( ^ω^)ブーンは何かの種を見つけたようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 22:47:17.52 ID:V7yIwBfA0
色とりどりのファイルが整然と収められた本棚。
きっちりと種類別に分けられたガラスの容器。

室内は思ったより明るい。
沸騰する緑色の液体やフラスコもない。

ココは僕が想像していた、いわゆる「研究所」とは全く違っていた。

本棚から適当にファイルを引き抜く。
難解な記号に目を走らせた。

「……この辺のは専門的過ぎてさっぱりわからないな」



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 22:48:05.28 ID:V7yIwBfA0
まぁいい。

これから新しいモノを作ろうってんじゃない。

要は僕の目的に合ったモノがどれなのかがわかればいい。

あとは入念な準備と最適なタイミングだ。

少しでも準備を怠ってはいけない。
機会を逃してはいけない。

文字通り、僕はコレに命をかける。


別に特別冷めた人間でもなかったし、大した理想もなかった。
成績も普通、スポーツもそこそこ。
友達だって多い方でもないし、かといっていじめにはあっていない。

最近流行の「普通の人間」ってヤツだ。


でもやっぱり、転機で大きく変わるのはそういう人間だってことだ。


この研究室を手に入れた日から、

この研究室が何を研究していたのか分かった日から、

僕には夢が出来た。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 22:50:17.36 ID:V7yIwBfA0

「……くふふ」

おっと、いけない。
また変な笑い声が出てしまった。

一人でこんなにやけ顔作ってる時点で、僕はもう普通じゃないんだな。

いや、もう普通である必要も無い。

「くふ、くふふふふふ」

さぁ、早く準備を終わらせないと。

なんたって、コレには命をかけてるんだから。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 22:51:00.63 ID:V7yIwBfA0







  第一話



    「発
          症」








8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 22:53:46.02 ID:V7yIwBfA0



「……であるからしてー……つまりここのー」



二学期明け、初っ端の地獄。

長い長い夏休みを終えた俺らには、ただでさえ面倒くささが二割増し。

その上、授業の先生が「魔法使い・小林」であるからには、居眠りしてしまう生徒が出るのも仕方ないだろう。

( -∀-)「……Zzz……おっぱ……」

やべー……。

俺も眠くなってきたな……。

このまま机に突っ伏してしまおうと考えたその時。
後頭部に何かが触れた。

('A`)「?」

髪の毛を触られたのかと思ったけど、後ろの席のヤツは「俺じゃない」と逆に睨んできた。

まぁ少し考えれば分かる。

この手のいたずらは大体あいつだ。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 22:54:12.82 ID:V7yIwBfA0
( ^ω^)「wwwwwww」

ξ゚听)ξ「……はぁ」

わざとらしく机に突っ伏して、笑いを我慢している男。
隣でツンがため息を漏らしている。

あの野郎、やりやがったな。
どうせ消しゴムカスでも投げてきたんだろう。

小林が板書してこちらに背を向けている隙に、俺は容赦なく手にあったモノを投げつけた。


('A`)「あ」


サク

    †
<( ゜∀゚)/「あおおおおおおおーーーっ!!」

雄叫びとともに、ヤツの隣の生徒が飛び上がった。
派手な音を立てて椅子が倒れる。

頭頂部に生えたシャーペンが一層存在を主張するかのごとく、ブラブラと揺れた。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 22:57:46.38 ID:V7yIwBfA0
( ^ω^)「ちょwwwwシャーwwwペンwwwwwwww」

小林「お、おい何やってるんだー、静かにしなさいよー」

  †
(;゚∀゚)「いってえええええ!! ちょ、何!? なん、なんか刺さってる!?」

ξ゚听)ξ「ええ!? ジョ、ジョルジュ大丈夫!?」

小林「もう何なんだよお前らはー。静かにしないんだったら出て行きなさい」


(,,゚Д゚)「そうだぞ、授業中だぞ。あんまふざけんなよなゴルァ!」

( ^ω^)「ブーンじゃないおwwwww犯人はブーンじゃないおwwwwwww」

ξ゚听)ξ「アンタたちがふざけてるのがいけないんでしょ!!」

('A`)「わ、わりぃ。大丈夫か?」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 22:58:15.98 ID:V7yIwBfA0
  †
(;゚∀゚)「刺さってる!! やっぱなんか刺さってる!! コレなに!? 」

