( ^ω^)ブーンが二者択一するようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:23:35.65 ID:6GPOBVkd0











一人が「神よ、慈悲を」と叫ぶ、もう一人がアーメンと言う、この殺し役の手を見たかのように。
その恐怖の声を聞きながら、「神よ、お慈悲を」のあと、おれは「アーメン」と言えなかった。

――俺こそが神の慈悲が必要なのに、「アーメン」ということばが喉に引っかかったのだ。

                      ( William Ahakespeare 「Macbeth」)











5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:23:56.76 ID:6GPOBVkd0

<第三択>

目覚めとは、こんなものだっただろうか。
悪夢を見たらそりゃあ気分は悪いだろうけれど、起きたときはホッとするものじゃなかっただろうか。
それでも右手は綺麗なままで、それがあれは夢であったと証明している。

喉が渇いていた。
夏に走ったときのように汗をかいていた。ベッドから降りようとして、転がり落ちた。
それでもあまりにも喉が渇いていたので、這うように部屋から出る。

震える足で階段を降りようとして、結局踏み外して派手な音をたてて落ちた。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:24:16.07 ID:6GPOBVkd0

J(;'ー`)し「ブーン?!」

(  ω )「……カーチャン?」

J(;'ー`)し「そうよ、カーチャンよ!わかる?」

(  ω )「……」

J(;'ー`)し「ブーン…?」

( ;ω;)ブワッ

J(;'ー`)し「ブーン!!大丈夫?!」



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:24:36.17 ID:6GPOBVkd0

高校生にもなってとか男の癖にとかいう思いが頭の隅に過ったけれど、
やっぱり母親って偉大なものだ。絶対の安心感。

( ;ω;)「カーチャン!!カーチャン!!」

J( ;ー;)しブワッ

J( ;ー;)し「ブーン!!ブーン!!」

( ;ω;)「カーチャン!!カー(ry」

J( ;ー;)し「なんだいブーン!!ブー(ry」

「夢が!!夢が怖かったんだおおおお!!!!」

J( ;ー;)し

J( 'ー;)し

J( 'ー`)し

J( ^Д^)し「プギャーwwww」

( ^ω^)「ちょwwwww」

J( ^Д^)しm9「高校生にもなって夢で母親に泣き付いてんじゃネーヨwwww」

( ^ω^)「ヒドスwwwww」



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:24:59.14 ID:6GPOBVkd0

J( 'ー`)し「でも本当に凄い汗ね。お風呂入ってらっしゃい」

( ^ω^)「そうさせて頂くお」

笑い飛ばして貰ったせいか、自分も笑ったせいか、
はたまた夢うつつからようやく抜け出せたからか、身体の震えも涙も止まっていた。

手に力が入らないのを気のせいにして、シャワーを浴びた。
排水口に流れていく水が、赤く染まらないことに安堵しながら。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:25:17.80 ID:6GPOBVkd0

( ^ω^)「サッパリだお」

J( 'ー`)し「カーチャン寿命が縮まったよ、この世の終わりみたいな顔してたから」

( ^ω^)「ごめんお」

J( 'ー`)し「どんな夢だったの?」

( ^ω^)「……覚えてないお。怖かったことしか」

J( 'ー`)し「そう?でもよっぽど恐ろしい夢だったんだろうねえ、あの様子じゃあ…」

( ^ω^)「忘れて欲しいお」

J( 'ー`)し「無理ぽ。今日もカーチャン遅番だからね」

( ^ω^)「把握」

覚えていないなんて嘘だ。今日の夢も昨日の夢も、不自然なほどにはっきりと覚えている。
あの、ワカッテマスの言ったことや、そのときの表情まで。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:25:56.95 ID:6GPOBVkd0

( <●><●>)『母親を一人にしたくはないでしょう 考えてみなさい 冷たくなった貴方を見つけた母親の叫びを』

カーチャンは、随分前から女手ひとつで僕を育ててくれている。
父親はろくでもない奴の典型で、酒癖が酷く、 カーチャンを殴ることも少なくなかった。
それでもずっと耐えていたのだが、浮気相手との間に子供が出来たと知ったとき、キレて光の速さで別れた。
正直、あの速さはネ申というしかない。母親とは世界で一番強い生き物である。

J( 'ー`)し「ほらブーン、時間に余裕があるからってだらだらしないの」

( ^ω^)「目玉焼きトーストktkr」

―でもやっぱり、辛かったと思う。気丈に振る舞い、たった一人ですべてを済ませたカーチャン。
決して僕の前では泣かなかったけれど、夜に一人で泣いていたのを知っている。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:26:11.02 ID:6GPOBVkd0

