(,,゚Д゚)ギコと从 ゚∀从ハインと学園都市のようです

5: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 20:35:00.15 ID:GFsk0RP60

――――第十七話

              『過信の訴え』――――――――――





            「信じるもののために」
           これほど厄介な言葉はない



8: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 20:36:38.48 ID:GFsk0RP60
都市の中心である教育区画。
様々な校舎や施設が並び立つ中、その建物があった。
学園生徒会の面々が利用する二階建ての施設だ。

今、その内部では混乱が起きている。

二階。
生徒会長を筆頭とした特別生徒会役員が使う生徒会室でも、同様だ。

川 ゚ -゚)「……・これは一体どういうことだ」

一斉に全員の携帯端末が鳴り響いたと思えば、
その内容は、生徒会メンバーでさえ驚くべきものであった。


何せ送った覚えのないメールを、自分達が発信したことになっていたからだ。


送られてきたばかりのメールをウインドウ表示し、皆に見せつけるように掲げながら問う。
相変わらずの無表情だったが、その瞳には軽い怒りが見て取れた。



12: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 20:38:46.97 ID:GFsk0RP60
緊張が走る面々の中、フォックスが肩をすくめてみせる。

爪'ー`)y-「どういうこと、って言われても。
      どー考えても僕達以外の誰かの仕業でしょう。
      ただ、これは悪戯ってレベルを超えちゃってますけどねぇ」

川 ゚ -゚)「うむ……だが、犯人より撤回が先だ。
     ミセリ、すぐに全生徒へメールを送信してくれ」

ミセ;゚ー゚)リ「は、はいっ!」

慌ててPCへ向かうミセリ。
その背後で、トソンが画面を見つめる。
しかし、

ミセ;゚ー゚)リ「え……?」

川 ゚ -゚)「どうした」

(゚、゚;トソン「メールの送信が不可能? 接続が出来ない?」

ミセ;゚ー゚)リ「これは……!」

ミセリの手が高速で動き始めた。
ボードを連打し、PC画面に大量の文字を生み、何かを調べていく。

更にウインドウが多重展開し、僅か数秒でミセリの周囲が埋め尽くされていった。



13: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 20:40:48.76 ID:GFsk0RP60
そして全ての情報を確認し、

ミセ;゚ー゚)リ「……中枢にアクセスが出来ない。
      いえ、それどころか経路構築すら……これって――」

結論する。

ミセ;゚ー゚)リ「ハッキングなどという類ではないです!
      大元の方が抑えられていると見て間違いありません!」

言葉に、全員が西側の窓を見た。

写る景色は工業区画の一帯。
その中に、一際大きな建物がある。

この都市のネットワークを管理する、通称『MNWセンター』と呼ばれる建物だ。
『大元が抑えられている』とは、『MNWセンターが抑えられた』に等しい。

しかしここから見る限り、大きな異変は見られなかった。



15: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 20:43:22.16 ID:GFsk0RP60
川 ゚ -゚)「施設を破壊されたわけではないようだが……」

(゚、゚トソン「外部から、仮想領域を通じて攻撃を受けているのでは?」

ミセ;゚ー゚)リセキュリティが何重にも張られてるんだよ?
      仮に全てが突破されたとしても、今までそれに誰も気付かないなんておかしいよ!」

(゚、゚トソン「それはつまり――」

言いかけたトソンの言葉を、フォックスが続けた。

爪'ー`)y-「――このふざけたメールを送り、ネットワークを遮断した輩は、
      この都市……しかもMNWセンターにいる可能性が高いってことだよねぇ。
      内部から直接、操作したってことになるんだから」

皆の視線がクーへ集中した。
僅かだが情報を得た今、あとは行動を選択するだけだ。

川 ゚ -゚)「……口頭で都市中の生徒達にメール内容の撤回を伝える。
     これは通常生徒会役員に任せる。
     学園に残っている教師と協力して、出来るだけ早く都市中に行き渡らせろ」

ミセ*゚ー゚)リ「私が行ってきます!」

川 ゚ -゚)「トソンとフォックスはセンターへ。
     犯人と遭遇したなら確実に捕えろ。
     途中、見かけた生徒にメールの撤回を知らせることを忘れずにな。
     私はハインリッヒを保護しに行く」



17: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 20:45:33.90 ID:GFsk0RP60
(゚、゚トソン「了解しました」

爪'ー`)y-「お任せあれ」

言い、二人もミセリの後を追うように行く。
しかし、部屋を出る直前にフォックスが踏みとどまった。
彼は振り向くことなく、

爪'ー`)y-「一つ聞いておきたいことがあります」

川 ゚ -゚)「何だ?」

爪'ー`)y-「ハインリッヒがスパイだという話……嘘だと思って良いのですか?」

川 ゚ -゚)「…………」

押し黙ったクーの気配を背に、フォックスは肩をすくめる。

爪'ー`)y-「僕は精神的に大人だから良いんですけどね?
      ただあのチビっ子達は……本気で貴女のことを信じて、尊敬していますよ。
      副会長の自分としては、そこのところよく考えて動いてほしいと思います」

