( ^ω^)ブーンはつかれやすい体質のようです
- 2: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:21:29.65 ID:ekrPZlV6O
- これは、私が小学生の頃の話です。学校からの帰り道、真っ黒な髪を腰まで
のばした女の子が、公衆電話の前に立っていました。その子が振り向いて
話かけて来た時に、その目が白く濁っていた事から、私は彼女が盲目である事
を知ったのです。その子は透き通った声で言いました「美加ちゃん、お葬式の
最中に悪いんだけど、私の代わりに電話をかけてくれる?」わたしは(何か
誤解されてるな)と思い乍らも、そこは突っ込まずに、それよりも彼女が何故
まよう事なく私の名前を言い当てたのか、知りたいと思いました。「どこか
で、会ったかしら?」すると彼女はクスクスと可笑しそうに笑い、本を
読むように饒舌に語り始めたのです。「クラスが違うから、知らなくても
無理はないけど、アナタの同級生よ。貴方は一組で私は六組。廊下の端
と端ですものね。でも私は、ずっと前からアナタを知っていた…。
- 4: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:22:51.28 ID:ekrPZlV6O
- 目の悪い人間ほど、声には敏感なものよ。アナタはとても綺麗な声で、クラス
の人望も厚くて、よく皆の話題になってた・・・。だってアナタは優等生の
見本のような人ですものね。きっと私の頼みを聞いてくれると思ったの。
エゴイスティックな他の人たちとは大違い……」
なにかが狂ってるような気がしました。それでも私は、その少女の
いう通りに、ダイヤルを回し(当時はまだダイヤル式の公衆電話でした)、
少女のいう通りに、受話器を渡したのです。
女の子は、電話の向こうの誰かと声を潜めて話しては、時々こちらを見て、
にっこりと笑いました。その電話が終り、少女が去った直後でした。私が、
途方も無くおそろしいものに取り憑かれていた事に気付いたのは。
理由を詳しく説明する事はできません。私の
つまらない文章の意味を理解した者だけが、とり
かれる。そ
れが、この少女の呪いの
ルールなのですから
- 5: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:23:47.26 ID:ekrPZlV6O
長い、産業でよろしく。
川 ゚ -゚)+
- 6: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:24:23.92 ID:ekrPZlV6O
第四話「で、どこを縦読み?」
- 8: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:25:47.89 ID:ekrPZlV6O
- ( ^ω^)「エロ画像ktkr」
GWに突入したというのに、ブーンは自室に篭って昼間からネットをしていた。
前回、入学式を欠席した彼は不安が的中して人間とは上手くいっていない。
ぼっち生活の恐怖から逃げるように、エロ画像うpスレと戦っているのだ。
( ^ω^)「フヒヒ!」
部屋にはツンとハインが居るが、そんなのは煩悩に火が点いたブーンには関係ない。
更新を確認する度、マウスを握るブーンの手に力が入る。
ξ゚ ゚)ξ「キモッ」
隣でブーンの様子を見ているツンが退き気味に言う。
しかし、そんな非難は耳に入れず、ブーンは画像を開いて行く。
- 10: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:26:57.48 ID:ekrPZlV6O
- 从 ゚∀从「んなの、ツンに見せて貰えば良いじゃん」
ξ#゚ ゚)ξ「誰が見せるか」
ベッドに寝そべって携帯ゲームをしているハインが口を開いた。
ツンが睨み付けるが、ハインはゲームの画面から目を離さない。
( ^ω^)「うおおおおおおお!!」
そんな中、突然ブーンが奇声を欲して両腕を天井に振りかざした。
ツンが見るブーンの横顔は、この上なく嬉しそうだ。
きっと、ブーンの趣向に合った素晴らしい画像を踏んだのだ。
ξ;- -)ξ(あほくさ)
馬鹿馬鹿しくなり、ツンがそそくさと部屋から出て行く。
( ^ω^)(神よ)
ブーンは幸運をもたらしてくれた神に祈りを捧げている。
- 12: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:28:22.17 ID:ekrPZlV6O
- 从 ゚∀从(……)
ゲームに興じていたハインが電源を落として立ち上がった。
懐に忍ばせていた短刀を抜き出し、ブーンの無防備な背中に近付く。
それに全く気付かないブーンは煌々と光る画面を見続けている。
( ^ω^)「もっと無いのかお」
ブーンの背後で短刀が空気を斬って振り上げられる。
そして、振り下ろされた短刀の刃が首筋ギリギリの所で止められた。
ブーンは全ての動作を止め、目だけを動かせて短刀を見遣った。
( ^ω^)「ハイン」
ブーンが呼び掛けると、ハインは明るい声で返事をした。
从 ゚∀从「何だよ」
- 14: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:29:41.77 ID:ekrPZlV6O
- ( ^ω^)「僕はまだ、一度もハインの質問に答えてないお」
ハインはプライドが高い悪霊である。
"赤い服を着たい"と答えていないブーンを死に至らしめる筈がない。
渡辺然り、ハインにも都市伝説に生きる者としての誇りがある。
从 ゚∀从「いや」