( ^ω^)「ああwwwwちょっと待つおwwww今取ってあげるおwwwww」


( ^ω^)「……」


( ^ω^)「ドクオドクオ」

('A`)「ん?」


        †
<( ^ω^ )/(;゚∀゚)

よくやった 褒美としてオプーナを買う権利をやる



('A`)「……」





('∀`)「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 22:59:55.40 ID:V7yIwBfA0
ξ;゚听)ξ「なにバカやってんのよもう!!」

みかねたツンがジョルジュの頭部のシャーペンに手を伸ばす。

ξ゚听)ξ「……オプーナってなに? なんかえっちなヤツ?」

余所見をしていたせいか、伸ばした手はシャーペンをうまく掴めなかった。
ジョルジュの頭部を支点として、シャーペンが荒々しく旋回運動をした。

ξ;゚听)ξ「あっ」

  /
(;゚∀゚)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:03:07.80 ID:V7yIwBfA0





    ( ^ω^ )  ('A`)  ( ゚∀゚ )




( ^ω^)「あーあ……ドクオがあんなバカ笑いするから、廊下立たされる羽目になったお」

('A`)「う、うるせーな。そもそもお前が消しゴム投げなきゃよかったんだよ」

( ゚∀゚)「ちょっと待て。何で俺も一緒に罰を受けてなきゃならんのだ」

( ^ω^)「うるさいオプーナwwwwwwwwwwww」

(#゚∀゚)「てめっ……ん?」

廊下に甲高い金属音が響く。
三人は音のする方に振り返った。

( ´_ゝ`)「あれ。お前ら何やってんの??」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:03:39.97 ID:V7yIwBfA0
('A`)「お、兄者に弟者」

兄者と呼ばれた男が、廊下に立つ三人をポカンとした表情で見ていた。
金属バットをだらりと引きずりながら歩いているので、階段や段差のある場所では、彼の存在にすぐに気付く。

( ^ω^)「ドクオのせいで廊下に立たされてるんだおwwwwww」

(´<_`;)「お前らはわかるけど、なんでジョルジュが」

( ゚∀゚)「い、いや……」

後ろから同じ顔をした男がひょこっと顔を出した。
だらしない格好をしている兄者とは対照的に、弟者はキチンとした身なりだった。

('A`)「お前らこそドコ行くの?」

( ´_ゝ`)「んー、ぱそこん室。弟者がネットやりたいって」


(,,゚Д゚)「お、お前らなァ。今は授業中だぞゴルァ!」

教室の中から様子を伺っていたギコが二人に声をかける。

(,,゚Д゚)「ちょっと先生、いいんですかあの二人!!」

小林「え、いや……お、お前たち。今は授業中だぞ」

( ´_ゝ`)「え? いや、今からぱそこん室行くからさ」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:04:32.44 ID:V7yIwBfA0
小林「何考えてるんだよ。早くクラスに戻りなさい!」

小林が珍しく声を張る。
普段温厚な教師は実はキレると怖い、という効果を巧みに使った彼の作戦だった。

しかし兄者には全く通用しなかった。


( ´_ゝ`)「え〜、やだよ。ぱそこん室行くんだから。行こうぜ弟者」

(´<_` )「お、おう」

小林「おい!! ふざけるn」

くるっと背を向ける兄者に小林が掴みかかる。
小林の手が肩を掴んだ時、兄者の動きが止まった。

( ´_ゝ`)「……」

小林「あ……ぅ」


(,,゚Д゚)「あ、お前ら待てよ!! ちゃんと授業受けろよな!!」

( ´_ゝ`)「じゃーねー」

ギコの声を背に、二人は甲高い音を響かせて歩いていった。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:07:17.09 ID:V7yIwBfA0
( ゚∀゚)「お前ら……よくあいつらと普通に会話できるな」

( ^ω^)「ったりめえよwww同じ日本人だぜwwwwww」

('A`)「え? なんで??」

( ゚∀゚)「なんでじゃねぇよ!! 流石兄弟だぜ? 特にあの兄の方……明らかにやばいじゃん。
     気に入らないヤツは容赦なくあの金属バットで皆殺し……不良グループからも恐れられてるみたいだし」

