(,,゚Д゚)ギコと从 ゚∀从ハインと学園都市のようです
- 2: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:17:54.20 ID:1xBT6+Ty0
――――第十二話
『返答の挑戦者』――――――――――
特殊条件下における敗北の価値とは
- 6: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:20:08.53 ID:1xBT6+Ty0
- モララーは見下ろしていた。
夜特有の黒い冷たさを持つ空気を浴びながら、高い場所に立っている。
周囲を見れば星の輝く夜空があり、その下には明かりを灯す都市部が見える。
( ・∀・)「さて……」
屋上だ。
学園敷地内にある四階建て校舎の屋上に、モララーが立っている。
右手にはデバイスである杖が、左手には携帯端末が握られていた。
その端末にはウインドウが展開されている。
画面に写っているのは、今しがた倒れたばかりのエクストの姿。
レクリエーションと称して生徒狩りをする渋澤と戦い、激闘の末に『潰された』のだ。
( ・∀・)「エクストがやられた、か。
彼の能力は確かに突出したものがあったけど……流石に一人じゃ限界があるよね」
正面からのぶつかり合いなら学年最強だが、その分だけ脆い部分が多い。
特に遠距離攻撃や術式に対し、彼は防御手段といえるものを何も持っていないのだから尚更だ。
そう考えれば、相性的に悪いと言える渋澤とあそこまで戦えたのは賞賛に値する。
- 7: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:22:41.78 ID:1xBT6+Ty0
- 同意を求める語尾に、答える声が足下から。
爪*゚〜゚)「彼の敗因は一匹狼であった点であります。
我々のように身を隠し、敵の情報を集め、そして通用する作戦を考えることすらしなかった。
一人の力には限界がある、と……今回の件で痛感して頂けると嬉しいところであります」
屋上の縁にスズキが寝そべっていた。
うつ伏せで、ライフル系列の大型銃器を構えている。
目の傍に展開した小型ウインドウは、気絶して倒れているエクストを拡大表示していた。
彼女の容赦ない言葉に、モララーは苦笑。
二人の間に、昼の事を思い出させるようなぎこちなさは無い。
あの発言はモララーにしてみれば本心だったものの、
それについてスズキが態度を変えることなく接してくれることに、彼は心の中で感謝していた。
( ・∀・)「それはちょっと難しい話かなぁ。
エクストはちょっと負けたくらいで自分のやり方を曲げる奴じゃない。
むしろ、そのやり方で勝つ方法を模索して……最終的にやり遂げてしまうタイプだよ」
爪*゚〜゚)「言葉にすれば美しいですが、敵には回したくないでありますね」
( ・∀・)「そうだね」
うん、と頷き、
( ・∀・)「……本当、味方にしたいくらいなんだけどなぁ」
- 13: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:25:47.97 ID:1xBT6+Ty0
- 爪*゚〜゚)「来年のため、でありますか?」
( ・∀・)「うん。 三年生に上がってからはパーティ登録が出来るようになるからね。
今の内に戦力を少しでも見繕って、話を持っていっておきたいところだ」
爪*゚〜゚)「私では不足ですか……?」
( ・∀・)「そんなことはないよ。 ただ役割が足りないだけの話さ。
君は遠距離からの支援が得意だし、僕は防御術式が得意。
戦術の幅を広げるために、強力な接近戦要員が欲しいところなんだ」
エクスト以外にも、近接戦を得意とする者の目星はつけている。
まずギコ=レコイド。
今は理由無く力を振るうことを禁じているが、それが解決した時の爆発力に期待が掛かる。
手加減している現状でも充分に強いことから、将来性は高いと言えるだろう。
ミルナ=コッチオー。
北方から来たサムライのタマゴだけあって、近接戦闘での期待は大きい。
一撃必殺の戦法は、こちらの能力と相性が良いのもポイントだ。
ヒート=ルヴァロン。
クー生徒会長の妹だけあって単純に強い。
性格に多少の難がありそうだが、それはこちらでフォローすればいい。
クックル=スドゥリー。
亜人種はそれだけで戦力になり得るだろう。
あの巨躯から繰り出される攻撃の数々は、
非力なモララーやスズキにとって、是非とも欲しい要素である。
- 14: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:27:52.48 ID:1xBT6+Ty0
- 他にも何人か能力の高い者を調べてはいるが、
やはりチームワークという観点から見ても、知り合いの方が上手くいきやすい。
最終的には、エクストを含めた彼らの中から交渉し、パーティへ引き込むことになりそうだった。
ちなみに校則上、上級生や下級生からも引き込んで良い、となっている。
しかしそれぞれの事情を考えれば、上の四人よりも交渉が難しいのは明らかだ。
前者は、わざわざ弱い下級生のパーティに入る理由なんてないし、
後者の場合も、わざわざ能力の低い生徒をパーティに入れる理由などない。
もちろん能力が高ければ考えもするが、エクストのような生徒は稀有な存在である。
そんなことを考えていると、
爪*゚〜゚)「……モララー君、渋澤先生に動きが」
( ・∀・)「何処へ向かってる?」
爪*゚〜゚)「そのまま更に北上であります。
あ、新たな生徒達が渋澤先生に襲い掛かったであります」
エクストとの戦闘で疲弊した、と判断したのだろう。
現実的だが、なかなかコスい手を使う連中だ。
( ・∀・)「でも……そんな要素に頼っているようじゃ、先生には勝てない」
言った時、微かに地面が揺れた。
一瞬遅れて轟音が響く。
状況を見ていたスズキが頷きながら、
爪*゚〜゚)「――えぇ、速攻で潰されたであります」
- 16: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:30:13.30 ID:1xBT6+Ty0
- ( ・∀・)「その程度で僕ら子供が渋澤先生のような鍛えている大人に勝てるのなら、
世界の歴史は大きく変わっているはずだ。
でも、子供じゃ大人には敵わない……それが普通なんだよな」
爪*゚〜゚)「ならば諦めるでありますか?
