、起きたの?」



ああそうだ、今日は家族でおばあちゃんの家に行くんだった。



5: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/16(月) 21:02:52.24 ID:GNHnJKIF0
 
 
 
('A`)と恩返しのようです



6: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/16(月) 21:05:27.73 ID:GNHnJKIF0
  
('A`)「うん、まだ着かないの?」

J( 'ー`)し「もうちょっとよ、もう少し大人しくしていてね」

('A`)「はーい」


窓の外にはたくさんの木。
いつまで走っても同じような景色が続いているのを眺めていると、また眠気に襲われる。


(´・ω・`)「眠いんなら寝てもいいんだぞ?」

('A`)「平気だもん」


父の言葉に強がっては見たものの、やっぱり眠いものは眠い。
いつしか俺は、再び目を閉じていた。



8: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/16(月) 21:07:59.40 ID:GNHnJKIF0
 
J( 'ー`)し「着いたわよ、ドクオ」

('A`)「ん・・・あ、」


次に目が覚めたときすでに車は走るのをやめ、駐車場のようなところに停まっていた。
車を降りると、むわっとした暑さとともにきれいな空気が頬をなでる。


('A`)「ふー」

(´・ω・`)「車の中は空気が悪いからな、気持ちいいだろう?」

('A`)「うんっ」

(´・ω・`)「さあ、ここからちょっとだけ歩くからな」



10: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/16(月) 21:09:38.34 ID:GNHnJKIF0
細い獣道を父の背中を追いかけるようにして進む。
両脇に咲いているのはひまわりだろうか、それにしては大きな気がする。


(´・ω・`)「さあ、着いたぞ」

('A`)「・・・・わぁ」


突然開けた場所に出る。
広がるのは沢山の水田と、いくつかの家。
自分の家の周りでは見かけることが決してなかった景色に、少し驚いてしまった。


J( 'ー`)し「さあ、早く行きましょうか」


今度母に手をひかれて歩き出す。
おばあちゃん家はどれなんだろうとあたりを見回す。


('A`)「…………」


当然見当がつくはずもなく、俺は空を見上げる――――――――――――――――




青い空のどこかに、自分を見つけた気がした。



12: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/16(月) 21:15:46.29 ID:GNHnJKIF0
 
覚醒する。
白く染まった視界が段々と鮮明になってくる。


「あれ……?」


辺りに広がるのは間違いない、上岡郷だ。
ただ疑問に思う点はただ一つ


「空……飛んでる?」


眼下に広がっている光景は、まるで航空写真でも撮るのかと聞きたくなるほど高いところから見下ろしたものだし
前を見れば遥か彼方までその先を見通すことができる。


「なんなんだよ……」


しかし、不思議と怖い気持ちはなかった。
美しい景色がそうさせているのだろうか、俺は不自然なほど落ち着いていた。



13: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/16(月) 21:21:42.94 ID:GNHnJKIF0
  
(´・ω・`)「ちゃんとおばあちゃんに挨拶するんだぞー」

('A`)「うん、分かってるよ」


暫くあたりを見回していると、その内に"自分"を見つけることができた。
不思議なものだ、俺は自分自身の姿を目にしたというのに違和感というものを感じていないのだろう。


J( 'ー`)し「ただいまー」

('A`)「こんにちは、おばあちゃん!」


まるで昔のアルバムを見ているような、そんな気分だ。


('、`*川「いらっしゃい、よく来たね」

(´・ω・`)「どうも、ご無沙汰しています」


最近の記憶よりも少し若く見えるおばあちゃんが、三人を手招きしている。
俺もそのままおばあちゃんのもとへと向かう。



15: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/16(月) 21:27:41.66 ID:GNHnJKIF0
 
('A`)「君、だぁれ?」

( ^ω^)「ブーンはブーンだお」

('A`)「俺はドクオ、よろしくね」


ちょうど遊びに来ていたのだろう、ブーンと知り合ったところだ。
後ろの方で大人たちが何やら話しているが、よく聞こえない。


「おーい君たち―、お兄さんとあっそぼーぜー」


ためしに声をかけてみるも、二人とも全く反応しない。
当然大人たち―――と、自分の親だったっけか―――も全く気付かない。



18: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/16(月) 21:34:16.57 ID:GNHnJKIF0

( ^ω^)「いってきますおー」

(´・ω・`)「おお、いってらっしゃい」

('、`*川「気をつけてね」


二人が玄関から飛び出して行った。
確かこの後は、ツンと出会って三人で遊んだ気がする。


「もう少し、ここにいようかな」


特にすることも見当たらない。
というか、どうしたらいいのかわからない。
とりあえずお茶でも飲んでゆっくりするかと、手元にあった急須に手を伸ばす。


「……あれ?」



20: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/16(月) 21:38:16.30 ID:GNHnJKIF0
掴めない。
すり抜ける……なんてわけではないのだが、なぜか掴めない。
同じようにお茶っ葉に手を伸ばすも、やはり掴めない。


「掴めない男……なんかクールだぜ」


なんて馬鹿を言っている場合じゃない。
とりあえず手当たり次第に手で、足で、しまいには頭で触れてみるもまるっきり変化はない。
挙句ばあちゃんの肩を叩いてみたりもしたが、やはり成果は0だった。

ちなみに、箪笥に打ち付けた頭はしっかりと痛みを訴えている。


「なんなんだよ」


これではお茶が飲めない。
しかし、別段のどが渇いているわけでもないことに気づいた。


「なんなんだ……ホントに」



22: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/16(月) 21:46:03.39 ID:GNHnJKIF0
  
('、`*川「あら?猫ちゃんだわ」

J( 'ー`)し「ホントだ、可愛いわね」


気づくと黒い猫が入ってきていた。
多分、いつだか見た猫と同じだろうと確証はないが、そんな気がした。


「…………ん?」

にゃあ


不思議と、こちらを見ているような気がする。
動物は幽霊が見えるとかそんな話を聞いたことがあるが、まさか俺は幽霊なのだろうか。



24: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/16(月) 21:50:58.98 ID:GNHnJKIF0
  
('、`*川「あれが欲しいのかい?」


おばあちゃんがこちらに歩いてくる。


「あれ?本当は見えてるの?……おーい!」


手をあげてあいさつする。
しかし、おばあちゃんは俺の横をすり抜け、縁側に干してあった干物を一つとると猫によこした。


「食い物かよ・・・・・・なんつー猫だ」

にゃあ


……やっぱり俺に気づいているようにしか思えなかった。



25: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/16(月) 21:57:19.24 ID:GNHnJKIF0
気がつけばあんなに青かった空は黒に染まり、そこに幾多もの光を散りばめている。
夏とは思えないほど涼しげな空気を感じながら俺は考えていた。


「俺はいったい何者なのだろうか」


ドクオ。
そう、俺はドクオだ。
しかし、今俺の目の前で新しくできた友人たちに手を振っているのもまた、ドクオなんだ。


('∀`)「ばいばーい」

( ^ω^)「また遊ぼうおー」

ξ゚听)ξ「明日来なかったら承知しないんだからねー」


分からない。
でも不思議と焦りはしなかった。

何となくだけど、今が長く続かない―――そんな気がしていた。



戻る第六話