( ´_ゝ`) (´<_` )兄弟はぐだぐだとゆくようです

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:21:23.65 ID:yJ+bSG6X0




空へ飛び立て兄弟よ のようです




50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:21:54.33 ID:yJ+bSG6X0
そして夏休みに入ってから五日後 翼田空港 気温33度。

準備はできたのだが、チケットをとるのを初めてだったため、そこは母者にやってもらった。
おかげで思い立った日から随分日にちが経ってしまった。まぁ、夏休みは長いので特に問題はないだろう。
 
新幹線で一度姉者のいる秋田に行った事はあるが、
実は俺たち兄弟は飛行機に乗った事が無い。 

力が無いとの事なので、兄者はリュックサック、
俺はでかい銀色のキャリーケースを持っていく事となった。

朝早い電車に乗ってえっちらおっちら着替え等の荷物を運んで来たが、
そこまでは別にいい。空港についてからが問題だ。

押し合いへし合い、湿気むんむんの電車内から解放され、冷房の効いた空港内に入って一息つく。
 

時間に余裕を持って という事で飛行機離陸時間の1時間30分前に来たが、まずゲートとかわけわかんない。
情けない事に、俺たちは東京に住んでいるはずなのに、
逆にお上りさんのような様子で空港内をあたふたと歩き回る事となった。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:23:13.39 ID:yJ+bSG6X0
( ´_ゝ`)「……弟者よ。ここは何階だ?」

(´<_` )「さっきエスカレーターを降りたから多分地下一階じゃないか?」
 
( ´_ゝ`)「この案内表示には二階と書いてあるのだが」
 
(´<_`;)「…さっきもそこの案内表示見たよな?」
 
( ´_ゝ`)「あぁ。見たな」


(´<_` )「早くちぇっくいんなるものを乗る前に済ませなければいけないらしい」
 
(´<_` )「もうこうなったらあそこのインフォメーションセンターで場所を聞こう」
 
Σ(;´_ゝ`)「え、どこに行かなくっちゃいけないんだっけ?」
 
(´<_`;)「兄者よ…それを忘れたら元も子もないだろ」 


迷い無くどこかへ進むサラリーマンや家族連れを見ていると、
案内表示の前でもたつく男二人組というのは、
他人から見たらとても情けなく見えるんだろうな。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:23:41.48 ID:yJ+bSG6X0
インフォメー(ryのお姉さんに場所を教えてもらい、
ターミナルに到着。どうにかしてチェックイン成功。
出発の20分前までにそこでチェックインを済ませなければいけなかったらしい。
あのまま迷っていたら危ない所だった。とりあえず第一関門突破。


それにしてもターミナルというのは広い物だ。
多分俺たちの高校の体育館の二倍の長さはあると思う。

がやがやと人々の活動する音、せわしなく動く人々の足音、
それに加えて、アナウンスなどがターミナル内をこだましている。

こんな空間に長時間いると、俺たちもゆっくりしている場合ではないという思いに陥りそうになる。実際そうなのだが。
壁沿いに、ずらりとスチュワーデス…なのだろうか?髪をまとめた女の人が並んでいるのは壮観だ。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:24:18.16 ID:yJ+bSG6X0

チェックインをした後、俺が何をすべきだったか思い出そうとしていると、急に兄者が話しかけて来た。


( ´_ゝ`)「弟者。せっかく姉者のとこに行くのだから何か菓子折りとか持っていった方がいいよな」

(´<_` )「兄者にしてはいい事を思いつく。確かに買っていった方がいいな」

( ´_ゝ`)「…これはどうだ。東京ペニス」

(´<_` )「却下」

( ´_ゝ`)「サザエさん1分の1スケール人形焼き」

(´<_` )「無理」

( ´_ゝ`)「猫屋の羊羹」

(´<_` )「…やっとまともな商品名が出たか」



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:25:38.89 ID:yJ+bSG6X0
そう言う訳で猫屋の羊羹を買いに行く。

ターミナルの端の方が、全体的にまぶしい色使いのショッピングスペースとなっているので、そこへ向かった。
噴水が設置してあったり、不思議なオブジェがあったり、
どことなく近未来的な要素を感じさせる場所だ。