それはモララー君らしくないと思うであります」
( ・∀・)「当然、諦めないよ。
勝てなくとも、認めさせることは出来るからね」
モララーの狙いは、もはや勝ち負けとは別のところにあった。
自分達の実力を渋澤に認めさせたい、と思っている。
ご褒美については眼中になく、それは自分の現能力を客観的に把握できているからに他ならない。
それを踏まえた上で、渋澤に自分の力を見せつける。
今のモララーにとって重要なのは、その一点のみであった。
「――あら、貴方にしてみれば随分と殊勝な心構えではありませんこと?」
背後から声。
見ずとも声で解る。
( ・∀・)「……レモナか」
|゚ノ ^∀^)「もっと喜びながら名前を呼んで頂きたいですわね。
私が話しかけて差し上げているのに」
- 18: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:33:12.17 ID:1xBT6+Ty0
- ( ・∀・)「随分な自信だね。 尊敬するよ。
まぁ、言うほどの実力が充分に備わってるのは知ってるけどさ」
|゚ノ ^∀^)「それよりも貴方のことですわ。
『勝てなくとも認めさせることは出来る』? 貴方の台詞とは思えないですわね。
以前は、どんな手段を使っても結果を得ようとしていませんでした?」
( ・∀・)「現実を知ったんだよ。
力も経験も何も持っていないのに、結果を出せるわけがないって。
だから、まず足下を見ることにしたのさ」
|゚ノ ^∀^)「そして得たのですね? その守護に特化した術式を」
( ・∀・)「守る必要があったからね」
モララーの視線が動く。
渋澤を監視しているスズキを見て、すぐにまた戻した。
すると、レモナが小さく苦笑が背後から聞こえた。
|゚ノ ^∀^)「……もう少し素直になればよろしいのに」
( ・∀・)「何の話か解らないな。
それに、まだ自分の気持ちを理解出来るほど僕は大人じゃないのさ」
身の程は弁えているつもりだ。
その上で足元を見て、バランスを崩さないよう仰ぎ、どこかを目指したい。
ある意味、メンバーの中で一番『生徒』らしいのは自分なのかもしれない。
- 20: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:35:41.60 ID:1xBT6+Ty0
- ( ・∀・)「さて……そろそろ動こうかな。
仕込みの結果を見に行かなきゃ。
まぁ、そんなことしなくても勝手に集うのが彼らなんだけど」
|゚ノ ^∀^)「皆、連絡も取り合わず勝手に動き回るのに、最終的には息が合っていて……不思議ですわね」
( ・∀・)「勝手に動き回る人代表が言う台詞じゃないと思う」
|゚ノ ^∀^)「あら、これでも周りの空気は読んでいるつもりですわよ?
その上でクラッシュですわ」
( ・∀・)「……それ、KYよりタチ悪いよね」
言いながら、モララーは一歩前へ。
装備を片付けながら立ち上がるスズキの隣へ立ち、
( ・∀・)「レモナはどうする? 僕達と一緒に行くかい?
きっと楽しいことになると思うよ」
|゚ノ ^∀^)「そうですわね」
携帯端末を取り出す。
煌びやかに装飾された端末の画面を一目見て、
|゚ノ ^∀^)「では、私は――」
- 21: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:37:43.84 ID:1xBT6+Ty0
- 結局、エクストを叩き潰してからというもの、骨のある生徒は一人として現れなかった。
正面から来る者。
小細工を弄する者。
数で翻弄しようとする者。
様々な戦法で向かってくる生徒達を、『鉄拳』の一撃で潰し、突破してきている。
流石に2年生相手ともなれば多少マシな戦闘になったが、それでも未だに渋澤の身体に触れた生徒はいない。
数えている限りでは、倒した生徒の数は半数を超えていた。
この調子でいけば例年より早く帰れそうだと思うと同時、やはり不満もある。
自分が教えている生徒達に、なかなか手応えがないのだから当然だ。
_、_
( ,_ノ` )「……ふむ?」
そんな彼が、エクストを倒して以来久々に足を止めていた。
エクストを前にした時のように、愉快そうな笑みを浮かべている。
- 22: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:39:38.35 ID:1xBT6+Ty0
- _、_
( ,_ノ` )「次はお前らが相手か?」
月下。
両手をポケットに突っ込んだ姿勢の渋澤。
彼に立ち向かうようにして構えているのは、
(;゚д゚ )「……何故だかそういうことになるのだろうな、これは」
刀に手を掛けたミルナと、
ハハ ロ -ロ)ハ「Accident、偶然の出会いにしてはピリピリしてるわね。
あの渋そうに努めてる大人、マジ大人気ないと思わない?」
その場に悠然と構えるハロー、そして、
( ゚∋゚)「レクリエーションとは名ばかりで、模擬戦のようなものだからな。
それに私達に戦う力が少しでもある以上、教師としても加減が難しいのだろう」
腕を組んで頷くクックルがいる。
ハローを真ん中に置いた三人は、少し衣服の乱れた渋澤を警戒するように睨んでいた。
詳しい状況が解らず、策も何もない状態で攻撃を仕掛けるほど野性的ではない。
- 25: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:42:02.96 ID:1xBT6+Ty0
- ハハ ロ -ロ)ハ「というか、どうして私達がここに集っているのかしら?
さっきまでそれぞれ単独で動いていたはずなのに。
もしかしてDestiny、運命の赤い糸で結ばれているけど集ったのは三人だからやめてっ私のために争そわn――」
( ゚д゚ )「いや、先ほどモララーから送られてきたメールの通りに動いてみたら、こうなっただけだ」
( ゚∋゚)「うむ」
ハハ ロ -ロ)ハ(It's boring...)