川 ゚ -゚)「……私は敬われるような者ではない」

爪'ー`)y-「それすらも尊敬の材料としているんですよ、彼女達は。
      貴女を悲劇のヒロインと見ることで、ね」

川 ゚ -゚)「…………」



19: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 20:47:49.17 ID:GFsk0RP60
爪'ー`)y-「非難しているわけじゃありません。
      貴女の気持ちも、僅かながらに理解しています。
      ただ――」

出て行きながら、

爪'ー`)y-「――隠し事も程々に、ね」

そう言い残して、フォックスは生徒会室から出て行った。
扉が閉まる音を最後に、静寂が落ちる。

川 ゚ -゚)「…………」

沈黙の時間は長く続かない。
何かを思い、しかしすぐさま思考を切り替えたクーは、傍に置いてある突撃槍を手に取る。
ホルダーの帯を肩に引っかけ、己の武具を装着。

川 ゚ -゚)「……まずは全てを止めてからだ。
     止めねば、必ず後悔が生まれる」

呟いた彼女は、生徒会室の出入口ではなく窓へと身体を向ける。
開き、手を掛け、縁に足を乗せ、

川 ゚ -゚)「っ!」

行く。
そこには一切の迷いも何もなく。

この都市を守る、という一つの使命を胸に、クーは跳んだ。



25: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 20:49:21.87 ID:GFsk0RP60
学園都市南部に走るサウス・メインストリート。
煙幕に消えたギコを探す生徒達が、そこにいた。
しかし、

「……もういい! ハインリッヒを探すぞ!」

数分も探したところで、リーダー格の生徒が捜索中止の指示を飛ばす。
手掛かりであるギコがいなくなったのなら、直接本命を探すまでだ。
集った生徒達を見渡し、何処へ向かうべきか考えた時。

<_プー゚)フ「はっはぁ――!!」

天から馬鹿が降って来た。

着地。
大柄な身体を地に打ちつけ、軽い音を一つ立てる。
衝撃など何のその、そのまま立ち上がったエクストは、背の剣を掴み、

<_プー゚)フ「ハインの居場所を知りたい奴は、この切っ先にとーっまれ!!」

「…………」
「…………」
「…………」

<_;プー゚)フ「……ノってこいよッ!!」

「「ノれねぇよ!!」」



27: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 20:51:49.02 ID:GFsk0RP60
最近こんな役回りばっかだな、と呟くエクスト。
ホルダーから解放した大剣を一回転させ、その勢いで右肩に乗せる。

十数人の生徒を前にして、怖じることなく胸を張り、

<_プー゚)フ「さぁ、掛かってきやがれッ!!」

しかし、

「「……???」」

<_;プー゚)フ(あ、あれぇー?)

一体何がしたいのかを掴めない生徒達は、首を捻ることで応える。
対し、啖呵を切ったエクストも、自分から言い出したことに動けない。

そのまま一秒経ち、八秒が経ち、更に二十六秒が過ぎた頃。

( -∀-)「…………」

つかつかと歩いてきたモララーが、エクストの頭を拳で叩いた。



30: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 20:54:34.39 ID:GFsk0RP60
<_;プー゚)フ「いってぇ何すんだよモララー!?
         イイとこだぜ今の!?
         映画だったら、ぜってぇトレーラームービーで使われるくらい!」

( -∀-)「どこがだよ?
     君はね、ホントどーして勝手な行動をとるかな。
     いい加減僕も怒りたい」

<_;プー゚)フ「のわっ!? 耳を引っ張るな馬鹿野郎!」

( -∀-)「はいはい君の方が馬鹿ですよー」

痛がるエクストの耳たぶを指で摘み、そのまま歩いて行くモララー。
言い合いながら寮の陰に消えていったところで、その場にいた生徒達が我に帰る。
互いに顔を見合せ、訝しげな表情を浮かべ、どーしたもんかと頬を掻き、

「お、追え――!!」

リーダー格の生徒の声に、慌てて走り始めた。



33: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 20:56:38.00 ID:GFsk0RP60
背後からくる騒がしい複数の足音に、エクストとモララーは満足げに頷いていた。

<_プー゚)フ「ははは、やっぱアイツら馬鹿だぜ」

( ・∀・)「名付けて『馬鹿に馬鹿のフリをさせて釣っちゃおう』作戦」

<_プー゚)フ「……え? 馬鹿が馬鹿に……何?」

(;・∀・)「……『馬鹿はやっぱり馬鹿だった』作戦かな。
     っていうかここ数分の『馬鹿』使用度が半端ないなぁ」

二人は並んで走っていた。
寮の陰に入り、向こうから見えなくなった瞬間からだ。

まるで、追われることが最初から解っていたかのような行動である。



34: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 20:58:36.00 ID:GFsk0RP60
左右に見えるは寮が並ぶ光景。
この道幅ならば、追いつかれても囲まれる可能性は少ないだろう。

( ・∀・)「じゃあ、打ち合わせ通りに頼むよ」

<_プー゚)フ「解ってるよ。
        逃げるフリしながら防戦して、出来るだけ南に引きつけるんだろ?
        しかも派手に、目立ちながら」

( ・∀・)「そういうこと。
     僕らがここで騒ぐことで囮となり、
     他のメンバーが東西を回って北へ行く手助けをする」

<_プー゚)フ「『ハインと仲が良い』っつー情報を逆手にとるわけだな。
        アイツらにとっての手掛かりは、今のところ目の前の俺達しかないから、
        嫌でも追ってこねぇとならんわけだ」