チョコレイト屋、ケーキ屋、カフェテリアなど全体的にスイーツ(笑)系の店が並んでいる中に、
一件だけ、重厚感漂わせる店があった。そこが猫屋だ。

夏だという事で、水羊羹が多めに入っているのを買う事にする。
姉者はそれなりに和菓子は好きなので大丈夫だろう。

ちなみになぜ猫屋になったかと言うと、兄者からの『男は甘い物は嫌い』説により、
義兄さんのような漢でもバクシバクシと食べれそうな和菓子となったのだ。
もうキャリーケースに羊羹を入れるスペースがなかったため、俺が羊羹を持ち歩く事にする。


ターミナル方面へ帰ろうとすると途中、ショッピングエリアの端でコンビニを見つけた。
そこで旅のお供として、俺は酔いやすいので酔い止めを。

兄者はたいした力仕事もしてないくせに、体力回復と言いながらお茶とメントスを買っていた。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:26:12.04 ID:yJ+bSG6X0
そして俺たち二人分の荷物が入ったぱんぱんのキャリーケースを預けて、Dゲートへと向かう。
……俺にとって今回一番の恐怖、セキュリティチェックの時間がやってきた。

広いとはいえない通路のような所にベルトコンベアのような物があり、人々はそこの上に手荷物を置いてゆく。
置かれた手荷物達は、抵抗する間もなく変な機械の腹に飲み込まれて行き、
そして中身を全て探られて出てくる。あれが噂の手荷物検査か……。

その機械とコンベアの横には、人間チェック用のゲートが取り付けてあった。


(((;;´_ゝ`)))「平気そうな顔してるだろ…これでもちびりそうなんだぜ」
 
(((´<_`;;)))「どうみても平気そうじゃ無いぞ兄者」
 
(;;´_ゝ`)「弟者もなんだそれは。武者震いか?」
 
(´<_`;;)「だっていきなりブザーがなったりして黒尽くめの男に取調室に連行されたらどうする」 

(;;´_ゝ`)「いや、俺たちの前の人が実はハイジャック犯で爆弾がばれていきなり暴れだしたりしたらどうする」


(;;´_ゝ`)『ひぃぃぃぃ』(´<_`;;)



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:27:02.22 ID:yJ+bSG6X0
<次の方どうぞー

(;;´_ゝ`)bそ「…逝って来る」

Σd(´<_`;;)「…幸運を祈る」


兄者が行ったと思ったら、チェックのためのあの四角いゲートは二カ所あったようで、
俺もすぐに横のゲートに案内された。どうしようどうしようどうしよう。

確か金属類は外さなければいけなかった。
自分で言うのもなんだが洒落っ気は余り無いのでアクセサリーの類いは大丈夫だろう。
 
案内係に変な入れ物をわたされ、そこに携帯とデジカメと羊羹などをいれる。
ベルトもはずした。ポケットにも何も入っていない。はさみだって持っていない。危険物はもちろんない。

大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫きっと大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫








60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:27:22.62 ID:yJ+bSG6X0




(´<_` )「兄者ー 大丈夫かー」



俺は特に問題も無かったのですぐに荷物チェックを済ませて出て来た。
 
しかし兄者はリュックサックに入っていたお茶と工作用カッターが引っかかったらしく、
案内係に何やら質問をされてリュックの中を覗かれて、
変な機械にお茶が入れられているようだ。
 
兄者の顔が茶色だか青色だか白色だか様々な色に変化している。
しばらくすると、兄者がチェックゲートから出て来た。
おでこに脂汗を浮かべている。 どんだけ動揺してんだ


(  _ゝ )「   」

(´<_` )「カッターを没収された?お茶はどうにかなったか。よかった」
 
( ´_ゝ`)「…もう俺、ここで弟者が秋田から帰ってくるまで待ってていいかな?」

(´<_`;)「自分からツチノコを取りにいくと言い出したんじゃないか…」



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:28:42.47 ID:yJ+bSG6X0
とりあえず第二関門も突破。後は特に何もないだろう。
 