ハローが、生真面目な二人の返事に内心で舌打ちした直後。
「「っ!?」」
一斉に、三人はその場から飛び退いた。
数メートルの距離を稼ぎ、腰を落として臨戦態勢に入る。
細められた視線の先には、
_、_
( ,_ノ` )「お前らなぁ……誰を相手にくっちゃべってんだ、おい? 余裕だなぁ?」
一歩。
たった一歩、右足を踏み込んだだけの渋澤がいた。
それだけの動作に飛び退いてしまった理由とは、
(;゚д゚ )(今のは……いわゆる闘気、剣気とかいう気配か……?)
- 26: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:43:45.71 ID:1xBT6+Ty0
- 思わず退避していた。
無意識に背を向けなかったのは日頃の鍛錬のおかげだろう。
意思ではなく身体が覚えていたから、咄嗟に実践出来たのだ。
とはいえ、一歩踏み込まれただけで後退するのは鍛錬が足りない証拠なのだが、
そこら辺は各々の器量で納得するしかない。
( ゚∋゚)「ふむ。 しかしまぁこの状況では逃げようにも逃げられんな。
この面子でやるしかない、ということか」
ハハ ロ -ロ)ハ「……そうみたいね」
言いつつ、ハローはモララーから送られてきたメールを思い出していた。
レクリエーションが始まり、単独で動いていた時に携帯端末を鳴らした知らせ。
おそらくミルナ、クックルとは別の文面で、しかし意図的にここへ集められた、と判断出来る。
ハハ ロ -ロ)ハ(だとすれば……)
ハローは二人を見た。
確認するような視線。
( ゚д゚ )「…………」
( ゚∋゚)「…………」
応じるように、ミルナとクックルがほぼ同時に頷いた。
渋澤には覚悟を確認するための応答に見えただろうが、実際は違う。
確かに確認のための応答ではあるが、その内容とは――
- 27: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:46:11.46 ID:1xBT6+Ty0
- ハハ ロ -ロ)ハ「――GO!!」
思い立ったが即断実行。
対峙の静寂を裂くように鋭く言い放った。
そして間髪入れず回れ右をし、そのまま一目散に駆け出した。
_、_
( ,_ノ` )「? なんだぁ?」
突然の行動に首を傾げる渋澤。
彼に背を向け、全力で走るハロー。
隣を見れば、自分と同じ行動を選択したミルナとクックルも追走している。
ハローは、己の推理を確信した。
ハハ ロ -ロ)ハ「――やはり、送られてきたメールの後半部分は共通だったのね」
( ゚∋゚)「どうやらそのようだ。
その後に何が起こるのかは知らんが、な」
( ゚д゚ )「言ってしまえば、俺達はナチュラルな囮というわけか……!」
メールの後半部分には簡単な指示が記述されていた。
『渋澤と接触後、どうにかして指定した場所まで全力で逃げろ』
他の二人にも同じ記述があるかどうかは賭けだったが、どうやら正解だったらしい。
口頭で確認しても良かったが、相手はあの渋澤教師である。
行動のヒントを与えるのは出来るだけ避けておきたかった。
ハロー達のいきなりの行動に出遅れた渋澤を見る限り、功を成しているようだった。
- 28: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:47:57.23 ID:1xBT6+Ty0
- _、_
( ,_ノ` )「おいおい敵前逃亡かよ。 まったく最近のガキは……」
てっきり立ち向かってくるものだと思っていた渋澤は、いきなり逃げ始めた三人の背に問う。
一息。
そして、
_、_
( ,_ノ` )「――その選択でいいんだな?」
ハハ ロ -ロ)ハ「え」
背後から感じる気配が細くなった。
いや、縮小、とでも言えば良いのか。
内容そのままに形だけを小さくする凝縮の動きは、比例して嫌な予感を増長させてきた。
(;゚д゚ )「……おい」
( ゚∋゚)「うむ、まずいな」
走りながらの二人も気付いたようだ。
後ろを振り返りたい気持ちが湧くが、それよりも走る方が優先だと考える。
- 31: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:49:43.28 ID:1xBT6+Ty0
- 夜の学園を全力疾走。
月光を頼りに、校舎と校舎の間にある空間を突っ切っていく。
中庭よりも狭いが、それでも三人が並走出来るほどの充分な広さだ。
現在、学園敷地内の北西部を東へ移動中だ。
モララーの指定した場所まで、遠くはない。
このまま走り続ければいけるか、と思った時だ。
激音。
並び立つ校舎が震えるほどの音と振動が、背後から鳴った。
聞き間違えるわけがない。
『鉄拳』の音だ。
( ゚д゚ )「――!?」
( ゚∋゚)「見るな! 走るぞ!」
ハハ ロ -ロ)ハ「ミルナに見るなって……ふふ、笑わせないでよ、ふふふ。
それに今のは確認した方がいいと思うわ、流石にね」
そして振り返った。
- 32: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:53:09.06 ID:1xBT6+Ty0
- ハローは見る。
_、_
( ,_ノ` )「――ほぅら逃げ切れるかな?」
渋澤がいた。
しかし、逃げ出す直前にいた場所ではない。
声は上から来ている。
高さ十メートルほどの位置にて、渋澤が優雅に飛行していた。
(;゚д゚ )「なん……だと……」
一緒に振り返ったミルナが絶句する。
人として当たり前の反応に、しかしハローは、
ハハ;ロ -ロ)ハ(ポケットに両手突っ込んだ棒立ち姿勢での飛行……It's Gross!!)
これもまた当然の反応だ。
そして、その隣でクックルが唸る。
( ゚∋゚)「先の『鉄拳』によって身体を飛ばしたのか?
