( ^ω^)ブーンはつかれやすい体質のようです

122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:42:22.31 ID:QXk/wGbCO
****

( ^ω^)「前、渡辺さんって悪霊が襲って来たんだお」

(-、-;トソン「はぁ…………その人は有名なので知ってます」

( ^ω^)「そうかお。それで渡辺さんを屋上に誘い出して」

(-、-;トソン「縁に……ですか? 酷い事考え付きますね」

ブーンはトソンを連れ、自分が住むマンションの非常階段を昇っている。
エレベーターからでも屋上に行けるのだが、ブーンは非常階段を使った。

( ^ω^)(成仏させたいのに)

成仏させたいのにさせたくない。そんな想いに取り付かれ、
ブーンの脳内は混乱し、正常な判断が出来なくなっている。
遠回りになる非常階段を選んだのは、時間を少しでも引き延ばす為だ。

( ^ω^)(……)



124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:45:13.54 ID:QXk/wGbCO
トソンに話し掛けながら、一歩一歩、ゆっくりと昇る。
だがしかし、遅かれ早かれ目的の地点には辿り着いてしまうモノだ。
屋上に着いたブーンは息を切らせるトソンの手を握り締めた。

ブーンは屋上の縁へとトソンの冷たい手を引いて向かう。
夜空には雲が立ち込め、燦然と輝く筈の星達を隠している。
何一つ灯りの無い暗い屋上の縁で、ブーンとトソンは並んで立った。

(-、-トソン「ブーンさんとお付き合いする女性は大変でしょうね」

ですので、ツンさんのような少々気の強い方が………。
トソンは言おうとしたが、胸の内に留めておいた。
ブーンは星の見えない夜空を物憂げに見上げている。

( ^ω^)「トソンは星空が好きかお?」

不意に聞かれたトソンは目を点にして、ブーンの横顔を見た。
ブーンは顔を上に向けたままが故、表情を察し取り辛い。
ふぅと息を吐いてから、トソンはブーンの問いに正直に答えた。

(-、-トソン「何回も見て飽きましたが、それでも好きですよ」

( ^ω^)「どうしてだお」



125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:46:45.21 ID:QXk/wGbCO
首を吊る度に見た星空。今晩のような曇り空の日もあった。
夜空はいつも地獄の中にあり、そのような場所で見上げたソレは、
普通の神経なら、見るだけで吐き気を催す物になってしまう筈だ。

しかし、トソンはブーンと同じ様に夜空を見上げて笑顔で言う。

(゚、゚トソン「だって」

( ー トソン「綺麗じゃないですか」

いついかなる時でもトソンは奥ゆかしく、気の良い少女だった。
無限の地獄で見た光景すらも、少女は素直に綺麗だと感想を言う。
ブーンはこの少女を引き留めるのをやめ、あの世に進める事を誓う。

( ^ω^)「渡辺さんが来た時、此処から下を見下ろしたんだお」

(゚、゚トソン「下を? こんな高い所からよく見下ろせますね」

( ^ω^)「トソンも見てみると良いお。良い物があるお」

(゚、゚;トソン「え、ええ? 何があるんですか?」



127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:51:16.10 ID:QXk/wGbCO
恐る恐る身体を縁に乗り出すトソンをブーンが支える。
屋上から見下ろした景色は、夜のソレへと変わった風景で――――。

( 、 トソン「ああ」

ビル、アパート、街灯、看板、車のランプ、それらが光輝いている。
空は曇り空で星が見えないが、地上の街並みは星空の様相を呈している。
身体を固まらせて街並みを見下ろすトソンからブーンは離れた。

( ^ω^)「トソン、そろそろ、さよならするお」

ブーンは背中を向けて、トソンとの距離を開かせていく。
良い友達になれそうだったが、トソンは成仏を切に願っている。
諦めて歩くブーンの背後から突然、絶叫に近い声が響いた。

( 、 トソン「待てエエェェェェェェッッ!!!」

あの物静かなトソンの物とは思えない、空気を振動させる程の声量。
ブーンは彼女の突然の豹変に驚き、勢い良く振り返った。

( 、 トソン(……)



130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:53:48.13 ID:QXk/wGbCO
トソンは力無く項垂れ、血管の浮き出た両腕をだらりと下げていた。
髪の毛の揺れと同調し、カタカタと全身が震えている。