始めて入った出発ロビー、数字のかかれた自動改札口みたいな所がたくさんあった。あれが搭乗口らしい。
外側の壁全てが窓ガラスとなっており、止まっている飛行機が全て見える。

間近で動いていたり、威風堂々という感じで佇んでいる飛行機を見るのは、男なら誰でも興奮すると思う。
搭乗口の側では、人々が並べられたソファーに座ってテレビを見ていた。

電車の中のように寝ている人は一人もいない。あたりまえか

こんな所で止まっている場合ではない。
俺たちの入る所は27番ゲートなので、随分先まで行かなくてはならない。


(´<_`*)「すごいな…飛行機をこんな近くで見るのなんて始めてだ」

(*´_ゝ`)「ポケモンジェットがあるぞ弟者!」

(´<_` )「子供じゃあるまいし…」



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:29:24.56 ID:yJ+bSG6X0
外の様子にばかり気を取られていると、突然兄者が喚きだす。
内側の廊下に ずーっ と伸びている、動く歩道を兄者が発見したからだ。


(*´_ゝ`)「すげぇ!! 動く歩道があるぞ弟者! 超近未来!」

(´<_`*)「すごいな…まさか空港の中にこんな所があると思わなかった」

(´<_`*)「流石科学大国日本…科学技術も素晴らしいぜ…」
 
(*´_ゝ`)「凄いぞ弟者! この上で歩くと二倍の速度になる!!」

(´<_`;)「あ、先にいくな兄者! はぐれる!」


兄者が俺の事を置いて、動く歩道を使い高速移動して行くので、慌てて追いかける。
兄者が暴走したため周りを見て歩く余裕も無く、予定より早く搭乗口に到着した俺たち。
その後は特に何もなく、出発ゲートが開くまでソファーでテレビを見たりしていた。
 
そして出発ゲートが開く時間が近づいて来た訳だが。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:31:01.91 ID:yJ+bSG6X0
( ´_ゝ`)「ここで兄貴による荷物&搭乗チェックを開始する」
 
( ´_ゝ`)「トイレ行ったか?」

(´<_` )「行ったよ」
 
( ´_ゝ`)「チケット二枚は?」
 
(´<_` )「兄者の財布だろ」
 
( ´_ゝ`)「ゲロ袋は?」
 
(´<_` )「エチケット袋は一応五枚。後さっき酔い止めも買った」
 
( ´_ゝ`)「携帯の電源は?」
 
(´<_` )「もちろんOFF」
 
( ´_ゝ`)「飛行機の中でPSPやったら飛行機落ちるかな?」
 
(´<_` )「怖いから絶対やらないでくれよ」



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:31:54.69 ID:yJ+bSG6X0
( ´_ゝ`)「ちなみに、チケットに27Fと27Gと書いてあるのだが、これは席の番号だよな?」
 
(´<_` )「多分そうだと思う」
 
( ´_ゝ`)「弟者どっちのチケットがいい?俺窓際がいいんだが」

(´<_` )「俺も窓際がいい」
 
( ´_ゞ`)「えー。そこは兄に譲ってくれよ」
 
(´<_` )「普通だったら兄が弟に譲るだろ」
 
(#´_ゝ`)「飛行機乗るの始めてだから窓の外見たいんだよ!」
 
(´<_`#)「俺だって始めてだよ!」


言い争いをしたものの、どっちのチケットが窓際の物なのかわからない。
結局じゃんけんをした結果、兄者がG、俺がFという事になった。



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:32:24.66 ID:yJ+bSG6X0
そしてゲートが開く時間になったので、俺たちは緊張しながらゲートへ向かう。
まさかわざわざスッチー?がチケットを受け取って自動改札に入れてくれるとは思ってもいなかった。


( ´_ゝ`)「弟者よ。もうチケットは用無しだよな?」

(´<_` )「たぶんな」
 
( ´_ゝ`)「これさ…残ったちっちゃいやつ捨てたらいけないのだろうか」
 
(´<_` )「この先何があるかわからないから、持ってた方がいいと思う」

( ´_ゝ`)「これ持ってないと黒尽くめにさらわれるとか?」
 
(´<_` )「これ持ってないと飛行機乗車拒否されるかもよ?」

( ´_ゝ`)「乗車? 車じゃないのに乗車であってるのか?」

(´<_`;)「別につっこまなくてもいい所を…」



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:33:43.15 ID:yJ+bSG6X0
そして飛行機に乗り込んだ、会社はAMA ……関係無いが。
 
