(゚;;-゚)諦めないようです
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 01:13:55.23 ID:nBMd4t3/O
-
私の青春には、いつも彼がいた。
何時からか、彼と共にいることは無くなった。
正確に言ったら、私が彼と共に居るのを拒絶しただけ。彼が嫌いになったからじゃない、胸の内ではずっと恋心を育んでいた。
彼と一緒に居るのを拒絶する様になったのは、こんな顔になってから?
それとも、彼女と彼を応援しようと諦めてしまった時から?
それでも明日から、また彼と一緒の空間にいることが出来る。
でも彼の頭の中では、私なんてただの古き良き友人なんだろうけど………
(゚;;-゚)諦めないようです
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 01:17:20.48 ID:nBMd4t3/O
-
その日も、何時もと変わらずに晴れていた。
街の中の朝は始まったばかり、それでも街の中の活気が届いてる様に、店の中はとても混雑している。
この店で働き始めてから、人と接する機会がとても増えた。
朝から元気な声を張り上げ、店の常連の太陽になっているハインちゃん。
深夜帯で働いているのに、たまに陽が昇るまで店で飲んだくれているモララー君。
たった二人かもしれないけど、私の今の素顔を知っているのは彼等とブーンだけ。
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 01:21:01.24 ID:nBMd4t3/O
-
物思いに耽る事は好きだ、過去や今を総合して未来を――
从 ゚∀从「しぃさん、焼魚定食とカツ定食です」
(゚;;-゚)「………あ、はいはい、焼魚とカツね」
全ての注文を消化して、少し物思いに耽っているとまたすぐに新たな注文が入る。
前は何かを考える事も、話すこともない程に混雑していたけど、今はそうでもない。
やはり、店長不在は大きいのだろう。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 01:24:48.10 ID:nBMd4t3/O
今が旬である秋刀魚を、パチパチと音の鳴る七輪へと置き、三枚の少し薄いロースに溶き卵を馴染ませ、素早くパン粉をまぶして油の中へと入れる。
その間に、水に浸けてあるキャベツを二掴み取り出し、塩とレモン汁でしっかりと揉む。
それを、取り皿へと均等になるように一掴みずつ分ける。
焼魚定食にはたっぷりの大根おろし、その上に焼魚と良く合う醤油ベースのタレをかける。
カツ定食には林檎の甘味を含むサッパリとしたポテトサラダをのせる。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 01:28:17.96 ID:nBMd4t3/O
-
その作業が終わる頃、カツの片面はほんのり狐色だ。カツを油の中で一回転させるのも忘れない。
焼魚に関しては、少し時間が掛かる。まだ放っておいて大丈夫だろう。
从 ゚∀从「あ、七輪の炭が少なくなってるんで、追加しときますね」
(゚;;-゚)「ありがとう、魚に炭がつかないよう気をつけてね」
从 ^∀从「はいっ!」
ハインちゃんが気を利かせて七輪の炭を追加してくれている、何時も思うのだが何故彼女はあんなに明るい顔で笑えるのだろうか?
単に私が、笑うのを忘れてしまっただけかな?
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 01:33:16.29 ID:nBMd4t3/O
-
そんな物思いに耽る暇も与えず、カツはいつの間にか小麦色になっていた。
油からカツを上げる、これで完成ではない。更にこのカツに特製のタレを染み込ませる。
ベストはしゃぶしゃぶするくらいだ、タレが衣全体に染み込んだことを確認し、そのカツを油とゴマ油を半分ずつ敷いた、よく熱の通ったフライパンへとのせる。そして、タレの汁気が無くなれば完成だ。
それを先程の皿へと取り、少し湯気の出ている味噌汁と共にお盆に載せる。
そして釜からキラキラと光る美しいご飯を器へとよそり、お盆に乗っければカツ定食の完成だ。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 01:38:52.77 ID:nBMd4t3/O
-
(゚;;-゚)「ほら、ハインちゃん、カツ定食上がったよー」
从;゚∀从「えっ、速っ!!」
(゚;;-゚)「はは、手慣れてるからね」
从 ゚o从「ほぇー、やっぱ慣れですか……」
口元をぽっかりと開き、感嘆の声を漏らすハインちゃん。女の私が見ても可愛い。ちょっと悔しい。
(゚;;-゚)「もぅ、口開けてないでさっさと出す!!」
从;゚o从「は、はいっただいま」
若干挙動不審な点もあるけど、やっぱり可愛い。
若さかなぁ……といった思考も、やはり良い香りのする焼魚によって停止させられてしまう。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 01:43:17.77 ID:nBMd4t3/O
-
(゚;;-゚)「………よっと」
焼魚をひっくり返すと、案の定よく焼けていた。これならば後5分程度で出す事が出来るだろう。
空いた時間はフライパンを洗って、調理場を軽く片付け、ご飯と味噌汁をよそれば潰せると予想した。
長年の勘に基づいた予想は裏切らず、フライパンを洗い、味噌汁とご飯をお盆にのせ終わると焼魚は美味しそうに焼けていた。
(゚;;-゚)「ハインちゃん、焼魚上がったよ」
从 ゚∀从「はーい、ただいま」
そう言ってハインは、焼魚定食を客席へと持って行く。トテトテと走る姿は、やはり可愛い。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 01:49:22.22 ID:nBMd4t3/O
私なんかでは、敵わないだろう。顔だって酷くなってしまったし、歳も歳だ。肌に潤いが感じられない、それは元々だけど。
私は、彼女みたいに笑うことも出来なければ、明るく励ますことも、笑顔にしてあげることも出来ない。
―――――――――――――――――――
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 01:53:05.61 ID:nBMd4t3/O
从 ゚∀从「お疲れさまでーす」
(゚;;-゚)「ん、お疲れー」
今日も激務を終え、いつも通りのやり取りを終える。
ブーンが入院してから、本格イタリアンを作れる人がいなくなってしまったので、お昼のレストランは休業中だ。
私もイタリアンは習っていたけれど、それは全て定食に活かそうと思ってのこと。ブーンの様に修行もしていなければ、プロという訳でもないので、レストランを続ける自信が無かったのだ。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 01:57:52.78 ID:nBMd4t3/O
从 ゚∀从「……え、今日の賄いはカツ定食ですか?」
(゚;;-゚)「そうだよ、素材が余っちゃったからね」
从*^∀从「やったーっ!!
