(,,゚Д゚)ギコと从 ゚∀从ハインと学園都市のようです
- 2: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:09:50.25 ID:F9ICQWUG0
――――第六話
『幸先にある不安』――――――――
そこに在るのかと問う必要はない
至ったと思えた時
きっと既に持っているだろうから
- 5: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:12:02.22 ID:F9ICQWUG0
- そんなこんなで無事、始業式は終わった。
仕事を終えた生徒会メンバーは、生徒会室へ撤収。
捕らえた科学技術と錬石専攻学部の生徒達に説教をかまし、主犯格以外を解放する。
あとで、罰として一定の武績を没収されるらしい。
システム上、武績=努力という認識が強いため、この罰は生徒的にかなり痛いはずだ。
何せ自分の努力を無にされるようなものなのだから。
これに反省した彼らは、もう二度と悪巧みなど――
( ,_ゝ )「くくく、我々の魂は不滅よ……」
(,,゚Д゚)「えーっと? 今のは犯行予告として受け取っていいのか?」
( ´_ゝ`)「あ、いや、ちょっとかっこつけただけです。 ごめんなさい」
果たして大丈夫だろうか。
ギコは密かに彼の名を携帯端末に打ち込んでおく。
もちろんブラックリストとして、だ。
- 10: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:14:34.50 ID:F9ICQWUG0
- ギコは生徒会施設の取り調べ室にいた。
小さな部屋で、椅子と机しかない簡易な作りとなっている。
机を挟んだ向こうには主犯であろう兄者とモナーが、隣には付き添いのヒートが座っている。
『落ち着き』という言葉が脳内辞書に記されていないヒートは
既に忙しなく揺れたり、薄い資料をとっかえひっかえしたり、とにかく動く。
もはやいつもの光景を横目に、ギコは兄者の情報を確認した。
兄者=流石、18歳、科学技術学部所属。
漢字の姓名を持つということは、北方の出なのだろう。
北方といえば、仏頂面なミルナの顔が思い浮かぶ。
あの地方の人はサムライやら何やらの関係で、誇り高くて礼儀正しいことで知られているが、
(,,゚Д゚)「……やっぱり噂は噂なんだなぁ」
( ´_ゝ`)「なんか存在自体を否定されてる気がするぞ」
ギコは無視。
携帯端末に名前を打ち込み、とりあえずデータベースにアクセスして確認する。
と、そこで気付いた。
(,,゚Д゚)「……あれ? まだ更新されてない?
アンタ、まだ二年扱いだぞ。 今日から三年じゃないのか?」
( ´_ゝ`)「あぁ、それか」
うむ、と頷き、
( ´_ゝ`)「――留年した」
- 13: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:16:43.19 ID:F9ICQWUG0
- (;゚Д゚)「……え?」
( ´_ゝ`)「だから留年した。
憶えているだろうか、去年の爆発事件を」
言われ、記憶を探る。
確か去年の秋頃、学園敷地内にある科学棟が爆発したことがあった。
原因は、複数魔術の無理な行使による暴発、とのことだったはずだが、
( ´_ゝ`)「あれは俺のミスが引き起こした事故でな。
以前から試していた『とある研究』の実験をやっていたんだ。
そして爆発した」
(,,゚Д゚)「経緯を省くな、経緯を」
( ´_ゝ`)「下らん実験さ。
ただ俺の理論が正しければ……何年か後、お前達は俺の名を聞くことになるだろう。
それも大々的にな」
(,,-Д-)「……遂に我慢できず重罪か」
ノハ;゚听)「い、一体どんなハレンチ事件を起こすつもりだ……っ!?」
( ´_ゝ`)「やっべーやっぱ人は第一印象かよー」
自業自得である。
しかし、留年の原因の一端としては納得のいくところだった。
- 15: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:18:51.99 ID:F9ICQWUG0
- その時の事故の責任をとったところ、かなりの武積を没収されたらしい。
皆が共同で使う施設を半壊させたのだから仕方ない。
しかも課題などではなく、無断で行なった個人的な実験だったというところも響いたのだろう。
( ´_ゝ`)「そして今、俺がここにいるわけだ」
(,,゚Д゚)「留年と今回の未遂はまったく関係ないよな。
むしろアンタの性格が根本的な原因だと思うんだが、どうよ?」
( ´_ゝ`)「罪作りだと思わんかね?」
(,,゚Д゚)「……あぁ、俺達が止めなかったら新たな罪を重ねるところだったよな」
話していると頭が痛くなってきた。