だが『鉄拳』は下方への打撃を生む術式だと思っていたのだが……一体どういうことだ。
いや、それよりも――」
言葉に、ハローは頷いた。
ハハ ロ -ロ)ハ「――このままだと追いつかれるわね。
渋澤Teacherの方が速度的に速い。 そして気持ち悪い。 最悪だわ」
(;゚д゚ )「気持ち悪いのはどうでもいいが、何か対処を……!」
- 34: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:54:59.04 ID:1xBT6+Ty0
- ハローは一瞬で思考した。
自分の術式では間に合わず、そして非力過ぎる。
ミルナの刀は長く鋭いが、力の衝突にぶつけるモノではない。
となれば、
( ゚∋゚)「仕方あるまい。 ここは私が時間を稼ごうか。
私の力ならば対抗出来るだろう」
ハハ ロ -ロ)ハ「Retire確定だけど、やってくれる? あとすごく痛そうよ?」
気遣いも何もないストレートな物言いに、クックルは苦笑し、
( ゚∋゚)「私がリタイアした結果、あの教師の鼻を明かすことが出来るのならば、全力で時間を稼ごうとも」
ハハ ロ -ロ)ハ「ふふ、前から思っていたけど貴方いい鳥ね。
いい鳥じゃなかったら焼いて食べるところよ」
( ゚∋゚)「良好であることが前提であったか。
ならば丁度良い。 今宵の私は少しばかり調子が良いのでな。
私に感謝する用意でもしておくといい。 ついでにあとで何か奢れ」
ゆっくりと、クックルの身体が後ろへ行く。
落下軌道に入った渋澤の着地点を読み、位置を調整しつつ、速度を落としていった。
( ゚∋゚)「――頼むぞ」
そう言い残し、クックルは断ち切るように振り返る。
背を向け合った状態になり、しかしその距離は一気に開いていった。
- 35: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:57:17.23 ID:1xBT6+Ty0
- 走る足音が遠ざかっていくのを耳で聞きながら、クックルは身構える。
前方、着地した渋澤がこちらを見ていた。
不敵な笑みは相変わらずに、隙だらけな格好で。
_、_
( ,_ノ` )「まずは二人を逃がしたか。
その先に何かがあるんだな? そうだな?」
( ゚∋゚)「…………」
二つの足音が小さくなっていくのを聞きながら、沈黙を保つ。
_、_
( ,_ノ` )「無闇に口を開かん、か。
いいぞクックル。 そこがお前の良いところだ。
まぁそのせいで個性薄いんだけどな」
尚も沈黙するクックル。
右手は、腰にある一つの金属パーツに添えられた。
その小さな動きを遠くから察知した渋澤は、笑みを深くする。
_、_
( ,_ノ` )「よし……お前の成長を見せてみろ。
待っていてやるから」
( ゚∋゚)「『嘗めるな』という言葉は、貴方へ追いついた時に送るため取っておこう」
息を吸い、
( ゚∋゚)「起動――!!」
- 38: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 20:59:15.73 ID:1xBT6+Ty0
- 光が発生した。
腰にある金属パーツが、呼応するように唸りを上げる。
同じくして三つのウインドウが展開。
高速で文字を流し、刻まれた命令を完遂する。
その結果は、クックルの頭上に確固たる形を以って出現した。
光の中から生まれたのは、5つの黒い金属だ。
中央の大きな機械。
脇に接続具のようなパーツ。
サイドに鋼鉄の黒色のプレート。
それらは一瞬で合致し、クックルの背へと確定された。
渋澤側から見れば、いきなり背から黒い翼が生まれたようにも見える。
光景の正体を、渋澤は呟くことで言葉にした。
_、_
( ,_ノ` )「亜人用の特殊兵装、か」
その名も、
( ゚∋゚)「『黒翼《コクヨウ》』……!!」
- 40: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:00:48.39 ID:1xBT6+Ty0
- 黒い機械翼が、まるで己の姿を誇示するかのように身を広げた。
機が奏でる音の連鎖は硬く、それでいて整然と響いていく。
クックルの身体の無骨さに反し、その翼はどこまでもスマートだった。
_、_
( ,_ノ` )「……半鳥系亜人であるお前は、鳥ならば持っていて当然の翼を失って生まれたんだよな」
( ゚∋゚)「代わりとして残っていたのは、人型には少々身に余る筋力だった。
しかしそれを活かす翼は無い。 だから私は望んだ。
たとえ偽物であろうとも、翼を得たい、と」
その結果が、今まさに背から生えている黒色の機械翼だった。
専用として改造したオプションパーツが、現象系魔法を以って『召喚』することで得られる武装だが
術式によって生み出された物体の構成は魔力である、という法則がある以上、今ここにあるのはレプリカに過ぎない。
姿形、そして機能は本物であっても、つまりはそれらをコピーした魔力の塊なのだ。
本物は工業区画にある施設に安置されている。
クックルは日頃、暇さえあればその『黒翼』の調整を行なっており、
今朝の授業に遅れてしまったのもこれが原因であった。
- 44: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:03:06.34 ID:1xBT6+Ty0
- そして、それはまだ完全ではない。
( ゚∋゚)(まだまだ試作段階であるため、我が『黒翼』は魔力供給のための機能が備わっていない。
いずれは構成する魔力が空間に溶けてしまい……その時間は最大で1分……!)
その間に目的を果たさなければならない。
一度『召喚』してしまえば、呼び出し用のオプションパーツ内の魔力が空になってしまうからだ。
再び使用するには充填する必要があり、皆は『燃費の悪い武装だ』と口々に言うが、
( ゚∋゚)(――これこそが私の翼! これこそが半鳥系亜人としての我が誇り!
燃費など後からついてくるに過ぎない問題は、もはや問題に非ず!)
