( ^ω^)ブーン達はマインスイーパに集められたようです

26: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 08:43:18.68 ID:M/j/ZVJc0
【最後のプレイ】

(#・∀・)待てよ

指名の直後に、異を唱えたのはモララーさんだった。

(#・∀・)なんでだよ。
     おかしいだろ!

「ダメだ、決めるのは俺達だ」

(#・∀・)お前『達』?
     お前以外の誰の意志があるんだ

食い下がるモララーさん。

「5人の執行人だよ」

(#・∀・)ならオトジャ、お前が出てこい!
     監視官じゃ話にならん!



28: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 08:45:28.62 ID:M/j/ZVJc0
(#・∀・)なんでブーンを指名したんだ?

「なんだ?」

声が変わった。
スピーカー男よりも、声は小さく、低い。
オトジャという執行人だろう。

いつか「クセモノはまだいる」と耳打ちしてきた執行人の声だ。
そして、彼はモララーさんと同じく前回のマインスイーパの生き残りでもある。

(#・∀・)なんだ? じゃねえよ!
     お前、さっきの話聞いてなかったのか!?

「さっきの話とは?」

(#・∀・)前回のプレイの時の話だよ!
     俺が再びプレーヤーになってしまった理由は……っ

(#・∀・)贖罪のためなんだろ!?
     上級をやってしまった俺が、死んでしまったサダコに対する!
     なら、俺が死ぬまでプレイするべきなんじゃないのか!?



29: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 08:47:05.16 ID:M/j/ZVJc0
「…………」

(#・∀・)他の執行人も、ブーンより俺が死ぬ方が面白いはずだぜ!?
     内藤=ホライゾンという地雷除去人は、このマインスイーパでかなり成長した!
     俺に匹敵するくらいにな!

もちろん嘘だ。
マインスイーパを上達させるのは経験であって、二三度のプレイで上達はしない。

(#・∀・)だから!
     クリアの可能性が同じなら、「面白い」方を選んだらどうだ!

「俺は、お前を指名した」
「が、多数決なんだ、仕方有るまい」

(#・∀・)なら、もう一度決をとりな。
     俺の言葉で、意見を変えた奴が出るかも知れないぜ



31: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 08:49:19.39 ID:M/j/ZVJc0
「…………監視官、どうします?」

別の男の声がマイクに集音された。
頬傷男の声のようだったが。

「決を取り直そう」

(#・∀・)そうしなっ。

辛そうだ。
体調が悪いのだろう。
トイレから戻ってきた時もそうだった。

顔色が真っ青になっている。
今の言葉も冷静では無かった。言葉にはなっていたが、論としては滅茶苦茶だ。
明らかにモララーさんの精神状態がおかしい。



34: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 08:51:15.03 ID:M/j/ZVJc0
( ^ω^)…………大丈夫ですかお

(;・∀・)大丈夫だ。ちょっと大声を出し過ぎた。

それなら、そんな顔色にはならない。
おかしい。
明らかに体調が崩れている。

(;・∀・)ぐぅ…………

頭を押さえるモララーさん。
頭痛が酷いのだろうか。
原因は分からない。この優秀な地雷処理人が、今さらストレスで潰れるだろうか?

(;・∀・)大丈夫だ……

( ^ω^)僕のことを心配して、ああ言ったのなら、今すぐ取り消して下さい。
      僕も覚悟を決めています。
      モララーさんに守って貰う必要は、もう無いんです

(;・∀・)立派になったな。
     だが、そんな理由じゃない。
     遠慮無く、後に回りな



37: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 08:52:58.21 ID:M/j/ZVJc0





『後に回りな』

(;・∀・)

それが意味することは、とても悲しくて。

( ^ω^)

その意味に彼自身が気付いていないことが、もっと悲しくて。



39: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 08:54:28.64 ID:M/j/ZVJc0
「決を取り直した」

「苛猫=ウララー。君が次のプレーヤーだ」

(;・∀・)よっし。

「3分以内に着席せよ」
「しなかった場合、プレイの意志無しと見なし……」

言い終わる前に、彼は椅子に座った。
ふらつく足を押さえながら。
座った途端、胸を押さえて嘔吐したけれども。

彼は座った。



40: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 08:58:35.51 ID:M/j/ZVJc0
「プレイするランクは、中級しか残っていない」
「よって、自動的に中級のプレイとなる」