ストレス解消ついでに矯正と称して一発殴りたいが、既に『理由』はない。
ともあれ兄者の聴取は終わったのでヒートに任せ、
(,,-Д゚)「……はぁ、お前も何やってんだよ」
( ´∀`)「ごめんなさいモナ」
兄者の隣に座っていたのは、人の好い微笑を浮かべた少年だ。
- 16: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:21:30.05 ID:F9ICQWUG0
- モナー=ツーネル、17歳。
錬石専攻学部所属の二年生で、ギコと同じ部屋に住んでいる生徒だ。
知る限りでは温厚なはずなのだが、時々、こうしてタガが外れたかのように無茶をする。
(;´∀`)「兄者先輩に誘われて面白そうだったから、つい……」
(,,゚Д゚)「それで武績没収されちゃあ世話ないな。
しかも留年して同じ学年だから、あの人に先輩をつける必要はなくなったぞ」
( ´∀`)「……あの人は尊敬に値するモナ。
だから学部が違っても、これからも僕の先輩だモナ」
言い切ったモナーは、しかしギコの訝しげな視線を受ける。
(,,゚Д゚)「お前もブラックリストに入れてた方がいいのかなぁ」
(;´∀`)「あ、いや、その……技術的な面での尊敬ですモナ。
決してあのような変態行為に憧れを抱いているわけじゃございませんモナ」
(,,゚Д゚)「もしそうだったら今日にでも部屋を変えてもらうところだったよ」
- 19: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:23:46.14 ID:F9ICQWUG0
- しかし実際、兄者の技術力は高いらしい。
一年生の時点で様々な難問課題をクリアし、既に二年生分の武積をも稼いでいたとか。
それでも留年したということは、よほど科学棟の半壊が重罪だった、ということだろう。
(,,゚Д゚)「で、今では妙な実験を繰り返す変人……か」
( ´∀`)「そうなった理由は僕にも解らないモナ。
でも、以前の凄いところを少し知ってるから……」
(,,゚Д゚)「なるほどな。 でも今回のに加担したのはお前の意志で、事実だ。
その罰はちゃんと受け止めろよ」
( ´∀`)「解ってるモナ。 ごめんなさいモナ」
解れば素直に頷くのがモナーの良いところである。
意地っ張りが多い学園都市の中では、なかなかに珍しい存在だ。
(,,゚Д゚)「まぁ、反省してるみたいだし……今日はこれくらいで許してやるか。
俺だから良かったものの、もしここにいるのがトソン先輩だったら大変だったぞ」
(;´∀`)「ど、どういう風に?」
(,,゚Д゚)「まだ数時間は拘束されたままだろうな。
その間、ずっと規律や罰則について延々と説教が続く。
泣いても許されないし……いや、むしろ喜んでエスカレートするだろう」
(;´∀`) ヒィィィ
(,,-Д゚)「それが嫌なら悪さしないことだな」
- 20: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:25:56.90 ID:F9ICQWUG0
- 釘刺し成功。
流石、生徒会の中でも冷徹で有名なトソンだ。
彼女の威を借りたようなものだが、これで悪さをする気が無くなるのならそれが一番である。
最後に再び謝るモナーを部屋から退出させる。
その折、ひぃ、という情けない声が聞こえてきたのは気のせいだろうか。
(,,゚Д゚)「さて、お仕事終わり……と」
あとはクー生徒会長に報告して自由の身だ。
残った時間はハインに都市を案内するために使おう、と思う。
彼女を任された以上、半端に終わらせるわけにはいかない。
仕事終わりの開放感に身を委ねつつドアを開くと
(゚、゚トソン「…………」
(,,゚Д゚)「……ぁ」
今しがた話に出ていた彼女が、そこに立っていた。
- 21: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:27:38.78 ID:F9ICQWUG0
- トソン=シティビレッジ、18歳。
武術専攻学部三年、そして生徒会に所属するギコの先輩にあたり
その腰に吊っている二枚曲刃に似た武装が特徴的な女子生徒だ。
馬鹿が嫌いで、特にギコには冷たく当たることが多いのは何故だろうね?
(゚、゚トソン「聴取の方、ご苦労さまです馬鹿後輩」
(;゚Д゚)「ど、どーも」
(゚、゚トソン「更に重ねて言っておくとするなら、私は別に数時間も拘束したりしませんよ」
頷き、
(゚、゚トソン「一瞬でキメます」
(;゚Д゚)「何を? 何をキメるんですか!?」
問うて気付く。
今のモナーとの会話を聞かれていた、という事実に。
そしてトソンが扉の先で待っていたことを考えると、身体が自然と震え始めた。
(((((;゚Д゚))))) アワワワワワワワワ
(゚、゚トソン「泣いても許しません、でしたね?
