( ^ω^)ブーン達はマインスイーパに集められたようです
- 14: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 12:33:40.41 ID:vSPOjcFu0
- コンクリート部屋には、最初10人の男女がいた。
ある者は裏切って逃げ、ある者は自ら死を選び、ある者は失敗によって出て行った。
運に恵まれなかった者も多い。
最後まで、正々堂々戦い抜いた人は少ない。
クーさん。モナーさん。ショボン君。
このくらいだろうか。あの遺言を遺したハインさんは、カウントすべきなのだろうか。
とにかく、たくさんの人をこの部屋から出て行き、死んだ。
僕は死に隣り合うコンクリート部屋にいる。
だが、まだ生きている。
(;^ω^)
裏切られながら、裏切りながら。
僕はここまで生きてきた。
- 17: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 12:35:47.73 ID:vSPOjcFu0
- いろんな人に裏切られ、僕は一度人を信じることを恐れた。
恐れ、残っていたプレイヤー達を突き放した。
行動には移さなかったけれど、幼いショボン君の心には、言葉だけで深い傷だったろう。
そんな僕でも、皆は見捨てなかった。
貴重な戦力という目で見ていたのかも知れないけれど、それが僕には温かくて。
このマインスイーパで、最も過酷な条件の中級を、二度クリアした男。
福岡のサラリーマン。苛猫=ウララー。
僕がここまで回復できたのは、彼のおかげだろう。
( ・∀・)…………
- 22: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 12:38:23.73 ID:vSPOjcFu0
- 人間不信を引きずっていた頃の僕は、ショボン君を突き落とした。
初級と中級が残っている状況で、僕は初級を譲らなかった。
初級にもそれなりのリスクはある。
しかしそれは中級とは比べものにならない。
ショボン君はそれに飲み込まれた。
僕が殺したようなものだ。
そして僕は、罪悪感にさいなまれていた。
- 23: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 12:39:53.70 ID:vSPOjcFu0
- 罪悪感の渦から引きずり出してくれたのは、やはりこの人だった。
( ・∀・)僕は、前にも一度、マインスイーパに集められたことがあるんだ。
言葉の意味が、分からなかった。
いや、一語一語の意味は分かる。
英訳だってできるほどに、意味は分かる。
罪悪感の渦から出た僕は、混乱の渦に飲み込まれてしまった。
しかもそれは、コミカルな要素など微塵も無い話。
人生で二度も拉致され、意味の分からないゲームに参加させられた。
彼はそう言っているのだ。
( ・∀・)信じられないかな?
監視官や、執行人に確認してもらっても良いよ
(;^ω^)お…………
勝手に話は進む。
モララーさん、ややマイペースなところがあるな。
- 26: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 12:41:52.26 ID:vSPOjcFu0
- ( ・∀・)僕が以前のマインスイーパの話をすることで
君がプレイをする時にどう影響するか分からないけれど……
僕が君にできるのは、これだけだ。
( ・∀・)君は放っておくと壊れそうだからね。
何か一石を投じなければ、と思ったのさ。
けど、僕の手元にある石は、昔話だけだった。
( ・∀・)この石はどう働くか分からない。
実はこれはナトリウムの塊で、君の心に大きく波を立てるかも知れない。
実はこれは石ではなく羊毛で、君の心には何も影響しないかも知れない。
( ・∀・)話は、聞いてくれるよね
( ^ω^)…………
無言で頷いた。
ナトリウムの塊たり得る話に期待した。
- 27: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 12:43:22.85 ID:vSPOjcFu0
- ( ・∀・)前回のプレイは、九人が集められたんだけど、
結果から言うと、脱出できたのは二人だけだった。
僕と、もう一人、「オトジャ」っていう男だよ。
( ^ω^)…………オトジャ。
変わった名前では無い。
現在の日本の双子兄弟の、弟の方に多い名前だ。
( ・∀・)…………彼については、後々説明しよう。
( ・∀・)ま、そんなに長くないから。聞いてくれ
そして、彼の昔話は始まった。
- 30: ◆Dti7WkoCEo [最後の行:注1] :2009/05/24(日) 12:45:19.56 ID:vSPOjcFu0
- ――――( ・∀・)――――
あの時のプレイ部屋は、今回ほど綺麗じゃなかった。
たぶん、今回のマインスイーパにあたって、作り直したんだろうな。
でも、構造なんかは一緒みたいだ。
まあ、本題に入ろう。
前回のマインスイーパは、プレイヤーが9人集められて始まった。