J( 'ー`)し「あのちーへいせーんー」

何度も何度も、顔だって容赦なく殴られていた。
ビール瓶で殴り血が出て、僕が近所の人に泣きついて警察を呼んでもらったことだってある。

J( 'ー`)し「どこかーにきみーをー」

それでも、酒を飲んでいないときは人畜無害。仕事だってちゃんとする。
お金も十分すぎるほど入れていたらしい。父親を愛していたし、僕のこともあって、
カーチャンは踏ん切りがつかなかったのだ。本当に、大変な人生を送っている。

J( 'ー`)し「おっちゃん、肉団子二つ入れて!海賊王に!俺はなるから!」

…とてもそうは見えなくても。

J( 'ー`)し「フハハハハハ!!!人がゴミのようだ!!!」

(;^ω^)(やっぱしてないかもしれんね)



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:26:47.45 ID:6GPOBVkd0

(*^ω^)「で、ツンが…」

J( 'ー`)し「ツンちゃんにまだ告白しないのかい」

(;^ω^)「ツ、ツンが好きだなんて僕言ってないお」

J( 'ー`)し「話すときの目を見ていればわかるんだよ。若いっていいねえ」

( ^ω^)「…」

J( 'ー`)し「あら、もう時間じゃないの」

( ^ω^)「お、本当だお。いってくるお!!」

J( 'ー`)し「いってらっしゃい」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:27:01.61 ID:6GPOBVkd0

| ^o^ | 「おはようございます」

|  ^o^ | 「ずーむいん!しょうゆ です」

| ^o^ | 「あさの にゅうす です」

|  ^o^ | 「せんじつたいーほされた じょしこうせいれんぞくさつがいじけん のはんにんがだつごくしていたことがはっかくしますた」

| ^o^ | 「さーせん」

|  ^o^ | 「けいさつは きんじょにちゅういをよびかけるとともに そうさを…



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:27:29.28 ID:6GPOBVkd0

( ^ω^)「あ、弟者」

(´<_` )「今日も早いな。心を入れ替えたのか?」

( ^ω^)「そういうわけじゃ…また夢を見ただけだお」

(´<_` )「また悪夢か。でも昨日より元気そうじゃないか」

まさかカーチャンに泣きついたからとも言えない。

( ^ω^)「お…あ、昨日ありがとお」

(´<_` )「昨日?」

( ^ω^)「ひとつの話だお。僕にとってのたったひとつがわかったお」

(´<_` )「そりゃあ良かった」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:28:19.31 ID:6GPOBVkd0

( ^ω^)「弟者にも、あるのかお?」

(´<_` )「ん?」

( ^ω^)「その、たったひとつが」

(´<_` )「ん…まあ、そりゃな。俺って性格いいだろう」

(;^ω^)「自分で言うなお」

(´<_` )「はは。そのひとつがあるから、笑ってられるんだよ」

僕は結構人の顔色を見る方だ。場の空気を乱したくないと、みっともなくフォローしたりする奴である。
弟者もタイプは一緒だけれど、僕よりずっとうまく立ち回ることが出来るから、
フォローしようとして出来ない僕を凄く自然にフォローしてくれたことも多かった。

( ^ω^)「…弟者も僕と同じかお?」

(´<_` )「ん?」

( ^ω^)「みんなそれなりに大事だけど、それなりにどうでもいいっていう人間かお?」

返事は無かった。弟者はただ喉の奥でくつくつと笑っていた。
僕らは同類だったから、それだけで十分だった。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:32:19.41 ID:6GPOBVkd0

( ・∀・)「今日で中間テスト一週間前だなー範囲配るぞー」

( ^ω^)「これが人生で最後の中間テストだけど、結局存在意義がわからなかったお」

('A`)「そりゃお前、定期イベントだよ。幼馴染を作っておかないから一緒に勉強会フラグが立たないだけで」

( ^ω^)「ドクオと勉強フラグしかたたないなんて人生オワてるお」

('A`)「そんなに赤点フラグ立たせたいか?ああ?」

(;^ω^)「是非一緒に勉強させてくださいですお」

ξ゚听)ξ「あんたら気楽でいいわね…」



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:32:34.85 ID:6GPOBVkd0

('A`)「あー今日も有意義に過ごしたわー」

( ^ω^)「一時間目:早弁のち昼寝 二時間目:昼寝 三時間目:昼寝 四時間目:早退のどこが有意義なんだお」

('A`)「変わらない日常こそが幸せであり有意義ってこった」

( ^ω^)「似合わない言葉だお」

('A`)「そうだな、お前が言いそうなことだ」

( ^ω^)「おっおっ」

('A`)「まあいいか。お前んちでゲームしようぜ、スマブラ(64版)」

(;^ω^)「勉強じゃなかったのかお…」

('A`)「ばッかお前、勉強は前日が勝負だぞ」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:32:54.03 ID:6GPOBVkd0