言って、上半身だけを振り返る。
自分を取り戻した生徒達がこちらを追って来るのが見えた。
モララー発案のこの作戦は、なかなか功を奏しているようだった。

残りのメンバーは今頃、二つに分かれて東西を移動しているだろう。
都市の南東・南西を回り、それぞれ商業区画・工業区画へ向かう算段だ。
しかしそのためには、南でハインを探す生徒達の目が邪魔だった。

というわけで、派手な囮役としてエクストとモララーが出てきたのだ。



36: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:00:52.63 ID:GFsk0RP60
( ・∀・)「くれぐれも気をつけるように。
     今は十数人程度だけど、騒ぎを聞きつけられるともっと増えていくからね。
     適度に撃退しつつ、でも逃げ回るのを優先だ」

<_プー゚)フ「あー……ぶっ飛ばしてぇ」

( ・∀・)「あのー、話聞いてた?
     それに相手は上級生込みの集団だよ? 僕は勘弁願いたいね」

<_プー゚)フ「俺はいずれ学園最強になる生徒だぜ?
        やってやれねぇことはねぇ。
        流石に今は我慢するが、なんか悔しくてたまらん」

( -∀-)「御立派」

と、その時だ。
前方の交差路にいくつかの人影が現れる。
武器を構えているところから、どうやらこちらを止めるつもりらしい。

( ・∀・)「先回りされた……?
     どうも速度強化系の術式使いが向こうにいるっぽいね」

<_プー゚)フ「はン――」

鼻で一笑したエクストは、肩に乗せた大剣『オフェンスキープ』を振りかぶりながら、

<_プー゚)フ「――なら遠慮なくぶっ飛ばすだけだ!!」

正面から行った。



38: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:04:34.24 ID:GFsk0RP60
躊躇いなく来るエクストの気迫に、先回りしていた生徒の表情が強張る。
しかしそれも一瞬で、力強く武器を構えて迎撃に入った。

撃音。

エクストの大剣が、相手の槍を力任せに弾き飛ばす。
あまりの勢いに一歩後退した生徒は、続けてその腹に蹴りを受けて吹っ飛んだ。

<_プー゚)フ「っ!!」

蹴った生徒の結末も見ずに、エクストは大剣を横へ振るう。

火花と同時に金属音が咲いた。
横から飛びかかってきていた、別の生徒の剣がぶつかったのだ。

しかしエクストは迷わない。
己の身体をロールさせ、間合いを図り、腰を落とす。
その反動を使って、一気に前へ踏み込みながら、

<_プー゚)フ「甘い! 駄菓子屋で売ってるヨーグルトみたいな菓子より甘ぁーい!」

「なっ……!?」

突きこまれた棒の先端を、身を捻ることで回避する。

三人目が背後にいたのだ。
その奇襲は、エクストの研ぎ澄まされた直感により失敗してしまったが。



43: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:08:23.08 ID:GFsk0RP60
前後に敵を置きながら、しかしエクストは余裕たっぷりに笑みを浮かべた。

大剣を両手で支えたまま膝を折り、その勢いで足払い。
背後にいる生徒のバランスを崩す。
一方の脅威が無くなったことで、エクストの意識は前方へ集中。

「くっ!」

<_プー゚)フ「ビビってンなよ先輩!
        こちとら可愛い後輩だぜ!?」

こうなったら、もはや止められる者はいない。
力任せに剣を弾き、大剣特有のゆったりした、しかし鋭い動きが風を切る。

「っぐぁ――ッ!?」

衝撃が迸り、剣を武器とする生徒の身体が飛んだ。

彼が寮の壁に激突するよりも早く、更にエクストは動いた。
後ろで足払いを受けて片膝をついた生徒に、回転の勢いを乗せた蹴りを放つ。
あの渋澤教師と張り合える力に、バランスを失った相手が耐えられるわけもなく。

<_プー゚)フ「よいしょぉっ!」

「がはっ!?」

打撃音を残し、僅か数秒の戦闘が終わる。
モララーが到着したのは、同時だった。



49: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:10:28.74 ID:GFsk0RP60
<_プー゚)フ「わははは! 見よ! この完全勝利を!!
         今ならタダで写真撮っていいぜ!?」

( ・∀・)(言動はともかく……強い、な)

決して相手が弱かったわけではない。
腕章を見る限り、エクストを相手した三人ともが三年生だった。
しっかり鍛錬を積んでいたのか、連携も取れていた。

ただ、それよりもエクストが強かっただけの話。
渋澤教師に正面から立ち向かった実力は、決して偽りではないのだ。

( ・∀・)「でも――」

白色の杖型デバイス『ウルトレス』を構える。
教導境界線《ガイドライン》製であるウルトレスは、術式高速起動に向いた回路を有しており、
事実、モララーの望む速度で術式の発動を叶えた。