むしろ喜びます……でしたか?」
- 23: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:29:21.06 ID:F9ICQWUG0
- 確認をとるような言葉で確定だ。
彼女は、モナーへの脅し文句を聞いてしまっている。
となれば、すべきことは多くない。
(;゚Д゚)「ご、ごめんなさい……」
(゚、゚トソン「おや、随分と珍しい言葉が出ましたね。
何か自分が悪いことをした、と自覚しての態度のようですが」
(;゚Д゚)(怖ぇ! なんかスゲー怖ぇよぉ!!)
怒った時に怒らぬ人が一番恐ろしい、とは言うが、まさにその通りだ。
更に自分で悪いと解っているだけに、自ら悪い方角へと考えを寄せてしまう。
(゚、゚トソン「さて」
(;゚Д゚) ……ゴクリ
(゚、゚トソン「覚悟は良いですね?」
(;゚Д゚) ヒィィィィ
せめて服は勘弁、などと思って身をすくませると同時だった。
廊下のほうから一つの声が飛んでくる。
爪'ー`)y-「こらこら、後輩イジメは生徒会メンバーとしてどーなのよ」
- 25: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:32:35.84 ID:F9ICQWUG0
- フォックス=ヴェルヘルン、19歳。
いつもヘラヘラした笑みを浮かべている男子生徒だが
これでも、学園生徒会の副会長を務める頭脳と能力を持っていたりする。
学部は術式専攻――らしい。
(゚、゚トソン「フォックス先輩……いえ、これは躾です」
爪'ー`)y-「うん、どっちもまずいねぇ。
生徒の規範となるべき生徒会メンバーの君が、それでいいのかい?」
(゚、゚トソン「…………」
少し思考したトソンは、やがて諦めたかのように溜息を吐いた。
(-、-トソン「仕方ありませんね。
しかし、私を怒らせるようなことをした馬鹿後輩にも責任はありますよ。
あることないことを生徒達に吹聴しないで下さい」
(,,゚Д゚)「すんませんっした。
でも先輩の存在って使い勝手いいんだよなー」
爪'ー`)y-「あー、解る解る。
トソン君の名前出すと治まる場ってあるよねぇ」
(゚、゚トソン「……最近、妙に畏怖の視線を感じるのは貴方達のせいですか」
- 28: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:34:46.62 ID:F9ICQWUG0
- このままではフォックス先輩と共に討伐されかねない。
不穏な空気を感じ取ったギコは、慌てて話題を切り替える。
(,,゚Д゚)「と、ところでフォックス先輩はどうしてここに?
いつもは生徒会室に入り浸ってるのに」
爪'ー`)y-「おいおい、僕だって一応は学園に通う生徒だよ?
部屋を出るときもあるだろうさ」
それを滅多に見たことがないから言っているのだが。
しかも、飴をくわえてボーっと椅子に座っている光景しか思い出せない。
たまに口出ししてくる他は、実は仕事してないんじゃなかろうか。
爪'ー`)y-「何やら失礼なことを考えているね?」
(;゚Д゚)「あ、いえ、そんなことないっす!」
爪'ー`)y-「まぁ、事実なんだけど」
(;゚Д゚)「「事実かよ(ですか)っ!!」」(゚、゚;トソン
- 29: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:36:37.23 ID:F9ICQWUG0
- まぁまぁ、と適当にあしらい
爪'ー`)y-「いやねぇ、実は今、生徒会室にはお客さんが来てるんだ。
何やら会長が内密な話をしたいらしくてね……追い出されちゃった」
(,,゚Д゚)「お客さんっすか」
爪'ー`)y-「例の編入生だよ」
(,,゚Д゚)「編入……って、ハインが?」
爪'ー`)y-「あれ、もうあだ名で呼んじゃう間柄?
もしかしてギコ君って意外と手が早い?」
(;゚Д゚)「え? あ、いや、そんなんじゃないっす!
ちょっと仲良くなったっていうか……じゃなくて!
