(,,゚Д゚)ギコと从 ゚∀从ハインと学園都市のようです

6: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 20:42:48.07 ID:OkUg+OHA0

――――第八話

             『確かめたいこと』――――――――――






            決めることも動くことも
         結局は自分に全てかかっている



9: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 20:46:06.25 ID:OkUg+OHA0
本国陸軍との合同訓練を行う、という通達は、
生徒会の会議が終わった直後に都市全体へとメールで知らされた。
既に夕日が傾きつつある時間帯だった。

予定は明後日ということで、今日を入れても準備期間は一日半。
このようないきなりの知らせに、生徒達が驚きと焦りを得るのは当然である。

しかし、よくよく考えてみれば、戦いとはいつ起こるか解らないものだ。

結局、文句を言うのはおかしい、むしろ訓練で良かった、などの前向きな意見が広まり、
やがては、合同訓練に対する準備や確認に走る姿が増えていくこととなる。



14: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 20:49:19.97 ID:OkUg+OHA0
ここでもまた、部隊編成の効果が出ていた。

以前までは、生徒達の個人個人の思考を基準として配置が行われていたが、
それでは戦力的に偏りが生まれ、無駄が発生する原因となっていた。

しかし今回は、『部隊』という集まりを意識することで大きく変化している。

それぞれ処機隊の中で、能力や相性に合わせたグループをいくつも作り、
その総合能力に見合った配置を、処機隊長や生徒会が決定するのだ。
こうすることで戦力の偏りを無くし、結果的に無駄を排除する効果が得られるのである。


( ・∀・)「――まぁ、僕らには関係ない話なんですけどねー」

という声が上がったのは、商業区画にあるオープンカフェの一角だ。
大きめのテーブルの席についているのは、12人のいつものメンバーで、

( ・∀・)「処機隊ってのに編成されるのは上級生。
     しかも成績優秀者……言ってしまえば、戦力になる人達なわけで。
     僕らみたいな下級生は、前と同じように自由に動くんだよね」

下級生の自由行動が認められているのは、
戦闘の空気に身体を慣れさせる、という意味合いが強い。
自分の考えで戦場に立ち、流れに対して自分で判断して動け、ということである。



17: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 20:50:58.39 ID:OkUg+OHA0
もちろん上手くはいかないだろう。
元々そういうジャンルに興味を持ち、知識を持っていたとしても、だ。

現実とは、常に変化して一定の流れを持たない。
そこで役に立つのは充分な知識、そして何よりも経験こそが重要となる。
徒党を組んで戦うのも戦略として大切だが、最終的にモノを言うのは経験に裏打ちされた勘だ。

隊としての規律や心構えを学ぶ前に『生の経験』を積ませるというのが、
心身ともに若者を育み、過酷な外界に放つ学園都市の方針であった。

<_プー゚)フ「俺はそっちの方が楽で良いけどなぁ……。
         だって楽じゃん。 テメェの面倒だけ見てりゃいいんだし」

ハハ ロ -ロ)ハ「団体行動が根本から出来ないタイプよね、貴方。
       でも処機隊に入っていた方が、
       重要な局面を任される確率は高くなると思うのだけど」

<_プー゚)フ「え? マジで? あ、じゃあ俺、処機隊めざすわ!
         むしろ隊長になるのも面白いかもな! 俺が皆に命令すんの!」

(;-Д-)「勘弁してくれ……」

ξ;--)ξ「VIPの評価が落ちるからやめて……」

半目で呟くツンとギコの隣、今度はミルナが、

( ゚д゚ )「だが、処機隊以外の生徒達にも、ある程度の指針はあっただろう」



21: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 20:53:22.57 ID:OkUg+OHA0
( ・∀・)「うん。 皆にも届いてるでしょコレ?」

携帯端末を操作し、ウインドウとして空間表示されたのは一通のメールだ。
文字があり、それをタッチすると、今度は文字に埋め尽くされた画面が表示される。

( ・∀・)「本番時の基本方針を書いたメールだね。
     今回の訓練の全体的な動きとか、そういうのが詳しく書かれてる。
     これを読んでおいて、あとは状況を見て動くのがベストかな」

( ゚∋゚)「私達のように、団体戦闘に慣れてない連中でも動けるように、か。
     流石はクー=ルヴァロン生徒会長だ。 抜け目ない」

<_;プー゚)フ「やべ、読んでねぇや。 文字ばっかでワケ解らん……」

ノハ;゚听)「わ、私もだッ……」

(;-∀-)「はいはい、後で僕が教えてあげるから」

気を取り直し、

( ・∀・)「で、一つ聞いておきたいことがあるんだけど……。
      君ら、明日はどう動くつもりなの?」



22: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 20:55:36.09 ID:OkUg+OHA0
<_プー゚)フ「あ? そんなん自由だろ! 俺はフリーダムに生きるぜ!!」

ノハ*゚听)「おぉッ! なんかそれいいなッ!」

(;゚Д゚)「どうしようもない馬鹿になるから、アレの真似をするのは止めなさい」

( ・∀・)「ふむ。 別にそれでも構わないんだけどさ。
     でもせっかくの機会だし、ちょっと色々と試してみない?」

|゚ノ ^∀^)「試す……ですの?」

( ・∀・)「うん。 夏も終わって、これから秋だからね。
     半年後には三年生なってるわけで、パーティ制が基準として入ってくるでしょ?
     で、僕を含めておそらく皆、誰と組もうか、なんて決まってないと思うんだ」

それぞれ顔を見合せた皆は、うん、と頷いた。

( ・∀・)「だから、いくつかのチームに分かれて、お試しって感じでやってみない?
     合同訓練とはいっても、結局は非殺傷なだけのマジな殴り合いなわけだし、
     普通の訓練じゃあ解らないことが感じられるかもよ」

皆が再び顔を見合わせる。
モララーの言う通り、いきなりではあるが、だからこそ合同訓練の価値は高い。
何せ、主に戦闘行為を職業とする陸軍兵士が相手なのだ。

経験値を普段より多く得られるのなら、より多くのことを試す方が良いに決まっている。



23: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 20:58:00.58 ID:OkUg+OHA0
( ゚д゚ )「ふむ……成程な」

( ^ω^)「なんかよく解んないけど、面白そうだお!」

<_;プー゚)フ「えーっ、俺は個人行動が良いけどなぁー」

(,,-Д-)「だからこそ、だろ。 普段から一人で突っ走ってるんだから、
     こういう機会に団体行動を学んでおいた方がいいに決まってる」

<_プー゚)フ「あー……いやまぁ解ってるけどさ。 でも向き不向きもあるじゃん?
        俺って基本的に大剣担いで突っ込んでいくスタイルだし。
        ハインはどう思う?」

と、いきなり振られたハインは、一瞬だけ反応を遅らせ、

从;゚∀从「え……? な、何が?」

( ゚∋゚)「また呆けていたのか」

爪*゚〜゚)「今日はずっと心此処に在らずって感じでありますねー。
      一体どうしたのでありますか? もしかして体調でも崩して……?」

从;゚∀从「あ、えと、いや、何でもねぇんだ。 うん、大丈夫、だと思う」



25: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 20:59:58.57 ID:OkUg+OHA0
彼女らしからぬ言葉の濁らせ方に、メンバーの一部が首を捻った。
しかし、誰かが何かを言うよりも早くギコが動く。

(,,゚Д゚)「――そうだ、言い忘れてた。
    俺は生徒会の仕事があるから、その団体行動には参加出来ないからな。
    ハインにも手伝いしてもらうことになってる」

