(,,゚Д゚)ギコと从 ゚∀从ハインと学園都市のようです

4: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:26:29.29 ID:txbtdnh10

――――第二十三話

                『対竜戦』――――――――――





               傷付けたくない
            それが守るということなら
          貴方は一体何を守りたいのか



5: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:28:12.01 ID:txbtdnh10
竜と戦う。

その威は災害とさえ言われるほどの生物を相手にするため、
傾きつつある陽の下、学生達が戦闘の準備を終わらせようとしていた。

ある者は、自慢の武器を肩に乗せ、
ある者は、愛用の銃器や砲を撫で、
ある者は、プログラム調整に勤しみ、
ある者は、多量のカートリッジを運搬する。

上級生も下級生も学部も関係ない。
勝たなければ甚大な被害が出ると解っている以上、学園都市を居場所とする生徒達の表情は真剣そのもの。
それに若干の不安と恐怖をブレンドした、これから初めての戦争へ赴くような若者の顔である。

明確な作戦はなかった。
更に言えば決め手もない。
学園都市は戦争に関われないため、大型兵器や防衛用設備が整っていないのだ。

ただ、自分達の思う通りに連携して戦うだけ。
教科書や資料から得た知識を総動員し、ベストだと思う行動をとる。

それが勝利に繋がるかは解らないが、やらなければ負けるだけの戦いだった。



13: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:31:05.14 ID:txbtdnh10
遠く、何度目かの咆哮が聞こえる。
竜は未だ旋回中で、それに対する疑問は少なくない。

( ´_ゝ`)「ふむ……」

忙しなく走り回る生徒達の中、兄者が顎に手をやって思考していた。

彼もまた、竜の行動に疑問を覚える者の一人である。
隣でカートリッジの換装作業をしていたモナーが半目になるが、無視。

( ´∀`)「もう毎度のことだから慣れたけど、何を考えてるんですかモナ?」

( ´_ゝ`)「いや、なかなか竜が攻撃してこない理由をな。
     最初の接近から既に四半刻は経っているだろう?
     なのに、まだ誰も竜に攻撃すらしていないどころか、こちらの被害はゼロという状況だ」

未だ竜は飛んでいる。
都市の上空を、円を描くような旋回軌道で。
銃器で届くか届かないかというギリギリの高度であるため、弾丸節約を理由に誰も銃口を向けない。



14: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:32:37.63 ID:txbtdnh10
その時、少し離れていた場所でスコープを覗いていた生徒が、声を上げた。

「うーむ……ありゃあ『駄竜』じゃねぇか?
 両腕と翼が一体化してるワイバーン系だし、何より目がすんげー血走ってて涎とかだらっだら。
 品性の欠片もねぇべ」

「やはりそう思うか。 そもそも竜に狙われる理由なんて思いつかないしな。
 一応、会長に報告しておけ」

「うーっす。 それにしても実は俺、けっこー感激してたり。
 竜種を生で見たの初めてなんだ」

「この都市にいるほとんどの人間がそうだと思うぞ。
 教師とか職員の人は知らないが。 ってか早く行け」

「ふーん……って、そういや先生達は戦闘に参加すんの?」

「いや、拠点防衛の方に回るってさ。 ってか早く行け」

「マジすか。 こんな時にもスパルタだねぇ。
 渋澤先生とか前線出たらソッコーで終わりそうなもんだが」

「ははは否定出来ないのが恐ろしい。 ってか早く行かんと酷いぞ」

そんな会話を耳に入れつつ、兄者は思考を続けた。

( ´_ゝ`)(駄竜、か……)



15: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:34:32.59 ID:txbtdnh10
駄竜とは、竜種というカテゴリーに入りながらも別種と見なされている半端な竜だ。
崇高な精神を持っているわけではなく、他の肉食動物と同じように本能に従って生きている。
いわば『竜の形をした獣』であり、兄者が嫌うところの『野蛮な』竜と言えるだろう。

時たま都市や街などを無差別に襲う報告もあるため、それなら現状の説明もつく。
確かに、理由もなく襲われたならこちらの可能性の方が高い。

それに、もし駄竜なら少しは希望が見える。
気性こそ荒いものの、本当の竜種に比べれば戦闘力は高くない。
とても楽に撃退出来るレベルではないが、本物を相手にするよりは被害も少なくなるだろう。

( ´_ゝ`)(――しかし、そう断ずるには早計だな)

竜でもなく駄竜でもない、もう一つの可能性。

『人が操る竜』ならば話は別だ。

高い精神性を持つ竜種だが、その竜を従えることの出来る方法があるのだ。
非常に危険ではあるが、何とかして卵を持ち帰り、生まれた時から人間に従うよう育てるのである。
そうして育った竜は人を背に乗せ、そしてその精神性の高さから主のためだけに力を振るう。

竜を従える者達を『竜騎士(ドラグナー)』と呼ぶが、
確か本国軍部も、『竜騎士』を戦力として保有しているはずだった。
そして、その最高責任者は、

( ´_ゝ`)(確か……チャンネルチャンネル軍部、その空軍長――セントジョーンズか)



18: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:37:09.67 ID:txbtdnh10
セントジョーンズ。
『不墜鳥』の異名を持つ老人だったはず。

何度かニュースで見たことがあるが、
御世辞にも空軍のトップだとは思えない雰囲気だった記憶がある。
今は、ロート級航空双胴艦『無邪気な姉妹《ウンシュルディヒ・シュヴェスター》』の艦長を務めているはずで――

そこまで考え、兄者は苦笑。
たかが学園都市相手に空軍長が動いているわけがない、と。
何より軍部に攻撃される理由がない。

考え事を打ち切り、カートリッジ換装作業に戻る。
その時だ。

( ´∀`)「モナ?」

一瞬、地面が揺れた感覚を得る。
錯覚かと思いつつも隣を見れば、モナーがこちらを見ていた。

( ´∀`)「?」

( ´_ゝ`)「?」

顔を見合せて首を捻る二人。
そして先ほどよりも大きな震動が来ることで、何かが起きていることを確信した。
ざわめきが、東の方角から聞こえてくる。



20: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:39:07.58 ID:txbtdnh10
その東にいる生徒達は、ぽかんとした表情でそれを見ていた。

視線の集まる先には総合グラウンドがある。
学園敷地内にいくつかあるグラウンドの内、最も広い砂地だ。

普段は生徒達の鍛錬場として使われるそこに、異変が起きていた。

震動と共に、グラウンドが割れつつある。
口を開けていくような動きの中、砂が暗闇へと落ちていく。

(゚、゚;トソン「な、な、な……!?」

射撃可能な生徒達を集め、攻撃の打ち合わせをしていたトソンが目を見開いている。
周りにいる生徒達も、作業の手を止めて見入っていた。

爪゚ -゚)「――――」

広がっていく亀裂の傍には、例の機械人形が立っていた。
軽く両腕を広げた姿勢で、目の前にて開いていく大穴を見つめている。
周囲には複数のウインドウが浮かび、それぞれ文字や数字を下から上へ流していた。