何の話をするのか、とか聞いてます?」
爪'ー`)y-「それを聞かせたくないから僕が追い出されたんだけどねぇ。
まぁ、おそらくは編入についての情報の確認じゃないかな……プライバシー的なもの込みの。
時間がいるって言ってたから、しばらくは入れないと思うよ」
- 31: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:39:37.97 ID:F9ICQWUG0
- 言い終わると、フォックスは新しい飴をポケットから出しながら歩き始める。
(゚、゚トソン「先輩、どちらに?」
爪'ー`)y-「ちょっと術式棟の方へ。
最近、デバイスの調整を怠ってたからね」
じゃ、と適当な挨拶を残して去って行った。
相変わらずの飄々とした態度に、何だか脱力感が肩に圧しかかる。
それはトソンも同じだったようで、二人で顔を見合わせて苦笑した。
(゚、゚トソン「まったく、あれで副会長だというのだから解らないものです。
……では、私も少し時間を潰してきましょう」
(,,゚Д゚)「ここにいても仕方ない、か。
俺もちょっと外に出てくるかなぁ……」
玄関口で待っていれば、話が終わったハインと会うことが出来るだろう。
そう思いながら、ギコは生徒会用の施設の出口へ歩いて行った。
- 33: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:41:20.15 ID:F9ICQWUG0
- と、そんな感じで外へ出てみれば、既に傾きかけている陽がギコを迎えた。
春期ということもあって、この時間になっても暖かさは失われていない。
段々とオレンジ色に染まっていく空を見上げていると、
<_プー゚)フ「よぉ、ギコ坊じゃねーの」
校舎の方角から、一人の生徒がこちらにやってくる。
背に巨大な両刃剣を担いだ大柄な男だ。
彼の名は、
(,,゚Д゚)「エクストか。
その『ギコ坊』ってのは止めてほしいんだけどなぁ……同級生だってのに」
<_プー゚)フ「下らんことに捉われちゃ駄目だぜ、ギコ坊。
それより初日からお手柄だったらしいじゃん」
始業式のことを言っているのだろう。
否定するようにギコは首を振る。
(,,゚Д゚)「学園生徒会実働隊の一員として当然のことをしたまでだ」
<_プー゚)フ「言うねぇ。
そういう謙虚なトコ、好きよ」
(,,-Д゚)「男に好かれても嬉しくないっての。
で、何か用でも?」
- 34: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:43:12.01 ID:F9ICQWUG0
- <_プー゚)フ「いーや、別にねぇな。
強いて言えば、暇を弄びながら歩いてたらお前を見かけたっつーね。
何? 刹那的? ははは褒めるなよ」
(,,゚Д゚)「えーっと……帰ってもらっていいか?」
<_プー゚)フ「待て、待てよギコ坊。 ちょっとしたジョークじゃねーか。
春期休暇はさんで一ヶ月振りに会ったんだから、もっと言うことあるだろ?」
相変わらず面倒な男だ。
何が狙いなのか知らないが、こちらも暇なので適当に相手をすることに。
(,,゚Д゚)「確かに、久々にお前のアホ面を見るなー。
休暇中はどこ行ってたんだ?」
<_プー゚)フ「ん? もちろん故郷に。
実家帰るついでに師匠さん家にも行って、物理的な挨拶してきた」
以前に聞いた話だが、エクストは学園都市に来る前から剣術を習っていたらしい。
師匠さん、という人の詳細は知らされていないが、エクスト曰く『元気なジジイ』だとか。
<_プー゚)フ「昔の礼も兼ねて背後からいきなり奇襲してみたら、ものの見事に直撃してなぁ。
なんか腰押さえて悶えてたけど、いつもの演技だと思ってマウント入れてたら
どうやらマジで腰がイってたらしくて……いやー、大変だった」
(;゚Д゚)「…………」
ズレている。
何かがズレている。
- 35: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:45:04.82 ID:F9ICQWUG0
- <_プー゚)フ「他にも色々やらかしたけど、俺の話はどーでもいい。
俺が聞きたいのはお前のことだ」
(,,゚Д゚)「ん? 俺は別に、お前みたいな愉快なことはなかったぞ」
<_プー゚)フ「……その拳の封印も解けてねぇのか?」
(,,゚Д゚)「む」
なるほど。
それが目的だったか。
見れば、エクストの目に微かな好奇が見え隠れしている。
しかし、残念ながら彼の期待に応えることは出来ない。
(,,-Д-)「……まぁ、な」
<_プー゚)フ「そっか。 だが焦ることはねぇ。
そういうのは焦ったって見つからねぇからな
たとえ来年から模擬戦参加できるって言ってもよ」
うむ、と頷き
<_プー゚)フ「――おいおいあと一年しかねぇぞぉギコ坊!?」
(;゚Д゚)「焦らせたいのか違うのかハッキリしろ!!」
- 37: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:46:39.60 ID:F9ICQWUG0
- <_プー゚)フ「落ち着けよ。 俺だって随分と待ってきてンだぜ?