( ^ω^)「もう八時だお、勉強できなくなるお」

('A`)「腹減った」

( ^ω^)「…」

('A`)「今から飯食ったら九時過ぎるか?」

(;^ω^)「まあそれからでも少しくらいは…」

('A`)「俺九時からドラマ見るから」

(;^ω^)「…補習フラグ立ちまくりだお…」

(*'A`)「HAHAHA」

( ^ω^)「きめえ…」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:35:56.42 ID:6GPOBVkd0

明日も学校なんだけども、ドクオは泊まる気なのだろうか。
まあ僕はカーチャンの夜勤が多くて一人暮らしみたいなものだし、
ドクオも実質一人暮らしみたいなものだから、別にいいのだけど。

( ^ω^)「なんかあったか下に見てくるお」

('A`)「おう」

ゲームの電源を消したからテレビの画面は真っ暗だ。
ドクオがチャンネルを変える。

バラエティ。ドラマ。バラエティ。ドキュメンタリー。

あんまり早くチャンネルを変えるものだから目がチカチカしてきた。
しばらくルーレットを続けたあと、ドクオは見る番組を決めたようだ。
意外にもニュース。まとも。まあ今の時間萌えアニメはやっていないしな。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:36:46.59 ID:6GPOBVkd0

ミセ*゚ー゚)リ『ですねーwwwでは、次のニュースです』

(*^ω^)「ミセリちゃんかわいいお」

('A`)「そうかあ?俺はもっとこう…クーにゃんかわいいよクーにゃん」

( ^ω^)「ドクオはお姉さんタイプが好きなんだおね、わかりますお」

ミセ*゚ー゚)リ『例の女子高生連続殺害事件の斉藤またんき容疑者が韓国への輸入を行っている漁船「ニダー」で
       遺体となって発見された事件ですが、警察はこれを自殺とし…」

心臓が止まったかと思った。
けどその次の瞬間から、びっくりするくらい大きく脈を打ち始めた。

('A`)「ああ、こいつ意味わかんねえよな、脱獄してしかも日本からも脱出出来てたのになんで自殺なんか―」

ドクオの言葉が聞こえなくなった。僕の部屋が歪んでいく。違う、そう見えるだけだ。
そうだ、違う、だって自殺だって言ったじゃないか、僕はナイフで刺したんだぞ、僕は、刺したんだぞ、
僕は、

('A`)「ブーン?」

(  ω )「食べ物見てくるお」

('A`)「あ、ああ…」



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:37:08.66 ID:6GPOBVkd0

僕はナイフで刺したんだから僕が殺せるわけないしあれはただの夢だし、僕はナイフで刺した、ぐさりと
さした、あの嫌な感触、あの匂い、あの赤さ、あの生暖かさ、僕はナイフで刺した、あのナイフで刺した、
僕が確かに刺した、でもあれはただの夢だから、僕は夢見が凄く悪いから、僕はただの夢で人をさしたから、
僕は刺したから、さしたから、さしたから、

('A`)「なあブーン、」

ドクオの声がした、後ろを振り向いた、ドクオが遠くなる、落ちて行く、夢の中で人を刺した僕が落ちて行く、



夢の中で人を■した僕が落ちて行く、



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:37:24.67 ID:6GPOBVkd0

( <●><●>) 「…早いですね」

(  ω )「……ただの」

( <●><●>) 「今日は随分と早寝なのですね 現実の方はまだ20時19分12なのはわかってます」

(  ω )「ただの夢だって言ったお…」

( <●><●>) 「…ああ 階段から落ちたのですね ご友人が心配していますよ」

(  ω )「ただの、ただの夢…」

( <●><●>) 「まだ二人揃っていないのですが」

(#゚ω゚)「ただの夢だって!」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:37:39.48 ID:6GPOBVkd0

僕の言葉など聞きもせずに、ただ淡々と喋り続けるワカッテマスの胸倉をつかむ。
喧嘩など滅多にしない僕である、こんなことをするのは初めてだ。
ワカッテマスは抵抗もせず、ただ僕を見つめている。

