(,,゚Д゚)ギコと从 ゚∀从ハインと学園都市のようです

18: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:14:26.11 ID:a28KdYqV0

――――第一話

            『ワケありのギコ』―――――――






               Get Set



19: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:16:15.43 ID:a28KdYqV0
様々な建物が並ぶ、学園都市の南側メインストリート。
人々が歩く広い道から少し逸れた先、脇道がある。
そこには、いくら人が多く活気に溢れていようとも、必ず光の当たらぬ場所がある。

怪しいスポットの代名詞、裏路地だ。

日の光があまり届かないそこは、どんよりとした空気が溜まっている。
そして裏というからには良くないイメージが付き物なわけだが、現状で言えばその通りであった。

『あーあー。 そこの生徒、大人しくしろー』

路地に声が響く。
微かなノイズが混じった声は、機械を通して拡大された音声だ。
狭く薄暗い路地に反響し、消えていく。

| () ()|「…………」

声が向けられる先には一人の若者がいた。
路地の暗がりから、こちらを覗きこむように顔を見せている。
少し摩れたブレザーを着ている彼は、一見すればどこにでもいそうな若者である。


だが、その手には刃物が握られていた。



20: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:17:57.19 ID:a28KdYqV0
刃といっても短剣程度だが、それでも上手くやれば人を殺せる。

虚ろな目をした若者の左手にナイフという、誰がどう見ても穏やかではない状況。
そんな中を、先ほどから拡大音声が通り抜けている。

『あれ? 聞こえてないのか?
 あーあーテステス、Tes.Tes.……これ壊れてんじゃね?』

問いかけの言葉に返事が来た。
それは女性のもので、問いの声と同じ方向から。

『壊れているわけないでしょう。
 我々、学園生徒会が用いる備品です』

| () ()|「…………」

『どういう理屈だ。 生徒会が持ってりゃ完璧なのかよ』

| () ()|「…………」

『当然でしょう。
 学園生徒会とは、曲者揃いの学園生徒をまとめる組織なのです。
 どんな備品やアイテムだろうと周期的に整備点検しているのです――科学技術学部の方々が』

『……それ控え目に言っても生徒会関係ないよな?』

『うるさいので黙りなさい馬鹿後輩。
 貴方は与えられた仕事をこなしていればいいのです』



21: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:19:45.29 ID:a28KdYqV0
『や、だからこうやって呼びかけてんだけど……』

『貸しなさい。
 貴方に任せるのは不安ですから』

『って、あ――』

が、という大きなノイズを残して声が途切れる。
裏路地に元の静けさが戻った。


| () ()|「…………」


ただ一つ、大きな問題をほったらかしにしたまま。



25: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:22:23.09 ID:a28KdYqV0
若者が往来するメインストリートがある。
学園都市VIPの南側――つまり『生活区画』に位置するここは、
今の時間帯、最も人の行き来が多くなる場所だ。

授業から解放された生徒達が、食料やアイテム、武具、情報を求めて歩き回っている。

「――――」
「〜♪」
「――!」
「……?」

談笑の声があり、世間話の声があり、真面目に話す声もある。
誰かは立ち止まり、誰かはベンチに座り、誰かは誰かと歩きながら。
広い道の両側には店舗が並び、やはり若者が店員として忙しく働いていた。


活気に満ちている。
若さ特有の瑞々しい活気だ。


そんな道の隅、裏路地への入る小道の前で、二人の男女がコソコソと話し合っている。

(,,゚Д゚)「どうよ?」

(゚、゚トソン「……ううむ」

活発そうな少年と、利発そうな少女だ。



27: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:23:51.50 ID:a28KdYqV0
少年の方は、先ほど裏路地へ放った声の持ち主である。
少女の方は、腰に二枚の曲刃のようなモノを吊っている。

先ほどのナイフを持つ若者と同じブレザーを着ている二人は、ラッパに似た機械を手に頭を傾げていた。
ややあって女の方が、ラッパのような機械を裏路地に向け、

(゚、゚トソン『あーあー……どうでしょう?』

(,,゚Д゚)「…………」

(゚、゚トソン「…………」

裏路地からの返事はない。
機械を手に、彼女は諦めたかのように首を振る。

(゚、゚トソン「応答がありませんね」

(;゚Д゚)(問いかけの内容がまずいと思うんだが、面倒だから黙っておこう)