本気のお前と戦うことを」
苦笑気味の言葉に、ふとギコは過去を思い出す。
一年前の話だった。
学園生徒会に入るための特殊な試験を受けている最中のこと。
真剣に試験を受けようとするギコの隣で、やけに話しかけてくる馬鹿がいた。
それがこの男、エクスト=プラズマンである。
結局、ギコは試験に受かり、彼は馬鹿をやったせいで落ちたが、
<_プー゚)フ「生徒会に入れなかったことに対しての後悔はねぇ。
この広い学園都市の中、お前みたいな奴を見つけることが出来たんだからな」
か、と喉を鳴らして笑う。
その高い背丈を揺らし、腰に手を当て、
<_プー゚)フ「いいか、ギコ坊。 俺は来年まで待つ。
どういう意味か解るな?」
(,,゚Д゚)「…………」
- 38: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:48:34.69 ID:F9ICQWUG0
- この学園においての一年・二年次は雌伏の時だと言われている。
武績や経験を溜め、能力を伸ばし、目指す先を明確にするための時期だ、と。
培った力を発揮することが出来るのは、三年生になってからだ。
それは学園の『とある制度』が関係しているのだが、
エクストが拘るギコとの対戦は、実現するならその上で行なわれるはずだ。
<_プー゚)フ「まぁ、早ければ今年の夏季にでもブチあたることになるかもしれんが」
夏季にあるイベントといえば、
(,,゚Д゚)「武踏祭、か……。
確かに組み合わせが噛み合えば、もしかしたら当たることもあるだろうな。
で、今年も優勝狙いか?」
<_プー゚)フ「もちろん。
去年は、初っ端から乱入してきた渋沢のオッサンに目をつけられたのがまずかった。
あのオッサン、マジ大人げないよな。
だが……今年はそうはいかねぇ」
その試合は見ていた。
たった一撃で吹き飛ばされたエクストの表情は、何故か妙に嬉しそうだったのを覚えている。
曰く、あれほど綺麗に決められたのは初めてだった、とか。
- 42: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:50:33.57 ID:F9ICQWUG0
- (,,゚Д゚)「っていうか、お前だけだよ。
堂々と優勝を口にする馬鹿なんて」
<_プー゚)フ「これでお前も優勝狙いって言ってくれりゃあ、張り合いも出るんだが。
もう同学年で俺とマトモに戦える奴は少なくなってきたからなぁ」
快活に笑う彼の弁は決して嘘ではない。
この男、馬鹿に見えて学年トップレベルの戦闘力を持っていたりするのだ。
背負っている大剣を使っての突撃は、並の上級生でも受け切れない、とさえ言われている。
<_プー゚)フ「さて、この際はっきり言っておくが……俺は先に行ってるぜ。
お前も拳を振るえるようになったら追いついてこい。
そしていつか、俺と本気の勝負をしろ」
(,,-Д゚)「ったく、買い被りだってのに……」
<_プー゚)フ「未だ本気を出したことのない奴が言うセリフかねぇ。
まぁいいや。 とにかく俺は待ってるからな」
(,,゚Д゚)「物好きな奴だ。 せいぜい期待せず待ってろ」
何とも言えないムズ痒さが背筋を這う。
馬鹿とはいえ、エクストの能力の高さは本物だ。
そんな男に期待されるのは、どうしても違うような気がした。
- 45: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:52:29.31 ID:F9ICQWUG0
- 結局、期待されたままエクストと別れることとなった。
これからバイトを入れているらしく、聞けば何やら新しい装備が欲しい、とのこと。
この時期に鍛錬そっちのけで装備に拘る奴は、馬鹿か余裕かのどちらかだ。
エクストの場合、そのどちらにも当てはまる、というのが妙に悔しい。
とんでもない奴に目を付けられているな、と自分の立ち位置を見直していると、
从 ゚∀从「……あ」
声に振り向けば、生徒会の施設の玄関口にハインがいた。
靴を履きかけの姿勢で、驚きの表情を作ってこちらを見ている。
从;゚∀从「な、なんでギコがここにいるんだ?」
(,,゚Д゚)「なんで、って……生徒会は俺の職場みたいなもんだしなぁ。
それに――」
こほん、と咳払いして
(;-Д゚)「――まだ俺がいないと帰れないだろ、お前」
从;゚∀从「あ……そ、そっか。 ありがとな」
(,,゚Д゚)「?」
何か様子がおかしい。
朝にはあったはずの、彼女独特の陽気さが萎んでいるような。
こちらの顔色をうかがうような、そんな弱々しさが滲み出ている。
- 48: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:54:47.04 ID:F9ICQWUG0
- (,,゚Д゚)「……どした? 何か元気ない?」
从;゚∀从「え? いや、そんなことはねぇぞ」
(,,゚Д゚)「そっか? 気分悪いなら保健室つれて行くけど。
季節の変わり目は身体を崩しやすいって言うし
ほら、ハインはこの都市に来たばかりだから、ストレス溜まってるかもしれないからな」
从;゚∀从「うん、大丈夫。 ホント大丈夫だから」
と言って、さっさと歩き出すハイン。
何か釈然としない思いを持ちながらも、ギコはその背を追うしかない。