( <●><●>) 「ただの夢ですよ」

(#゚ω゚)「なら、なんで!なんであいつは死んだんだお!」

( <●><●>) 「…」

(#゚ω゚)「答えろお!!」

ぐい、とさらに力を込めると、ワカッテマスはぐにゃりとして、
真っ黒になって、それから地面に溶けた。
あまりのことに僕が呆然としていると、背後から声がした。

( <●><●>) 「左側の道へ お行きなさい そちらの人間はちょうど眠っていたのですぐに会えますよ」

全然嬉しくない知らせをありがとう。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:41:19.43 ID:6GPOBVkd0

死ぬほど進みたくなかったけれど、進まないでいることは、この夢がただの夢ではないと認めてしまうことになる。
だから僕は進むのだ。こんなものはただの夢なのだ。

( ^ω^)「…弟者」

まさか知り合いが出てくるとは。
いやでも知らない人が出てくるより、知り合いが出てくる方がただの夢らしいじゃないか。
僕は必死にポジティブに考えたが、それが仇となる。

( ´_ゝ`)「いや、俺は兄者だけども」

(;^ω^)「兄者?」

( ´_ゝ`)「弟者の知り合いか?双子の兄だよ」

(;^ω^)「ふ、双子?」

( ´_ゝ`)「そう、双子」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:42:10.34 ID:6GPOBVkd0

ただの夢で知り合いの知らない情報が発覚するものだろうか。
でもまあ考えてみれば”弟”者って名前なんだから”兄”者が居るのは当然な気がするし。
それを僕の脳が無意識に考えてこういう夢を見せているのかもしれないし。

( ´_ゝ`)「変な夢だな、意識はっきりしてるし普通に会話してるし」

(;^ω^)「そ、そうだおね、変な夢だおね…」

( ´_ゝ`)「あんたなんていうの?」

(;^ω^)「お?」

( ´_ゝ`)「名前」

(;^ω^)「ぼ、僕は内藤ホライゾン…略してブーンだお…」

( ´_ゝ`)「どう略してんだよ」

ああ、笑った顔が弟者と全然違う。僕は素直に感動した。
顔の作りは本当に同じなのに、笑いかたひとつで受ける印象がこうも違うとは。
弟者のイケメン爽やかスマイルとは違って、凄く幼い笑顔。

しかしよくよく見てみると、兄者さんは弟者と顔こそ同じだけども、
一回り二回り小さい。というより、細い。ついでにドクオ並に白い。病的なくらい。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:42:26.97 ID:6GPOBVkd0

( ´_ゝ`)「まあ夢とはいえ家族以外と話すの久しぶりだし話そうぜ」

( ^ω^)「驚くほどポジティブだおね」

( ´_ゝ`)「そうか?でもそれ弟者にもよく言われるなあ」

家族以外と話すのが久しぶりという発言から、僕は彼を引きこもり認定した。
病的なまでの色白さも、弟者が双子だということが全く知られていないのもそうすれば納得がいく。

( ´_ゝ`)「まあどうでもいいや。弟者の高校の奴か?」

( ^ω^)「そうだお。二年のときに一緒のクラスで…」

( ´_ゝ`)「へー。弟者モテるだろう」

( ^ω^)「そりゃもう」

(*´_ゝ`)「まあ俺に似てかっこいいからな!」

…弟者の双子の兄だけあってイケメンで、僕とペラペラしゃべっている辺り対人恐怖症でもないし、
加えてこのポジティブさが合って引きこもりになるものだろうか。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:43:42.93 ID:6GPOBVkd0

( ´_ゝ`)「しかしいいなあ、学校。俺も行きたかったなあ」

( ^ω^)「…え?」

( ´_ゝ`)「試験の日にぶっ倒れたからなあ。せっかく勉強したのに」

( ^ω^)「倒れ…」

( ´_ゝ`)「いやまあ珍しいことじゃないんだけどな。
       俺生まれつき呪われた道具装備してるらしく心臓を主にいろんなとこ駄目なんだよNE!」

( ´ω`)「…」

( ´_ゝ`)「あ、そんな暗くならなくても」

( ´ω`)「ろくでもない引きこもりだと思ってましたお、すみませんお」

( ´_ゝ`)「せめてろくでもない抜いてから謝罪してくれよw」

兄者さんは、笑うのが幸せでたまらないというように笑う。
弟者は、笑うのをこらえるように笑う。そこが違うのだ。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:44:04.71 ID:6GPOBVkd0

