( ´_ゝ`)パラドックスが笑うようです

4: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 00:39:17.61 ID:kEaifQ7a0

 オレのこと、そろそろ気がついてるだろ。まあ、無理はしなくていいぜ
心配するのもよせ。どうせなるようにしかならん

 そうだ、おまえにいいことを教えてやろう
今、おまえ、監視されてるよ。当然だが。闇鴉だと疑われてるんだもんな

 天井裏だ。十人以上いるぜ。随分と物騒なもん持ってる。気配を消すのがかなりうまいから、わからなかっただろう
どうせ聖騎士団だろうが、その中でも隠密行動を得意としてるやつらみたいだ。殺気すら完全に消してる
わかるだろ、なあ。一流の殺し屋たちだぞ

 どうして俺がわかったかって
そんなもん、心臓の音や体温まで消せる人間はそうそういないだろ

 どうする。殺してやろうか?
おまえには無理だが、オレならできる

 もう一度言ってやろうか
無理はしなくていいんだぜ



6: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 00:40:45.88 ID:kEaifQ7a0













#34

*――パラサイト――*



9: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 00:43:33.83 ID:kEaifQ7a0

 【大神殿】
 -初日-

 ベッドに倒れ込み、荒くなった呼吸を鎮めるために深く息を吸い込んだ。
持病になってしまった頭痛と不規則な心拍によって、頭がうまく働かない。

 気を紛らわせるために、横になった体勢のまま、部屋の様子を見渡した。
床に敷かれたカーペットと、広々とした部屋の空間を埋め立てるように置かれた調度品の数々によって、
神殿の堅苦しさがいくらか和らげられている。

 広さはもちろんのこと、天井が高く作られているので、閉じ込められているような気はしない。
実際には監視役もいて、かごの鳥よろしく囲まれてしまっているのだろうが。

( ´_ゝメ)「なあ。のぞき見は趣味が悪い。一緒に話でもしないか」

 寝そべったまま天井に向かってつぶやいてみた。
まるで反応が無く、気配も一切感じない。
しばらくの間一方的に話しかけてみたが、結果は同じで、ただ空しくなっただけだった。

 気分が直ったあと、部屋の中を物色したり、剣の手入れをしたりして、いつものように暇を潰し始めた。
来客があったのは、片手腕立てで数千を数えたときだった。

[ Д`]「こんにちは」

 顔の半分が露出した兜から、深い皺の入った目元が覗いている。
たしか、第五番隊のエンジン王という男だ。



13: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 00:46:22.67 ID:kEaifQ7a0

[ Д`]「さっそく訓練とは。精が出るな」

( ´_ゝメ)「訓練というほどでもない。単なる腕立てだ」

[ Д`]「片腕で何回できる? 俺は千二百回以上できるぜ」

( ´_ゝメ)「六千回で飽きたよ」

[ Д゚]「ほ、ほう……やるじゃないか」

( ´_ゝメ)「なんの用だ」

 エンジン王はがしゃがしゃと甲冑を揺らしながら、勢いつけてソファーに座り込んだ。
体が沈み込む感触が楽しいのか、満足そうな顔だ。姿勢を直し、俺の方に向き直った。

[ Д`]「そう邪険にするな。ただの連絡だ。
     おまえはこれから法王様への謁見、精霊による加護、それから魔界へ乗り込む、とまあこういう順序を踏んでもらうわけだが、
     いろいろと面倒なことになっててな。それらの手はずを決めるだけでも一週間はかけるんだとさ。待機ということで頼むぜ」

( ´_ゝメ)「その連絡のためだけに来たわけじゃないだろう?」

[ Д`]「さすがに鋭いな」

 エンジン王は俺から視線を外し、一瞬だけ宙を見上げた。
思案を巡らせたのか、それともなにかに気がついたのか、判断はつかなかった。



16: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 00:48:28.92 ID:kEaifQ7a0

[ Д`]「大した用事じゃない。ていうか、完全に私用なんだけどさ。
     単におまえと話してみたくなった、それだけだよ。
     神官連は今、おまえを闇鴉の手から逃れた唯一の生存者だと考えるやつと、
     闇鴉の手先、もしくはおまえが闇鴉なんじゃないかと思ってるやつとで、二分してるんだ」

( ´_ゝメ)「あんたはどっちなんだ」

[ Д`]「それを確かめるために来たんだよ。人の噂……ていうか、他人の評価なんて当てになんねえからな。
     そいつと向き合って話さないことにはなにも始まらねえ。てわけで報告がてら、俺がやってきた」