( ゚д゚ )「ふむ……では、ヒートは? お前も生徒会メンバーだろう?」

ノパ听)「私は大丈夫ッ!
     前線での経験を優先して積んで来い、って姉さんに言われたッ!」

( ・∀・)「了解。 それじゃあ、僕とスズキ、ブーンとツン、
     ミルナ、クックル、エクスト、レモナ、ハロー、ヒート……、
     合計十人でチーム分けだね」

言いつつ、モララーは携帯端末に指を滑らせた。
予め用意していたのか、操作することで生まれたウインドウには、

( ・∀・)「公平に分かれるため、ランダム設定のクジみたいなのを作っておいたよ。
     同じ数字を引いた人同士が組むってことでよろしく。
     僕とスズキ、ブーンとツンは一セットとして考えるから、
     二人チームと三人チームがそれぞれ二組ずつ完成するね」

どこか期待するような表情の皆が、
順番に回されたウインドウのパネルを押していく。
モララーから始まり、そして再び彼の手に戻ってくる流れだ。

( ・∀・)「――っと、これで良し。 じゃあ早速開けてみるね」



30: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:03:37.72 ID:OkUg+OHA0
決まった組み合わせは、以下の通りだった。

<_プー゚)フ「よぉ、モラっち! タムタム! 俺と組めて幸せ者だなぁお前ら!?
         敢えて言ってやるけどざまぁみろ!」

( ・∀・)「あー……うん、そうだね。 良かったね。 ははは、いやホントに」

爪;゚〜゚)「あうあう、また私の不幸が発動してしまった気が……」


( ^ω^)「よろしくだお、ハロー!」

ハハ ロ -ロ)ハ「これはまた愉快なコンビがパートナーになったわけね。
       ふふふ、任せなさい。 徹底的に良い思いをさせてあげるわ」

ξ;--)ξ「不安……間違いなく試練だわこれ……」


ノパ听)「おーッ、私はミルナとかッ! 楽しみだなぁッ!」

( ゚д゚ )「あまり勝手な行動をとらないよう頼むぞ。
     しかし近接系と組むことになるとは……位置取りに気をつけねばならんか」


( ゚∋゚)「そして私達が組む、か。 間違いなく派手な戦いになるだろうな」

|゚ノ ^∀^)「徹底的な破壊とクラッシュとブレイクが狙えますわ。
      更にチェインを重ねられたら倍率上がって、高得点も夢ではありませんわねっ」

(;゚∋゚)「何の話だ……」



32: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:06:02.95 ID:OkUg+OHA0
それぞれの結果を見て、ギコが一言結論した。

(,,゚Д゚)「――うん、まともなチームがいないな」

どのチームにもトラブルメーカーが存在しているという酷い状態だ。
しかし逆を言えば、対するように冷静になれる奴もいるということで、
これはこれでバランスがとれているのかもしれない。

(;゚Д゚)(例えばエクストとヒートが組んだりしたら、
     もう色々と大変なことになってただろうしな……)

想像するのも怖かったので全力で忘却した。

( ・∀・)「よし、色々あったけどチーム分けも出来たわけだし、
     あとは明日まで自由行動だね。
     それぞれチームで必要なものを用意したり、情報集めたりしてくれ」



33: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:07:51.08 ID:OkUg+OHA0
( ゚∋゚)「配置は適当で構わんのか?
     私は出来るだけ前の方に出たいと思っているのだが」

( ・∀・)「そうだねー……ところで君らも、やっぱり前に出たいの?」

<_プー゚)フ「前!」

( ^ω^)「前!」

ノパ听)「前ッ!」

|゚ノ ^∀^)「前!」

(;・∀・)「見事過ぎて逆にコメントしづらいなぁ」

でも、と続け、

( ・∀・)「それを決定する前に、ちょっとネット上で面白い話が出ててね。
     最前線で戦うのも良いけど、もしかしたらもっと良い思いが出来るかもよ。
     ……話、聞く?」

ハハ ロ -ロ)ハ「タダなら聞くわ」

( ゚д゚ )「見返りを求めないなら聞こう」

( ゚∋゚)「信憑性があるのならば聞こうか」

ξ゚听)ξ「時間の無駄にならないなら聞いてあげる」

(;・∀・)「厳しいね、ホント君ら友人に対して厳しいね……」



34: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:09:53.30 ID:OkUg+OHA0
爪;゚〜゚)「心中察するでありますモララー君」

( -∀-)「スズキだけだよ、この頭のネジが外れかけた集団の中でまともなのは。
     いつまでもそんなスズキでいて下さい」

爪;゚〜゚)「え……?」

するとスズキがくねくねし始め、

爪*-〜-)「い、いきなりプロポーズだなんてモララー君、大胆であります……っ」

いきなり発動した"ふしぎなおどり"を受け、
MPが吸い取られるリアクションをとるハローとエクストを無視しながら、
モララーは携帯端末を使って仕入れた情報を説明する。

それを聞いた皆の反応は微妙であった。
特に頭の回転が早いレモナやツンは、良い顔をしない。

|゚ノ ^∀^)「確かに可能ではありますわね……けど――」

ξ゚听)ξ「噂程度の話なんでしょ?
      そもそも、こんなもののために軍がお金使うかしら?」

( ・∀・)「だからこそ、って見方も個人的にはあるけどね。
     訓練って修練的な意味が強いけど、それ以外に『試行』ってのもあるでしょ?
     実戦に通じるかどうか試す……あり得ない話じゃあない」

そしてモララーが目を向けたのは、遠くに薄く見える都市の外壁だ。
皆も釣られるように視線を投げ、それぞれ考えを泳がせる。



40: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:12:39.94 ID:OkUg+OHA0
( ・∀・)「まぁ、これを信じる信じないは君達に任せるよ。
     僕らはとりあえず、これを警戒した位置取りをしておこうかな」

<_;プー゚)フ「じゃあ前には出ないのか!?」

( ・∀・)「うん。 話を振った責任もあるし、僕らはちょっと後ろの方で構えるよ」

<_フ>Д<)フ「えーやだやだ! 俺、ガツガツ敵をたーおーしーたーいー!」

(;゚д゚ )「お前は子供かっ!」

( ・∀・)「まぁまぁ、考えてもみなよエクスト。
     僕らが後方に控えているのに戦うケースってどんな時だと思う?」

<_プー゚)フ「……そりゃあ敵が来たから、だろ?」

( ・∀・)「そう、つまり前線が突破されたことを示すね。
     そんな状況で君が大暴れしてみなよ。 ヒーローになれそうじゃない?
     都市内にまで攻め込まれた味方を、君が颯爽と助けるわけだからね」

<_*プ∀゚)フ「ヒーロー……? ヒーローかぁ……い、いいなぁそれ。
         よし解った! 俺はお前についていこう!」

(;゚Д゚)(単純だ……そこが良いところでもあるんだけど)



42: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:14:33.18 ID:OkUg+OHA0
見れば、他のメンバー達もそれぞれ相談に入っていた。
モララーの情報を含めて、合同訓練の時の動きをどうするか決めているのだ。
生徒会の仕事で抜けるギコがここにいても仕方ない。

(,,゚Д゚)「よし、俺達は詰所に戻るか」

いつになく口数の少ないハインを連れ、生徒会詰所に戻ろうと考える。

从 ゚∀从「……ん」

(,,゚Д゚)「大丈夫か?」

从 ゚∀从「うん、大丈夫」

やはりダイオードの一件が響いているらしい。

自分の記憶が届きそうな位置にあり、しかし手に出来ないという焦れったさや、
クー達の過去に土足で踏み入るような真似をしていることに悪気を感じ、
それらから来るストレスが、彼女の精神に悪影響を与えているのだろう。

何とかしてやりたいとは思うが、どうしようもない。

(,,゚Д゚)(…………)