( ´_ゝ`)「小学校は結構行けてたんだけど中学になると入院が多くなってなあ。
       だから高校受かったとしても卒業は出来なかっただろうなあ」

( ^ω^)「そうなんですかお…」

( ´_ゝ`)「…なんで敬語?普通にしゃべってくれていいんだぞ、俺を弟者だと思って」

(;^ω^)「う、わかったお…」

(*´_ゝ`)「にしても変なしゃべり方ww」

( ^ω^)「…」

この失礼さ、ドクオに近い。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:44:23.25 ID:6GPOBVkd0

( ´_ゝ`)「にしても夢なのに会ったこともない弟者の友人に会うってのも変な話だな」

( ^ω^)「…これは夢だお」

( ´_ゝ`)「そりゃそうだ、何言ってんだ」

畜生、ドクオが居る。イケメンな分更に腹が立つ。

( ^ω^)「夢だお」

僕は自分自身に言い聞かせるようにもう一度呟いた。
兄者が僕を探るように見つめてくるので、目をそらす。

( ´_ゝ`)「これが夢でなくちゃいけない理由があるのか?」

(  ω )「だって夢だお。ただの、ただの夢―」

( ´_ゝ`)「必死だな」

(  ω )「―ッ」

( ´_ゝ`)「話してみろよ。ただの夢なんだろ」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:46:32.62 ID:6GPOBVkd0

僕は話した。本当は誰かに全て話してしまいたかったから。
そして解決して欲しかった。誰かに助けてもらいたかった。
そうでなきゃ、笑い飛ばしてほしかった。

( ´_ゝ`)「…ふうん」

でもそのどれも兄者はしなかった。

( ´_ゝ`)「で、そのワカッテマスってのはどこに居るんだ?」

(  ω )「知らないお…」

( <●><●>) 「なんですか」

( ´_ゝ`)「うわっ、びっくりした。心臓弱いんだから驚かせるなよ」

平然と言う兄者は大物なのかもしれない。
いや、夢なんだからこれくらいで驚くのはおかしいんだ、きっと。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:46:46.74 ID:6GPOBVkd0

( <●><●>) 「用件を」

( ´_ゝ`)「最初の選択は幼女となんだったんだ?」

( <●><●>) 「同じようなものを」

( ´_ゝ`)「幼女と幼女か。二番目は犯罪者と一般人」

(  ω )「…どうしたんだお」

僕は兄者が信じられなかった。僕がこんなに切実に訴えているのに。
初対面とはいえ心配してくれたっていい筈だ。やっぱり彼は弟者とは違う人間なのだ。

( ´_ゝ`)「いやあ、やっぱり俺だったらもう片っぽは弟者なのかなと思って。そうなの?」

( <●><●>) 「…」

( ´_ゝ`)「沈黙は肯定とはよくいったもんだ」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:47:21.24 ID:6GPOBVkd0

鈍器で殴られたような感覚。変な言い回しになるが、目が覚めたようだった。
そうだ、僕はなんて無神経なのだろう。彼は選択される側、僕に■されるかもしれないのだ。
その相手に慰めてもらおうだなんて、僕は頭がおかしくなったのか。

( ´_ゝ`)「ちなみにブーンがどっちも選択しなかった場合、どうなるの」

( <●><●>) 「ナイフが血を求め力が暴走し この世界は崩壊します その際 この世界に存在する魂も消滅します」

( ´_ゝ`)「つまり、ブーンも俺と弟者も死ぬのか」

( <●><●>) 「ええ」

( ´_ゝ`)「ちなみに現実ではどんな感じで死ぬの?」

( <●><●>) 「その人に不自然でない死に方で」

( ´_ゝ`)「へー、便利だねえ」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:49:42.01 ID:6GPOBVkd0

( ´_ゝ`)「残り時間はどれくらい?」

( <●><●>) 「体感時間があちらとこちらでは違いますから 正確にはいえません」

( ´_ゝ`)「アバウトでいいよ」

( <●><●>) 「貴方がたの感じる時間に直すと 残り67分34秒90 になりますね」

(;´_ゝ`)「それわざとやってんの?」

反省はしたけれど、兄者を僕はますます信じられなくなった。
だって今の彼のおかれている立場って僕より絶望的である。
自分か弟が死ぬのだ。そうでなくば、僕ら全員。

( ´_ゝ`)「まあいいや、じゃあもう帰っていいよ」

しっしっ、と兄者が猫を追い払うようにすると、ワカッテマスは素直に消えた。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:50:00.48 ID:6GPOBVkd0