<_プー゚)フ「?」

魔力が走り、エクストの前面に結界を生む。
直後、その表面に光が三つ咲いた。



56: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:12:41.73 ID:GFsk0RP60
<_プー゚)フ「お? おぉ?」

( ・∀・)「遠距離攻撃だね。
     君は目の前の敵しか見ないから困る」

<_プー゚)フ「成程。 そりゃあ礼を言わなきゃな」

うん、と頷き、

<_#プー゚)フ「コソコソと遠くから狙いやがって気に入らねぇ!」

(;・∀・)「君今、術式使いとか銃器使いの人達を全否定してるよ。
     っていうか落ち着こう」

今にも走って殴りに行きそうなエクストを宥める。
普通なら狙撃手は潰しておくべきだが、倒し過ぎも良くない。
自分達の役割は、あくまで防戦一方の囮でなければいけないのだから。

そんなこんなをしていると、後続の追手がこちらに追いついてきた。

流石に上級生中心の集団だけあって躊躇がない。
予め決められていたかのように、扇状にエクスト達を囲う。

<_プー゚)フ「あーらら、もう追いつかれちまった」

( ・∀・)「どうしたものか」



59: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:14:26.26 ID:GFsk0RP60
すると、集団のリーダー格の上級生が口を開く。

「ハインリッヒの居場所を――」

<_プー゚)フ「――やなこった。
        悪ィが、疑われてるダチを売るほど腐っちゃいねぇっす」

「そのダチがスパイであっても、か?」

( ・∀・)「それすら解らない現状ですよ。
     だから事実が与えられているとしても、僕らは真実を求めたいんです。
     たとえその先に諦念があっても」

リーダー格の生徒が押し黙った。
腰に下げた剣の柄を触り、軽く握りしめる。
彼もモララー達と同じように、答えを見つけるために必死なのだ。

「……お前達もギコ=レコイドと同じ、か」

( ・∀・)「方向性だけですけど。
     まぁ、ギコの場合はクー生徒会長を信じるが故に、ってところだと思います。
     そして貴方も同様ですよね?」

「何故だ……?
 何故、同じところを見ておきながら、こうも違う行動になる?
 俺は間違っているのか?」



63: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:16:29.79 ID:GFsk0RP60
<_プー゚)フ「間違ってなんかいねぇっすよ先輩。
        正しくもねぇけど」

( ・∀・)「そしてそれは僕達にも言えます。
     僕達のやってるのは、貴方と同じくただ信義に報いることだけ。
     だから、こうしてぶつかり合うのも仕方ないんですよね」

「……理解に感謝する。
 だが、退くことは出来ない。
 俺もお前達と同じように、己の信じる義のために剣を握っている」

一息。
そして苦笑し、

「悪いな。 迷いある刃で相手をさせてもらうぞ」

( ・∀・)「……解りました。 僕達も退けないのは同じです。
     なら、せめて本気でぶつかって、その結果に納得しましょう」

<_プー゚)フ「今回ばかりは逃げるわけにゃあいかねぇな」

モララーが杖を構え、エクストが大剣を肩に乗せる。
対し、彼らを囲う生徒達も各々の武器を構える。
最後にリーダー格の生徒が、銀光を発する両刃剣を引き抜き、

「「――ッ!!」」

誰もが一斉に駆け出そうとした時。
その誰もの動きを止めるように、一つの変化が訪れる。



65: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:18:48.79 ID:GFsk0RP60
(;・∀・)「え……?」

<_;プー゚)フ「うぉっ!?」

いきなりだった。
か細い音と共に、白い風が何処からともなく雪崩れ込んできたのだ。
春期という季節に場違いな冷気が、その場一帯を駆け抜けていく。

ほとんどの生徒達は突然のことに慌てて周囲を見る。
しかし一部の者は、この冷気の正体を知るが故に、叫んだ。

「ま、まさか……」
「来てしまったのか……!」

(;・∀・)「うわー、これ空気読んでるのか読んでないのか判断に困るなぁ」

<_;プー゚)フ「俺、帰っていいかな?」

エクストでさえも一筋の汗を浮かべて待ち構える存在。
それは、

「――おーっほっほっほ!!」

女性の甲高い笑い声。
それは上から降ってきており、応じるように皆が見上げる。
声の主は、とある一つの寮の屋根の上に立っていた。

|゚ノ ^∀^)「皆様、御覧あれ! 私、レモナ=ミオアーレの英姿をっ!!」



68: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:20:44.87 ID:GFsk0RP60
レモナだ。

彼女が、いつもの格好、いつものテンションで立っていた。
今まさに激突しようとしていた生徒達を、弓にした目で見下ろしている。
はためくスカートの中がギリギリで見えないのも、彼女の威厳が為せる技か。

