( ^ω^)ブーンが二者択一するようです
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 19:52:15.43 ID:qldU5hv0O
「僕の名前は内藤ホライゾン!」
「…知ってるよ、同じクラスの同じ部活じゃねえか」
「だからブーンって呼んでくれお!」
「何がどうだからなんだよ」
「……こうして、ブーンって走るのが好きだからだお!」
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 19:52:58.26 ID:qldU5hv0O
<第4択>
生ぬるい雨が降っている。辺りが暗い。今は何時だろう。
(;'A`)「ブーン!どうしたお前、…ブーン?」
ドクオの声がする。あ、目の前にドクオがいる。でも何重にも見えるなあ。
熱でもあるのかもしれない。すっごくおもしろい。でも笑えない。
(;'A`)「おい」
ドクオが僕の腕を掴んだ。
陸上をやっていただなんて誰が信じるだろう、ドクオのこの白く細い腕。
(;'A`)「つめた…ブーン?」
いやでも思い出す。これによく似た腕、でも大きかった手。
彼の手が赤く染まったとき僕はどこかで安堵してはいなかったか。
彼が自ら選んでくれた。僕が選択せずに済んだ。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 19:53:27.55 ID:qldU5hv0O
(;'A`)「どうしたってんだよ」
本当に、どうしたっていうんだろう。僕は何をしたんだろう。
( ω )「…は、」
何をしたんだろうだって?
反吐が出る。ああ、何度だって言ってやるさ。
僕は人を殺した。
何も知らない幼い少女。彼女の先にどれだけの幸福があったろう。
罪びとだって、きちんと裁かれるべきだった。
遺族の人は真相も知らないまま、責めるべき相手を失ったのだ。
そして、兄者。考えただけで、あの優しい手を思い出すだけで気が狂ってしまいそうになる。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 19:54:13.92 ID:qldU5hv0O
僕は責められたくてたまらなかった。赦しを乞いたかった。罵倒を浴びせられたかった。
そうでもなければ、僕は僕のしたことを本当に見なければならなくなる。
それが辛い。怖い。
「ゆるして」「ごめんなさい」「たすけて」
僕の言いたかったことはこれだけだ。この三つの言葉だけなのだ。
吐き気がする。人を殺してなお、自分のための言葉しか望まないとは。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 19:56:32.58 ID:qldU5hv0O
(;'A`)「おいってば」
( ω )「…大丈夫だお」
(;'A`)「でもお前そんなびしょびしょで…」
いつもと立場が逆だ。ドクオがまともなことを言っている。
(;'A`)「大体、昨日一晩中気失ってたのにどこ行って…とにかく病院に」
( ω )「大丈夫だお」
(;'A`)「でも」
( ω )「大丈夫だお」
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 19:57:26.17 ID:qldU5hv0O
ドクオの腕を振り払うと、その反動で僕は水たまりに顔から突っ込んだ。
(;'A`)「ブーン!」
なんて滑稽な姿。今の僕の姿を想像したら本当におかしくてたまらない。
それなのにどうしても笑えない。笑おうとするたびに、弟者の笑顔が過る。
笑えるわけないじゃないか。あの悲しくて優しい笑顔。
(;'A`)「おい、大丈夫か?!おい、おいってば!」
さっきから何度も言ってるじゃないか。
( ω )「大丈夫だお」
( ω )「…大丈夫だお」
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 19:58:09.87 ID:qldU5hv0O
どうやって帰ったかは覚えていないけれど、いつの間にか家に着いていた。
18年間住み慣れた街だけあって、身体が勝手に運んでくれていたようだ。
J(;'ー`)し「ブーン?!」
珍しくカーチャンが取り乱している。
脳震盪で何時間も気を失っていた上、いきなり行方不明。心配するのも当然かもしれない。
J(;'ー`)し「心配したのよ。…カーチャンがわかるかい?」
( ω )「大丈夫だお」
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 19:58:48.66 ID:qldU5hv0O
J( 'ー`)し「良かった…擬古さんも心配して探してくれてたのよ。電話しなくっちゃ。
ブーン、お風呂に入ってらっしゃい。カーチャン何も聞かないけど、検査はしなくっちゃ駄目よ」
擬古さんというのは、カーチャンの彼氏だ。
うちにはあまり連れてこないけれど、何度か食事をしたことがある。
感じのいいおっちゃんで、息子としては複雑な思いはあるけれども、決して嫌いではない。
( ω )「大丈夫だお」
J( 'ー`)し「…ブーン?」
( ω )「大丈夫だお…」
J( 'ー`)し「…」
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:04:06.51 ID:qldU5hv0O
お風呂から上がると、擬古さんが来ていた。
(,,゚Д゚)「ブーンくん、ちょっといいかな」
( ω )「大丈夫だお」
J( 'ー`)し「ブーン、あなた本当に、」
