(,,゚Д゚)ギコと从 ゚∀从ハインと学園都市のようです

19: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:00:12.48 ID:NyPeZ4dw0





――――第九話

             『作者と絵師』――――――――――






        表現の動機を5KB以内で表現せよ



25: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:03:04.71 ID:NyPeZ4dw0
本国陸軍を相手にした模擬戦は、ほとんど陽が沈んだ現在でも続いていた。

都市各部に明かりが灯り始め、戦場を限定的に照らしていく中、
剣撃や銃撃、そして術式の起動音が響き、その間を疾駆の音が縫っていく。

劣勢を強いられているのは学園都市VIP側だった。
全体としての統率、個々としての練度、それぞれ高い水準を誇る陸軍に対し、
VIPの生徒達の動きや判断はあまりに稚拙で、若過ぎた。

やられっ放しというわけではない。
上級生の中には、そのセンスと才能で互角に戦う者もいる。
しかしそんな彼らも、連携という完成された動きの前には崩れていくしかなかった。

「くっ……! 大人げねぇ、大人げねぇぞ大人ぁ!」

「そんな子供じみた子供の言い訳はよせよ子供!!」

「「(#^ω^) ビキビキ」」

悔しいのか、VIPの生徒達は歯を軋ませながらも抵抗を続けている。

設定されている模擬戦の終了条件は、

・敵を全体として見た場合の戦闘不能とさせる。
・敵大将と設定された者を討ち取る。

の二つだ。
そのどちらを狙うにしても技量が足りないVIP側は、いずれ押し切られるのが確実となっている。
しかし、陸軍を相手にして得られる経験値を、得られるだけ得ようと各々、敗北を知りつつ奮戦していた。



31: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:07:33.74 ID:NyPeZ4dw0
/ ,' 3「ふぅーむ」

それを、アラマキ学園長が寮の屋根から見ていた。
戦意を失った者への暴力等、理不尽な行為を防ぐための監視だ。
なるべく両軍の邪魔をしないよう、身を隠しつつ眺めている。

若者だらけのVIPにおいて最年長のこの男は、
各地で起きている戦闘の様子を見て、あっさりと結論を出した。

/ ,' 3「こりゃ無理じゃのぅ。
    まぁ、最初から解っていたことじゃが」

鍛えていない一般人より強く、鍛えている大人より弱い。
それがこの世界における、軍事・戦闘系の学園に通う生徒の位置づけだ。
中には飛び抜けた力を秘めた生徒もいるが、それを発現させる年数として五年は短過ぎる。

実力云々ではなく、経験の差が大きく出ている戦闘となっていた。

/ ,' 3「しかし、それはともかくとして……やはり臭うのぅ」

( `ハ´)「――気になるカ?」

/ ,' 3「んむ?」

いつの間にかシナーが背後に立っていた。
堂々と姿を見せているのは、彼が臨時教師であり、他の教師と同じく警備に回っているからだ。
そのため口調に反して表情が無駄に柔らかく、事情を知る者から見ればひたすら不気味である。



35: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:09:55.71 ID:NyPeZ4dw0
/ ,' 3「あーびっくらこいた。
    老人を驚かせるのは殺人未遂でいいと思うぞい」

( `ハ´)「始めから気付いていて何を言うカ。
      それより……やはり貴様も、この戦いの何かが気になっているようだナ」

/ ,' 3「お前さん、ワシよりも更にあっち側にいる人間じゃろ。
    この模擬戦闘の裏側、知っとるんじゃないか?」

( `ハ´)「いや……プロフェッサーKからは何も聞かされていなイ」

/ ,' 3「『彼女』の思惑とは別の動きである、と?
    2chという大国のあらゆる権力に影響を与え得る『彼女』とは、別の思惑?
    そんなものあったかの。 あったとして、自由に動けるものかのぅ」

( `ハ´)「あるとモ。
     どのような力、たとえ権力だろうと縛られず、自由に発せられるものガ。
     貴様も持っているだろウ?」

彼は学園都市の外、陸軍の長が構えているであろう場所を見ながら、

( `ハ´)「――人の意思。
      今回はあの狼男のものだろうが、さて、何を考えているのやラ」



38: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:12:23.17 ID:NyPeZ4dw0
/ ,' 3「ふぅむ……そういえば、前にあった竜の件も不自然じゃった。
    『彼女』の計画とは別に、何やらコソコソ動いとる奴らがおるらしいの。
    具体的に言えば三人ほど」

( `ハ´)「我々もこの地に因縁はあるガ、彼らほどではないからナ」

/ ,' 3「やれやれ。
    可愛い子供がいれば見守り、時に試してやるのが大人の役目であり醍醐味じゃが、
    こりゃ少々、入れ込み過ぎに見えるがのぅ」

( `ハ´)「ククク、それこそプロフェッサーKのことではないカ」

いやいや、とアラマキは苦笑し、

/ ,' 3「しかしまぁ……形は違えど、皆、期待しとるんじゃないかなぁ」

シナーが黙って頷いたのを、アラマキは気配で感じた。
立場は異なるが、見ている先は今も昔も同じだということだろう。

結局のところ、始まりは一つの出来事だった。

四十年。
それだけの年月は、身体に老いを与えた。
しかし心は何ら衰えることなく、今もなお、底の方で燻っている。

/ ,' 3「……『あの時』を経験した奴らは、ほとんどみんな老いてしもうた。
    世界は老人達が引っ張るのではなく……若者に押し進めてもらわんとなぁ」



41: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:14:33.44 ID:NyPeZ4dw0
学園都市内、方角として生活区南東。
そこでは、他学園の学生同士による戦闘が生じていた。

( ・∀・)「…………」

陸軍が新たな戦術として試した、『人を直接飛ばして投入する』という荒々しい方法。
術式という、物理法則を捻じ曲げる術があるからこそ出来ることであり、
それは奇襲という戦法によって、ほぼ最高の効果を挙げていた。


……はっきり言って見た目はちょっと滑稽だったけど。


ともあれ、そんな方法で侵入してきたのは陸軍の兵士ではなく、

( ・∀・)「学園都市ラウンジ、か……姉妹都市だったよね。
     それがどうして軍隊に混ざって訓練に?」

モララーの視線の先には、一人の学生服がいる。

(=゚ω゚)ノ「簡単なことだよぅ。
     こんな田舎にあるVIPとは違って、俺っち達の都市は本国のすぐ傍にあるんだぜ。
     同レベルの相手と戦える訓練を陸軍が行うにあたって、
     俺っち達に誘いの話が来るのは当然っちゃー当然だろうがよぃ?」