今のギコにやれるのは、出来るだけ一緒にいてやることだけだった。



46: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:16:29.55 ID:OkUg+OHA0
ちょうど同じ頃。
合同訓練を明日に控えた学園都市の南、草原が広がる領域に、
チャンネル・チャンネルからやって来た陸軍の部隊が到着していた。

装甲車を中心とした陸戦部隊は、重厚な空気を纏っているようにも見える。

航空艦は当然、小型の航空艇すら使わないワイルドな構成だ。
おそらく兵士の方も、とことんまで陸戦に特化しているのだろう。
まるで野獣の群れである。

学園都市の外壁の上で、それを眺める目線があった。
  _
( ゚∀゚)「すげぇなぁ……訓練だっつーのにケッコー本格的じゃん」

と、のん気に呟くのはジョルジュだ。

いつものだらしない格好で、外壁の縁に寄りかかって草原を見ている。
背後では、コイツ邪魔だなー、と言いたげな射撃系生徒がジト目で見ているが、
陽気な日差しに照らされたジョルジュは微塵も気付かない。



48: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:18:26.74 ID:OkUg+OHA0
今、こちらへ到着の報告を済ませた装甲車が、集まった部隊へ戻ろうとしていた。
その駆動音を耳に入れつつ、
  _
( ゚∀゚)「数が大したことねぇのは、それだけ自信があるってことか。
    流石は大人様……ってーのは短絡的かねぇ」

などと感想を漏らしていると、後ろから、

(*゚∀゚)「ジョールージュっ!」
  _
( ゚∀゚)「……おう」

(*゚∀゚)「アンタ、よくこんなに簡単に私の前に出れたねー。
     今まで散々避けておいてさ」
  _
( ゚∀゚)「まぁなぁ。 だって俺が呼んだんだもん」

(*゚∀゚)「ですよねー。 でも、本当に久しぶりだね。 こうして話すのも。
     どういう風の吹き回しですかー?」
  _
( -∀-)「ちぃっとな。 色々と最近、考えることがあってよ」



50: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:20:14.19 ID:OkUg+OHA0
その言葉の意味に気付いたツーが、表情を改めた。

(*゚∀゚)「……時期的に、この頃だったもんね。 そして二年だもんね」
  _
( ゚∀゚)「やっぱりお前もか。 だよなー」

(*゚∀゚)「うん。 それに、わざわざ思い出させてくれた可愛い後輩もいたから」

そっかー、とジョルジュは頷いた。
詮索はせず、再び外壁の外へと目を向ける。
  _
( ゚∀゚)「外は広いよなぁ……。
     学園都市の中だけ見てると、ホント井の中の蛙になっちまいそうだ。
     なってる奴もそこそこいるみたいだけどな」

(*-∀-)「そだねー」
  _
( ゚∀゚)「でも、いずれ俺達もここを出て、それぞれ生きていくんだよなぁ」

(*-∀-)「んー」
  _
(;゚∀゚)「……聞いてんの?」

(*゚∀゚)「テキトーに。 だってジョルジュの言葉っていつもテキトーだもん」
  _
( ゚∀゚)「まぁ、自覚してるからいいけどさー。
     ……でも、今はちょっとマジなんだ。 聞けよ」

(*゚∀゚)「あいあい」



54: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:22:07.14 ID:OkUg+OHA0
苦笑に似た笑みを浮かべたジョルジュは、振り向き、ツーを正面から見た。
二年前に比べて少しだけ成長したツーの顔立ちは、しかし雰囲気があまり変わっていない。
こういう構図は懐かしいな、と思いつつ、
  _
( ゚∀゚)「クー先輩からメール……お前にも来たろ?」

(*゚∀゚)「……うん。 やっぱりジョルジュも知ったんだね」
  _
( ゚∀゚)「そうでもねぇと、こうしてお前なんか呼ばねぇさ。
     しっかし……まったくふざけた内容だぜ。
     ギコとハインリッヒが、ダイオード先輩と会ってたなんてよ」

メールが届いたのは今朝のことだ。
差出人が生徒会長であることにも驚いたが、
そこにダイオードの現状が記されていたのにも驚かせてもらった。

しかし、
  _
( ゚∀゚)「――今更どうしろってんだよ、って言いたくならぁ。
     今まで放っておいて……いや、避けてた俺達も悪いのは解るけどさ。
     二年だぜ? いきなりでコレじゃあ、リアクションなんてとれねぇだろ」

(*゚∀゚)「だから、クー先輩はあんなこと書いてたんでしょ?
     明日の合同訓練に参加しろ、って」



55: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:23:53.90 ID:OkUg+OHA0
メールには、ダイオードの現状だけが記されていたわけではない。
彼女がツーやジョルジュに対して責任を感じていることを書いている他、
それを払拭する方法として、
  _
( ゚∀゚)「合同訓練に参加し、自分達が問題ないことをダイオード先輩に見せ付ける、か。
     よっぽどだぜ。 ダイオード先輩の責任感も、クー先輩の必死感も。
     どうにかしてダイオード先輩を復帰させたいんだろうなぁ」

(*゚∀゚)「確か明日の訓練は、放送部が生中継で動画流すって言ってたよね。
     それを通じて、私達が元気でやってるのを先輩が見れば……」
  _
( ゚∀゚)「そうなりゃいいな、って程度の話だけどな。
     場合によっちゃ残酷だぜ、これ」

そして、と言い、
  _
( -∀-)「……そもそも二年もの間、ロクに修練してねぇ俺達が、
      いきなり合同訓練なんざに混ざっても意味がねぇんじゃねーかな。
      今なら一年坊に負けることだってあり得るだろ?」

自嘲の意味を込めた苦笑が漏れる。

一日修練をサボれば取り戻すのに三日掛かる、というのは有名な言葉だ。
それほど日々の積み重ねは大事であり、それを怠っている自分達は、
ダイオードの目を覚まさせるほどの活躍は出来ないだろう。



57: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:26:10.07 ID:OkUg+OHA0
ツーからの返事はない。
現実は厳しいよな、と思い、ちょっとストレート過ぎたか、とも思っていると、

(* ∀ )「……は」
  _
( ゚∀゚)「は?」

(*゚∀゚)「はは、ははははははははははは!!」

いきなりツーが笑い始めた。
こちらを指差し、まさに爆発といった様子で文字通り爆笑する。
なんだかすごく馬鹿にされている気がするが気のせいではないだろコレ。

(*;∀;)「――はははひゃひゃひゃはははひゅほほははは、げほっ、ごほっ!」
  _
(;゚∀゚)「いきなりどうしたよツー。
     厳しい現実の前に心が壊れちまったかぁ?」

(;*゚∀゚)「は、はは、ハァ、ハァ……ちょっとジョルジュ、笑わせないでよ」

ひー、と息を吐き、そして吸い、


(*゚∀゚)「アンタねぇ! ジョルジュが夜な夜な一人で修練してるって、
     あたしが知らないとでも思ってたの!?」

  _
(;゚∀゚)「……へ?」



61: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:27:54.84 ID:OkUg+OHA0
一瞬、反応が出来なかったが、言葉の意味を考え、
  _
(;゚∀゚)「っ!? はぁ!? なんでそれを――って、お前、それ知ってるってことは……」

(*゚∀゚)「うぇっへっへ、あたしもで御座んすよぉ。
     流石に毎日ってわけじゃあないけどね。
     勘が鈍らない程度には……うん、少なくともまだそこらの下級生には負けんですよ」

笑みを深め、

(*゚∀゚)「いやぁ、そっちも知ってると思ってたんだけどねー。
    ホントに知らなかったの? 修練する日時、実はほとんど同じだったんだよ?
    少しでも早く先輩達に追いつくため、二人でよく寮を抜け出してやってた個人修練。
    お互い、忘れてなかったんだよねー」