(;・∀・)ああ、かまわない。

「では、始めよ」

ゲーム開始。

これが最後のゲームになるのなら、それはそれで良い。
最後のゲームにならなかったとしても、僕はクリアする自信と覚悟がある。
だがそれでは、僕は生きて帰れるが、モララーさんは……



41: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 08:59:55.71 ID:M/j/ZVJc0
(;・∀・)………………どんどん進めよう。
     悩んでも仕方ないのが、マインスイーパだから。

いきなりノーヒント状態からの開始だった。
一手目のマスは1。
中級で「1」が出た時は隣り合うマスを開いた方が良い。というのが一般論だ

確率で言っても、「未来」に繋がることを考えても、隣り合うマスを開くことのメリットは大きい。
そんなことを考えるまでもなく、モララーさんは隣のマスを開いた。
もう、頭が、目が、手が。最善の手を覚えているのだろう。

彼は間違いなく、最強の地雷処理人であるはず。

(;-∀-)………………

それでも飲み込もうとするのがマインスイーパというゲームである。



44: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 09:03:56.80 ID:M/j/ZVJc0
運の要素が強いのだ。
運だけで勝てるゲームでは無いが、運に見放されると負けるゲーム。
それがマインスイーパ。

(;・∀・)…………

中盤までは無事に進んだが、ここでノーヒント状態が再び訪れた。
いびつな円形に広がった開拓地は、既に全てのヒントが使われていた。
これ以上外には出られないという、スケールの大きい不可予知だ。

(;・∀・)…………運だね

このマインスイーパ中級では、モララーさんはかなり運に見放されていると見て間違いないだろう。
ノーヒント状態がこの段階で現れるのは滅多にないことだ。
彼のクリアは難しいかも知れない。

並のプレーヤーなら、発狂していてもおかしくないレベルの手詰まりなのだから。



47: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 09:07:14.73 ID:M/j/ZVJc0
(;・∀・)………………うわ…っ…………!

モララーさんが一瞬焦った。
しかし、何も起きていない。
押し間違えたかと思ったが……クリックをしていないタイミングだった。

(;^ω^)

彼のプレイに不安を覚えたことはあまりない。
普段の態度が自信に満ちあふれているため、安心して見られるのだろう。
それも彼の意図していることだろう。

彼はこれまで今のような動揺を見せることは無かった。
だからギャラリー――僕だけだが――に動揺が伝染る。
思わず声を上げてしまいそうなほど、心をかき乱す。



50: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 09:11:45.25 ID:M/j/ZVJc0
彼の心はかなり乱れていたが、頭は「嫌になるほど」正常だった。
今の焦りの声も、原因があってのことだ。

先程のノーヒント状態をすり抜けて、一段落したばかりでの焦り声。
一息つくタイミングで驚くのは、彼の先読み能力の高さを示している。
僕には何が起きたのか分からなかった。

(;・∀・)……………………っ

僕には分からなかった。
何も起きていないようにしか見えなかった。
何が起きたのか、モララーさんにだけは分かったようだった。



51: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 09:14:50.11 ID:M/j/ZVJc0
(;・∀・)不可予知が、二つもある……
     1/2の戦いを二回やるのか……

(;^ω^)…………!!?

絶望的な状況が、彼には見えていたらしい。
不可予知が二つあれば、普通はF2だ。
しかしこのマインスイーパにやり直しはない。

クリアできる可能性が半減する「不可予知」。それが二つもあるという状況、それが意味することは
モララーさんがクリアできる可能性は25%になったということだ。
さらに不測の事態が訪れるかも知れない。クリアの可能性は、さらに下がる。



52: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 09:16:52.37 ID:M/j/ZVJc0
クリアの可能性を上げることはできない。
下げないようにすることはできても、積極的に上げることはできないのだ。
不可予知は触れないから、まわりを剥がしていくしかない。

(;・∀・)やれることをやる、しかないか。

マインスイーパクリアのための基本。
ヒントが無いように見える所でも、別の場所のヒントが巡り巡って、元の場所のヒントになる。
だから、開ける所を開いておく。

100%安全なマスだけを、先に開いておく。
それが「やれることをやる」という、マインスイーパの基本。

それは、普段のマインスイーパにのみ適用できる言葉であって。
命を賭けたゲームでそれを活用できるのは、常に冷静でいられるモララーさんだけだったろう。
僕やジョルジュなら、不可予知に突っ込んでいったに違いない。