口を半開きにして固まる皆。
現われた場違いな存在に、思考が追いつかなくなっていく。
しかし彼女は気にしない。

|゚ノ ^∀^)「ところで……何か騒がしいと思って来てみれば、何事ですの?」

<_;プー゚)フ「知らねぇで来たのかよ御嬢!?」

|゚ノ ^∀^)「当然ですわ!
     我が友が、ギコを手伝うが故に追い詰められているという状況にwktkして、
     疾風の如く参じたのですから!」

<_;プー゚)フ「しっかり把握してるじゃねぇか!!」

( ・∀・)「っていうか、どうしてこっちの事情も知ってるの?」

|゚ノ ^∀^)「レモナ情報網に死角無し! ですわ!!」

(;・∀・)「あ、あぁ、そう……」

大袈裟な言動が目立つが、嘘だけは吐かない生徒だ。
そのことを知っているモララーは、よく解らないが事実として認識しておく。



71: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:22:47.35 ID:GFsk0RP60
|゚ノ ^∀^)「困っているようですわね? どうして頂きたいのかしら?」

<_プー゚)フ「そこで俺の華麗な活躍を見とくってのはどーよ?」

(;・∀・)(まぁ、確かにここで暴れられて向こうを全滅でもさせたら、囮の意味が薄くなっちゃうからなぁ……)

適度に逃げ回り、適度に倒していく作戦だ。
そうすることで騒ぎを大きくし、生徒達の目をこちらへ引きつけることが出来る。
仮に出来なかったとしても効果はあるが、やはり長く逃げ回る方が良いだろう。

|゚ノ ^∀^)「? 見ておけばよろしいのかしら?」

<_プー゚)フ「あぁ、そこでジッと――」

|゚ノ ^∀^)「――御断りですわ」

<_;プー゚)フ「ってうぉぉぉぉい!? お前たまには人の話を聞けよ!!」

( -∀-)「君が言うな」

|゚ノ ^∀^)「危機に陥っている友人を放っておくなど、ミオアーレの姓が許しませんわ!
     困惑する庶民の先に立って救うのが我が家系の宿命!
     かつて人々を悪の亜人から守ったように、今こそ私が貴方達を守る時!」

(;・∀・)「えーっと……つまり『喧嘩に混ぜろ』と?」

|゚ノ ^∀^)「ですわっ!!」

<_;プー゚)フ「お前なんでこういう時だけやる気満々なんだよ!
         いつもみたいに適当に――って、今は昼かちくしょうガッデム!」



75: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:24:35.58 ID:GFsk0RP60
地団駄を踏むエクストの叫びは無視される。
こうなったらもはや止まらないのがレモナ=ミオアーレだ。
せめて、

(;・∀・)「せめて巻き込まれないように――!」

まるで、その場にいる全員に警告するようにモララーが言うと同時。
寮の屋根に立つレモナが一つの鋭い動きを開始した。
右手を振るい、袖を軽く引き、雪のような白い腕を露出させたのだ。

そこにあるのは腕輪。

しかし一つではなく、三つ。
三連の繋がりは、しかし固定されているわけでもなく、レモナが腕を動かす度に硬質な音を立てる。

レモナの使うデバイスだ。
髪の色と同じ黄金色の腕輪は、どう見ても高級品。
高級品=性能が高い、という認識が蔓延しているこの世界、
生徒達にとってレモナの装備は、思わず硬い唾を呑むほどの脅威である。

甲高い音。

音階の異なるそれが同時に鳴る。
デバイスを複数起動しているのだ。
当然、普通に使うよりも消費は早いが、その分だけ効果が高くなる使い方で――

|゚ノ ^∀^)「行きますわよ」

――ミオアーレの術式が起動する。



79: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:26:34.21 ID:GFsk0RP60
異変が起きた。
硝子が割れるような音と共に、空気が一変する。
瞬間、その場にいた全員が見た。

「「!?」」

レモナの周囲に、直径一メートルほどの氷の塊が浮いている。
全て大きさは均等に、その数は二十は軽く超えていた。

|゚ノ ^∀^)「ミオアーレの眷属たる私が命じます――」

右腕を高々を掲げる。
呼応するように氷塊が上昇し、その頭を下へ向け、


|゚ノ ^ー^)「――ひれ伏せ、と」


一斉に発射された。

「「――っ!!?」」

逃げる暇もなかった。
問答無用に放たれた氷塊が落ちてくる。
速度こそ劣るが、その迫力は目の前で大砲を撃たれたに等しい。

撃音の連続。

逃げようとする生徒の悲鳴すら掻き消すほどの音が、鳴り響いた。



84: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:28:32.90 ID:GFsk0RP60
<_;プー゚)フ「うわぁー……相変わらず容赦ねぇな」

(;・∀・)「流石に死人が出そうな光景だ……」

この攻撃を予め察知していた二人は、レモナの立つ寮の壁際に退避していた。
目の前で繰り広げられる阿鼻叫喚の光景に、冷や汗を流しながらコメントする。
真上から返事が来た。

|゚ノ ^∀^)「殺しはしませんわ。
     例えるなら……そう、クックル=スドゥリーのストレートパンチを
     正面から無抵抗にブチ込まれる程度の威力ですのよ?」

<_;プー゚)フ「それ死ぬ! 間違いなく死ぬ!
         ってか、ここで全滅させて騒ぎが治まったらどうするつもりだ?」

( ・∀・)「それは――……! いや、その心配はないみたいだよ」

モララーが壁から身を剥がした。
その視線の先には、氷塊の襲撃を受けて壊滅した生徒達の姿。

多くが倒れている中、しかし未だ立っている生徒がいる。



88: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:31:02.55 ID:GFsk0RP60
「……流石だな。
 あのミオアーレの血筋は伊達ではない、か」