ジョルジュは自分の顔が赤くなりつつあるのを自覚した。
隠れて修練していたことを知られていたというよりも、

(*゚∀゚)「ってことはさぁ、ジョルジュー。
    アンタ今、自分含めて『修練してない』ってことにしようとしてたけど、
    もしあたしがマジで怠けてたら――」
  _
(;゚∀゚)「――う、うるせぇっ、それ以上言うんじゃねぇ!」

(*゚∀゚)「はは、変わんないねー、アンタのその歪んだ気遣い。
     別にあたしなんか放っておいても良かったのにさ」
  _
( -∀-)「……アホ言え。 元は同じ仲間同士だろーが。 ハブになんか出来ねぇよ」



63: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:29:48.74 ID:OkUg+OHA0
(*゚∀゚)「泣かせるねー。
     でもま、これで合同訓練の参加は可能ってことか。
     ダイオード先輩にも復帰してほしいし、やっちゃう?」
  _
( -∀-)「んあー……そのことなんだけどよ」

一息。
そしてツーの両目を見つめ、

  _
( ゚∀゚)「――それで満足かよ、お前?」


と、問うた。

(*゚∀゚)「…………」
  _
( ゚∀゚)「二年。 それだけの時間、俺達は現実から逃げてたんだよな」

(;*゚∀゚)「逃げ、って……」
  _
( ゚∀゚)「俺は、自分で『俺は逃げてんだなー』って思ったんだ。
     だから同じ経緯で同じ行動とったお前もそうだろ。 違うか?」

(*-∀-)「んー、まぁ否定は出来ないねー」

ほとんど授業の武績のみで三年生まで来ているようなものだ。
留年ギリギリのラインをうろついている二人は、教師にとっても悩みの種ではあるが、
ダイオードの一件を知っている以上、そう強くは言うことが出来ないらしい。



64: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:31:19.72 ID:OkUg+OHA0
  _
( ゚∀゚)「……それだけの時間、逃げ続けてさ。
     逃げたなりにも色々と考えることだってあっただろ。
     そりゃあ自分で悪いのは解ってる。 けど――」

(*゚∀゚)「あー……大体、アンタの言いたいことが解ってきた。
     あたし達もそれなりに苦悩して、それに対してまともな答えも出てないのに、
     クー先輩はダイオード先輩の復帰に、あたし達を利用するような手を使おうとしてる」

首を横に振り、

(*゚∀゚)「それで、たとえダイオード先輩がこのまま良い方向へ向かったとしても、
     ハイ終わり、ってわけにはいかないよね」
  _
( ゚∀゚)「空白の二年は確かに存在したんだ。
     だから理解は出来ても、納得は出来ねぇ。
     自分自身に対して、な」

(*゚∀゚)「それにダイオード先輩は必ず補填を申し出るよ?
     私達が戦いを放棄して過ごした二年分の損失を、何らかの方法で。
     こっちが黙っていても、ね」
  _
( -∀-)「いけねぇな。 そりゃいけねぇことだ」



66: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:33:07.97 ID:OkUg+OHA0
うん、とツーは頷く。

(*゚∀゚)「私達は、ダイオード先輩のせいであの二年を過ごしたわけじゃないもんね。
     でも先輩からしたら、そうは思わない……」
  _
( ゚∀゚)「自分のせいで失わせてしまったって考えるタイプだろうしな。
     だが俺達は、返してくれ、とは思ったけど、埋め合わせてくれ、と願った覚えはねぇ。
     だったら――」

考えることは同じらしい。
ツーも、こちらの目をじっと見ていた。
  _
( ゚∀゚)「ちょっと強引だが、やってみるかねぇ。
     俺達の答えを出すことと、ダイオード先輩の目を覚まさせることを同時に。
     上手くいけば一石二鳥だな」

(*゚∀゚)「……いつになく真面目じゃないのさ。
    今まで逃げ続けてきたとは思えないね。 どういう風の吹き回し?」
  _
( ゚∀゚)「後輩に当てられちまったのかもしれね。
     なーんかアイツらが頑張ってんのを見ててさ、思っちまったんだ。
     ダセェよなぁ俺、って」

笑みを浮かべ、
  _
( ゚∀゚)「そりゃあ駄目だ。 俺はカッコ良くあるべきだからな」

(*゚∀゚)「…………」
  _, ,_
( `Д´)「何か言えよぉ! 頷くとか肯定するとかさぁ!」



68: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:38:48.87 ID:OkUg+OHA0
代わりに、ツーは嬉しそうな笑みを浮かべた。
我慢できない、という風に吐息して、

(*゚∀゚)「ジョルジュ、今までごめんね。
    同じ境遇だったのに歩み寄ろうともしなくて、ごめん」
  _
( ゚∀゚)「気にすんな。 俺も同じだ」

そして、
  _
( ゚∀゚)「これからは同じだ。 違う意味でな。
     ダイオード先輩どころじゃなく、この都市を驚かせてやろうぜ」

(*゚∀゚)「変わらないなぁ、ジョルジュは。
     昔と言ってることと同じじゃん」
  _
( ゚∀゚)「おうよ! 男として生まれたなら、一度はデケェことしなきゃな!」

(*゚∀゚)「はいはい。 んじゃあ、さっそく行こう?
     調整と準備、そして色々と確かめようよ。 私達を」

言い、ツーが右手を出した。
ジョルジュがそれを握り返し、二人で軽く振る。

その表情と目には、昔のような生き生きとした輝きが戻ってきていた。



69: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:39:57.36 ID:OkUg+OHA0
若者らしく悩み、戸惑いながら道を模索する学園都市の生徒達。
そんな彼らの価値を試そうとする陸軍長ヴォルフ。


他、様々な思惑が交錯する中、そして合同訓練の日がやってきた。


午後を回り、そろそろ太陽が沈もうと準備をする時間。
シチュエーションとして迎撃側である学園都市には、強い緊張が満ちていた。

「「――――」」

既に皆、配置についている。
南のステーションを中心に展開した生徒達は上級生がほとんどで、
以前までとは異なり、生徒会や処機隊長の命令を受けて立っている。

未だこういった指揮による戦闘に慣れていないのは解っているので、
与えている命令は『ステーションを守れ』という単純な内容だ。
突破されることを前提として、その後は後方の戦力と合流して乱戦、という流れになっている。



70: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:42:35.89 ID:OkUg+OHA0
その背後に控えている戦力は、下級生を中心とした生徒達だ。
ステーションを突破してきた敵の迎撃を、生き残った前線戦力と共に行う他、
ステーション防衛のための予備戦力という仕事もある。

そして都市を円状に囲う外壁の上には、
トソンをリーダーとした第三処機部隊が展開していた。
ステーション突破のために近付いてくる敵部隊を、少しでも削るためだ。
前線が突破された時は、臨機応変に対応することが決定している。

本来なら策を警戒して様々な手を打っておくべきなのだろうが、
今回の合同訓練、学園都市側の目的は『生徒の経験値を高める』である。
故に、ほぼ全員が正面から激突する準備を為していた。

そういう意味では、トソンが言っていた、
『小細工無しのガチンコ勝負』の言葉は間違っていない。



74: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:45:27.75 ID:OkUg+OHA0
生徒会役員を含めた残存戦力は、都市の中心である教育区画に構えていた。
訓練の終了が、『互いの軍勢の指揮官が捕縛される』、
または『規定時間が訪れる』、であるため、ここが最後の砦という形になっている。

爪'ー`)y-「――つまり、ここが戦場になったら劣勢中の劣勢ってことだよねぇ」
 _、_
( ,_ノ` )「だわなぁ……あ、ちなみに教師、職員は手を出さんのでよろしく。
     不正や理不尽な暴力があった場合のみ、介入させてもらうぜ。
     ちなみに商業区画の方じゃあ商人さん達が、
     いつ建物や備品を壊されても賠償要求できるよう構えてるらしい」

