( ^ω^)ブーンが二者択一するようです
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:44:35.27 ID:lDyri4Ur0
<第二択>
今までの人生でもワーストワンに選ばれるであろう朝だ。
もう10月も半ばだというのに寝巻きは汗でじっとりしている。不愉快極まりない。
フラフラと階段を降り、台所で水をガブガブ飲む。
何故こんなにも気分が悪いのか少し考えて、思い出す。
夢だ。夢を見たんだ。
( ω )「人を…殺したお」
思わず出た自分の声にビックリして、辺りを見回す。誰も居ない。
ホッと胸を撫で下ろしてから気付く。
( ω )「別に本当にやったわけじゃないんだから堂々としてればいいお」
今度は意図的に声を出したが、妙に情けない。
( ω )「別に本当にやったわけじゃないんだから堂々としてればいいお」
繰り返してみたけれど、やけに嘘っぽく聞こえた。
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:45:05.26 ID:lDyri4Ur0
軽くシャワーを浴びてから制服に着替える。まあ夢見は悪かったけれども、そのお陰で早起き出来たし、
今日は全力で走る必要もなさそうだ。ポジティブに考えよう。
でも、母親が作っておいてくれた質素な朝食をおいしいと思うことが出来ない。
気分を紛らわそうとテレビをつける。
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:45:27.19 ID:lDyri4Ur0
| ^o^ | 「おはようございます」
| ^o^ | 「ずーむいん!しょうゆ です」
| ^o^ | 「では にゅうす にまいります」
| ^o^ | 「せんじつおこった じょしこうせいれんぞくさつがいじけん
のはんにんが たいーほ されますた」
| ^o^ | 「よかったですね」
| ^o^ | 「はい これがはんにんのしゃしん です」
| ^o^ | 「いいえ それはしょうゆです」
| ^o^ | 「おやおや …よくみたらコーラじゃないですか だましましたね」
| ^o^ | 「うふふ」
| ^o^ | 「しゃしんはこれでした なまえは…」
…なんか余計気分が落ち込んだ。
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:47:17.04 ID:lDyri4Ur0
味のしない朝食をなんとか食べきってから、返事のないいってきますを言って、家を出た。
それでもお腹の中に落とされた何か凄く重い物についてポジティブに考えることは出来ない。
ポジティブキャラとして由々しき事態だ。必死でポジティブな方向に考える。
( ^ω^)「漬物石として利用…」
(´<_` )「何言ってんの」
(;^ω^)「おおッ?!」
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:48:32.16 ID:lDyri4Ur0
独り言を誰かに聞かれていたなんて赤面者だ。
(´<_` )「俺は弟者です」
( ^ω^)「?知ってるお、おはよう弟者」
(´<_` )「おはようブーン。今日は早いんだな」
( ´ω`)「お…」
(´<_` )「…なんだ朝から辛気臭い顔して、らしくもない」
弟者とは二年のときに同じクラスになっただけという間柄で、特に仲が良いわけではない。
しかし彼の飄々としたところがどこかドクオに似ているからか、僕は彼に親しみを持っていた。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:49:59.74 ID:lDyri4Ur0
( ´ω`)「夢見がテラ悪かったんだお」
(´<_` )「夢?」
( ´ω`)「人を、しかも小さい子を殺す夢だったんだお。やけにリアルで、怖くて」
(´<_` )「で、まだ引きずってると。女々しいやつだな」
(#´ω`)「あんな夢見れば誰でもこうなるお」
(´<_` )「はは、いやごめん、別に馬鹿にしたわけじゃあないんだ。そうか、今日は怖い夢を見たから早起きなんだな」
( ´ω`)「…そのとおりだお」
なんか改めて言われると本当に女々しい。ますます落ち込んでしまう。
(´<_` )「ブーンらしいな」
(#´ω`)「どういう意味だお」
(´<_` )「いい意味だよ」
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:50:59.38 ID:lDyri4Ur0
さらっと笑ってみせる弟者は悔しいことにイケメンである。笑顔が嫌味でないところがさらに妬ましい。
しかも性格もいいし運動もそこそこ、天はイケメンにのみ二物も三物も与える。
(´<_`;)「…機嫌直せよ。そうだなあ。じゃあ、身内からの受け売りの小話でもひとつ」