( ^ω^)「……トソン?」

何人たりとも触れられない殺気がトソンの周囲を支配している。
そう、大人しい彼女はこう見えて、都市伝説として生きる存在なのだ。
無量劫の地獄の果て、トソンの、少女の精神は正常を保てただろうか。

( ∀゚トソン「星空の街並み? そんな臭いのは後戯の時だけで良いよ!!」

( ^ω^)「さーて、困ったぞ」

トソンは醜悪と化した顔をグッと上げ、暴力的な言葉を叫んだ。
今までの恋愛パートのような展開は始まりに過ぎなかったのか。
結局、襲われる羽目になりそうなブーンはがっくりと肩を落とす。

(゚∀ トソン「ブーンは良く下を見たの? 地獄と同じ様相じゃない!」

( ^ω^)( (゚、゚トソン ←コレ、どこ行ってしもたん?)



136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:59:07.96 ID:QXk/wGbCO
鋭く伸びた爪を持った右手を胸の前に翳し、トソンは握り拳を作る。
手のひらの中で爪が突き刺さり、腕に大量の血が伝って行く。
そして、右腕を真横に力強く振って、地面に血を飛び散らせた。

(∀ トソン「未来の無い人間共が歩く、風景!!」

( ^ω^)(……)

狂気と化した悪霊を何度も目にして来たブーンには、
喚き散らすトソンの言わんとする事が理解出来ていた。
彼女は自殺に至った経緯を殺意に乗せ、声高らかに語っているのだ。

( ^ω^)「なるほど。相当辛い目に遭ったみたいだお」

( ∀ トソン「さっすが、悪霊マスター! 私の話が通じるんだ!?」

( ^ω^)「次それ言ってみろ、2ch総力を上げてやる」

右手を下ろし、トソンは覚束無い足取りでブーンに近寄り始める。
左に右に、躓きそうになりながら、不気味な笑みでにじり寄る。



138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:02:17.77 ID:QXk/wGbCO
( o *トソン「ブーン」

ブーンに寄ると、トソンは身体を密着させて妖艶な声を出した。
左腕を背中に回し、右手で顎を軽くもたげ、ブーンに絡み付く。
そして、トソンは斜め下から乾燥した紫色の唇を近付ける。

( ^ω^)(初めてを悪霊に奪われる、か)

ブーンの顔に息が掛かる所まで唇を寄せるとトソンは瞳を閉じた。
そのまま、ゆっくりと近付けて行き、唇の先が当たりそうになった所で、
トソンは瞼を開け、血走った眼球を見せ付けてブーンを嗤った。

(゚∀゚トソン「デートもロクに出来ない奴が期待してんじゃないよ」

( ^ω^)「いや、全然期待しておりませんでした」

非礼な事を言うブーンに怒るかと思いきや、トソンは顔に陰を落とした。
そして、顎から手を離し、ブーンの胸元に顔を埋めて呟く。

( 、 トソン「ブーンって後から来た男に似てるんだよ。
      ……ねぇ、私と一緒に、あの世で棲もう?」



143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:07:20.30 ID:QXk/wGbCO
どのような場所か分からないあの世でも、二人ならきっと怖くない。
そう考え、トソンはブーンを両腕で抱き締めて誘おうとする。

( 、 トソン「返事は? ノーって言ったらこのまま殺すよ?」

あの世に行くには命を落とさねばならない。
ノーもイエスも、…どちらも結果は同じでは無いか。

( ^ω^)(そろそろかお)

抱き付いたまま無言になったトソンを見てブーンは思った。
トソンは自身の心の内に溜まっていた想いを全て吐き出したのだ。

( ^ω^)(やっぱりアレじゃ駄目だったんだお)

今回、クーが考えた成仏をさせる方法には大きな穴があったのだ。
ブーンはそれを知りながら、トソンと数時間デートをしていたのだ。
少しでも彼女が安らかに逝けるようにした事だが、無駄だったのかも知れない。