川 ゚ -゚)「御願いします」

生徒会詰所前で、クー達は程々の緊張感と共に待機していた。
学園都市側の指揮官となっているクーは、
キーボード型ウインドウを一心不乱に打っているミセリを見て、

川 ゚ -゚)「合同訓練に参加しない生徒達はどうだ?」

ミセ*゚ー゚)リ「えっと……既に都市の北部に避難済みです。
       多くは一般教養学部の生徒達ですねー。 試験も近いですし。
       あと科学技術・錬石技術学部の人達は……けっこう、訓練に参加しているみたいです」

|(●),  、(●)、|「普段から色々と作ってますからねぇ。
         竜との戦いの時のように、実戦での試験をしたいのではないでしょうか」

川 ゚ -゚)「あまり無茶をしないよう……と、こちらが言っても無駄でしょうね」

|(●),  、(●)、|「ですね。 ところで、クー生徒会長?」



75: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:47:27.17 ID:OkUg+OHA0
川 ゚ -゚)「何か?」

|(●),  、(●)、|「貴女が計画し、ここまで持ってきた部隊編成という力。
         それが軍相手にどれほど通用するのか、
         貴女の指揮の手腕を含めて、見せてもらいますよ?」

川 ゚ -゚)「私が直接、何か指示を出すことはないとは思いますが。
     なにせ群としての動きに慣れていない素人集団です。
     与えられた明確な目的をこなすだけで、精一杯かと思われます」

|(●),  、(●)、|「それでも、ですよ。 見届けさせて下さいね」

川 ゚ -゚)「……? 何を――」

爪゚ -゚)「――会長、全ての準備を完了しました、まる」

川 ゚ -゚)「ん、あぁ、そうか」

爪゚ -゚)「それと、今回は南部を主戦場とするため、何かあっても『田代砲』は使用出来ません、まる
     ぶっちゃけて言うと暇なのですがどうしましょう、クエスチョンマーク」

川 ゚ -゚)「なら、私の傍に控えていてくれるか。
     戦えるのなら、その準備もしておけ」

爪゚ -゚)「了解です、まる
     ということは……ここまで攻め込まれることがあり得る、と、クエスチョンマーク」



77: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:50:10.97 ID:OkUg+OHA0
問われたクーは、視線を左右に送って何かを確認した。
そして力無く首を振って、

川 ゚ -゚)「やんちゃな後輩が勝手に動いているのでな。
     あくまで予測だが、お前が傍にいると安定すると思う」

そして、と続け

川 ゚ -゚)「相手は軍だ。 最初から勝ち目などほとんどない。 
     おそらくこの訓練の終わりは、こちらの陥落か時間切れによる引き分けだろう」

下ろしていた腰を立ち上げる。
訓練の開始を要求するため、ミセリへと近づきながら、

川 ゚ -゚)「……それまでに皆、何かを手応えとして得てくれれば良いのだが、な」

それから数分後。
互いの準備が完了したことを確認した両軍は、
戦闘開始の合図を待つため、更なる緊張に身を浸すこととなった。



78: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:51:39.55 ID:OkUg+OHA0
学園都市南部に展開した陸軍部隊の最奥には、狼タイプの亜人が仁王立ちしていた。
仮設された簡素な陣地の中央に、鉄の両腕を組んで構える姿は『威風堂々』と言う他にない。

ミ,,゚(叉)「――さぁて、そろそろ開始か」

ミ,,゚Д゚彡「両陣営共に戦闘準備は完了しているようです」

傍に控えるフサギコが言った。
いつもの軍服ではなく、軽量の装甲服に身を包んでいる姿だった。

各部装甲は関節を重点的に、しかし動きを阻害しないよう考えて配置されている。
ぱっと見で目を引くのは、腰部からスカートのように伸びるプレート状の金属板だ。
足全体を全方位からガードする作りは、おそらく彼が機動力を命とした戦士だからである。

ミ,,゚(叉)「両方が万全のまま戦うなんぞあまりねぇからなぁ。
     せいぜい美味しく頂くとするか」

ミ;゚Д゚彡「美味しく、って……。
      ヴォルフ陸軍長は、やはりこちらが勝つと御思いですか?」

ミ,,゚(叉)「おいおいフサギコ、自分の部下達の勝利を信じねぇ長がどこにいる?」

ミ;゚Д゚彡「そうですけど……」

ミ,,゚(叉)「それに、人間ってーのは食事前にこう言うんだろ?
     頂きます、ってな。 そういう意味さ」



82: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:53:10.23 ID:OkUg+OHA0
さて、と組んでいた両腕を解く。

ミ,,゚(叉)「作戦通り、まずは正面から力尽くで突破をかける。
     俺達の得意中の得意技さ。 ガキにナメられんじゃねぇぞ?」

そして、と続け、

ミ,,゚(叉)「術式壁を抜き、ステーションの制圧戦が始まったら……」

ミ,,゚Д゚彡「えぇ、適時戦力を『投入』します」

ミ,,゚(叉)「ガキ共が慌てふためく様子が目に浮かぶぜ」

と、ヴォルフは左右へ目を向けた。
そこにいるのは、陸軍用の装甲服とは異なる衣服に身を包んだ者達がいた。

ミ,,゚Д゚彡「……ある意味、因縁の対決という形になるんでしょうかねぇ。
      というか、私の場合も同様っぽいのですが」

ミ,,゚(叉)「あ? どういうことよ? テメェ俺に隠し事か? 食うぞ? 俺は骨まで噛み砕くぞ?」

ミ;゚Д゚彡「返答が追いつかない判断の連打は止めて下さいっ。
      で、ええと、セントジョーンズ空軍長に言われておりまして。
      いずれ学園都市VIPと戦うことがある、と。 まさかここまで早いとは思いませんでしたが」

ミ,,゚(叉)「あー……そりゃちょっと違うかもな」

ミ,,゚Д゚彡「? どうしてですか?」



83: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:54:31.82 ID:OkUg+OHA0
ミ,,゚(叉)「まだ若造なお前には解らんかもしれねぇがな。
     あるんだよ。 何つーの? 自覚みてぇのがさ。
     『あぁ、こういうことか』って確かめなくても勝手に解る感じ。
     お前今『っぽい』って言ったってことは、それ感じてねぇだろ? じゃあ違う」

ミ,,゚Д゚彡「しかし現に今、私は学園都市と敵対しているのですがねー」

ミ,,゚(叉)「だが、名目は合同訓練だ。
     シチュエーションとしての敵対だが、表向きは味方同士だろ?」

ミ;゚Д゚彡「……ということは」

ミ,,゚(叉)「おぉっと、滅多なことは口にしない方が良い。
     それに忘れがちだとは思うが、今お前の目の前にいるのは狼なんだからよ。
     あんまし俺の言う言葉を真に受けるな。 戯言と思った方が人生楽だぜ」

ミ;゚Д゚彡「自分で言いますかこの人はー」

ミ,,゚(叉)「自分だからこそ解るんだよ阿呆」



85: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:55:49.81 ID:OkUg+OHA0
と、そこで一人の兵士が入ってきた。
訓練開始前ということで若干の焦りが見て取れる。

「訪客がお見えになりまして、ヴォルフ陸軍長と話したい、と」

ミ,,゚(叉)「俺と? 誰だよ? 良いぜ通しな」

「了解」

ミ,,゚Д゚彡「……良いんですか?」

ミ,,゚(叉)「良かったらお互いハッピー。 駄目だったら食って俺がハッピー」

ミ;-Д-彡「最悪だー」

フサギコが思い切り肩を落としたと同時に、訪客が姿を見せた。
足音は二つ分で、それを見たヴォルフは、


ミ,,゚(叉)「……へぇ、こりゃあお互いハッピーになれそうじゃねぇかよ、おい」


と、言葉を交わす前に判断を下した。



88: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 21:59:00.67 ID:OkUg+OHA0
太陽の軌道が頂きを越え、そして沈んでいく。
山々の間に消えようとし始める時間に、大規模な訓練が始まった。