( ^ω^)「お?」
(´<_` )「人は、ひとつだけあれば生きていけるそうだ」
( ^ω^)「なんの話だお?」
(´<_` )「まあ聞け。なんだっけかな、人は本当は自分とひとつあればいいんだそうだ。
いや親が居ないと生まれないとか農家の人が居ないと飯食えないとかそういう話じゃなく、精神的な意味で」
朝から難しい話。でも幸いにもこういう中二病的な話はドクオから度々聞かされていたので、
学習済みの僕は早々とスーパー右から左に受け流すモードに入った。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:52:26.60 ID:lDyri4Ur0
(´<_` )「それを―多くは人なんだが、それをなんていうのか誰も知らない。多くの人は、他の名前で代用している。
生き甲斐だとか天職だとか、恋人だとか親友だとか。
でも本当はそれをそんな風に代用してしまうのは凄く失礼なんだと。安っぽいから」
スーパー右ryに入った僕だったが、その言葉はなんだか凄くわかる気がした。
ドクオに比べ、弟者の話は難しくないからかもしれない。
ドクオときたらオタクの典型、やたら難しい言い回しを使う。
(´<_` )「そのひとつがあれば、恋人も親友も親も居なくたって生きていけるんだ。
そのひとつがないから、みんな空っぽの友達や愛のない恋人で埋めているんだと」
( ^ω^)「でも友達が居ないのはさみしいお」
(´<_` )「これを言った身内は友達がほとんど居なかったからなあ、すっごく極端なんだろう。
俺だってそいつのいう空っぽの友達は必要だと思うしな。
でも寂しいとかそういう話じゃなく、生きていけるって話だと思うぞ。
たとえばブーン、俺が死んでもさみしいかもしれないが生きていけないってことはないだろ」
(;^ω^)「…」
(´<_` )「いいさ、悪いが俺だってブーンが居なくたって生きていける」
( ^ω^)「失礼だおww」
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:53:32.99 ID:lDyri4Ur0
僕たちは笑った。
多分僕にとっても弟者にとっても、お互いが彼の言う(正しくは彼の身内の言う)からっぽの友達で、
でもそれは別に薄情でもなんでもない。当たり前のこと。
一緒に居て楽しいけれど、楽しいだけで。
困っていたら助けてあげたいけれど、それは自己満足で、どこかに良く見られたいっていう計算があって。
嫌われやしないかってビクビクしていて。
誰とでも親友になれたらいいけれど、そもそもそんなのは親友って言わないし。
でも楽に生きていくためにはからっぽでも友達は居た方がよくて。
よくよく考えてみたらこの話は微かな矛盾を孕んでいる気もしたけれど、
その方が真実味がある気がするのは僕が人間だからだろうか。
- 60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:54:19.87 ID:lDyri4Ur0
( ^ω^)「でも弟者、その話と僕の夢の話どう関係があるんだお」
(´<_` )「つまり」
( ^ω^)「つまり?」
(´<_` )「ドクオに話してみろってことだ」
(;^ω^)「全然わからんお」
(´<_` )「ははは」
中二病の入った話をしたあとでさえ、弟者は爽やかだった。全僕が嫉妬した。
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:55:26.00 ID:lDyri4Ur0
( ^ω^)「ドクオにこんな話をしたら、馬鹿にされるお」
(´<_` )「どうかな。試しにドクオの前で本気で落ち込んでみたらどうだ」
(;^ω^)「どんなアドバイスだお」
(´<_` )「たいせつなことだ」
( ^ω^)「お?」
(´<_` )「わかっていないならそれは凄く勿体の無いことだから」
( ^ω^)「?」
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:56:28.51 ID:lDyri4Ur0
(´<_` )「…人間は、ひとつだけでいいんだ」
すぐ隣で歩いている僕にさえ聞こえるか聞こえないかというくらいの声で、弟者はつぶやいた。
それは音としてはとても小さいものだったのだけど、
なんだかやけに切なく、僕は胸が締め付けられるようだった。
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:57:23.15 ID:lDyri4Ur0
教室を空ける。一瞬、一番乗りかと思ったけれど、先客がいた。
( ^ω^)「ドクオ」
(;'A`)「うおっ、珍しいな」
弟者よりも数倍驚いている。朝練のために毎朝僕を(叩き)起こしてくれていたドクオは、
僕の朝の弱さを誰よりもわかっているからだろう。