そう短く言うと、ハインは短刀をそっと引いて懐に戻した。
ブーンが後ろを振り向くと、やはり明るい口調で口を開く。
从 ゚∀从「そんな無防備だから憑かれるんだぜ」
( ^ω^)「???」
ここ最近、ブーンは怪談物の本を読んでいないし、曰く付きの場所には行っていない。
キューに入学式を欠席させられてから、気を付けて暮らしている。
まぁ、ブーンが住んでいる666号室が曰く付きの最たる物ではあるが。
- 16: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:31:06.22 ID:ekrPZlV6O
- ( ^ω^)「憑かれた感じはしないけど」
从 ゚∀从「まぁ、見てろって。お前に心休まる日々なんざねぇ」
ハインはニヤリと口元を歪ませて姿を消してしまった。
部屋に一人残されたブーンが首を傾げる。
……が、そんな事よりも画像収集の続きである。
(*^ω^)「フヒヒ!」
ツンは居間に行き、ハインも何処かへと消えた。
邪魔者が居なくなり、ブーンは自身が持つ全てを解放し始めた。
enjoy&exciting. そんな精神で最後のレスに貼られているアドレスを開いた。
( ^ω^)「ん?」
そこにはエロ画像ではなく、部屋でパソコンをしている男の後ろ姿が表示された。
…釣られた。ブーンは真っ先にそう思い、デスクの薄板を叩き付ける。
だが、よくよく見れば写真には覚えのある物が映っているではないか。
- 17: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:32:17.10 ID:ekrPZlV6O
- ( ^ω^)「ハイン、かお?」
ベッドで寝そべる、女性の物と思しき下半身が写真端に映り込んでいる。
真赤な服、その裾から覗く足がまるで死人のように青白かったのだ。
そして、写真の部屋の様子がブーンの自室とそっくりであった。
( ^ω^)(……)
ハインが言っていた通り、いつの間にかブーンは憑かれていたのか。
ならば一体何時? ブーンは写真をジッと見つめて考える。
しかし、最初は真剣に考えていたブーンだが、徐々に怒りが姿を現せる。
(#^ω^)「エロ画像を返せお! wktkを返せお!!」
これ以上、写真を見ていると精神衛生上に悪い。
ブーンはウィンドウを閉じて写真のアドレスをキッと睨み付ける。
( ^ω^)「…これは?」
ブーンはアドレスの下に長い文章が添えられているのを発見した。
これも悪霊の悪戯かと、ブーンは無防備にもその文章を読み上げる。
- 18: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:33:59.27 ID:ekrPZlV6O
- すると奇怪な文章にも意味がある言葉が出来上がって行く。
―――この話を最誤まで読無と目の見エない少女に途理つかれル
( ^ω^)「あ、しまった」
実を言うと、文章を読む直前まで、ブーンには何者もとり憑いてはいなかった。
写真を見せたのは悪霊による茶目っ気溢れる悪戯だったのだ。
まんまとハインに騙され、未知の悪霊に嵌められたブーンは頭を抱える。
( ^ω^)「くやしいのう……くやしいのう……」
ぶつぶつと呟くブーン。
だが、そんな事などお構い無しに憑きたてほやほやの悪霊が牙をむく。
- 19: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:35:10.72 ID:ekrPZlV6O
- 突然、パソコンの電源が勝手に落とされた。
それから、部屋に体温を奪うような冷たい風が吹く。
( ^ω^)(パソコン壊れたら弁償して貰うお)
ブーンしか居ない部屋にコンコン、と壁をノックする音が響いた。
それを皮切りに、悪霊が部屋を荒らし始める。
時計の針が高速で逆回転、机に置かれたコップは粉砕し、
窓は割られそうな勢いでバンバン、と叩き付けられる。
ブーンは無惨を極めた部屋を見回して大きなため息を吐いた。
( ^ω^)「これはひどい」
壁に大きく書かれた"死ね"の赤い文字を見、修繕費に恐怖を覚えた。
やがて怪異現象が収まった頃、ブーンは部屋の真ん中に立った。
- 21: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:36:38.56 ID:ekrPZlV6O
- 悪霊というモノは、こういった状況では人の背後に立ちたがるモノだ。
経験により悪霊の心理を知り尽くしている彼は、後ろに向けて話し掛ける。
( ^ω^)「えっと……、僕の後ろに立っている人」
「お前、何者だ」
若干、驚いている少女の高い声がブーンの背後から聞こえた。
( ^ω^)「掃除、きちんとして貰うお」
語気を強めて言い放ち、ブーンはくるりと後ろに振り向いた。
そこにはセーラー服を着た中学生ぐらいの少女が立っていた。
腰まで無造作に伸びた黒い髪の毛、生気が全く感じられない真っ白な肌。
盲目なのだろうか、ブーンに向けられた眼は白く濁っている。
だが、悪霊には珍しい整った顔付きの為、恐怖は微塵も感じない。
川 ゚ -゚)「何故、お前は怖がらないのだ」
- 24: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:38:09.67 ID:ekrPZlV6O
- 少女霊は怖がらせる自信があったのだろう、強気に突っ掛かる。
しかし、ブーンはそれを無視して再び強い口調で言い聞かせる。
( ^ω^)「掃除お願いするお。管理人さんに怒られるんで」
川 ゚ -゚)「……悪霊の私がどうして掃除などせねばならんのだ」
( ^ω^)「頼むお」
川 ゚ -゚)「いや」
( ^ω^) キッ!