( ^ω^)「べらんめぇwwwwwwwwこちとら金属バット+ゴールデンボール×2標準装備よwwwwwwww」


( ゚∀゚)「知ってっかよ、あの事件」

( ^ω^)「さ、鮫島のことかお?」

( ゚∀゚)「注意してきた生活指導の先生、あの金属バットで返り討ちにしたって。
     でも退学にならずに済んだんだよな。噂じゃ、兄が何やっても弟が全て影でもみ消すって……」

('A`)「うーん……まぁ、案外話してみると普通だよ」

( ゚∀゚)「わかんねぇよなぁ……ドクオって、物怖じしない性格と言うか」

(;'A`)「だから話してみると普通なんだってば」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:07:59.33 ID:V7yIwBfA0
小林「……ったくもぅ……あいつらは……」

ぶつぶつと黒板に向き直る。
そんな小林の様子を見て、ギコにこっそりと声をかける女子生徒がいた。

(*゚ー゚)「……ギコくん、大丈夫?」

(,,゚Д゚)「ん? ああ、大丈夫さ。ああいう不良は許せないんだよね」

(*゚ー゚)「ギコくん正義感強いもんね。かっこいい」

(,,゚Д゚)「おう。ココが学校じゃなきゃとっちめてやるんだけど、でもやっぱ暴力はよくないしな」

(*゚ー゚)「ギコくん優しい〜」

(,,゚Д゚)「そうか? ふっ、まァ人として、いや男として当たり前だよ」



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:08:34.23 ID:V7yIwBfA0
そして一部始終を黙って見つめる、窓際の生徒。

( ・∀・)「……」

<ヽ`∀´>「ちっ。ギコの野郎、優等生ぶりやがってなんかムカつくニダ」

( ・∀・)「ほっとこうぜ。アイツいじめると、しぃって女が気持ち悪いからな」

<ヽ`∀´>「ニダニダ。にしても、流石兄弟はでかい顔しすぎニダ。ウリたちのグループにも入らないし」

( ・∀・)「アイツは別格だよ。アイツは不良じゃなくてただの基地外だ」

<ヽ`∀´>「ホルホルホルwwwww触らぬ基地外に祟りなしニダwwwwww」

( ・∀・)「ああ、それよりよ……」

モララーの目線の先。
真面目に板書をノートに写す生徒の姿があった。

( ><)「……」

( ・∀・)「くくっ、真面目クンは今日もせっせと授業受けてるぜ」

<ヽ`∀´>「休み時間が楽しみニダww」



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:09:11.44 ID:V7yIwBfA0
( ´_ゝ`)「お邪魔しまーす」

パソコンルームでは通常の授業をやっていた。
静寂を破ってドアを開けた流石兄弟に、クラス中の視線が集まる。

(´<_` )「ようショボン」

(´・ω・`)「や、やぁ」


教師「な、なんだお前ら。他のクラスだろ」

( ´_ゝ`)「ちょっとぱそこん使うね。お、ちゃんと弟者のぱそこん空いてんじゃん」

そう言って堂々と教室に入る流石兄弟。
呆気に取られる教師と生徒を尻目に、PCを起動する。

PCには「弟者の」というシールが貼ってあった。
それ以来、そのPCを使おうとする生徒はいない。

すでに諦めているのか、教師はそっぽを向いて授業を再開させた。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:10:13.50 ID:V7yIwBfA0
放課後。
バラバラと教室を後にしていく生徒達。

部活動に精を出す者、残っておしゃべちに夢中になる者。
その中に、ビロードとワカッテマスの姿があった。

( ><)「ちんぽっぽちゃん、遅いなぁ」

( <●><●>)「……」

( ><)「何してるんだろ? 待っててって言ったのは向こうなのに」

( <●><●>)「ちんぽっぽちゃんを待つんですか?」

( ><)「うん。一緒に帰るみたい」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:10:39.24 ID:V7yIwBfA0
( <●><●>)「……じゃあ五時過ぎになってしまいますね」