(゚、゚;トソン「ちょ、あ、あの! 何をしているのですか!?」

爪゚ -゚)「先ほど申し上げた『兵器』の展開を――まる」

(゚、゚;トソン「え? まる?」



23: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:41:00.34 ID:txbtdnh10
爪゚ -゚)「失礼致しました、まる
    どうも学園都市のシステム領域へ強制接続した結果、
    私の言語野に欠損が出たようで……このような語尾が付属してしまいました、まる」

律儀に頭を下げる機械人形。
語尾のせいか先ほどまでの威厳はまったくない。
よく解らないが、本人が言うのだからそうなのだろう、と納得することにしたトソンは、
グラウンドに開き切った大穴を見て、

(゚、゚;トソン「ところで、兵器と言いましたね。
      ……グラウンドに穴を開けたようにしか見えないのですが」

爪゚ -゚)「申し訳御座いません、まる
    私の求める兵器がグラウンドの地下に格納されておりまして、
    アクセスを試みたところ、どうやらグラウンドの真下に展開口が存在していたようで――」

(゚、゚;トソン「――成程、事情は大体解りました。
      ですが、今度からは生徒会に一言だけでも言ってから実行してほしいです。
      そして一つ質問なのですが、先ほど貴女は『兵器を動かせない』と言っていましたよね……?」

爪゚ -゚)「少々強引な手段をとらせて頂きました、まる
    それについては我が主の意志に従って秘匿させて頂きます、まる」

機械的に一礼。
金の髪がさらりと落ち、それを見ていた生徒達が思わず溜息を漏らす。
語尾が残念なことになってしまっているが、それでも人離れした美しさは変わらない。



24: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:42:54.13 ID:txbtdnh10
一際、震動が強くなった。
どうやら彼女の言う兵器とやらが出てくるらしく、
四角の形を持つ大穴から、大きな駆動音と共に何かがせり上がってくる。

それは、巨大な『砲』であった。

全長にして約70メートル。
砲身だけでも50メートルはあろうかという巨大な砲。
黒を基調とした色の中、フレーム部分だと思われる銀色が所々で露出しているのが一昔前のセンスを感じさせる。

良い意味で男らしい、悪い意味で古臭い雰囲気を持つ兵器であった。

爪゚ -゚)「本来は航空戦艦の主砲に使われる予定だったものを、
    強引に要塞砲として改造したもの……名を『Rice Field Reign Canon』と申します、まる
    直訳で『田代砲(タシロ・カノン)』という意味を持ちます、まる」

「「……ダサッ!」」

爪゚ -゚)「素直な感想ありがとうございます、まる
    ネーミングセンスについては田代砲を作った我が主に御願い致します、まる」

(゚、゚;トソン「主、とは?」

爪゚ -゚)「主の意志により秘匿とさせて頂きます、まる」

語尾のせいですっかり威厳も何も無くなってしまった彼女であるが、機能自体は正常に働いているようだ。
機械人形の特性と併せて、この様子では主とやらの正体を聞き出すことは不可能だろう。
彼女を解体して中身を精査すれば話は別だが、学園都市にそんな高度な技術はない。



27: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:45:17.98 ID:txbtdnh10
と、生徒の報告を受けたのか、クーがやって来た。
彼女はグラウンドを裂いて現れた田代砲を見て、ふむ、と頷き、

川 ゚ -゚)「先ほど言っていた竜を倒せる兵器か……随分と古いようだが、使えるのか?」

(゚、゚;トソン(普通に状況を呑み込みましたよこの人)

爪゚ -゚)「起動に関しては問題ありません、まる
    ただし駆動部にエラーが出ておりまして、あの角度から動かすことが出来ない状態にあります、まる
    修復には、充分なデータと工具と人手があった上で、二月ほどの時間が必要かと」

川 ゚ -゚)「つまり、今はあのままで撃つしかないのだな?
     方角は東……竜をあの場所まで誘い込む必要がある、か」

(゚、゚トソン「難しいですね……。
     科学技術学部の生徒の報告によれば、あの竜は駄竜種らしいことが解っています。
     となると、こちらの意志に関係なく襲い掛かってくる可能性が高いですよね。
     そんな相手を誘導するとなると、よほど目立つ囮を用意しなければ――」

川 ゚ -゚)「……アレは本当に駄竜種なのだろうか」

(゚、゚;トソン「え?」



29: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:47:22.16 ID:txbtdnh10
川 ゚ -゚)「確かに特徴から見れば駄竜種に間違いないだろう。
     しかし、アレは先ほどから延々と旋回するばかりで攻撃する様子を見せない。
     まだ判明していない習性という可能性もあるが……、
     私には、どうしても『何かを待っている』ようにしか見えないのだ」

(゚、゚トソン「何かを待つ、ですか」

川 ゚ -゚)「あぁ、そしてそれは恐らく――」

从 ゚∀从「――俺、だろ?」

いつの間にかハインが立っていた。
彼女は腰に差したナイフの柄を撫でながら、田代砲を見て、そして空を見上げる。

从 ゚∀从「もしあの竜が軍部の寄越した『刺客』だとすりゃあ、命令内容は、俺という情報源と証拠の消滅。
     そして地下の秘密を知ってしまった学園都市に御仕置き、ってトコだろーよ。
     あとはシナーのオッサン達も狙われるかもしれねぇな」

うん、と頷き、

从 ゚∀从「だったら俺が囮になるよ。
      今の仮説の証明にもなるだろうし、俺が死んだって学園都市には損が無いだろ?」



30: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:48:52.68 ID:txbtdnh10
川 ゚ -゚)「……本気か?」

从 ゚∀从「本気、と言うしかねぇな」

川 ゚ -゚)「君は軍部の人間だろう?
     どうして学園都市の味方をする? そこに私は納得が出来ない」

ストレートな物言いに、ハインは苦笑する。

从 ゚∀从「俺、地下に入った時からずっと考えてたんだ。
      このまま地下の情報を持ち帰るのが本当に正しいことなのか、って。
      あの『ゼアフォー』とやらが知られれば、きっと本国はアレを何かに利用しようとする。
      もし制御することが出来るのなら、精神汚染を核としたヤバい兵器が生まれるかもしれねぇ」

川 ゚ -゚)「…………」

从 ゚∀从「……ここを学園都市に作り替えた『プロフェッサーK』の気持ちが、ちょっと解っちまったんだ。
      だから俺はここに残って、何が正しいのかを確かめてみたい。
      それに、もしあの竜が俺を狙ったものだとしたら……今更帰っても良い結果にはならねぇだろうし」

彼女の言う通りだ。
学園生徒会、そしてシナー達『D・I機関』と接触した上での地下観光。
もし何らかの経路で本国側に知られていれば、現状、ハインの身はこの上なく危険な状況にある。

下手に帰還するより、理解者のいる学園都市に残った方が安全は保障されるだろう。



36: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:52:03.46 ID:txbtdnh10
从 ゚∀从「ま、それもこれも学園都市側が歓迎してくれたら、の話だけどな」