腰を落とし、構える。
悠長に翼の重みを享受している暇は無い。
背部バーニアが展開し、魔力の粒子を散らした。
ひ、という甲高い準備の音と同時、クックルを中心として風が渦巻いていく。
視線は前方、楽しそうな笑みを送ってくる渋澤を捉え、
( ゚∋゚)「……行くぞ!!」
直後、クックルの巨躯が発射された。
- 45: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:05:34.27 ID:1xBT6+Ty0
- 背に負った『黒翼』が魔力の光芒を噴き、急激な加速をプラス。
普通の人間ならば耐えられない衝撃も、亜人の身体を持つクックルならば耐えられる。
だから、行った。
背後で大気が爆発し、その衝撃が進行方向とは逆へブチ撒けられ、鉄板を砕くような音が付随する。
両サイドにある校舎の窓が割れる音を聞いた時には、既に加速の中に放り込まれていた。
筋肉が詰まった巨躯が、渋澤を目指して一直線に走る。
敢えて言ってやった。
(#゚∋゚)「我が一撃を止められるか『人間』!!」
_、_
( ,_ノ` )「止めてやるのが『教師』の仕事だろう?」
音すら追いつけない速度の一瞬、二人は視線を交わし、
「「――ッ!!!」」
決着を示す激音が、夜の静寂を割り砕いた。
- 49: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:08:10.71 ID:1xBT6+Ty0
- 背後から響いた音に、しかしハローとミルナは足を止めなかった。
クックルが稼いでくれた時間を最大限活用するためだ。
ここで足を止めるのは、彼を裏切ることに他ならない。
走りながら、呟くようにハローが言う。
ハハ ロ -ロ)ハ「あの鳥、相討ちは無理でも……せめてDamageくらいは与えてくれないかしらね」
(;゚д゚ )「……友人を語っているとは思えんな」
ハハ ロ -ロ)ハ「あら、友達って互いに有益を与え合える関係のことでしょう?
損得無しに、無責任に、そして自由に。
あの鳥は己の損得無しに時間稼ぎ役となり、私は自由に彼を評する。 それだけよ」
(;゚д゚ )「うむ、いや、まぁ、よく解らんが」
ハハ ロ -ロ)ハ「よく解らないことを語ろうとするのは知能が浅い証拠ね。 もっと精進しなさい」
(;゚д゚ )「……どうして俺は走りながら説教されているのだろうか」
ハハ ロ -ロ)ハ「そういう時は説教してもらえる友達がいることを喜ぶといいわ隠れオタク」
そういうものか、と真顔で呟くミルナに、ハローは苦笑。
からかい甲斐があるのは良いのだが、最後までそれに気付かないのが問題だ。
ギコやツンなどの速攻反射系とは反対に、ミルナは非反発吸収系とも言える。
- 53: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:10:57.04 ID:1xBT6+Ty0
- ハハ ロ -ロ)ハ「――と、そこ曲がるわよ」
モララーに指定された場所は目前だった。
生徒達が最初に集まった南中庭ではなく、別の中庭。
学園敷地内の北側に位置する、中央に噴水のある通称『北中庭』だ。
到着してみれば、再び夜の静けさが戻ってくる。
二人分の少し荒い息と、微風による微かなざわめきのみが残っているのを耳で感じ、
なんだかエロいわね、と脊髄反射的に考えていると、
( ゚д゚ )「……誰もいないな」
ハハ ロ -ロ)ハ「それが答えなのかもしれないわね。
まぁ、私達は指示通りの位置についておけばいいでしょう」
向かう先は中庭の端だ。
入って来た方向は逆の、つまりは噴水を挟んで渋澤を待ち構えられる位置。
モララーからの指示はここで終わっていた。
( ゚д゚ )「ここで何が起こるやら、だ」
ハハ ロ -ロ)ハ「私達は何も知らない。 おそらくそれこそがKey Point」
- 58: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:12:56.39 ID:1xBT6+Ty0
- ハローは何かに気付いているようだ。
鈍感――らしいのだと最近自覚してきた――なミルナには、何も感じられない。
周囲の気配も、音も、何もかもが静寂を示している。
真相をハローに問おうとした時、
ハハ ロ -ロ)ハ「!」
彼女の表情が緊に変わった。
視線の先には、
_、_
( ,_ノ` )「おーう。 ここが終点か?
鬼ごっこはそろそろおしまいにしたいところなんだがなぁ」
先ほどまでクックルと戦っていたはずの渋澤が立っていた。
服に多少の砂埃が付着している他は、まったくの無傷だ。
(;゚д゚ )「クックルは……やられたようだな」
ハハ ロ -ロ)ハ「勝ってた方が驚きよ」
身も蓋もない発言に、ミルナが半目を向けてくるが無視。
渋澤の一挙一動を見逃さないよう注視しながら、制服の上着ポケットへ手を入れる。
細く白い指に摘まれて出てきたのは、鉛筆くらいの長さの赤いスティックだ。
- 61: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:15:02.32 ID:1xBT6+Ty0
- ハハ ロ -ロ)ハ「どこまでやれば良いのか知らないけど、
何も起きない以上はEventを進めていくしかないわね。
というわけで前衛は任せたわよ、ミルナ」
( ゚д゚ )「あまり保たせる自信はないが、やってみよう」
ハハ ロ -ロ)ハ「大丈夫。 私の推測が合っていれば何とかなるわ」
眼鏡越しに見た彼女の視線が、微かな余裕を匂わせた。
頷いたミルナは、背に斜めに掛けた刀の柄を掴み、
( -д- )「――!」
一気に引き抜く。
刀身の震えが、ひ、という涼しげな音を立て、残響しながら消えていった。
刀専門メーカー『嘆き清流鋼』の小式業物だ。
透き通るような美しさを持つ長い刀身が特徴で、
柄には白と黒の人形『百合少女マルガとマルゴ』が紐で結ばれている。
小式とはいえ業物である以上、学生身分である自分には少々手に余る代物だが、
( -д- )(いずれはこれ以上の刀を手にするのだ。
今、小式すら振れないとあっては底が知れるというもの)
故に、
( ゚д゚ )(この刀、ここでモノにする……!!)
