(,,゚Д゚)ギコと从 ゚∀从ハインと学園都市のようです

124: ◆BYUt189CYA :2009/08/23(日) 22:19:22.83 ID:4PYVQnCY0

――――断章

           『遥か未来に繋がる談話 (後)』―――――――





               此処から何処へ



125: ◆BYUt189CYA :2009/08/23(日) 22:23:11.55 ID:4PYVQnCY0
そこは闇の密集地であった。
黒色という言葉の意味が解らなくなるほど、真っ暗な空間。
そんな場所に、放り出されている人間がいる。

/ ゚、。 /「…………」

肩甲骨あたりまで伸びた、亜麻色の髪を持つ女性。
背は高く、しかし椅子に座って虚空を見つめている。

/ ゚、。 /(これは……夢、か)

最近、よく見る夢だ。
真っ暗な場所に放置され、朝まで何も起こらない無の夢。
見えるのは、ただひたすらに深い黒色と、

/ ゚、。 /「また、か」

奥の方に見えるものが、一つだけある。

それは、灰色の小さな台座に刺さった、どこまでも黒い巨剣である。



134: ◆BYUt189CYA :2009/08/23(日) 22:26:44.48 ID:4PYVQnCY0
椅子から動けない身であるため、それが何を意味するのかは解らない。
手に持って重さを確かめることすら出来ない。

/ ゚、。 /(だから、私にとっては意味のない夢。
      また目が覚めるのを待つだけだな……)

目が覚めてどうなるものだろうか、とも思う。

自分は今、自力で立ち上がることすら出来ないのだから。
結局またベッドの上で、無為に時間を過ごすしかない。
まったく、呆れてしまうくらい中身のない人生である。

/ ゚、。 /(もう何もやる気が起きんな。 腑抜けたものだ。
      アイツは今でも頑張っているというのに――)

情けない、と思うのはいつものことで。
だから目を瞑り、朝が来るまで待とうとダイオードは思った。

しかし、今日の夢は少し違った。

( <●><●>)「――こんばんは。 ダイオードさんですね?」

知らない男が、姿を見せたのだ。



136: ◆BYUt189CYA :2009/08/23(日) 22:29:26.16 ID:4PYVQnCY0
/ ゚、。 /「誰だ、お前は……」

見たこともない男だ。
周囲の闇に溶け込むような黒布を羽織っている。
その眼だけが異様に目立っており、はっきり言って気味が悪かった。

男は、ダイオードを見て、

( <●><●>)「力、欲しくありませんか?
        失った力を、そしてあのまま上手くいっていれば得たであろう力を。
        貴女が望むのであれば、手を貸して差し上げましょう」

一瞬、呆けるような表情を見せたダイオードだが、

/ ゚、。 /「どこかで読んだ書物のような話だな。
      悪魔の契約。 契約者に強大な力を与え、しかしその後に魂を狩る死神だったか。
      まったく出来過ぎている」

下らん、と吐き捨て、

/ ゚、。 /「そこまでして力を得る理由はない。 消えろ。
      私はもう、何もかもを諦めたのだ」



137: ◆BYUt189CYA :2009/08/23(日) 22:31:09.99 ID:4PYVQnCY0
だが、男は言った。

( <●><●>)「己の心に嘘を吐くのは止めたらどうでしょうか」

/ ゚、。 /「何……?」

( <●><●>)「貴女は確かに復帰を諦めている。
         けれど、その裏ではこうも思っているのでしょう?」

もったいぶるように一息入れ、

( <●><●>)「――クー=ルヴァロンと決着をつけたい、と」

/ ゚、。 /「…………」

( <●><●>)「彼女はもう五年生でしたよね。
        つまり来期が来る頃には卒業し、この都市から出ていくわけです。
        貴女を置いて、ね」

/ ゚、。 /「……どうしようもない話だ。
      今言った通り、既に諦めているとも」



140: ◆BYUt189CYA :2009/08/23(日) 22:35:27.01 ID:4PYVQnCY0
( <●><●>)「だから、その諦念の必要はない、と言っているのですよ。
        あの剣を手にするだけで、貴女はクー=ルヴァロンと戦えるのです」

指し示すのは、奥にある大剣だ。
確かに得体のしれないものだが、ダイオードは首を振る。

/ ゚、。 /「だが、それは私の力では――」

( <●><●>)「――この現状だって、貴女が望んだことじゃないでしょう?
         あの事故が無く、彼女と切磋琢磨していたらどうなっていたか……。
         それを見せよう、と言っているのです」

/ ゚、。 /「しつこい。 消えてくれ。 私に希望を見せないでくれ。
      要らないんだ、そういうのは。 もう、駄目だから」

すると、男は小さな反応を見せた。
笑ったのだ。

( <●><●>)「……良いでしょう。 今日は諦めます。
        ですが、貴女の望みは絶対に消えない。 貴女の中にあるのですから。
        そして、貴女はこの世界にとって――」

/ ゚、。 /「…………」

( <●><●>)「下らない戯言でした。 すみません。 では……」

そして男は掻き消える。
ダイオードは、光が頭上から自分を照らしつつあるのに気付いた。

夢が、覚めるのだ。



142: ◆BYUt189CYA :2009/08/23(日) 22:39:14.31 ID:4PYVQnCY0
目を覚ませば、やはりそこはいつもの病室だった。
白い天井がこちらを見下ろしてくるのは、未だどうにも慣れない。
それは、きっと自分が外を望んでいるということで、

/ ゚、。 /「……私は一体、どうしたいんだ。
      こんな下らない夢を見るほど、望んでいるのか?」

解らない。
自分が、解らない。

/ ゚、。 /「くそっ……馬鹿らしい。 本当に馬鹿らしい。
      後悔するなど……それを認めれば、クーを恨むことに繋がるのに。
      私は、どうして――」

首を動かして、窓を見る。
白いカーテンの隙間から見えるのは、学園都市の北側だ。
墓地や森林が見え、その奥には青空が広がっている。

ダイオードは、かつてここから見た光景を思い出す。

/ ゚、。 /「あれは幻覚だったのだろうか。
      アイツがこんなところにいるはずもないのに……」

目を瞑り、

/ ゚、。 /「ハインリッヒ……お前なら、どうしていただろう。
      昔のように、私を笑ってくれるのだろうか……」

呟きが、白い病室に溶けていった。



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