校舎群の間をシロクロ門へ抜けていく並木道、二人は無言で歩いて行く。
春を呼ぶ無温の風が、後ろから前へと吹き抜けた。
どこかに咲いているのか、ピンク色の花びらが風に混じっているのを見る。
周囲、生徒の姿は少ない。
夕日が傾くような時間だ。
鍛錬に夢中になっているか、商業区画に繰り出しているかしているのだろう。
その静けさも重なり、ギコはどうにも落ち着かない気持ちになる。
(,,゚Д゚)(むぅ)
从 ゚∀从「…………」
横に並んだハインは前を見たままだ。
まだ出会って一日だが、彼女らしくない、と確信出来る。
- 49: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:56:05.77 ID:F9ICQWUG0
- (,,゚Д゚)(うーむ……)
いつの間にか、彼女の気に入らないことでもしてしまっただろうか。
今日は始業式に別れたっきり、生徒会の仕事のせいで会えなかった。
この事を言わなかったのがまずかったのだろうか。
(,,゚Д゚)(いや、違うよな……そんなことで怒るような奴じゃない、と思う。
それに聞けばツンやブーンが説明したはずだ)
では、この空気は何なのだろうか。
改めて冷静に考えてみる。
シロクロ門を越えたあたりで、ようやく一つ思い至った。
(,,゚Д゚)「なぁ、ハイン」
从 ゚∀从「んー?」
(,,゚Д゚)「生徒会長に何か言われたのか?」
曝ク;゚∀从 ギクッ
あらなんて解りやすい。
一瞬だけ肩を震わせたハインは、視線をギコとは反対側へそらす。
- 52: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:57:28.92 ID:F9ICQWUG0
- (;゚Д゚)「す、すまん。 もしかして触れてほしくなかった話だったか」
从;゚∀从「そ、そんなことねぇんだけど……あ、いや、やっぱり駄目かも」
(;゚Д゚)「……どっちだ?」
从 -∀从「……ごめん、話せねぇ。 生徒会長さんとの約束でな」
(,,゚Д゚)「そっか」
当然の返答だ。
でないと、わざわざ生徒会室で二人きりで話した意味がない。
しかし、そこに原因があるのは解った。
何とかしてやれれば、と思う。
よく解らないが、このままでは駄目だ、と。
よく解らないまま、ギコは言った。
(,,゚Д゚)「あのさ……俺なんかが言っても仕方ないとは思う。
けど、クー生徒会長は悪い人じゃない、と俺は思ってる。
確かに普段から何を考えているのか、ちょっと解らないところもあるかもしれないけど、
この学園や生徒のことを……たぶん一番よく想ってくれている人なんだって」
从 ゚∀从「…………」
(;゚Д゚)「だから、その、なんだ、えーっと?
何を言われたかなんて知らないけど、それはきっとハインの為っていうか、
決して、傷つける目的で言ったん、じゃ、なく、て……ですね、はい」
- 54: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 21:59:07.49 ID:F9ICQWUG0
- はて、何が言いたいのか解らなくなってきた。
いくつかの目的がごちゃ混ぜになっているからか。
このままでは励ましたいのか、クーを擁護したいのかさっぱり解らない。
ちょっと待てよ、と頭を振ってリセットしようとしていると、
从 ゚∀从「……ははっ」
ハインの声が重なった。
从 ゚∀从「よくわかンねぇけど、何となく言いたいことは伝わったよ。
ありがとな」
(;゚Д゚)「え? マジ?」
从 ゚∀从「あぁ、つまりは……『細かいことなんて気にすンな』ってことだろ?」
(,,゚Д゚)「……ううむ」
何かが違う気がする。
いや、これで正解なのか。
しかし頷くのは卑怯な気がする。
- 56: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 22:00:37.29 ID:F9ICQWUG0
- 迷っていると、横を歩くハインが苦笑した。
从 ゚∀从「お前、マジメだなぁ」
(;゚Д゚)「そ、そうか?」
从 ゚∀从「そうだろ。
だって今のだって、『おうよ!』って胸張って答えてりゃいいものをさ。
俺にはお前がどんな考えで言ったかなんて解らねぇんだし」
(,,゚Д゚)「……それは嘘をついたことになる。
お前にも、自分自身にも。
そんな誰にも向けてもいない言葉を、お前に認めるわけにはいかない」
从 ゚∀从「やっぱりマジメだなぁ」
(;゚Д゚)「うぅ、なんかそう言われるとそんな気が……」
从 ゚∀从「いやいや、落ち込むこたぁねーだろ。
別にいいんじゃね? マジメでも」
うん、と頷き
从 ゚∀从「少なくとも俺は好きだぜ、お前のそういうとこ」
(,,゚Д゚)「…………え?」
- 59: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 22:01:56.76 ID:F9ICQWUG0
- 一瞬、時間が止まったような気がした。
というか、たぶん自分だけが止まっていただけかもしれない。
現にハインはさっさと前を歩いていっている。
そして、ギコが横から消えたことに気付いた彼女が振り返った。
从 ゚∀从「何やってんだ?