余程信じられなかったのか、僕をまじまじと見ている。
下手くそに笑ってみせるといやなものを見てしまったという顔をして、視線を窓に向けた。
一体どういうイカサマをしているのか、何度席替えをしてもドクオは窓際の席になる。
授業中だとか、僕が他の友達としゃべっているときだとか、ドクオはいつも自分の席から空ばかり見ている。
- 68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:58:42.49 ID:lDyri4Ur0
('A`)「…なんかしゃべれよ」
( ^ω^)「お」
('A`)「顔色わりぃぞ。お前は俺か」
( ^ω^)「…」
ドクオにとっては渾身のギャグを軽くスルーして、実は、と話を切り出す。
弟者に言ったこととほぼ同じようなことを言った。
('A`)「馬鹿じゃねえの」
予想通り。
ドクオはかっこつけたように笑って(これが弟者と違って全然かっこよくない)視線を空に戻した。
いつものことだから、いつもなら別になんとも思わないのだけど、今日の僕は”いつも”ではなくて。
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 21:59:24.32 ID:lDyri4Ur0
弟者が優しかったのもあるのかもしれない。比べるもんじゃないけれど、なんだか悲しかったのだ。
弟者の”たったひとつ”の話を聞いたとき、ドクオを思い浮かべたことが恥ずかしかった。僕だけだ。
親友って言葉すら安っぽいだなんて、そんなことを思うのは。
( ^ω^)「…」
('A`)「ブーン?」
そりゃそうだ。僕とは違う。僕は周りに流されてばっかりで、ツンに告白する勇気もなくて、
そのくせツンが他の男としゃべっているときは一丁前に妬いたり、挙句は夢なんかに本気で怯えるようなヤツだ。
ドクオは一人で生きていける。強いのだ。その辺の奴らとは違うんだ。僕はずっと、そこが誇らしく、憎かった。
夢が落としていった何か凄く重いものが、思考すら重く重くしていく。
('A`)「おい、」
- 71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:01:25.53 ID:lDyri4Ur0
ドクオが何か言いかけたとき、教室のドアが開き、人がぞろぞろと入ってくる。
僕は逃げるようにその人らに話しかけに行った。
( ^ω^)「おはようお」
_
( ゚∀゚)「え、今何時だよ?!俺らテラ遅刻wwww」
( ^ω^)「ちょww八時十分だおwww余裕www」
_
( ゚∀゚)「だってお前が居るとかwww」
「ヒドスwwww」
(=゚ω゚)「ahad!(明日は雨だよう!)」
”からっぽの友達”には、完全に”社交的な自分”を作って話すから、
よっぽど出ない限りは笑って話せる。楽だよ。馬鹿なこといってりゃいいんだから。
それを言う人間が、僕である必要性はわからないけれど。
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:02:45.53 ID:lDyri4Ur0
そんなことが朝にあったから、その日はずっと気まずい雰囲気(なぜか変換出来た)。
ツンが尋ねてきても適当にはぐらかして。まあツンはだまされてはくれなかったようで、不満気だったが。
そのままずるずると放課後に。僕はそそくさと帰ってしまおうとしたが、ツンが立ちはだかる。
( ^ω^)「なんだお」
ξ゚听)ξ「付き合って」
( ゚ω゚)「?!!!」
ξ*゚听)ξ「か、勘違いしないでよ!ついてきてって意味なんだから!」
( ^ω^)「なんだ、連れションかお」
したたかに殴られた。
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:04:34.30 ID:lDyri4Ur0
(メ;^ω^)「な、なんだお、こんな人気のない自転車置き場に連れ出して…ツンまさか…っぼ、僕心の準備g」
ξ゚听)ξ「私を自転車に乗せなさい」
( ^ω^)「へ?ツン乗れないのかお?」
ξ;゚听)ξ「乗れるわよ!二人乗りしたいの!」
(;^ω^)「お…ど、どうぞ」
男友達にしか乗られることのなかった僕の自転車の荷台に、女の子が。
それも、一番乗って欲しかった女の子が。
(;^ω^)「の、乗ったかお?」
ξ゚听)ξ「乗ったわよ」
ちょこんと横座りをするツンは凄くかわいくて、ヤバイ。
お前の生足で俺がヤバイ。
- 74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:05:08.56 ID:lDyri4Ur0
( ^ω^)「お客様、どこに行かれるんですかお?」
ξ゚听)ξ「そうねえ、とりあえずモーソンまで」
( ^ω^)「かしこまりましたお」
自転車ってこうやって漕ぐので合ってたっけ?
