( ´_ゝ`) (´<_` )兄弟はぐだぐだとゆくようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:19:23.00 ID:RcI35+5/0



くさいよねー のようです



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:21:15.55 ID:RcI35+5/0
('A`)「…いや…ホント助かった…ありがとうございます」

∬´_ゝ`)「あ、復活しましたか?じゃああなた臭いんでお風呂入って来て下さい」

('A`)「あ、了解っす」


そういうと男はフケやらなんやらよくわからないものをぽろぽろと落としながら洗面所へ向かって行った。
姉者がしかめ面をしながらコロコロで後を追いかけていく。少し綺麗好きすぎる気もする。
場には、男が背負っていたぼろぼろのリュックと悪臭だけが残された。
原宿駅の前とかで嗅いだ事があるような臭いが漂っている。口から嗚咽が漏れそうだ。

俺は近くに置いてあったハブリーズを撒きながら、シュールさんに言われた事を話す。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:24:12.25 ID:RcI35+5/0
( ´_ゝ`)「それにしても、今時行き倒れなんて珍しいよな」

(´<_` )「夏休みだし旅にでようとかおもったんじゃないか?」

(´<_` )「それにな、さっきシュールさんに言われたんだ。『待ち人来る』って」

(´<_` )「だからあの貧相な男が、キーマンなのかもしれん」

( ´_ゝ`)「キーマンって……ツチノコ探しのか? いきなりあいつにツチノコの事聞くのか?」

(´<_` )「情報収集は大事だぞ兄者。それとも聞くのが嫌なのか?」

( ´_ゝ`)「だって……目的は1億円だろ?あんまり色んな人に言って回ると見つけた時の俺の分け前が減るだろ」

(´<_` )(せっこい男だな……」

(;´_ゝ`)「考え漏れてるぞ」

( ´_ゝ`)「まぁいいや、義兄さんに言うくらいならまだいいが、
      俺としては見知らぬ人間にこのツチノコ計画の事は言いたくない訳だよ」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:26:18.64 ID:RcI35+5/0
(´<_` )「なぁ兄者。これから金持ちになろうという人間が、そんなちっちゃい考えでいいと思ってるのか?」

(´<_` )「心の広い人間というのは、金があるとともに人脈や信用のある人間というもの」

(´<_` )「人を支え、支えられ、お互い協力した方が目標を達成するのも早くなるというものじゃないか?」

( ´_ゝ`)「……確かにそうだ。確かにそうだな!!」

(*´_ゝ`)「よし!ならば姉者にも隠し通して来たが、告白しようではないか!」


どうやら俺が言うまで、兄者は最後までツチノコ計画を最低限の身内以外には秘密にするつもりだったらしい。
一億円を、できれば全部手に入れたいと言う兄者は強欲だ。
兄者のツチノコ探索の目的は主に一億のためだが、ツチノコを探す人間が全部一億目的でもないと思うし、
そこまで過剰に周囲に隠さなくてもいいと思う訳で。


それにあの母者並みに勘の鋭い姉者なんかにいつまでも隠し通せる訳が無い。
早いうちに計画を明かし、姉者にも協力してもらうのが吉ってものだ。
そういう類いの事を話したら納得してくれたようで、頬を赤くしながらやる気をだしてくれた。

兄者は心が狭くて軟弱で単純で包茎でどうしようもない男だが、やる時はやる男なのである。


そのとき、玄関先でインターホンの音が鳴るのが聞こえた。
姉者が玄関先に出て行くのが、廊下を歩く音でわかる。
しばらくの会話の後、お世話様ー と声が聞こえて来て、
それから数分後、宅配のトラックが走って行く音と共に姉者の声がリビングに響いた。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:28:41.50 ID:RcI35+5/0
∬´_ゝ`)「ちょっとあんたたちー! あの荷物なに?」

(;´_ゝ`)「な……なにと言われましても」

∬´_ゝ`)「テントとか捕虫網とか、その他分けわかんないもの。あれ何に使うのよ?」

(´<_`;)「あれは……(ほら、兄者言えよ)

(;´_ゝ`)「……俺たち、今回秋田に来たのは姉者の家に来るためじゃなくて…」

(;´_ゝ`)「実は、ツチノコを捕まえにきたんだ」

∬;´_ゝ`)「ツチノコぉ!? なに考えてるのあんた達! 弟者まで揃って! 馬鹿じゃないの!?」

(´<_`;)「俺も最初は、兄者のよくある馬鹿な考えだと思ってたんだ」

(´<_`;)「でも今回は本気らしくて……兄者がパソコン以外の物に熱中するのって、滅多にないだろ?」

(´<_`;)「しかも今回は、アニメとかゲームじゃない。インドアじゃなく、アウトドアな事に熱中してるんだぞ!」

∬;´_ゝ`)「確かに……兄者がそんな物とはいえ意欲的に取り組むなんて……」

∬;´_ゝ`)「お赤飯炊くレベル並みにおめでたい事ね!」

( ´_ゝ`)「俺の扱いの酷さがよくわかったよ」



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:31:19.36 ID:RcI35+5/0
少し動揺しているのか、しばらく目をつむって黙った後、頭の整理が終わったらしい。
怪訝な表情を浮かべている姉者は、そのまま質問を繰り返して来た。


∬;´_ゝ`)「ま、まぁいいんだけど。それで、ツチノコを探すにあたって生息地とかの目星はついてるの?」

(´<_`;)「……いや、とりあえず山が多いとこにいると思って、寝床のあてがあった秋田に来ただけで…」

∬´_ゝ`)「ほんっっとに無計画ね」

( ´_ゝ`)「いやいや、でも俺たちはこの二日で確実にツチノコに近づいているはずだぞ?」

( ´_ゝ`)「義兄さんの弟さんの秘密のノートも手に入れたし、あのドクオって人がキーマンらしいし」

∬´_ゝ`)「キーマン?なんでそんな事わかるのよ」

(´<_` )「海から帰る時に、シュールさんが言ってたんだ」

∬´_ゝ`)「……あの子の言う事なら信じるしか無いわね」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:32:43.55 ID:RcI35+5/0
姉者にツチノコ探索計画を一応納得して貰った時、ちょうどドクオさんが風呂から出て来た。
さっき見た顔は死人に近い状態だったが、随分と血色が良くなっている。
だが貧相な顔はあの状況下でなってしまった物ではなく、元から頬が痩けて唇が薄い人のようだ。

失礼だが、笑顔が気持悪い。


(*'∀`)「いや〜 お風呂入らせてもらいました。ありがとうございます」

∬´_ゝ`)「随分血色がよくなりましたね」

(*'∀`)「ほんとに……あのままあそこで倒れてたら了年17歳で死ぬ事に……」

(´<_` )「あ、同い年だ」

('A`)「えっ? あんた達二十歳以上じゃないの?背でかいし」

( ´_ゝ`)「俺たちは正真正銘高校二年生さ」

('A`)「へぇ……同い年なんだ。……俺の事は呼び捨てにしてくれて構わねぇ。あんた達は?」

(´<_` )「俺は弟者、そっちの同じ顔が兄者、ゆるふわカールが姉者だ。よろしく」

( ´_ゝ`)=3「じゃあドクオ、お前はなんであんな所で倒れてたんだ?」

(´<_` )(同い年の、それも男となると途端に態度がでかくなるな)



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:34:49.75 ID:RcI35+5/0
姉者が用意したのか、女物の水色のTシャツを着て半ズボンを履いたドクオ。
ドクオは小柄な体系なので、女としてはでかめの姉者のTシャツでぴったりのようだ。
少し変態チックな格好だが、そのままさっきのタオルの場所にあぐらをかいて座り込み、

なぜあんな所で倒れていたかを語ってくれた。しんどそうに


('A`)「……夏休みだからさ、この貧相な体格の改善と、面倒臭がりなのを直そうと思って旅に出たんだ。
  移動は主にヒッチハイク、公共の乗り物は使わない、とか、色々決まり事をしてね」

('A`)「秋田市から旅立って、目的地決めて、地図持って出発したんだけど……道に迷って。
   道路にかならず車が通ってる訳じゃないしさ。バイク持ってる訳でもないし、
   それに俺方向音痴で……岩手寄りにいると思ったら青森にいたりするし……」

('A`)「県道を歩いてると思ったら田んぼのど真ん中で、気づいたら山道にいて、そこから山の中へ。
   それで山の中歩いてて食料も尽きて、車の音と海が光るのが見えたからやっとの思いで道路に出て…」