( ><)「え? なんでそんな遅いの?」

( <●><●>)「今日は彼女は委員会に出ています。大事な議題があるらしいから、いつもより時間がかかるのはわかっています」

(;><)「ええ!? わかってますじゃないよ!! なんで早く言ってくれないのさ!!」

( <●><●>)「わかりませ……わかってます」

(;><)「何がだよ!! え〜、どうしよう。やっぱり待った方がいいかな」

( <●><●>)「なんだかんだでちんぽっぽちゃんを待ってしまうのは、いつものパターンですよ」

(;><)「ちぇー……あっ」



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:11:18.40 ID:V7yIwBfA0
( ・∀・)「ようビロード。何してんの?」

(;><)「モ、モララーくん……。と、友達を待ってるんだ」

( ・∀・)「お前はなにヘラヘラしてんだよ……むかつくなぁっ!!」

モララーが勢いよく腕を振り上げる。
条件反射で、ビロードは頭を抱えた。

( ・∀・)「あーあ、頭痒いなぁ。アレ? お前何してんの?」

<ヽ`∀´>「何ビビッてるニダwwwwだっせwwwwだっせwwwwwwwww」

(;><)「……」


( ・∀・)「あーあ、っと!!」

( ><)「ひっ……」

再びモララーが腕を振り上げる。
しかし二度目のソレも威嚇だけで、ビビるビロードを二人は声を出して笑った。

<ヽ`∀´>「ホルホルホルホルwwwwwwwwなにしてるニダこいつwwwwww」

(;<●><●>)「……」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:11:50.61 ID:V7yIwBfA0
そして三度目。
ビロードは今度はビビるまいと体を硬直させ、動かなかった。

( ・∀・)「おら!!」

(;><)「あぐっ!!」

歯を食いしばっているビロードの頬を張る。
吹き飛ばされたビロードの口の端から、赤い筋が垂れた。

( ・∀・)「あっはははは!! 防御もしねぇでバカじゃねぇのお前!?」

<ヽ`∀´>「何つったってるニダwwwせめて腕上げろニダwwwwwwwwニブチンwwww」

( ><)「やめてよ……痛いよ……」


(<●><●>;)「……ッ!!」

<ヽ`∀´>「あっ!? おい!! 待つニダ!!」

( ・∀・)「あらら、いい友達持ったなぁビロード。逃げちゃったよアイツ。お前残して」



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:12:56.80 ID:V7yIwBfA0

(,,゚Д゚)「……」

「おい、なに見てんだよ。お前もいじめられたいの?」

(,,゚Д゚)「い、いや。別に見てないよ……これから帰るところだ」

(*゚ー゚)「ギコくん、どうしたの? 止めないの?」

(,,゚Д゚)「いや……もう放課後だしね。先生もいないし、その辺を止める権利は誰にもないよ。それに、ビロードにも原因があるんじゃないかな?」

(*゚ー゚)「そっかー!! ギコくん頭いいね♪」

(,,゚Д゚)「まぁね」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:14:23.18 ID:V7yIwBfA0


(*‘ω‘ *)「コラーッ!! 何してるっぽ!!」

<ヽ`∀´>「やばいニダwww姐さんの登場ニダwwwww」

( ・∀・)「うーわ。何でお前はこんなタイミングよく登場するわけ?」


(*‘ω‘ *)「ワカッテマスが駆けつけて知らせてくれたっぽ!! あんたたち、ふざけんじゃないっぽ!!」

( ・∀・)「何もしてないよ。ビロードと遊んでただけさね」


( <●><●>)「……いじめなんて、バカな奴等だな……どうせ皆あした死んじゃうのに」

( ・∀・)「あ? なんか言ったかテメー」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:15:31.73 ID:V7yIwBfA0
(*‘ω‘ *)「いい加減にしなさいっぽ!! 先生に言いつけるっぽ!?」

( ・∀・)「ちっ……よかったねービロード。女の子に助けてもらっちゃって。かっこいいねー」

<ヽ`∀´>「覚えてろニダ!!」

( ><)「うう……」

(*‘ω‘ *)「全くもう……ビロード、大丈夫?」

( ><)「……大丈夫です。ありがとうです」

( <●><●>)「僕一人が止めに入っても悪化することは分かってました……許してもらえないのはわかってます」

( ><)「ううん……ありがとう、ワカッテマスくん」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:16:39.21 ID:V7yIwBfA0
ビロードたち三人が帰宅し、西の空には夕日が傾いてきた。
部活動の生徒達もまばらに解散していく。