しぃさんのカツ定食、前から食べたかったんですよ」
(゚;;ー゚)「あら本当に?それは嬉しいな」
(゚;;ー゚)「だったら、冷めないうちに召し上がれ」
从*^〜从「もう食べてまふゅ」
その言葉に、顔を上げるとハインちゃんハムスターみたいに、ほっぺたを膨らませて食べていた。
とても美味しそうに食べてくれていて、私まで笑みが漏れてしまう程だ。
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 02:00:03.75 ID:nBMd4t3/O
-
あまりにも美味しそうに食べるハインちゃんを見ると、どうしても味の感想が聞きたくなってしまう。料理人の性と言うやつだ。
(゚;;-゚)「どう?味の感想は?」
そう言うとハインちゃんは、口の中の物を喉へ流し込みお冷やを飲んだ。
从 ゚∀从「外はサクサク、中はジューシー」
从 -∀从「そして絡めたソースが味を引き立てる」
从*^∀从「つまり……、とても美味しいですよ」
(゚;;ー゚)「そう、ならよかった」
料理人として、自分の料理を褒められるのはとても嬉しいことだ。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 02:04:19.27 ID:nBMd4t3/O
-
从*-∀从「ふぃー、ご馳走様でした」
(゚;;-゚)「お粗末様でした」
物の数分で綺麗にカツ定食を平らげたハインちゃん、とても女の子とは思えない。
まぁ目の前で、爪楊枝をくわえる様を見れば当然だろう。
しかし、そんな恰好も何故か可愛く思えるのだからずるい。
(゚;;-゚)「ハインちゃんてさ、何しても可愛いね」
从//∀从「え……き、きき急に何言ってるんですか」
(゚;;-゚)「いやいや、率直な感想だよ?」
(゚;;-゚)「爪楊枝くわええても可愛いなんてずるいよ?」
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 02:06:27.47 ID:nBMd4t3/O
从//∀从「そ、そんなことないですよぅ」
うーむ、やはり可愛い。私は彼女がブーンに好意を寄せているのを知っている、それは同時に私と恋敵と言うこと。
(゚;;-゚)「ところでさ、ハインちゃん」
从 ゚∀从「はい?」
(゚;;-゚)「ブーンのこと、どう思ってるの?」
返ってくる答えを、知っていながらも聞いた。
从 ゚∀从「……好きです」
真顔でハッキリと、そう言い放った。もちろん、予想していた答えだ。
(゚;;-゚)「具体的に言えば、どうしたい?」
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 02:08:53.73 ID:nBMd4t3/O
-
从 -∀从「ん〜」
腕を一つに組み、少し考えている。
(゚;;-゚)「私ね、思うんだけど」
(゚;;-゚)「特別なことは出来なくても良い」
(゚;;-゚)「それでもね、隣にいるだけで支えてあげたいの」
从 ゚∀从「え……あ、はい」
(゚;;-゚)「毎日毎日、朝早くから晩まで。激務をこなしてるブーンを支えたいの」
(゚;;-゚)「きっと女より仕事を優先する、それでも良いの」
(゚;;ー゚)「ブーンと………一緒にいれたら」
从 ∀从「…………」
ハッキリと言った、私の気持ちを、私以外の誰かに。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 02:12:03.96 ID:nBMd4t3/O
-
私はブーンを譲るなんて事は、もうしたくないから、ハッキリと宣言した。
そう、恋敵に。
(゚;;-゚)「そう言うことだから、覚えといてね」
ハインちゃんに何て思われようが関係無い、後悔は呆れる程している。
そろそろ私も、覚悟を決める時だと思っていたから。
私は言うだけ言って、そそくさと裏口に向けて歩きだす。
(゚;;-゚)「じゃ、お疲れさ―――
从 ゚∀从「僕は、ブーンさんの隣にいる以上に、ブーンさんを理解したいです」
从 ゚∀从「彼がどうなっても、傍にいたいです、この店を一緒に守りたいです」
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/10/27(月) 02:13:57.06 ID:nBMd4t3/O
-
从 ^∀从「私はブーンさんが、ブーンさんの宝物の………、この店が好きですから」
(゚;;ー゚)「ふふ、そう」
(゚;;ー゚)「じゃ、また明日」
从*^∀从「はいっ!!お疲れ様です」
店の外に出た。
太陽は嫌になる程、私を照らしてた。
明日、この店にブーンは帰って来る。
そして私は絶対に諦めない。あんなにも若く、可愛い子がライバルだろうと、私は諦めない。
無意識に顔に布を当てていた、顔を見られるのが嫌だからだ。
でも今日は、素顔のまま帰りたい。
そんな気分だった。
戻る