( ω )「大丈夫だお」
J( 'ー`)し「ブーン…」
(,,゚Д゚)「俺に任せて、君は夕飯の準備があるんだろう?」
擬古さんは優しくカーチャンを諭すと、僕の部屋に行こうと誘った。
何も言わず僕は自分の部屋に向かう。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:07:24.88 ID:qldU5hv0O
僕の部屋は、あの夜のままだった。ついたままのテレビ。出しっぱなしのゲーム機。
あの夜に戻ったようだった。本当にそうだったらどれだけ良かっただろう。
全てがただの夢だと信じていられたあの夜。
(,,゚Д゚)「ブーン君、身体は大丈夫なのかい?」
( ω )「大丈夫だお」
(,,゚Д゚)「そうか。聞けば昨日の朝から調子が悪かったらしいじゃないか」
( ω )「大丈夫だお」
(,,゚Д゚)「…何か悩みでもあるのかい」
( ω )「大丈夫だお」
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:09:16.59 ID:qldU5hv0O
僕は決して擬古さんという人が嫌いではない。
男にさんざん苦しめられてきたカーチャンが選んだ人だ、悪い人であるはずがない。
でも今の僕には、この人のいかにもな「優しさ」が腹立たしかった。
(,,゚Д゚)「ブーン君、それではお母さんが困ってしまうよ」
ほら、結局それじゃないか。お前はカーチャンに好かれたいだけだろう。
結局お前は自分のためだ。僕にそっくりだ。僕や、僕の父親にそっくりだ。
お前は知らないんだろう、本当の優しさを。切ないくらいの優しさを。
見てるこっちが痛くなるくらいひたむきで、ただ誰かの為にある優しさを。
( ω )「大丈夫だお」
(,,゚Д゚)「…そうじゃなくって、お母さんが」
僕は知っている。知っていてそれに甘えた最低な僕は誰よりも知っている。
なんでお前は知らないんだ。僕にそっくりなその醜い心を持っていながら、
何故お前は知らないままでいられる!
(#゚ω゚)「大丈夫だっていってんだろお!」
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:11:32.09 ID:qldU5hv0O
(,,゚Д゚)「ブーン君…」
(;゚ω゚)「…ッ」
――いま。いま、殴りかかりそうだった。ぞっとした。
( ω )「…すみませんお、一人に、してくださいお…」
(,,゚Д゚)「ああ…」
僕は、僕は決して喧嘩はしない人間だった。
それは性格もあったけれど、何より父親を見ていたからだ。
感情に任せて殴るなど、最低の行為。
小学生時分には、感情に任せた殴り合いなど珍しく無かったから、僕はそのたびに彼らを軽蔑していた。
勿論彼らのするのは”喧嘩”であって”暴力”ではないから、一時的な軽蔑ではあったけれど。
さっきの衝動。そして出てきた言葉。この僕にもそんな感情があったのだ。
吐き気がする。本当は、僕は父親と似ている。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:15:23.05 ID:qldU5hv0O
夕飯の時間。食欲など無かったけれど、カーチャンの痛々しい笑顔を見れば断れず。
人生で一番気まずい食卓。味が無い。砂を噛んでるようだ。
擬古さんが気を使って話す。カーチャンが答える。それだけ。
結局ご飯を大幅に残して、僕は逃げた。
( ω )「大丈夫だお」
呪文のように、僕は繰り返す。
( ω )「大丈夫だお、大丈夫だお」
何が大丈夫なんだろう。何で大丈夫なんだろう。
何ひとつとして大丈夫なものなどないのに。
テレビを見る。ネットをする。何も頭に入ってこない。
何度も携帯が鳴った。携帯の電源を切った。
そして僕は眠りについた。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:16:03.86 ID:qldU5hv0O
( <●><●>)「いらっしゃい」
( ω )「…」
( <●><●>)「気が狂ってしまうのではないか と思いましたが 大丈夫そうですね」
( ω )「…」
( <●><●>)「さあ、選択を」
ワカッテマスが言うと、いつものように僕の右手にナイフが現れる。
僕はそれを握りしめる。覚悟は決めた。もう一度握りなおす。
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:17:03.22 ID:qldU5hv0O
( ゚ω゚)「おおおおお!」
僕はそれを思い切りワカッテマスの胸のあたりに突き刺した。
僕が何故なんの抵抗もなく眠りについたか。
それはこの状況から抜け出すたったひとつの方法を思いついたからだ。
この最悪な夢の原因は間違いなくこいつら。ワカッテマスと、あのしょぼくれ顔。
まずワカッテマスを殺す。そしたらあのしょぼくれ顔も出てくる筈。
僕にはこいつらを殺す権利がある。僕はなんの疑いもなくそう思っていた。
だから眠りについたのだ。
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:17:59.62 ID:qldU5hv0O
( <●><●>)「そういう考えですか」
刺した。僕は、確かに刺した。殺すつもりで。今までの誰よりも力強く刺した。
なのに、あまりに軽い。忘れるわけもない、あの肉に突き刺さる鈍い感覚がない。
確かに刺した。現に目の前、彼の胸にはナイフがしっかりと刺さっている。
なのに何故こいつは平然としている?