川 ゚ -゚)「解った。 歓迎しよう」

从;-∀从「うん、いやまぁ、すぐに信用しろってのも無理な話だし、だから俺が――って、あれ?」

川 ゚ -゚)「春季に編入手続きをしただろう。
     あの時から君はここの生徒だ。 その君が協力を申し出るのなら私達は拒まない」

从;゚∀从「えーっと……そんな簡単でいいの?」

川 ゚ -゚)「簡単なことだと考えているのか?」

逆に問われ、ハインは少しだけ考えた。

从 ゚∀从「……いや、簡単なことじゃねぇよな。 信じてくれてるんだからよ。
      だったら尚更その信用に応えるため、本気で協力するさ」

川 ゚ -゚)「それでいい。 あとは結果として示してみろ」

从 ゚∀从「無表情で平気に無茶言う人だなぁ。
      まぁ、だからこそ皆もついていってるんだろうけどさ」

そして口端を吊り上げる。
苦笑という表情にも似ていたが、どこか寂しそうで、どこか儚い笑みだ。
そのまま背を向け、ハインは走り回る生徒達の中へと消えていった。



37: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:54:23.79 ID:txbtdnh10
爪'ー`)y-「……スパイとしては失格も良いところですよねぇ」

川 ゚ -゚)「そうだな」

いつの間にかフォックスが傍に立っていた。
相変わらず棒付きキャンデーを上品にしゃぶっているが、
その目は鋭くハインの背中を見つめている。

爪'ー`)y-「味方になってくれるなら嬉しいですが、彼女が組織を裏切ったのは事実。
      完全に信用するのは危ないと思いますよ。 これからもずっと」

川 ゚ -゚)「……私はそこに疑問を持つ」

爪'ー`)y-「?」

川 ゚ -゚)「編入してきた時期から彼女を見てきて……確かに、スパイとしての素養はないだろう。
     だとしたら何故、軍部はハインリッヒをスパイとして学園都市に送り込んだ?
     もっと優秀な人材がなかったのか? あの大国『チャンネル・チャンネル』の軍部に?」

爪'ー`)y-「……成程。 言われてみればおかしな話ですねぇ。
      彼女である理由がない、と」



39: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:55:49.50 ID:txbtdnh10
川 ゚ -゚)「もしかしたら、ハインリッヒが我々の仲間になるのも
     シナリオ通りなのかもしれんな」

爪'ー`)y-「一体、誰のシナリオでしょうか」

川 ゚ -゚)「解らない。
     軍部か、プロフェッサーKか、それとも別の何かか……」

何かを考え、しかしそこで言葉を切った。

川 ゚ -゚)「……いや、今は守ることに集中しよう。
     すまないな、妙な話を聞かせてしまって」

爪'ー`)y-「いえいえ、構いませんよ。
      もちろん他の人には秘密にしておきます」

川 ゚ -゚)「恩に着る」

背を向けたクーは、背負っていたランスを手に取った。
動かすたびに黒色の槍身が光を鈍く反射し、そして切っ先がゆっくりと天を向く。
その先へ視線を移し、クーはふと両目を閉じる。

しばらく、その目が開くことはなかった。



40: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:57:17.16 ID:txbtdnh10
大急ぎで戦闘準備を進めていく生徒達。
武器の調整や、術式のプログラム、補給物資の運搬など、それぞれが思うやるべきことをこなしていく。

特に忙しく動いているのは科学技術学部の生徒だ。
用途が限られ過ぎて封印されていた機械やアイテムを、対竜戦にかこつけて使用実験しようと大張りきりで、
それを生徒会役員や、邪魔されそうだと予測した戦闘系生徒達に撤去されそうになり、いざこざが起きている所もある。

そんな喧騒から少し離れた場所にエクスト達が集まっていた。
生徒会メンバーであるギコとヒート、そしてハインリッヒを除いた九人だ。
既に準備は終えたのか武器をホルダーに収め、思い思いの格好で待機している。

( ・∀・)「……で、どうする?」

( ゚∋゚)「どういう意味だ?」

( ・∀・)「あー、うん。 これから竜と戦うことになるっぽいんだけどさ。
     皆はどうするのかな、って」

すると、地べたに座って買ってきた骨付きチキンを頬張っていたエクストが、

<_プー゚)フ「んなこと聞かれてもなぁ……今更じゃね?」

言葉に皆が頷いた。
自分達の住む都市が危機に陥っている以上、その一員として戦わないわけにはいかない。
幸いにも、ここにいる全員は戦う力を持っている。



43: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 20:59:03.09 ID:txbtdnh10
( -д- )「逃げるわけにもいかんからな。
     まぁ、下級生である俺達に大きな出番はないとは思うが……」

|゚ノ ^∀^)「そこを押し退けて活躍すると大注目ですわね?」

ξ;゚听)ξ「何その確認口調……というか、アンタならやりかねないわね。
       二年生のくせに三年生とも互角以上に戦えるレモナ=ミオアーレなら」

|゚ノ ^∀^)「実力を以って自分に出来ること以上のことを目指すのは当然です。
     たとえ相手が竜であろうとも、その理屈は変わりませんのよ?
     むしろチャンスと見るべきですわね」

たくましいなぁ、とモララー達が半目になる。
このたくましさが今の彼女の実力を支えているのだろう。

ハハ ロ -ロ)ハ「でも、チャンスなのは良いけれど、まず竜を倒せるという前提が欲しいところよね。
       頑張った果てに学園都市の陥落が待ってるなら、活躍とか言ってる場合じゃないわ」

爪*゚〜゚)「とは言っても……竜ってすごく強いでありますよね?」

( ・∀・)「単体での戦闘力だけを見るなら、全生物中で断トツのトップクラスだろうね。
     種別によっては航空艦隊を沈めることも出来るらしいし……」

(;^ω^)「うげぇ……そりゃヤバいお」



45: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:01:18.25 ID:txbtdnh10
ここ数十年で発達した魔力技術の恩威で、人は空を飛べるようになった。
その中でも強力な進化を遂げたのが、戦艦や戦闘機を始めとする航空戦力だ。
特に航空戦艦の攻撃力、制圧力、威圧力は人の作る兵器類の中でも群を抜いており、
敵対国の保有する戦力や技術によっては、たった一艦で蹂躙出来ることもあるという。

大国なら持っていなければ話にならない強力な兵器だが、それをも超える存在が竜である。
学園都市が相手にする敵として、これ以上の脅威はないだろう。

ξ゚听)ξ「でも逆を言えば……この戦いに勝つことが出来たなら、
      よほどの事じゃない限りは揺るがなくなるわよね、私達」

( ゚∋゚)「竜を倒した都市になるわけだからな。 嫌でも自信がつくだろう」

( ・∀・)「…………」

爪*゚〜゚)「? どうしたでありますか、モララー君?」

( -∀-)「……いや、何でもない。 馬鹿げた考えだ」

ハハ ロ -ロ)ハ「えぇ、確かに『まさか』としか言えない考えよね、それ」

(;・∀・)「勝手に心読むの止めてくれないかなぁ」

(;^ω^)「え!? ハローって人の心を読めたりするのかお!?」

ハハ ロ -ロ)ハ「ふふふ凄いわよ? だばだばよ? もう溢れんばかりのInspirationよ?」

妖しげな笑みにブーンが震え上がり、皆が半目で溜息を吐く。
これから竜と戦うのだというのに、いつもと変わらない調子は果たして幸いと言えるのか。



49: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:04:45.20 ID:txbtdnh10
<_プー゚)フ「ま、何言ったって竜が逃げてくれるわけじゃねぇ。
        ここで暮らしていきたいなら、武器持って自分らで守れってこったな。
        難しいことは生徒会や先生達が考えてくれんだろ」