('A`)「あそこであんた達に会わなければ、俺は確実に死んでいた」

∬´_ゝ`)「あんた達も見習いなさいよ。こんなに若さ溢れてるドクオ君を見て何も思わないの?」

( ´_ゝ`)「何も。というか話長過ぎ三行で」

(´<_` )「もう心底どうしようもないな」



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:36:57.64 ID:RcI35+5/0
ドクオは喋り終え、一息つくとおでこを床にすりつけんばかりの勢いで土下座をして来た。
いきなり何事かと思ったら、助けてもらったお礼というか感謝の気持からの土下座だったようだ。
一瞬、俺の方が逆に何かしてしまったような気になってしまった。

こうやってお礼をする辺り、見た目は貧相だがなかなか義理堅い男らしい。兄者に見習ってもらいたい。


('A`)「まだ礼を言ってなかった。……あんた達は命の恩人だ。本当にありがとう」

(´<_`;)「そんな大げさな……顔を上げてくれよ。俺の方がきまずい」

( ´_ゝ`)「……そうだドクオ、ちょっと聞きたい事があるんだが、いいか?」

('A`)「俺に答えられる事ならなんでも言うぜ。正直面倒だが」

( ´_ゝ`)「じゃあ、ツ(;`・ω・´)「オウフっ!」

Σ(´<_`;)「!?」


奇怪な叫び声が聞こえたのでそちらの方向を振り返ると、買い物袋を両手に下げた義兄さんがいた。
なんだかもの凄く驚いているらしい。目を見開きこちらをじっと見ている。

今までにあんなに驚愕した義兄さんの顔を見た事が無いので、酷く不安な気持に襲われる。
こちらも思わず、廊下で立ち惚けている義兄さんを見つめ返してしまった。
義兄さんはしばらくじっとこちらを見て来た後、ふぅとため息をついて袋を廊下に降ろした。

一体何をそんなに驚く事があったのだろうか。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:39:05.25 ID:RcI35+5/0
∬´_ゝ`)「いつの間に帰って来たの?」

(´<_`;)「義兄さんどうしたんですか?」

('A`)「あ……お邪魔させてもらってます」

(;`・ω・´)「いや、失礼。人間か」

(;´_ゝ`)「義兄さんがあんな声を出すなんて……」

(;`・ω・´)「君たちがこんな時間に帰って来てるのにもびっくりしたけど」

(;`・ω・´)「そこの人が、海からついて来たお化けのように見えて……」

('A`)「ウツダシノウ」

(;`・ω・´)「ところで君は…?」

('A`)「俺、ドクオって言います。高二です。短期限定で旅に出てます」

(`・ω・´)「旅? 若いねぇ……僕も短期間ならした事があるよ」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:41:40.60 ID:RcI35+5/0
ちらりとこちらを見ながら言われた気がする。
ドクオとは随分話していたようで、気がつけばもう3時を過ぎていた。
だから買い出しの義兄さんも帰って来たのか。

俺たちはなぜドクオと出会ったのか義兄さんに話をする。義兄さんは心底哀れんだ顔をして聞いていた。
その後、義兄さんは最初気まずそうにドクオと話していたが、打ち解けて来たらしい。
俺たちそっちのけで、楽しそうに話す兄さん。ああいう物静かなおとなしい所で波長があったとか?

特に山の中でホモの青姦を見てしまった所には心底同情していた。なにか嫌な思い出でもあるのだろうか。
昔は義兄さんも、バイクに乗って東北を走り回った事があるらしい。
落ち着いているように見えて中々アクティブな人だと思う。釣りとかもするしね。

そのままドクオのどこをどう気に入ったのか知らないが、上機嫌になった義兄さんは俺たちに提案をした。


(`・ω・´)「なかなか礼儀のある若者だ。いやいや、兄者君達が駄目だと言っている訳じゃないよ」

('A`)「恐縮っす」

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"

(;´_ゝ`)「なんだっ! 何の音だ!」

(´<_`;)「新手のスタンド攻撃かっ!」

('A`)「あ、俺の腹の音だ」

∬´_ゝ`)「そういえばおにぎり一個しかあげなかったわね」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:44:20.63 ID:RcI35+5/0
(`・ω・´)「なんだい、空腹で倒れていた人間に握り飯しかあげてないのかい」

(`・ω・´)「じゃあこれから店を開きに行くんだけど、そこでみんなでご飯を食べないかい?」

(`・ω・´)「今日の朝釣った小魚も店で出す事にして、平日のまっただ中だから客も少なそうだし」

('A`)「俺……お金使いきってから随分立つんで引き出してこないと……」

(`・ω・´)「お金なんていらないよ。僕が君にもてなしたいだけなんだから、遠慮無く食べて行きたまえ」

('A`)「でも……悪いっすよ。今日あったばかりの人にいきなり御馳走してもらうなんて」

(`・ω・´)「若いんだから、しこたま食べないと生きて行けないぞ。もう聞き耳は持たないからね」


話はあれよあれよと言う間に進んで行き、あっという間に今日の夜ご飯は義兄さんのお店で食べる事に決まった。
ドクオは遠慮しまくっていたが、あの後にやにやしていた所をみるとやっぱり嬉しいらしい。素直じゃないな

義兄さんは行動が早い人なので、話が決まると台所に小魚を取りに行った。
もう早速お店に行くようなので、俺も慌てて家の戸締まりをする。

扇風機を消したり、窓の鍵を閉めたり……そうだ、ドクオがキーマンだと言うなら、
あの×へびのノートを見せたら何か情報が得られるかもしれない。一応あれも持って行こう。

そう思いたち二階へ行くと、なぜか後ろから兄者もついてきた。
なんだかにたにたしているが、何を考えているんだ兄者は



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:47:37.21 ID:RcI35+5/0
( ´_ゝ`)「どこいくんだ」

(´<_` )「兄者こそなんだ」

( ´_ゝ`)「姉者にドクオに着せる服を持ってこいと言われた」

(´<_` )「……あぁ。そういえば女物の服着たまんまだったな。多少でかくてもあの格好よりかはましだろう」

( ´_ゝ`)「で、俺は別にいいが弟者よ。抜くのならこんな慌ただしい時じゃなくてもよいではないか」

( ´_ゝ`)+「こっそり行ったつもりだろうが、俺の目は誤摩化せないぞ」

(´<_`#)「心外だ。俺は兄者と違ってそこまで性欲に溺れていない」

(´<_` )「あれだよ、×へびノートをドクオに見せてみたら何かわかるかと思って」



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:50:06.16 ID:RcI35+5/0
Σ( ´_ゝ`)「……おぉ! おぉおぉ! 完璧に忘れてた!」

(´<_` )「朝釣りに行くとき、寝てた兄者に代わって義兄さんから貸し出し許可をとっといた」

(´<_` )「破ったりしなければ、持ち出すくらいはしてもいいだろ」

( ´_ゝ`)「……ツチノコ探索計画、軌道に乗ってきました」

(´<_` )「なんだか俺ばかり頑張ってる気がするんだが」

( ´_ゝ`)「なぁに、元はと言えば俺がこんなこと思いつかなければ秋田にも来れなかった訳で」

( ´_ゝ`)=3「感謝しろよ、弟者」

(´<_`#)「…何かが違うぞ!」



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:52:49.17 ID:RcI35+5/0
……本当に、飛行機といいノートの件といい俺ばかりが頑張っている気がして来た。
しかも海で溺れるなんて……今年のおみくじの旅行運は低かったっけ?

