( ^ω^)ブーン達はマインスイーパに集められたようです
- 262: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/26(火) 02:11:43.74 ID:AeQJyyj20
- 「次のプレーヤーは君だ、素直=クール」
川 ゚ -゚)私か、
「パソコンの前に着席せよ。3分以内にしなかった場合、ゲームを放棄したと見なす」
「ゲームを放棄した場合、わかっているな?」
川 ゚ -゚)座るさ。もちろん
川 ゚ -゚)(上級やオリジナルは、敗北がありえないから、確実に勝てる)
川 ゚ -゚)(つまり、4人は確実に生きて帰れると思っていたが、やはり甘くないな)
川 ゚ -゚)(これでは、7人以上の死者が出る可能性があるのか)
川 ゚ -゚)(だがこのシステム、無駄が多い)
川 ゚ -゚)(何か、理由があるはずだ)
川 ゚ -゚)やるか
クーさんが小さくつぶやいた。
その声は、9人全員に聞こえたのだろうか。
僕には、聞こえた。
- 266: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/26(火) 02:14:48.74 ID:AeQJyyj20
- 「ランクは?」
川 ゚ -゚)
クーさんが、ちらりとドクオさん達の方を見た
ドクオさんの隣には、モララーさんとペニサスさんがいる。
中級の、挑戦者達だ。
川 ゚ -゚)初級だ
「わかった。表示はこれで良いな?」
川 ゚ -゚)かまわん
始まった。
ハインさんの上級とは違う、本当に命を賭けたマインスイーパが。
- 272: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/26(火) 02:19:40.84 ID:AeQJyyj20
- 川 ゚ -゚)ふむ、早速こまったな
初級では、最初の一手が全てを決めると言っても過言ではない。
周りに地雷がなく、多くの土地が開ければ、クリアに近づく。
最初の一手と、「不可予知」は、運に任せるしかない。
川 ゚ -゚)……
クーさんが最初に開いたマスは、数字が書いてあった。
その数、「1」
つまり、開いたマスの周りのマスのうち、1つは地雷だ。
いきなり、賭けになってしまった。
しかも、クーさんの開いたマスは、盤の辺の部分である。
つまり、となり合うマスが5つしかない。
2手目、五分の一の確率で、クーさんが死ぬ
- 280: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/26(火) 02:25:03.57 ID:AeQJyyj20
- もちろん、一手目とは違うところを適当に開くという選択肢もある
初級盤の大きさは9×9=81マス。地雷数は10
クーさんが開いたマスと、その周りを全体から引くと、75マス
地雷は、その中に一つあるので残り9
9/75か、1/5か、
リスクの低いのは、明らかに前者だった。
川 ゚ -゚)うむ…
クーさんは、マインスイーパはへタではない。
自分であそこまで言えるのだから、きっとそうだろう。
僕やジョルジュさん、ハインさん、しぃさんより、うまいと言い切った。
だがそのクーさんが、詰まっている
- 292: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/26(火) 02:32:00.13 ID:AeQJyyj20
- 上手い人は、自然と初級から離れていく。
ハイスコアを出したり、自分なりのオリジナル盤を作ったりする。
初級は、お遊びなのだ
だが、そのお遊びに命を賭けさせられている。
初級の感覚を戻せないというよりは、命を賭けているということが、クーさんの心を乱しているのだろう
さきほどから左手で汗を拭う回数が増えている。
まずい。クーさんが焦りだしている。
それも、まだ2手目だというのに
川 ゚ ー゚)賭けなら、楽しい方をやりたいよな?
(;^ω^)……
僕は、返事ができない。
スピーカー男が、さきほどのハインさんの試合の時に言った
「プレイヤーからの発言は、許してやるが、それに対する返答は禁ずる」
は、ルールの一つだ。
平気で他人を拉致し、監禁し、命を賭けさせる奴らだ。
破れば、おそらくは……
(;^ω^)
返事は、できない
- 298: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/26(火) 02:36:39.73 ID:AeQJyyj20
- 川 ゚ -゚)私は、別の場所を開く
川 ゚ -゚)チラッ
クーさんは、一瞬どこかを見た。
天井のスピーカーか、後にいる僕ら9人か
クーさんの右手のマウスが、人差し指によって、左クリックの指令を出す。
カチッ
- 6: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:23:18.85 ID:yYIMITJi0
- 二手目、クーさんが開いたマスに現れたのは、またも数字の1
しかも一番最初に開いたマスとは離れた、関係のない所。
盤の下端だ。
リスクを恐れた故の、リターンの少なさ。
致命的。命取りの誤判断。
そしてクーさんは、マウスを動かすのをやめる。
それどころか、マウスから手を離してしまう。
川;゚ -゚)いい加減にしてほしいものだな
開けた2箇所の周りは、それぞれ1/5の確率で地雷だ。
他の箇所は、81マス盤から12を引き69箇所。
地雷は8つ。
まったく別のところをやれば、8/69の確率で地雷。
川 ゚ -゚)私は、二度も賭けに出られるほど、勇気のある人間では無いんだ
(;^ω^)……
僕は、見守ることしか出来ない。
- 7: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:24:39.60 ID:yYIMITJi0
- 嫌な状況だった。
命をかけたマインスイーパとしては初戦だ。
それが、こんな苦戦を強いられている。
川 ゚ -゚)おい、スピーカー
クーさんは、マウスから手を離さずに、スピーカーの男に話しかけた。
「なんだ?」
川 ゚ -゚)発言をしても良いか?