よっ、と勢いつけて立ち上がるエクスト。
チキンの骨をゴミ箱に放り込み、指に付いた油を舐めながら、

<_プー゚)フ「んじゃ、そろそろ行くわ」

( ゚д゚ )「何処にだ?」

<_プー゚)フ「お前らも考えてんだろ? 竜に対する戦い方を。
        俺もそうさ。 ちょっとそのために準備してくるっつーだけの話だよ」

そう言ってエクストは立ち去った。
大剣を背負った大柄な身体を見送り、残ったメンバーも顔を見合せて頷く。

( ・∀・)「とりあえずやれることをやろうか。
     生徒会長の言った通り、死なない程度にね」

|゚ノ ^∀^)「えぇ、無茶せずに無茶をすればよろしいんですのよね?」

ξ;--)ξ「なんだかすごく心配になってきたわ……」

( ^ω^)「大丈夫だお! 僕がついてるお!!」

胸を張って言ったブーンに、皆は息を揃えて、

「「――お前が一番心配だよっ!!」」



50: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:07:06.88 ID:txbtdnh10
学園の南にある門が、陽に照らされて光沢を放っている。
相変わらず白と黒のコントラストが美しい。

ハインは、そのシロクロ門の前にいた。

从 ゚ -从「…………」

囮となるハインの目的は、竜に追いつかれることなく都市を走り、
東側――つまり商業区画側へと向いている田代砲の射程内に、竜を誘い込むことだ。
あとは機械人形の制御する『田代砲(タシロ・カノン)』が、竜を貫徹するだけである。

注意点は一つ。

田代砲が搭載している照準関係のデータが古いため、竜を狙い撃つためには少々のバージョンアップが必要らしく、
今、機械人形を中心とした技術班が田代砲のシステムを書き換えている最中だ。
つまり、それが完了するまで商業区画へは誘い込まず、逃げ回らなければならない、ということ。

ルートは、まずサウス・メインストリートを南に突っ走る。
途中で左折し、都市の南東を行き、そして田代砲の準備が出来たところで北上。
商業区画へ大きく回ったところで、今度は竜を引き連れて西へ移動し、
あとは向かって来る竜を正面に据えた田代砲が、その一撃を叩き込む、という算段だ。

時間と、体力と、タイミングの勝負である。

他の生徒達は都市中に散り、囮となるハインのサポートに徹底する。
三年生以上はパーティを組んでいる者が多いので、その連携を駆使しての援護を、
有翼系の亜人生徒などは空を飛び、直接竜の邪魔をしてくれるらしい。



53: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:09:24.81 ID:txbtdnh10
从 ゚∀从「あー……なんか緊張してきた。
      これでもし竜が俺のことガン無視したら笑ってくれよな?
      作戦練り直しなんてカッコつかねぇし」

顔だけで後ろを見ると、そこらを走り回っている生徒が親指を上げ、

「任せておけ。 泣くほど笑い飛ばしてやるよ」

从 ゚∀从「ありがとさん」

片足の先を地面に擦りつける。
既に彼女の足はローラーブレードに包まれており、先端のローラーが砂を噛んで音を上げた。
術式で召喚したものではなく正真正銘の本物であるため、ブースト時の消費魔力にだけ気を付けておけばいい。

それでも恐らく、途中で一度か二度は魔力切れを起こすだろう。
マジックカートリッジを供給してくれる生徒達に上手く接触しなければならない。

自分の行なうべき要素を頭で反芻し、頷く。

大丈夫だ。
難しいけど出来ないわけじゃない。

きっと、いや、絶対に成功させてみせる。



56: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:12:33.73 ID:txbtdnh10
背後、作業の音が先ほどに比べて小さくなっている。
皆の戦闘準備が完了しつつあるのだ。
いよいよ始まろうとする戦闘に、ハインが小さく肩を震わせた時、

(,,゚Д゚)「ハイン」

从;゚∀从「え? ギ、ギコ……?」

(,,゚Д゚)「話は会長から聞いたよ。 無茶やるんだってな」

从 ゚∀从「……あぁ」

目は逸らさない。
意志を見せるため、ハインは瞬きすら我慢した。
しかし、ふと眉を歪め、

从 -∀从「……ごめんな、色々と」

(,,゚Д゚)「え?」

从 ゚∀从「俺、お前に嘘吐いてた。 軍部の諜報員だったのに、編入生だって言って。
      都市案内とか、授業の説明もしてもらって……ごめんな」

何の混じりっ気もない、素直な気持ちだった。
しかしギコは、

(,,-Д-)「悪いな、ハイン。 俺は嘘が大嫌いなんだ」

と、容赦なく首を横に振った。



59: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:16:40.93 ID:txbtdnh10
从 ゚∀从「……なんとなく解る。 ギコ、そういう相手に甘いタイプじゃなさそうだし」

(,,゚Д゚)「あぁ、だから俺はまだお前を許してない。
    嘘吐かれて、その後で『許して』って言われて許すほど、お人好しじゃないしな」

厳しい言葉にハインは小さく俯いた。
解っていたこととはいえ、正面から言われると流石にキツい。
ギコの言葉は続く。

(,,゚Д゚)「――だからさ、その嘘を本当にしてみてくれよ。
    そうしたら俺もお前を許す許さないとかじゃなくて、対等に付き合えるからさ」

言われた言葉に、ハインは小さく目を見開いた。
そのまま数秒の時を経て、そして意味を理解し、自然と笑みが浮かぶ。

从;゚∀从「……お前、意外とアレだなぁ。 キザ? 誰の入れ知恵?」

(;-Д-)「う、うるさい。 ちょっと言ってみたかっただけだ」

从 ゚∀从「ってことは、会長さんから聞いたのか?
     俺がこの先も学園都市の生徒としてやっていくかもしれねぇ、って」

(,,゚Д゚)「あぁ。 もっとも、この戦いで学園都市が負けなけりゃ、の話だけどな」

从 ゚∀从「……任せとけよ。 俺がちゃんと囮やってやるから。
      そして無事に終わったら、吐いた嘘を本当にする。 約束だ」

約束、という言葉にギコは強く頷きを返した。
それを見たハインも同じように首を振り、そして――



60: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:18:28.04 ID:txbtdnh10
生徒達の動きは、竜の動向をチェックしていた生徒のメールから始まった。

『来た』

言葉はネットワークを走り、携帯端末を持つ生徒達へと伝えられる。
たった二文字という少なさが、これから起きるであろう戦闘の緊張感を醸し出していた。

都市中に散った皆が、上がってくる恐怖を唾として呑み込む。
下級生も上級生も関係なく、剣や槍を構えて空を見上げている。

沈黙という緊張。

生徒の多くにとって、これが初めての実戦である。
訓練で経験したことの出来ない感覚に、誰もが険の表情を浮かべている。

直後、北東の方角から一つの影。
翼を強く打ち、その加速を以って降下軌道に入る。
重力加速を重視した姿勢は折り畳んだ傘のようだが、サイズが桁違いに大きい。

速い!