河原って本当にこっちだっけ?
彼女居ない歴=年齢、フラグを立てたこともない僕である。
正直マジパネェテンパってんでやんす。
- 79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:07:05.89 ID:lDyri4Ur0
ξ゚听)ξ「――ねえ」
(;^ω^)「なっ、なんだお?」
ξ゚听)ξ「何かあったの?」
後ろに乗っているわけだから、ツンの表情は見えない。
( ^ω^)「なにも?」
ξ゚听)ξ「…ドクオが心配してたわよ」
(;^ω^)「ドクオが?心配?!」
ξ;゚听)ξ「あんたその反応は失礼でしょう…まあわかるけど」
( ^ω^)「え?僕をかお?」
ξ゚听)ξ「あんた以外の誰をあのドクオが心配するのよ。私にね、今日一緒に帰ってやってくれって」
( ^ω^)「お…」
- 81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:08:38.97 ID:lDyri4Ur0
ξ゚听)ξ「…」
( ^ω^)「…」
ξ゚听)ξ「ねえ」
( ^ω^)「お」
ξ゚ー゚)ξ「ドクオの家にお願いできます?運転手さん」
(*^ω^)「…お安い御用ですお」
ξ゚听)ξ「あ、でもその前にモーソン」
( ^ω^)「ムード台無しだお」
- 83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:11:41.10 ID:lDyri4Ur0
無事にドクオの家につき、チャイムを鳴らす。
ドクオの家――と言っては失礼か。ドクオの部屋は常に壊滅しているため、
僕がここを訪れることは滅多にないので、少しドキドキした。
ξ゚听)ξ「ここがドクオのねえ。ブーンの家から遠いの?」
( ^ω^)「結構近いお。歩いても15分くらいだお」
ξ゚听)ξ「あら、でも高校で初めて会ったのよね?校区違ったの?」
( ^ω^)「ドクオは中学校まで私立に通っていたらしいお」
ξ゚听)ξ「そうなの。そういえば頭いいものね、あんなに寝てるのに」
( ^ω^)「僕も頭良かったら寝れるのに、不公平だお」
ξ゚听)ξ「もう寝てるじゃない」
( ^ω^)「心のどこかでテストヤバいお、っていう不安があるんだお。
頭が良ければ心よく寝れるお」
ξ゚听)ξ「馬鹿ね」
ξ;゚听)ξ「…出ないわね」
(;^ω^)「出ないおね」
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:13:40.49 ID:lDyri4Ur0
ξ゚听)ξ「まさか居留守を決め込んでるんじゃないでしょうね」
( ^ω^)「あり得るお。つーか9割方そうだと思うお。連打してみるお」
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポ(ry
ξ#゚听)ξ「うッるさいわね!」
(;^ω^)「いでっ」
でも僕の作戦(?)は功を奏したようで。
『はい…いません…』
(;^ω^)「ちょwww僕僕wwwww」
『詐欺おt…ってブーン?』
ξ゚听)ξ「私も居るわ!」
- 87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:16:42.10 ID:lDyri4Ur0
流石にツンに自分の部屋を見せる気にはなれなかったらしく、
僕らは居間に案内された。
ξ゚听)ξ「きれいね。モデルルームみたい」
( ^ω^)「っていうかいつ来ても生活感ないお」
('A`)「俺は自分の部屋でしか生活してねえし、此処だってたまに手伝いが来て片付けるだけだからな」
ξ゚听)ξ「え?それって…」
(*^ω^)「お手伝いさん?メイドかお?」
('A`)「そんないいもんじゃねえよ。此処日本だぜ?家政婦っていやあいいか?」
そんなことを言っている割に、手なれた様子で紅茶を注いでみせるドクオは顔以外はイケメンだった。
それをイケメンと言えるのかはわからないけれど。
ξ゚听)ξ「…あらいい香り」
(;^ω^)「なんか庶民の僕には飲みなれないお」
('A`)「ペプシ飲むか?」