「もちろん、プレイヤーの言動は自由だからね」
「だが、後にいる9人は、それに反応してはいけないよ」
川 ゚ -゚)わかってる。とにかく、今からかなり喋るが、良いな?
「ああ、聞かせてもらいたい。興味がある」
- 8: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:26:42.16 ID:yYIMITJi0
- 川 ゚ -゚)私は、このシステムに無駄を見つけた。
(;´・ω・`)(……無駄?)
川 ゚ -゚)とりあえず目立つのは「上級」と「オリジナル」の存在だ。これが一番大きな無駄だろう
( ゚∀゚) ……
川 ゚ -゚)死なないというプレイ条件ならば、そもそも存在する意味がない。
最初からそれらを省いて、10人で初・中級に挑戦させれば良い
「……」
川 ゚ -゚)なぜある?計画的に拉致・監禁までするような奴らだ。
きっと無駄なことにも理由がある。
今は、その理由は分からんが、な……
絶望的な状況における冷静な考察。
それができる人は強い。が、滅多にいるものではない。
クーさんは、できる人だろうか、できない人だろうか。
川 ゚ -゚)それにこのスピーカーの男、監視というよりも……私達を観察しているように思える
- 10: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:29:05.85 ID:yYIMITJi0
- 「観察?」
スピーカー男の声。
耳にまとわりつくような、嫌な声だ。
この追いつめられた状況が、僕らにそう感じさせるのかも知れない。
川 ゚ -゚)そうだ。
私達の話し合いや、プレイの様子、ルール説明時の反応
そういったものを、観察しているように思える。
しばらく、誰も言葉を発さなかった。
僕ら9人は当然だが、スピーカーの男も、クーさんも、しばらく黙っていた。
そこで僕は思考に耽った。
観察。
言われてみれば、男は確かに僕たちを観察しているように思えた。
脅迫しているわけでも、誰かを拷問にかけているわけでもない。
- 11: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:31:17.16 ID:yYIMITJi0
- この部屋だって、まだコンクリートが新しい。わざわざ作ったと思われる。
先ほど入ったトイレは使った形跡が無かった。そのことからも新築だと分かる。
天井にも蜘蛛の巣などは無い。
電灯も、一つたりとも切れていない。
全てが、僕らを閉じこめるために新しく作られているようだった。
( ^ω^)……
そこまでして僕らを観察したいのか。
僕ら自身に価値があるとは思えない。
僕はただの中学生だし、小学生や60歳の男性に何か特殊な価値があるとも思えない。
強いて言えばクーさんが薬の研究をしていることが目立つが、それについても触れてこない。
無差別に10人を選んだと見て、間違い無さそうだ。
何のために観察するのか。
そこからは、考えても結論に至ることはできそうになかった。
- 12: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:33:54.87 ID:yYIMITJi0
- 川 ゚ -゚)上級やオリジナルが存在する理由。
それさえ分かれば、お前のハラは読めるんだ
「そうかい」
また、皆が黙った。
クーさんは、静寂の中マウスを握りしめた。
川 ゚ -゚)こんな状況、小説でしか読んだ事無かったな
川 ゚ -゚)あの小説のタイトルもラストも、忘れてしまったが……
「プレイを再開せよ、素直=クール」
クーさんの長い語りにいらだってきたような声が、スピーカーから発せられる。
だがクーさんは物怖じせずに言った。
川 ゚ -゚)もう少しだけみんなと一緒にいさせてくれないか
みんな不安そうにクーさんを見ている。
冷静なドクオさんでさえも、この状況には焦っているように見えた。
- 15: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:35:47.77 ID:yYIMITJi0
- 「そう言うなら、話させてやらんこともない」
スピーカー男の偉そうな口調が、癪に障る。
が、僕らには反抗どころか発言すら許されていない。
川 ゚ -゚)礼を言う
クーさんも本心では、こんな奴らに礼など言いたくないだろう。
だが、今はこうするしか無い。
そういう状況なのは、分かっている。
川 ゚ -゚)最後にみんなに、素直に、私の気持ちを伝えたい。
最後だなんて、そんないい方。
これから死ぬみたいにしか聞こえない。
- 16: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:37:39.17 ID:yYIMITJi0
- 川 ゚ -゚)まず、私は10人で生きて帰りたかった
なぜ、なんで過去形なのだ。
川 ゚ -゚)死ぬ時っていうのは、なんとなく分かるんだ。
川 ゚ -゚)それでな、君らに頼みたいことがある。
それまでただ俯いていただけのペニサスさんが、クーさんを見つめた。
9人の18の目が、クーさんを見る。
川 ゚ -゚)私には、妹がいるんだ。
名をヒート。素直ヒートと言う。
広島の、福山市に私と二人で住んでいた。
川 ゚ -゚)彼女に伝えて貰いたい。
「素直クールは最後まで頑張って、死んだ」と。
川 ゚ -゚)なんとも辛い役目だが、頼まれてくれるか?