川 ゚ -゚)「……………分かった」
一歩も譲らないブーンを前に、結果、少女霊の方が折れてしまった。
少女霊は床に散らばったコップの破片を空中に浮かべた。
そして、念じるがまま動かせてゴミ箱へと捨てて行く。
( ^ω^)「……壁の文字どうするかお」
- 25: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:39:34.94 ID:ekrPZlV6O
- ガチャリ。
(´・ω・`)「くねくね」
川 ゚ -゚)「ん?」
ブーンが赤い文字を確認しているとショボンが部屋に顔を覗かせた。
どうやら、ツンに頼まれて夕飯は何にするか尋ねに来たようだ。
( ^ω^)「なめこの味噌汁」
(´・ω・`)「くね。…………?」
ドアを閉じようとするショボンが部屋の異変に気が付いた。
荒らされた部屋にスラリと立っている少女霊の姿にも。
(;´゚ω゚`)「!?」
川 ゚ -゚)「くねくね……だと……?」
ショボンは一目散に逃げ出し、少女霊は急いでベッドの下に隠れた。
何が起こったのか理解出来ないブーンは眉をひそめて立ち尽くした。
- 27: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:42:04.05 ID:ekrPZlV6O
- ( ^ω^)「なんぞ?」
ベッドの下を覗き込むと少女霊は肩を震わせて丸くなっていた。
少女霊が体勢はそのままにドアを指差し、小さな声を漏らした。
川 - )「……悪霊だ。この家には悪霊が居るぞ!」
( ^ω^)「は?」
川 ゚ -゚)「気付かんのか……お前は呪われているのだ!」
( ^ω^)(……)
年がら年中呪われているブーンは、少女霊が言った事を理解出来なかった。
手を差し伸べて下から出させようとするが、全く出て来たがらない。
怯えきった少女霊は放っておき、ブーンは掃除を始める事にした。
( ^ω^)(その内出てくるお)
- 29: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:44:03.70 ID:ekrPZlV6O
- ( ^ω^)「あ、取れるかも分からんね」
ブーンが気になるのは、やはり壁に書かれた赤い"死ね"の文字だ。
指でなぞると意外とあっさり取れた。ブーンは安堵する。
格安で住ませて貰っているが故、いらぬ騒ぎは御免なのだ。
「ぎゃ」
突然、ベッドに頭をぶつける音と小さな悲鳴が聞こえた。
ブーンが振り向くと頭を押さえて少女霊が這い出して来た。
そして、物凄い勢いでブーンの側に駆け寄る。
川 ゚ -゚)「あそこにも悪霊が……!」
ブーンの腕に必死にしがみつく少女霊がベッドの下を指差す。
そこから青白い手が這い伸びてきた…間違いなく悪霊である。
( ^ω^)(もしかしてこの子、怖がりなのかお)
从 ゚∀从「ソイツ、本当に悪霊かよ」
- 30: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:45:59.07 ID:ekrPZlV6O
- ベッドの下から出てきたのは赤い服を着た悪霊、ハインだった。
ハインはぽんぽん、と服に付着した埃を払って少女霊を見た。
从 ゚∀从「どんなのが来るのか期待してりゃ……只の怖がりなガキじゃねーか」
その言葉を挑発として受け取ったのか、少女霊はブーンから離れて前に立つ。
そして、出来る限り恐ろしげな形相を作って凄んだ。
…が、元の整った顔付きが邪魔して恐怖とは程遠い物であった。
川 ゚ -゚)「ふ、ふん、私を誰だと思ってるんだ? あのクーだぞ」
"あの"がどの事を指すのかは分からないが、
クーと名乗った少女霊は怖がりだが自信家らしい。
胸を張ってハインを挑発する……が、しかし両足は震えている。
从 ゚∀从「へー、俺とやろうって言うのか」
川 ゚ -゚)「私の手にかかれば悪霊の一人や二人なんぞ……一瞬だ」
声が震えていなければ決まっていた言葉をクーが吐く。
その言葉を聞いたハインは全身から力を抜いて床に視線を落とした。
- 31: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:47:59.71 ID:ekrPZlV6O
- 川 ゚ -゚)「敗けを認めたか? 今なら謝れば許してやるよ」
ハインの様子を降参と決め付けたクーがツカツカと歩き出す。
ゆらゆらと揺れるハインの肩にクーが小さな手を置いた。
川 ゚ -゚)「私の力にひれ伏したようだな。
見たまえ、人の子よ。これが私の真の力だ」
( ^ω^)(……)
調子に乗ったクーがブーンに顔を向けて自慢気に口を開く。
すると、ブーンが黙ってハインへと指を差した。
川 ゚ -゚)「なに?」
真の力を発揮した悪霊が再びハインへと顔を戻した。
そこには、絶対に人前には出せないハインの顔があったのだった。
「ぎゃー」
- 32: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:49:50.01 ID:ekrPZlV6O
- ****
ξ゚ ゚)ξ「悪霊を恐がる悪霊って何なの? 死ぬの?」
あれから悪霊のクーは、同じ悪霊に驚いて気絶したのだった。