リーダー格の生徒と、同じ上級生の生徒が数名。
あの混乱の中、ほとんど傷も負わずに生き残っている。

レモナの術式は確かに強力だが、それはあくまで二年生の中での話で、
やはり上級生である彼らには通用しなかったようだ。
彼は、己の武器である剣についた氷を、軽く振るうことで払いながら、

「ただ闇雲に力をぶつけるだけなら、
 向かい来る攻撃のベクトルは直線に限定される。
 ……つまり回避は容易い、ということだ」

言葉にすれば簡単だが、
落ちてくる氷塊のプレッシャーに対し、一瞬で動ける判断力は並の努力では身につけられない。
名も知らぬ上級生だが、その実力はこちらの思う以上に高いらしい。

|゚ノ ^∀^)「今のは、雑魚を多く仕留めるための術式ですわ。
     つまり今の術式を受けてしまった=雑魚ってことですわね。
     現実は冷たいんですわよ?」

「これからが本番というわけか」



92: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:32:31.61 ID:GFsk0RP60
|゚ノ ^∀^)「察しがよろしいですわね。
     そしてそれは貴方にも言えるのでは?」

「……ふっ、確かにそうだ。
 二年生の最強に最も近い二人が敵にいるのではな。
 下級生とはいえ、それなりの覚悟で向かわねば怪我をするだろう」

<_プー゚)フ「おいモラっち、お前軽く無視されてンぞー」

(;・∀・)「君らみたいなブッ飛んだ人種と同一視される方がショックだよ」

言い、全員が身構える。

モララーは杖を、エクストは大剣を、レモナはブレスレッドを装着した腕を。
リーダー格の上級生は剣を、右隣の生徒は槍を、左隣の生徒は幾枚かのカードを。

エクストが一歩前へ、歯を剥いて笑い、


<_プー゚)フ「そんじゃあ、お互い信じるもののために――!」

「――争おうか!!」


本格的な戦闘が、開始された。



95: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:34:46.94 ID:GFsk0RP60
本当に騒ぎが起きたのだと気付いたのは、緊急メールを受け取ってからすぐだった。
誰かが走る音や、指示を飛ばす声を聞き、皆が動いているのだと理解する。

ξ゚听)ξ「…………」

ツンは、その視線から逃れるように身を屈めていた。

現在位置は、生活区画――その南東に位置する場所だ。
今、彼女は身を低くして移動している。
北を目指した進路、つまり商業区画へ向かう算段である。

つい先ほどまで書物を手に考えを巡らせていたツンだが、
いきなり送られてきたメールを読み、すぐに行動を開始していたのだ。

『尚、彼女の深く関わっていた者にも同じ疑いがあるため、
 その点においても十分気を付けてほしい』

という言葉が、自分や他の仲間に向いていることを即座に理解したからだ。
誰かに見つかる前に建物と建物の間に入り、出来るだけ音を立てずに移動を開始している。



97: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:35:59.90 ID:GFsk0RP60
ξ゚听)ξ(まずは誰かと合流しないとね……)

状況が解らない。
他の皆も隠れているのか、別に隠れなくとも良いのか。
そしてハインはどうなってしまったのか。

メールが使えない以上、誰かを顔を合わせて話し合う必要がある。
だが、そこらで走り回っている生徒の前に姿を見せるのは、リスクが高かった。
故に、仲間達がいそうな場所である商業区画を目指しているのだが――

壁|听)ξ ソーッ

見つからないよう、こっそりと顔を出して確認。
他の場所にハインか仲間かを探しているのか、この区域は人の影があまり多くなかった。
今現在見る限りでも、走る音も声も人影も見えない。

今なら行けそうだ。

この道を突っ切って行けば、ショートカットになる。
気が抜けない状況、早く仲間と合流して身の安全を確保したい。
そして何より、


……ブーンは無事なのかしら。



98: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:37:53.87 ID:GFsk0RP60
昔からトロい子だった。
足は速いが、如何せん判断力に乏しい。
自分がしっかりついていないと、必ずミスをやらかすだろう。

いや、もしかしたら既に拘束されているかもしれない。

ξ゚听)ξ(まったくもう……世話が焼けるんだから。
      こういう時くらい、ちゃんと傍にいなさいよね)

自分から離れたことは忘却の彼方。
何故かブーンが悪いことにして、ツンは移動を試みる。
誰もいないことを確認し、広い道路へ飛び出し、


「――ちょっとそこの御嬢さん?」


と、まるで待ち構えられていたかのようなタイミングで、横から声が掛かった。

ξ;゚听)ξ「え?」

そのまま逃げれば良かったのだが、反射的に振り向いてしまう。
そこには、

N| "゚'` {"゚`lリ「そう、そこの君だ」



100: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:39:29.94 ID:GFsk0RP60
作業衣のような服を着た大柄の男。
優に二メートルは超えていそうな長身が、ツンを見下ろしていた。
彼は、敵意とは無縁の優しそうな笑みを浮かべ、続ける。

