('A`)が青い花を追うようです

17: ◆sHNGWXTAUA :2008/10/26(日) 22:26:26.33 ID:SCe5evHE0
──……・・
─…・・


(´・ω・`)「これはひどいな……」

今度の現場は先ほどと違い、赤色に染まっていた。
被害者の左胸は、一点を中心に血の渦が広がっている。
銃で撃たれたということは、一目見て分かった。

(;'A`)「おぇ……」

(´・ω・`)「気分悪くなってる暇なんてねーぞ。調べんぞ」

一気に顔が青ざめたであろう俺の背中をたたき、ショボンさんは歩き出す。
その後ろにはシラネーヨ刑事がぴったりと着いていた。

( ´ー`) 「死亡推定時刻は午後2時30分。
      先ほどの斎藤議員の死亡推定時刻の3時間後ダーヨ」

シラネーヨ刑事が、ショボンさんに呟くのが聞こえた。
二人が歩き出した後、残された俺は、ただただ必死に吐き気を抑えるだけ。

(;'A`)(血が……)

血を見ていると、頭がくらくらしてくる。
その場に残るのが不可能と感じた俺は、ひとまず現場の外へと足を出した。



18: ◆sHNGWXTAUA :2008/10/26(日) 22:27:16.25 ID:SCe5evHE0



('A`)が青い花を追うようです



第二話『二つ目』



19: ◆sHNGWXTAUA :2008/10/26(日) 22:28:54.60 ID:SCe5evHE0
玄関の戸をくぐると、そこからは心地よい風が流れてきた。
先ほどの血なまぐさい匂いとは違い、清清しい草の香りがする。
泥に塗られた俺の気分は、多少回復したように思えた。

(;'A`)「助かった……」

どうも血のある現場は苦手だ。
いつまで経っても、この弱点は直りそうに無い。

('A`)(っても、直さない訳にはいかないよな)

ふぅ、と一息ついて、もう一度部屋に入る。
先ほどはしっかりと被害者を見ていなかった分、今度はそれを凝視する。
そこでようやく、この事件のキーワードとなる物を発見した。

('A`)「青色の花……」

血まみれになった体の上、それだけが綺麗に青色を保っている。
紛れもなく、斎藤またんき議員の遺体の上にあったものと同種だ。



20: ◆sHNGWXTAUA :2008/10/26(日) 22:30:55.33 ID:SCe5evHE0
('A`)「造花じゃ……ないな」

手袋をつけてその花を取る。
香りもまだしっかりと残っている、正真正銘の花だ。

360度回してみたり、花びらの中を覘いて見たりしたが、特に変わった点はない。
何か犯人に繋がるものはないだろうかと必死に思考を働かせるが、
これといった案は何も浮かばない。

そっと花を遺体の上に戻し、部屋を歩き始める。
さすが警察のトップ2の人間の家だ。
部屋には高級そうな物ばかりが並び、そのどれもが綺麗に磨かれている。

先ほどの部屋とは違い、部屋が荒らされた形式は無かった。

('A`)(ま、銃使ったんじゃ荒らすも糞もないわな)



21: ◆sHNGWXTAUA :2008/10/26(日) 22:32:19.42 ID:SCe5evHE0
('A`)(ん……?)

ふと、頭に一つの違和感を感じる。
今回犯人は、銃を使って副長官を殺害した。
その3時間前には、首を絞めて斎藤議員を。

何度考えても、おかしな事がある。

('A`)(何で一回目は銃を使わなかったんだ……?)

犯人は、約3時間の間に二人もの人間を殺害している。
銃を持っているならば、最初からそれを使用するはずだ。
途中から銃を手に入れたという話も、現実性にかけ離れている。

('A`)(銃が使えない……いや、使いたくない理由があるのか……?)

その理由とは一体なんだ?
しばらく考えてみるものの、それらしき答えは出てこない。

俺が見つけた事実と謎は、ただのそれ一つに終わった。



22: ◆sHNGWXTAUA :2008/10/26(日) 22:33:43.12 ID:SCe5evHE0
(´・ω・`)「ドクオ、そろそろ時間だ」

特に何か見付けられた訳ではない調査の終わりを告げられる。
俺はショボンさんに返事をして、その現場を出る。
ようやく血の匂いから開放され、俺は新鮮な外の空気を思いっきり吸った。

('A`)「ふぅー……」

(´・ω・`)「やけに真剣に考え込んでいたな。何か分かったか?」

('A`)「いや、別に、ちょっと気になっただけですよ」

(´・ω・`)「その"ちょっと"が解決への入り口だ」

ショボンさんが人の話を聞くときは、どんなときでも真剣だ。
昨日食べたご飯の話でも、それは変わらない。
事件に関することならば、たとえどんな些細な事でも真剣に聞いてくれるだろう。

('A`)「いや、犯人なんですけど……何で最初の事件では銃を使わなかったんでしょうね」



23: ◆sHNGWXTAUA :2008/10/26(日) 22:35:34.13 ID:SCe5evHE0
('A`)「二回目、つまりこの事件なんですけど。
    そん時には殺害の時に銃を使っている。
    犯人は銃を所持しているってことなのに、一回目の時は使ってないなんて……」

(´・ω・`)「なるほど。確かに"ちょっとした"疑問だな」

ショボンさんは小さくうなずくと、少し間を置いて、俺に問いを投げかけた。

(´・ω・`)「ドクオ、銃殺と絞殺の違いは何だ?」

('A`)「銃殺と絞殺……ですか?」

返事の変わりにうなずくショボンさん。
シラネーヨ刑事が車の準備が出来たことを告げるのを聞きながら、
俺はもう一度考えにふけり始めた。

('A`)(銃殺は一発でしとめれて……絞殺は時間がかかる……?)