( ´_ゝメ)「……で、どうなんだ?」

 年齢でいえば、おじいちゃんと言われても仕方の無い男だ。
しかし屈託無く笑っているときの彼は、無邪気な子供に見えなくもない。

[ ∀`]「遭遇した訳じゃねえが、一度はやつに近づいた俺だからいえる。
     おまえは闇鴉じゃねえ。温度を持ったちゃんとした人間だ」

 彼は握り拳を作り、自分の胸の辺りを二度、軽く叩いた。

[ Д`]「そうそう、原子王が来なかったか? 十字の仮面をつけたやつだ」

( ´_ゝメ)「いや、来ていない」

 原子王といえば、気になる言葉を残していった男だ。
彼と俺に接点などあるはずが無いのだが、何かしらの関係があるということをこぼしていた。



19: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 00:53:14.41 ID:kEaifQ7a0

[ Д`]「そうか……。あいつがおまえに言ってたよな。縁があるだとかどうとか。
     ロマネスクさんは知ってるみたいだったけど、俺は知らねえからさ。おまえから聞こうかと思ってたんだけど」

( ´_ゝメ)「俺にもわからないよ」

[ Д`]「だろうな。でも近い内にあいつはおまえのところに行くだろうから、なにか聞いたら教えてくれ。
     あいつさ、普段から無口でなに考えてんのかよくわかんねえんだ。秘密を墓まで持っていくタイプだよ。
     面白い情報だったらからかってやろうと思ってんだ。協力してくれよ」

( ´_ゝメ)「ああ、わかったよ」

 早口でまくし立てたあと、もう一度天井を見上げてから、エンジン王は立ち上がった。
「少し喋りすぎたかな? いっか。いつものことだし」一人言を呟きながら、部屋から出ていった。


*―――*


 夕食を一人でとるのは久しぶりかもしれない。
台車で運ばれてきた料理を一つ残らずたいらげると、いよいよやることが無くなり、退屈で心が焦げだした。

 部屋にはテラスがついていた。星の光を見るために、部屋の明かりを消した。
暗闇に心が安らぐのは、きっとおかしなことではないだろう。

 大神殿そのものが、小高い場所に造られているため、この部屋から遠くに街が一望できる。
テラスの柵に寄りかかり、眺めに心を落とした。



22: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 00:57:30.91 ID:kEaifQ7a0

 街の上に月が浮かんでいた。星の海に貼り付けられた月を見る度思い出すことがある。
闇色に漂う少女も、喋られない魔法使いも、落ち着きの無かった相棒も、みんな空にいるような気がした。

 背筋が凍りつき、足下がぐらついた。景色が急激に遠ざかる感覚を覚える。
不安で心臓が萎みそうになった。汗などかいていないのに、執拗に額をぬぐった。

 俺はどうしてここにいるのだろう。
弟者を助けるため、などというのはもう理由にならない気がする。

 勇者となり旅に出てから今まで、自分の選択に一つたりともまともな理由が見つからない。
俺が旅を続ける理由、命を賭けるに値する理由がわからないのだ。

 覚悟はとっくに出来ている。
歩き続けた先になにがあろうと、きっと後悔はしないはずだ。
それなのに、時々やってくるこの全身をまさぐる不安感は一体なんだというのだ。

 気を付けろ。後ろだ

(  _ゝメ)「原子王だろ」

 今喋ったのは俺じゃない、が後ろに誰かいるのは明白だった。
煙のように現れた男は、もう気配を隠そうとはしていなかった。テラスの柵を背にし、振り返る。



28: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:07:11.88 ID:kEaifQ7a0

(十)「なぜわかったのですか?」

 昼間見たときのような鎧姿とは少し違い、上にローブを羽織っていた。

( ´_ゝメ)「勘かな」

(十)「私の気配を感じ取るなんて、誰にでもできるようなことではない」

( ´_ゝメ)「誰にもできないことでもないだろう?」

 十字の亀裂の奥底から、強固な感情を思わせる視線が飛んできた。
ただし敵意などはなく、詮索や疑念、また畏敬なども感じ取れた。

(十)「改めまして、原子王といいます。よろしく」

( ´_ゝメ)「本当に来るとは驚きだよ」

(十)「なんのことでしょうか?」

( ´_ゝメ)「夕食前にエンジン王がやってきて、あんたが近い内にやってくるだろうって言ってたよ」

(十)「あの男はまた余計なことを……」

 同僚というより、厄介な友人を持った男のぼやきに聞こえた。



30: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:09:08.69 ID:kEaifQ7a0

( ´_ゝメ)「なあ、天井裏のやつらをなんとかできないか? このままじゃ気になって眠れない」

 冷静な雰囲気を漂わす原子王が、また微かに気配を乱した。
やや考えるように俯き、それから俺がいるテラスに向かってゆっくりと歩き出した。

(十)「私にはどうにもできませんよ。ただの兵隊ですから」

 テラスまで出ると、彼の姿が月の光にくっきりと浮かび上がった。
やや距離を置いて俺の横まで来ると、柵に片腕を乗せて、さっきまでの俺と同じようにして景色を眺めだした。
視線を交わさないまま会話が始まる。