竜が学園都市へと落ちてくる。
速度は高速で、その威圧感は何よりも大きく、そして暴力的であった。
今まで経験したことのない感触に、見上げていた生徒達が息を呑み、

『――――!!!』

空を割るような咆哮を受け、身をすくませる。

戦いが、始まった。



62: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:20:36.54 ID:txbtdnh10
从 ゚∀从「行くぜ……!」

後方の気配が緊張に包まれるのを感じながら、ハインは一歩を踏み出す。
解錠済みのローラーが、石畳の床を抵抗なく滑った。

発進する。
目の前、人の気配がないサウス・メインストリートがあった。
緩やかな下り道は、ローラーブレードの背部にあるブーストを使わずとも加速を得られるようになっている。
石畳なため足下に多少の不安が残るものの、自分の技量なら何とかなる、と信じて進む。

『――――!!』

竜の咆哮が響いた。
それは、待て、とも、見つけたぞ、とも受け取れる声だった。

从 ゚∀从「はン、予想はビンゴだったみてぇだな」

上を見れば、旋回軌道を外れた竜が見えた。
方角からして北側――つまりハインの背後側から襲いかかって来るつもりらしい。

今更になって湧き上がってきた緊張の汗をぬぐい、
ハインは『SilverSweetEdge』を抜いて迎撃の準備を整える。

从;゚∀从「来やがれ、竜……! 俺ァそう簡単にはやられねぇぞ!!」

応えるような咆哮が迫って来る。
竜VS人の高速レースが、次の瞬間から開始された。



64: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:21:52.75 ID:txbtdnh10
シロクロ門の傍に、ギコが立っていた。
囮となるハインを見送った後、そのままの姿勢で空を見上げている。
その視線の先には降下してくる竜影、そして眼下に張りつめた空気の満ちる都市があった。

<_プー゚)フ「おうおう、遂に来たねぇ。 すげー緊張感じゃね」

背後からエクストの声。
他に何かが砂を噛む音が聞こえるが、ギコは振り向かず、

(,,゚Д゚)「あぁ」

と、簡潔に答えた。

<_プー゚)フ「俺はこれから戦うため前線に出るが、お前はどーするよ?」

(,,゚Д゚)「…………」

<_プー゚)フ「相手は空を飛び、しかもデカくて速くて危険な生物。
        対するお前は拳一つ。 どーするつもりなのか聞いてみたいね」

(,,゚Д゚)「俺は……」

一息。
諦めたかのように肩を落とし、

(,,-Д-)「……俺は、自分が情けないよ」

<_プー゚)フ「はぁん?」



66: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:23:24.67 ID:txbtdnh10
(,,゚Д゚)「確かにお前の言う通り、俺は拳一つしか……。
    しかも、理由がなけりゃまともに振るえない。
    それなのに何かを守りたいって思えて、でも出来ないだろって思う自分もいて……」

苦笑した。

(,,-Д-)「何なんだろうな、この気持ち。 もどかしいっていうか」

<_プー゚)フ「んー……まぁ、そりゃ誰でも抱える気持ちの一つじゃねぇかな。
        結局、もっと高いところに行きてぇって思って、理想より弱い今の自分が嫌になるっつーか」

(,,゚Д゚)「いつもみたいに、からかわないのか?」

<_プー゚)フ「真剣な奴を笑えるかよ」

(,,゚Д゚)「……真剣、なのかな」

<_プー゚)フ「俺が見た限りじゃあ、お前けっこー真剣だぜ。
        それに、自分の左手見てみなーよ」

見る。
いつの間にか、強く拳を作っていた。
それこそ皮膚が白くなるまで。

(,,゚Д゚)「……痛い」

広げてみれば、爪が手のひらまで食い込んでいた。
血が出ることはないものの、しっかりと赤黒い痕がついている。
まったく気付かなかったが、思っていた以上に握り絞めていたようだ。



68: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:24:53.82 ID:txbtdnh10
<_プー゚)フ「しっかし、お前は年中悩んでンよなぁ。
        よくもまぁそんなに悩みまくれるよ、うん。 青春だぜぇ?」

(,,゚Д゚)「目標があるからかもな。 何かを目指すから強くなりたいっていうのか。
    エクストにはそういうのないのか?」

<_プー゚)フ「俺? 俺は……まぁ、将来的に超えたい目標はあるけど、
        学園都市内じゃあ、強くなること以外にねぇかな。 あ、マジのお前と戦いたいってのはあるぜ。
        だからここだと、とにかく『強くなる』ってことが目的だから、やるこたぁ簡単なんだ。
        戦闘スタイルやオプションパーツに悩むことはあっても、道について悩みはしねぇよ」

(,,-Д-)「……エクストでさえちゃんと考えてるのに、俺ときたら」

<_;プー゚)フ「おいそりゃどういう意味だコラ。
         っていうかな、学生は悩むことは当然なんだぜ。 焦っちゃいけねぇよ」

(,,゚Д゚)「焦ってる? 俺が?」

<_プー゚)フ「ハインを送り出し、竜を前にして拳を握ってるのは誰だい?
        そしてそんな悩める少年に俺が一つアドバイスを送ってやろう」

咳払いが背後から聞こえ、

<_プー゚)フ「たくさん悩んでる奴ほど、出した答えは強いもんになる――ってな。
        受け売りだけど」

(,,゚Д゚)「つまり楽になれ、と」

<_;プー゚)フ「ち、違ぇよ馬鹿! それだとなんか俺が卑怯じゃねぇか!!」



70: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:26:20.90 ID:txbtdnh10
<_プー゚)フ「ところで、お前はこれからどうするつもりなんだ?
        戦うっつっても、空飛ぶドラゴン様に拳は届かんぜよ?」

(,,゚Д゚)「ん? クックルあたりに乗せてもらおうと思ってるんだが……」

<_プー゚)フ「残念、今のアイツの背中には熱血少女が乗ってやがります」

(;-Д-)「ヒートか……」

溜息を吐くと後ろから、ごほん、とわざとらしい咳が聞こえた。

<_プー゚)フ「んじゃあさ、俺と一緒に行くのはどうよ?
        今ならコレに、先着一名で乗せてってやるぜ」

自信満々な声に不信感を抱きつつ、振り向いてみる。
そこにはエクストが立っているわけだが、その隣に見慣れないモノがあった。
機械の塊で、しかし鋭角的なフォルムが特徴的なそれは、