まぁ、と言い、

(=゚ω゚)ノ「同レベルたぁ、随分と過大評価だったみてぇだがよぅ?」



47: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:16:55.71 ID:NyPeZ4dw0
視線の先には、エクストが仰向けで倒れていた。
初撃を防いだ上のカウンターを受け、吹っ飛ばされたのだ。

あの大柄な身体を飛ばしたのは、彼の手に握られている柄の長い斧だ。
イヨウ=クラインと名乗った深紅の制服姿の手にそれが握られているが、
そんな彼の身体はお世辞にも大きいとは言えず、どこかアンバランスなイメージを与えてくる。

エクストの隣に立てば、おそらく彼の肩より下に頭が来るのではないだろうか。
一見して自分達と同じ年代とは思えない身長だ。
その彼が、

( ・∀・)(エクストを一撃で吹っ飛ばした、か……強いな)

(=゚ω゚)ノ「おいおーい、田舎学生といやぁ粗暴で頑丈なのが常じゃねぇかよぅ。
     俺っちみてぇなガリ勉優等生の一撃食らって、そんな簡単に倒れるわきゃねぇだろうがよぅ」

けけけ、という笑みには、たっぷりの皮肉が込められていた。
おそらく、自分達がVIPの生徒より優れていることを自覚している。

それもそのはずだ。
学園都市VIPが、本国から離れている街や都市から生徒を集めるのに対し、
学園都市ラウンジは、本国の高等教育を受けた生徒を受け入れる都市なのだ。



53: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:19:03.63 ID:NyPeZ4dw0
要するにイヨウという生徒は、

( ・∀・)「エリート、ね。 確かに自信だけはエリート気取りらしい」

(=゚ω゚)ノ「んん? 実力も兼ねてるよぅ?
     見えねぇかよぅ? アンタのお友達が一撃でノビちゃってるの」

( ・∀・)「生憎だけど僕には見えない」

(=゚ω゚)ノ「んー?」

( ・∀・)「あの程度の一撃で、エクストが負けるわけないからね」

言った直後、エクストが動いた。
高く両足を上げ、勢いをつけて下ろし、その速度を使って上半身を跳ね上げて着地。
すぐさま剣を構えた表情には笑みがあり、

<_プー゚)フ「――おおっしゃ! 俺、復活!!」

(=゚ω゚)ノ「へぇ……手加減はしてなかったんだけどよぅ」

<_プー゚)フ「おいおい、今のが本気かよ?
        だったらラウンジもたかが知れてるねぇ」



57: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:21:07.35 ID:NyPeZ4dw0
安い挑発に、イヨウが口端を少し歪めた。
肩に乗せていた長斧を構えながら、

(=゚ω゚)ノ「けっ、言ってやがれよぅ。
     俺っちはベラベラと口じゃあ語らねぇ……実力で叩き伏せてやんよ」

<_プー゚)フ「嘘吐け、散々イヤミったらしいこと言ってたくせによ――!!」

瞬間、二人が同時に動いた。
獲物に食らいかかる肉食獣のように、真っ直ぐ相手を見ながら武器を振るう。

( ・∀・)「気をつけて、エクスト! その武器は普通じゃない!」

<_#プー゚)フ「よし解った! ――知らんッ!!」

(;・∀・)「知らん! じゃないって!」

ラウンジの生徒の持つ武器は、おそらくただの長斧などではない。
斧頭のデザインを見るに、あのサイズと無骨さはDQN製に間違いないだろう。

気になるのは石突部分にあるアンカーのようなものだ。
斧の重さに振り回されないためのものなのか、別の意味があるのか。
何かしらの秘密が隠されているかもしれず、今は判断が下せない。

もしもの時のために、サポートの準備はしっかりしておくべきだ、と、



63: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:23:23.79 ID:NyPeZ4dw0
(;・∀・)(……しかし毎度のことだけど、この時ばかりは自分の得意分野が恨めしいね)

防御系の術式を主とするモララーは、積極的に戦線へ加わるタイプではない。
こうして目の前でエクストが戦っているわけだが、
ここで下手に術式を展開すれば、彼のリズムを妨げる結果に繋がりかねない。

出来ることと言えば、状況を見て味方を動かし、戦局を掴むことくらいだ。

( ・∀・)(これが僕の課題だね。
     いずれ、どうにかしなくちゃ……)

そんなことを思うモララーの視線の先、二人が激突した。

<_#プー゚)フ「ぬぅ……ッ!!」

(#=゚ω゚)ノ「よぉ……ッ!!」

金属音と、金属が震える音が重奏した。
鼓膜を叩く重高音に、しかしエクストとイヨウは眉一つ動かさない。

(=゚ω゚)ノ「へぇ、ただの馬鹿ってわけじゃあないみてぇだよぅ……!」

<_プー゚)フ「馬鹿は馬鹿でも、戦場の馬鹿力ってやつだぜ……!」

互いの武器を弾き合う。
距離をとり、間髪入れずに再び仕掛けていく。
勢いと体重、そして腕の力に任せた一撃をぶつけていった。



66: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:25:52.93 ID:NyPeZ4dw0
重量系の武器は、その重さ故に連続動作には向かない。
戦術としては一回の攻撃で勝負を決めるため、大振りになることがほとんどであり、
距離をとり、突進からの斬撃、そして離脱というのが基本的な戦法になる。

エクストの得物は大剣――重量系だ。
イヨウの得物は長斧――重量系だ。

そういう意味で、二人の動きは非常によく噛み合っていた。

<_プー゚)フ「へへっ、良い感じだぜ……!」

エクストは湧き上がる喜びと高揚を、口端を吊り上げることで表現した。
他学園とはいえ、同級生でこれほどの生徒と会うのは久々だったからだ。

二年生でありながら三年生レベルの実力を持つエクストは、
よく上級生を相手に喧嘩を吹っ掛けたり、修練を申し込んだりする。
もはや同級生相手では満足出来ないことが多くなっていた。