( <●><●>)「確かに 気を狂わせるよりはよっぽど賢い選択です しかし」
足りないのか。足りないのか。足りないのか。これでも足りないのか。
何度も突き刺す。けれどワカッテマスは言葉を続ける。聞きたくない。突き刺す。血は出ない。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:19:55.14 ID:qldU5hv0O
( <●><●>)「死神は 死神にしか殺せません
もっとも私はいうなれば死神のなりそこないですが それでも貴方に殺せるような存在ではありません」
ワカッテマスはこともなげに自らの胸からナイフを抜いた。
僕はその場にへたり込む。力を入れ過ぎた手は震え、それでもナイフを握ったまま。
( <●><●>)「そしてこの世には …貴方にとってはあの世ですが 死神は
つまり私のようななりそこないではない死神は ショボンさましか居ません」
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:20:32.35 ID:qldU5hv0O
今大声で笑えたならば、僕は壊れてしまうことが出来ただろう。
でも僕は矢張り笑えず、壊れてしまうことも出来ず。
( <●><●>)「…他の死神は ショボンさまが みんな殺してしまいましたから」
ははははははははは。
心の中で笑う。つまりなんだ、ショボンとやらどころか、下っ端のお前すら殺せないと。
ははははははははは。
どんなチートですか?終わらない悪夢なんてどこの厨二病?
( <●><●>)「…泣いているのですか」
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:23:32.97 ID:qldU5hv0O
笑えない代わりか、知らないうちに涙が流れていた。
泣いてないのに、涙が出る。どこかの糸が切れてしまったのか。
絶望とはこのことか。逃げられない。
人を殺すなど、何度やろうとも慣れるものではない。
慣れてたまるか。もうどんな悪人だって殺したくない。
このワカッテマスを、何故か僕は嫌いになれなかった。
だけどこいつが当事者なのは間違いないから。
この悪夢から逃れられるならと、残った気力全てをかけて刺したのだ。
それなのにこんな結果。
( ω )「なんで僕なんだお」
( <●><●>)「…」
( ω )「なんで…僕なんだお」
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:24:35.77 ID:qldU5hv0O
殺人衝動がある人間、殺人を快楽とする人間がこの世には居る筈だ。
何故そいつらに選択させない。何故僕である必要がある。
この世界には六十憶もの人間が居るってのに、その中で何故僕が選ばれた。
答えを請うために、ワカッテマスを見上げる。
今まで僕から目をそらしたことの無かった彼が、僕から目を逸らした。
そして、一度も表情を変えなかった彼が、ほんの一瞬だけど、痛みに耐えるような表情を浮かべた。
僕にはわからなかった。
それが何でなのか、何故今なのか。それを怒ればいいのか、許せばいいのか。
そもそも何を許せばいいのか、それは、赦しを乞うべき僕が許せるものなのか。
( <●><●>)「…選択を」
沈黙を破ったのはワカッテマスの方だった。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:26:03.24 ID:qldU5hv0O
最早僕に抵抗する気力は無く、左の道を進んだ。
(;^ω^)「……」
(,;゚Д゚)「……」
これはいったいどういう基準があって選んでいるのだろうか。
夢の中とはいっても、あんなことがあったから、気まずい。向こうも気まずそう。
知っていてこの人を選択の場に出してきたなら、かなり性格が悪い。
…本当に僕は参ってきているようだ。
こんな選択させるやつの性格がいいわけないだろうに。
僕は引き返した。目指すは、もう一本の道。
誰だって殺したくはないけれど、カーチャンの愛している人だ。
人の命を天秤にかけていることに吐き気がするけれど、もう躊躇う資格すら僕には無いんだ。
誰も殺さないでいれば皆死ぬ。それなら、一人殺した方が、ずっと。
誰だってそう思うだろう?僕は、間違ってなどいない。
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:26:31.42 ID:qldU5hv0O
( ^ω^)(自分が死にたくないだけだお?)