乗り込んでみたら、意外と飛行機の中は狭い。
通路はもう少し広いと思っていたが、人がすれ違う事ができる程余裕はなさそうだ。
映画だとかドラマでしか飛行機の中を見た事が無い俺にとっては、狭い通路でも新鮮に感じる。

窓際から、席が2.3.2.という風に並んでいた。
それぞれの席の上部分には荷物を入れるスペースが設けられている。
席の事に関しては、ふたを開けてみると兄者が窓際だった。うらやましい。 


あの後なんとか窓際に座るために、俺は酔いやすいから窓際じゃないといけない。と兄者に言ったのだが、
『車の常識を飛行機に当てはめる事は出来ない』と言われた。
確かにそうなんだが、なんだか悔しい。

乗り込むとすぐに飛ぶと思っていた俺たちは
座った途端にシートベルトを閉めてgtbrしていたのだが、
なかなか飛行機は離陸しない。なのでしばらく兄者の窓の外実況を聞く事となった。


( ´_ゝ`)「おぉー 結構高い位置なんだなここー」

(*´_ゝ`)「あっ! 凄いぞ弟者!!この席は羽の上だ!特等席!」
 
(´<_`*)「嘘マジで!?見せて見せて!」
 
Σ( ´_ゝ`)「おぉっ 今気がついたがこの窓閉めれるんだな!」
 
(´<_`#)「俺が外を見ようとした時に閉めないでくれよ…」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:35:28.09 ID:yJ+bSG6X0
数分後、アナウンスが入ったと思ったら頭上の変なランプが点灯した。
どうやらあれが着いてる時にベルトをつけろという意味らしい。早すぎたのか。

俺は誰か見ている訳でもないのに、周りに見られないようにシートベルトをそっと外した。
 

「本日はAMA774便に御搭乗頂き誠に有り難う御座います。本機は10時43分に翼田空港を出発し、
 
大慌て田代空港に向かいます。到着予定時刻は12時12分頃となっております。

気流や現地の天候により多少到着予定時刻がずれる事がありますので、ご容赦下さい」


♪( ´_ゝ`)「楽しみだな弟者」

(´<_`;)「…兄者今のアナウンス聞いてたか?」
 
( ´_ゝ`)「うん? タービン見てて聞いてなかった」
 
(´<_`;)「気流により遅れる事があるそうだ。……ジェット気流ってやつかな?」
 
(;´_ゝ`)「気流……そうかもしれん」
 
(´<_`;)「飛行機……落ちないよな」

(;´_ゝ`)「……」

(´<_`;)「正直スマンかった」



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:36:43.84 ID:yJ+bSG6X0
自分で言っておいて、少し不安になってきてしまった。
不安を少しでも解消しようと、さっき買った酔い止めを飲んでおく。

兄者とともに固まっていると、スッチーが救命防具の説明をしだしたので一応熱心に見ておく事にした。
隣では兄者がスッチーを見ながら、救命防具に空気を入れる予行練習をしている。

しばらくするとケツが小刻みに揺れるのを感じたので、兄者に外の様子を聞いてみる事にした。


(´<_` )「もう飛び始めたのか? まだだよな?」

( ´_ゝ`)「いや、なんかさっきいた所から別の所に移動してる」

(´<_` )「移動? あそこから直接きーんって飛ぶのかと思ってた」

( ´_ゝ`)「アラレちゃんかよ」


(´<_` )「だって飛行機ってきーんって飛んでくだろ…」

Σ(;´_ゝ`)「まぁ、さっきのとこから飛ぶ訳ではないらしい。大きな滑走路に移動してかrぎゃぁあっ!」

Σ(´<_`;)「うわぁあぁあぁGが凄まじいぞ!」
 
(;´_ゝ`)+「これがジェット気流か!」
 
(´<_`;)「モチケツ兄者! まだ飛んでない!」



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:37:21.45 ID:yJ+bSG6X0
飛行機はあっという間に加速し、ケツの振動も凄まじい物になってきた。
がたがたというレベルを通り越して、携帯のバイブのようになって来ている。
ケツがしびれて感覚が無い。こりゃやばい