さて、デートを申し込む前に異性に対してする事があるだろう。
ブーンはトソンの頭と細い身体に腕を回して耳元で囁いた。

( ^ω^)「――――トソン、好きだお」

ブーンは胸の中に顔を埋めるトソンに告白をした。

その為にブーンはトソンを素敵なステージに連れて来たのだ。


昨日、今日と初めて経験する事ばかりだな、とブーンは光の中で思った。



145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:10:23.90 ID:QXk/wGbCO
ブーンの腕の中に収まるトソンの身体が、まるで星のように光輝く。
そして、光の粒子となって霧散し、腕の中からすり抜けた。
光の粒子は舞い上がり、ブーンの視線の先に満天の星空を作った。

( ^ω^)「もう、行くのかお」

寂しいそうにブーンが呼び掛けると、星々は屋上の縁に集まった。
それらが集まり、人の型を作り、淡く輝くトソンの姿を浮かび上がらせる。

(゚、゚トソン「はい、色々とご迷惑お掛けしました。
     …ああ、あと、告白しなくても私は成仏してましたよ」

( ^ω^)「マジで! 恥かいたわ!!」

畏まって深々とトソンはブーンに向かって頭を下げた。
息遣いで身体が揺れるなどの細かな動きに光の尾が引く。
人が亡くなったら星になるという話は、本当なのかも知れない。

( ^ω^)「…さっきのが本当のトソンなのかお?」

こちらの落ち着いた彼女と、あちらの攻撃的な彼女。
どちらが本当のトソンなのか、ブーンは何気無く聞いてみた。
それは、友達との今生の別れを遅らせたくて出た言葉だろうか。



147: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:12:44.77 ID:QXk/wGbCO
(゚、゚トソン「どちらも、本当の私です。……幻滅しますよね」

生前、少女は裏表がとても激しい性格の持ち主だったようだ。
故に……ブーンは少女が自殺した原因を悟ったが口にしない。
代わりに、トソンを真っ直ぐに見つめながらいつもの調子で答える。

( ^ω^)「全然。あんなのキューに比べたら可愛い物だお。
       あ、キューってのは僕の友達で、こいつがまた――」

(゚、゚トソン「本当に怖がらないんですね。私の怖さは何点ですか?」

長くなりそうなブーンの話に割り込み、トソンは話を進める。
ブーンは頭を掻いてトソンの恐怖度に点数を付けた。

( ^ω^)「10点くらい」

辛口の評価だ。
過去最高得点は、入学式を欠席させたキューが記録している。
最大瞬間風速での最高得点保持者は、児童の笛を舐めていたドクオだ。

(゚、゚;トソン「あらら、随分と低いんですね。泣いてしまいそうです…」



151: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:15:23.62 ID:QXk/wGbCO
( ^ω^)「トソンも何時かは僕を怖がらせられるようになれるお」

何時か、など無いと理解しているにも関わらず、ブーンは言った。
折角、仲良くなったのに待ち受けているのは完全なる別離だ。
ブーンは縁にスラリと立つトソンの姿を目に焼き付ける。

(゚、゚;トソン「いいえ、私は人を怖がらせたくなんてありません。
     先程のは、未練を勢いに任せて吐いただけです。
     だって、あんな想い、シラフじゃ恥ずかしくて言えない……」

トソンの都市伝説の雰囲気通り、悪霊に成るつもりはないようだ。
現世にただならぬ怨みを持つ陳腐な幽霊は両手を大きく開いた。
それと共に粒子が背後に大きく散り、一瞬、真輝く翼を形作った。

( o *トソン「地獄を生き、そして、死んでも地獄を生きた私。
       こんな私でも、私でもこんなにも最期は幸せでした。
       楽しい一日を過ごして、しかも、告白されたんです」

笑顔で高らかに言い、トソンの頬に儚げな光が伝って行く。
"星を見る少女"は、これから"星を見ていた少女"となるのだ。

( ^ω^)「……率直に言うお。僕とずっと一緒に居て欲しいお」



154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:18:28.05 ID:QXk/wGbCO
本来、喜んで迎え入れるべきトソンの成仏をブーンは引き留める。
しかし、トソンの耳にはブーンの言葉は、もう、届かない。
トソンは両手を広げたまま、顔を夜空に向け、目を大きく見開いた。