(゚、゚トソン「つまりこれは――」

うん、と頷き

(゚、゚トソン「――ギコ、貴方が全て悪いということですね」

(;゚Д゚)「なんで!?」



31: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:26:46.83 ID:a28KdYqV0
思わず聞き返した先、少女が無表情に告げる。

(゚、゚トソン「貴方の手にはギコ菌というそれはもう汚らわしい菌が繁殖しているので触れただけで人生最悪です」

(;゚Д゚)「意味が解らん!
     あとトソン先輩、アンタ相変わらず俺のこと嫌いだよな!」

(゚、゚トソン「何を当たり前のことを言っているのですか貴方は」

(;゚Д゚)「ちょっと無駄に行動力があるくらいで、そんな……」

(゚、゚トソン「行動力のある馬鹿ほど扱いにくい存在はいないのですよ。
     そして何より、私が気に入らない理由は――」


| () ()|「…………」


(;゚Д゚)「「っ!?」」(゚、゚トソン

瞬間、二人は同時に跳んだ。
通りの真ん中に着地すれば、今の今まで往来していた生徒達が何事かとざわめく。
しかし二人は、まったく気にかけることなく裏路地の方を注視。

| () ()|「…………」

そこには、先ほどまで路地の奥に隠れていた生徒が立っていた。



33: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:29:22.59 ID:a28KdYqV0
手に相変わらずナイフが握られているのを確認し、トソンは小さな舌打ちを一つ。

(゚、゚トソン「まったく……これ以上好きに動かれると、
     他の生徒に危険が及ぶ可能性があります」

(,,゚Д゚)「この都市に限って言えば、まさに万が一の可能性だけどな」

トソンは無視。
代わりとして、懐から一枚のカードを取り出した。

(゚、゚トソン「仕方ありません。
     未だ許可は出ていませんが……
     現場の判断により武装を解放し、力ずくで取り押さえます」

言った直後、トソンは左手に持ったカードを腰へ。
腰にあるのは彼女の武具で、それはホルダーに固定されている。

トソンは慣れた手つきで、ホルダーにある細い溝へカードを差し込み、そして一気に引いた。



36: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:31:31.76 ID:a28KdYqV0
一瞬の発光。
次の瞬間、空気が抜けるような音と共にホルダーのロックが解除される。
解放された武具が、トソンの左手に握られた。

流れるような動作で、構える。

武具を持つ左手を前方へ。
すると二枚の刃のようなパーツが広がり、その両先端が光の線で結ばれる。

それは、一般に『長弓』と呼ばれる武具だった。

(゚、゚トソン「学園生徒会実働隊員が一人、
     2ndクラス『遠距離弓類(ロングアーチ)』――トソン=シティビレッジ。
     『ヤミツキ化』した一般教養学部二年生のコリンズの制圧を開始します」

(,,-Д゚)「なんというか、まぁ、律儀なことで……」

そう言うギコは、何のアクションもとらなかった。
彼の腰にもまた小さなホルダーが二つあるのだが、カードすら取り出さない。
ギコの『無』という行動に、トソンは溜息を一つ。

(゚、゚トソン「相変わらずですね、貴方は」

(,,゚Д゚)「悪いな、先輩」

(゚、゚トソン「だから気に入らないのです。
     ほら、動かないならば動かないなりにすべきことがあるでしょう」

無感動な言葉に、ギコは苦笑を返した。



39: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:34:41.32 ID:a28KdYqV0
| () ()|「…………」

(゚、゚トソン「さて……」

コリンズと呼ばれる生徒に動きはない。
正面で弓を構えるトソンからも、動きが消えた。

周囲は既に観戦モードだ。
コリンズを知る者や、トソンのファン、そして単純に興味を持った者達が集まり、
裏路地への入り口――つまりギコ達――を中心に半円を作り上げ、勝手に盛り上がっている。

野次馬と化した生徒達の一部は、ギコやトソンと同じように腰や肩、背や腕にホルダーを装備していた。

「手伝おうかー?」
「トソン先輩、頑張ってください!」
「ギコは氏ね」

(,,゚Д゚)「あーはいはい、生徒会の仕事だからね。
    こっから入らないでー……って今『氏ね』って言ったヤツ出てこい!」

(゚、゚トソン「…………」

トソンの目は真剣そのものだ。
おそらく既に周囲の声や音は耳に入っていないだろう。

左手に弓を、そして大きく引いた右手に光の矢を生み、虚ろに立つコリンズを見据える。



40: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:36:36.15 ID:a28KdYqV0
動きは直後。
起点はコリンズだった。