(十)「あなたは強いですね。しかし、制御できない力は単なる破壊しか生みませんよ」

( ´_ゝメ)「そうだろうと思うよ」

(十)「不思議な人だ。勇者というのは、代々あなたのような人だったのかもしれませんね」

( ´_ゝメ)「屋根裏のやつらは、ロマネスクの差し向けたものではないのか?」

(十)「言えません」

 原子王はこちらを向いて、小さく首を振った。同時に彼の口元が形だけで言葉を呟く。『チガイマス』。
真面目そうな男だが、少し茶目っ気も見える。

( ´_ゝメ)「話せることだけ話そう。なにか言いにきたんだろう」

(十)「率直に言うと、クーさんのことです」



35: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:13:01.42 ID:kEaifQ7a0

 慌てずにはいられなかった。
原子王は俺の顔色をうかがったあと、目元を少しだけ緩ませた。兜の下で笑ったのかもしれない。

( ´_ゝメ)「どうしてクーのことを知っている? 俺は話していないぞ」

(十)「ラシャトリカで、あなたの心を覗かせて頂きました。
    本当に勇者かどうか確かめるためです。その際、様々な記憶の断片も拾いました」

( ;´_ゝメ)「……魔法使い!」

(十)「そう」

 ラシャトリカでワカッテマスが待ち構えていたのは、先読みを使える魔法使いがあの街にいたからだ。
そうでなくとも、魔法陣によってロマネスクたちが移動するには、必ず魔法使いが必要になったはずだ。
つまりあの街にいた魔法使いは、原子王のことだったのだ。

( *´_ゝメ)「じゃああんたは魔法剣士か! 本でしか見たことなかったが……。
       すごいな。闘うところがぜひ見てみたい」

(十)「大したものではありません」

( ´_ゝメ)「いいや、すごいよ。人生をかけなければ習得できない魔法に加えて、剣術も扱えるんだ。
      紛れもない天才だ。しかも聖騎士団に所属しているんだから、これ以上ないほどのエリートじゃないか」

(十)「褒めすぎです……。少々落ち着かれては」

 困惑した原子王は、またテラスの向こう側に顔を向けた。
横から吹いた夜風が俺たちの間を斜めに通り抜けた。



36: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:15:39.29 ID:kEaifQ7a0

*―――*


(十)「クーさんは、亡くなられたのですか?」

( ´_ゝメ)「ああ。禁術の後遺症だ」

(十)「やはり……」

( ´_ゝメ)「それで、あんたとクーがどう関係しているんだ?」

(十)「ああ、厳密にいえば、彼女の祖母と私が関係しているんですよ」

( ´_ゝメ)「ペニサスさんが?」

(十)「ええ。あなたに『ペニサス』と名乗り、クーさんを預けた女性です」

 随分と含みのある言い方だと思った。
夜風にあおられながら、原子王の言葉を待った。

(十)「ペニサスさんは、私の魔法の……いや、人生の師匠なのです。
    まだ私が二十代の頃、剣の道を取るか、魔法使いの道を取るか、悩んでいました。
    そこに旅をしていた彼女と偶然出会い、私にこう助言してくれました。『つかえるもんは何でもつかっちまえ』と。
    感銘を受けた私は、彼女と共に世界を旅することを決めました。その道程で、彼女から様々なことを教わりました。
    ようやくいっぱしの魔法剣士になれた頃、私はかねてからの夢だった聖騎士団に入団したという訳です」



39: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:20:24.46 ID:kEaifQ7a0

( ´_ゝメ)「へえ……まさかあのおばあちゃんの弟子だったなんてな」

(十)「しかし、ペニサスさんは大の神官連嫌いでした。
   はっきりと言葉に出さなくとも、常日頃からの態度でそれがわかりました」

 クーの両親、つまりペニサスの娘と娘婿は神官連に関わって死んでいる。
そのことがあったからペニサスは神官連を嫌っているのだろうと考えたが、時系列的に考えると矛盾が出てくる。
ペニサスは娘たちの死より以前から、神官連を嫌っていたようだ。