56: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 09:22:00.04 ID:M/j/ZVJc0
マスは開いていく。
彼の手は震えていたが、クリックミスはしなかった。
時折嘔吐し、床には味噌汁や米が零れていた。

(;・∀・)………………

(;^ω^)………………

いろんな意味で、何も言えなかった。
二つの不可予知は確かに存在した。
さらに、「巡り巡って」は通用しなかった。

残り地雷数は2まで来ている。

しかし、数から察せる不可予知では無いし、旗の立て間違えも無い。
ベストを尽くしての、不可予知2つだ。
絶望的な状況を、よくここまで持ってきたものだ。

しかし後は無く、25%に賭けるしかない。

賭けるモノは自分の命。
賭ける相手は執行人
賭けるギャンブルは、マインスイーパ



70: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 09:41:10.36 ID:M/j/ZVJc0
(;・∀・)…………そうだ……

彼がポケットから取り出したのは白い錠剤。
このタイミングで白い錠剤、ということは

(;・∀・)ヴィプクオリティを飲もう……

ヴィプクオリティの適正量をはるかに超える量を、彼は一口で飲んだ。
精神安定剤をあの量飲めば、かならず調子を崩す。
死に至るかどうかは分からないが、かならずおかしいことになる。

(;・∀ )ブファッ

むせた勢いで、彼の口から錠剤が何錠か飛び出た。
机の上に転がったそれを、彼は再び口にした。
合計すると8錠以上は飲んだように見えた。



72: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 09:43:01.62 ID:M/j/ZVJc0
精神安定剤は、その使用方法から察するにかなり特殊な薬だと思われる。
あんなに飲んで良いはずが無い。
紙袋の中のヴィプクオリティが減っていたのは、モララーさんがくすねていたからか。

ひょっとすると、さっきトイレに行った時も飲んでいたのかも知れない。

(; ∀ )あははは…………

そしてまた、同じように大きく身を反り、吐いた。









さっきと違ったのは、吐いたモノが赤かった。










75: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 09:45:22.74 ID:M/j/ZVJc0
(; ∀ )はぁ………………はぁ…………

走った後のように、呼吸のペースが速まったかと思うと、
コンクリート部屋が無音になるくらい呼吸が遅くなる。

顔色も、先程よりはるかに青くなっている。
かと思えば、熱暴走したかのように真っ赤になる。

冷静に盤面を見つめ直したかと思えば、
その直後には再び床に血を吐いた。

彼の精神も、彼の体も、ボロボロになっていた。
僕は、この手に持っているヴィプクオリティという薬の恐ろしさを感じた。
無意識の内に、手にしていたヴィプクオリティの紙袋を投げ捨てた。



78: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 09:48:44.93 ID:M/j/ZVJc0
(; ∀ )………………足りないんだ…………

彼は椅子から降りて、僕が投げ捨てた紙袋を漁り、錠剤を残らず飲んだ。
僕はヴィプクオリティが水無しで飲める薬であることを恨んだ。
これでおよそ15錠以上は飲んだことになる。
ヴィプクオリティの用量は成人で一日一錠。それを遥かに超えている。

(; ∀ )………………ガッ…………

先程よりもはるかに多くの血を吐いた。
髪の毛を両手で力一杯引っ張り、多くの毛が抜けた。
身に付けていたカッターシャツもスーツも、彼の血で赤黒くなっていた。

目は虚ろになり、顔色だけでなく、指も首も、至る所が真っ青になった。
人間の色では無いように見えた。

もう立ち上がることすら適わないようだった。



84: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 09:53:10.16 ID:M/j/ZVJc0
右膝、左膝、両手、頭の順番でコンクリートの床に崩れていった。
まだ生きている。血が一定のペースで口から出てくるのが、その証だった。

出てくる血の量は減っている。
総量が減ったからなのか、心臓のポンプとしての働きが弱まったからなのか。
そんなことは分からないが、彼が死に近づいたのは分かった。

(  ∀ )

もう、どうにもならなかった。
何をすれば助かるか、なんてわからなかった。

( ・∀ )

目が合った。
彼の目には、生きる気力が無かった。
生きていることが辛そうだった。



86: ◆Dti7WkoCEo :2009/07/18(土) 09:54:31.60 ID:M/j/ZVJc0









だから僕は、プレイヤーの座る椅子を持ち上げて、彼の頭にぶつけた。
勢いよく。
彼は動かなくなった。


僕は結局、彼に対して何もできなかった。









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