N| "゚'` {"゚`lリ「ハインリッヒ=ハイヒールという女子生徒を探している。
        君も知っているだろう?」

ξ;゚听)ξ「……!」

まずい。
よく解らないが、まずい。
学園都市に来て、僅かながら培われた直感が告げる。


――この男は、危険だ。


ξ゚听)ξ「……知りません」

N| "゚'` {"゚`lリ「ん?」

ξ゚听)ξ「ハインリッヒなんて子、私は知りません」

N| "゚'` {"゚`lリ「ふむ……」

知らぬ存ぜぬを貫いて、この場を離れることに集中する。
このまま時間を食えば、他の生徒に発見される危険性も増すからだ。



101: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:41:16.65 ID:GFsk0RP60
しかし、

N| "゚'` {"゚`lリ「――嘘はいけないな」

あっさりと見破られた。
同時、根拠もない悪寒が背筋を駆ける。
思わず一歩後退してしまうほど。

ξ;゚听)ξ「…………」

N| "゚'` {"゚`lリ「隠し事は駄目だ。
        偽りは真実を隠すだけでなく、『真実が在ったこと』すら消してしまう。
        それは俺の姓が、そして血が許さなくてね……厄介なことだよ」

ワケの解らないことを言う男。
ツンは、その背に一つの武具があるのを見る。
斜めに背負われたそれは、

ξ゚听)ξ(槍……?)

鉄槍。
それが男の背にあった。
機械的なパーツは見当たらず、ごく普通の槍だと解る。

だが、ツンが注目する部分は別のところにあった。



104: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:42:47.20 ID:GFsk0RP60
穂先だ。
刃の部分が、そのままになっている。
つまり、刃引きされていない状態で背負われているのだ。

ξ;゚听)ξ(普通、この都市に入る時は、
       入都管理官に武器を預けて刃引き加工を施さないといけない。
       学園都市の住人でも、他から来た観光者でも、例外はないはず……)

では何故、この男の槍はそのままなのだろうか。
何故、『人を殺せる』形のまま持っているのだろうか。

N| "゚'` {"゚`lリ「――――」

ξ;゚听)ξ「……!」

いつの間にか男がこちらの目を見ていた。
表情こそ変わらないが、その雰囲気は一変している。

逃げたい。
逃げなきゃ。
逃げないと危険だ。

本能が警鐘を鳴らしている。
だが、足がすくんで動かない。


男が、右手を、ゆっくりと、前へ、こちらに、向かって――



105: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:44:24.62 ID:GFsk0RP60
N| "゚'` {"゚`lリ「ん?」

その時だ。
後方で、一つの足音が聞こえた。

ξ;゚听)ξ「ブ、ブーn……――!」

咄嗟に頭に浮かんだ名を言いながら振り向けば、


ハハ ロ -ロ)ハ「…………」

爪*゚〜゚)「…………」


ξ;゚听)ξ「……ぁ」

そこには、よく見知った仲間の顔があった。
てっきりブーンかと思っていたツンは、言葉を止め、振り向き途中で身体を固める。
向かって右に立つハローが、露骨な溜息を吐いた。

ハハ ロ -ロ)ハ「どうやら御呼びじゃないようね。
       帰りましょうかスズキ」

ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと待ってぇぇぇ!」



107: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:46:12.64 ID:GFsk0RP60
ハハ ロ -ロ)ハ「え? 何かしら?
       私達、あのニコニコ肉マンじゃないんだけど」

ξ;凵G)ξ「謝るからっ! 謝るから見捨てないでっ!」

爪*゚〜゚)「いやぁ、謝るのは自分達でありますよぅ。
     ホライゾン君じゃなくて申し訳ないであります」

ξ;凵G)ξ「ごめんなさいごめんなさい!
       あの『……ぁ』って落胆的な意味じゃなくて単に予想外だったのよー!」

ツンの半泣き声に、背を向けかけたハローとスズキが止まる。
やれやれ、と肩をすくめ、ツンを助けるために走り寄って来た。
なんだかんだ言って助けてくれる友人に、ツンは心からの感謝を心の中で送る。
口に出すのはどうしても悔しかった。

ξ;゚听)ξ(でも――!)

ともあれこれで何とかなる、と強気に振り返れば、

N| "゚'` {"゚`lリ「よいしょっと……」

何故か脱ごうとしている男の姿が目に入った。



110: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:47:30.05 ID:GFsk0RP60
既に上半身は脱ぎ終わり、腰まで下がった作業衣を引き下ろそうとしている。
一瞬だけ思考が真っ白になるが、反射的に口が開いていた。

ξ;凵G)ξ「いやああああああああああ!!」

爪;゚〜゚)「うひゃあああああああああ!!」


爪;゚〜゚);凵G)ξ「「――変態ぃぃぃぃぃぃっ!?」」


純情乙女二人が悲鳴を上げ、半裸が顔を上げた。

N| "゚'` {"゚`lリ「……?」

目の前の視線を受け、首を傾げる。
その視線を辿り、自分の胸部を見て、そのまま背後を見て、再び首を捻った。

N| "゚'` {"゚`lリ「変態? 何処だ?」

爪;゚〜゚)「うわぁまずいでありますよ! 自覚がない変態であります!
     これが巷に聞くナチュラル変態……!!」

ξ;凵G)ξ「ねぇ、もう逃げよ!? どうでもいいから逃げよ!?」

慄くスズキの腕を引っ張って懇願するツン。
スズキも同意なのか、腰にある煙玉へ手を伸ばす。



113: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:50:28.63 ID:GFsk0RP60
だが、