パソコンルームには、まだ流石兄弟の姿があった。

( ´_ゝ`)「弟者ーもう帰ろうよー」

(´<_` )「おう。ちょっと待っt……なんだこのファイル」

( ´_ゝ`)「どしたの?」

(´<_` )「いや、見慣れないファイルが……なんだこれ」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:17:25.94 ID:V7yIwBfA0
(;´_ゝ`)「ねむいよーねむいよー」

('A`)「あれ? 兄者早いじゃん。どしたの?」

翌日。
まだ始業の時間までは時間があるというのに、校舎の中には珍しく兄者の姿があった。


(;´_ゝ`)「おー、ドクオ。聞いてよ。俺昨日家帰ってないんだよ」

(;'A`)「ええ!? 学校止まったの!? なんで!?」

(;´_ゝ`)「弟者がどうしてもぱそこんやりたいって言うから……ホラ、うちにはぱそこんないじゃん?」

ホラと言われても初耳のドクオだったが、そこはスルーすることにした。

('A`)「そーなんだ。ウチの学校セコムとかないもんなぁ」

ドクオたちが住む島、ニュー速島。
過疎化が進む昨今で、比較的栄えているこの島だが、やはりVIP高校の生徒数は少なかった。

(;´_ゝ`)「というわけで俺は寝てくる。屋上行って来るね」

('A`)「おう、いってらっしゃい」

弟者の横で寝てればよかったのに。
そう思うドクオだったが、大人しく兄者の背中を見送った。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:18:11.92 ID:V7yIwBfA0
('A`)(はぁ……眠いなぁ……)

今日も今日とて、小林の催眠授業。
ジョルジュは相変わらず机に突っ伏している。

( -ω-)「Zzz」

いつもドクオにちょっかいを出してくるブーンも、今日は熟睡していた。

('A`)「……」

ドコウは目立たないよう、さりげなく教室内を見渡した。
その中で、隣の席のビロードが目に入った。

('A`)「……?」



(;'A`)「お、お前……どうしたんだソレ」

( ><)「え?」

ドクオが指差した先、ビロードの襟元から、何かが顔を覗かせていた。
ソレは一見ただのホクロのようにも見えたが、その数はかなり異常だった。

( ><)「え? え? なに? なんですか?」



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:18:59.88 ID:V7yIwBfA0

ビロードは虫でも付いているのかと、慌てて首に手をやる。
その指先からは、予想もしていなかった感触が伝わってきた。

(;><)「ぁわっ、なななんですかコレ!?」

直径二・三ミリ程の小さな穴。

その中に、くすんだ色の何かが詰まっている。

それがビロードの首から鎖骨にかけて、びっしりと集まっていた。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:20:33.01 ID:V7yIwBfA0
(;><)「い、うわ、あああっ!?」

ビロードが悲鳴をあげて立ち上がる。
狂ったように首を掻き毟ると、穴から中身がポロポロとこぼれ落ちた。

(;'A`)「うわ、ちょ、ビロード落ち着け!!」

(;><)「ああああ!!ああああああああ!!」

ビロードの首と爪には、うっすらと血の赤が付着していた。

ξ;゚听)ξ「え、なに!?」

(;^ω^)「どうしたんだお?」

静かな授業中だったため、クラスは一斉にビロードに注目する。

その中で一人。
彼だけが狂ったように首を掻き毟り、踊り続けていた。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:21:39.39 ID:V7yIwBfA0
周りの誰もが、彼が踊り狂っている理由がわからなかった。
ただ一人、ドクオを除いては。

(;'A`)「ビ、ビロード!!ビロード!!」

しかし彼もどうしていいかわからない。

(,,゚Д゚)「ちょ、なにしてるんだ!! 落ち着けビロード!!」

その様子を見たギコが慌ててビロードを押さえつける。
ドクオの行動を見て、周りの男子生徒達も一斉に動きだした。

しかし、ビロードの異変に気付いた男子生徒は動きを止めた。

(;^ω^)「うぇっ!!なななんだおソレ!?」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:24:01.52 ID:V7yIwBfA0
ポロポロとこぼれ落ちる中身。
それが教室の床や机に、次々と飛び散っていく。