今は、壁以外綺麗になったブーンの自室の隅で三角座りをしている。
悪霊にも色々なのが居るのだな、と思いつつブーンは前々からの疑問を口にした。
( ^ω^)「ツン。僕が大学に行ってる間、2ch見てないかお?」
ξ゚ ゚)ξ「見てない」
( ^ω^)「ふぅん」
"ゆとり"だの"携帯厨"だのを流暢に喋るツンが気になっていたのだ。
パソコンに座るブーンは疑いの視線を、隣に立つツンに向ける。
ξ゚ ゚)ξ「な、何よ」
( ^ω^)「……書き込みのログ、見てもおk?」
ξ;゚ ゚)ξ「駄目! ………ジャナイワヨ」
- 40: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:54:42.95 ID:ekrPZlV6O
- ( ^ω^)「……まぁ、良いお」
ブーンは椅子を回転させて部屋の隅に居るクーへと体を向ける。
意気消沈したクーは顔を伏せて塞ぎ込んでいる。
川 - )(…………)
从 ゚∀从「しっかし、情けねぇ悪霊も居たモンだな」
川 ゚ -゚)「なっ」
ベッドて胡座をかいているハインがクーを小馬鹿にした。
クーは顔を上げて反論をしようとするが、
恥ずかしい場面を目撃されているので言葉を飲み込む。
从 ゚∀从「おらおら、早く真の力を見せてみろよ」
( ^ω^)「いじめは良くないお」
ヤジを飛ばしまくる不良をブーンが制止させた。
ハインはせせら笑いながら壁に書かれた文字に目を向ける。
- 42: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:56:28.54 ID:ekrPZlV6O
- 从 ゚Д从「……今時"死ね"は流行らねーだろ」
( ^ω^)「それは僕も常々思ってるお」
陳腐過ぎてイマイチ恐怖心を煽られない。
人間を恐怖に叩き落とす良い言葉は無い物かと二人は首を捻る。
从 ゚∀从「"尻に気を付けろ"ってのはどうよ」
( ^ω^)「駄目だお。下品過ぎる」
从 ゚∀从「なら、"お尻にお気を付け下さい"で」
( ^ω^)「優しくしただけじゃないかお」
从 ゚д从「そう言うお前には良い案があんのかよ」
( ^ω^)「………"股間に気を付けろ"」
从 ゚Д从「ああ、そう。お前頭良いね!」
ξ゚ ゚)ξ「あんた達ねぇ……」
- 45: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 02:58:01.09 ID:ekrPZlV6O
- ツンの声でブーンは下品な話題から現実へと引き戻された。
今の会話はダメ出しという形でクーを著しく傷付けてしまった。
クーは先程よりも酷く凹み、悲壮感を全身から放っている。
( ^ω^)(やべっ)
( ^ω^)「クー、落ち込むなお。君は凄く恐いお」
人間に言えば怒るに違いないが、"恐い"は悪霊にとって誉め言葉だ。
クーのような弱気だが自信過剰な悪霊には良く効く事だろう。
川 ゚ -゚)「……本当か?」
ゆっくりと顔を上げてクーが微かな声で問い掛ける。
ブーンは一瞬迷ったが、一度だけ大きく頷いて返事をした。
川 ゚ -゚)「……ククク、やはり人間とは脆い物だな」
不気味に笑ってクーが立ち上がった。
ブーンとハインは、態度の変わりように唖然としている。
- 47: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:00:19.06 ID:ekrPZlV6O
- 川 ゚ -゚)「人間……ブーンと言ったな。
成る程、悪霊を引き寄せる特異な体質のようだ」
川 ゚ -゚)σ「―――私がその体質に終止符を打ってやろう」
ピッとブーンに指を向けてクーが殺意を露にするが、
普通の女子中学生に狙われているようで余り恐くはない。
クーは大きく息を吸い込み、ブーンへと両手を伸ばして飛び掛かった。
( ^ω^)「おお?」
ξ゚ ゚)ξ(…)
ツンは床に転がっているティッシュの箱を浮遊させる。
そして、間髪入れずにその箱をクーの頬目掛けて放ったのだった。
川 - )「痛っ!?」
ティッシュの箱はクーの頬に見事直撃。
予期せぬ攻撃に驚いたクーは動きを止めて目を白黒させる。
从 ゚∀从(やまだのじゅつとかあったよな)
- 50: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:02:11.56 ID:ekrPZlV6O
- 川 ゚ -゚)「……何故、人間の味方をする」
クーは頬をさすりながらツンに怪訝な視線を向ける。
悪霊とは、ある日突然人間に取り憑き、死なせて喜ぶのが当然。
なのに、悪霊が人間を庇った。クーには信じられない光景だった。
ξ゚ ゚)ξ「何となく、よ」
ツンは曖昧に答えるが、横から見ていたハインが口を挟む。
从 ゚∀从「そいつら恋人同士なんだよ」
( ^ω^)「ねーよwwwwwwwww」
ξ;゚ ゚)ξ「そんな訳ないでしょ!」
二人の声が綺麗に溶け合った。
クーは恋仲を否定する二人を見て殺意を消した。
川 ゚ -゚)「……悪霊と人間の恋か。一昔前の小説みたいで素敵だな」
- 54: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:04:22.22 ID:ekrPZlV6O