| () ()|「――ね」

(゚、゚トソン「!」

| () ()|「氏ね……氏ね……氏ね……!」

呟きは更に重なり、

| () ()|「氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね――!!」

コリンズが動いた。
ナイフを腰だめに構え、走る。
向かう先は、コリンズへ弓を向けるトソンだ。

(゚、゚トソン「愚直ですね」

そう呟いたトソンの行動は早い。
矢を構えたまま、足腰の力だけで右方向へステップを一つ。
すぐ脇をコリンズが走り抜けていき、半自動的に彼の背後を位置取る。

(゚、゚トソン「――穿ちます!」

瞬間、矢が走った。
光に満ちる一本の線が放たれ、コリンズとトソンを結ぶ。
まさに一瞬の出来事だ。



42: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:38:18.01 ID:a28KdYqV0
| () ()|「氏ね氏ね氏ね氏――っ!?」

びくり、とコリンズの身体が震える。
いきなり身体の挙動を止めた彼は、そのまま崩れ落ちるように倒れた。
突然のことに、しかしギコは大きく頷く。

(,,゚Д゚)「流石はトソン先輩。
    その銀弓から放たれる光矢は高速にして、如何なるものをも穿つ、か」

(゚、゚トソン「いえ、非殺傷モードなので貫通はしていません」

(;゚Д゚)「言葉のあやだっての」

ともあれ仕事は終わった。
トソンの華麗な一撃を見届けた野次馬は解散し、元の喧騒に戻っていく。

いきなりという状況での戦闘。
しかし、この学園都市では大して珍しいことではない。

『武装学園都市』の名が示す通り、この都市においては闘争など日常の範囲内なのだ。



44: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:40:56.95 ID:a28KdYqV0
(,,゚Д゚)「む」

と、不意に内ポケットが振動した。

震えているのはギコの持つ携帯端末だ。
手のひらサイズの機械で、画面の下にいくつかのボタンがあるだけの簡素なもの。
取り出して適当に操作すれば、メールが一件届いている。

ボタンを叩くと、画面から一つの『四角』が飛び出した。

可触の三次元ウインドウだ。
目の前に展開した四角いそれは、青をメインとした半透明という色を持っている。
携帯端末の画面の真上に浮遊するウインドウには、

『武装の解放を許可する』

という文字列が記されていた。
簡潔な一文に、ギコは再び苦笑。

(,,゚Д゚)「ちょっと遅かったなー」

(゚、゚トソン「? 会長からですか?」



45: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:42:28.99 ID:a28KdYqV0
(,,゚Д゚)「見るかい?」

ウインドウの隅を指でつまみ、トソンの方へ『投げ寄越した』。

彼女も携帯端末を取り出してキャッチ。
端末にウインドウを収納してから、画面上に表示する。

(゚、゚トソン「まぁ、無理もありませんね。
     事件発覚から現場の確認、情報伝達、そして情報を吟味した上での判断……時間が掛かるのは当然。
     そしてだからこそ、現場の判断という先行的な権力行使が許されているのです」

(,,゚Д゚)「でも毎回のように行使してりゃあなぁ」

(゚、゚トソン「絶対に行使しない馬鹿後輩に言われたくありませんね」

(,,゚Д゚)「はいはいわろすわろす」

(゚、゚トソン「まったく……」

呆れたような視線を受けていると、慌ただしい足音が聞こえてきた。

ノパ听)ノシ「おぉーいッ!!」

大きな声。
見れば、トソンを同じブレザーを着た少女だ。

遠くからでも解るほど真っ赤な髪をたなびかせながら、こちらへ走り寄ってくる。



48: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:44:03.99 ID:a28KdYqV0
(゚、゚トソン「早い到着ですね、ヒート」

ノパ听)「はいッ!
     実は居ても立ってもいられなくて、連絡受ける前に飛び出してましたッ!」

びしっ、という効果音が聞こえてきそうなほどの敬礼を決めるヒート。
背筋を伸ばし、キラキラと輝いた目で先輩であるトソンを見ている。
まるで褒めてほしくてたまらない犬のようで、きっと尻尾があれば勢いよく振られているだろう。