兄者と話していて気づかなかったが、シートベルト着用サインが点灯しているのが見えた。
慌ててシートベルトを着用し、来るべき離陸の衝撃に備えるため、シートベルトを握りしめた。
 
ちらりと横を見ると兄者が顔を引きつらせて肘掛けを掴んでいるのが見える。
 

(;´_ゝ`)「……!!」
 
(´<_`;)「……!!」


離陸は意外とあっけない物だったが、上昇する際のGが凄い勢いで体に襲いかかる。
背もたれに押し付けられている時にきょろきょろと周りの様子を見てみたが、
サラリーマンも小学生くらいの少年も田舎に帰ると思われる家族も、皆平然とした顔をしていた。

兄者もそうだが、あれだけうろたえていたのは自分達だけだったようで、とても恥ずかしくなってくる。


(´<_`;)「兄者よ…こんなに狼狽しているのはもしかしたら俺たちだけかもしれん」

(;´_ゝ`)「もしかしてもなにも多分俺たちだけだと思うぞ」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:37:45.83 ID:yJ+bSG6X0
(;´_ゝ`)「やっとGが弱くなって来たか…… おっ」
 
( ´_ゝ`)「弟者外を見てみろ。空港と海が見えるぞ」

(´<_` )「おぉ…東京が煌めいてるな」


兄者に勧められて、窓の外を見る。

旋回した飛行機の窓から見える大都市東京はあっと言う間に、
白い雲の下にその大きなビル群と、コンテナを積んだ船達を巻き込みながら飲み込まれて行った。

海の汚染だとか大気汚染だとかで騒がれてはいるが、
神のような目線で見る東京は、それはそれは美しかった。


雲の中に入ってしばらくすると、夏の強烈な太陽しか見えない雲の海の上に出て、
ぽーんという音と共にベルト着用サインが消え、スッチーや、トイレに向かう人などが歩き始めた。



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:38:23.08 ID:yJ+bSG6X0
( ´_ゝ`)「やっと安定飛行に入ったようだな」

(´<_` )「な。落ち着いた所でどうするかな……l podも駄目なのかな」

( ´_ゝ`)「電子機器は全部NGだ。俺が許さん」

(´<_` )「大丈夫。俺もびびりだから使う気になれん」


離陸の衝撃に耐える事も終わり、やる事が無くなった俺たちは席周辺を漁る事にした。
携帯機器や電子機器が、飛行機にどのような影響を及ぼすかもわからないので、うかつな事は出来ないのだ。
そのために、この周辺機器が触っても平気な物か調べておく必要がある。と思う

バス、タクシー、電車、新幹線は乗った事がある俺たちだが、
飛行機の中というのは初めてで緊張する。

なるべく変な物を触らないように、肘掛けのボタン等を見てこれを何に使うのかあーだこーだと推理していた。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:38:54.94 ID:yJ+bSG6X0
( ´_ゝ`)「こちら兄者。座席前のポケットに、ゲロ袋と空の帝国と脱出の手引きとヘッドホンを発見」

(´<_` )「こちら弟者。肘掛けに吸い殻入れと謎の穴と変なボタンを大量に発見」

( ´_ゝ`)「……肘掛けにも……穴はあるんだよな……」

(´<_` )「気持ち悪いぞ兄者」

( ´_ゝ`)「ちゃんとこのヘッドホン消毒してあんのか?」

(´<_` )「袋詰めしてあるんだから消毒くらいしてあんだろ」

(´<_` )「この電球ボタンは上のライト、三角のボタンは音量といったところか」

( ´_ゝ`)「この、人の絵のボタンは?」

(´<_`;)「むやみやたらと押そうとするな!」



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:39:59.70 ID:yJ+bSG6X0
しばらく人の絵以外のボタンをいじくり回し、ボタンの使い方をマスターした俺達。
兄者が怪しいコメントを残した肘掛けの穴は、ただのヘッドホンを入れる穴だった。