なんだかんだと言いながら、例のノートと持って階下へ降りて行く。
表紙のヘビは昨日の夜と同じ姿のまま、俺の方向を睨んで来た。ただの絵のくせに威圧感を感じる。
これの持ち主の強い思いが宿ってるとか? ……自分で考えといて嫌な気持になった。

やっぱりオカルトは嫌いだ。


その他、特に荷物もないので早々と車に乗り込んで出発した。
時刻は4時前。まだまだ太陽が活発に働いている時刻だ。

ナツアカネがすいすいと飛ぶ住宅街を抜け、陽炎と熱気が立ちこめる大通りへ。
ちなみに、後部座席に俺たちとドクオが詰め込まれているため大変狭い&暑い。

冷房がついているといっても、お互いの肌から分泌される汗がぺたぺたとくっつくため大変不快だ。


座席(四人乗り用軽自動車YOYOTA)

(;´_ゝ`)(;´_>`)(;'A`)(義兄さんの荷物)

(`・ω・´)∬´_ゝ`)



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:55:56.13 ID:RcI35+5/0
(;´_ゝ`)「弟者、もっとそっち行けよ」

(´<_`;)「ドクオ、もっとそっち行けよ」

(;'A`)「荷物ある、もうこっち行けない」


(`・ω・´)「そんな遠い所じゃないからしばらく我慢しててくれ」

∬´_ゝ`)「お店で食べられる物がただで食べれるなら、ぎゅうぎゅう詰めくらい安いものよね?」

(;'A`)「俺は全然大丈夫ですよ。はい」

(;´_ゝ`)「でもこんな狭いと冷房の風もすぐ温くなっちゃうし……」

(´<_`;)「窓開けても外が暑いから意味ないし……」

(`・ω・´)「すぐ汗をかくのは、きっと新陳代謝がいいからだよ。若いってのはいいねぇ」

(;'A`)「汗っかきなのに夏でも皮膚がかさかさな俺は……」

(`・ω・´)「ドンマイ」

('A`)「ウツダシノウ」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 02:58:52.27 ID:RcI35+5/0
朝通った山や海の方向には行かず、車は市内の方を目指しているらしかった。
歩道にも人が多く活気に溢れている。車はジャスコを通り過ぎ、大きな商店街へ入って行った。

シャッターが閉まっている店もあるが、夜ご飯の買い物客なのか、食料品の店は繁盛しているようだ。
所々、街頭と街頭の間にちょうちんがぶら下がっているのが見えた。
聞いた事も無い株式会社の名前をつけた提灯は、ぬるい風に包まれてふらふらと宙に躍っている。

昨日祭りがあったとか? 今度祭りがあるとか? 
閉じられた夜店を眺めながら、車は商店街を奥へと進む。

自転車やキャリーケースを引くご年配をよけて、脇道へ入る。一気に古くさい住宅街へ出た。
そのまま住宅街の隙間にある駐車場に入り、『場凡家』という看板が立っている場所へ止めた。


( ´_ゝ`)「げっきょくちゅうしゃじょう」

(´<_` )「つきぎめちゅうしゃじょう」

('A`)「げつごくちゅうしゃじょう」

∬´_ゝ`)「ばかばっかね。まともなのは一人だけとか……」

(*´_ゝ`)「俺だろ? 俺がその一人だろ?」

(`・ω・´)「あえて言わないのが大人のマナーさ」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:01:13.26 ID:RcI35+5/0
駐車場をぬけ、車の中から見た商店街へ出る。
俺の近所には商店街がない。なのでこんなテンプレートな姿をした商店街を見るのは、産まれて始めてだった。
ぬるい空気が流れていて、ここにも何か食べ物の匂いが充満している商店街。

近くの肉屋のコロッケの匂いとか、魚屋の生臭い匂いとか、
八百屋からただようあま〜い桃の匂いとか……やべぇ腹へって来た

そういえば海から帰って来て、結局昼飯を食べていなかったんだ。そりゃ腹も減る訳だ。
古いブチックや眼鏡屋を眺めながら歩いて行くと、いやに綺麗な洒落た店が見えた。
周りが古い老舗のような感じなので、あそこだけが異様に目立っている。

外観は、義兄さんをそのまま建物にしたような感じ…といってもよくわからないと思う。
焦げ茶色と白で構成されている店で、シンプルな木の看板には、『小料理・居酒屋 場凡家』と書いてあった。


(`・ω・´)「ほら、ついたよ」

( ´_ゝ`)「ばぼん……いえ?」

(`・ω・´)「読み方は特に決まってないんだ。各個人でお気に入りの名前を付けてもらいたくてね」

(´<_` )「こんな古くさい商店街にある割にかなり綺麗ですね」

(`・ω・´)「前に改築したんだよ。家と店のリフォームでもうあまり余裕は無いけどね」

(`・ω・´)「そんなとこで立ち止まってないで、入りたまえ」



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:03:54.91 ID:RcI35+5/0
そういうとショボンさんは閉まっていたシャッターを押しあげ、
引き戸の鍵を開けて俺たちを先に入れるように促してくれた。

新築の匂いが鼻を通り抜ける。木と、新しい家財道具のような匂い。こういう匂いは嫌いじゃない
ふと意識をカウンターに移せば、入り口から入る明かりで日本酒やホップーの瓶が怪しく輝いているのが見えた。

フワフワと漂うホコリの幕を抜け、店内に入る。後ろでぱちりと音がしたかと思うと、
カウンター上部の電球が優しい色と共に店内をぼんやりと照らす。
入ってみると、左側にカウンター、右側に座敷、それと奥にはカラオケマシンがあった。
カウンター奥の棚の上にテレビがあるので、あそこに歌詞でも表示されるのだろうか。

義兄さんは店内のホコリ達をしかめ面で睨むと、鼻の辺りをぱたぱたとやりながら入り口を全開にした。
冷えた洞窟内のようだった店内の空気が、あっという間に湿っぽい夏の香りのする空気と入れ替わる。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:05:57.78 ID:RcI35+5/0
(`・ω・´)「う〜ん 昨日開けなかったから少しほこりっぽいね」

(`・ω・´)「ちょっと換気でもした方がいいかな」

(´<_` )( ´_ゝ`)('A`) ┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"

∬´_ゝ`)「あー そういえばあんた達お昼ご飯食べてないんだっけ」

∬´_ゝ`)「ほら、500円あげるからそこのお肉屋でコロッケでも買って来なさいよ」

('A`)「え……俺もあんた達の中に入ってるんですか?」

∬´_ゝ`)「入ってるに決まってるじゃないドクオ君」

('∀`)



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:09:01.62 ID:RcI35+5/0
肉屋は場凡家から3件程離れた場所にある。
コロッケの匂いが店の前まで漂って来ているので、それを鼻でたどりながら肉屋へ一直線。
夕方が近いとはいえ、まだまだ陽ざしがきついため、ひさしの奥の方を歩く。
夏の4時くらいって一番微妙な時間帯だよな、と兄者に同意を求めたら、
あーうんまー と曖昧な返事をされた。

肉屋にたどり着くとすでに先客がおり、店主と言い争っている真っ最中だった。
メタボな腹をぶるんぶるんさせながら怒鳴り散らしている客は、どうやらとんでもない内容で怒っているようだ。
言い争いの内容を少し後ろで盗み聞きする俺が言えた物ではないが、ああいう大人にはなりたくない。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:10:40.67 ID:RcI35+5/0


(#^ω^)「なんでメンチカツが売り切れてるんだお!!」

( #・□・)「知らないよ! 夕飯が近いんだから売り切れてたって仕方ないだろ!」

(# ・□・)「それに後数分もすれば追加が出来るってさっきから言ってるじゃないか!」

(#^ω^)「嫌だお! 今すぐ! メンチカツが! 食べたいんだおっ!」

(# ・□・)「ハムカツならあるからそれを食べればいいじゃないか!」

(#^ω^)ビキビキ「メンチじゃなきゃ駄目なんだお! メンチ!」

(# ・□・)「メンチ切ってんじゃねぇよやんのか!!」

(#^ω^)「てめぇ! 昔からの顔なじみだからここに来てやってんのに!」

(# ・□・)「うるせぇ! こっちはそこまで客に困ってねぇんだよ豚! 下ろすぞ! 串さして揚げるぞ!」

(#^ω^)「ブキィィィィ!!」



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:13:17.28 ID:RcI35+5/0
('A`)「俺……ああいう怒鳴り散らす大人って怖いから近づきたくないんだけど……」

(´<_` )「みっともない大人にはなりたくないもんだね」

( ´_ゝ`)「腹も出てるし、みっともないおやじ代表選手になれるな」


顔を赤くして腹をぶるんぶるんさせる、リンゴ体系のアメリカ人のような親父は、
しばらく遠巻きに見ていたら俺たちを通り過ぎてどこかへ行ってしまった。

そのまま見送る事も無く、とにかく腹を満たそうと思い肉屋へ近づく。
コロッケの匂いの終着地点。俺の鼻と腹も最高潮に達する。
今さっきまでとんでもなく不愉快そうな顔をしていた店主は、俺たちが来たのに気づくと

あっというまに客商売の笑顔になった。流石だな、店主。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:15:31.31 ID:RcI35+5/0
( ・□・)「はいいらっしゃい!」