- 65: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:18:13.47 ID:1xBT6+Ty0
- _、_
( ,_ノ` )「次の相手はミルナか?
お前は一撃必殺タイプだからなぁ、気をつけんといかんよなぁ。
エクストと似たような意味で危険な生徒だ」
( ゚д゚ )「……あの馬鹿と同じように見られるのは屈辱だな」
_、_
( ,_ノ` )「俺からしてみりゃ、お前らは全員『可愛い生徒』だ」
( ゚д゚ )「だから打撃し、容赦なく潰すのか。
自分に足りない何かを気付かせるために」
_、_
( ,_ノ` )「当然。 それが教師である俺から教えられることさ。
まぁ――」
は、と笑い、
_、_
( ,_ノ` )「――半分くらいは楽しいから殴ってンだけどな?」
( ゚д゚ )「馬鹿にするかッ!!」
ミルナが行った。
刀を両手でしっかりと握り、一直線に走り向かう。
_、_
( ,_ノ` )「お前ら男衆は、どうして真正面からしか向かってこねぇのかねぇ?」
( ゚д゚ )「それしか知らんのさ……!!」
- 67: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:19:57.74 ID:1xBT6+Ty0
- 言う間に五歩ほどの距離となる。
ここから一気に身を沈め、更に速度を得たミルナは、
( ゚д゚ )「っ!?」
しかし、直前で身を横に投げた。
右足を何とか踏み込み、疑似的なサイドステップの状態を作り出す。
ミルナが走り込もうとしていた場所に『鉄拳』が落ちたのは、直後だった。
(;゚д゚ )「くっ……」
眼前でブチ撒けられた砂煙を浴びつつも、ミルナは渋澤から目を離さない。
やはり『鉄拳』は厄介過ぎる。
起動から発動までのタイムラグが無いのが恐ろしい。
一体どのような術式プログラムを組んでいるのだろうか。
_、_
( ,_ノ` )「無駄だ。
いくらお前が一撃必殺型の速攻タイプだとしても、俺の『鉄拳』発動の速度には敵わん。
音速超えでもやってもらわんとな?」
( ゚д゚ )「その傲慢さを斬る――!!」
基本的には隙だらけの渋澤へ刀を叩きこんだ。
既にある程度の接近はしていたので、立ち上がりつつの斬撃だ。
- 70: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:22:06.48 ID:1xBT6+Ty0
- だが、
_、_
( ,_ノ` )「甘い」
ナイフによって阻まれる。
防御用として携帯していることは知っていた。
だからミルナは驚かない。
更に行く。
(#゚д゚ )「おぉっ……!!」
_、_
( ,_ノ` )「む?」
刀を打ち払った渋澤は、ミルナが止まらないことを知る。
右肩をこちらの胸に当ててくるような動きが追加されていた。
この間合いは格闘向きであり、刀を振るうにはスペースが足りない。
いつも冷静なミルナらしからぬ行動に、しかし渋澤は笑みを得た。
_、_
( ,_ノ` )(この野郎、『鉄拳』のことで何か勘付いてやがるな……?)
ならば誤魔化す必要はない。
ヒントとは、敢えて見せるものだ。
何かを探ろうとしているミルナの動きを止めるように、右膝をかち上げた。
(;゚д゚ )「っぐぉ!?」
- 72: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:24:00.78 ID:1xBT6+Ty0
- 思い切り腹をえぐられ、漏れる苦しそうな声。
気にも留めず身体を離し、適度な距離をとり、無防備になっているミルナへ更なる蹴りを放った。
体重を掛けつつ放たれた足は、ミルナの脇腹に当たり、
(; д )「ッ!!?」
その身を容易く吹き飛ばした。
同年代で比べれば長身であるミルナの身体は、数メートルほどの距離を一気に飛び越え、
抵抗する間もなく地面へ着地し、滑り、バウンドしながら転がっていく。
そうして辿り着いたのは、ハローの足下であった。
ハハ ロ -ロ)ハ「あら、おかえりなさい。 早かったわね。
そのまま寝とく? もう一回行く? それとも今すぐ土・下・座?」
(;゚д゚ )「……油断した」
地面を転がりまくったせいでボロボロとなったミルナが、むっつりと呟く。
一見して変わりないように見えるが、どうやら割と頭にきているらしい。
- 75: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:26:21.80 ID:1xBT6+Ty0
- 立ち上がり、早速汚れてしまった刀を不満そうに睨みつつ、
( ゚д゚ )「だが何かを掴んだ気がする。
上手く言葉には出来んが……」
ハハ ロ -ロ)ハ「貴方、何でも直感でやろうとするタイプだものね」
( ゚д゚ )「それより『何とかなる』のではなかったのか?」
ハハ ロ -ロ)ハ「そうねぇ、控えめに言えば『貴方やられるの早過ぎこの早漏!』というところかしら?」
(;゚д゚ )「……反論出来んだけに悔しいな」
ハハ ロ -ロ)ハ「ふふふたまらないわねこの一方的な感じがゾクゾクするわ」
_、_
( ,_ノ` )「お前ら楽しそうでいいなぁ、オジサンも混ぜてくれよ寂しいから」
ハハ ロ -ロ)ハ「あらごめんなさい。 若い人限定なの、この関係。
それよりも……そうやって余裕を見せていて良いのかしら?」
ハローの腕が上がり、渋澤を指差した。
いや、更に奥の方を示している。
- 76: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:28:07.56 ID:1xBT6+Ty0
- _、_
( ,_ノ` )「?」