( ω )「うるさいお」
⌒*リ´;-;リ(いたいよう、いたいよう)
( ω )「うるさいお。だまれお」
(・∀ ・) (俺とお前何が違うって言うんだ。同じ人殺しじゃねえか)
( ω )「うるさいお。うるさいお」
( ФωФ)「ブーン?」
( ^ω^)「うるさいっ、…え?」
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:29:44.67 ID:qldU5hv0O
もう何年も聞いていなかった声がした。
何年も聞いていなくても、すぐに誰のものかわかる声がした。
( ФωФ)「ああ、ブーンだ…ブーンが夢に出て来るのは久し振りだな…」
記憶の中の姿より、ずっと落ち着いた印象を受ける。それとも元からこんな人だったろうか?
写真はカーチャンが全て燃やしてしまったから、はっきりとした姿は覚えていない。
けれども、例えもっと年老いていたとしても、きっと彼だとわかっただろう。
( ФωФ)「そうか、今年でもう18になるのか…これくらいになっているんだろうな」
あんなに憎んだ親子という繋がりがそう思わせるのか、もっとほかのものなのか。
それなら、その二者で選択しなければならないのなら、僕は前者を選ぶ。迷うことなく。
後者であるはずがない。そうだ、そんなものであるはずがないのだ。
そうでなきゃ、あまりに僕が救われない。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:30:13.33 ID:qldU5hv0O
( ФωФ)「ブーン…ふふ、覚えているか」
僕と同じ色だとカーチャンが言った髪には白色が目立つ。
僕と似ているとカーチャンが笑った口元には皺がある。
( ФωФ)「今はもうブーンだなんて呼ばれていないんだろうけど」
カーチャンを罵倒した声が何故こんなにも優しく僕を呼ぶ?
カーチャンを殴った手が何故僕に触れようとする?
カーチャンを蔑んだ目が何故涙を浮かべて僕を見る?
( ФωФ)「私は今も覚えているよ、お前のあだ名がブーンになった日のことを」
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:32:55.89 ID:qldU5hv0O
( ФωФ)「ホライゾンは走るのが好きだなあ」
⊂二(*^ω^)二⊃ 「おっおっおっ」
(;ФωФ)「あ、待ちなさいそこ段差が…アッー」
(;^ω^)「おっ!」
(;ФωФ)「セーフ!セーフだな?!大丈夫かホライゾン!」
⊂二(*^ω^)二⊃ 「だいじょうぶだお!もっとはしるんだお!」
( ФωФ)「まったく、お前は本当に走るのが好きなんだな」
⊂二(*^ω^)二⊃ 「だいすきだお!」
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:34:24.44 ID:qldU5hv0O
(;ФωФ)「でもなあ、早く走りたいのならその走り方はどうかと思うぞ」
⊂二(*^ω^)二⊃ 「こうすると、かぜがきもちいいんだお」
( ФωФ)「うん?」
⊂二(*^ω^)二⊃ 「かぜがいっぱいあるんだお!」
⊂二(*ФωФ)二⊃ 「う、うむ?そうか?で、では私も…むむ?!新境地!」
⊂二(*^ω^)二⊃ 「おっおっ!」
( ФωФ)「そうか、手を広げることで抵抗が増えて風を…わが子ながら天才だな!」
(*^ω^)「おっ、僕天才だお!」
(*ФωФ)「ははは!ブーン!」
(*^ω^)「お?!なんだお?ブーンってなんだお?」
(;ФωФ)「む?べ、別に意味はな…いや!これは早く走るための呪文なのだ!」
(*^ω^)「まほうのじゅもんかお?!」
(*ФωФ)「そうだ、魔法の呪文だ!ふはははは!」
- 60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:35:08.36 ID:qldU5hv0O
(*^ω^)「ブーン!ブーン!」
J( 'ー`)し 「ちょっと貴方、ホライゾンに何言ったんですか?一日中あればっかり」
(;ФωФ)「むっ…むう、男にしかわからんことだ」
J( 'ー`)し 「もう…ホライゾン、あまり言ってるとブーンって名前にしちゃうわよ!」
(*^ω^)「お?それいいお、僕はブーンだお!」
J( 'ー`)し ( ФωФ)「ちょwwwww」