( ´_ゝ`)「えーと……じゃあコロッケ……と」

( ・□・)「あ、今メンチカツが上がった所だよ!できたてだよ!」

('A`)ジュルリ

(´<_` )「……兄者」

( ´_ゝ`)「okok。あとメンチ下さい。コロッケ2つとメンチ3つね」

( ・□・)「はい、500円お預かりで……220円のおつりね! メンチ揚げたてだから気をつけてね!」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:17:34.09 ID:RcI35+5/0
小さな紙袋に入れてもらい、匂いほくほく、心ほくほくで店に帰る。
手の平大の小さな袋から伝わる熱は、気温のそれより遥かに熱いのだがなぜだか不快感は無い。
濃厚なソースがこぼれないように、角度を調整しながら歩く。

袋を傾ける度に、ソースと揚げ物の匂いが鼻を通り抜けてゆく。


(*´_ゝ`)「……ほっ……ふぁっ……うばっ」

(*'A`)「はうっ はうっ はうっ……うまー」


流石に歩きながら食べるのはいじ汚いので、俺は店まで我慢する。
くそっ、真横でそんなうまそうに食われたらもの凄い腹が減ってきて困るだろうが。
店に入り、そのままの勢いで紙袋の中身を出して口にほおばろうとした時だ。

……もの凄く熱い視線に気がついた。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:19:49.40 ID:RcI35+5/0
(*^ω^)

□(´<_`;)そ ビクッ

(*^ω^)

プイッ ミ( ´_>`)□

(#^ω^)

(;´_>`)□

(#^ω^)


□と(´<_`;)「……メンチカツ、いりますか?」

(*^ω^)「いやぁ悪いねにぃちゃん! 有り難く頂きますお!」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:22:28.38 ID:RcI35+5/0
なぜかは知らないが。さっきのメタボ親父がカウンターに座ってウーロンハイを飲んでいた。
アメリカンな体系、黄緑のポロシャツ、白い短パン、足にはビーサン。どう見てもさっきの親父だ。

俺は結局その親父の熱い視線に負け、メンチカツを手渡す事になってしまった。
メンチを吸収し損ねた腹が悲痛な叫びをあげているが、男は聞こえても尚無視するつもりなのか、
俺の前でとても嬉しそうにメンチカツを平らげた。食べるというより飲むに近かった。

メンチカツをばくしと食べて、ウーロンハイをごくりと飲み干し、ぶはぁと息を吐き出す親父。
俺のメンチカツはふぐりぐちというブラックホールに飲み込まれてゆきました。


(*^ω^)「おっおっおっ! ハイパー満足!」

(´<_` )┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"



(;´_ゝ`)「見ろよドクオ、弟者が滅多に無いような怒り方をしてるぞ!」

('A`)「あれ……怒ってるの?」

(;´_ゝ`)「あぁ。俺が弟者秘蔵のピリ辛味千本食べた時と同じ怒り方だ…」

('A`)「ピリ辛味千本……美味しいよね。怒るのもわかる気がするわ」



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:25:20.16 ID:RcI35+5/0
俺がメンチカツを食われた事に静かに怒っていると、ふいに声をかけられた。
どこから声をかけられたのかと、辺りを見渡すとまた声がする。義兄さんの声だ。
おしゃれ居酒屋によくある、白いYシャツに黒いエプロンをつけた義兄さんがカウンター内でコップを磨いていた。

横では姉者がつまみを作るのを手伝っている。
もう何度も手伝いをした事があるのか、なかなか様になっている手つきだ。
義兄さんは麒麟と書いてある小さなコップにお茶をこぽこぽと注ぎながら、俺たちにデブ親父を紹介してくれた。


(`・ω・´)「帰って来たのか。こちら内藤ホライゾンさん。僕の釣り仲間でもあり、中学時代からの旧友さ」

(´<_` )「こんにちは。僕弟者」

(;´_ゝ`)「俺は兄者っていいます。そっちのひょろちびがドクオです」

('A`)「なんで俺の紹介そんな淡白なの?」

( ^ω^)「よろしくだお! ……君ら、姉者さんと顔がそっくりだおね。兄弟?」

( ´_ゝ`)「はい、姉者とは兄弟で、そっちの弟者とは双子です」

( ^ω^)「双子なのかお! シャキンと同じだお!」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:27:03.37 ID:RcI35+5/0

(´<_` )「……え。シャキンさんの弟さんって、双子なんですか?」

(`・ω・´)「あれ、言ってなかったっけ。弟と僕は双子だよ」

( ^ω^)「ショボンかぁ……今じゃ音沙汰無し……どっかの山に籠ってるって言うけど……」

( ^ω^)「シャキンの結婚式にも来なかったし……本当に、どこいったんだお」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:31:17.78 ID:PwX5P/6BO
……この親父と義兄さんが同い年という事に驚きを隠せない。
少ししんみりとした空気になったが、内藤さんがまた空気を盛り上げたので、その話題はどこかに流れて行った。

内藤さんはショボンさん?の話題をすっと自然にどこかにやり、さっきの肉屋との言い争いの内容を
自分に有利に聞こえるように、べらべらとまくしたてていた。

内容がさっきの出来事から随分変えられている。
本当に、義兄さんの友人とは言えああいう大人にはなりたくない物だ。

内藤さんにメンチを取られ、シレンで言うと体力が減りながら歩いている状態だったが、
シャキンさんに即席ねこまんまを出してもらい、どうにか命をつなぐ事が出来た。満腹度上昇。
俺たちも内藤さんに並んでカウンター席に座らせてもらい、さっき注いでもらった創健美茶を一杯貰う。

もうすっかり冷房の効いた店内には、有線から流れる演歌と内藤さんの馬鹿笑い、
ドクオがじゅるじゅると創健美茶をすする音が響いている。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:33:17.13 ID:RcI35+5/0
( ^ω^)「おっおっおっ! それでブーソのやつがメンチを……」

(`・ω・´)「ブーソ、そんなに酷い事言ったのかい?」

( ^ω^)「客商売やってるんだから客の要望にはすぐ答えないといけないと思うお!」

∬´_ゝ`)「はい内藤さん、なめろうできたわよー」

( ^ω^)「おっ! 姉者ちゃんは本当に出来た奥さんだお!」

(`・ω・´)「あれ?いつもならその後に『シャキンじゃなくて僕の所に来ないかお?』が入るのに」

( ^ω^)「…おぉ! そうだ!今日は報告しに来たんだお!」


内藤さんは残っていたウーロンハイをぐびりと飲み干すと、にやにやと微笑みながら席を立ち上がった。
全身から喜びが満ちあふれているようなオーラが見える。

パンパカパーン! と自分で言いながら両手をあげると、嬉しそうに声を出した。
隣でちみちみ創健美茶を飲んでいた俺は吹き出しそうになり、ドクオは創健美茶を少しこぼした。
そんな俺たちの様子は目にも入っていないようで、

決して広いとは言えない店内にすみからすみまで行き渡る大声で、吠えた。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:34:28.15 ID:RcI35+5/0
( ^ω^)「内藤ホライゾン! 魔法使い間近! ついに結婚する事になりましたお!」

(`・ω・´)「おぉ! 君もついに結婚か……まさかこんなふくよかな男を貰ってくれる女がいたとは…」

(*^ω^)「褒めんなお! 照れるお! で、新居も出来たもんだから田舎のおっかさんを近いうちに迎えに行くんだお!」

(`・ω・´)「嫁さん、姑さんと同居する事嫌がらなかった?」

( ^ω^)「そこら辺は大丈夫だと思うお。それに家も中々広いからそれぞれのプライベートスペースもあるお」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:35:20.53 ID:PwX5P/6BO
報告を終え少し落ち着いた内藤さんは、改めてウーロンハイを頼むと席に着く。
シャキンさんはウーロンハイを用意しながらなぜかウイスキーの蓋も開けて、
内藤さんを何とも言えない表情で見つめている。
感慨深そうな表情というか、色んな思考が現れている感じ。


それにしても……こんな人が結婚出来るのならば、兄者が将来結婚する事も夢ではないかもしれない。
自分の事はほっぽり出して、そんな事を考える。ちらりと横を見てみると、
内藤さんがさっきだされたなめろうをしゃぶり箸をしながらべろべろと食べている所だった。

……本当に、こんな人を貰ってくれる人ってどんな人だろうか。好奇心が湧く。


意地汚いが、実にうまそうになめろうを味わう内藤さん。
さっき一杯ねこまんまを貰ったとはいえ、あんな風に食べられるとこっちまで食べたくなってくる。
それにしても、最初見た時は性格最悪メタボ男だと思っていたのだが、……あんな人でも結婚出来るんだなぁ。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:36:27.63 ID:RcI35+5/0
(`・ω・´)「それなら大丈夫かな。お母さんはまだ美府で一人で暮らしてるの?」