(十)「なので、私が聖騎士団として神官連に入信したときから、彼女とは全く連絡を取っておりません。
    元気にしていましたか?」

( ´_ゝメ)「元気すぎるくらいだったよ」

(十)「でしょうね。彼女は生ける伝説ですから。三賢者というのはご存知でしょうか?」

 魔法使いの中で、三賢者と呼ばれる者がいるというのは知っていた。
ただし、とある街のバーで、飲んだくれが話しているのを盗み聞きしたことがあった、という程度だ。

( ´_ゝメ)「たしか……『鳴龍』、『是空』、『天女』だったか。酔っぱらいのよた話だと思っていたが」

(十)「是空とは鴨志田さんのことで、天女がペニサスさんのことです」

 原子王はまるで自分のことのように、誇らしげに語っていた。
エンジン王は彼のことを無口な方だと言っていたが、この様子を見る限りじゃそれは間違いとしか思えない。



42: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:24:49.73 ID:kEaifQ7a0

(十)「……こんなに喋ったのは久しぶりです。きっとあとで怒られるでしょうね」

( ´_ゝメ)「たまにはいいんじゃないのか。喋れるときに喋っておかないと、二度と伝えられなくなるかもしれない」

(十)「なるほど。道理ですね」

 ローブを翻し、原子王は俺に背を向けた。

(十)「話は以上です。今夜は無駄話に付き合ってくれてありがとうございました」

( ´_ゝメ)「いい暇つぶしになった」

(十)「では、おやすみなさい」

 部屋の中に進んでいくと、闇に溶けるように姿がぼやけていき、やがて彼は音も無く消え去った。
ドアも開けずにどうやって部屋から出ていったのか、詳しく訊きたいところだが、彼はもう来ないだろうと思えた。

 テラスに両腕を乗せて、またぼんやりと街を見下ろす。
眠気が起こるまでこうしていようと考えていたが、不意に呼び起こされた微かな記憶によって、途端に頭が覚醒した。

 明かりもつけずに部屋に飛び込んで、ベッドに立てかけたままにしているコテツを手に取った。
元々これを持っていた男の顔を思い出そうとしたが、数ヶ月前の淡い記憶では無理があった。

 顔の他に、たった一つ思い出せたことがある。
彼が死ぬ前に呟いた、彼の母親の名前、『ジャンヌ』。手がかりは、どうやらこれだけのようである。



43: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:27:38.72 ID:kEaifQ7a0

*―――*


 -二日目-

 翌日、昼食を部屋で取っているところに、ロマネスクがやってきた。
目の下の隈がいつも以上に大きいのは、徹夜したからだろうか。

( ФωФ)「業務連絡というか、なんというか、これからの予定を少し伝えに来た」

 歯切れの悪い言葉の裏に、相当な疲労を感じた。
神官連は闇鴉の神殿襲撃によって大きな痛手を被った。その波紋が大神官たちにも影響を与えているのだろう。

( ФωФ)「魔界突入の際、君の部下となる騎士を十人から十五人、魔法使いを二人、薬師を一人、通訳を一人、
        聖騎士団と神官連の中から選出する。人数はまだ決まっていないが、大体今言ったような感じだ」

( ´_ゝメ)「随分と大所帯だな」

( ФωФ)「魔界は恐ろしい場所だ。それに、魔族にはこちらの言語が通じない。よって街に寝泊まりするのは難しい。
        さらに我々を邪魔する意志を持ったやからもいるだろう。これだけの人数は必要なんだよ。
        詳しいことが決まったら、また連絡する。では失礼するよ」

 部屋を出ていこうとするロマネスクを引き止める。

( ´_ゝメ)「一つ頼みたいことがあるんだが」



44: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:31:37.81 ID:kEaifQ7a0

( ФωФ)「なにかな」

( ´_ゝメ)「ジャンヌという人間を捜してほしい。ヴィラデルフィアのどこかにいるはずだ。
      そしてできれば、俺が直接会いに行きたい」

( ФωФ)「女かい? 他に特徴は?」

( ´_ゝメ)「女だ。年齢はおそらく五十代か六十代。それ以外はわからない」

( ФωФ)「難しい注文だな。鴨志田くんに頼めば探せないことは無いだろうが……。
        少なくとも、君が一人で出歩くのはまずい」

( ´_ゝメ)「監視役ならいくらでもつけてもらって構わん」

 ロマネスクは少しの間考え込んでいたが、結局首を縦に振ることはしなかった。

( ФωФ)「私の独断で承諾できることではない。
       法王様も交えた会議が今日あるから、そこで訊いてみよう。ただし期待はしないでくれ」

 彼の言い方からすると、本当に期待しない方がいいらしい。
だがこのまま部屋の中だけで過ごしていたら、退屈で脳みそが腐りそうだ。
昔はむしろ、外にいるより中にいた方が安心したのだが、どうやら趣向が変わってしまったようだ。