l podを自主的に封印した俺らはやる事も無いため、
AMAの御好意に甘えてヘッドホンで音楽を聴かせてもらう事にする。

兄者はヘッドホンをつけた後、アニメソング垂れ流し局を発見したと喜んでいた。
俺もヘッドホンをつけて、あのボタンをカチカチと連打してなにかいい局はないかと探す。

結局、ジャズが流れているところで止め、聞き入る事にした。


そこにスッチーが台車のような物を引いて声をかけて来た。
上には様々な飲み物のパックが置いてある。
どうやらジュースをただで飲ませてくれるらしい。
流石スッチー。いや、飛行機だしあたりまえなのか

廊下側にいた俺はヘッドホンを耳から外して一時的に首にかけ、スッチーが何を言ったのか聞こうとした。

髪を後ろで団子状に束ねた、清潔感溢れる格好だ。
どこかで、スッチーは美しくないとなれない職業だと聞いた。

その美しきスッチーは、俺たちに優しく微笑みながら注文を聞いてくる。



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 04:00:05.40 ID:yJ+bSG6X0
∂("・ー・)「お飲物はいかがでしょうか?」

(´<_` )「あ、何がありますか?」

(●´_ゝ`)「なんだ?なんて言った?」

(´<_` )「まずはヘッドホンを外せ。話はそれからだ」

(;´_ゝ`)「aーfood? fish!ok?」

(´<_`;)「兄者落ち着け!機内食を聞かれたんじゃない!」


∂(";・ー・)「あの…リンゴジュースとホットコーヒーとQOO白葡萄味とウーロン茶がありますが」

(´<_` )「じゃあブラックのホットコーヒー二つで」

∂("・ー・)「では、前の座席に備え付けてある机を手前に引き出して下さいね」


今言われて気がついた。修学旅行で乗る巨大バスについてあるような机が、前の席にへばりついていた。
俺は恥ずかしさと、今まで目の前にありながらも気づかなかった俺の馬鹿さ加減から
頬を赤くしてにへにへしながら机を引き出す。

横で兄者が俺をにたにたと笑いながら見ているのが見えた。
兄者だって気づいていなかったじゃないか。

憎ったらしい含み笑いをしながら、兄者は俺をちゃかしてくる。これは日頃の仕返しなのだろうか?



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 04:01:27.97 ID:yJ+bSG6X0
プ( ´,_ゝ`)「机引き出し忘れるとか」

(´<_` )「兄者だって出してなかったじゃないか」

( ´,_ゝ`)「俺はあえて出してなかっただけだモーン」

(´<_`#)(すげぇむかつく)


しばらく二人してコーヒーを飲んでいたのだが、
ふいに聞こえてくる音がくぐもっているのに気がついた。 

自分の発する声もどことなくおかしい気がする。
耳の確認のために、声を出していた時だ。


?(´<_`∩)「あ〜あ〜 あぁ〜?ぅえあ〜」

(*´,_ゝ`)「どうした弟者。気が狂うたか」

(´<_` )「気が狂うてなどおらぬ!……耳が変だ」

(*´,_ゝ`)「弟者がwww乗り突っ込みとかwww乗り突っ込みとかwww」



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 04:03:03.50 ID:yJ+bSG6X0
(´∩_` )「…まぁ、鼻を押さえて『ぷんっ』ってやれば済む話なんだけどな」

(*´,_ゝ`)「『ぷんっ』だってwww『ぷんっ』www普通に耳抜きでいいだろうがwww幼児か貴様www」

(´<_` )「…名前思い出せなかったんだよ。…兄者、コーヒー全部飲んだだろ」

(*´,_ゝ`)「飲んだよwwwもちろんwwwニガーwww不謹慎www」


兄者は、コーヒーを飲むとえらいハイテンションになる。
小さなコップ一杯分なら大丈夫だろうというのと、別々に注文するのが面倒だったから
兄者もコーヒーにしたのだが、どうやら間違っていたらしい。やたら巧妙なジョークを飛ばし始めた。