そこにあるのは何もない空間だった。
夜の闇が落ちるだけの、人の気配すらない場所。
何を示しているのか解らない渋澤が首をひねり、しかし、
(,,゚Д゚)「――あ」
と、校舎の影からギコが飛び出してきたのを見る。
向こうも予想外だったのか、こちらを見るや否や足を止めた。
すると、
从;゚∀从「わぷっ」
後ろをついて来ていたハインがギコの背にぶつかり、
ξ;゚听)ξ「え? ちょ――」
続いてツンが急ブレーキを掛け、
(;^ω^)「おっ?」
遅れて出てきたブーンが止まろうとして腕を前へ出し、
ξ;゚听)ξ「っ!?」
ツンの尻を思い切り掴んだ。
- 78: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:29:52.15 ID:1xBT6+Ty0
- (;^ω^)「……お」
ξ゚听)ξ「…………」
(;^ω^)「あ、いや、その、待っ、ちょ、あの、これ、ふ、ふか、不可抗力、ってか意外と――」
などと言いつつツンに引っ張られていくブーン。
連れて行かれた校舎の陰から打撃音が響く中、ギコが頷いた。
(,,゚Д゚)「渋澤先生に、ハローとミルナ……どういう状況だよ、これは?」
从;゚∀从「あ、スルーするんだ?」
(,,゚Д゚)「あれは……何つーか、定期イベントみたいなものだからな。
いちいち気にしてたら時間がもったいない」
再び頷いたギコは、改めて状況を見る。
目の前には中庭。
左右を校舎に挟まれており、中心には噴水がある。
その噴水を挟んで向こう側には、ハローと何故かボロボロのミルナの姿が。
そしてギコ達とハロー達のちょうど間くらいの位置に、渋澤が立っている。
从 ゚∀从「ってことは――」
(,,゚Д゚)「……図らずも挟み討ちの状況になったらしいな」
- 81: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:31:42.32 ID:1xBT6+Ty0
- ハハ ロ -ロ)ハ「この状況を偶然だと判断する素敵な貴方の頭の中を覗いてみたいわルルル」
(,,゚Д゚)「よぉハロー、やっぱりまだ生きてたか。
で、偶然じゃないと判断した証拠とかあるのか?」
ハハ ロ -ロ)ハ「そうねぇ……」
ふむ、と浅く腕を組んだ彼女は、
ハハ ロ -ロ)ハ「あそこで私達を見下ろしている彼に聞いてみる、というのはどうかしら?」
と、空を仰いだ。
視線の先は、ハローから見て右側にある校舎、その上へ。
そこにいたのは、
( ・∀・)「――あれ、バレてた?」
屋上の縁に立つモララーだった。
その隣には、ライフルタイプの銃器を構えて寝そべっているスズキがいる。
状況を愉快そうに見ていた彼は、意外そうな口調でハローに問うた。
ハハ ロ -ロ)ハ「自分で作り出した状況の出来を確認しようとしない策士はいないわ。
特に貴方は、そういうタイプの人だから」
( ・∀・)「まぁ、僕自身も参加するつもりだったしね。
けしかけておいて見て見ぬフリするほど無責任じゃない」
- 85: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:33:23.43 ID:1xBT6+Ty0
- 苦笑すると、見上げていた渋澤が納得したかのように頷いた。
腕を組み、その片手を顎にやり、
_、_
( ,_ノ` )「……成程。
どうにもコイツらの行動に明確な意思が感じられないと思っていたが、そういうことか」
( ・∀・)「今の時代は便利ですよね」
言いながら取り出したのは携帯端末だ。
メールのやり取りが出来るタイプで、容量次第では他の機能も搭載可能なもの。
見せつけるように掲げながら、
( ・∀・)「離れた位置にいても連絡が取り合える時代です。
なら、使わない手はない。
これを禁止にしなかった渋澤先生のミスが、この状況を呼んだのです」
_、_
( ,_ノ` )「そんな回りくどいことせず、普通に囲めば良かったんじゃないか?」
( ・∀・)「先生がそれを言いますか。
生徒の小さな動きから、その目的を推測出来るほどの経験と洞察力を持っていながら。
普通に囲もうとしたら、ぶっちゃけ途中で気付いた上でカウンター入れるでしょ?」
_、_
( ,_ノ` )「ははは、当たり前だ」
- 89: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:35:27.69 ID:1xBT6+Ty0
- ぐ、と親指を立てた拳を向けてくる渋澤教師(43)。
ギコやハイン、ミルナが半目になり、ハローが可笑しそうに肩を震わせる。
そこで一通り殴り終わったのかツンが帰ってきて、前が見えねぇお、などと呟くブーンが無視され、
( ・∀・)「――じゃ、揃ったところで始めますか」
_、_
( ,_ノ` )「そう言ってる間にも来いよ優等生。
言っとくが俺を身構えさせた時点で、勝率かなり低くなってるからな?」
( ・∀・)「そうでなきゃ挑戦する意味はないですよ」
_、_
( ,_ノ` )「ほほぅ、既に敗北を自覚してるらしいな。 可愛いヤツだ」
( ・∀・)「あ、でも隙あらば勝たせてもらいますよ。
先生、特に隙だらけなんで気をつけてくださいね」
_、_
( ,_ノ` )「俺ァ優しいから半分の力で戦ってやってンだよ。
だから感謝しながら掛かってこい」
( ・∀・)「じゃあ40%くらいの力でくらいで行きますね」
_、_
( ,_ノ` )「よし、仕方ねぇなぁ、25%でやってやる」
( ・∀・)「……15%」
_、_
( ,_ノ` )「出血大サービスで5%。 ポロリもあるぜ?」
ハハ ロ -ロ)ハ(そもそも実力差があるのに何を競ってるのかしら……Fool Degree?)