46: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:32:51.60 ID:kEaifQ7a0

 正直なところ、ジャンヌに会ってなにがしたいのか、自分でもよくわからない。
ただ待つだけの時間が嫌で、無理矢理用事を思いついただけなのかもしれない。
偽善者という言葉さえ頭に浮かぶ。

( ФωФ)「では、私はこれで」

( ´_ゝメ)「待て、もう一つ」

( ФωФ)「さっき一つだけだと仰いませんでしたか?」

( ´_ゝメ)「忘れた。訊きたいことがある。この場で済ませられることだ」

( ФωФ)「何かな」

( ´_ゝメ)「闇鴉は何者だ?」

 ロマネスクの瞳が一層深い青色を帯びた。

( ФωФ)「教えられない人物です」

 声のトーンはそのままだったが、言葉に言いようの無い圧力がかけられていた。
俺がなにも言わないでいると、ロマネスクは背を見せて、



49: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:37:34.99 ID:kEaifQ7a0

( ФωФ)「少なくとも君に関係のある人物ではない」

 捨て台詞のような言葉を残し、部屋から出ていった。


*―――*


 -三日目-

 自分の中で、日に日に大きくなっているものがある。
正体はわからないし、いいものなのか、悪いものなのか、一つなのか複数なのか、
自分の敵なのか、味方なのか、なにもわからない。

 唯一わかったことといえば、それは予感や不安などではなく、
もっとはっきりとしたもので、人間のような高度な意志と熱情を持っているということだ。

 背中に黒い紋様が浮かび上がったときから、小さな違和感は感じていた。
時折、自分の思考に乱暴で無粋な何かが混ざるときがあった。
欲望に忠実で、誰にも従うことのない、狂気に満ちた乱暴者、とでもいえば近いだろうか。
レイジに侵されたときの自分と似ているが、例えるとすればもっと近い者がいた。

 彼女は闇鴉と呼ばれている。

    イル゚ -ナ从



52: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:44:43.94 ID:kEaifQ7a0

 まだ幼い少女の姿を成した、凝縮された悪意の極致だ。彼女が発しているは憎しみなんて生やさしい感情ではない。
一体なにが彼女をあそこまで駆り立てるのか、俺には想像もつかない。
闇よりも色濃い羽を持つ鳥は、その輪郭すら確かめさせてはくれない。


*―――*


 -四日目-

 ロマネスクの計らいにより、武器を携帯しないという条件で神殿内を散策できるようになった。
監禁状態から脱することができたのは幸いだが、もちろん監視の目があちらこちらに散らばっている。

 また外に出ることは出来ないし、立ち入りを禁じられている場所も多かった。
常駐している見張りの聖騎士団に、何度も注意を受けた。

 彼らの中に、俺への敵意を持つ者は少なくなかったが、意外と好意的に接してくれる者もいた。
神官たちもそうだ。どうやら俺への扱いというのが、まだ神官連の中で決まっていないようだ。
よく感じたのは敵意ではなく、どちらかといえば不信感や好奇心などが多かった。

 神官連とは一体どういう存在なのだろう。最近よく考える。
彼らは『人々がすこやかに暮らせる世界』を理想に掲げ、政治や慈善事業、宗教や街の警備など、
かなり多角化した活動を行い、主要都市の機能の大部分を担っている。



56: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:49:17.91 ID:kEaifQ7a0

 神官連が神に仕える者たちとされているのは、彼らの活動の中で精霊たちとの交信があるからだ。
元々彼らは、世界中に点在する精霊たちと人間との橋渡しをしていた集団だったらしい。
長い年月をかけて巨大な組織となり、全容がよくわからなくなっているが、神に仕える精霊を守護するというのは、
神官連のルーツにもなっている最も重要な仕事である。

 だからこそ闇鴉に対して躍起になっているのだ。
もし闇鴉が世界中の神殿を破壊し、精霊の存在をこの世から消し去ったとき、神官連はどうなるのだろう。

 この数日間の間、様々な神官に会い、話をした。
闇鴉に関する話が主だが、旅の話や毒にも薬にもならなそうな世間話などもあった。

 彼らに共通していたのは身なりや気品だけでなく、ある種の情熱もそうだった。
自分の仕事に対して全力を尽くしている、そんな感じだ。

 断言できるほどの材料など無いが、俺は神官連が悪とは思えなかった。
彼らは本当に理想の世界を信じ、目指しているように見えた。ロマネスクも例に漏れない。
確かに謎も秘密も多い組織だが、組織とはそういうものだと考えれば、納得できなくもない。