- ξ;゚ ゚)ξ「違うって言ってるでしょうに……」
だが、クーは聞く耳持たず、自分の世界に入ってしまった。
感慨深げに目を瞑って形の良い顎を手で撫でる。
川 - -)「悪霊と人間の恋には障害が多いだろう。
山あり谷あり……二人の行着く先に何があるのか。
そんな二人が挙げる結婚式、いや、血痕式を見たい物だ」
从*゚∀从「いいぞ、もっとやれ」
ξ;゚ ゚)ξ「付き合ってられないわ」
( ^ω^)「散歩に行くお」
クーの独り言についていけなくなり、二人は部屋を出ていった。
しかし、クーの妄想は留まる事を知らず続いていく。
丁度、ブーンの葬式にまで話が進んだ頃、漸く目を開いた。
川 ゚ -゚)「ブーン、お前は特別に殺さずにおいてやろう。
何、気にする事はない。人間の一生など悪霊からすれば一瞬で――」
川 ゚ -゚)「いない」
- 56: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:06:20.98 ID:ekrPZlV6O
- クーは部屋を見回すが、二人の姿がなくなっていた。
不思議に思い小首を傾げるクーにハインが言葉を掛ける。
从 ゚∀从「あいつらなら外に出て行ったぜ。…多分ラブホ」
川 ゚ -゚)「なんと。祝日の昼間から破廉恥な」
クーは嘘を素直に信じきってしまう性格のようだ。
こういったタイプは悪戯好きなハインには良い遊び道具である。
从 ゚∀从「お前、結婚式とか言ってたけど、ツンの腹ん中には子供が居るんだぜ」
川 ゚ -゚)「…………何だと?」
从 ゚∀从(wwwwwwwwwwwwww)
川 ゚ -゚)「コーラで洗えば良かったのに」
从 ゚∀从「は? コーラとか都市伝説だろ」
川 ゚ -゚)「え? 常識だろ?」
从 ゚Д从
- 58: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:08:38.21 ID:ekrPZlV6O
- クーは人を疑うという事を全く知らなかった。
流石のハインも呆れ返って物が言えなくなる。
川 ゚ -゚)「しかし、思わぬ暇が出来てしまったな」
クーはブーンが死ぬまで、その生涯を見続けるつもりのようだ。
従ってその間、人を死に誘う"遊び"が出来ない長い暇を得た。
同じ悪霊をしているハインはクーの胸の内を汲み取った。
从 ゚∀从「人間をビビらせて遊べば良いじゃん」
川 ゚ -゚)「………」
人間が恐れおののく様子は悪霊達にとって極上の悦びである。
しかし、クーには大きな問題があった。
口では強く言うが、自身の臆病さを彼女は理解していた。
川 ゚ -゚)「……実は、余り自信が無い」
- 60: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:10:00.43 ID:ekrPZlV6O
- 从 ゚д从「あのなぁ」
ハインは茶化そうとしたが、クーの真剣な顔を見て口を閉じる。
ネットで生まれたという事は、悪霊としてはまだまだ新米なのだ。
从 ゚∀从「……そんなら修行すれば良いんじゃね?」
川 ゚ -゚)「修行、とは?」
从 ゚∀从「誰もがビビるような悪霊になる修行だよ」
川 ゚ -゚)「そんな物があるのか?」
从;-∀从(……)
その場限りのノリで生きているハインにそんな策がある筈もない。
妥当な策を考えるが脳内の処理が追い付かなくなる。
やがて、面倒臭くなったハインは極めて単純な方法を口にしたのだった。
从 ゚∀从b「今から人間共を驚かせに行くぞ!」
- 63: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:11:37.17 ID:ekrPZlV6O
- 川 ゚ -゚)「待て」
从 ゚∀从「あ?」
川 ゚ -゚)「昼間に出ても怖くないだろ」
その通りだった。
人々が多く闊歩し、太陽が昇っている日中では恐ろしさが半減する。
ハインは根本的な事を指摘され、再び頭悩ませた。
从;-∀从(夜まで待つのもめんどくせーしなぁ……)
川 ゚ -゚)「君は馬鹿か」ボソリ
从 ゚∀从「何か言った?」
川 ゚ -゚)「いいや、何にも」
从 ゚∀从「んー……なら、悪霊でも驚かせに行くか」
川 ゚ -゚)「…?」
- 64: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:13:19.97 ID:ekrPZlV6O
- 初め、クーはハインが言った事を理解出来ずにいた。
悪霊を驚かせる。何度か脳内で反芻して漸く理解に至る。
川 ゚ -゚)「そんな事―――」
从 ゚ 从「やるんだよ」
川 ゚ -゚)「!」
ハインはベッドからクーまでの距離を一瞬で詰めた。
クーの両肩をギリギリと音を立てる程に掴み、顔を間近に寄せる。
双眸に映る恐怖から逃げるようにクーは体を必死によじらせる。
川 - )「やめ……」
从 ゚ 从「悪霊の癖に悪霊にビビってんじゃねえよ。
……お前が憎くてこんな事をしてる訳じゃない。
俺は、お前を、クーを大悪霊にしてやりたいんだよ」
心臓に響く低い声でハインはクーに強く言い聞かせる。
クーは体を硬直させ、ハインの前髪の隙間から覗く赤い眼と視線を合わせた。