しかし学年が異なると、そこには先輩後輩の関係が入ってくる。
上級生としては後輩に怪我をさせるわけにもいかないので、結果的に手加減される。

それがエクストにとって、不満の原因となっていた。



67: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:28:02.63 ID:NyPeZ4dw0
誰か、自分と本気で戦える奴はいないのか。
実力があるのは当然として、立場や学年を気にしない奴は。

<_プー゚)フ「――受け止めてくれよ俺の本気を!」

(=゚ω゚)ノ「いいぜぇ、だがその上で負かしてやるよぅ!」

いる、のかもしれない。
もしかしたら目の前の男がそうなるのかもしれない。
小柄だが、その身体からは想像できないパワーを感じる。

そう思うと、自然とエクストの腕に力が入った。

初撃から数えて五度目の衝突。
金属音が響き、そして二人は距離をとる。
長斧を軽く振り回し、そして悠々と肩に乗せたイヨウが嬉しそうに言った。

(=゚ω゚)ノ「おうおう! 思い切りが良いなオメェ!
     マジで俺っちを一刀両断するって感じがたまんねぇぜ!」

うぇっへっへ、と笑い、

(=゚ω゚)ノ「ウチんとこのは、失敗恐れて小細工ばっか使うからつまんねぇしさぁ!
     普通、試合前に同級生に下剤盛るかっつーのぅ!」

相対しているエクストも、やはり同じような表情をして、

<_プー゚)フ「苦労してんなぁ、お前……だが、そういうテメェこそやるじゃねーか!



74: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:30:08.41 ID:NyPeZ4dw0
( ・∀・)(へぇ……)

あのエクストが素直に認めていることに、モララーは少しだけ眉を上げた。
イヨウという生徒、近接戦闘に関してはエクストと同レベルと見て良いのだろう。

( ・∀・)(流石はラウンジ、ってところかな。
     特進クラスって言ってたけど……それに食いついてるエクストが凄い、ってことか。
     やっぱりアイツは才能あるよなぁ)

しかし、このまま彼に任せっきりではいけない。
これはルールの定まった個人戦ではなく、あくまで防衛戦の最中だ。
タイマンだろうが何だろうが干渉して構わないし、それで恨まれるのはお門違いというもの。

倒せるなら、数で勝る現状でさっさと何とかしたいところだ。
そして、他の仲間達の手助けに行かなければならない。

そのために必要なものを、モララーは頭に描いた。


……スズキの狙撃。


現状、エクスト一人でイヨウを突破するのは――本人は否定するだろうが――難しい。
モララーは既に、スズキに指示を出して動かしていた。

( ・∀・)(でも、まだ良いポジションに辿り着いてないみたいだ。
      少しでも時間を稼いでおくか……)



79: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:34:18.11 ID:NyPeZ4dw0
近接を得意とする相手には、射程外から仕掛けるのが定石。
もし仕留められなくとも、近接系にとっては大きな隙が生まれるだろう。
白熱し始めた二人には悪いが、こちらはイヨウばかりを構ってるわけにもいかないのだ。

( ・∀・)「イヨウ、って言ったかな。
     エクストと切り結べる同級生なんて久々に見たよ。 驚いた」

(=゚ω゚)ノ「ん? へへへ、そう褒めンなよぅ。 照れちまうじゃねぇか。
     まぁ、俺っちは特進クラスだしな」

( ・∀・)「特進クラスって何?」
     (知ってるけども)

(=゚ω゚)ノ「そのまんまだよぅ。
     優秀な奴らの中の、もっと優秀な奴が集まったクラスさ。
     大体は生徒会の役職狙いで、そんな俺っちも実は『作者』狙いでな」

<_;プー゚)フ「あ? 作者? お前、作家にでもなるつもりかよ?」

(=゚ω゚)ノ「なぁに馬鹿丸出しの発言してんだよぅ。
     いいか、俺っちの言った『作者』ってのは――」

イヨウの言葉を、モララーが続けた。

( ・∀・)「――学園都市ラウンジの生徒会、その役職名の一つだよね。
     『作者』は、確か切り込み隊長的な意味を持っていたはずだ」



83: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:36:22.03 ID:NyPeZ4dw0
(=゚ω゚)ノ「なんだ、知ってんじゃねぇかよぅ。
     先頭切って飛び込み、戦況を形作る者って書いて『作者』ってんだ」

こちらの処機(戦闘処理機動隊)とは少々異なる意味を持つようだ。
処機が部隊を示す言葉なら、作者は役職の名前を示している。
ということは、

(=゚ω゚)ノ「一人で一騎当千……とまではいかねぇが、
     軍勢の中においても一個の戦力として数えられるような存在だよぅ。
     どうよ? かっけーだろぃ?」

<_フ=ー=)フ「へぇー、ふぅーん、はぁーん」

(=゚ω゚)ノ「なんだなんだぁ? あまりに凄過ぎて思考が壊れたかよ?」

いいや、とエクストは首を横に振った。
大剣を肩に乗せ、歯を剥いた笑みを見せる。

<_プー゚)フ「要するに、お前と互角に戦ってる今の俺でも狙える役職だろ?
        だったら大したことねぇじゃねぇか」

イヨウが、僅かに細めた目でエクストを見た。

(=゚ω゚)ノ「……おかしなこと言うじゃねぇかよぅ。
     じゃあ、オメェは学園トップクラスの誉れ高い役職じゃなくて、
     一体何を『大したもの』だとして見てるんだよぅ?」



86: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:38:37.90 ID:NyPeZ4dw0
<_プー゚)フ「決まってらぁ」

一息すら入れず、さも当然といった様子で、

<_プー゚)フ「――誰にも負けねぇ力を得ること。
        つまり、最強、だ」

(;・∀・)(言い切ったー!!)