( ^ω^)「そうだお」

(`・ω・´)「そっか……大事にしなよ?お母さんもだけど、お嫁さんもね」

( ^ω^)「結婚式は、後1ヶ月位後にやるから楽しみに待っててくれお」

( ^ω^)「で、迎えに行く前に最後の親孝行って事で、数日美府に行ってくるつもりなんだお」

(`・ω・´)「へぇ……製材所は?」

( ^ω^)「1週間お休みもらったお!」

( ^ω^)「ここしばらく大きなお休みもらってなかったし……今回は結婚祝いだって言ってたお!」



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:38:34.33 ID:PwX5P/6BO
上機嫌で話す内藤さんと、淡々と返事を返すシャキンさん。
内容を聞くと、親孝行をしている辺りいい人のように聞こえる。
だが俺はまだメンチの恨みを忘れちゃいない。

……メンチの事を思い出すと、急に腹に虚無感が襲いかかって来た。
中途半端にねこまんまを食べたため、胃が刺激されて余計腹が減って来たらしい。

しみじみと話している二人の間に割り込むのは少し気が引けたが、
腹の虫が飯を追加要求しているので、仕方が無くシャキンさんに話しかける。


(´<_`;)「あの……すいませんが……そろそろ夜ご飯を…」

( ^ω^)「おっ! そういえばさっきのメンチすまんこ!」

(`・ω・´)「ブーンはね、腹が減ると凶暴になるんだ。あそこでメンチをあげてくれなければどうなっていたか…」

(#^ω^)「失礼な! 僕はいつでも紳士だお!」

('A`)「嘘だな」

( ´_ゝ`)「嘘だな」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:39:05.24 ID:RcI35+5/0
(`・ω・´)「内藤の結婚報告を聞いて、すっかり君たちの夜ご飯を忘れてたよ」

(`・ω・´)「もう出来てるから問題ないんだけどね。はいどうぞー」


そういうと義兄さんはカウンター奥から小皿を取り出す。
小皿に、フライパンや鍋からもりもりと具を乗せて行く。
今夜のディナーはニンニクの芽と牛肉の炒め物、夏仕様カレー、馬刺、朝釣った小魚をまるまる揚げたもの。などなど。
全体的に辛そうな物が多い。これなら発汗作用が120%フルで働きそうだ。

ついつい、これ全部でいくら分なんだろうと考えてしまう俺は、貧乏性だ。


( ´_ゝ`)「なんかやけにスタミナ抜群って感じですね」

(`・ω・´)「行き倒れのドクオ君もいる事だし、体力もつくからいいんじゃないかな?」

(`・ω・´)「たまたまこういうメニューだっただけなんだけどね。最近暑いからねぇ」

('∀`)「うわぁー 俺こんな豪華なご飯久しぶりっすー」

∬つ_ゝ`)「苦労してたのねぇ……」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:41:27.00 ID:PwX5P/6BO
∬´_ゝ`)「そう言えば、今日弟者が海で溺れたのよ」

(;`・ω・´)「何っそんな大変な事があったのかい」

(`・ω・´)「なら尚更体力をつけてもらわないとね。弟者君、馬刺なんてどうだい?」


義兄さんに勧められた、馬刺。
小皿に何切れか乗っている一枚を取ると、凍っているのか、固い感触が箸を通して伝わって来る。
赤身と脂身が半々くらいの割合でミックスされてる、ぎとりと光った怪しい魅力を振りまく肉。

ニンニク醤油にショウガのすり身を少々入れて、馬刺を半分程ひたして一口。
馬刺のこってりとした油の味を、ショウガとニンニクが打ち消すので余り気にならない。
食べ終わった後口が臭くなるという難点があるが、それさえ気にしなければ飽きるまで食べられる。

…それにしてもかなり美味しい。まだ少し凍っているうちに食べるのは、
肉がぎとぎとになって食べにくくならないようになんだとか。これなら何枚でもいける。


カレーには夏野菜がふんだんに使われており、溶けたトマト、なす、トウモロコシが入れられている。
なすなんか、結構珍しい具かもしれない。ちなみにジャガイモは男爵。

隠し味にはリンゴが入っているそうで、辛みの中にもマイルドな甘みを味わう事が出来る。
隠し味にリンゴなんて普通だけどね。と言って義兄さんは笑った。だがリンゴは青森のいい物を使用しているそうだ。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:42:47.22 ID:RcI35+5/0
('A`)「カレーうまー」

( ´_ゝ`)「魚フライうまー」

~(´<_` )~「馬刺うまー」

('∩`)

( ´_∩`)


~(´<_` )~「なんだ二人して」

('∩`)「……口がとんでもなく臭いです……」

( ´_∩`)「こっち向いて喋るな」

~(´<_` )~「……」



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:44:19.83 ID:PwX5P/6BO
(´<_`;)「まぁいいや、気を取り直して、ドクオに聞きたい事があるんだが」

('∩`)「なんれもろうぞ」

( ´_∩`)「おぉ、ついに聞くのかあの事を」

(´<_`;)「いつまで鼻を押さえてるんだ……俺だって傷つくんだぞ」

( ´_∩`)「だって弟者口臭いんだもん」

('∩`)「路地裏の親父のゲロ溜めの臭いがするんだもん」

(;<_; )



俺は泣いた。
馬刺をニンニク醤油で食べた20分前の自分を責めた。

そして俺は考える事をやめた……。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:45:08.22 ID:PwX5P/6BO
( <_  )

( ´_ゝ`)「あ、弟者が死んだ」

('A`)「さっき弟者は俺に何を聞こうとしてたんだ?」

( ´_ゝ`)「あぁ、あのな、ドクオってツチノコ見た事あるか?」

('A`)「あるよ」

( ´_ゝ`)「あっさりしてんなおい。俺としては手に汗握る重大発表なんだからもっとためてくれよ」

('A`)「でけでけでけでけでけでけでけでけ……でん!俺はツチノコを見た事があります!」

( ´_ゝ`)b+「流石だなドクオ」

('A`)「岩手寄りの方の山中で迷ってる時に見た」

( ´_ゝ`)「へぇー どんなだった?こんなだった?」

('A`)「何そのチンポ」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:45:44.05 ID:RcI35+5/0
いつまでも思考停止している訳にも行かないので、脳味噌を再起動させる。
ぼやけていた視界がはっきりしたとき、目の前には例の『ちんこにしか見えないツチノコの図』を
ドクオに向けて広げている兄者がいた。というかあれをずっと持ち歩いていたのだろうか。

上機嫌にあの絵をみせる兄者を後ろから見ていると
なんだか鳥居み○きを見ているようないたたまれない気持になったので、
素早く兄者の後ろから割り込み図を没収し、ドクオの目の前に×ヘビノートを突き出した。

兄者が文句を言いながら絵を取り返そうとして来るが気にしない。
ドクオは急に出された事に驚いているのか、目をまん丸くして表紙のヘビの絵を見ている。


('A`)「あ……これだよ俺が見たやつ」

('A`)「そこのチンポとは似ても似つかないこれ」

(#´_ゝ`)「なんだなんだドクオも弟者と同じような事いいやがって!」

(´<_` )「リアルはどんな感じだった」

('A`)「そこの表紙のは紺色っていうか黒っぽい色してるけど、」

('A`)「俺が見たのは茶褐色っぽかった」

(´<_` )「他には?」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:48:41.36 ID:PwX5P/6BO
('A`)「別に」

( ´_ゝ`)「掘るぞ」

(´<_`;)「ちょっと考えないと関連性のわからない事言わないでくれよ」

(;'A`)「だって遠くから見かけただけだし……あぁ、何かしっぽで木からぶら下がってた」

( ´_ゝ`)「……キーマンなぞ所詮この程度か……」

('A`)「なんだよ……ただ質問に答えただけなのに」

(´<_` )「何、所詮あいつは四天王でも最弱」

( ´_ゝ`)「我々の足下にも及ばない」

(;A;)「なんなんだよぉ 二人してなんなんだよぉ」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:49:17.06 ID:RcI35+5/0
ドクオがぐしゅぐしゅと鼻をならしながら下をうつむいてしまったため、そのまま放置。
キーマンとはいえあまり当てにならないな。その前に、シュールさんの占いという
信じきれない物を始めから信じていた俺たちが悪いのかもしれない。