オリジナルというランクは無かった。
ランクの数に応じてプレイヤーが集められるんだろう。
それ以外はルールは変わっていない。
「迷宮の回避」・「稚戯の仮面」・「傍観者の沈黙」・「閉塞の小部屋」
と題された4つのルールが軸だった。
ネーミングは監視官の趣味だろうね。
- 33: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 12:46:30.36 ID:vSPOjcFu0
- 「迷宮の回避」は上級への逃げのことだ。
今回でも同じルールだ。
執行人からの説明には無かったけどね
「稚戯の仮面」は初・中級による死の危険のこと。
「傍観者の沈黙」はプレイヤー以外の発言権を奪うこと。
「閉塞の小部屋」は、プレイヤーはどのような事情があろうと、この部屋から出られないこと。
ま、要するに今回と変わらないってことだよ。
ルール面ではね。
だが、前回のプレイは、今回と決定的に違うことがあった。
プレイヤーだ。
僕らプレイヤーに違いがあった。
- 34: ◆Dti7WkoCEo [9行目:注2] :2009/05/24(日) 12:47:23.98 ID:vSPOjcFu0
- どうやって調べたか知らないけれど、今回の僕たちはマインスイーパの上級者ばかりだった。
運悪く脱落した者達も、大抵の人よりは上手いと思う。
だが、前回は本当に実力差にバラツキがあった。
上級者から、素人までいた。
僕?
僕はその当時はマインスイーパが特別上手かった、ということは無い。
当時のハイスコアは5・30・90くらいだったと思う。
問題なのは素人だ。
9人しか居ないプレイヤーの中、素人は6人もいた。
あれは笑えない事態だった。
経験者は僕と、サダコって女と、さっき言った「オトジャ」だけだった。
そう、素人はみんな死んだ。
でも。執行人に処刑された訳じゃない。
- 35: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 12:48:47.18 ID:vSPOjcFu0
プレイヤー同士での殺し合いがあったんだ。
- 38: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 12:50:51.19 ID:vSPOjcFu0
- 殺し合いっていうと、ちょっと語弊があるかな。
酉人=クックルっていう素人が居た。
彼は、プロボクサーでね。
ボクシングファンなら、名前くらい聞いたことあるかも知れないね
クックルは、ルールを聞いた瞬間に全てを理解したみたいだった。
その点に関しては、誰よりも頭が良かったと言わざるを得ない。
上級の価値の高さと、素人という存在が邪魔であることを。
で、ルール説明が終わった途端に、彼は別のプレイヤーに殴りかかった。
所謂「上級の椅子」を埋められたくなかったんだろう。
彼は、椅子をいかにして確保するか、その問いに対して「対戦者を減らす」という選択をした。
倫理的には間違ったことだが、戦力にならない人間が減ろうと、関係なかった。
サダコもオトジャも僕も、そう感じた。
だから、クックルを止めなかったんだ。
自分達は生きる価値があるから、殺される心配は無いと踏んでいた。
そしてそれは間違いではなかった。
クックルは僕たち――戦力になる人間――まで消すことはしなかった。
クックルがの失敗は、そこだった。
- 41: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 12:52:38.57 ID:vSPOjcFu0
- 彼は、僕らを消さなかったことによって
「脱出の為には経験者が必要」であることを表に出した。
それは経験者に圧倒的な優位性を握らせることだ。
経験者が上級を選んでも、彼はそいつを殺せない。
その段階で、僕らとクックルの命の重さは変わってしまった。
クックルが脱出するためには、僕らがクリアしなければならない
僕らがクリアするには、僕らは生きていないといけない。
クックルの命をつなぎ止めているのは、僕たちに他ならなかったんだ。
- 44: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 12:55:23.13 ID:vSPOjcFu0
- ( ゚∋゚)……………………
おそらく、彼は最初気付かなかったんだろうね。
命を乗せた天秤が、傾いていることに。
その傾きを容赦なく利用したのは、僕とオトジャだった。
( ・∀・)
天秤の傾きに気付いたのも、僕が一番早かっただろう。
一番最初に指名された僕は、迷わず上級を選んだ。
クックルは手出しできない。
僕は一巡目を上級でクリアした。
クックルは僕が上級を選んだことに激怒するが、やはり僕を殺すわけにはいかない。
あざ笑う僕に対し、何もできないのだ。
- 47: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 12:57:15.38 ID:vSPOjcFu0
- 川д川
一巡目の2人目。