- 93: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:37:38.83 ID:1xBT6+Ty0
- 互いに軽めの挑発を交わし、その場の空気を冷たく、しかし暖めていく。
感化されたツンやブーン達が緊張に口を閉ざす中、一人が手を挙げた。
(,,゚Д゚)「あの、さ。 なんか盛り上がろうとしてるところ悪いんだけど一ついいか?」
( ・∀・)「何?」
(,,゚Д゚)「……何人か足りなくね?」
ギコの問いに、ハインが周囲を見た。
昼の自己紹介で大体のメンバーを覚えていたので、その記憶と照らし合わせる。
エクストは既にリタイアしたし、クックルも先ほど叩き潰されたのだとメールで報告があった。
その上で、確かに何人か足りない、と思い至る。
『全員揃って渋澤打倒!』みたいな空気があったので今まで気付かなかったが、
爪*゚〜゚)「……モララー君、おそらくレモナさんのことではないかと」
屋上からスズキの声。
モララーは、あぁ、と言い、
( ・∀・)「彼女ならもう帰ったよ」
- 97: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:39:37.29 ID:1xBT6+Ty0
- (;゚Д゚)「……えぇ?」
( ・∀・)「冷えた夜風は肌に悪い、って言ってね。
だから先生、レモナはリタイア扱いで良いらしいです」
. _、_
(;,_ノ` )「そ、そうか。
いつものこととはいえ、あいつホントにフリーダムだよな……」
同意なのか、全員が押し黙った。
しばらくしてハインが呟くように言う。
从;゚∀从「……ヒート=ルヴァロンもいなくね?」
(;^ω^)「あ、ホントだお」
エクストの次くらいに張り切る動きを見せていたヒートがいない。
こういうイベントは率先して参加するものだと思っていたのだが、
まさか既にやられたのではあるまいな、と渋澤を見ると、彼は首を横に振るジェスチャーで応えた。
_、_
( ,_ノ` )「あんなうるさいのを片付ければ憶えているもんだが、記憶にないな」
(;-Д-)「アイツは……アイツは、なぁ、もしかしたら……」
( ・∀・)「ヒートについて何か知ってるのかい、ギコ?」
- 99: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:40:47.73 ID:1xBT6+Ty0
- モララーの問いにギコは小さく俯いた。
口の中で何かを呟き、そして確信するように頷き、
(,,゚Д゚)「昼の作戦会議やら何やらやってた時、ヒートいたよな?」
ハハ ロ -ロ)ハ「いたわね。 物凄い勢いで昼食を平らげてたわ」
(,,゚Д゚)「でもな?
よく思い出してほしいんだが……アイツ、一度も『参戦する』みたいなこと言ってないよな?」
渋澤を除く全員の動きが完全に止まった。
昼時のヒートの行動を思い出してみれば、確かに一緒にはいたが、ただそれだけだった気がする。
モララーから誘われた時は『腹減った』と叫んでいただけだし、作戦会議時には頷いていただけだし――
つまり、
(;゚д゚ )「あの馬鹿、ただ騒いで飲んで食ってただけか……!?」
ハハ ロ -ロ)ハ「エクスト=プラズマンよりタチ悪いわね」
ξ;゚听)ξ「え? ちょっと待ってよ。 じゃ、じゃあ彼女は――」
(;゚Д゚)「……今頃、生徒会の仕事やってんじゃないかなぁ。
生徒会メンバーは学園行事の免除が認められてるし、アイツは姉であるクー生徒会長大好きだから、
おそらく最初からそっち優先で……」
「「「…………」」」
- 102: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:42:42.65 ID:1xBT6+Ty0
- 全てを察した皆が俯き、そして再び黙り込んだ。
夜風が細長く鳴り、その場の雰囲気を更に冷たくしていく。
先ほどまであった『打倒渋澤!』という空気は、もはや何処かへ霧散したようだ。
. _、_
(;,_ノ` )「おいおい……お前ら、まぁ、アレだ。 元気出せよ。
ほら、レモナとヒートがいなくても、このメンバーなら何とかなるだろ? な?
自信持った方が人生楽しいぞ?」
何故かフォローを始める渋澤はさておき、この時の皆の思惑は大体同一であった。
……ははは相手があの二人じゃ仕方ないよなぁははは。
などと半ば思い込みながら現実へ戻ってくる面々。
それでも心の内に残ってしまう苛立ちの矛先は、当然のように目の前に写る敵へ向けられる。
即ち、
_、_
( ,_ノ` )「お?」
幸いなことに、共通の敵となっている渋澤。
彼を囲んだ状態にあるギコ達は、各々の武器を握って伏せていた視線を上げた。
- 106: ◆BYUt189CYA :2008/11/16(日) 21:44:49.89 ID:1xBT6+Ty0
- (,,゚Д゚)「――皆」
( ・∀・)「言わなくていい。 同じ気持ちだからね」
爪*゚〜゚)「……で、ありますね」
_、_
( ,_ノ` )「え? 何? オジサンちょっとついて行けてないんだけど。
最近の若者はすぐに心通わせるからなぁ」
ハハ ロ -ロ)ハ「大丈夫よ、嫌でも解るから」
( ゚д゚ )「どちらにしてもやることは変わらんがな」
ξ゚听)ξ「ストレス発散にはちょうど良いわ。
勝とうが負けようが、ね」
( ^ω^)「よく解らないけど頑張るお!」
_、_
( ,_ノ` )「そうか成程、オジサンちょっと解ってきちゃったなぁ」
ははは、と笑い、
_、_
( ,_ノ` )「さぁ来いよ可愛い生徒達――!!」
直後、ギコ達が一斉に戦闘の動きを選択した。
戻る/第十三話