学生の身で、ここまでハッキリ断言できる人間は彼くらいのものだろう。
対してイヨウの反応は、

(=゚ω゚)ノ「ちょwwwwwwwおまwwwwwwwww最強ってwwwwww」


<_プー゚)フ「…………」

(=゚ω゚)ノ「…………」


<_#プー゚)フ「よぉーしテメェはブッ殺じゃあああっ!!」

(#=゚ω゚)ノ「gdgd言わず掛かってこいやぁぁぁッ!!」


(;・∀・)「君達、実は仲良いんじゃないかな!?」



91: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:40:39.93 ID:NyPeZ4dw0
爪*゚〜゚)「えっほ、えっほ」

エクストとイヨウが再び刃を交え始めた頃。
モララーに援護を任されたスズキは、ライフルを抱えて学園都市を走っていた。

爪*゚〜゚)(あまり近過ぎても感付かれるでありますし、
     かと言って、遠過ぎても当たらなくなるでありますし……。
     ううん、ここらへんにするでありますかー)

スズキが足を止めたのは、エクスト達のいる地点から少し北に行った場所だ。

学園都市は中心が盛り上がった地形を持つため、高所を得る形となる。
スズキは普段こそアレがソレでコレだが、それでも狙撃手の端くれだ。
狙うために有利な要素が揃っているか、感覚で解る。

爪*゚〜゚)「さて、急がないと……」

エクストが簡単に負けるとは、スズキは思っていない。
彼の強さとしぶとさは、自分や仲間が一番良く知っているし、解っている。
しかしそれでも、任された仕事に遅れるわけにはいかない。

と、そこでとある建物が目に入る。
寮の一つだが、その屋根の上はスズキにとって美味しい狙撃ポジションに見えた。



96: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:43:09.46 ID:NyPeZ4dw0
爪*゚〜゚)(あの上なら姿勢を整えるのに苦労しなさそうであります。
     よーし! そうと決まったらさっさと登って狙撃であります!)

思い、屋上への階段を探そうと、角を曲がった時だった。

爪*>〜<)「――へぷっ!!」

上ばかり見ていて、前を見ていなかった。
誰かの背中にぶつかり、スズキはその場に尻餅をついてしまう。
そこにいたのは、

「……その制服、VIPの生徒か」

深紅の制服姿が二人。
間違いなく、学園都市ラウンジの生徒であった。

爪;゚〜゚)「ほぉわぁぁぁぁぁ!! ここで不運爆発でありますかー!!」

「こちらにとっては幸運だがね。
 ちょうど相手を探していたところだ」

オワタ、とスズキは一瞬で理解した。



101: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:45:18.87 ID:NyPeZ4dw0
爪;゚〜゚)「ちょ、ちょ、ちょーっとタイムであります! タイム!」

両手をパタパタ振って、

爪;゚〜゚)「…………ダメ?」

「うん、ダメ。
 ついでに戦闘中だし、女子が相手でも容赦は無しってことで。
 さぁ、エリートの我々に平伏すがよい!」

爪;゚〜゚)「うわぁーんっ!!」

「ふふふ、なんか嫌がる女子を前にすると興奮すr――ぐぉっ!!?」

突然、鈍い音が響いた。
頬を赤らめハァハァ言い始めた生徒の一人が、前のめりに昏倒したのだ。
もう一人のラウンジの生徒は当然、スズキも驚きに目を見開く。

「なんだ!?」

背後を見れば、

(´<_` )「…………」

VIPの制服を着た男子生徒が、無表情にこちらを見ていた。



105: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:47:23.85 ID:NyPeZ4dw0
爪;゚〜゚)「あ、あの人は……」

その顔に見覚えがある。

オトジャ=サスガ。
確か、あの科学技術学部所属の変人中の変人、アニジャ=サスガの弟だ。
事情は知らないが、兄弟なのに随分と仲が悪いということをたまに聞く。

その表情に、『柔』という字は一つも見当たらない。
当然といえば当然だが、周囲全てを威嚇しているような気配があった。

爪;゚〜゚)(前に見た時も思ったでありますが、まるで針とか、刃のような人でありますね……)

と、そこで事態を飲み込んだラウンジの生徒が、弟者を睨む。

「貴様……不意打ちとは卑怯な!」

(´<_` )「戦闘中なんだろう? 油断していた方が悪い」

「ふはは、何も言い返せん!」

爽やかに言い放ち、腰の剣を引き抜いた。
その切っ先を弟者へと向けて、

「だが、ここからは実力勝負だ!
 エリート故の油断はあったかもしれんが、ここからはエリート故の力を見せてやろう!」



108: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:49:31.32 ID:NyPeZ4dw0
(´<_` )「エリートエリートと……。
     ラウンジのエリートって言葉は、随分と安っぽいようだ」

「ほざけ田舎学生ッ!!」

声と共に、剣が横薙ぎに振るわれた。
そのふざけた言動からは想像もできない、かなりのスピードだ。
しかし、

(´<_` )「――ふン」

左の腕が即座に動いていた。
まるで予知していたかのように、攻撃の軌道上にバックラーを構える。
すると、そこに剣が吸い寄せられ、そしてあっさりと弾かれた。

「っ!?」

(´<_` )「視線が素直なんだよ、エリートさん」

そこからは一瞬だ。
弟者の右手が拳となり、そのまま相手の腹へと叩き込まれる。

鈍い音。
そして容赦ない衝撃。
無防備に拳を受けたラウンジの生徒は、苦しそうな呻き声をあげて膝を折った。



111: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:51:43.53 ID:NyPeZ4dw0
この時点で、勝負はついたかのように思われた。
しかし弟者は、体勢を崩した相手の顎を、無造作に蹴り上げる。

爪;゚〜゚)「え!?」

(´<_` )「……そうやって油断を誘うのがエリートのやり方か?」

生徒の手から小型のデバイスが転がり落ちた。
彼は慌てて拾おうとして、しかし痛みに顔をしかめて動きを止める。

「ぐっ……」

(´<_` )「成程、やられたと見せかけて反撃するつもりだったか。
     何の術式が登録されているか知らんが……随分と狡い手を使うな、エリートさんは」

「……はっ、ぬるま湯に浸っている貴様らには、俺達の苦労など解らんだろうな。
 勝てばいい、そして勝たなければ意味などないんだよ」

(´<_` )「…………」

「貴様らが田舎学生やら何やら言われる理由……この都市を見て、解った」

は、と息を吐くように笑い、

「なんだ、この蔓延している弛緩した空気は。
 まさか貴様ら、仲良くヘラヘラ笑いながら上を目指せると思っているのか?」



115: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:53:45.22 ID:NyPeZ4dw0
(´<_` )「否定はしない。 ここにはふざけた奴が多過ぎる」

どこか自虐的な笑みを浮かべる弟者。
しかし、ただ、と付け足し、

(´<_` )「まぁ、……だからといって全員がそうだとは言わんがな」

「あぁ、そうらしいな――クソがっ」

悪態を最後に、ラウンジの生徒は身体を倒した。
気絶しているのかは解らないが、ともあれ戦意は失ったようだ。
模擬戦のルールに従えば『戦死』扱いであり、戦闘への参加は禁じられる。