ξ;゚听)ξ「イヤァァァァァァ!!」

(;^ω^)「うわ、うわわわ!!きめーお!!なんだおソレ!!」

(;><)「あっ!!ああっ!!あっ!!」

押さえ付けるギコの腕を払いのけ、ビロードはますます激しく暴れだした。

ビロードの首の出来物は、文字どおり「穴」になっていた。
中身が綺麗に刳り貫かれ、肉が抉れたように穴が開いている。

次第に、彼の皮膚に新たな変化が現れた。


穴の周辺の皮膚が、まるでニキビのようにプツプツと赤らんできた。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:24:45.31 ID:V7yIwBfA0
(;><)「いいぃいいい……!!」

その上を力の加減を知らない爪が走る。
赤み掛かった皮膚が破れ、中身の詰まった穴が出てきた。

首から広がって顎、頬、額。

新しく出来た穴に、力いっぱい両手で掻き毟る。
また赤みが出来て、破れて、中身が飛び散る。

(*‘ω‘ *)「ビ、ビロード……」

周りの生徒は、その壮絶な光景に誰も動けなかった。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:26:01.98 ID:V7yIwBfA0
ビロードは荒々しくシャツを脱ぎ捨てる。
胸にも背中にも、すでにびっしりと穴が出来ていた。

無言で見つめる者。
叫び声をあげる者。
教室を走り去る者。

生徒の中には、すでに気絶している者もいた。

(;'A`)「やめ、やめろよ……もうやめてくれ……」

ドクオの声が届いたかは定かではないが、急にビロードの手が止まった。

「……」

(;'A`)「……ビロード……?」

彼の顔は形は変わってないものの、穴に覆われて別人のようになっていた。


それからの事は、ドクオ自身あまり覚えていなかった。
ビロードは、床に飛び散った中身の上に崩れ落ちた。

咄嗟にちんぽっぽが駆けつけて、倒れた彼を抱きかかえていた。
そのとき、プチプチという小気味いい音を聞いたのは覚えている。


アレは、あの中身が潰れる音だったのかな……。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:26:46.41 ID:V7yIwBfA0
そんなことを呆然と考えていたとき。
気付いたら体育館だった。

全生徒は体育館に集められていた。


( ^ω^)「ドクオ、ドクオ」

('A`)「お、おうブーン」

( ^ω^)「お、大丈夫かお?」

('A`)「ああ……って、あれ?俺気絶してた?」

( ^ω^)「いや、いくら話し掛けてもずっと上の空だったお。もう正気に戻ったお?」

('A`)「お、おう。みんな体育館に避難したのか」

( ^ω^)「だお。そんなに時間経ってないお」



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:27:32.75 ID:V7yIwBfA0
教師からはなんの説明もなかった。
どうやら教師たちも事態を把握してないらしい。

生徒達は不安を抱えながら体育館に拘束されていた。

(;^ω^)「ドクオ。あれは一体なんだったんだお? なにか伝染病の一種だったらどうするお。
       ……やばいお、空気感染とかだったら……」

なんとか思い出さぬよう努めていたが、どうしてもアレが頭から離れない。
むしろそれは鮮明にドクオの頭にこびりついていた。

(;'A`)「……なぁ」

聞くまでも無い気がした。
答えが返ってくるとも思わなかった。

しかしドクオは聞かずにはいられなかった。

(;'A`)「し、死んじゃったのかな」

(;^ω^)「……」



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:28:14.14 ID:V7yIwBfA0
あえて名前は出さなかった。
特別親しいわけでもなかった。
さっきまで一緒に授業を受けていたのに。
なんであいつがあんな目に……。

ビロードの話は全て過去形になってしまっている事に気付いたとき、ドクオの目から急に涙が零れた。

(*゚ー゚)「ギコくん……怖いよ、どうなっちゃうの?」

(,,゚Д゚)「大丈夫だ。きっとすぐに解放される。安心しろ」

(*゚ー゚)「……ギコくん、チョー頼もしい♪」

(,,゚Д゚)「男は黙って耐え忍ぶもんさ」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:29:39.54 ID:V7yIwBfA0
しばらくして、生徒達は突然解放された。
教師からの説明は、アレは彼の持病であるジンマシンとの事だった。