- 67: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:15:08.03 ID:ekrPZlV6O
- 从 ゚ 从「強がってるだけでは何も変わらんぞ。
先ずは、てめぇの足で一歩を踏み出すんだ。
俺はその手助けをしてやる―――」
川 ゚ -゚)「…………………ああ」
クーのため息に似た声を聞くとハインは両手から力を抜いた。
重圧から解放されたクーは覚束ない足取りで歩き、壁に背中を預ける。
川 ゚ -゚)(…私はなれるだろうか。誰もが恐れを抱く大悪霊に)
从 ゚∀从「ま、そう言う訳で今から行くか」
明朗な雰囲気に戻ったハインは目に掛かった髪の毛を掻き分ける。
クーは青白い顔を少しだけ上げて小さな声で聞く。
川 ゚ -゚)「…何処にだ」
从 ゚∀从「この近くの学校に新参の悪霊が棲み着いたらしい。
今からソイツをシメに行こうか」
因みに、ハインは自分が楽しむ為に焚き付けただけで、
クーを大悪霊にする等、素晴らしい考えは一切持ち合わせていない。
- 69: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:17:28.78 ID:ekrPZlV6O
- ****
川 ゚ -゚)「おい、こんな所に本当に悪霊が居るのか」
クーはハインに連れて来られた学校を見上げた。
ブーンが住むマンションから一歩裏通りに入り、少し南に下った場所。
そこにハインが言った、新参の悪霊が棲み着という学校があったのだが…。
川 ゚ -゚)「平和その物ではないか」
上空から見ればL字型をした三階建ての小学校は、
新築なのか改装を施したのか、外装が真新しく輝いている。
悪霊が潜んでいるとはクーには到底思えなかった。
从 -∀从「あー、やだやだ、やだねー。これだから素人は」
ハインがクーの頭をポンポンと軽く叩きながら嫌味ぽく言う。
クーは少し苛立ちを覚えたが、先輩悪霊の次の言葉を待つ。
- 71: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:18:55.52 ID:ekrPZlV6O
- 从 ゚∀从「近頃、この学校じゃ生徒が突然倒れる事件が続発している。
その倒れた生徒達の首を見れば、あるらしいじゃねーか」
川 ゚ -゚)「何が?」
ハインは顔を手のひらで隠してケケケと不気味に笑う。
そして、
―――首を絞められた跡が、だよ。
はっきりと聞き取れる明るい口調で言った。
从 ゚∀从「両手でこう……クイッとね」
クーに解りやすい様にハインは首を絞めるフリをする。
川 ゚ -゚)(……)
どうやら件の悪霊は無差別に人間を襲っているようだ。
今時珍しいタイプ、クーは気持ちを引き締めて学校の玄関に向かう。
玄関は"L"という文字の丁度角にあたる部分にある。
- 72: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:20:06.57 ID:ekrPZlV6O
- 川 ゚ -゚)「ふむ」
ガラス張りの大きな玄関扉から見える学校の内部には異常は無い。
電気が点いていない暗い空間に鼠色の下駄箱が並べられている。
その向こうに見える廊下にも不審な点はない。
川 ゚ -゚)「ハイン、行こう」
从 ゚∀从「はいはい」
クーが扉を引いたが、やはり祝日故に鍵が掛けられていた。
因って、悪霊らしく扉をすり抜ける手段を取る事にする。
侵入を拒む物など無かったかの様に二人は扉を通り抜けた。
从 ゚∀从「渡辺よりは賢いのな」
川 ゚ -゚)「渡辺?」
从 ゚∀从「いや、こちら事」
- 73: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:21:15.06 ID:ekrPZlV6O
- ハインはキョロキョロと辺りを見回した。
綺麗な学校とはいえども、やはり下駄箱付近は埃臭い。
川 ゚ -゚)「何処から探そうかな――」
二人が下駄箱を抜けて廊下に入った時、突如異変が起こった。
玄関扉が叩き付けられる激しい音が響いたと同時、
廊下に並ぶ窓ガラスから射し込む光が失せてしまったのだ。
从 ゚∀从「何だか知んねーけど、奴さん相当お怒りらしいな」
これは学校に棲む悪霊による闖入者への警告である。
警告と言っても、帰す気が全く感じられないのは非常に悪霊らしい。
怖くなったクーは隣にいるハインの手をギュッと握り締めた。
从;゚∀从「おいィッ!?」
川 ゚ -゚)「無理やだ、怖い」
- 75: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:23:28.35 ID:ekrPZlV6O
- 表情は至ってクールなのだが、全身は恐怖で竦み上がっている。
ハインは髪の毛を掻いて心底呆れ返った。
川 ゚ -゚)))「かかかか帰ろう」
从;-∀从(こんなガキのお守りなんぞやってられっか)
从 ゚∀从「……………ハッ!?」
川 ゚ -゚)))「どどどどどうした」
从 ゚∀从9m「あれを見ろ!」
身体にまとわりつくクーを引き離して、ハインが廊下の奥を指差した。
クーがその指の示す先へと恐る恐る視線を這わせていく。
しかし、そこには何も無く、ただ突き当たりの壁が見えるだけだ。