開始の合図は、空高く響いた空砲だ。

それが空に響き、緊張感が最高潮に達し、それぞれが一斉に動いていく。

まず最初の動きとしては、陸軍部隊の接近だ。
兵士を荷台部に乗せた装甲車の群が、唸りを上げながら接近してくる。
このまま速度に任せて接近し、ステーションを守る術式壁の撤去へ掛かるつもりだ。
対するは、

(゚、゚トソン「私達は貴重な初撃の担い手! 派手にいきましょう!」

息を思い切り吸って、


(゚、゚#トソン「射撃開始――!!」


トソンの号令と共に、外壁上に展開していた射撃部隊が一斉に攻撃を放った。
銃弾や矢を始め、術式による光線、光弾が装甲車へと殺到する。

いくつもの爆発と轟音が、学園都市南部に広がる草原を揺るがした。



92: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:00:47.22 ID:OkUg+OHA0
しかし、

「……! トソン隊長! ほとんど効いていません!」

(゚、゚トソン「落ち着きなさい。 この程度は予測済みです。
     装甲車の前面に防護術式を展開しているのでしょう。
     おそらく曲面的な性質を持つことで、防ぐと同時に逸らしているのです」

だが、とトソンは弓を構え直した。

(゚、゚トソン「だからと言って何もしないのであれば、私達がここにいる意味はありません。
     防護術式ならば、それを超える攻撃力を叩き込めば砕けます。
     各自、周りの人達と協力して集中的に狙いなさい」

満遍なく展開していた射線を集め、狙いやすいと決めた一台に集中。
沈みつつある太陽の影響で狙いがつけにくいが、日頃の訓練がそれをサポートする。
火花と魔力光が弾け、中央を走っていた装甲車が振動し、車体を細かく震わせた。

そして、防護が砕ける。

ガラスが割れるような音と共に、光の粒子が風に乗って勢いよく散ったのだ。
頼みの術式を砕かれ、丸裸となった車体へ容赦なく射撃をぶち込んでいく。

撃音と衝撃が連続した。



94: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:03:13.30 ID:OkUg+OHA0
すると、一台の装甲車に異変が生まれた。
砕かれた装甲が内部機構に食い込んだのか、外壁上まで聞こえる甲高い異音を響かせたのだ。
急ブレーキを掛けたかのようにして、細かく震えながら車体が止まる。

そして装甲車の荷台から、兵士達が仕方なく降りてくるのが見えた。

(゚、゚トソン「これで一部の侵攻速度を落としました!
     次を狙います! 私に倣いなさい!!」

そうして構えた時、外壁の下で追加の動きが生まれた。
ステーションを守るために外で準備していた防衛部隊だ。

「敵対勢力接近!
 どうせやられる身だ! 転んでも良いから時間を稼ぐぞ!
 あとここで活躍すれば後でモテそうな気がする!」

「「応っ!」」

「この貴重な機会、無駄にすることなく死ぬ気で学べ!!」

向かってくる装甲車を一台でも遅らせるため、走り始める。
逃げ場のない決死の突撃は、上級生を中心とした生徒達で構成されていた。

「おぉ――!!」

外壁上の射撃と合わせ、最初の激突が開幕した。



97: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:04:53.60 ID:OkUg+OHA0
一気に騒がしくなった学園都市。
その北部にある医院の中、入院棟の三階で訓練の様子を見ている者がいた。

『――さぁ、遂に始まりました合同訓練!
 実況は放送部のアイドルである私がお送り致します! てへっ!
 ……なんですかその目は? ちょっとカメラ止めて下さいねー』

少しの間、ノイズが入り、

『さて、VS陸軍部隊ということで練度で言えば敗北必至ですが、
 解説のフォックス副会長、どうでしょう?』

『いきなり結論言われちゃったよ。
 うーん……でも、地の利はVIP側にあるんだよね。
 まともに正面からの激突じゃあ負けは確実だろうけど、
 こちらの得意な領域に引っ張り込めれば、良い勝負になりそうだと僕は思うなぁ』

『まともなコメントが返ってきて私びっくりです!』

『ははは、僕だってたまにはねー……やることないし。
 あ、飴いる? 美味しいよ?』

などという声付きで映像を流しているのは、談話室の映像機だ。
その映像を見ているのは、

/ ゚、。 /「…………」

どこか虚ろな目のダイオード=ヴェルウッド。
他何名かが、この談話室で訓練の様子を見ている。
ダイオードと同じく、心のどこかで外に未練のある生徒達だった。



100: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:06:26.42 ID:OkUg+OHA0
声一つ発しない彼らの間を、実況と解説の声が通り抜けていく。

『――おぉっと、既に都市の外でバトルが発生しております!
 ステーション防衛部隊と、侵攻部隊のガチンコ対決だぁ!』

『術式壁で入口封鎖してるし、彼ら防衛部隊には逃げ場がない。
 こういう時に発揮される強さは侮れないよー』

『激突! 激突! 更に激突ー!
 数からして圧倒的不利にも関わらず、
 相手の足止めは出来ているぞ防衛部隊ー!』

『上からの援護射撃が効いてるねぇ。
 あれのおかげで、向こうは術式防護しながら固まって動かないといけない』

映像では、術式で防御に徹する陸軍部隊の姿があった。
動きが遅くなった彼ら目掛け、学生達が勇猛に突き進んでいく。

/ ゚、。 /(だが――)

『防衛部隊が突っ込んだー!
 相手は固まざるを得ないが、こっちはそんなの関係無しに攻めていくー!
 ――って、ありゃ!? 崩れたぞ!?』

『そりゃあ向こうにも援護射撃隊がいるだろうしねぇ。
 あー、ちょっと出過ぎたかな』



102: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:08:28.70 ID:OkUg+OHA0
言っている間に、防衛部隊が一気に押された。
中途半端に散開していたのが仇となり、各個撃破されていく。
しかしそれでも抵抗は止まず、充分に仕事を果たしていると言えるだろう。

『やっぱり練度が足りないのが決定的だねー。
 もしくは優秀なリーダーがいれば、もうちょっと違ったかも』

『防衛部隊の方々、お疲れ様でしたー!
 さぁ、次の戦場はステーション……、
 の前に、術式壁が立ちはだかっているぞー!』

ステーションは基本的に停車場としての意味合いが強い。
故に魔道列車が進入、そして離脱するため入口と出口が必要で、
今、それらを塞ぐようにして術式による防護壁が展開されていた。

外壁上からの射撃を凌ぎながら、陸軍部隊が術式壁の前に辿り着く。

『えー、今入ってきた情報によりますと、
 術式壁の除去は割と地味目な作業となっているようですね。
 派手さが無いから女にモテない、くそぉモテてぇよぉ……、
 というのは、この情報を提供してくれた生徒さんの愚痴ですねー。
 えぇ、あとで学部学年氏名全て都市中に晒してあげるので御安心をー♪』

『ハイご愁傷様ー。 あとで飴をあげよう』

『あ、現地と繋がっているみたいですね! インタビューしてみましょう!』



104: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:10:12.94 ID:OkUg+OHA0
そして画面が切り替わった。
外壁上から戦場を映す映像から、陸軍部隊の傍に立つ映像へ。
上からの射撃が展開してある防御術式に当たり、周囲は撃音の連続に包まれていた。