- 88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:18:16.02 ID:lDyri4Ur0
それから僕らはくだらないことを延々と話し続けた。
僕とドクオが話して、ツンが笑って。
僕とツンが話して、ドクオが呆れたようにツッコミを入れて。
ツンとドクオが話して、僕がフルボッコにされて。
何の実りも無い話題ばかりなんでこうも出てくるのだろう。
それでも僕らはずっと笑っていた。
('A`)「…もう遅いな」
ξ゚听)ξ「あらもうこんな時間?」
( ^ω^)「時の流れは残酷お…」
ξ゚听)ξ「中二病乙」
- 89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:18:27.50 ID:lDyri4Ur0
('A`)「ブーン、送っていけよ」
( ^ω^)「もちろんだお」
ξ゚听)ξ「あ、待って待って、写真撮りましょ」
('A`)「写真?」
ξ*゚听)ξ「さっきモーソンでカメラを買ったの。この三人で撮った写真が欲しいかな、なんて」
('A`)「俺写真はきr( ^ω^)「もちろんだお!!!11!!!」
('A`)「…」
- 92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:19:00.28 ID:lDyri4Ur0
ドクオ、ドクオ笑って、ほらカメラみて
魂抜かれる…
いつの時代の人だおww
ブーン顔近すぎ。
すみませんお…
ざまあwwww
もーちゃんとして。ほらいくよー?
はい、チーズ。
- 93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:20:23.72 ID:lDyri4Ur0
ツンを送っていったけれど、特にフラグが立つこともなかった。
( ^ω^)「まあ、そんなもんだお」
それでも僕は満たされた気持ちだった。幸せな気持ちでお風呂に入ったし、
ごはんを食べた。そして僕は幸せな気持ちのままで、ベッドに入った。
携帯が鳴る。ドクオからだ。めずらしいな、と思いメールを見るとまさかの空メール。
( ^ω^)「あ、よく見たら添付ファイルがあるお」
音楽ようだ。
( ^ω^)「seesound.mp3」
( ^ω^)「dolphinvoice.mp3」
( ^ω^)「…?」
『なんだおこれ』
六文字だけ打って送ったメールはすぐに帰ってきた。
返信は、僕よりさらに短い四文字。
『あんみん』
…ああ。なるほど。僕は五文字で返事を送ると、さらに幸せな気持ちで眠りについた。
- 94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:21:48.11 ID:lDyri4Ur0
の、に。
( ^ω^)「またお前かお」
( <●><●>) 「まだ二回目ですが」
( ^ω^)「一回見たらもう十分だお」
( <●><●>) 「そうはいきません」
( ^ω^)「人生とはかくも辛いものだお」
( <●><●>) 「随分と口が達者ですね 今日も選択をせねばならないのに」
( ^ω^)「もうおまいらの言うことなんか聞かないお。夢っていっても後味悪すぎんだおバーカ」
( <●><●>) 「…選択を」
- 97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:23:14.17 ID:lDyri4Ur0
手に重みを感じる。あのナイフだ。
(#^ω^)「こんなもの!」
投げ捨てると、それは黒い粉となって消えた。
( <●><●>) 「…」
(#^ω^)「早くこの夢どうにかするお。夢ジャックなんて流行らねえお。世も末だお」
強気で言ってみても、彼は、ワカッテマスはまるで動じない。
ゆらりと僕の後ろを指刺す。見てはいけないとわかっていても、
そのあまりにも黒い眼に見られてしまってはもう振り返るしか無い。
二つに分かれた、道。
( <●><●>) 「さあ お行きなさい」
( ^ω^)「いやだお、と言ったら」
( <●><●>) 「死にたくばそうなさい 私は構いません」
- 98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:24:39.13 ID:lDyri4Ur0