 だが、俺は同時に闇鴉も悪ではないのではないかと思っている。
彼女は自分の目的が『世界平和』であると俺に教えてくれた。
あれは、冗談や皮肉ではなく、本当に心の底からそう思っているのではないだろうか。
もちろんこれも断言できるものではなく、あくまで推測の話だ。

 闇鴉と神官連は完全に対立している状態にある。
目的が同じなのに敵対するということが、本当に成立するのだろうか。



59: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:52:03.38 ID:kEaifQ7a0

*―――*


 -五日目-

 相変わらずの生活にだんだん腹が立ってきた。
何度も死にかけながら、ようやくたどり着いた地でこの扱いというのは、流石に酷くないだろうか。

 ロマネスクは度々部屋を訪ねてきては、会議での経過を報告してきてくれる。
会議はかなり難航しているようで、法王への謁見すら目処が付かないようだ。

( ФωФ)「申し訳無いが、まだ待機で頼む。
       せめて街に出られる許可をもらえるように努力するよ」

 いつになったら自由になるんだ、と彼を責めるのはお門違いだろう。
少し痩けた頬を見ると、こちらの方が申し訳無くなってくる。


*―――*


 その日、いつものように神殿内を散策していた。
どこかで俺は、ツンと偶然出会えないか期待している所があった。
気の置けない友人となると、今では彼女しかいない。柄にも無く、少し弱気だった。



61: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 01:55:53.49 ID:kEaifQ7a0

|::━◎┥「よう」

 しかし出会えたのは、期待していたものと違い、個性的な兜を身につけた歯車王だった。
彼の落ち着き払った態度を見る限り、偶然の出会いではなさそうだった。

|::━◎┥「ようやくおまえと話せる許可が下りてな」

( ´_ゝメ)「神官連は随分と慎重だな」

|::━◎┥「権力と束縛は同時に付いてくるもんだ。これでも地位は高い方でな。
      実際、原子王とエンジン王はしっかり処罰を喰らってるからな。謹慎三十分だったか」

( ´_ゝメ)「何の用だよ」

|::━◎┥「修練室を貸し切ってある。どうだ、久々に剣を振るいたくないか?」

 話せる許可、と彼は言っていたが、おそらく会話をする気はあまり無いのだろう。
俺を試す気なのか、はたまたただの好奇心なのか、それともその両方か―――。
無言で頷くと、大柄な体躯を翻し、歯車王は大股で歩き始めた。


*―――*


 修練室は中庭を抜けた先の建物にあった。今まで立ち入り禁止だった場所だ。
この建物は大神殿とは別物の、騎士のために作られたものだそうだ。



65: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 02:00:06.86 ID:kEaifQ7a0

 柔軟性のある木造の建物の一室に入ると、渇いた汗の臭いが鼻腔をくすぐった。
床板の上に硬い砂が敷き詰められている。三十メートル四方の、想像していたよりは狭い部屋だ。
格子窓は密閉できないようになっていて、風通しがよく照明がなくとも昼間は十分に明るかった。

|::━◎┥「これを使え」

 壁に掛けてあった木剣を一本手に取り、俺に投げて渡してきた。
修練用のものにしては随分といい材質を使っている。

|::━◎┥「演武はできるかい?」

( ´_ゝメ)「わからない」

|::━◎┥「じゃあ俺が相手しよう。手は出さないから、自由にやってくれ」

 歯車王は腰に差している剣を鞘に入れたまま構えた。
かなり大ぶりな剣で、常人なら持つのが精一杯というくらいの重量がありそうだ。

 修練室の真ん中で、俺たちは向かい合った。
モンスターを相手にするときより緊張はしないが、久々に剣を構えたことで、気分は高揚していた。

 歯車王は柄と鞘の根元を持ち、防御の姿勢を取ったまま動かない。
一歩だけ踏み込む。まだ歯車王とは距離がある。彼はじっと俺の動向をうかがっていた。

 さらにもう一歩踏み込む。彼の武器と体格から考えた間合いの半歩外まで近づいた。
彼は微かに体全体を揺らし、兜の奥から鋭い視線を送ってきている。



68: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 02:03:44.38 ID:kEaifQ7a0