俺の判断が間違っていたせいだが、しばらくうるさいためほうっておく事にした。



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 04:03:46.89 ID:yJ+bSG6X0
コーヒーを飲みながら空の帝国を読んでいたら、突然シートベルト着用サインが点灯した。
何事かと思い、兄者と顔を見合わせる。
当たり前だが兄者も何がおきたか理解していないようだ。
しかもこの慣れない事態に兄者のハイテンションも急激にダウンしたらしい。顔が青ざめている。

俺としてはしばらくハイ兄者と一緒にいる事が無くなり、少し嬉しい。

二人でびくびくしていると、アナウンスが入った。どうやら噂の乱気流地帯に入ったらしく、
これから揺れる事があると言う。正直言ってかなり怖い。
身構えようとすると、いきなり飛行機全体が揺れた。尻が軽く宙に浮く。


(´<_`;)「ひぃぃぃぃぃ」

(;´_ゝ`)「あばばばばば」



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 04:04:40.39 ID:yJ+bSG6X0
外の様子を見てみると、飛行機はどす黒い雲の中をつっきっているようだった。

窓には真横に水滴が幾度となく流れて行く。
前から後ろに高速で進む暗雲は、時折腹から雷を出している。
しかも俺たちの席から見える飛行機の羽の表面がばたばたと浮き上がり、吹き飛びそうになっているのが見えた。


(´<_`;)「兄者! 羽が! 飛行機の羽が!」

(;´_ゝ`)「話しかけるな!」


兄者の一喝に驚き、身を縮こまらせる。
兄者は背中を丸めて、熱心に何かをやっていた。

『母者父者弟者と共に先立つ不幸をお許し下さい妹者へ俺と弟者がいなくなっても健やかに明るくのびのびとした子にそだっt』

兄者がリュックからいつのまにか取り出したノートに、走り書きで遺書を残そうとしていた。
死ぬ程怖いが、死にたくはない。兄者のやっている事は恐怖を煽り、自ら死に近づこうとしている気がした。


(´<_`;)「こんな時に縁起でもない事しないでくれよ!」

(;´_ゝ`)「本格的に命が危ない時に遺書を残すのは本能だ!」



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 04:07:06.53 ID:yJ+bSG6X0
兄者が俺の言う事を無視して遺書を書き続けていると、
また飛行機が揺れてその拍子にペンを落としてしまった。

がこんがこんと洒落にならない揺れ方をする飛行機。
頭を抱える俺。遺書を書く事を諦め救命胴衣を探す兄者。

自分で言うのもなんだが、ちょっとしたカオスだ。


(´<_`;)「ひぃぃぃぃい………ん?」

(;´_ゝ`)「胴衣!胴衣が見つからない!」

(´<_`;)「…兄者もけつち!外をよく見てみろ!」

(;´_ゝ`)「お前が落ち着け」

(´<_`;)「暗雲を抜けたみたいだぞ」



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 04:07:54.80 ID:yJ+bSG6X0
さっきまでラピュタのあの乱気流の中のようになっていた外が、
いつの間にか爽やかな快晴の空へと戻っていた。まるで何事も無かったかのように。
唯一さっきのなごりを残させる物と言えば、窓に数粒残っている水滴だけだ。

横を見ると、兄者がまだ席の下にかがみ込んで何かをやっている。気持ち悪くなったのだろうか?


(´<_` )「兄者。もう乱気流は抜けたぞ。そんな体勢のままでいると流石に酔う」

(;´_ゝ`)「いや、さっき落としたペンを探してるんだ」

(´<_` )「そんなに大事な物だったのか?」
 
( ´_ゝ`)「別にそんな大事って訳でもないが…」


シャーペンを探し、兄者が座席周辺をごそごそと漁っていた時だ。
後ろの席に座っていた人が、通路側からにゅっと腕を伸ばして兄者のシャーペンを差し出して来た。

地毛なのに明るめの茶色、適度に日焼けをして健康的な肌。俺たちよりも幼く見える人だった。
その人は、窓の外の空のように、爽やかな笑顔とともにこちらに会釈する。



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 04:08:59.39 ID:yJ+bSG6X0
ノパ听)「あの、これ落としましたよ!」