(゚、゚トソン「己の暴走を素直に報告するのはどうかと思いますが、
     その思い切りの良さは好ましいですよ」

ノハ*゚听)「あ、ああありがとうござみあすッ!!」

(;,,゚Д゚)「ござみあす……」

ノパ听)「おうッ! ギコもいたかッ!」

(,,゚Д゚)「いたよ。 俺だって一応は実働隊員だからな」

そっかー、と頷いたヒートは、倒れているコリンズへ目を向ける。
背中にトソンの矢を食らった彼は、先ほどから微動だにせず地面に転がっていた。



50: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:46:41.79 ID:a28KdYqV0
ノパ听)「今年に入ってからのヤミツキ第一号かッ」

(,,゚Д゚)「一号とか、そんな言い方は止めとけ」

軽くヒートの頭を叩くと、彼女は頬を膨らませてギコを睨む。
しかし自分の言い方が悪いのは理解出来ているので、それ以上何も言うことはなかった。
そして興味はすぐに別の方、つまり倒れているコリンズへと戻る。

先ほどまで狂気にも思える空気を纏っていた生徒は、うつ伏せのまま動くことはない。
その背には微かなコゲ痕のようなものがついている。

目敏く見つけたヒートは、その赤い瞳を輝かせ

ノパ听)「背後からの一撃必倒……流石はトソン先輩ッ!
     その銀弓から放たれる光矢は高速にして、如何なるものをも穿つ、ですねッ!!」

(,,゚Д゚)「あ、それ俺が言っといた」

ノハ;凵G)「ちくしょおおおおおおおッ!!」

仮にもヒートは女の子である。
それでいて放つ言葉が『畜生』であることに、ギコは毎度のことながら呆れた。

彼女と知り合って一年が経つが、こればかりは未だ馴染めない。



52: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:49:03.71 ID:a28KdYqV0
そんなことを思いながら肩をすくめるギコの横。
腕を組み、何やら考えているトソンがいる。

(゚、゚トソン「しかし、春季休暇の最終日……。
     つまり来年度直前にヤミツキ、というのは今までにないことですね。
     今年は例年に比べて忙しくなるかもしれません」

(,,゚Д゚)「まぁ、見えない未来の心配をしても仕方ねぇさ。
    っつーか俺、まだ二年が使う講義室とかの確認終わってねぇから、早く自由になりたいんだが」

(゚、゚トソン「そうですね。 私も仕事が残っていますし。
     ヒート、ここを任せても良いですか?」

ノパ听)ゝ「はいッ! コリンズを保健室へ運びますッ!」

(゚、゚トソン「今までの例を考えればあり得ませんが……。
     もしまた暴れ始めた場合、被害が出る前にまた気絶させて下さい」

ノパ听)ゝ「はいッ!!」

何とも素直で元気の良い返事である。
これがヒートという生徒を語る上で、まず出てくる要素だった。

(゚、゚トソン「同じ時期に入ってきた誰かさんとは大違いですね」

(;゚Д゚)「うっさい!」



54: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:50:52.05 ID:a28KdYqV0
事後処理を行なうヒートと別れた二人は、都市の中心区画へと向かっていた。

この都市は、綺麗な山型という形を持っている。

つまり中心へ向かうためには、どの方角から行っても坂を上らなければならない。
ギコは、これもまた身体を鍛えるため、と自分に言い聞かせながら道を歩く。

周囲、人の数が少し減っている。
昼時という自由な時間が終わったためだろう。
先ほどまでに比べて静かになった道を歩きながら、トソンが呟く。

(゚、゚トソン「……皆、努力しているのですね。
     若いですから、うかうかしているとすぐに追い抜かれますよ」

(,,゚Д゚)「先輩も充分に若いし、強いと思うけど」

(゚、゚トソン「当然です。
     そして、今の話は貴方に言っているのですよ」

(;-Д-)「…………」

今回はこちらの負けのようだ。



57: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:53:12.61 ID:a28KdYqV0
(,,゚Д゚)「でもま、これでしばらくは平和かな。
     アホが勢い余ってケンカとか始めない限りは」

(゚、゚トソン「それでも問題は山積みですがね。
     ここは若者が集う学園都市……未熟な部分は無数に存在します。
     生徒の陳情や問題の処理、イベントの企画進行、都市の管理計画――」

(,,゚Д゚)「まぁ俺は根っからの実働隊員だから、そういうのは関係ないけどな。
    事務も兼任してるトソン先輩は大変だろ?」

(゚、゚トソン「有能な友人がいるので大丈夫です。
     むしろ、扱いにくい後輩と共に行動する今の時間の方が大変です」

(,,-Д-)「言ってくれるね……。
     いつか先輩とはガチでやってみたいもんだ」

(゚、゚トソン「別に今でも構いませんよ?」

トソンの目がギコを見る。
微かな怒気と本気を含んだ視線は、嘗めるな、ということだろう。

下級生が上級生に挑むには、相応の覚悟と実力が要ることをギコも知っている。


――それ以前に、彼には一つの問題があるのだが。



60: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:54:59.34 ID:a28KdYqV0
(,,-Д-)「……止めとくよ。 『理由』が無い」