( o *トソン「地獄にもひっそりと輝く天国があるんです。
     星空、私はあの輝きを決して忘れません。
     ああ、素晴らしき地獄のようなこのセカイ」

舞台役者の如く喋り方で、彼女は心の内で燃える想いを述べて行く。
トソンは顔を前に戻し、ブーンよりもその向こうを眺めた。
そして、一つ小さく頭を下げると、沈黙するブーンに話し掛けた。

(;、;トソン「幸せって、ある日何の前触れも無く訪れるんですよ。
     ブーンさんはそれを忘れる事無く、日々を生きて下さい。
    私みたいにならないように、生きて下さい」

ブーンは一言も言葉を発せず、ただ黙って力強く頷いた。
それを確認すると、トソンは白い歯を覗かせて微笑み、
背後にある星空に全身を預けた。

( ー トソン「さようなら」



159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:20:12.75 ID:QXk/wGbCO
(;^ω^)「トソン!」

ブーンは徐々に身体が傾き行くトソンへ、無意識で駆け出した。
既にトソンの顔は伺えない。腕を伸ばして彼女の足を掴もうとする。
だが、その手は空を斬り、トソンは光輝きながら落下してしまった。

(;^ω^)「……ッ!」

トソンの身体が両手両足の先からさらさらと消えて行く。
星空に向かう途中、ふと、首を起こしてトソンは夜空を見上げた。
生憎の曇り空。だが、視界の端にちらり映り込んだ
偽りでも告白してくれた男性の顔が、星のように想えた。

(-、-トソン(綺麗)

最期に何時もと同じように想えた事に感謝をして、瞳を閉じる。
その瞳が粒子となり、トソンの存在は完全に現世から失くなった。

彼女を地獄に繋ぎ止めていた鎖が、街並みへと溶けて行った。



162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:21:24.94 ID:QXk/wGbCO
( ^ω^)(……)

ブーンは先程までトソンが立っていた屋上の縁に腰掛けている。
街並みを背景に、ブーンは暗い表情で地面に視線を落とす。

( ^ω^)「これで良かったんだお」

トソンにはトソンの想いがある。邪魔をしてはいけなかったのだ。
ブーンはもう居なくなったトソンに心の中で謝り、夜空を見上げた。

( ^ω^)「雨かお」

上を向くブーンの顔に、ポツリポツリと雨粒が当たった。
ブーンは雨で濡れた目を擦り、ゆっくりと縁から腰を上げた。

( ^ω^)「な、泣いてなんかないんだからね」

そして、覚束ない足取りで屋上の扉へふらふらと歩いて行く。
…そう言えば、屋上に柵が無いのは魂を刈り易いようにだろうか。
抜け目の無い管理人に恐れを抱いていると、足が縺れてブーンは躓いた。



165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:23:55.91 ID:QXk/wGbCO
( ^ω^)「おっとっと」

転びそうになるブーン。その身体を何者かがそっと支えた。
ブーンが顔を上げると、大きな白いマスクをした女性が目に映る。
ツンはブーンから身体を離すと、差していた傘の中に彼を入れた。
ξ゚ ゚)ξ「どうなっても知らないって言ったでしょう」

( ^ω^)「……こういう意味だったのかお」

友達との永遠の別れは悪霊のどんな悪戯よりも恐怖を感じた。
ツンはこうなる事を知ってて、あの時、ブーンに注意をしたのか。

( ^ω^)(ちょっとおかしいお)

ツンは何の警戒もせず、正体不明のトソンを部屋まで連れて来た。
悪霊を見付けたら、取り敢えず追い詰めてしまう彼女らしくない。
ツンはトソンが危険な存在では無いと分かっていたのだろうか。

そして、それ故に今回のような結末を迎える事も予想出来ていたのか。

( ^ω^)(でも)



168: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:25:42.03 ID:QXk/wGbCO
全ては終わってしまった事だ。
今更、ツンを問い詰めても意味が無い。

それよりも。

( ^ω^)「……何だかごめんだお」

何故だか、ブーンはツンに謝らなければいけないと思った。
理由は見当が付かない。何か彼女に対して悪い事をした気がする。

ツンは、目を細めて、声を漏らさず、にこにこと笑った。

その笑顔にどうした訳か照れたブーンは、逃げるように身体を少し後ろに向けた。
トソンが両手を広げ、この世に別れを告げたステージがある。

もっと気の利いた告白の仕方があったな、とブーンは項垂れた。

そして、ブーンはツンと共に、星空が見える屋上をあとにした。



173: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:27:38.65 ID:QXk/wGbCO
( ^ω^)「このまま永遠の夏休みを過ごすのも良いかも」