(´<_` )「…………」

つまらなそうに吐息した弟者が、背を向けた。
さっさと歩いていこうとする背中に、スズキは慌てて声をかける。

爪;゚〜゚)「あ、あの! ありがとうございま――」

(´<_` )「――別にお前を助けたわけじゃない」

爪;゚〜゚)「で、でででも……」



117: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:55:54.13 ID:NyPeZ4dw0
(´<_` )「いいから行け。 俺が一番嫌いなのは、
     何かを為すための力を持っているのに、それを発揮しようとしない奴だ。
     頭を下げている暇があったら、さっさと自分の仕事をしろ」

爪;゚〜゚)「……!」

一方的に言い放った弟者は、そのまま行ってしまった。

爪;゚〜゚)「あうあう」

こうなった以上、わざわざ彼を呼び止めても仕方ない。
言われた通り、スズキは自分の仕事を果たすことにした。
去っていく背中に小さく一礼して、傍にある建物の屋根の上へと登っていく。

そこからの景色は、エクスト達のいる路地を軽く見下ろすものだ。
完全に、とは言えないものの、スコープ越しならば充分に狙える状況だった。

爪*゚〜゚)「よいしょ、っと……よーし、頑張るであります」

屋根の上に寝そべり、銃身の長いスナイパーライフルを構える。



122: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 22:57:57.44 ID:NyPeZ4dw0
『SR-2「ランサー」』。
今北産業製で、威力よりも命中精度を重視した軽量ライフルだ。
一発撃つ毎にボルトを操作、弾薬の装填と排出を行うボルトアクション式で、
その点において信頼性は高く、実戦向きとは言えないが、初心者に向いている銃と言えた。

そして腰にはもう一つホルダーがあり、中にはハンドガンが収められている。
これは、ライフルで対応出来ない時に使う緊急用の武器だ。

こうして見るに、スズキは間違いなくスナイパーである。

不幸体質、おっちょこちょい、という狙撃手としてどうなのかというスキル持ちだが、
それでも彼女が銃を手放さないのには一つ理由があった。
それは単純なもので、

爪*゚〜゚)(うーん……この感触、感覚、たまらないでありますなぁ……ハァハァ)

というわけだ。



130: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:00:03.95 ID:NyPeZ4dw0
ともあれ、その大好きな銃器を構え、スズキは遠くを見る。
肉眼に捉えたのは、遠くの路地でぶつかり合うエクストとイヨウの動きだ。

数秒の沈黙。

すぐにスコープを覗くような真似はしない。
一方的な狙撃が出来るような状況ならともかく、
敵がどこにいるのか解らない状況で、視界を極端に限定するのは危険だからだ。

爪*゚〜゚)「――――…………」

周囲を警戒しつつ、視線の先へと集中していく。
段々と周囲が暗くなっていくような感覚が、スズキを包み込んでいった。

そして狙いを目に焼き付けた彼女は、おもむろにスコープを覗き、小さく調整して、


爪*゚〜゚)「――――ッ!!」


ほとんど間を置かず、トリガーを引いた。



133: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:02:22.11 ID:NyPeZ4dw0
果たして弾丸は、イヨウに当たることはなかった。

(=゚ω゚)ノ「んん!?」

<_;プー゚)フ「うぉっ!?」

着弾したのはエクストの頭上。
二人の傍にあった建物の二階部分だった。

(;=゚ω゚)ノ(や、やっぱり狙撃かよぅ! 当たったらまずかったかぁ!?)

スズキの気配を感じたのと、弾丸が壁を穿ったのはほとんど同時。
もし当たっていれば、訓練用の弾丸だろうが、大きな隙が出来ていたはずだ。

幸運に助けられた、と思い、情けない、ともイヨウは思った。
この模擬戦が終わったら気配察知の特訓を積もうと心に誓いながら、
確認のため、弾丸が当たった箇所を見上げて、

(=゚ω゚)ノ「あ」

<_プー゚)フ「あ?」

エクストの真上にある壁の一部が、衝撃で崩れ落ちたのを見た。



138: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:04:26.34 ID:NyPeZ4dw0
エクストは気付いていない。
落ちてきているのは拳二つ分ほどある塊だ。
放っておけば、数秒後には気絶へ一直線コースだろう。


――ざまぁっ!!

――あーあ、もったいねぇ。


同時に二つの思惑が頭を過ぎったが、最終的に思ったのは、

(=゚ω゚)ノ(まぁ、不運な事故ってこったなぁ)

戦闘では『稀によくあること』だ。
特に集団戦であれば、他の何かに勝負を遮られるなど普通の出来事である。
だから、自分の手で決着がつけられないのは不満だが、それによって得る勝利に嫌気はない。

……なかなか楽しかったぜぇ。

だが、

( ・∀・)「まだ終わってないよ――!」

既にモララーが動いていたのを、イヨウは見逃していた。



148: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:06:30.74 ID:NyPeZ4dw0
( ・∀・)「展開!!」

(=゚ω゚)ノ「!?」

術式が起動。
光の粒子が生まれ、次の瞬間にはエクストの頭上に形を作る。

何だ、と思う間に結果が出た。

完成したのは、傘のような半透明の膜だった。
それは落ちてきた壁の破片を受け止め、たわみ、沈んで、

(;=゚ω゚)ノ「げっ……!?」

ぽよん、という気が抜ける音を立てながら、破片をイヨウの方へ跳ね返した。

いきなりのことに、イヨウは反射的な行動しかとれない。
即ち、自分目掛けて跳ねた破片を、長斧を振って砕いたのだ。
そして、

<_#プー゚)フ「――なんか知らんがもらったぁッ!!」

その隙を、エクストが逃すはずもなかった。



153: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:08:33.88 ID:NyPeZ4dw0
(;=゚ω゚)ノ「ちょ、マジかよぅ――!!」