……もしかしたら、待ち人はドクオじゃなくて内藤さんなのか?
気に食わないが、そっちの可能性もあり得る。

俺たちがもめていると、隣でホップーをがぶ飲みしていたブーンさんがこちらを覗いて来た。
なめろうを食べ終わった後、第二ラウンドマグロとアボガドのサラダもやっつけ終わったのだろうか。
確かに隣であれだけ騒いでれば誰でも気にするだろう。少し迷惑をかけてしまったか。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:49:43.08 ID:RcI35+5/0
( ^ω^)「さっきからそっちはなんでにぎやかなんだお?」

(´<_` )「ちょっと色々と取り込んでまして」

( ^ω^)「おっ? そのノートはなんだお? 最近流行りのでずのーとかお?」 

(´<_` )「あぁ、このノートはツ……」

( ´_ゞ`) ……

(´<_` )「ツチノコを探すための、なんていうんですかね。手がかりというか」

( ^ω^)「おっ? 何かそれ見た事あるお! ショボンのノートかお?」

( ^ω^)「なっつかしいお……昔、シャキンと一緒にそのノートを持ってツチノコを探しまわった事があるお」

(`・ω・´)「君は体力が無いとか言って、いつも来るの嫌がってたけどね」

( ^ω^)「一回だけ一緒に行った事があるお! 見つかったのはksms中の男だったけど」

(;`・ω・´)「やめてくれ。あれはトラウマになってるんだ」



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:53:50.51 ID:RcI35+5/0
ノートを奪うと、内藤さんは懐かしそうな顔をしながらぱらぱらとめくっていく。
紙のふちは茶色くあせているが、中身はまだまだ書き立ての頃のように白いノート。

そんなノートに几帳面な字で書いてある内容は、今日のツチノコ探索の結果、ツチノコの特徴、
いる可能性が高いと思われる場所、……などなど。ここら辺は昨日も見たから覚えている。

ノートは日記帳もかねていたらしく、よく見ると時々ツチノコとは関係の無さそうな内容も書いてある。
こういう綺麗に整えられたノートを見ると、自分も日記をつけたりしたくなるのはなぜだろう。
前にブログを始めてそのまま放置しているのは兄者にも秘密だ。


( ^ω^)「へー ショボンらしい几帳面なノートだお」

( ^ω^)「昔は一度も見せてくれなかったんだお。……!」

∬´_ゝ`)「どうしたの内藤さん。似合わないシリアスな顔して」

( ^ω^)「いや……秋田県の地図を見たら美府に丸がついてたもんで」

( ´_ゝ`)「鹿男、田代、沢藤……はわかったんだけど、そこの丸って美府ってとこだったんだ」

(´<_` )「流石だな兄者、いつの間に秋田県の地理を勉強して来たんだ?」

( ´_ゝ`)「一億貰うためならこれくらいへっちゃらなんだぜ」

(´<_` )「この努力をもっと別の物に向ければいいのに」

∬´_ゝ`)「向けた結果がブラクラよ」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:51:57.85 ID:PwX5P/6BO
顔を突き合わせてノートに書いてある地図を覗いていたら、復活したらしい。ドクオも覗き込んで来た。
少しスペースをあけて、ドクオをその円にいれてやると、
眉間にしわをよせながら、丸のついている場所を睨みつけていた。
ドクオのシリアスな顔も似合わないもんだ。


('A`)「そこが美府?多分俺がツチノコ見た場所もそこから近い所だと思う。ここ岩手よりだし」

( ´_ゝ`)「……このノート自体は古い物だが、つい最近ドクオがツチノコを見たという事は」

( ´_ゝ`)+『ツチノコは今もここにいる可能性大』+(´<_` )

('A`)「何二人で格好つけてんの?」

(´<_` )「突っ込まれるとこれやんの恥ずかしくなるからやめてくれ」

( ´_ゝ`)「でもやるのが兄弟クオリティ」



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:54:54.56 ID:RcI35+5/0
(´<_` )「……で、ときに兄者よ。今までに出て来たキーワードを繋げてよく考えてみろ」

( ´_ゝ`)「ドクオが美府の周辺と思われる辺りでツチノコ発見」

(´<_` )「近いうちに内藤さんが美府へ出発」

('A`)「……ついて行くって事?」

∬#´_ゝ`)「ちょっと、せっかくの内藤さんの親孝行タイムを邪魔しようとするんじゃ無いわよ!」

( ^ω^)「いやいや僕はかまわないお? かーちゃんも人数多い方が嬉しいだろうし」

(`・ω・´)「……連れて行ってくれるなら嬉しいな」

(;´_ゝ`)「……厄介払いとか?」

(;`・ω・´)「いやいやそんなじゃないって」



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:56:42.50 ID:PwX5P/6BO
そういえば、内藤さんが美府に行くのは親孝行のためだと言っていたっけ。
だがここで押し切らないと、ツチノコを捕まえる可能性を潰してしまう事になる。

それに義兄さんは美府の場所を知っているようだが、お店があるから余り遠くには行けないだろう。
姉者にしかられようが、内藤さんに嫌な顔をされようが、撤回するつもりは無い。

だが以外な事に、内藤さんは俺たちがついて行こうとしている事に対して別に反対はしないらしい。
というか逆に歓迎している気もするが。ならばここはお言葉に甘えて、美府に連れて行ってもらおうではないか。
俺は内藤さんの返事を聞き、兄者と顔を見合わせる。計画通り。という、暗黒面に落ちたような顔をしていた。

……だが、ドクオはどうするんだろう?旅の途中だと言っていたが。



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:57:28.30 ID:RcI35+5/0
(`・ω・´)「せっかく君たちが遊びに来てくれたんだから、色んな所に連れて行ってあげたいんだけど」

(`・ω・´)「僕はこの通り店があるし、車にカーナビがついてないから余り遠くに行けないし」

(`・ω・´)「だからこれを機会に、内藤に色んな所に連れて行ってもらうといいと思って」

( ^ω^)「まかせるお!」

∬´_ゝ`)「すいませんねぇ。……そういえば、ドクオ君はどうするの?」

('A`)「!」


∬´_ゝ`)「君も一緒に美府に行って来なさいよ。せっかくの楽しい夏休みよ?」

( ´_ゝ`)「そうだよ。一緒にい か な い か?」

(´<_` )「言い方が気持悪いぞ兄者」

(´<_` )「だが……先を急ぐ旅なら仕方が無いが、ツチノコを探すのに人手が多いに越した事は無い」

(*´_ゝ`)「こいつこんな事言ってるけど本当は来て欲しいんだぜ」

('A`)「……俺もついてっていいの?」



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 03:59:27.23 ID:RcI35+5/0
美府に行くという話の辺りからずっと黙っていたドクオが、やっと言葉を発した。
あまりなじみの無いメンバーに引け目を感じているとか、大方そんな理由で黙っていたのだろう。

ドクオは一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに目線を床に落とし、なんとも言えない表情になった。
……こいつは周りを気にしすぎると思う。もっと自分の感情を表に出さないとストレスが溜まるだろう。
だからそんな不健康そうな体つきをしてるんだ。きっとそうだ。


(`・ω・´)「……どうやら君は、俺なんかがこんな特に知り合って間もない人達にこんなにお世話になってるのに」

(`・ω・´)「それにプラスしてお出かけなんかに連れて行ってもらっちゃったりして罰が当たりやしないだろうか」

(`・ω・´)「なんて事を考えているだろう」

('A`)ビク


(´<_` )「お前がそのまま旅を続けたいなら、俺たちは止めやしないよ」

( ´_ゝ`)「だけどこれだけは聞いて欲しい。俺たちはお前と共に美府に行きたいんだよ馬鹿ちん」

('A`)「……」

('∀`)「……仕方ねぇな。……ついてってやるよ」

( ´_ゝ`)『笑顔きめぇ』(´<_` )

('A`)「ウツダシノウ」



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:01:59.42 ID:PwX5P/6BO
なんだかんだで ドクオ が なかまにくわわった!