誰も発言はしなかったが、皆の目が答えていた。
川 ゚ -゚)ありがとう、皆。
- 19: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:40:25.57 ID:yYIMITJi0
- 僕の隣に座っていたしぃさんが、クーさんの言葉を聞き終えてから泣き出した。
声を出さないように、必死にこらえながら泣いている。
声を出せばしぃさんもクーさんも「ルール違反」になる
クーさんの命がけの勝負を、覚悟を、決して無駄にはしたくない。
その気持ちが、伝わってくる。
川 ゚ -゚)(やれるまでやる、しか無いだろう?ヒート。)
クーさんは、マインスイーパの表示されているディスプレイの、向こうを見つめた。
僕らには、コンクリートの壁しか見えなかった。
川 - -)……私の言いたいことは、これで終わりだ
- 23: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:42:47.41 ID:yYIMITJi0
- 川 ゚ -゚)遅くなったが、決断するよ
現在、初級盤の81マスの内、2マスが開いている。
そこに書かれている数字は、どちらとも「1」。
川 ゚ -゚)ここを開く
クーさんが選んだのは、9×9盤の中央。
1・2手目で選んだマスとはなんら関係の無いところ
地雷の確率は8/69。
運との勝負。
当たる確率は低くない。
- 24: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:45:22.24 ID:yYIMITJi0
- 川 ゚ -゚)……
カチッ
クリック、盤の中央の一マスが窪むグラフィックに変わる。
マスを圧迫しているマウスを、右手の指を離せば、結果が出る。
吐きそうなほどの緊張。
川 ゚ -゚)
クーさんが、クリックした右手の指を離さない。
マインスイーパの仕組みでは、指を離した瞬間にマウスカーソルがあるマスが開かれる。
が、最後の決断を、しきれないのか。
川 ゚ー゚)
クーさんは、笑っていた。
指は離れていない。
笑顔に慣れていないのか、引きつったような笑みだった。
笑顔のまま、クーさんは指を離した。
- 28: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:49:48.26 ID:yYIMITJi0
- 現れたのは、地雷
「素直クール、初級のマインスイーパに失敗」
スピーカーからの声は、憎らしかった
- 32: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:51:59.65 ID:yYIMITJi0
- 「始めての脱落者が出たな。殺され方を知りたいか?」
しぃさんが体を震わせた。
クーさんは何も言わない。言えない。
僕も、クーさんのプレイが終わって発言可能になったが、口からは言葉が出てこない。
川;゚ -゚)こ、殺し方は言うな!
「くっくっ、残った仲間達の精神を気遣う余裕があるか」
「執行人、素直=クールを連れて行け」
スピーカー男からの声は、途切れた。
コンクリート部屋にある鉄のドアが開き、黒スーツの男達が5人ほど、銃を持って入ってきた。
体格が良い。銃もかなりの威力がありそうな、大きなものだった。
執行人は何も言わず部屋の中を見渡す。
クーさんを見て、腕を取ると、そのまま鉄のドアを閉めようとした。
「逆らったら「執行人」に容赦なく撃たせる。おとなしくしていろ」
- 36: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:55:03.65 ID:yYIMITJi0
- 川 ゚ -゚)最後に一つ、良いか?
「遺言は短めにな」
スピーカーからの見下したような声が、僕らの非力さをあざ笑っているかのようだった。
川 ゚ -゚)みんなは死なないでくれ。
以上だ
クーさんは、無言で服のポケットから何かを取り出して、僕に投げつけた。
白い小さな紙袋に入っていて、中身は分からない。
(;^ω^)クーさん!クーさん!
クーさんが投げてきた小さな紙袋を左手に握りしめ、名を呼びかける。
それに続ける言葉が見つからない。
クーさんから返ってくる言葉も無い。
鉄の扉の向こうへと、クーさんが消えてゆく。
彼女は、ただ、どこかを見つめていた。
- 37: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:57:13.95 ID:yYIMITJi0
- 川 ; -;)……
私は静かにどこかを見つめていた。
最後まで叫んでくれた内藤でも、他の8人でも、スピーカーでも、パソコンでもなく、
両脇にいる「執行人」でも、閉ざされる鉄の扉でも、暗い通路でも、遠くなる部屋の灯りでもなく。
どこかを見つめていた。
10人で過ごした時間は、1時間程度だっただろうか。
私には、そのくらいに感じられた。
彼らの顔が、浮かんでは消える。
みんな、消えないで。
私のそばにいて。
愛する妹、ヒート。消えないで。
家で待っていて。
どうか、お姉ちゃんの帰りを、待っていて。
広島の、私達の家で、待っていて。
- 38: ◆Dti7WkoCEo :2008/08/31(日) 00:58:12.71 ID:yYIMITJi0
- 川 ; -;)
消えないで、皆。
私は、消えながら、最後までそう願った。
(クー・初級編終わり)
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