(;゚Д゚)「単車……って、お前こんなの持ってたっけ?」

<_プー゚)フ「科学技術学部の連中に借りたんだよ。
        成果提出したけど認められなかった、いわゆる失敗作なんだけどな」



71: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:30:27.27 ID:txbtdnh10
成果提出とは、科学技術・錬石専攻学部に課せられた義務だ。

戦闘で武績を稼ぐ武術専攻・術式専攻学部の生徒と異なり、
彼らは日頃行なう研究開発の産物を、学園側に成果として提出することで評価を受けるのだ。

もちろん、理由があって評価を受けられない成果物もある。
性能が偏り過ぎていたり、無駄なところが過剰に設定されていたり、と、
学園側として認めることの出来ない成果物は、科学技術・錬石専攻学部の生徒達の手に戻る。

すると彼らは鬱憤を晴らすかのように、その偏った成果物を更に改造し、飽きたら倉庫へ放り込むのだが、

(;゚Д゚)「……つまり曰く付きの一品ってことだろ?
    それ動かして大丈夫なのか? 主に俺達が」

<_プー゚)フ「おぅ、とりあえず走るぜ!」

(;゚Д゚)「やめて! その答え方不安になるからやめて!!」

<_プー゚)フ「男は黙って行くか退くか、だぜ?
        どうする? 俺と一緒に素晴らしき戦場へ赴くかい?」

軽い調子だが、それがエクスト流の強がりであることには気付いていた。
いくら彼でも竜を相手するのに、不安がないわけがない。
もしかしたら、こうしてギコを誘っているのも――

(,,-Д-)「……解った。 俺も連れて行け」

言った直後、エクストの喜びの声が響いた。



74: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:32:25.93 ID:txbtdnh10
走り出したハインを追うように竜が高速で降りてくる。
目は既に彼女の姿を捉えており、翼を僅かに畳むことで自由落下優先の降下で迫っていた。
軌道は流星のそれで、オレンジに染まっていく空の中、どこか儚くも見える。

対する動きは、学園敷地内の校舎の屋上だ。
射撃系の武器を持った生徒達が、それぞれ構えて一列に並んでいる。

(゚、゚トソン「来ましたね……我が学園都市VIPの初の相手として不足はありません」

生徒達の中にはスズキの姿もあった。
狙撃技能を持つ彼女にとって、空飛ぶ竜へ射撃を浴びせるミッションは打ってつけだ。
愛用の狙撃銃『SR-2「ランサー」』を持って地面に寝そべっている。

爪*゚〜゚)ゝ「トソン先輩、準備OKであります! 号令を!」

(゚、゚トソン「解りました」

頷き、

(゚、゚トソン「戦争行為及び介入の禁止を受けている学園都市にとって、
     突然の襲撃者とは、言い換えるなら私達の力を試そうとする来賓のようなもの」

一息。

(゚、゚トソン「ならば、存分な『もて成し』を施しましょう。
     利腕に銃を、逆腕に弾丸を携えての『迎撃』という名のもて成しを……!」

真ん中に立つトソンが言い、銀天弓を竜へと向けた。

(゚、゚トソン「射撃用意――!!」



75: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:34:15.61 ID:txbtdnh10
弓の両端から光が伸びて弦となり、手を添えることで魔力で形作る矢が生まれる。
他の生徒達も同じようにそれぞれの武器を竜へ向け、照準を空飛ぶ竜へ定めた。
息を吸う動きで、力強く弦を引き絞り、

(゚、゚トソン「――発射ッ!!」

一斉に射撃した。
弦が震える音、弓がしなる音、トリガーを引く音、弾丸が発射される音、術式が起動する音。
その他様々な音が重奏し、『攻撃』という名の大音を作り上げた。

横一列から同時発射された射撃の群は、ハインを追おうとしている竜へと向かう。
このまま当たれば、横殴り気味の威力を叩きつけることになるだろう。

しかしその途中、竜が射撃に気付き、一つの動作を行なった。

『!!』

羽を打つ。
加速。
そして、その勢いでロールした。

乱風!

瞬間的に乱された大気が射撃の道を阻んだ。
当たると思われた弾丸や矢が直前に進行方向を曲げ、あらぬ方向へ突き抜けてしまう。

偶然、竜の身体にヒットする攻撃もあったが、堅牢な鱗によって弾かれて無効化された。
その時に見えた青い火花には、鱗に対魔力的な防護があることを示している。



76: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:35:48.07 ID:txbtdnh10
流石、駄竜とはいえ竜の名を冠しているだけあるようだ。
そのまま横からの弾幕を、竜が抜けていく。

(゚、゚トソン「対『対魔力』効果を付加し、再度の射撃を!」

竜についての情報は、学園にある資料にて習得済みである。
種別によっては、強力な対魔力効果を発する鱗を持っている竜もいる、と。
そのために準備していた特殊な弾丸などを、生徒達は素早く装填した。

タイミングと距離的に、これが最後の攻撃だろう。
抜かせるにしても、せめて一撃くらいは痛手を与えたいところだ。

(゚、゚トソン「――発射!!」

対策を施した再攻撃。
先ほどと同じように、竜の行く先へ射撃群が突っ走る。
対する竜も、再び同じようにしてロールを行なった。

轟、という大気が捻じれる音。

射線が逸らされる。
しかし幾つかは当たり、今度は耳障りの良い高音を生んだ。

一瞬だけ姿勢を崩されかけた竜は、しかしすぐさま持ち直して前へと――

『――ッ!?』

竜の頬辺りで、何かが炸裂した。



77: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:37:44.92 ID:txbtdnh10
それが、トソンの放った矢であることを知っているのは生徒達だけだ。
皆の射撃の後、わざとタイミングをズラして放った攻撃が当たったのだ。

先端に衝撃を受けたことで、竜のバランスが大きく揺らいだ。
風を受け止めるように翼を広げて速度を落とし、姿勢制御を優先させる。
首を何度か振り、トソン達を一睨みした後、ハインを追うために加速を再開。

大したダメージではなかったようだ。
しかし、これで少しの時間は稼ぐことが出来た。

(゚、゚トソン「決して悪い結果ではありませんでしたね。
     今の間に得たデータをまとめ、各生徒に送信して下さい」

(゚、゚トソン「それ以外の生徒達は各々が決めたポジションにつき、再び竜に射撃を放ちます。
     ここからは各自の判断で行動をして下さい。
     会長が言った通り、決して無茶をして死ぬようなことなどないように」

「「了解!」」

その場に残って端末を操作する者。
武器や弾薬を抱え、さっさと屋上から退散していく者。
トソンも彼らに続くため、弓を畳んで歩き出しながら、

(゚、゚トソン「確かに私達は所詮、あらゆる意味で発展途上の学生。
     強力な能力、強力な武装などの持ち主がいなければ、有用な兵器も持っていません。
     ですが、我々には意思がある。 負けたくない、という意思が……」