『はい! こちらステーション前! うわっ、凄い音ですね! 光も凄い!
 えー、では早速ですが、陸軍の方に詳しい話を聞いてみましょう!
 どうもどうも学園都市VIP放送部でーす!』

『な、何だお前ら! 今、我々は術式壁の撤去作業中だぞ!
 危険だし、邪魔にあるからあっちへ行きなさい!』

『解りましたー、ではこちらへー。
 このナイスガイな方がインタビューに答えてくれるそうですよー!』

『え? あ、うむ? ナイスガイ? 俺が?
 ……おいお前ら、しっかりやっておけよ。
 あ? ナイスガイ(笑)? あとで覚えとけテメェ』

『はい! というわけで、術式壁を撤去しているそうですが、
 具体的にはどのような方法でやっているのでしょうか?』

『そうだねー。
 まず、術式壁にも実は色々種類があるって知っているかな?』

『はい! 知ってます!』

『あ、あぁ、そう……』



107: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:11:44.32 ID:OkUg+OHA0
この学園に通う戦闘系、技術系の生徒なら誰でも知っていることだろう。

ただの壁としての機能を持つオーソドックスなものから、
例えば物理・術式攻撃を反射するものや、反発力を持つものなど、様々な種類がある。

ちなみに女子更衣室などの入口には、
よく『男性を弾く』という力を持った術式壁が張られることも多い。
窓には『遠距離からのベクトルを無効化』の術式壁を張り、覗き対策もしている。

余談だが、男子生徒によれば、それをどう突破するのかを考えるのが面白い、とのこと。

一時期は『女になり切れば突破出来るくね?』という安直な考えが流行り、
女装して更衣室に突入する猛者が現れたこともあったにはあったのだが、
あまりに女性になりきり過ぎて、覗くことに興味を失ったまま戻ってこない者が続出した。

総合して『遮断』の力を持つ術式壁だが、やはり最も役立つのは防衛時だ。
様々な効果を持つそれを何重にも張ることで、敵の侵攻速度を落とすのだ。



109: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:13:17.88 ID:OkUg+OHA0
今、画面の奥で術式壁にコードを繋ぎ、内容を解析している兵士が見える。
撃音と閃光の中、彼は手元のミニPCを操作しつつ、

『この術式壁の撤去条件は……おい! 誰か壁の前で土下座しろ!
 俺はプライドあるから出来ねぇや!』

『ふっ、では私に任せなさい。
 交渉任務のため、日々の土下座修練を欠かしていない私に……!』

『それ交渉の役に立つのか……? それやる時点で負けてね?
 って、おぉ……! 確かに言うほどあって美しい土下座だ!』

『よし、一枚撤去!
 次は――なっ……彼女持ち限定、だと……?』

『馬鹿な……くそっ、VIPのガキ共、えげつねぇことしやがる!
 こんなむさ苦しい陸軍部隊に女が寄ってくるわけ――』

『――待ってくれ、皆。 俺が行こう』

『なっ……ま、まさかお前……!?』

『先月だ。 立ち寄ったバーで酔いに任せたら、朝ベッドに知らん女が寝ていてな。
 男ってのは単純なんだよ。 自分のことを好きって言われて悪い気になる男なんていねぇ。
 そういうものさ。 そして、それでいい』

『皆! 皆! コイツに敬礼だ! 急げぇー!!』



117: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:19:59.15 ID:OkUg+OHA0
などという数々のドラマが展開されていく中、術式壁が取り除かれていく。

時には触れた瞬間に衝撃を生むものもあり、
油断した兵士が吹っ飛んでいく光景も見られた。
それでも彼らは、諦めることなく撤去作業を続ける。

/ ゚、。 /(時間は稼げているが……やはり、対応速度が凄まじいな)

術式壁に設定された条件を、騒ぎながらも突破していく。
そこに戸惑いや躊躇いといった様子はまったく見られない。
彼らが普段から、こういう作業に慣れているのが一目で解る。

そして、遂に壁が全て取り払われた。

同時、中で控えていた生徒達が迎撃の構えを作る。
そこへ陸軍兵士達が怯むことなく突っ込み、乱戦が開始された。

/ ゚、。 /(次の展開へ、か……ここまでどちらも予定通り、か?)

インタビューを終え、映像が外壁上のものへと切り替わった。

『さぁ、既にこの下では激突が開始されているわけですね!
 危ないので、カメラさん達、ちょっと移動してくださいー!』

実況の女子生徒の声に、映像が移動のため素早く動き始める。
そして、

/ ゚、。 /「……む?」

一瞬だったが、ダイオードは、外壁の外に妙なものを見た。



119: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:21:22.86 ID:OkUg+OHA0
(゚、゚;トソン「あれは――!?」

外壁の上、まず気付いたのはトソンだった。
防衛用術式壁が破られ、ステーション内で戦いが起きたという報告を聞いた直後だ。

外壁とステーションは繋がっているため、早めに動かないといけない。
射撃部隊の面倒さは向こうも解っているだろうから、優先的に潰しに来るはずだ。
そう思い、場所を移そうと視線を動かした時。

視界の端に、トソンはそれを捉えた。

後続として学園都市へ向かってくる数台の装甲車。
先ほどまでの人員を乗せた車両と異なり、かなり縦に長いのはトレーラー型である証拠だ。
それがゆっくりと近付いているのを見たトソンは、

(゚、゚トソン「っ……嫌な予感がします!
     下級生はすぐに退避! 上級生はあの装甲車を!」

トソンの凛とした声に、生徒達は迷うことなく従った。
同時、トレーラー型装甲車が停止し、

(゚、゚;トソン「あんな距離から何を……?」

妙に長い荷台部分を変形させていく。
ここまで響く重い駆動音は、トレーラー部分をある形に変えることで仕事を終えた。

完成したのは、砲台のような形状である。



123: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:23:34.54 ID:OkUg+OHA0
砲身と思われる長い機構部を、装甲車の頭に乗せ、斜めの角度を取得。
既に先端はこちらを見ており、今にも何かを発射しそうな空気を醸し出していた。
嫌な予感が最高潮に達したトソンは、弓を急いで構え、

(゚、゚;トソン「私の合図で一斉に――」

だが、それよりも早く向こうが動く。
一瞬だけ溜め込むような空白を置き、発射音が響いたのだ。

機構部からではなく、その上を滑るようにして何かが押し出された。

発射方法に疑問は残るが、砲弾と即座に判断した生徒達は、
それを叩き落すために空へと得物を向ける。
だが、

(゚、゚;トソン「――撃たないで!!」

「「!?」」

射撃手特有の動体視力、特に恵まれたそれを持つトソンの目は、
既に発射された物体の正体を捉えていた。

(゚、゚;トソン「よく見なさい! あれは――」

砲弾ではなく、


(゚、゚;トソン「――人です!!」



125: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:25:05.64 ID:OkUg+OHA0
外壁の外から打ち上げられた複数のそれを、都市に構える皆も見ていた。
その正体が人であることを確認し、どういうことかと疑問する声が上がる。

あんな風に人を飛ばしてくる戦術など、見たことも聞いたこともない、と。

どう対処すれば良いのか、ほぼ全員が判断を失った。
ただ呆然と、学園都市内に落下してくるいくつかの人影を見送る。

しかしそんな中、既に行動を開始していた者達がいた。

( ・∀・)「いくつか候補はあったけど、まさか一番原始的な方法を採用するとはね!
     ぶっちゃけ五分五分だったけどネット万歳だ!
     スズキ! エクスト! 着地点へ行くよ!」