川 ゚ -゚)))「なななな何も無いではないか」
文句を言って顔を戻すとハインの姿がなくなっていた。
/川 ゚ -゚)\
- 77: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:24:47.41 ID:ekrPZlV6O
- 騙された事を知ったクーは玄関扉へと急いで走り出した。
扉をすり抜けようと勢い良く飛び込む。
しかし。
川 - )「っ!?」
何者かの力に妨害されて扉をすり抜ける事が出来なかった。
盛大に弾き飛ばされたクーが地面に身体を打ち付ける。
川メ゚ -゚)「なんでやねん……なんでやねん……」
クーは腰を擦りながらユラリと起き上がる。
制服にこびり付いた埃を払って鋭い視線で玄関扉を睨む。
川 ゚ -゚)(脱出は不可能、か……)
学校に潜むモノは悪霊すら見逃すつもりがないみたいだ。
余程、力に自信がある悪霊なのだろう。
クーは圧倒的な力の差に絶望に打ちのめされそうになる。
川 ゚ -゚)(……)
- 79: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:26:22.09 ID:ekrPZlV6O
- だが、ハインに言われた通りクーは怖がりな自分を変えたかった。
誰もが悲鳴を上げて逃げ出す、そんな悪霊になりたいのだった。
川 ゚ -゚)(……ヤるか)
時間が一分程経過し、決意を固めたクーは漸く行動を開始した。
此処から無事抜け出すには悪霊を倒すしか方法はない。
今まさに、勝利への誓いを立てたクーの勝負が始まったのだ。
川 ゚ -゚)「ん?」
廊下に戻ると遠くから靴音が聞こえた。
コツコツ、と靴音は少しずつ大きくなって来ている。
正体不明の誰かがクーの居る場所へと近付いて来ているのだ。
川 ゚ -゚)「あわわわ」
クーはその場から一目散に逃げ出した。
\川 ゚ -゚)/「わー」
- 80: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:27:41.82 ID:ekrPZlV6O
- ( ^ω^)「今、クーの声が聞こえたような…」
ブーンは階段を降りきって一階の廊下に出た。
ブーンとツンは部屋を出た後、N居にある大きな公園を散歩していた。
春の暖かな風が吹く中、子供逹が遊んでいる風景を眺めていると、
急に腹痛を起こし、ツンを置いてトイレへと駆けたのだった。
( ^ω^)(これはないな)
用を足してトイレの扉を開ければ、そこは見知らぬ場所。
ブーンが悪霊にとり憑かれた分かり易過ぎる瞬間だ。
( ^ω^)(また脱出する作業かお)
未知の場所に踏み込んだブーンは自分が居る場所を先ず調べた。
教室の存在で学校と直ぐに知るが、何処の学校かまでは分からない。
- 81: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:29:03.50 ID:ekrPZlV6O
- ( ^ω^)「んー」
ブーンが廊下の窓を開けようとするが、鍵は固く閉じられていた。
窓からの脱出は不可能。この調子ならば玄関にも期待出来ない。
学校に棲む悪霊と穏便な会話をして出して貰うしかない。
( ^ω^)(……)
前回に続き、しつこい様だがブーンには封霊する技術などない。
実際、悪霊に会って巧みな話術で頼み込むしかないのだ。
その為には先ず悪霊の正体を知って弱点を握る他ない。
( ^ω^)(教室を調べてみるお)
ブーンは側にある教室へと足を踏み入れる事にした。
教室の扉には鍵が掛かっておらず、すんなりと中に入る事が出来た。
(;^ω^)「うわっ…………」
- 83: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:30:23.34 ID:ekrPZlV6O
- 肝が座っているブーンも、流石に教室内の光景には恐怖の声を漏らした。
首より下の無い霊が教室の隅でゴソゴソしている。
所謂生首が必死の形相で見るに耐えない事に及んでいるのだ。
('A`)「ハァハァ……」
ソイツは女子生徒の物と思わしきリコーダーを舌先で舐めている。
この光景に恐怖を覚えぬ人間など居るものか。
(;^ω^)「へ、変態!」
(;゚A゚)「な!?」
ブーンの叫び声に驚いた生首がリコーダーを床に落とした。
床をコロコロと転がって行くリコーダー。
やがてその動きが止まった時、生首はブーンへと顔を向けた。
(;゚A゚)「見たな!?」
- 84: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:31:39.77 ID:ekrPZlV6O
- 生首は目を大きく開いて冷や汗を垂らしている。
ブーンはその必死さに掛けるべき言葉を迷った。
( ^ω^)「……そんな事したくなる日もありますよね」
(;'A`)「やめろ! そんな目で俺を見るな!!」
生首の霊は取り乱しながらブーンから離れて行く。
しかし、ブーンはそれを許さず生首へとジリジリと迫った。
この生首が学校に棲む悪霊だとブーンは勝手に判断した。
( ^ω^)「どうでも良いからここから出せお」
(;'A`)「そんな事言って言いふらすつもりだろ!