そんな訳がない。
アレはただのジンマシンなんかじゃない。

ドクオたちビロードのクラスは口々に叫んだが、教師の一言ですぐに押し黙った。


「えー……3年1組はもう少し残ること、とのことです……」


(;^ω^)「ドドドドクオ!! やばいお、やっぱり感染するヤツなんだお!! どうするお!!」

(;'A`)「ど、どうするっつったってよ」

ざわめきが残る中、ドクオたち3年1組は体育館の中央に集められた。
担任の教師も一緒だが、彼の青ざめた表情が余計に不安を煽る。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:31:54.40 ID:V7yIwBfA0
(;'A`)「多分、一人一人精密検査? みたいなのやって……あんな病気聞いたことないから、隔離、とかかな。
    いや、ウチの島の病院にそんな立派な施設あんのかな? だとしたら一度本土の方に移送……?」


( ;ω;)「違うお!! きっと実験体にされるんだお!!」

(;'A`)「お、おいブーン……?」

( ;ω;)「いやだお!! このまま死ぬのはイヤだお!!」

(;'A`)「落ち着けって!! もしかしたら手術で治るとかワクチンとかあるかもしれないだろ!!」

( ;ω;)「うっうっ……」



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:32:56.37 ID:V7yIwBfA0
ブーンの様子がおかしい。
そう感じたということは、まだ自分が冷静でいることが出来てるんだろうか。

ドクオはあらためてクラスの様子を伺う。

ξ;凵G)ξ「……」

( ・∀・)「……っち、めんどくせー……」

ブツブツ独り言を呟いている生徒や、抱き合って泣いている女子生徒。
皆一様に不安を抱えていた。


( ´_ゝ`)「あれ? みんななにやってんの?」

(´<_` )「昼寝してたせいで完全に乗り遅れたな……」

流石兄弟はドクオの姿を見かけて、駆け寄ってきた。
ドクオが説明すると、兄者はひたすらキモイと連発し、対照的に弟者は考え込んでいた。

(´<_` )「なぁ、ドクオ。昨日、俺のPCで変なファイルを見かけたんだが……」

('A`)「え?」

(´<_` )「なんか、日記みたいなヤツ。聞いたモノと症状が似ているような……」

(;'A`)「なんだっt……」



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:33:45.77 ID:V7yIwBfA0
弟者から詳しく話を聞こうとしたそのとき。
ちんぽっぽが突然立ち上がった。


(*‘ω‘ *)「うう……う……」

みんな周りが見えていないのか、彼女の行動にはすぐに気付かない。
ゆっくりと、頼りない足取りで集団から離れていく。

('A`)「ちんぽっぽ……?」

(*‘ω‘ *)「うぁ……ああ……」

彼女の捲し上げた袖、そこから見える腕に、無数の穴が開いていた。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:34:43.60 ID:V7yIwBfA0
(*‘ω‘ *)「もう……だめ……みんな、逃げ……」

彼女は叫び声をあげて、穴だらけの腕を掻き毟りだした。

「いやああああああああっ!!」

崩れ落ちるちんぽっぽ。
誰からということなく、体育館に叫び声がこだまする。

(;^ω^)「やっぱり……やっぱりうつるんだお!!」

ブーンが叫ぶ前に、生徒達は気付いていた。
ちんぽっぽはビロードを抱きかかえていたこと。

そしてもう一人、穴だらけの彼と接触した人間がいること。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:35:24.91 ID:V7yIwBfA0
(,,゚Д゚)「え……ぁ……」

ギコの周りの生徒は、すぐに彼と距離をとった。
その中に、しぃの姿もあった。

(*゚ー゚)「ギ、ギコくん……」

(;'A`)「ギコ!! ダメだ見るな!! 触っちゃダメだ!!」

(,,゚Д゚)「ド、ドクオ……助けて……俺……」

本人も周りの人間も気づかなかった。
彼の頬に、小さな穴が開いているのを。

(;'A`)「触るな!! いいか、落ち着け!!」

ドクオは必死にギコに訴えた。
解決法を知っているわけではなかったが、掻き毟りだしてから穴が急速に増えていったのを見ていた。

(,,゚Д゚)「しぃ……しぃ……たすけ……」

(*゚ー゚)「やっ」



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:35:56.82 ID:V7yIwBfA0
(*゚ー゚)「やだ!! 来ないでよ!! うつったらどうすんのよ!! 来ないで!!」