爪*゚〜゚)「凄いでありますよモララー君! お手柄であります!」

<_プー゚)フ「うおぉ、マジで来やがったぜ……でもアレ、ただの自殺行為じゃね?」

後ろをついてくるエクストの疑問に、モララーは走りながら、

( ・∀・)「着地は、例えば速度緩和とか衝撃吸収の術式があれば問題ない。
     おそらく全員、そういう効果を持った符を装備してるはず」

そして、と空を見上げ、

( ・∀・)「……外壁にいる人達の迎撃射撃がなかったでしょ?
     飛翔中に射撃して気絶でもさせたら、その人は落ちて最悪、死んでしまう。
     だから、撃ちたくても撃てなかったんだ。 これ訓練だしね。
     まぁ、相手も防御術式くらいは展開してるだろうけど」



128: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:27:27.47 ID:OkUg+OHA0
<_プー゚)フ「なぁるほど。
         実戦じゃあ通用しねぇが、こういう訓練には効果抜群だな!」

( ・∀・)「ここからどうなるか、によるけど……、
     いずれ実戦でも使えるように改良するんじゃないかなぁ。
     だってこれ、航空艦の戦術にも応用出来るでしょ」

爪*゚〜゚)「そのためのデータ集めでありますか?」

( ・∀・)「多分ね。 それにこんな方法、普通は思いついてもなかなかやらない。
     だからほら、周りの皆は戸惑って判断が遅れてる。
     戦力投入は速度が命。 今回は大成功だね」

その横を、加速したエクストが追い抜いた。
落ちてくる複数の人影を見上げながら、大剣へ手を掛け、

<_プー゚)フ「まだ解ンねぇぞ、モララー! 俺達が潰せば失敗だろう!?」

前方、符を使って衝撃か速度を緩めた人影が、学園都市の地面に降り立った。
まだ武器もまともに構えていない状態だが、エクストは容赦なく突っ込んでいく。

<_#プー゚)フ「――ようこそVIPへ! だがここで終わりだッ!!」

身体ごとぶつかっていくような斬撃。
刃引きされているため切り殺してしまうことはないが、
それでも重い鈍器に殴られるような衝撃は与えられるだろう。



130: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:28:59.03 ID:OkUg+OHA0
ここで一人、倒せる。
そう思ったモララーだが、次の瞬間。

( ・∀・)「……え?」

<_;プー゚)フ「なっ……俺の剣を止めた!?」

疾走の勢いを重ねた一撃が、構えられた武器によって止められている。
あのエクストの突進を止められる者などそうそういないと思っていたため、
止められたエクストはもちろん、それを見ていたモララーが驚くのも仕方ない。


「――まったく、いきなり仕掛けてくるなんてよぅ。
 まるで美学ってもんが感じられねぇ」


エクストの攻撃を止めた青年の服装。
学園都市VIPの制服、その基本色である藍色と相反するような見事な『深紅』は、

(;・∀・)「その制服……お前、まさか――!?」

(=゚ω゚)ノ「――学園都市ラウンジ所属、武術専攻学部二年・特進クラス。
     イヨウ=クラインってんだ。 覚えときなよぅ。 そして――」

正面のエクストを見て、

(=゚ω゚)ノ「俺っちの相手をよろしく頼むよぅ、VIPの田舎学生さん――!」

直後、エクストの剣撃を止めていた長斧が、唸りをあげた。



132: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:31:05.57 ID:OkUg+OHA0
他の地点でも、似たような光景が生まれていた。
いきなり他校の生徒が姿を見せ、動揺で判断を鈍らせるVIP側の生徒達の中、
やはりモララーと同じように即座に動き、己の敵を見つけた者達がいる。


――生活区画南東部。

川д川「ふふ、ふふふふふふふ……」

ξ゚听)ξ「その制服、ラウンジの……まさか、軍に混じって来るなんてね。
      モララーの言ってた物理的戦力投入よりはインパクト薄いけど」

(;^ω^)「で、でもどうしたら良いんだお?
     若干、近づくのが怖いっぽいんだけど……」

ξ゚听)ξ「相手が学生でも敵は敵よ。
      乗り込んでいたのだから、相応の御もてなしをしてあげなきゃね」

川д川「ふふふ、三人も相手してくれるの?
     この私、学園都市ラウンジ所属、術式専攻学部二年・特進クラス、
     サダコ=ベルクドルフのために? 嬉しいわ、えぇ、とても嬉しいわ」

ハハ ロ -ロ)ハ「…………」

川д川「……あら、懐かしい顔もいるわね。 楽しくなりそうだわふふふ」



134: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:32:35.17 ID:OkUg+OHA0
――生活区画南西部。

( ・−・)「…………」

(;゚д゚ )「気をつけろ、ヒート! ラウンジの生徒だ!」

ノハ;゚听)「お、おうッ! 私は詳しくないから知らんが、強いのかっ?」

(;゚д゚ )「わ、解らん!」

( ・−・)「…………」

( ゚д゚ )「剣を抜いたぞ……! 構えろ!」

ノハ;゚听)「お、おうッ! って、あれっ?」

( ・−・)『学園都市ラウンジ所属、武術専攻学部二年・特進クラス。
     シーン=ニヒツという。 よろしく頼む』

( ゚д゚ )「ウインドウに文字を……? あ、うむ、よろしく」

( ・−・)『では、行くぞ』

ノハ;゚听)「お、おうッ! いつでも来いッ!」

(;゚д゚ )(何だかよく解らんがすごくやりにくい! 流石はラウンジの生徒か!)



137: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:34:05.20 ID:OkUg+OHA0
――同じく、生活区画南西部。

<w゚´了「貴様ァ……!
     我が突進を受け止めるとは、なかなか見所があるな! 褒めてやろう!」

( ゚∋゚)「いきなり突っ込んできた時はどうしようかと思ったが、間に合ったな。
     亜人種ならば、同じ亜人種の私が相手するしかあるまい」

<w゚´了「はっ! 同じ!? 同じと言ったか貴様!」

(;゚∋゚)「ぐっ……!? 私が、押し負け……?」

<w゚´了「我が名はラゴンド! 武術専攻学部二年、特進クラス!
     誇り高き竜の血を継ぐエリート中のエリートよ!
     たかが鳥種と同じにしてもらっては困ァる!!」

|゚ノ#^∀^)「クックル、もう少し耐えなさい!
      すぐにあの偉そうな顔面へ、氷の塊をぶつけて差し上げますわ!」

<w゚´了「我に当てると!? 勇ましい女だ! 気に入った!
     やってみるが良い! 竜と戦うことの絶望感を味あわせてやろう……!!」

(;゚∋゚)(この男……ふざけた奴だが、かなり強い……!)



145: ◆BYUt189CYA :2009/09/12(土) 22:39:13.33 ID:OkUg+OHA0
いきなりの戦力投入は、各地に混乱を呼んだ。
数にして四地点にバラけた敵部隊に対し、VIP側は判断を迷いに迷う。
ここにも練度の差が大きく出ることとなっていた。

そして、

「くっ、空から戦力投入だと!?
 だが、まだこのステーションは獲られていない!
 後方部隊は援護へ行け! 俺達は守るぞ!」

叫んだ男子生徒は、次の瞬間にそれを見た。

「なっ!?」

いきなり通路の向こう側から飛来した何かに、顔面を弾き飛ばされる。
勢いに押されて後方へ一回転しつつ吹っ飛び、そのまま気を失った。
  _
( ゚∀゚)「――っと、やり過ぎちまったか?」

(*゚∀゚)「いいんじゃない? だってこれ戦争でしょ?」

「エロ野郎に……ツー=メイルだと!? お前ら、どうして!?」
  _
( ゚∀゚)「自分の答えを出すのに理由がいるかい?」

己の得物を振り回し、
  _
( ゚∀゚)「行くぜ俺! そして構えろよVIPの皆! 今日の俺は敵だ!!」

隣にツーというパートナーを置き、学園で構えるクーの下へ至るため、突撃を開始した。



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