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:38:00.93 ID:qldU5hv0O
( ФωФ)「お前ときたら私の口から出まかせを信じて」
( ФωФ)「結局私たちが根負けしてブーンと呼ばされたっけな」
( ФωФ)「…今は、どんな風に呼ばれているのだ?友達はたくさんいるか?学校はたのしいか?」
( ФωФ)「なんて…な」
僕と彼の間にある壁は凄く厚い。もしかしたらカーチャンと彼の間にあるそれよりも。
カーチャンと彼は他人だが、僕と彼はいつまでたっても親子である。
同じ男であることも手伝って、嫌悪感はカーチャンよりも僕の方が強かった。
血を恨み、彼のような人間だけはなるものかと誓い、そして今の僕が居る。
カーチャンを不幸にしかしなかった男。
カーチャンをこれから幸せにしてくれる男。
どちらを選べばカーチャンの為になるかなんて明白だ。
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:39:26.09 ID:qldU5hv0O
――それでも。
( ^ω^)「いまでも、ブーンと…呼ばれている、お」
( ФωФ)「…そうか」
それでも、僕と彼の間には、確かに親子としての記憶が、
ホームドラマにでも出るつもりだったのかと笑ってしまいたくなるような歴史がある。
それはこんなにもささやかなのに、厚い壁すらも超えて今の僕に届くのだ。親子というほかにない絆を伝って。
( ФωФ)「ありがとう」
誰も、こんなものを愛だと言わなければよかったのになあ。
そしたら僕も、ほんの少しは救われたのに。
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:41:50.96 ID:qldU5hv0O
(,,゚Д゚)「ブーンくん」
僕が何も言わずに擬古さんの前に立っていると、彼の方から話しかけてきた。
(,,゚Д゚)「夢の中で悪いが、すまなかったね。君くらいの年なら、言いたくないような悩みがあって当然なのに…」
夢の中でまで、謝らなくてもいいのに。
でも、そんなところをカーチャンは好きになったんだろう。
( ω )「だけど」
(,,゚Д゚)「うん?」
( ω )「だけど、貴方は、僕の父親じゃ、ないんだお」
(,,゚Д゚)「…え?」
- 68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:42:48.74 ID:qldU5hv0O
子供にとって、親は神様のような存在だ。
本当に困ったとき、泣きつけばどうにかしてくれる。
わがままはかなえてくれないけれど、本当のお願いは聞き入れてくれる。
そう頑なに信じていられた。
だけど、彼らも僕らと同じただの無力な、弱い、悩んだり間違えたり、醜い部分も持つ人間だと知ったとき、
子供は、その幻想が愛の見せたものだと理解できるほど大人ではないから、ただただ衝撃を受ける。
裏切られたようにすら感じる。そして自ら幻想を打ち砕く。
それでも、その破片がまだ残っているようだ。
だからこんな風に、救いを求めてしまうのだろう。
もう、神様なんかいないのに。
( ;ω )「………とーちゃん、」
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:43:58.03 ID:qldU5hv0O
(´・ω・`)「初めて、君と違う選択をしたね」
( <●><●>)「そうですね」
(´・ω・`)「どんな気持ち?」
( <●><●>)「…わかりません」
(´・ω・`)「はは、似合わないことを言うね」
( <●><●>)「すみません」
(´・ω・`)「別にいいさ。あの子は本当におもしろいからね。でかしたよ」
( <●><●>)「…ありがとうございます」
( <●><●>)「…」
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/06(日) 20:44:25.16 ID:qldU5hv0O
「いちねんにくみにじゅうにばん!ぼくはないとうほらいぞん!ブーンってよんでくれお!」
「なんでブーンなのー?」
「おっおっ、これはぼくのトーチャンがおしえてくれた、まほうのじゅもんなんだお!」
<第四択・了>
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