(゚、゚トソン「『理由(ワケ)ありのギコ』……流石、そのあだ名に違わぬチキンっぷりですね」

(;゚Д゚)「チキン言うなっつーの。
    ってか誰だよ、そんなふざけたあだ名を考えた馬鹿は」

(゚、゚トソン「さぁ?」

(,,-Д゚)「いつか絶対に見つけ出して後悔させてやる……っと」

そうこうしている内に学園前に到着していた。
中心区画を範囲としているのは、学園都市の目玉である『教育区画』だ。

今、ギコ達は、その入り口である――白と黒のコントラストを持つ――大きな門の前に立っている。

(,,゚Д゚)「いやー、しかしよく出来てるよな。
    学園に辿り着くまで、必ず坂道を通らなきゃならんもん。
    嫌でも足腰が鍛えられるってわけだ」

(゚、゚トソン「そういう目的のために作られた、というのが一般的な説ですね」

(,,゚Д゚)「? 違うのか?」



61: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:58:13.62 ID:a28KdYqV0
問いに、トソンは小さく頷いた。
そして周囲を見渡し、誰もいないことを確認してから

(゚、゚トソン「……この学園都市に地下があるのは知っていますね?」

(,,゚Д゚)「もちろん」

それは流石にギコも知っていた。
『教育区画』内にいくつかある、地下への入り口を潜ることで入れる区画だ。

第一階層には『図書館』や『独房』などがあり、
更に、その下の第二階層には『ゲート』なるものが存在する、と。
それら全てを総じて『地下区画』と呼ばれている。

(,,゚Д゚)「で、それがどした?」

(゚、゚トソン「地下区画とは言いますが、実は地中ではありません。
     この学園都市は、中心が盛り上がって……つまり山に似た形を持っています。
     それを考えれば地下区画とは、その山の中に存在していることになります」

(,,゚Д゚)「だろうな」

頷くギコに、トソンは人差し指を立て

(゚、゚トソン「しかし、そうなると……中心部の高さ的に考えて、
     第二階層にある『ゲート』よりも、更に下に階層が存在する可能性があるのです」



64: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:59:53.88 ID:a28KdYqV0
(,,゚Д゚)「……可能性って、学園生徒会にも解ってねぇのか?」

(゚、゚トソン「えぇ、とりあえず私にはまったく」

真面目で学園想いの彼女が知らないとなれば、よっぽどである。
三年生でありながら、この学園のほとんどを頭にインプットしているような生徒だ。

逆を言えば、彼女ほどの人物ですら知りえないよう、『秘匿されている』と考えるのが妥当だろう。

(゚、゚トソン「つまり、この中心部が盛り上がっているという都市の形は――」

(,,゚Д゚)「成程。
    盛り上がっている地形に都市を作ったんじゃなくて、逆に……ってことか。
    でもこれ、触れない方がいい話題なんじゃないか?」

(゚、゚トソン「でしょうね。
     あまり深くまで知ろうとすると、身の危険を覚悟しなければならないかもしれません」

(;゚Д゚)「そんなアッサリと……」

(゚、゚トソン「しかし、知らないことがあると知りたくなります」

(;゚Д゚)「……アンタ、早死にしそうだよなぁ」

(゚、゚トソン「真実を知って死ねるのなら本望かもしれませんね」



66: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 22:03:47.00 ID:a28KdYqV0
そう言って笑みを浮かべるトソンに、ギコは彼女の真意を測ることは出来なかった。
冗談か本気か解らない調子の言葉を吐いた彼女は、ふと足を止める。

(゚、゚トソン「到着です」

(,,゚Д゚)「おーっす」

ギコ達の前に一つの建物が姿を見せる。
学園都市の中心、教育区画――つまり学園の敷地。

その一番奥に構えるは、学園生徒会が使用する二階建ての施設だ。

(゚、゚トソン「さて、まだまだ仕事は残っていますよ?」

(;-Д-)「あー……はいはい、手伝えってことね。
     解ったよ」

仲が良いのか悪いのか。
微妙に凸凹な関係の二人は、軽い足取りで建物へと入っていった。



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