 凄まじい重圧だった。自然と呼吸が速く、浅くなる。空気が重く流れるのを感じた。
すり足を用いて虫が歩く速さで彼に迫る。視界が狭まり、歯車王しか見えなくなった。

 部屋の中の空気が凝縮され、今にも破裂しそうなほど張り詰めていた。
自分の間合いに足のつま先が達した瞬間、俺は力強く一歩踏み込んだ。

 構えた木刀を振り下ろしたとき、自分が死の渦に飛び込んでいく錯覚を覚えた。
歯車王の鞘に向かって飛んでいく木剣が、あまりにも遅く、鮮明に見えた。

 鞘に木剣が振れたと同時に、歯車王は横向きに回転を加えて木剣を弾いた。
ほぼ直角に曲がった木剣の軌道を直すことが出来ずに、体勢が崩れる。
慌てて構え直すと、歯車王は既に俺の方に向き直り、防御の構えのままじっと俺を見つめていた。

|::━◎┥「もう一度だ」

 冷たく芯のある声だ。
一度間合いから離れ、再び木剣を握り直した。


*―――*


 腕が痺れてきた頃、歯車王はようやく構えを解いた。張り詰めていた空気が緩まる。
気がつけば俺の息は乱れ、汗が全身を包んでいた。顔に張り付く前髪がうっとうしい。



69: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 02:06:16.33 ID:kEaifQ7a0

|::━◎┥「そろそろやめようか」

 彼の声に疲労は感じなかった。
最初に会ったときとなにも変わっていない。

( ;´_ゝメ)「どうだった?」

 彼はあさっての方向を向いて思案を巡らせていたようだったが、

|::━◎┥「なんというか、思ったより普通だった」

 大体予想通りの評価で、少し落胆した。
やや気を使った言い回しだったのも余計に落ち込む。


*―――*


 木剣を彼に返し、修練室を後にした。
外に出ると、緩やかな風が汗ばんだ体を拭い、まだ昂ぶっていた気持ちを落ち着かせた。
緊張から解き放たれ、体も疲れていたので、少しぼうっとしていた。

 隣を歩いていた歯車王が急に立ち止まった。
視界から消えた彼の姿を目で追おうとしたとき、何かが風を切る音が聞こえた。



72: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 02:09:07.93 ID:kEaifQ7a0

 体の全細胞が死と殺意を感じ取る。
視界が急激に広がり、自分に向かって飛んでくる刃と、驚愕の表情を浮かべる歯車王の姿が見えた。
歯車王の他に、もう一人誰かいる。

 尖りきった神経が、高速に伝達を始める。血の流れさえ聴き取ることができた。
宙に舞うほこりの一つ一つを数えることができた。空気の循環を肌で感じ分けることさえ、今の俺には可能だった。

 振り返る。斜めに振り下ろされた剣が、肩のすぐ上まで迫っていた。
指で剣身をつまみ、力任せに放り投げた。細身の剣は回転しながら、地面に向かって弧を描いて飛んでいった。
剣の刃先が地面に刺さる音を最後に、通常の感覚が戻ってくる。

 潜水したあと、急に水面に上昇したときのように息が乱れていた。
修練室でかいた汗とは別の種類の汗をじんわり感じる。

|::━◎┥「電気王! 今のはどういうことだ」

 声を荒げる歯車王に対して、男は仮面の下で冷たい瞳を覗かせていた。
俺を襲ったのは、同じ五番隊の電気王だった。

|::━◎┥「今の一撃は、冗談では済ませられないものだったぞ」

/▽▽「冗談で済ませられないのは、今の一撃を凌いだことだ」

 電気王は地面に刺さったままになっている剣を引き抜き、片手でくるりと回し、優雅に鞘に収めた。
その身のこなしは、騎士というより拳法家に近かった。



74: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 02:13:01.42 ID:kEaifQ7a0

/▽▽「本気でなかったにしろ、今の不意の攻撃を、指だけで防いだのはあまりにも異常だ。
    俺でも、歯車王でも出来ない芸当だぞ。これがレイジってやつか?」

( ;´_ゝメ)「……」

 五番隊は割と友好的な者ばかりだと思っていたために、かなり面食らった。
先ほどの一撃は、喰らったら死んでいたかもしれないものだ。
言葉が出ず、ただ彼の氷のような瞳を見返すことしか出来なかった。

|::━◎┥「おまえは厳罰だ。謹慎で済むと思うなよ」

/▽▽「戦線から離れて勘が鈍ったのか、歯車王。
    おまえといい、ロマネスク様といい、ことを甘く見ているのではないかと勘ぐってしまうほどだ。
    今は例え一%の疑惑だろうと危険分子は排除すべき。もう、そういう時期なんだよ。
    俺にはわからない。法王様がなにをお考えなのかも……」

|::━◎┥「電気王」

 歯車王から極大の殺意を感じた。
もしも自分に向けられているものであれば、どうなっていたことだろう。
左目が軋むように痛い。

 二人は数瞬の間睨み合っていたが、電気王の方が視線を外した。
まだ殺気の飛び交う中、彼は俺の方に向き直った。



77: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 02:16:27.18 ID:kEaifQ7a0