<_#プー゚)フ「ぬぉああああああああっ!!」

ガラ空きの脇腹を大振りな一撃が捉える。
エクストの腕力と勢い、そして大剣の重さの全てが噛み合ったそれは、
小柄なイヨウの身体を容易く『くの字』に折り曲げ、

(= ω )ノ「――ッ!!」

吹っ飛ばした。

結果、イヨウは近くの寮の壁に激突。
衝撃に砂塵が舞い上がり、その一帯を瞬く間に覆い隠していった。

( ・∀・)「よしっ!」

まず間違いなく大きなダメージが入っただろう。
気を失うほどかは解らないが、これで大きな優位を得たことになる。
企みの大成功に、モララーは思わずガッツポーズした。

<_#プー゚)フ「――って、よしっ! じゃねぇよモラっち!?」



159: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:10:34.44 ID:NyPeZ4dw0
( ・∀・)「? 何か問題でも?」

<_b> ∀<)b「問題はねぇけど、何が起きたのか俺に解説プリーズ! FOOOO!!」

( ・∀・)「あぁ解ってないのねっていうか何そのムカつく顔。
     ともかく……要するに、スズキの狙撃が彼の隙を生み出したってことだよ」

『はぁ?』と、エクストが首をかしげた。

<_;プー゚)フ「狙撃って……おいおい、何かが頭の上に当たったと思ったらタムタムの仕業かよ。
         あ、でも外したじゃん! 運が悪かったら破片が俺に直撃だったじゃん!」

( ・∀・)「うん、とても面白――げふんげふん、放っておいたら不幸なことになったかもね」

<_;プー゚)フ「!? テメェまさか……!」

( ・∀・)「そういうこと。 スズキの不幸体質まで計算してたのさ。
      どう? 褒めてもいいよ?」

エクストは少しだけ考えて、

<_プ 3゚)フ「わぁタムタムすげぇー(棒」

( ・∀・)「うーん、相棒を褒められるのは気持ちが良いものだね」

半目を向けてくるエクストを、モララーは笑って流した。



175: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:14:37.73 ID:NyPeZ4dw0
こうして簡単なことのように言っているモララーだが、
一連の流れを実行するにあたって、実はかなり神経をすり減らしている。

スズキの不幸体質については既に知られているように、
『行動の結果が何らかの不幸に繋がる』というものであり、一種の特殊能力のようなものだ。
長年、スズキと一緒に過ごしてきたモララーは、その体質のことを深く理解はしている。

だが、どのような不幸が起きるかについては、彼でも予測し得ないものであった。

そこでモララーは、エクストの周囲全てに気を配り、何が起きても対処できるように備えた。
しかもそれを逆手にとって、イヨウの隙を作ることまで思考を巡らせていたのだ。

あの時、銃弾によって起き得る不幸を、彼は九通りほど予測していた。
そして更に、自分の持つ防御術式を、それらに対応できるように準備していた。
それがどれほど頭を使うことなのか、説明してもエクストには理解出来ないだろう。

<_プー゚)フ「……まぁ、ともかく、だ。
        助かったサンキュー、って言えばいいか、この場合?」

( ・∀・)「言いたくなさげだけど」

<_プー゚)フ「本音を言えばな。
        でも、これは個人戦じゃねぇ。 そういうことだろ?」



182: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:16:38.74 ID:NyPeZ4dw0
( ・∀・)「素晴らしきかなチームプレイってところだね。
      ところで手応えの方、どうだった? ちゃんと倒せてる?」

<_プー゚)フ「相手は無防備だったし、相当痛ぇはずだ。
        でも倒せたかは解んね。
        戦いってのはそういうものだろ」

「だろうね。 ついでに言えば、僕はアレを絶対に食らいたくない」

得意の防御術式でも、エクストの全力を止められるかどうかは解らない。
とにかく手を抜くことを知らないので、正面からの相対は絶対に避けたい男なのだ。
そんな彼の攻撃を受ければ、少なくとも無事でいられることはないはず。

もしかしたら骨の一本や二本は折れているかもしれないが、
それを覚悟の上で訓練に参加しているはずだ。

文句は、言わせない。

<_プー゚)フ「――! 動きがあるぞ、モラっち」

( ・∀・)「ってことは気絶はしてないね。
     まだ動けるなら厄介だし、スズキにはそのままいてもらおう」



186: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:18:42.12 ID:NyPeZ4dw0
スズキに待機の合図を送り、二人で構える。
いきなり攻撃が来ても良いよう、モララーは術式杖『ウルトレス』の周囲にウインドウを展開し、
隣のエクストは、いつでも仕掛けられるよう腰を深く落としている。

煙が晴れた。
そこにいるのは、

(;=゚ω゚)ノ「あー……いってぇー……」

額から一筋の血を流す、イヨウだった。
その様子は、長斧を支えとしてなんとか立ち上がった、といったものである。
意識があるのに驚きだが、どうやら大きな楔を打ち込めたようだ。

<_プー゚)フ「おぉ、チビスケのくせにやるじゃねーか」

口笛を吹いて、エクストが茶化すように言った。
相手を褒めるというより、立ち上がったことが単純に嬉しいらしい。

しかし、その言葉と同時。
揺らぐ気配を放っていたイヨウの目が見開かれ、一瞬で鋭くなる。

(=゚ω゚)ノ「――あ? 今、オメェ何つったよ?」



191: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:20:45.84 ID:NyPeZ4dw0
<_;プー゚)フ「え? ……まさか気にしてるのか? チビだってこと」

エクストの無遠慮な言葉に、イヨウは小さく顔を俯かせた。

(= ω )ノ「……あのよぅ。
     俺っち、『これ言われたらフルボッコ』って決めてる言葉っつーのがあってよぅ。
     なんかさぁ、やっぱ人の気にしてることって言うべきじゃねーじゃん。
     だから俺っち、全世界のチビのために、こう思うんだよぅ」

(;・∀・)(自分で『チビ』って言葉は使うんだ……)

(= ω )ノ「――――」

大きく息を吸い、


(#=゚ω゚)ノ「全ての高身長に鉄鎚を、ってなぁ――!!」


<_;プー゚)フ「あ、あれぇ!? なんか途中で主旨変わってね!?」

(#=゚ω゚)ノ「うるせぇノッポ野郎っ!
      お前なんかに俺達の気持ちが解るわきゃねぇだろうがよぅ!!」



195: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:22:51.09 ID:NyPeZ4dw0
<_;プー゚)フ「ノッ……! い、いいじゃん、別にチビでも!
         小さくて可愛いって言われるし、小回りも効くし!
         俺なんかデケェってだけで怖がられたりさぁ、何もいいことなんか――」

(=゚ω゚)ノ「背が大きくてもいいことはねぇってのは同意してもいい。 許容の範疇だよぅ。
     だが、――背が小さいと、プライド的に損なときがあるよぅ。 確実に」

(;・∀・)(イヨウさんそれアウトォ――!!)