(゚、゚トソン「……さぁ、まだまだ始まったばかりです。
     これから嫌というほど、学園都市VIPの力を思い知らせてやりましょう」



79: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:40:22.53 ID:txbtdnh10
射撃を受け、僅かながらに速度を落とした竜を、ハインは振り向く動きで確認する。

从;゚∀从「すげぇ……!」

竜に一撃を叩き込んだ。
大したダメージではないが、これで『竜にこちらの攻撃が通用する』という事実を皆に知らしめたことになる。
竜とはいえ決して無敵ではない、と思うだけでも随分と違うだろう。
初撃を務めたトソン達は充分に役目を果たしたと言える。

ここにきてハインは、自分の見解に誤りがあったことを認めた。

確かに、学園都市VIPは統率という意味で不安が残る。
竜という強敵に対し、一致団結して臨むには機能面において欠損が多いからだ。
気持ちだけでは何ともならないことがある、とも歴史が証明している。

しかし生徒個人の練度は、そういった不利を覆せるほどのレベルに達しているらしい。
資料や教材から得ている知識だけで竜に一撃を与えるなど、普通は出来ない芸当だ。

改めて、学園都市VIPの環境・教育の優秀さを認識させられる。



80: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:41:59.77 ID:txbtdnh10
从 ゚∀从「――っと」

背後、大きな気配が近付いてきている。
サウス・メインストリートの下り道を滑りながら、ハインは腰のナイフを構えた。

从 ゚∀从「さぁ、いつでも来やがれ……!」

姿勢を低く、前を見たまま呟く。
あれだけの大きさなら接近は音と風だけで充分に解るし、何より後ろを見て走る余裕など無い。
常に全速力でなければ、やられるだろう。

サウス・メインストリートの半分を越えた。
ここまでに一度くらいは襲撃されるだろうとは思っていたが、どうやらトソン達の射撃の効果が出ているようだ。

しかし、それもここまで。
気配が濃密になる。
音が来て、風が背後から吹いた。

从 ゚∀从「っ!!」

迷わず跳躍した。
右方向へ、慣性力を身に受けながらの跳躍だ。

直後、ハインがいた位置に巨大な爪が落ち、石畳を呆気なく粉砕する。

竜だ。
急降下してきた竜が、ハイン目掛けて足爪を叩き込んだのだ。
一本一本が巨剣にも見える四本揃いの爪が、狙いを外して地面を砕いていた。



81: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:43:11.74 ID:txbtdnh10
撃音が響き、砕けた残骸が四散して凶器と化す。

从;゚∀从「――あっぶねッ!」

少々タイミングが合わなかった。
あと一呼吸ズレていたら最悪の結果になっていたかもしれない。
背に冷や汗が浮かぶのを感じながら、ハインは道脇に立つ電灯のポールを右手で掴んだ。

吹っ飛びそうになる身体を丸めて一回転。
途中、左足のローラーをポール表面に押し当て、軽くブーストを掛けた。

加速!

速度に乗ったまま手を離し、進行方向へ素早い跳躍を行なった。

『――!!』

体勢を整えた竜が、大きな翼を広げて咆哮。
周囲の建物のガラスが震え、びりびりと細かい悲鳴のような音をあげた。

その間にもハインは前を目指していた。
石畳へ着地し、ブーストを起動することで即興の高速を得る。
出来る時に距離を稼いでおかないと、その分だけ危険が増えるからだ。



83: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:44:40.39 ID:txbtdnh10
从;゚∀从「それに、巻き込まれたくねぇからな……!」

意味深な言葉の正体はすぐに現れた。
再び空へ舞い上がろうとした竜に目掛けて、どこからか弾丸や術式が襲い掛かってきたのだ。
周囲にある寮の屋上や、寮と寮の間にある路地から生徒達が武器を構えていて、

「ヤツの離陸を邪魔してやれ! 遠慮すんじゃねぇぞ!!」

「おうっ!!」

一斉に攻撃を放つ。
魔力加工された弾丸が竜の身体を殴りつけ、術式が強固な鱗を焼いていった。

『――!!』

痛みか煩わしさか、竜が吼えた。
そのまま強引に翼を打って空へ戻ろうとする。
しかし、

「――甘いですわね、駄竜!」

いきなり飛来した氷塊が翼を打撃。
硝子を砕くような甲高い音が連続して、辺りに冷気を撒き散らした。
いくら対魔力効果を持っている鱗であっても、氷塊自体の衝突力を打ち消すことなど出来はしない。

|゚ノ ^∀^)「おーっほっほっほ!! 私の術式の味はどうかしら?
     翼を抑えられた竜など、ただの危険生物でしかありませんのよ!」



84: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:45:55.34 ID:txbtdnh10
とある寮の屋上にレモナの姿があった。
黄金のブレスレッドを優雅に揺らし、高貴な笑い声をあげている。

|゚ノ ^∀^)「かつて祖は言いましたわ……! ミオアーレの姓は人を護る、と!
     ならば今、我が力は人のために!!」

術式を起動させる。

《 Get Set ―――――――術式プログラム選択=概念系魔法類【イデア・アーツ】
  Code【I-Lance】――――氷塊形成/大槍/単一射出
  All Ready ――――――Execution=【氷結女王】――》

|゚ノ ^∀^)「加減抜きでいきますわ!!」

掲げた腕の先に生まれたのは氷で作られた槍だ。
五メートルは下らない大槍を、レモナは指先一つの動きで発射した。
反動無しで射出された氷の大槍は、一直線に竜へ向かい、

『――!?』

胸元を砕く勢いで激突、高音を響かせる。

|゚ノ ^∀^)「竜の動きは、ミオアーレの姓を持つ私が封じましたわ!
     さぁ我が下僕達よ! 今こそ正義の鉄鎚を!!」

「勝手に下僕にするんじゃねぇー!!」

剣や槍を持った生徒達が殺到。
ワイバーン系の竜にとって命であり、バランサーでもある翼を打撃されている状態での離陸は難しい。
敵意をもって走り込んで来る人間達に、ただ牙を剥いて吠えながら迎え撃つ。



85: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:47:34.20 ID:txbtdnh10
その中にはミルナの姿もあった。
上級生達に混ざり、自慢の長刀を構えて突撃する。

(#゚д゚ )「おぉっ……!!」

硬い鱗に角度を合わせ、切断を狙って振り下ろした。

連続した金属音。
それは、全ての刃が竜鱗に弾かれてしまった証拠である。
対魔力効果を持っている上、かなりの硬度を誇っている竜鱗は、生徒レベルの技術では断ち切ることが出来ない。

しかし、それでもミルナは諦めなかった。
ハインリッヒ騒動で燻っていた何かを発散するかのように、長刀を振るう。

「いいぞミルナ=コッチオー! そういった気概は大歓迎だ!
 諦めなけりゃ何とかなるなる!」

ならなかった。
どんなに鋭い刃でも、どんなに強力な術式効果でも、竜の身を貫くことが出来ない。
生徒に許された程度の力では、竜の邪魔は出来ても討伐は不可能なのだ。
しかし、それでも諦めずに刃を振るう生徒がいる。

(#゚д゚ )「――!」

身体ごとぶつかるような斬撃は、鱗に火花を立てながら突っ走る。
あとに残るは焦げ跡のようなものだけで、その頑強な身体には傷一つ入れられない。



87: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:49:39.99 ID:txbtdnh10
(#゚д゚ )(俺では、この程度の鱗も断ち切ることが出来んのか……!?)