/▽▽「おまえの中に眠る鬼は、どんな顔をしているんだ?」

 自分に向けられた濁流のような殺気をものともせず、電気王は平然と歩き出していく。
歯車王は彼の背中を、険しい表情でいつまでも見つめていた。


*―――*


 -六日目-

瓜ミ ゚ I ゚)「あまりよくない状態だな」

 聖騎士団を引き連れて、ウサギのような顔をした魔法使いが部屋にやってきた。
俺の体に起こっている異変を確かめるために寄こされたらしい。
レイジとはまた別の、自分以外の意識のようなものがあると彼に告げたとき、途端に顔が曇った。

瓜ミ ゚ I ゚)「精神が分裂を起こしている可能性がある」

( ´_ゝメ)「そんなことが起こるのか……?」

瓜ミ ゚ I ゚)「多重人格という症状と似ているが、おまえの場合は少し違う。
      闇鴉に与えられた何らかの力によって、別の意志が生まれつつある、のかもしれない」



81: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 02:20:35.18 ID:kEaifQ7a0

( ;´_ゝメ)「すまん、もう少し分かりやすく」

瓜ミ ゚ I ゚)「おそらく精神汚染だ。健全な精神は健全な肉体に宿るって言うだろ。おまえの場合は逆。
      肉体に不可思議な力が寄与されたことで、精神にも変化が起こっているのかもしれない。
      もう一人の自分、という言い方はこの場合適当ではないな。
      自分であって自分でないもの、つまり変化した後の自分の意識が作られつつあるんだ」

( ´_ゝメ)「それは、やっぱりまずいよな」

瓜ミ ゚ I ゚)「まずいな。だが安心しろ。完全に意識を乗っ取られるようなことはまずあり得ない」

 年齢不詳の魔法使いは、自信ありげに口角を持ち上げた。

瓜ミ ゚ I ゚)「おまえの意志さえしっかりしていれば、制御は可能だ。
      そもそも、精神汚染の症状っていうのは幻聴に近い。少し耳障りなだけで、気にしなければ済む話だ」

( ´_ゝメ)「意志をしっかり持つことが大事か」

瓜ミ ゚ I ゚)「そうだ。まあ、おまえが受け入れてしまうとなると、よくわからなくなるかもな」

( ´_ゝメ)「前例があるのか? 意識を乗っ取られた、なんていう……」

 魔法使いは指で鼻を掻きながら、

瓜ミ ゚ I ゚)「おまえが前例になるかもね」

 軽い調子で言った。
周りの聖騎士団たちが、彼になにか言いたそうな顔をしているが、なにも言えないでいる。



83: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 02:24:35.16 ID:kEaifQ7a0

瓜ミ ゚ I ゚)「たぶん大丈夫だよ。まあその、症状がきついときは俺に言ってくれ。
      眠れないときとか。俺は治癒系が得意だから、力になれると思う。
      んじゃね。仕事があるもんで」

 聖騎士団たちをかき分けて、彼はさっさと部屋を出ていった。
彼の後を追いかけて慌てて騎士たちがついていく。
随分とマイペースな男だ。ていうか、名前を聞いていないんだが。

 騎士たちが全員部屋から出て、扉がゆっくりと閉まっていくときだった。
誰かが廊下を走ってくる気配がした。

 『おわ! どうしたの?』

 魔法使いの素っ頓狂な声が聞こえる。
閉まる寸前の扉に手をかけ、男が部屋になだれ込んできた。

 服装から神官だとわかる。
顔を見ると、何度か話をしたこともある、見知った者であった。

 「すみません、兄者様。その、あなたに会いにきたという方がおりまして」

( ´_ゝメ)「俺に?」



85: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 02:27:09.45 ID:kEaifQ7a0

 「とにかく騒ぎ立てているので、どうしたものかと。
  怪しい者ではありますが、危険性は無さそうだし……。
  ロマネスク様が会議中なので、とりあえずあなたにお知らせしました」

( ´_ゝメ)「それは変だな。この街に知り合いなんていないのですが」

 神官は困った表情を浮かべている。

 「ヒート様と名乗っている女性なのですが、ご存知ない?」

 ご存知あったので、逆に俺も困った。



86: ◆UhBgk6GRAs :2010/06/11(金) 02:27:56.66 ID:kEaifQ7a0


#パラサイト

終わり



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