他にも違いはたくさんある。
銃殺は馬鹿でかい音が鳴り、絞殺は無音で行える。
銃ならば近づく必要は無く、絞殺なら接近する必要がある。

( ´ー`) 「二人ともお疲れ様ダーヨ。
      一旦署に戻って書類を書いたら、解散してもらって結構ダーヨ」

署に戻るまでの車の中、疲れも忘れて、俺は頭をフル回転させる他無かった。



25: ◆sHNGWXTAUA :2008/10/26(日) 22:36:57.49 ID:SCe5evHE0
署に戻ってからは、必要な書類を作成し始めた。
現場の状態、考察、時刻。
記入する項目はさまざまであり、なおかつ二つの事件を一気に担当することもあり、
俺とショボンさんは二人がかりで書類に取り掛かった。

('A`)「ショボンさん」

(´・ω・`)「書類なら手伝わねーぞ。俺も忙しいんだ」

('A`)「いや、さっきの話なんですけど……」

ああ、と言って、ペンを机に置くショボンさん。
俺もペン先を止め、ショボンさんの顔を見た。

(´・ω・`)「犯人が一回目は銃を使わず、二回目は銃を使った理由か」

('A`)「はい。いろいろ考えたんですけど、どうしても答えは出なくて……」



27: ◆sHNGWXTAUA :2008/10/26(日) 22:38:56.96 ID:SCe5evHE0
(´・ω・`)「血だ」

はっきりと言い切るショボンさん。
俺は返事をしないまま、彼の顔を見続けていた。

(´・ω・`)「銃では血が出て、絞殺では血が出ない」

('A`)「そうですけど……犯人はどうして血を?」

(´・ω・`)「血が苦手なんじゃねーの?お前みたいに」

なるほど、と一瞬納得した後に、自分がおちょくられていることに気づく。

(;'A`)「ふざけないでください」

(´・ω・`)「お前もこんな簡単な事を聞くな」

そんな事を言われても、わからないことはわからないのだ。
困った表情の俺に、ショボンさんは答えを放つ。

(´・ω・`)「返り血だ」

(´・ω・`)「犯人は今回、約3時間の間に二人の人間を殺している。
      一回目の犯行の後、返り血を洗う暇なんて無かったんだ。
      だから、返り血を浴びる可能性のある銃は使えなかったんだよ」



29: ◆sHNGWXTAUA :2008/10/26(日) 22:41:39.54 ID:SCe5evHE0
('A`)「何故犯人はそんなに急いで殺人をしたんでしょうね」

(´・ω・`)「国会議員が殺されたとなれば、他のお偉いさんのガードは固くなるからな。
      事件が発覚する前にしとめたかったんだろう」

さすがショボンさんとしか言い様がない推理。
俺は頭の中のおもしが取れたように、すっきりと書類を進めることができた。



(´・ω・`)「そういえばドクオ」

書類作成も中盤に迫ったころ。
ショボンさんが唐突に俺の名前を呼んだ。

(´・ω・`)「あの青色の花、『リンドウ』だそうだ」

('A`)「聞いたことあるような無いような名前ですね」

(´・ω・`)「それでな……」



30: ◆sHNGWXTAUA :2008/10/26(日) 22:43:50.00 ID:SCe5evHE0
(´・ω・`)「……っと。よし、書類終わった」

がた、と音を立てて席を立つショボンさん。
俺の書類も、もう少しで終わりそうな頃だった。

(´・ω・`)「先に失礼させてもらうぞ」

('A`)「あ、お疲れ様でした」

ショボンさんがいなくなった署内には、ただの俺一人が残る。
寂しい署内、5分も立たないうちに、俺は書類の作成を終えた。

('A`)「俺も帰るかっと……」

自分のパソコンの電源を切る。
ふと、隣のパソコン──ショボンさんのパソコンの電源が入っていることに気づいた。

('A`)「消しとくか……いや、勝手に消しちゃ悪いか」



31: ◆sHNGWXTAUA :2008/10/26(日) 22:45:02.03 ID:SCe5evHE0
といいつつ、ふと画面を覗き込む。
画面には、一つのインターネットブラウザが開かれていた。
特に考えることもせずに、そのブラウザを、確認する。

('A`)「……!!」

('∀`)「ぷ……はははww」

そこに開かれていたのは、『花言葉』に関するウェブページ。
あの威厳高いショボンさんが、花言葉を調べていたらしい。
思わず俺は噴出してしまった。

(*'A`)「あのショボンさんが、花言葉かwww」

('∀`)「それで、なんの花言葉なんだ?」

青い花の写真と共に、そこには花の名前と花言葉が書いてあった。



リンドウ(竜胆)

花言葉:正義


第二話 終



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