それでは、あの時と同じだ。
何もかもに勝てず、足を止め続けてきたあの時と。
学園都市に来て変わろうとしたはずなのに、結局また障害に阻まれて足を止めてしまっている。

(#゚д゚ )(俺は……俺は父とは違う!
     障害に阻まれて逃げた父と同じになるわけにはいかない!!)

怒りや焦燥に似た激情。
胸中に出たその感情が、ミルナに一つの動きを求める。
それは、刀を背にある鞘に納めるという納刀の動きだった。

「なっ……!?」

「いや、あれは――!」

(#゚д゚ )「たとえ倒せずとも、俺がここで戦ったのだという証拠を!」

納刀した刀の柄を両手で握った。
一歩を踏み出すと、応えるように鞘の背が展開。

ギリギリまで押さえつけられていた刀身が飛び出し、弧を描いて斬撃する。



89: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 21:52:02.15 ID:txbtdnh10
背越し抜刀術。

通常の抜刀と異なり、背負った鞘から抜いての上段斬りを繰り出す技だ。
数十年前までは、刀の長さや肩の稼働域などの問題で物理的に不可能とされてきたのだが、
魔力の普及によって機械技術が発達し、鞘にも仕掛けを施せるようになったため、
このようなトンデモ技術の実現が可能となっていた。

誰にも言ってはないが、父が唯一自分に教えてくれた技だった。

ミルナがこの場面で背越し抜刀術を使ったのには、無意識的な理由があった。
かつての御家騒動で見た父の情けない姿を、ミルナはひどく嫌っている。
そのせいで、北方人の誇りでもある漢字名を名乗れないことも恨んでいる。

ミルナは父が嫌いだった。
更に、何も出来ないことが嫌いだった。

だから、斬撃した。

刃が鱗を撫でる。
今度は金属音が響かない。

『――――!?』

代わりとして出たのは悲鳴と焦げたような臭い。
高速で走った刃が鱗を削り焼き、僅かながらも竜にダメージを与えたのだ。
足の付け根部分を切りつけられたため、バランスが崩れていく。



95: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 22:01:32.04 ID:txbtdnh10
しかし倒れない。
逆足を踏み出すことで耐え、血走った目を周囲に走らせる。
どうやら苛立ちが最高潮まで達したらしく、息を深く吸い込み始めた。

「っ! やべぇ退避だ! ハウリングが来るぞ!!」

誰かが叫び、そしてそれを超える圧――『竜の咆哮(ドラゴン・ハウリング)』が来た。
放たれた音圧が空気を震わせ、一瞬で円状に広がる。
数キロメートル離れた位置まで届く咆哮は、この距離においては不可視の爆発に等しい。

まず、最も接近していたミルナが吹っ飛んだ。

(;-д゚ )「ぐぅぅぅぅ――!!?」

咄嗟に刀を離し、空いた両手で耳を塞いだ姿勢。
そうでもしなければ鼓膜が破れていただろう。
耳を庇ったせいで音圧に弾かれたが、正しい判断だ。

次いで寮の窓が粉砕した。
ガラスの砕ける音、石畳や寮壁が細かく振動する音。
そして、それらを叩き伏せるかのように、風を仰ぐ大音が駆け抜けた。

皆が動けなくなったと見た竜が飛翔したのだ。



96: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 22:03:22.49 ID:txbtdnh10
「しまっ……!!」

言葉すら追いつかない。
足を地面から離した竜は、自慢の大きな翼を一度打つだけで高速を得る。
皆が武器を構え直した時には、既にその巨躯はハインリッヒを追いかけており、

「ちぃっ! そっち行ったぞ――!!」

撃音。
遠く、怒れる竜が憂さ晴らしするかのように、寮の屋上を蹴り一つで破壊する。
その付近から、わぁ、とか、うぉ、という退避の声も聞こえる。

「なんつー危険生物……! よし、俺達も先回りして再撃するぞ!」

咆哮のダメージが回復した生徒から走り出していく。
なんとも若さ溢れる光景の中、直撃を受けたミルナも立ち上がりつつあった。

手放した刀を拾い、まだ痛む耳と頭に表情をしかめながらも足を出そうとするが、
音によって不調を訴える身体が、思うように動かず上手く歩けない。

|゚ノ ^∀^)「大丈夫ですの? 肩を貸しましょう」



99: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 22:05:32.31 ID:txbtdnh10
(;゚д゚ )「レモナか……すまんな」

|゚ノ ^∀^)「そのために降りてきましたのよ」

言い、ミルナの腕をとって肩へ乗せる。
石畳を転がったせいで付いた汚れが、レモナの着込む清潔な制服に付着した。

(;゚д゚ )「あ……」

|゚ノ ^∀^)「この程度、何でもありません。 洗えば落ちます。
     それに……活躍した貴方を助け起こせるのなら、これ以上の優越感はありませんわ」

(;゚д゚ )「活躍した……? 俺が?」

|゚ノ ^∀^)「憶えていませんの? 竜に傷を入れましたのよ?
     見事な斬撃だった、と私は記憶しておりますが」

彼女の横顔は笑みを見せながら、しかし嘘も世辞も感じさせない清々しい表情だった。
それを見ただけで、ミルナは彼女の言葉が本気であることを理解する。

( ゚д゚ )「…………」

|゚ノ ^∀^)「誰か残っていませんか! ここに怪我人がいますわよ!」



102: ◆BYUt189CYA :2009/05/03(日) 22:10:02.90 ID:txbtdnh10
声を聞きつけてやって来た数人の一般教養学部の生徒が、
レモナの代わりにミルナの身体を支え、怪我の様子を調べ始める。
何枚かの治癒促進、疲労回復の符を張られていると、

<_プー゚)フ「――おらおらぁ! 轢かれたくねぇヤツぁどけぇ!!」

傍を馬鹿が高速で過ぎ去っていった。
跨っている単車が唸りをあげ、その残音と突風を置いて行く。
一瞬の出来事だったが、彼の後ろにはギコの姿もあったのを確かに見た。

成程、あれなら竜の速度にも対抗できるだろう。
エクストがあんなモノを持っているとは知らなかったが、もしかしたら学園の備品かもしれない。
科学技術学部の連中が遊びで作っていたのを、見たことがある気がする。

何にせよ、勢いに乗った馬鹿が行くのは悪いことではない。

(;゚д゚ )「しかし……どこか楽しそうに見えたのが心配だな」

|゚ノ ^∀^)「あら、何事をも楽しめるのは良いことですのよ?
      そう、私のように!!」

(;-д- )「……心配だ」

呟く先、更に大きな音と声が響き始めていた。



戻る第二十四話