( ´_ゝ`)「というわけで、俺を選べよ」

(  ゚ω゚)「なっ、」

( ´_ゝ`)「だって俺が死なないなら弟者が死ぬんだろ」

(;゚ω゚)「だ、だけど、」

( ´_ゝ`)「…ただの夢、なんだろ?」

(  ゚ω゚)「違う!」

あ、

(  ゚ω゚)「違う、違う!これは、」

ああ、

(  ゚ω゚)「これはただの夢なんかじゃない!違う!だって僕は、僕は、」

駄目だ、駄目だって、

(  ゚ω゚)「僕は、確かに、この手で、」

言わないで、

(  ゚ω゚)「僕はこの手で―」



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:50:31.38 ID:6GPOBVkd0

(  ゚ω゚)「こ、

白く細い腕が僕に伸びて、そして頭を撫でた。優しく、何度も撫でた。
これもまた細い、けれど暖かい肩に顔を押し付けられる。僕は何にも言えなくなって、遂に泣き崩れた。

声を出して泣くなんて何年ぶりだろう、喉が痛くなるくらいに泣いた。
何度も兄者の胸元を駄々っ子のように叩いた。兄者は何も言わなかった。
冗談みたいに涙が溢れて、そして消えていった。



どれくらい経ったろう、まだ涙は止まらないながらも落ち着いてきたころ、兄者がつぶやいた。

( ´_ゝ`)「弟者もよくそんな風に泣いてたよ」

(  ω )「…意外だお」

( ´_ゝ`)「そうか」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:52:19.87 ID:6GPOBVkd0

( ´_ゝ`)「小学校の体育の授業でさ、まあ、脳みそ筋肉みたいな教師が居て。
       俺身体弱いからって理由でいろいろ贔屓されんの嫌でそれなりに頑張ってたんだけど、
       流石にマラソンは死ぬから見学してたんだよ」

( ´_ゝ`)「でも普段がんばってたのが災いして、心臓弱いのなんか嘘だろ、走れって言われてさ、
       むかついたから走ったの。そしたらちょっと本当に死にかけて、何日か意識不明状態ンなって
       起きたら起きたで弟者にボッコボコにされて」

(  ω )「弟者が?」

( ´_ゝ`)「そうそう、あんな泣き虫の弟者がさ、怒ってるんだよ、もちろん泣きながらだけど
       怒るんだ、俺に。ついでに教師にも殴りかかったらしいけど。学校でも有名ないじめられっこの弟者がさ」

( ´_ゝ`)「…この世の終わりかってくらい顔ぐっちゃぐっちゃにさせて、それでも怒るんだ。
       ああ俺こいつが居ないとダメだなあって思った
       俺はこいつがこんなに怒ってるから死ななかったんだなって本気で思った。今でも思ってる」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:52:47.80 ID:6GPOBVkd0

(  ω )「だから…死んでもいいのかお?弟者の為に?」

( ´_ゝ`)「いいや」

(  ω )「じゃあ、なんで…」

( ´_ゝ`)「それは単純に、価値の話だよ。俺が生き残ってなんになる。治療費馬鹿になんないしそのくせ就職だって出来ないし、
       なんもしなくても明日死ぬかもしんねえし」

(  ω )「価値、」

( ´_ゝ`)「そう、ないだろ。まあ俺より価値がない人間なんて犯罪者くらいなもんだけどなあ。
       …ま、俺が健康だとしても、弟者ってだけで俺にはなによりも価値がある」



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:53:21.51 ID:6GPOBVkd0

何か言わなくてはと思った。彼は笑顔で、あまりに寂しい言葉ばかり紡いでいる。
違うというのはわかるのに、なんと言ったらいいのかわからない。
大体、なにか言うべき言葉が見つかったとして、その言葉をかけてどうする。

どうするっていうんだよ。どうしろっていうんだよ。
こんなに優しいひとたちを、僕にどうしろっていうんだ。





( <●><●>) 「――時間です」



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:53:58.47 ID:6GPOBVkd0

( ´_ゝ`)「…ブーン、頼む。俺お前のこと結構気に入った。弟者に似てるから」

(  ω )「…」

( ´_ゝ`)「だからお前を死なせたくないし、弟者も死なせたくない」

(  ω )「…だけど」

( ´_ゝ`)「こういえばいいのか?…俺に、価値をくれ」

いつの間にか握っていたナイフ。僕の手に兄者の手がかかる。どこからか声が聞こえる。
いやすぐ近くに声の主が居るのはわかっているのだが、声が遠い。夢みたいに。

( <●><●>) 「ブーン自身が殺さなければ意味がありません」

( ´_ゝ`)「そうか仕方ない。ごめんなブーン」

兄者は笑っていた。




さいごまでわらっていた。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:54:16.77 ID:6GPOBVkd0