随分とイジられてきたのだろう。
完全に『背が小さい』という事実にコンプレックスを抱いている。
そしてエクストが、それを起爆させてしまったようだ。

(#=゚ω゚)ノ「っつーわけで低身長を悩む若者代表、イヨウ=クラインがオメェに天罰を下すぜぇ!!」

<_;プー゚)フ「えらい個人的な天罰だな、おい!」

(#=゚ω゚)ノ「高身長の余裕かよぉ――!?」

激昂したイヨウが、その勢いで己の姿勢を変えた。
長斧の柄を脇に挟んで先端を突き出し、腰を落として深く構えたのだ。



197: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:24:58.80 ID:NyPeZ4dw0
(;・∀・)「何を……」

(#=゚ω゚)ノ「遅ぇ。 だから田舎学生だって言われンだよ馬ぁー鹿」

直後、長斧の頭が光を噴いた。
重音が大気を叩き、漂っていた砂塵がイヨウを中心に散る。
そして反応する間もなく、その光がモララーとエクストの頭上を猛スピードで貫いていった。

<_;プー゚)フ「おぉっ!!?」

(;・∀・)「うわっ……!!」

振り返る暇もない。


気付けば、背後の空で光の爆発が生まれていた。



198: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:27:12.55 ID:NyPeZ4dw0
スズキは、うつ伏せの姿勢のまま一部始終を見ていた。

爪;゚〜゚)「い、今のは……!」

イヨウの武器から発せられた光。
それは太い白色の線となり、一瞬で空へ昇って爆発を引き起こした。
周囲で戦っているVIPの生徒達が、驚きの声をあげているのが聞こえる。

今のは、間違いなく砲撃だ。
しかし発せられたのは砲弾ではなく、一条の光。
単なる砲ではないが、その正体はスズキには解らなかった。

爪;゚〜゚)(こういう時は……情報交換であります!)

懐から携帯端末を取り出し、ネットにアクセス。
ウインドウに映し出されたのは水色を背景としたページだ。
そこには、多くの文字が生まれては下へ流れていっている。

スズキは、ページ上部にある白枠に素早く文字を打った。

―――――――――――――――――――――――
suzuki
謎のビームなう。
5秒前
―――――――――――――――――――――――



204: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:29:16.88 ID:NyPeZ4dw0
スズキの打ち込んだ文字が新たに表示された。

これは最近、巷で流行っているコミュニケーションツールの一つだ。
ユーザーが『呟き』と称される文章を投稿、閲覧することを目的としたもので、
メールよりも早く、チャットよりも気楽に行えることから若者に人気が出ている。

当初は『つぶやきったー』という安易な名称があったのだが、
ユーザーから『おかしいな、俺、ずっと独り言みたいになってる……(´・ω・`)』などという意見が出たことや、
なんだかんだで呟かれる内容といえば、日々の愚痴だったりすることなどから、
今では『Bottitter(ボッチッター)』や『Gutitter(グチッター)』と呼ばれるようになっていた。

ともあれ、このツールの強みは、すぐに反応があるという点だ。
文字を打ち込んでから少し経っただけで、別の呟きが新たに表示される。


―――――――――――――――――――――――
giko
@suzuki おー、俺もそれ見えたかも。 凄かったよな、びっくりした。
5秒前
―――――――――――――――――――――――
suzuki
謎のビームなう。
1分前
―――――――――――――――――――――――



208: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:31:24.11 ID:NyPeZ4dw0
そして数秒後、

―――――――――――――――――――――――
giko
すみませんでしt
5秒前
―――――――――――――――――――――――
hain
今それどころじゃねーんですけどギコさんq(^ ^)p
10秒前
―――――――――――――――――――――――
giko
@suzuki おー、俺もそれ見えたかも。 凄かったよな、びっくりした。
20秒前
―――――――――――――――――――――――
suzuki
謎のビームなう。
1分前
―――――――――――――――――――――――


爪;゚〜゚)(ギコさぁーん!! ご無事でー!!)



212: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:33:52.45 ID:NyPeZ4dw0
更には、

―――――――――――――――――――――――
Hello
ふふふ、私なんて面倒くさい女と対峙nowよ!
羨ましい? 羨ましい?
5秒前
―――――――――――――――――――――――


爪;゚〜゚)「あぁ、なんというダメダメなタイムライン……」


考えてみれば、このツールで繋がっているのはいつもの面子が大半だった。
いつもの面子なら当然、返ってくる答えもいつもの反応である。
完全な無駄足だっつーかホント何してんだろうこの人達。

だが、そこに救世主が降臨する。

―――――――――――――――――――――――
anija
むむ、あの光は……! もしかしたら――。
30秒前
―――――――――――――――――――――――



219: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:36:12.11 ID:NyPeZ4dw0
流石兄者である。
知り合いのよしみでフォローしていたのだが、
あまりに下らない呟きばかりでフォローを外そうと思っていた矢先のことだった。

わざとらしい『……!』や『――』が厨ニ臭くてアレだが、
ともかく今の砲撃の正体を知っているのなら、すぐにでも教えてもらいたい。

スズキは手早く文字を打ち、兄者へと情報催促のリプライ(返信)を送る。
返事はすぐに来る。

爪*゚〜゚)「お願いであります……早くモララー君に有益な情報を送りたいであります!」

願うように端末を両手で握りしめ、そして画面を見た。



222: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:38:15.99 ID:NyPeZ4dw0
―――――――――――――――――――――――
anija
あの鋭い、しかしまったりした……言うなればエロスを体現するような……。
い、いや、エロスとか安易に言ってはならんなエロスとか! なんというかしっぽりとした――。
1分前
―――――――――――――――――――――――
anija
何かで読んだことがあるような……見たことがあるような……。
1分前
―――――――――――――――――――――――
anija
@suzuki あぁ、しかし、あれは――そう、もしや……!
1分前
―――――――――――――――――――――――
suzuki
@anija 知ってるのでありますか? 教えてほしいであります! なう!
10秒前
―――――――――――――――――――――――
anija
むむ、あの光は……! もしかしたら――。
1分前
―――――――――――――――――――――――

爪;゚〜゚)(UZEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!)