サダコと名乗った女だった。
彼女は中級を選んだ。
自殺願望があったわけでは無いだろう。
今回でいう、素直=クールのような存在だったのだ。
つまり、責任感の強い正義の味方。
そういう役回りは、絶対に必要なのだが、絶対に早死にする。
彼女は幸い一巡目を切り抜けた。
一巡目の3人目はクックルだった。
一瞬で5人を殺した、大男。
だが、彼のプレイは開始されることは無かった。
- 50: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 12:59:46.86 ID:vSPOjcFu0
- クックルは二つ目の致命的なリスクを見逃してしまった。
「自分こそが最強」という慢心が、クックルに危険を察知させなかった。
(; ∋ )
(´<_` )
オトジャが持っていたスタンガンで、気絶させられたのだ。
そしてクックルは「3分ルール」に乗っ取って失格となった。
オトジャのやりたかったことは分かる。
上級の椅子を、戦略的に将来性のない男に潰されたく無かったのだろう。
実際、一巡目の最後のプレイヤーである彼は、上級を選び、クリアした。
スタンガンを撃ち続けなかった理由は、人殺しになりたくなかったから。
執行人に手を下させることで、クックルとの差別化をはかったのだ。
まあ、彼の妙なプライドだね。
- 58: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 13:03:01.43 ID:vSPOjcFu0
- その後は何も無くプレイが続いた。
最後の上級の椅子は、僕が潰した。
結局、僕は上級→上級→初級をクリアしただけで部屋から出ることができた。
オトジャは上級→初級→初級→中級。
サダコは中級を3回挑戦し、最後の中級で失敗した。
もちろん死ぬのは中級と初級のみ。
上級は逃げ皿というルールは一緒だ。
つまり、僕とオトジャは、裏切り者だった。
サダコは無表情でプレイし続け、無表情で失格となった。
部屋から出る時に、「呪います」と言ったけど、誰に対してかは分からなかった。
- 63: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 13:04:59.99 ID:vSPOjcFu0
- (;^ω^)……サダコさんは、なんで上級を選ばなかったんですお?
( ・∀・)オトジャのスタンガン。
クックルは居なくなっても、無言で脅す人間は居たのさ。
僕を脅すのはリスクが高いとみて、やめたようだがね。
( ・∀・)最後の最後で中級をやることになったのは、彼も誤算だったろうね。
ま、クリアできたんだけどさ。
(;^ω^)……お………………
( ・∀・)とにかく僕はオトジャに便乗した。
サダコに中級を2回分クリアさせたのさ。
- 66: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 13:06:43.77 ID:vSPOjcFu0
- ( ・∀・)僕は裏切り者だった。
罪の数では、ジョルジュやペニサスを上回るほどの。
むしろ便乗犯ということで、質でも彼らの罪を上回る。
( ・∀・)だけど、それを償うことはできないわけじゃない。
再びこうしてマインスイーパの舞台に立てるなんて、思ってもいなかった。
( ・∀・)これは、チャンスだと思った。
贖罪のチャンス。
贖罪になるかどうかは分からない。自己満足なのかも知れない。
( ・∀・)でも、良いんだ。
これで、良いんだよ。
どうしてこんな話を僕にするのか、不思議だった。
僕、または彼自身の中級プレイに役立つわけでも無い。
モララーさんの心が落ち着くのなら好きに話せば良いが、明らかに彼自身にとって愉快な話ではない。
- 74: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 13:09:50.19 ID:vSPOjcFu0
- そんな思いを見透かしたかのように、彼は言った。
( ・∀・)どうして僕がこんな話をするか、分からないだろうね
( ・∀・)さっきも言ったけど、一石を投じたんだ。
影響がどう出るかは、分からん。
ナトリウムが、うまく爆発してくれれば良いんだが
( ・∀・)君を落ち着かせるだけなら、先人の残した偉大な言葉を並べれば良い。
けどね、それじゃ意味が無いんだよ。
( ・∀・)僕が伝えたかったのは…………
一呼吸。
( ・∀・)ショボン君のことで落ち込んでいる君も、
君が頼りにしている僕も、
本質的には変わらないってことだ。
- 77: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 13:12:35.75 ID:vSPOjcFu0
- ( ・∀・)自分に自信を持て。
罪を悔いるのは、ここを出てからでも遅くない。
それに、シィやペニサスに比べれば、君の罪は軽いもんだ。
( ・∀・)自信と勇気を持てば、なんとかなるんだ。
( ^ω^)…………はい……
( ・∀・)返事は元気よく、な。
(;^ω^)……はい!
