( ^ω^)ブーン達はマインスイーパに集められたようです

2: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 21:59:22.39 ID:x//I+Onh0
僕のプレイから終わってから20分が経とうとしていた。
ハインさんやクーさんが終わった後は比較的早く次のプレーヤーが決まっていたが。

( ・∀・)遅いね

('、`*川 ここには長く居たくないわね

( ・∀・)帰ったら何したいの?

('、`*川 まずは家族に会いたいわね。
     一人暮らしをしてるから、居なくなっても数日間は気づかれないけど……
     あんたは?帰ったら何するの?

( ・∀・)僕は両親は3年前に他界したし、兄弟も妻子も居ない。
     けど、会社の上司、ミルナ部長に会いたいね。
     彼にはとても世話になってるから、僕がいないことで迷惑をかけてるかも知れない。

('A`)上司に会いたい?
   珍しい……よな?

( ・∀・)はは、そうかな。
     でも家族がいないと、仕事仲間達が家族みたいなもんだよ

中級挑戦者達の、余裕に満ちた声が聞こえてくる。
最も厳しい条件が課せられているで中級。その挑戦者である3人の様子は、余裕だった。
あくまで、僕から見れば



3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/09/05(金) 22:01:38.59 ID:x//I+Onh0
('A`)俺も、家族はいない。
   両親は失踪したし、兄弟はもとから居ない。
   結婚できるような財も容姿も能力も無い。

( ・∀・)ふぅん?

('A`)なんだよ……

( ・∀・)いや、まだ若いのに悲観的だなあ。と

('A`)……フン

('A`)帰ってもやること無いんですよ。ただ生きて、ただ死ぬだけ
   ここで朽ちても、一緒なんです

('、`*川 それは……

部屋の中に沈黙が広がる。
ペニサスさんは何かを想うように目を伏せた。

その一瞬の沈黙を見計らったかのように、アナウンス。



4: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:03:19.21 ID:x//I+Onh0
「次のプレイヤーが決まった」
「君だ、苛猫」
「苛描=ウララー」

一瞬誰か分からなかったが、この名前は、彼の偽名に似ている

( ・∀・)僕か

モララーさんの番。
部屋中の人間の視線が、モララーさんに突き刺さる。
僕は、不安の視線を突き刺していた。

初の中級者の挑戦。
ここで成功するか失敗するかは大きい。

('、`*川 頑張りなよ

モララーさんに声をかけたのはペニサスさんだけだった。
彼女は、信頼の視線を突き刺していた。



7: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:05:09.90 ID:x//I+Onh0
「これから、3分以内にパソコンの前に着席せよ」
「着席しない場合、ゲーム放棄と見なす」

( ・∀・)あーはいはい。座るよ。座るからちょっと待ってね

(・∀・ )ちょっとショボンくん。

(´・ω・`)はい?

(・∀・ )精神安定剤くれない?

飄々としているが、モララーさんだって心中は不安でいっぱいなのだ。
ショボン君から錠剤を受け取ると、一粒飲んだ。
錠剤はまだたくさんあるが、一日一粒が使用目安となっているので、もう飲めない。
クーさんからもらった精神安定剤・ヴィプクオリティを使うのは、これが初めてだった。

( ・∀・)この錠剤は水ナシってのが良いよね。

そう言うと、モララーさんはパソコンの前に着席した。



9: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:07:09.10 ID:x//I+Onh0
「ランクは?」

( ・∀・)中級

「表示はどうする?」

( ・∀・)クーさんが使ってたXPの表示に戻してくれるかな

クーさん。という固有名詞に皆が反応する。
が、既に着席したので声は出せない。

「わかった、少しまっていろ」

男の声がすると、僕がプレイしていたMeの画面が一瞬暗くなる。
そして、すぐにXPのマインスイーパに切り替わる。

表示された盤面は中級。
盤の大きさは16×16で、地雷の数は40。
中級の初挑戦が、始まった。



10: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:09:27.60 ID:x//I+Onh0
( ・∀・)……

( ・∀・)ここかな

一手目選択。

( ・∀・)おっ

やや開拓。また一手。

( ・∀・)………・ふぅ

一手選ぶごとに一息。
やっとのことで4手ほど選択したが、未だに手詰まりの様子は見えない。
しかし、たった4手に多くの時間を割いた。

( ・∀・)精神力を使うね
    こりゃ、薬が無ければプレッシャーにつぶされてたかもね

マウスを握る手は、震えていない。
汗もかいていない。
モララーさんの目は、まっすぐディスプレイだけを見つめている。



13: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:11:29.61 ID:x//I+Onh0
(;゚ー゚)(このままいけば……クリアできるかも?)