兄者に価値がないなんていったら弟者が怒るお、と僕は言った。
そしたら生き返るから大丈夫だ、と言って彼は血にまみれた手で僕の頭を撫でた。
一度ゆっくりと息を吐いてから、彼は目を閉じた。









57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:55:14.97 ID:6GPOBVkd0

―僕は目を開けた。見慣れない天井に少し驚くが戸惑っている暇はない。
階段から落ちて一晩中目を覚まさなかったから、病院に連れてこられたのだろう。
僕を見つけた看護婦さんが笑顔で声をかけてくる。

从'ー'从「内藤さん、良かったです〜。頭強く打ったみたいなので一応今日は検査―」

(  ゚ω゚)「この辺で!」

从;'ー'从「きゃあ〜」

(  ゚ω゚)「心臓の病気の治療に力を入れている病院はどこだお!」

从;'ー'从「し、しんぞ…?」

(  ゚ω゚)「どこだお!!」

从;'ー'从「ふええ、隣町の荒巻診療所さんだよお…」



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:55:32.69 ID:6GPOBVkd0

走った。頭がクラクラして、足がもつれたけれど走った。
今走れるならば、間に合うならば、足がちぎれてしまっても構わないとすら思った。
走れなくなったら死んでやると結構本気で言っていた僕だけど、願った。祈った。

着いた、けど倒れた、でも立ち上がった。息を吐くことしかできない。過呼吸気味。
どうでもいい。看護婦さんが声をかけてくる、流石さんはどちらですかときく、
悲しそうな顔をする、どちらですか、と僕はいう、案内します、彼女はいう。

泣き崩れる女性がいる、きっと母親、それを支えているのは、父親だろうか、
小さい女の子、僕より少し年上の女の人、みんな泣いている、いやみんなじゃない、

( ^ω^)「――おとじゃ」

(´<_` )「…ブーン?」

弟者は、泣いてはいなかった。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:56:49.62 ID:6GPOBVkd0

(´<_` )「なんでここに…」

( ^ω^)「兄者、は」

(´<_` )「?」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ああ、兄者の友達ですか。弟者が知らせたのか?兄者とはロクに会えもしなかったろうに、よく来てくれたね。
      どうか兄者を見てやってください」

手に触れる。さっき、ついさっき、僕を撫でてくれた手だ。いっそ冷たければ良かったのに、まだ暖かかった。
僕には泣く資格などないのに、また泣いた。事情を知らなければそれは純粋な友人の涙にしか見えないだろう、
だから彼の父は僕に言葉をかけるのだ。

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「苦しまずに逝きました、それだけが救いです」

そんなものを救いだなんて呼ばないで。叫びたかったけど、声にならなかった。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:58:07.97 ID:6GPOBVkd0

(´<_` )「ブーン、兄者と知りあいだったんだな。言ってくれてもよかったのに」

汗まみれな僕を見かねて弟者が屋上に連れ出してくれた。
スポーツドリンクを差し出して、弟者はいつものように笑った。

( ^ω^)「…」

(´<_` )「口止めでもされてたのか?まあそうだな、知ってたら怒ってたろうな。高校入ってからか?」

( ^ω^)「…」

僕は頷いた。弟者を見れなくて、スポーツドリンクをじっと見つめていた。

(´<_` )「兄者は昔っから一人でフラフラと出かけてって、外国人やら浮浪者やら警官やらと仲良くなってたんだ。
      誘拐されかけたり、救急車に乗って帰ってきたこともあったのに、やめないんだこれが」