228: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:40:51.59 ID:NyPeZ4dw0


……あ、いや、うぜぇとか言っちゃダメでありますよ自分!!


反射的に浮かんだ感情を押さえつけ、更に返信を送る。

もう何度か下らない呟きを兄者が行ったのを見たスズキは、
思わず兄者のいる方角へライフルを向けかけたが、スナイパーらしい素晴らしい忍耐力でそれを抑え、
そして遂に、砲撃の正体を教えてもらえることとなった。

その正体とは、

爪;゚〜゚)(ま、魔術砲、でありますか……!?)



231: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:43:01.26 ID:NyPeZ4dw0
その魔術砲を間近で見たエクスト達は、未だ驚きから立ち直れていなかった。

<_;プー゚)フ「な、なんだ今のは!? ビームか!? レーザーか!?
         あんなん食らったら――」


<_\ ^o^)/ オワタ


<_;プー゚)フ「――じゃねぇかよ!!」

(;・∀・)「さっきからちょくちょく変な顔芸してるけど何なの……?」

(;=゚ω゚)ノ「ってかお前ら、実はヨユーだな? そうだろぅ?」

敵からのツッコミも来たところで、モララーは真顔に戻って、

( ・∀・)「うん、観測してたスズキから、今の攻撃の正体が解った。
      あれは魔術砲だ」

<_プー゚)フ「何だそりゃ?」

( ・∀・)「最近、注目を受けてる魔粒子の利用技術を使った機構でね。
     とは言っても術式みたいなものだよ。 魔力をそのまま撃ち出すのさ」



234: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:45:03.01 ID:NyPeZ4dw0
簡単に言ってしまえば、銃や砲のシステムを採用した術式だ。
通常、術式とは魔力を何らかの形や効力に変え、発するものである。
それは例えば炎や風、力場、流れ、果ては物体の能力値まで影響が及ぶのだが、
魔術砲はそうしたプロセスをすっ飛ばした、『起動→発射』という最速機動を採用している。

ただ威力のみをぶつける。
この点においては銃器と変わりはない。

決定的に違うのは、銃器は弾数制だが、魔術砲はエネルギー制であることだ。
銃弾の一発が一発であることに対し、魔術砲は一発を二発にも十発にも打ち分けられる。
更には機種依存だが、直線型、連射型、拡散型などの形式変更も可能だと聞く。

総括すれば、最新の技術を使った砲撃方法だということだ。

(=゚ω゚)ノ「おぉう、流石に知ってるかよぅ」

と、イヨウが長斧を掲げた。
尻部分のアンカーから蒸気が噴き出す。

( ・∀・)(あのアンカーは冷却装置なのか……つまり連射は効かない、と。
     でもあんな変てこな武器、見たことがない……)



237: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:47:10.74 ID:NyPeZ4dw0
(=゚ω゚)ノ「DQNと教導境界線の合同試作品、魔術砲内蔵長斧『トランシエント』。
     へっへっへ、まだ世界のどこにも売ってねぇ超レアもんだぜぇ。
     俺っちはこの武器のテスターでもあってよぅ」

(;・∀・)「え、何それ!? うわ、普通に羨ましい!
      っていうか、なんでそんなものを!?」

(=゚ω゚)ノ「学園都市ラウンジの特進クラスだから、としか言えないよぅ」

(;・∀・)「特進クラス……侮れない……!」

(=゚ω゚)ノ「オメェ、そんな部分で評価されたって全然嬉しかねぇっつーの。
     なんだかんだ言ってウチ、実力主義だからよぅ。
     やっぱそっちで驚いてもらわねーと」

冷却終了を示すランプが点灯したのを確認し、イヨウは改めて武器を構える。
斧刃をこちらへ向けて突き出すような姿からは、小柄だとは考えにくい迫力が滲み出ており、
それを感じ取ったエクストが、半ば悔しそうに、半ば嬉しそうに歯を剥いた。

<_;プー゚)フ「サクシャがどーのこーの言ってたのは伊達じゃねぇってことか……!」

(=゚ω゚)ノ「最強とかいう曖昧なもんで自分を語るオメェとは違うんだぃ。
     俺ぁ生徒会っつー堅実な目標があるんでよぅ、夢ばかり見てるオメェらに負けてらんねーのよ」



240: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:49:12.21 ID:NyPeZ4dw0
( ・∀・)(目標、か……)

悔しいが、言い返すことは難しかった。
エクストはともかくとして、自分にとって目標とはひどく曖昧なものだ。
防御術式を高めたいとは思うし、スズキのこともフォローしていきたいとは思うが、
それは単なる行動基準であってイヨウの言う目標ではない。

イヨウの強さは、その目標に向かうという思いが支えているのだろう。
確かに武器は強力だが、それだけでは説明できない力を感じる。

( ・∀・)(前を見て、そこに目掛けてひたすらに進む意思。
     それが有るのと無いのとでは、これほどまでに違うのか)

思えば、VIPにも彼のような者達がいる。
そして、その多くが抜き出た実力を持っていた。

<_プー゚)フ「はン! だが、曖昧だろうが何だろうが関係ねぇ!
         武器の性能? 目標? そんなもん実力でブッ飛ばしてやるぜ!」

( ・∀・)(違うよ、エクスト……理想ばかりじゃあ、僕らは勝ち続けられはしないんだ)



244: ◆BYUt189CYA :2011/08/20(土) 23:51:33.31 ID:NyPeZ4dw0
この戦い、勝てはしないだろう、と思いつつ、

( ・∀・)(目標……そろそろ真剣に考えるべき時期なのかもしれないね。
      それが無ければ僕らはきっと、平凡で終わってしまう)

それが良いことなのか、どうなのか。
そんなもの人それぞれだろうが、少なくともモララーは、


( ・∀・)(行けるところまで、行ってみたいよね……!)


長斧を持ち上げるイヨウを見て、口端を小さく吊り上げて構える。
同じように、イヨウも笑みを浮かべようとして、

(=゚ω゚)ノ(そーいや、さっきの砲撃……、
     なんか空で爆発しちったけど、どうなってんだぁ?
     何かに当たったりしねー限り、爆発なんかしないはずなんだけどよぅ……)

イヨウがその答えを知るのは、全ての戦闘が終わった後であった。



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ちょっとだけ冒頭のレス(あらすじ部分)消してます。