( ´_ゝ`)「あ、あぁ。有り難う御座います」

(´<_` )「すいません。さっき騒がしくしちゃって。うるさかったでしょう」

ノパ听)「そんな事無いです!それよりも大丈夫ですか?怪我とか!」

( ´_ゝ`)「いえいえ、こっちは大丈夫です。あなたは?」

ノパ听)「もう何度も飛行機に乗った事あるんで、慣れちゃいましたよ!ああいうのはしょっちゅうありますし!」

(´<_`;)「しょっちゅうあるんですか……」

ノパ听)「この時期は台風とか多いですしね!それよりあなた達は…飛行機初めてなんですか?」

(´<_` )「えぇ。恥ずかしながら、初めてなんです」

( ´_ゝ`)「なんかエロス」

(´<_` )「黙れ」



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 04:10:32.77 ID:yJ+bSG6X0
ノパ听)「初めての飛行機であんな目にあったら、トラウマになりますよね! それにしても似てますね! 双子さん?」

( ´_ゝ`)「あ、はい。双子なんです。俺が兄で、こいつが弟。兄者と弟者って言います」

(´<_` )(さりげなく名前を紹介するとは、流石だな兄者よ)

ノパ听)「へぇ〜っ! 私も姉がいるんです! 私はヒート! よろしく!」

( ´_ゝ`)⊃◦「そうだ。シャーペンを拾ってもらったんだからお礼あげます。はいメントス」

ノハ* ゚听)「うわっ! ありがとうございます! 私メントス好きなんです!」


ノパ听)「それよりあなた達はどこに行くんですか? 私は秋田なんです!」

(´<_` )「やっぱりっていうか……この飛行機に乗ってるから秋田に行くしかないかと……」

ノハ* ゚听)「あれ? あぁ! そうですよね! この飛行機秋田行きですもんね!」

(*´_ゝ`)(可愛い人だなぁ)

ノパ听)「でも私の行く所は、秋田というより、ちょっと青森に入っちゃってるんですけどね!」

ノパ听)「石舘ってとこの海岸沿いの海の家に、夏休みだから遊びに来くんです!」

ノパ听)「機会があれば是非遊びに来て下さいね!」



88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 04:11:05.02 ID:yJ+bSG6X0
はきはきと元気よく喋るこの人は、ヒートと名乗った。
名の通り、色々と情熱的そうな人だ。

兄者から貰ったメントスを頬の中で転がしながら喋るヒートさんは余計幼く見える。だが可愛らしい。
だがそんなヒートさんは、俺らと同い年の17歳。
夏休みを利用してお母さんとお姉さんの住む田舎に帰ってきたそうだ。
普段は東京の寮がある女子校に住んでおり、水泳部らしい。通りで日焼けをしている訳だ。

ちなみにここまで情報を引き出したのは兄者。こういう事は得意らしい。流石だな。
健康的なヒートさんを見ていると、室内でうごめいてばかりの、俺ら二人のなまっちろい体が情けなくなってくる。


そうこうしている内に飛行機は着陸し、大慌て田代空港へと降り立った。気温31度、快晴。
着陸についての感想は割愛しておく。俺の脳味噌に誰かがそう語りかけて来たから。
ヒートさんは一人でいたので、少ない荷物を手際よくまとめると、
俺らに一声かけた後先に降りていってしまった。


ノパ听)「ではっ、またどこかで会うまでお元気で!」


…最後まで爽やかな人だ。

俺たちは、降りようと好き勝手に動く人々の流れに乗るが面倒だったため、人の波が引くまで席で待機していた。
今さっきまで一緒に話していたヒートさんを思い浮かべ、俺は感慨深げに呟く。



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 04:11:55.74 ID:yJ+bSG6X0
(´<_` )「ヒートさんかぁ…これも一期一会ってやつかな」

( ´_ゝ`)「なぁ弟者」

(´<_` )「なんだ兄者」

( ´_ゝ`)「もしかして今俺フラグ立ってる?」

(´<_` )「知らん」





おわり



戻る次の話