僕が隣にいるしぃさんを一瞥すると、彼女もこちらを見てきた。
彼女はすでに泣きやんでいたが、今度は汗をかいている。
緊張によって荒くなった呼吸でも、水分をかなり消費させられる。

カチッ

クリックの音がして、僕らはモララーさんの方に向き直る。
彼は先ほどと同じペースでクリックを続けている。

今は、とにかくモララーさんのプレイ成功を祈るだけだ。

カチ……カチ……

クリックする音だけが、響いている。



15: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:12:26.64 ID:x//I+Onh0
( ・∀・)ハイスコアを狙うわけじゃないから、ゆっくりやっても良いよね

現状、中級盤の半分ほどの土地が開いている。
モララーさんは手を止める。
手詰まったわけではない。僕から見ても、かなり開ける場所はある。

「ああ、ゆっくりしていけ」

( ・∀・)ゆっくり、ねえ……

早く出たいのは、モララーさんも同じだろう。
彼は「ミルナ」という上司に恩があるらしい。
人間のできたモララーさんが信頼をよせる人物。会ってみたい。

( ・∀・)焦れると良い仕事はできない
    焦らずやるよ

クリアは、ぼんやりと見えてきている。
このまま、失敗さえしなければ



16: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:13:41.01 ID:x//I+Onh0
( ・∀・)ふー。汗かいてきた

モララーさんはそう言ったが、彼が露出している部分の肌には、汗は浮かんでいなかった。
が、しきりにハンカチで額や首を拭いている。
プレイ開始から、何度も休憩を挟んでいる。

( ・∀・)さて、再開するかね

モララーさんは、ここまで喋る人だったろうか。
口数が増えるのは、精神的な圧迫のせいか。
僕も、プレイ中は周りの沈黙に耐えかねて、思ったことが口に出ることもあった。

( ・∀・)あ、その前に、君たちに伝えたいことがある。

モララーさんは、ディスプレイを見つめたまま僕ら8人に話しかけてくる
「伝えたいことがある」
僕らは、一斉にデジャヴを感じた。
クーさんの再現。

( ・∀・)もしも僕がここから出られなかったら、
     「ラウンジ商事」の東風=ミルナ部長に伝えてほしいんだ。

クーさんと、同じ流れ。
自分の知り合いに、おそらくは大切な人に、



18: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:14:52.05 ID:x//I+Onh0
( ・∀・)東風部長は、福岡の博多にいると思う。
     僕や部長はそこで働いているんだ。

僕ら8人はそれを聞くしかない。
僕らを見ずに、モララーさんは話を続ける。

( ・∀・)「お世話になりました」
    って、伝えてくれる?

('、`#川……

ペニサスさんは、何かに怒ったようだった。
僕やショボン君や、しぃさんには分からない、何かを感じ取ったようだ。
中級挑戦者の3人のことは、深くまで読めない。

( ・∀・)ま、クリアするつもりではいるんだけどさ



19: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:16:29.26 ID:x//I+Onh0
( ・∀・)条件が一番厳しいっていっても、所詮は中級でしょ

彼はどんどん土地を広げていく。
旗も次々に立てていく。
僕が見たところ、旗の立て方に失敗は、無い。

( ・∀・)残りは1/4ってところかな

正方形の中級盤は、もう既にかなり開かれている。

( ・∀・)……

プレイは進行する。
普通ならとっくに終わっていても良い時間だが、焦るわけにはいかない。
指先ひとつのミスで、命が奪われる。

モララーさんの挑戦しているランクは中級。
そのランクは僕らにとって初挑戦。
彼自身は、この中でもトップクラスの実力。

失敗が後に残す影響は、大きすぎる。



20: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:17:50.65 ID:x//I+Onh0
ついに残ったのは4マスだけとなった。右下の一番隅の1マスと、それを囲む3マスだ。
地雷は、残り1つ。
4マスの内、1マスが地雷。

( ・∀・)4マスある内の1つしか地雷が無い

( ・∀・)なら、このマスが地雷だね

モララーさんが迷わず指したのは、右から2列目、下から2行目のマスだった。
つまり、それ以外の3つのマスがセーフだと、モララーさんは推察した。
セーフだと判断したところを、迷わずクリックしようとする。

( ・∀・)この4マスの塊の上側のマスにも左側のマスにも地雷の反応があと一つずつある。

( ・∀・)どういうことか、っていうとね?
    上にも左にも接しているマスに地雷がある。
    最右下のマスは、どちらにも接していないからセーフ。
    その左のマスだと上に、上のマスだと左に接していないからセーフ。