夢なんだから別に死んだっていい筈なんだけども、
昨日と同じく、この夢にはリアリティがあり過ぎる。
五感も思考もはっきりしている。だから、どうにも逆らう勇気が出ない。
進んでいくと、男がいた。
(・∀ ・)「なっんだよここ!!」
どこかで見た顔だ。
( <●><●>) 「犯罪者です」
( ^ω^)「ああ、朝みたお。女子高生殺害…」
(・∀ ・;)「な、なんだよ!俺は悪くないんだぞ!」
( ^ω^)「…」
( <●><●>) 「どうです 前よりはずいぶんと楽な選択じゃあありませんか
ちなみに もうもう片方に居るのは 何の罪もない一般人です」
( ^ω^)「…そりゃあ」
そりゃあ、何の罪もない、しかも幼い少女を傷つけるよりはずっと気が楽だ。
- 103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:27:40.66 ID:lDyri4Ur0
( <●><●>)「その男 きもちわるい と言われたと思いこみ 女子高生を何人も殺したのですよ」
( <●><●>)「人を殺した人間は 殺されて当たり前だと思いませんか」
その黒さに底は無い。たとえば、思い悩んで眠れもしない夜のように。
( <●><●>)「ねえ ブーン? そうでしょう」
(;^ω^)「そ、そりゃそうだお…罪もない人を殺すなんて許されることじゃあないお」
( <●><●>)「…でしょう この男 現実ではもう海外に逃亡しているんです」
(;^ω^)「え…」
( <●><●>)「貴方がここで選ばなければ この男 裁かれることなく 時効を迎える予定なのですよ」
(;^ω^)「…」
( <●><●>)「ねえ ブーン」
捨てたはずのナイフが、僕の手に再びあった。
- 105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:28:12.00 ID:lDyri4Ur0
( <●><●>)「矢張り昨日は 私が選択するものを強制したような形になってしまったからいけなかったんです」
( ω )「…」
( <●><●>)「選んでください 殺人者か 何の罪もない者か」
ワカッテマスの声が頭の中で何度も何度も響く。それに呼応するように、身体が震える。
手が、ナイフを離してくれない。身体が言うことを聞かない。
( <●><●>)「―選びなさい」
血が、身体中の血が、湧き上がったように熱い。息を吐き出すと、喉が焼けるような。
とても立っていられないと思っているのに、何故か足だけはしっかりと立っている。
( <●><●>)「手助けは今日までですよ ブーン 私は貴方を嫌いでは無いのです」
( <●><●>)「母親を一人にしたくはないでしょう 考えてみなさい 冷たくなった貴方を見つけた母親の叫びを」
( <●><●>)「え ら べ ―」
- 106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:28:45.71 ID:lDyri4Ur0
( ω )「これは… ただの、夢だお?」
( <●><●>)「…ええ」
( ω )「ああ―そうにきまってたおね はは まったく ぼくは ゆめみ ガ わる い お 」
( <●><●>)「そう あなたは本当に夢見が悪い」
その目は、夜のように黒かった。
(・∀ ・;)「な、なんだよ!来るな!来るな!」
その刃は、希望のように煌めいていた。
- 115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:40:15.56 ID:lDyri4Ur0
その血は、優しさのように温かかった。
- 116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/23(月) 22:40:54.34 ID:lDyri4Ur0
(´・ω・`)「全く君は本当に期待以上の働きを見せてくれるね」
( <●><●>)「…恐縮です」
(´・ω・`)「いや、本当に傑作だよ、あれ。あんなに優しい嘘を初めて聞いた。僕にはとてもつけないね」
あんな残酷な嘘。
<第二択・了>
戻る/第三択