え? まさか今の言葉にショックでも受けたかぁ?」
(;゚Д゚)「ぁ、ぃゃ、ぇっと……?」
从;゚∀从「ば、馬鹿野郎! 何を顔赤くしてンだ!
そういう意味で言ったンじゃねーよ馬鹿!」
解っている。
そのくらいは解っている。
流石に、今のを告白と受け取るほど馬鹿ではない。
ただ、
(;゚Д゚)「……お、女の子から、そんなこと、言われたの、初めて、で……」
思わず口をついて出た言葉に、
从 ゚∀从「――!」
直後。
ハインの爆笑が、暗くなりつつあるサウス・メインストリートに響いた。
- 62: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 22:03:21.64 ID:F9ICQWUG0
- ハインの笑い声は、それからしばらく続いた。
夕日が落ち、空が深い紫色になり、それが紺色へと変わっていくような時間。
そろそろ寮へ着く頃になって、ようやく彼女の笑いが落ち着いてくる。
よほど可笑しかったのだろうか。
目尻に涙を浮かべるハインは、それを乱暴に拭いながら
从 ゚∀从「はぁー、笑った笑った。
久々にこんなに爆笑したよ、ホント」
(,,-Д-)「……そりゃ良かったデスネ」
从 ゚∀从「おいおい拗ねるなよ。
お前の反応があまりに可愛かったからさー」
(;゚Д゚)「だからそんなこと言うんじゃねーよ!
死ぬほど恥ずかしかったんだからな!?
こっちから言ったんならともかく、お前の言葉で強制羞恥プレイなんて何の罰ゲームだ!?」
从 ゚∀从「ははは、まだ少し赤い顔で言われてもなぁ」
よほど衝撃的だったのだろうか。
未だギコの頬は微かな赤を帯びていた。
手汗とか凄いことになっているが、絶対に見せられない。
- 64: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 22:04:45.08 ID:F9ICQWUG0
- (;-Д-)(まったく、何がどう間違ってこんなことに……)
情けない、と思う。
まるで悪い意味での道化師のようだ。
ハインの機嫌が治ったらしいのは良いことだが、
笑わせたのならともかく、笑われての結果であることに不満が残った。
というか、本当に何故こんなことになったのだろうか。
(,,゚Д゚)(……俺が不甲斐ないせい、だよな)
理由もなく拳を振るわない自分。
変なところで女の子慣れしていない自分。
待っている人がいて、それが解っていながら行かない自分。
そしてまだ何も見つけていない、何を見つければ良いのかすら解らない自分。
中途半端か。
それとも発展途上か。
解らないが、このままでは駄目だ、と。
つい先ほどハインに思ったものと似た感情が、心の内に湧いて出てきた。
- 66: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 22:06:15.08 ID:F9ICQWUG0
- そして気付く。
(,,゚Д゚)(そうか……そうだよな。
自分のことさえもマトモに出来てない俺が、
他の奴をどうにかすることなんて出来はしないんだ)
その感情を知らずに、その感情を語ることは出来ない。
その人を知らずに、その人を語ることは出来ない。
その人の感情を知らずに、その人に同情することは出来ない。
つまり、
……未熟なんだよな。
そして、
……悔しいよな。
自然と思っていた。
どうにかしたい、と。
変化を望む心を満たすためには、
(,,゚Д゚)「見えない『先』から目を逸らさずに――」
从 ゚∀从「え?」
(;゚Д゚)「あ、いや、何でもない」
- 68: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 22:07:48.18 ID:F9ICQWUG0
- ハインが怪訝そうな顔でこちらを見ている。
深く考え事をし過ぎて、どうやら周りが見えていなかったようだ。
だが、何となく見えてきた。
自分がどうすべきなのかを。
学園都市に来て一年。
やっとスタート地点に立てそうな気がした。
遅いのか早いのか解らないが、これは自分だけもので、見失うわけにはいかない。
そんな勢いで漠然と決意していると、
从 ゚∀从「……あのさ」
(,,゚Д゚)「?」
从;゚∀从「えーっと……何つーのか、その……」
(,,゚Д゚)「???」
从;゚∀从「あの、な?」
と、前置き。
何やら彼女らしくない歯切れの悪さに、ギコは首をかしげた。
解るのは、言葉が生まれない、というより、言うべきか迷っているような表情、ということ。
- 69: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 22:09:24.81 ID:F9ICQWUG0
- 果たして何だろうか。
未熟者の自分に聞かせてくれることとは、一体。
从;゚∀从「お、俺は、お前に――」
紡がれようとした時だった。
(;゚Д゚)「ん? うぉっ!?」
視界が『崩れた』。
下半分が、ずるり、と溶けるかのように。
いや、違う。
これは――
从;゚∀从「え? っ!? おぉぉぉぉ!?」
ハインの身体がバランスを失った。
右足の方から、支えを持つことが出来ずに落ちていく。
その先――つまり真下――を見れば、底の見えぬ闇が広がっていた。
- 73: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 22:11:06.63 ID:F9ICQWUG0
- (;゚Д゚)(やっべぇ……!?)