モララーさんの説明も、中々に分かり易い。
が、それは紙の上に書いたらの話だ。

( ・∀・)だから、ここに地雷がある。

理解しきらない内に、また右から2列目、下から2行目のマスを指す。



22: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:19:56.57 ID:x//I+Onh0
( ・∀・)ちょっと冷静になれば分かることだ。

そうは言うが、ここまでベラベラ喋る彼の頭は冷静とは思えない。
「らしくない」のだ。

僕の頭では、モララーさんの判断が正しいのかどうか分からない。
彼が冷静では無いことだけは確かだが。
モララーさんの決断が正しいのかどうか、ドクオさんの方を見る。

彼はただ俯いて笑っていた。

判断、できない。
中級挑戦者達の、常識を越えた神経は、僕には分からない。
なぜ笑える。

( ・∀・)僕の判断が正しいかどうか、イマイチ自信が持てないかい?

プレイが始まってから初めて、モララーさんがこちらを振り向いた。
一重まぶたの目が、僕ら8人を捕らえていく。

( ・∀・)信じて、くれよ?

モララーさんは、またディスプレイの方へ顔を向けた。



24: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:21:15.58 ID:x//I+Onh0
僕では判断できないが、きっと大丈夫。
モララーさんを、彼の判断を、信じることにした。



モララーさんの右手に握りしめられたマウスが盤の右下へと動いていく。







カチッカチッカチッ








決断した三つのマスを、三連打



26: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:23:20.07 ID:x//I+Onh0
( ・∀・)成功、だよね

3つのマスから現れたのは、数字マス
つまり、地雷を踏まずに3マス開いた。
中級を、クリアした。

「苛猫ウララー。中級をクリア」
「残りは、初級2回・中級2回・上級2回・オリジナル盤を1回だな」
「未プレイ者は6人・一度クリアした者は3人、総プレイヤーで9人」

「なかなかやるじゃないか」

( ・∀・)そいつはどうも

「君は、僕にとって脅威となりうるかも知れないね。怖い怖い」

中級をクリアしたモララーさん。
彼がプレイ中に言った言葉を、もう一度思い出す。
「伝えたいことがある」

クーさんの声とダブったが、思い出せた。



27: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:25:22.40 ID:x//I+Onh0
「伝えたいことがある」
その言葉の続きを思い出そうとした時、ペニサスさんが立ち上がった。

('、`#川 モララー

( ・∀・)なんだい?

('、`#川 あんた、自分の言葉の責任も取らない気なの?

( ・∀・)んー?

('、`#川 自分で「東風部長に会いたい」とか言ったクセに、
     なんで他人に遺言を残すの!

( ・∀・)……

('、`#川 生きて帰ってみせろ!
     東風=ミルナとか言う奴に、会うんでしょ!?

ペニサスさんは、まくしたてる。
モララーさんはその勢いに気圧されていた。

( ´∀`)ペニサスさん。落ち着くモナ。

僕らがとまどっていると、モナーさんがペニサスさんへ声をかけた。
彼が発言するのは、珍しかった。



28: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:27:27.63 ID:x//I+Onh0
( ´∀`)そんなに興奮してると、何か起きた時に対応しきれないモナ

('、`#川……フーッ、フーッ!!

モナーさんの落ち着いた声を聞くと、ペニサスさんは黙った。
まるで猛獣と猛獣使いだ。
場違いな想像を、してしまった。

('、`*川………そうですね……

( ´∀`)モララーさんも、あまり軽率な発言は控えて下さいモナ
      クーさんの再現をしたモナね?
      あの言動は皆の心を動揺させたモナ

( ・∀・)……すみません

30過ぎくらいに見えるモララーさん。
30前くらいに見えるペニサスさん。
倍を生きた人間のしゃべり方と、その表情が彼らの緊張をとく。

モナーさんは、何者なんだ?



29: ◆Dti7WkoCEo :2008/09/05(金) 22:28:56.02 ID:x//I+Onh0
(;゚ー゚)モ、モナーさんは、何のお仕事をしていらっしゃったんですか?

( ´∀`)カウンセラー的な仕事、とでもいいますか、
      なんとも区分の難しい仕事でしたモナ
      正式な呼称だってなかったし……モナモナ

カウンセラー的。
なるほど、説き伏せるのではなく、落ち着かせるのが本分か。

( ・∀・)それでも、もしも、これから僕に何かあったら
      「お世話になりました」と、東風部長に、伝えてください

('、`*川………わかったわよ

言葉で返したのはペニサスさんだけだった。
僕らも、頷いて了承した。









(モララー・中級編)終わり



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