ハハ ロ -ロ)ハ「…………」

そこにハローが割り込んできた。
ツンとスズキに『下がってなさい』というジェスチャーを送り、二人を守るように立ちはだかる。

N| "゚'` {"゚`lリ「…………」

ハハ ロ -ロ)ハ「…………」

両者睥睨。
そして、

N| "゚'` {"゚`lリ「――ふっ」

ハハ ロ -ロ)ハ「――ふふふ」

同時に笑み。
何か通じるものがあるのか、二人の意思は言葉無しで通じ合う。

ξ;凵G)ξ(もうやだぁ……助けてブーン……!)

爪*゚〜゚)(でも、なんだかちょっと面白そうであります……!)

ツンとスズキの視線を浴びつつ、ハローと阿部が構える。
戦闘――と呼べるのか解らない何かが始まったのは、直後だった。



118: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:52:58.15 ID:GFsk0RP60
一方その頃。

(,,゚Д゚)「…………」

南東へ向かったハロー達は逆に、ギコは南西――つまり来た道を引き返していた。
そのまま工業区画へ向かい、ハインや仲間を探し、クーと接触するつもりである。

工業区画を選んだのは、単純に人の動きが少なそうだったからだ。

あの区画にいるのは科学技術・錬石専攻学部の連中。
彼らは基本的に、自分の興味外のことに身体を動かすのを面倒がるので、
いつも活発な商業区画を抜けるより安全だという判断だ。

自分はスズキのように偵察・隠密技能に秀でているわけでもないし、
ハローのように機転が利くわけでもないので、こちらを選ばせてもらった。
快く承諾してくれたスズキとハローには、この騒ぎが終わったら何か礼をしようと思う。

途中、ヒートと鉢合わせになるではないかと警戒しながら走ったが、
何とか見つかることなく生活区画を抜けることが出来た。

あとは工業区画でハインと仲間を探し、
クーから直接、話を聞くことで真実を確かめるだけ。
何かが間に合わなくなる前に、一気に走りぬけたいところだ。


しかし現在、その足は止まってしまっている。



119: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:54:41.00 ID:GFsk0RP60
生活区画と工業区画の間。
都市内を流れる人工川が近いのか、水音が遠く響いてくる中、
寮も工場も人影も疎らな地点にギコがいる。

(,,゚Д゚)「…………」

彼は拳を作って構えていた。

左手には黒色のグローブ。
右手には包帯。

怪我は完治しかけているが、まだ満足に戦えるようなコンディションではなかった。
元々『理由』無しに拳は振るわないとはいえ、防御にも使えないのでは心許ない。
そんな彼が油断なく睨む先には、

(   )「…………」

かつて夜の屋上で襲ってきた、あの黒布の敵が立ちはだかっていた。

その両手には、それぞれ長さの異なるナイフ。
必要ない、と言わんばかりに隠す素振りを見せない。
加えて白昼堂々と不審者オーラを出しているあたり、随分な余裕があるらしい。



122: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:56:04.47 ID:GFsk0RP60
(,,゚Д゚)「なんでお前がここにいるのか解らんが……邪魔するなら殴るぞ。
    アイツらに協力してもらってる以上、拳を振るうことに迷いはない。
    俺はクー生徒会長に会わなきゃならないんだ」

(   )「…………」

(,,-Д゚)「黙して語らず……刺客の鑑だな、アンタ」

半ば感心しつつ腰を落とす。
黒布の男が自分を狙う理由は、何となく察しがついていた。

(,,゚Д゚)(ハイン関係、だよな)

襲撃はこれで二回目。
そのどちらもが、まずギコを狙っている。
それはつまり、

(,,゚Д゚)(アイツと俺を会わせたくないのか。
    それとも単に、動き回ろうとしてる俺が邪魔なのか……)

直感は後者を選んでいた。
これもまた憶測だが、この黒布の男は敵の中心でない気がする。
何より、自分とハインが出会ったところで大きな変化はないだろう。

だとするなら、企みの邪魔になりそうな自分が、こうして足止めを食らうのも納得出来る。



126: ◆BYUt189CYA :2009/01/04(日) 21:58:56.29 ID:GFsk0RP60
(,,-Д゚)(ううむ……何となく話が見えてきたか?)

突如として送られてきた不可解なメール。
混乱する都市に、遂には同じ住人を疑い始めてしまった生徒達。
そして、ここにきて黒布の男が姿を見せたということは――

(   )「――――」

瞬間、黒布が大きくはためいた。
思考の隙を突いて、獣のように姿勢を落として疾駆。
陽光を弾くナイフの切っ先は、間違いなくギコを向いていた。

(#゚Д゚)「逃げるにしても、殴って捕らえるにしても……やるっきゃないか!」

反射的にギコも前へ出た。
拳を握り、最初から全力で駆ける。

何かに押されるように、そして急かされるように。



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