既に足裏の感覚がない。
ハインに一瞬遅れ、自分の身体も闇に飲み込まれていく。
あまりに超常的な現象。
しかしだからこそ逆に、落ち着いて思考することが出来た。
思い当たる原因は一つ。
(;゚Д゚)(これは……魔法かよ!?)
問う思いに答えは出ず。
もがこうと掲げた右手を最後に、ギコの意識は黒色に染まっていった。
- 77: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 22:12:21.64 ID:F9ICQWUG0
- 気付けば、夜の風が身体を打ちつけていた。
目を開いて見るのは紺色に染まる空と、輝き始めた星々。
少し視線を動かせば、天上へ向かう月が顔を見せている。
(,,-Д゚)「……あれ?」
冷たく、ざらっとした感触が背中全体にあった。
というか重力方向的に考えて、自分は大の字で地面に寝そべっているらしい。
何だ、と思いながら身体を起こす。
周囲は何もなかった。
用途も解らない機材が所々に設置されているだけだ。
あとは突き抜けるような夜空が、視界の上半分を覆っている。
手を置いた地面は土より硬く、そして冷たい。
そして風が強いことを考えるに、
(,,゚Д゚)(どこかの屋上か、ここ……?)
どうやら結構な高さらしい。
このような建物がある場所と言えば、
単純に地形的に高い位置にある教育区画か、多くはないがビルのある商業区画のどちらかだろう。
- 79: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 22:13:47.29 ID:F9ICQWUG0
- 立ち上がって見れば、少し遠くに校舎群の明かりが見えた。
ということは、ここは商業区画のどこかにある建物の屋上なのだろう。
(;゚Д゚)「今のは何だったんだ?
ってか、俺一人か……?」
いや、違った。
少し離れたところに人が倒れている。
うつ伏せの状態は、ハインの身体だった。
(,,゚Д゚)「ハイン!!」
从 -∀从「ぁ……ぅ……?」
どうやら無事らしい。
頬を軽く叩いてやると、すぐに目を覚ました。
从 ゚∀从「あ、れ? ギコ……? 何がどうなって……?」
(,,゚Д゚)「俺にもさっぱりだ。
いきなり地面に落ちた……いや、少し違うな。
地面から湧いた闇が俺達を呑み込んだっていうか……」
- 81: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 22:16:24.78 ID:F9ICQWUG0
- 地面を見る。
そこにあるのは、昇りつつある月の光によって生まれた薄い影だ。
(;゚Д゚)「まさか影……となると概念系魔法か、制御系も混じってる?」
从;゚∀从「なぁ、原因はともかく一体何事だよ。
誰がこんなことしやがったんだ?」
(,,゚Д゚)「誰かの悪戯にしては詰めが甘いな。
いきなり俺達をここに運んで放置なんてもったいなさ過ぎる。
『ドッキリでしたー』とか言いながらフザけた看板を持って来るでもないし」
从 ゚∀从「……色々と間違ってる気がするのは、まぁ、ともかく。
何もねぇなら良いんだけど、ここから帰れるのか?」
(,,゚Д゚)「幸い、屋上口が向こうにある。
鍵が掛かってたらぶっ壊すか、これで助けを呼ぶかして――」
ギコの言葉が途切れた。
携帯端末を、懐から取り出すために落とした視線の先。
从 ゚∀从「?」
ハインはこちらに身体を向けて座り込んでおり、その両膝は少し内側に立っている。
とても女の子らしい座り方で、やはり女性なのだ、と認識するよりも早く
その根元、つまりブレザーのスカートの奥が見えそうになっていることに気付いてしまった。
- 83: ◆BYUt189CYA :2008/09/21(日) 22:17:39.00 ID:F9ICQWUG0
- あまり光がないので、マトモに見えることはないとは思うが、
(;-Д゚)「――っ、ま、まぁ、とにかく俺が何とかする」
と、慌てて目を逸らした。
そして、その先に妙なものを見る。
(,,゚Д゚)「え?」
夜の暗闇の中に小さな光が一瞬。
それは軽く浅い弧を描くような軌道で閃き、そして闇に消えた。
だが、直後に音が響く。
風を裂く細い音だ。
ひゅ、という音に対し、ギコはほとんど反射的に、僅かに左足を引いた。
ほぼ同時、闇の中から音の根源が来る。
(;゚Д゚)「――!?」
一瞬という間に視認。
それは、切っ先をこちらへ向けたナイフだった。
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