これで彼の話は終わりだった。
彼にしては必死な話だった。
内容も、口調も。
普段と違わないように聞こえるかも知れないが、彼は焦っていた。
唯一残った仲間が、心理的に不安定であることに。
僕の危険イコール彼の危険。
もちろん僕を護る意味もあるだろう。
それでも、彼にしては、必死すぎた。
焦っているのは、僕よりもむしろ、モララーさんかも知れない。
- 83: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 13:15:56.61 ID:vSPOjcFu0
- とはいうものの、僕の焦りも尋常では無かった。
モララーさんの意見のどこにも「僕が勝ち残れる根拠」や「僕が罪人でない理由」は無かった。
それでも、必死に話してくれたモララーさんにその事を言うのは申し訳なくて。
そして、口に出してしまうと、初級をクリアしたという、唯一の自信までも壊れてしまいそうで。
だから無理に元気よく返事をし、
( ^ω^)
無理に笑顔を作った。
( ・∀・)
モララーさんは、僕の表情を見て満足げに笑った。
まず、僕の作り笑いを見て、満足しようとした彼の心があった。
また、彼は満足し、安心したと思おうとしていた僕の心があった。
- 84: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 13:18:42.68 ID:vSPOjcFu0
- 僕達二人は、限界まで来ていた。
仲間の裏切りや死というものに対して、あまりに近く、長く居すぎた。
僕が呟く「勇気を持て」という言葉は、あまりに小さい。
コンクリート部屋に響くことさえかなわない。
勇気。
まだ、僕の心に残っているだろうか。
マインスイーパを経験と知識に頼る僕は、勇気を用いたことが無い。
普段は不可予知が出ればすぐにF2を押すほどだ。
ジョルジュやクーさんの時みたいな、ノーヒントスタートでも、F2を押す。
日常生活でもそうだ。
好きな女の子に告白する勇気は無い。
クラスメイトに親友ィョウへのイジメをやめるように言う勇気も無い。
なけなしの勇気は一巡目の初級のプレイで使い切った。
残りカスのような勇気は二巡目の裏切りで使い切った。
本当に、勇気の貯蔵庫は空っぽになったのではないだろうか。
- 87: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 13:19:36.48 ID:vSPOjcFu0
- モララーさん。
僕、ダメかも知れないですお。
( ω )
( ∀ )
(昔話、終わり。)
- 91: ◆Dti7WkoCEo :2009/05/24(日) 13:22:42.52 ID:vSPOjcFu0
-
注1。
ルールのネーミングは作者の友人によるものです。
厨臭いと言ってやれば喜びます。
注2。
モララーの当時のハイスコア「5・30・90」は初級5秒・中級30秒・上級90秒でクリアしたことを意味します。
たいしたことない。なんて言ってますが、かなりのスコアです。
あと、最後に出てきた「F2」(ファンクションキーの2番)は、マインスイーパのリセットボタンです。
もちろんこの話の中では使用不可です。
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