……我ながら臭い流れだとは思うが、ドクオが元気になってくれてよかった。
その後、どこか影を背負っていたドクオから影が無くなり、少し会話にも混ざってくるようになった。
今まで会話に混ざる事に遠慮していたのだろうか。

さっき出された夕ご飯も食べ終わり、四谷サイダーをちまちま飲みながら
俺たちは座敷でツチノコ捕獲計画を練っていたのだが、そこに内藤さんがふぐり口を挟んで来た。

さっきまで演歌を歌っていたので、マイクを握ったままエコーのかかる声で話しかけて来る。正直うざい。
ジャイアンリサイタルに強制参加させられた気分だ。何も聞いていないのに一人で喋り続けていくのをやめてほしい。
……内藤さんが来たと思われる時間から、もう既に3時間は経過。

ぐっでんぐっでんべろんべろん。すっかり出来上がっているので仕方が無いとは思うが



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:02:44.48 ID:RcI35+5/0
(*^ω^)「ぃやぁいゃあ頑張ってるねちみたちぃ!」

(´<_`;)「うわっ 酒臭い! 息吹きかけないで下さいよ!」

( ´,_ゝ`)「人の事言えないだろうがww」

('A`)「ゲロ以下の臭いがぷんぷんするぜぇ」

(*^ω^)「弟者君口くっさwww口くっさwwww」

(´<_` )「ウツダシノウ」



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:04:47.69 ID:PwX5P/6BO
(*^ω^)「んで、君たちを美府につれていくだけどんも」

(*^ω^)「明日は色々とあるから明後日になるんだけどそれでもいいかおぉお?」

(*^ω^)「ツチノコ探すなら泊まりがけでやった方がいいと思うんだお! 着替えも持って来るといいお!」

(´<_` )「了解です」

(*^ω^)「弟者君やっぱ口くっさwww喋んなwwww」

( ´,_ゝ`)「弟者、お前いると内藤さんがムダにうるさいからそっち行ってろ」

(;<_; )))


明後日の朝10時に、家に迎えに来るらしい。どんな車で来るのか知らないが、あの大荷物を詰め込みきれるだろうか。
酔っぱらってはいるものの、なんとか後日の予定を語り終えた内藤さん。

マイクをカラオケマシンの脇に戻すと、財布からお金を出して千鳥足で入り口へ向かった。
椅子にがこがことぶつかりながら爪楊枝をくわえていると、大変危ないと思う。

義兄さんと姉者が心配そうな顔で内藤さんを見ている中、なんとか入り口へ到着した。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:05:16.34 ID:RcI35+5/0
(*^ω^)ノシ「じゃあ明日は祭りの準備があるから早く帰るお! ばいぶぅうぅー!!」

(`・ω・´)「また今度。車で来てないよね?」

(*^ω^)「もちろん走りだお!」

(;´_ゝ`)「歩きじゃなくて走り?」

⊂二二二(*^ω^)二⊃ ブーン

(´<_` )「本当に走って行っちゃったな」


(`・ω・´)「店もそろそろ込んでくる時間帯だね。悪いけどそろそろ……」

∬´_ゝ`)「あー はいはい。あんた達行くわよ」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:05:59.34 ID:RcI35+5/0
内藤さんも帰り、話も切りが良くなった所でぞろぞろと店を退散し、商店街へ出る。
街頭が道路を照らし、各商店からも明かりが漏れているので結構明るい。
西の空は赤紫で、影絵のように入道雲が浮かんでいるだけ。カラスの声が物悲しい気持にさせる。

ジージーと謎の虫が鳴く駐車場に帰って来て、ふと思い立ち空を眺める。
東の空はもうすっかり真っ黒で、一番星か、衛星か。
肉眼でもはっきりと見える星が一つ浮いていた。


(´<_` )「こっちは星がよく見えるのかな」

∬´_ゝ`)「東京よりかは断然、ね。ここは街頭が多いから見にくいけど、家の前とかはよく見えるわよ」

( ´_ゝ`)「それより家帰る途中にコンビニ行ってガリガリ君買おうぜ」

('A`)「俺は断然しろくまだな」

(´<_` )「……俺はアイス買うよりブレスケアを買わなくては」

∬´_ゝ`)「あたしも朝ご飯用のパンがなくなっちゃったからコンビニ行かないとな」


駐車場に止めてある時代遅れの車に乗り、地面をじゃりじゃりと言わせながら出発する。
今回は、兄者が助手席に行き俺とドクオが後部座席へ。
窓を開けてあからさまに距離を取るドクオがむかつく。いや、確かに口が臭い俺が悪いのだが。

コンビニで様々な物を買って、帰宅。
ちなみに、俺はコンビニの外で待っている事にした。
この臭い息を発散させながら店内に入ったら迷惑がかかるかと思ったからだ。



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:07:38.17 ID:PwX5P/6BO
∬´_ゝ`)「たーだーいーまー」

( ´_ゝ`)「もう夜ご飯食べちゃったから、後は風呂入って寝るだけだな」

(´<_` )「まだ七時半だな」

('A`)「俺、まったく洗ってなかったパンツとか洗濯させてもらっていいっすか?」

∬´_ゝ`)「どうぞどうぞ。そう言えばドクオ君はさっきお風呂入っちゃったから本当にやる事無いのね」

('A`)「ありがとうございます」

∬´_ゝ`)「あんた達どっちからでもいいからお風呂入って来なさいよ」

∬´_ゝ`)「ついでにお風呂洗っていれといてね」


( ´_ゝ`)⊃『お先にどうぞ』⊂(´<_` )

( ´_ゝ`)……

(´<_` )……



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:08:12.05 ID:PwX5P/6BO
(´<_` )「海で溺れたか弱き弟に風呂掃除をさせるのか」

( ´_ゝ`)「ブレスケア使っても息が臭いやつは発言権無ーし」

(´<_`#)

( ´,_ゝ`)

(´<_`#)「……俺が洗ってくればいいんだろ俺が!」

( ´,_ゝ`)「口の中もしっかり洗ってくるのよ〜」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:08:50.84 ID:RcI35+5/0
しっかり洗ってきましたとも。えぇ。
家の浴槽は俺が入るとたちまちお湯が溢れてしまい、足を完璧に伸ばして入るなんて事は出来ないのだが、
流石新築浴槽がでかいでかい。しかもミストサウナやジャグジーまでついてやがる。豪華すぎだろ。

その分浴槽を洗うのが大変なのに気づくのは、そのすぐ後だった。

姉者がいつの間にか用意してくれていた小さなタオルで体を洗う。
出てくる時に次に入る兄者にささやかないやがらせとして、浴槽の温度を45度に設定しておいた。


(´<_` )「はい出ました」

( ´,_ゝ`)「風呂掃除は楽しかったかな?」

(´<_`#)「兄者今日海行った後体洗ってないだろ?頭生臭いんだから早く入ってこいよ」

( ´_ゝ`)「言われなくてもちょっと入ってきますよ……」



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:10:19.99 ID:PwX5P/6BO
上機嫌で着替えを抱えて、洗面所へ向かった兄者。
だがそんな調子でいられるのも今のうちだ。今の内に十分に味わっておけ。



<ギャボォォォォォォォォォォォォ

Σ∬;´_ゝ`)

Σ('A`)

Σ(´<_` )

(´<_,` )「どうした兄者!」



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:11:46.38 ID:RcI35+5/0
( ;_ゝ;)「あぁぁああぁぁあぁあぁあ」

(´<_,` )「あだけじゃわかんないぞ」

( ;_ゝ;)「……肌が! シャワー浴びたら肌が!」

(´<_,` )「シャワー?」

( ;_ゝ;)「シャワー浴びた時、少し肌がぴりぴりしたんだ。それを気にせず浴槽に入ったら……」

(´<_,` )「日焼け止め塗んなかったからだろ」


風呂場に駆けつけると、洗面所に素っ裸で倒れている兄者がいた。
うつぶせのまま動かない兄者に、わかりきって入るが一応何があったか聞いてみる。
日に焼けた体で浴槽に入ったら、高温の湯のために皮膚に激痛が走ったらしい。

そのまま大慌てで風呂を出ようとしたら段差につまづき、そのまま動く気力がなくなったとかなんとか。
うつぶせの兄者の背中を見ると、タコのように真っ赤になっていた。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:12:38.64 ID:PwX5P/6BO
( ;_ゝ;)「あー もう風呂入りたくない」

(´<_` )「体洗わないと不潔だぞ。今日出会った時のドクオを思い出せ」

( ´_ゝ`)「……入って来る」


その後、風呂場の方からか細い悲鳴とシャワーの音が続いていたが、
数分後、ぐったりとした兄者が風呂場から戻って来た。
……いい気味だ。人が気にしている事(口臭)をえぐるように指摘した罰だ。