(,,゚Д゚)「し……なんだよ、それ……そりゃ、ねぇだろ……」

(*゚ー゚)「来るな!! あっち行けよ!! 来んな!! 来んなって言ってんだろ!!」


(,,゚Д゚)「しぃ……うお、うおおおおおおお!!」


ギコが掻き毟りながらしぃの元へ走り出した。
彼女は逃げることも出来ず、彼の抱擁を受けた。

はたから見たら、カップルがいちゃついているようにも見えた。


(,,゚Д゚)「ああ!!あああっ!!」

(*゚ー゚)「あが、ぐう、やめ、や」

しかし、ギコは必死に頬を押し付ける。
その刺激で中身が飛散し、しぃの口や髪の毛に付着した。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:36:39.28 ID:V7yIwBfA0
(,,゚Д゚)「うううう……痒いぃいい……かゆよおお……てめえら……全員道づれにしてやる……」

その言葉を聞いて、生徒達は一層あとずさった。
しぃはすでにギコの足元で穴を掻き毟るのに必死だった。



(,,゚Д゚)「うおおおおっ!! 道連れ!! お前らも!!」



( ´_ゝ`)「きもいんだけど……弟者、どうすんのアレ」

(´<_` )「むむ、被害がこっちに来る前に逃げるか。それか止めるかだな」

( ´_ゝ`)「止めていいの? わかった」

兄者がおもむろにギコに近づいていく。
振り向いたギコが最後に見たのは、眼前に迫る金属バットだった。

( ´_ゝ`)「ふぅ……こんなもんかな?」

(;'A`)「兄者……お前……」

( ´_ゝ`)「ふふ、礼はいらんぞドクオくん」

(;'A`)「殺しちまった、のか?」

ギコはぴくりとも動かない。
正確には、動かなくなるまで兄者がぶっ叩いたのだが。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:41:17.76 ID:V7yIwBfA0
( ´_ゝ`)「ま、俺のおかげかな。礼はいらんぞドクオくん」

(;'A`)「なにもあんな殴らなくても……」

(;´_ゝ`)「危ないところだったな。俺のおかげだな、ドクオくん」

(;'A`)「先生、これから、どうするんですか」

( ´_ゝ`)「……」


「いや、だな。とにかく、落ち着いて……」

教師は錯乱状態だった。
いや、クラス中がパニックに陥っていた。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:43:05.12 ID:V7yIwBfA0

一人、また一人と体育館を逃げ出していく生徒を見て、一斉に散り散りに走り出した。

(;^ω^)「ドクオ、ブーンたちも逃げるお!!」

('A`)「逃げるったって、おま……」

(;^ω^)「いいから!! 早く!!」

ドクオはブーンに無理やり引っ張られて、体育館出口まで引っ張られたが、そこで急にブーンの足が止まった。

(;'A`)「ど、どうした?」

(;^ω^)「なんだおアレ……」

(;'A`)「え……?」

ブーンの視線の先。
体育館出入り口のガラス戸。

その向こうに、なにか大きなモノの影が飛び交っているように見える。



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/20(土) 23:49:44.75 ID:V7yIwBfA0
('A`)「なにアレ」

( ^ω^)「おっきな……蚊が飛んでるお……」

ソレはブーンの言ったとおり、大きな蚊に見えた。
頼りない細い足、口から生えた針のようなもの。

まさしく蚊そのものだった。
バスケットボール大のサイズを除いては。

(;^ω^)「で、出れないお」

(;'A`)「……」

ドクオたちが呆然と立ちすくんでいるとき、背後から大きな羽音が聞こえた。
耳につく、あの独特な不快音。

蚊の、羽音だ。

振り返ったとき、一匹の巨大な蚊が真っ直ぐにこちらに飛んで来るのが見えた。



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