夏休みに入り、ブーンは毎日グダグダと家で過ごしている。
友達? 単位? 何それ食えんの? という精神論を持つブーンだ。
将来、ニートも良いかも知れないと今日もネットをして遊んでいる。

川 ゚ -゚)「ブーン、ふと思い出したんだが」

ブーンの隣に立ち、席を代われと視線で訴えるクーが口を開いた。
無事、駄スレを立てた事を確認すると、ブーンはクーに顔を向けた。

( ^ω^)「なんだお? 僕は今からフルボッコにされたいんだお」

川 ゚ -゚)「以前、アイスを買ってくれると約束したよな」

( ^ω^)「げ!」

そう言えば、トソンの正体を知ろうとした時、そんな約束を交わした気がする。
ブーンは顔をディスプレイに戻して知らない振りをした。

川  - )「貴様……ヤれ」

( ^ω^)「え?」

突然、ディスプレイから数本の腕が伸び、ブーンの身体中をくすぐった。
堪えきれなくなったブーンは鼻水を垂らしながら謝った。



176: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:29:59.19 ID:QXk/wGbCO
忌々しいクーの高笑いを耳に残したまま、ブーンはコンビニに入る。
ひんやりとしたクーラーの冷気の中、約束のアイスが並ぶ冷凍庫の前に立つ。

( ^ω^)(高過ぎワロタ)

食費はツンがアレしてコレしている為、仕送りは有り余っているが、
これは安易に使うべき物では無い、とブーンは大半を貯めている。
自由に使える少ないお金ではこの女性が好むアイスは高過ぎる。

ため息を吐き、戸を開いて紅色に輝くアイスを手に取った。

「すみません、コレも買って頂けませんか?」

クーラーの冷気とは根本的に違う冷気が肌に触れたと同時、声が聞こえた。
思わずアイスを落としそうになったブーンが、恐る恐る顔を横に動かせる。
隣には冷えた缶コーヒーを指差す大人しそうな少女が立っていた。

ブーンは缶コーヒーを選ぶ振りをして、小声で少女に話し掛ける。

( ^ω^)「あの世はどうしたんだお?」



179: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:31:31.06 ID:QXk/wGbCO
ブーンの問いに少女は照れ臭そうに頭を掻きながら答える。

「それが、あの世って結構入り組んでるんですよ」

そう言えば、少女は見知らぬ街を歩くのは苦手そうにしていた。
やっとの想いで辿り着いたあの世が、迷路のようで困ったと言う。

( ^ω^)「コッチと余り変わらんお」

「そうですね。……そこで頼みがあるんです」

まさか、もう一度恥ずかしい言葉を口走らせるつもりか。
ブーンは小さく首を横に振って拒否の姿勢を示した。

「一緒について来て下さい。ブーンさんが死ぬまで待ってます」

ブーンは缶コーヒーを手に取った。
すると、少女は控え目に笑みを溢してすぐ側に憑いた。

( ^ω^)「また会えたら聞きたい事があったんだお」



186: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:34:52.13 ID:QXk/wGbCO
「何ですか?」

ブーンは今度はパンを探す振りをして口に手を添えながら問う。

( ^ω^)「その首のロープ。どうやって無限の地獄から抜け出せたんだお?」

「これですか? …残念ですが、企業秘密なんですよ」

少女は首に掛けられたロープを撫でながら口を尖らせる。
しかし、直ぐに笑顔を取り戻し、ブーンの耳元で囁いた。

「でも、ブーンさんにだけ特別に教えちゃいます」

( ^ω^)「wktk」

(゚ー゚*トソン「ハサミでロープを切ったんですよ」

(;^ω^)「馬鹿な!!」

やさしい、地獄の抜け出し方。
大声で叫んでしまい、ブーンは店員や客から視線を向けられた。


来週辺り、綺麗な星空を見に、仲魔を連れて山にでも行こうか。


つづく。



188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 18:36:05.90 ID:QXk/wGbCO




今回のあとがき。

最後のトソンの顔文字を直して下さい。




直しました。

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