なぜか半ズボンだけで、パジャマ代わりのTシャツは着ていなかった。


( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「なんで上着てないんだよ」

( ´_ゝ`)「……服を着ようとすると、背中がこすれて痛いんだ」

(´<_` )「俺注意したよな? 日焼け止め塗らないと痛い目にあうっていったよな?」

( ´_ゝ`)「だって夏の男になりたかったんだもん……」



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:13:32.74 ID:RcI35+5/0
その後姉者に、軟膏を塗りたくられていた。
近くに寄ると軟膏独特の鼻につく臭いがする。臭い。
ひぃひぃ言いながらTシャツを着た兄者は、ソファーに座ったはいいが寄りかかる事が出来ないので、
普段滅多に見られないような、姿勢のいい状態でテレビを真面目に見ているように見えた。

全員風呂に入り着替え終わった所で、お楽しみのアイスタイムとなる。
扇風機を強にして首をふるようにしたのだが、兄者が首にあわせて大都会を歌うので風が全く来ない。
まぁ、窓から吹き込んで来る風でもそれなりには涼しいから別にいいか。

網戸にひっつく蛾を脅したりしながら、まったりと中と外から体を冷やしてゆく。



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:14:52.17 ID:PwX5P/6BO
(*´_ゝ`)『あぁ〜ぁあ〜 はって〜しぃ〜ない〜 ゆめを〜お〜い〜つづけぇ〜ええぇ〜』

(´<_` )「うるさい音痴。近所迷惑だ」


('∀`)「そんな事よりアイス食おうぜ!」

(*´_ゝ`)「ガリガリ君うめぇ」

(´<_` )「こうやって夏の夜に、窓際でアイス食うのって最高だよな」

('A`)「俺のしろくま一口やるから、弟者のpono一つくれ」

(´<_` )「絶対やだ」

('A`)「夏の夜 pono貰えない ウツダシノウ」

( ´_ゝ`)「字余り」









77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:15:31.40 ID:RcI35+5/0




∬´_ゝ`)「布団上にもう一つ用意しといたから、あんた達とドクオ君の三人で寝なさい」

('A`)「ありがとうござぁーっす」

( ´_ゝ`)「おぉ、本格的に修学旅行っぽいな。」

(´<_` )「今日は疲れたから俺は早く寝る」

(*´_ゝ`)「ドクオ、枕なげとトランプと UMOのどれやる? 花札もあるぞ」

(*'A`)「俺花札わかんないから、それ以外ならなんでもいいぞ」

(*´_ゝ`)「じゃあじゃあスピードやろうぜ!」

(*'A`)「いいね! ルールよく覚えてないけど、負けたやつはアイス没収ね!」

(´<_` )「……最初から俺を外す前提で話されるのも寂しいな」



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:17:06.07 ID:RcI35+5/0
テレビを見たり雑談をしていたら九時近くなってきたので、ぞろぞろと二階へ向かう。
つんつんと紐を引っぱり、電球をつける。
少しほこりが落ちて来たが、それをはたはたと払い布団を敷く。

たちまち窓には蚊が集まって来た。
さっき見たニュースによると今夜は熱帯夜らしいので、
窓を開けなければ寝る事も出来ないだろう。冷房は無いが、締め切りの状態よりはましだ。
さっき下から貰って来た蚊取り線香に、マッチで火をつける。

ぽわっとした優しい火を端に近づけると、線香から紐のような煙が出て来た。


(´<_` )「枕投げすんなよ。線香倒すなよ。俺はもう寝る」

('A`)「なんであんなに機嫌悪そうなの?」

( ´_ゝ`)「弟者は眠いと機嫌が悪くなるんだ」

('A`)「子供みたいだな」


しばらくトランプをやっていたようだが、しばらくすると静かになった。
すぐ隣で騒がれて眠れなかったが、やっと安心して眠れそうだ。

…………

田んぼから聞こえる蛙の鳴き声と、名も無い虫の求婚の叫び。
そんな様々な声に混じって、ひそひそと話し声が聞こえて来る。



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:18:44.48 ID:PwX5P/6BO
('A`)「……もう寝たか?」

( ´_ゝ`)「俺はもう眠っている」

('A`)「……俺、今から独り言言うから。聞きたければ聞いてくれ」

( ´_ゝ`)「ぐうぐう。これは寝言だぞぐうぐう」


('A`)「……俺さ、友達いないんだ」

('A`)「本当はみんなの輪に入って話したいんだ。でも口べただから出来ないんだ。
いじめられる事なんかはないからいいんだけど、誰に相手にされる訳でもない。空気ってやつだ。
部活にも入ってないからさ、友達できないのも当たり前だと思うんだけどな」

('A`)「それでその内ひねくれて、話しかけてこないあいつらが悪いとか、
俺はああやってばか騒ぎしてる奴ら程低能じゃないって思い始めたんだ。
今思い返せばすべてわかる。あんなのはただの嫉妬だ」

('A`)「……で、この前アマゾンを冒険するドキュメンタリーを見たんだ。
それ見て、せっかくの夏休みだし旅に出てみようと思ったんだよね。安直だけど
最初会った時に貧相な体格を変えるためとか言ったけど、あれは半分くらい嘘だ」

('A`)「旅に出れば、何か変われると思ったんだ」



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:20:23.31 ID:PwX5P/6BO
('A`)「実際、旅に出て突然何かが大きく変わることはなかった。そりゃそうだよな。いきなり性格や考え方が変わるわけないもんな」

('A`)「でも、ヒッチハイクで俺を車に乗せてくれた人や、道を教えてくれた人、
そして行き倒れになってる俺を助けてくれて飯まで食わせてくれた人に出会って、思ったんだ」

('A`)「学校では、人と関わらなくたって生きて行けると思ってたけど」

('A`)「やっぱり、人と触れて生きて行く事は楽しい事なんだってね」

('A`)「そこでやっと、俺の心の奥底で地震が起きたような気がした
受け身じゃだめなんだ。行動を起こせば、行動した分だけ人とのふれあいがあるんだ」

('A`)「俺にとっての行動っていうのが、今回の旅だったんだ」

( ´_ゝ`)「……」



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:21:25.87 ID:RcI35+5/0
('A`)「俺、兄者ってやつと、弟者ってやつに出会えてよかった」

('A`)「……もう寝ている兄者に俺は話かける。『知り合いから、友達になってくれるかい?』」

( ´_ゝ`)「……ぐうぐう。俺たちは、改めて友達だという事を確認しあうつもりはないぜ」

( ´_ゝ`)「そうだろ? 弟者」

(´<_` )「……ぐうぐう。友達と確認しあうのは、友達じゃないやつがする事だ」


('∀`)「……ありがとう」



軽い音が二回響くと、部屋はついに真っ暗になった。
窓の外に目をやる。流れ星が一瞬見えた。明日も随分と暑くなりそうだ。



おわり



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:23:56.51 ID:PwX5P/6BO

おまけ。トランプ中の兄者とドクオ


( ´_ゝ`)「弟者が寝たから、俺たちは二人でダウトやろうぜ」

('A`)「いいね」

( ´_ゝ`)「1」

('A`)「2」

( ´_ゝ`)「3」

('A`)「ダウト」

(#´_ゝ`)「早すぎんだろ!」

('A`)「……だって俺3全部持ってるんだもん」



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:24:25.08 ID:PwX5P/6BO
( ´_ゝ`)「じゃあ気を取り直して、7並べしようぜ」

('A`)「……パス」

( ´_ゝ`)「じゃあおれはここにクローバーの8を…… 次どうぞ」

('A`)「……パス」

( ´_ゝ`)「では、ここにクローバーの9を置かせてもらいますよ」

('A`)「……パス」

( ´_ゝ`)「……楽しくないなぁ」

('A`)「兄者が止めるからいけないんだ」



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:25:20.24 ID:RcI35+5/0
( ´_ゝ`)「じゃあ、スピードだ」

('A`)「ルール覚えてない」

( ´_ゝ`)「こうやって、自分の手持ちから一枚ずつ前に出して、その数の次のを出してくんだ」

( ´_ゝ`)「最初が4なら、手持ちから5を出す。ちなみに相手が出した方に重ねてもいい」

( ´_ゝ`)「こうやって順々にカードを重ねて減らして行って、最終的に手持ちを無くした方が勝ちだ」

('A`)「三行で」

( ´_ゝ`)「無理」



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/20(日) 04:25:59.48 ID:RcI35+5/0
( ´_ゝ`)「ババ抜きやろうぜ」

('A`)「それもジョーカーどっちが持ってるかわかっちゃうから駄目だろ」

( ´_ゝ`)「UMOやろうぜ」

('A`)「二人でカード出し合ったってつまんないぞ」

( ´_ゝ`)「では、ルールのわからない花札をやろうぜ」

('A`)「任天堂に聞いてこい」




こんどこそおわり



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