お、俺には分かってるんだからねっ!」
('A`)「…………あ?」
- 87: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:33:12.57 ID:ekrPZlV6O
- 途端、生首の顔から焦りの色が消え、笑みを作り始める。
そして、ブーンの顔に近寄り馬鹿にする口調で言った。
('A`)「何だ。よく見りゃ人間じゃねーか」
( ^ω^)(うぜえ)
('A`)「あーあ、ビビって損しちまったぜ」
( ^ω^)「さっきの事は誰にも言わないから、さっさと此処から出せお」
('A`)「……此処から?」
生首は頬をピクリとさせてブーンを睨んだ。
( ^ω^)「そうだお」
('A`)「あー、それ無理」
つまり、学校から出すつもりはないという事だろうか。
生首はブーンから離れて学校机の上にその身(顔?)を下ろした。
- 89: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:34:23.87 ID:ekrPZlV6O
- ('A`)「俺が閉じ込めた訳じゃねーし」
( ^ω^)「…?」
生首の仕業だと思っていたブーンは頭上にクエスチョンマークを浮かべる。
そんなブーンへと生首は静かに口を開いた。
('A`)「俺は最近ここに来たんだ。名前はドクオ、お前は?」
( ^ω^)「え? あぁ、僕の名前はブーンだお」
何のつもりか、突然の自己紹介にブーンの声が少々上ずった。
だが、その理由は次の言葉で判明する事となる。
('A`)「長い憑き合いになりそうだし、な」
( ^ω^)(……チッ)
ブーンは自身の体質を思い出した。
ドクオという生首も例外なくブーンに憑いたのだった。
- 91: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:35:35.86 ID:ekrPZlV6O
- ( ^ω^)「で、一体誰の仕業なんだお?」
ブーンが話を戻した。
ドクオは窓の外に目を遣りながら物憂げな表情をする。
('A`)「――――トイレの伊藤さん」
( ^ω^)「伊藤さんって、あの伊藤さんかお?」
此処がブーン系小説という誌面上名前を変えたが、
トイレの某さんとは、有名過ぎる怪談の霊である。
こう言った話とは切っても切れない縁のブーンも勿論知っていた。
('A`)「そう、そいつが怒り狂っている」
( ^ω^)「どうしてだお」
彼女は最近のメディアに於いて愛くるしい姿で登場する事が多い。
そちらの印象が強いブーンには、伊藤が悪質な霊だとは思えなかった。
- 93: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:37:05.01 ID:ekrPZlV6O
- ( A )「…………それは」
ドクオの元より血の気が無い顔が一層白くなっていく。
どうやら、伊藤が怒っているのには深い訳がありそうだ。
聞き逃さないよう、ブーンは耳を澄ませて待つ。
ドクオは、ゴクリ…、と唾を飲み込んで重々しく口を開いた。
('A`)「……伊藤さんのトイレ姿を盗撮してたのがバレたんだよ」
( ^ω^)「退くわ」
真剣になった自分が馬鹿らしくなり、ブーンは教室から出ようとする。
学校の悪霊の正体を突き止めた今、変態に付き合ってる暇はない。
しかし、ドクオがブーンを悲痛な面持ちで引き止めた。
('A`)「ま、待ってくれ! このままじゃ殺されてしまう!!」
- 95: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:38:31.75 ID:ekrPZlV6O
- ( ^ω^)「口を慎めよ、変態」
ブーンが振り向いて蔑んだ視線を送る。
('A`)「伊藤さんは無差別に人を襲う程怒っている。
お前みたいな人間が不用意に近付けば殺されるぞ」
( ^ω^)「……」
ドクオの言葉に嘘偽りはなかった。
どんな理由だろうと怒り狂った霊は悪戯だけでは済まさない。
ドクオは小鳥のようにブーンの肩に止まって耳元で囁く。
('A`)「俺に良い方法がある」
( ^ω^)「肩に止まんなお。……良い方法?」
ドクオは気取った気持ちの悪い笑みを浮かべた。
('∀`)「盗撮したカメラを返せば鎮まるだろ!!」
_,、_
( ^ω^)(……そうか?)
- 97: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:40:02.28 ID:ekrPZlV6O
- 釈然としないブーンではあるが、今はそれしか方法が無いようだ。
仕方なく、ドクオの言葉に耳を貸した。
( ^ω^)「で、カメラは? 伊藤さんはどこにいるお? やっぱトイレ?」
('A`)「いっぺんに聞くな……カメラはどっかに落としちまった」
ブーンはガクリと肩を落とした。
この広い校内を探索しなければならないというのだ。
そして、ドクオは緊迫した声で伊藤の居場所を告げる。
(;'∀`)「…そんで、伊藤さんは――丁度、この上の教室に居るみてぇだ」
ブーン逹は速やかに教室から退散した。
無事、ブーンはカメラを見つけ出し、伊藤を鎮める事が出来るだろうか。
そして、クーの安否や如何に。
つづく。
- 98: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:40:34.34 ID:ekrPZlV6O
- ****
\川 ゚ -゚)/「わーわー」
- 100: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 :2008/06/18(水) 03:42:15.99 ID:ekrPZlV6O
- 今回のあとがき。
俺がプレイしているシムピープルのブーン&ツン一家は非常に仲が悪い
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