(´<_` )「高校入ってからはやめたと思ったんだがなあ。此処入ったの俺が高校入ってからなんだけど、
      結構監視厳しいんだ。まあ兄者だし仕方ないか」



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:59:02.01 ID:6GPOBVkd0

( ^ω^)「僕が」

(´<_` )「ん?」

( ^ω^)「僕が… した お」

(´<_` )「…?」

( ^ω^)「僕が兄者を殺したんだお。夢の中で」

(´<_` )「…お前がそんな不謹慎なこと冗談で言う人間じゃないことはわかっているつもりだが」

( ^ω^)「話すお」

僕は兄者に話したことを話した。汗を拭かなかったせいか、身体は冷え切っていた。



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:59:25.93 ID:6GPOBVkd0

(´<_` )「信じがたいんだが」

( ^ω^)「僕は現実で兄者に会ったことはないお」

(´<_` )「…」

( ^ω^)「兄者に最初弟者と話しかけたお」

(´<_` )「兄者はなんて?」

( ^ω^)「…『いや、俺は兄者だけども、』」

兄者の台詞をそのまま言うと、弟者は噴き出した。



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 19:59:45.39 ID:6GPOBVkd0

(´<_` )「そりゃ間違いなく兄者だな」

( ^ω^)「信じて…」

(´<_` )「何を話した?」

僕は兄者が話したことを話した。口から出る言葉のひとつひとつが、僕をズタズタに切り裂いていく。
気付いていた。こんなことを言うのはけして兄者や弟者のためではないと。ただ僕のためなのだと。
この悲しみを、苦しみを、誰かに吐きだしてしまいたいのだ。

きっと弟者も気づいていただろう、この利己的な思いくらい。僕らはそういうところで似ていたから。

(´<_` )「……」

全てを話し終えた。弟者は馬鹿だな、と小さく笑って、それから僕を見ていた。
僕が”何”を乞いたいのか、浴びせて欲しい言葉は”何”なのか。
僕も弟者も悲しいほどにわかっていて、決してそれをしなかったし、してくれなかった。



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 20:00:52.52 ID:6GPOBVkd0

(´<_` )「…そのマラソンさ。兄者、走りきったんだよ」

( ^ω^)「…お」

(´<_` )「馬鹿だよな、本当に危篤状態で集中治療室まで担ぎ込まれたのに、起きたときなんて言ったと思う?」

( ^ω^)「…」

(´<_` )「『おとじゃ、俺は走りきったぞ!みたかあの先生の顔!』―殴りたくもなるわなあ。
       でも、そんときに思ったよ。俺こいつには絶対かなわないんだって。それは絶対的な安心でもあった」

(´<_` )「兄者は頭が良かった。学校にはあまりいけなかったけど、ずっと本を読んでいたからか何なのか、
      考えが柔軟だったし、発想も奇抜だった。そして何より優しかった。
      どんなに嫌なことがあっても、兄者に話せば笑って、俺が一番欲しい言葉をかけてくれた」

(´<_` )「でも決して嘘はつかない奴で、だから喧嘩することだってあった。それでも最後にくれる言葉は俺が求めていたものだった。
      ―いや、兄者の言葉ならなんでも良かったのかもしれないけど」



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 20:01:19.16 ID:6GPOBVkd0

浴びせられる言葉は僕の求めていたものにしてはあまりにも優しい。
違う、そんなものじゃない、こんなじわじわと、僕の心を食いつぶしていくものじゃない、
もっと、もっと痛みが欲しいのだ。僕は、

(´<_` )「―兄者は、心臓発作で死んだよ」

(  ω )「ちが、」

(´<_` )「その方がいいんだ。俺にとってはな。
      お前と兄者にとっては、そうじゃない方がいいんだろうけど」

(  ω )「…兄者…も?」

(´<_` )「自由が好きなやつだったから。病気で死ぬのは運命だけど、自分で願ったのならそうじゃないだろ」
      ずっと病気に縛られていたから、…最期にそうじゃなかったのなら、兄者にとってはよかったんだろう」



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 20:02:06.43 ID:6GPOBVkd0

それを言い終わると、弟者は僕の方を見なくなった。ただ空を見上げていた。

(´<_` )「もう、帰れよ」

(  ω )「弟者、」

僕が名を呼ぶと弟者は振り返った。けど僕は次の言葉を言えなかった。
だって彼にとっては、兄者は心臓発作で死んだ。実際、死因にはそう書かれるだろう。

僕と兄者以外には、あくまで死因は心臓発作なのだ。逃げ道がないことを僕は知った。
違うか。今さっき、弟者によって潰されただけだ。



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/29(日) 20:03:23.46 ID:6GPOBVkd0

(  ω )「その…」

(´<_` )「たったひとつあれば生きていけるというなら、それが無くなったらどうなると聞いたことがあった」

(´<_` )「その話をした奴は笑って、生きなくなるだけだ、けれどそれは死ではない。生きていないだけなのだと
       もしそれで死んだのなら、それは自分の弱さ故だ、俺のせいにすんなよ、と」

耐えきれないように、弟者は泣き、笑った。兄者によく似た笑顔だった。

(´<_` )「…俺は死なない。安心しろよ」

(´<_` )「人生は長いから、いつか気が向いたらお前を責めてやってもいい」

彼は―彼らは本当に優しい。だから僕は何も言えないまま、ただ涙を流した。


<第三択・了>



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