( ^ω^)ストロベリーフィールズで逢いましょう

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:12:49.98 ID:g43m/WO00

退院した次の日。何食わぬ顔で俺は事務所へ向かった。
内藤さんがいて自分もいる。
そんな平常の日々がまた始まるのを期待して、義児がにこやかに挨拶をしたのが印象的だった。


(メ●ω●)「相変らずここの空気は汚い」


それが復帰してから開口一番の言葉だった。
暴力団の事務所などというのは、どこでも特有のけだるさと不潔さが感じられるが、
その日の俺にとっては、それは殊に嗅覚となって表れたのだった。
病院に長いこと居た性かもしれない。それか、無意識のうちに皮肉を込めていたのかもしれない。

長机を挟んだ先に、老体がしたり顔で待ち受けていた。

/ ,' 3 「久しぶりじゃの。内藤。傷は大丈夫なんか」

(メ●ω●)「ああ。おかげさまで塞がったよ。だが、別にあのまま死んでも悔いはなかった」

/ ,' 3 「お前のそういうニヒルなところが好きじゃ。して今日は何の用だ?
    お前に任せるような大きな仕事は勿論、怪我が治ってすぐ働かせるような忙しさも今のところないぞ」

/ ,' 3 「ところで…」


荒巻組長の言葉を遮り、自分と一般人を区別させていた鉄の塊を、組長の長机に置いた。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:18:28.32 ID:g43m/WO00
/ ,' 3 「……」

/ ,' 3 「ほう。なんだこれは。悪い冗談か?」

俺は乱暴に手をポケットに突っ込み、顎を突き出し、目線を上げて強く言い放った。
昼下がりの太陽が瞼を焦がした。


(メ●ω●)「組を辞めさせてもらう」


窓拭きの雑用をしていた義児の動きが、その刹那にぴたりと止まる。
荒巻は負けじと睨みを効かせて返答した。

/ ,' 3 「一度暗闇に与した者がそこから抜け出すのは、色々と面倒だというのは重々承知じゃろうな」


(メ●ω●)「うーん。あんまり?」

(メ●ω●)「指でも詰めますか」



俺は指の一本一本をぴんと伸ばした掌を、荒巻の眼前にこれ見よがしに広げた。
奴はそれにめがけて、苛立ちを込めた拳を放つ。ぱしん、といい音がした。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:22:04.63 ID:g43m/WO00
/ ,' 3 「お前はこの弱小組織の大事な存在だぞ」

/ ,' 3 「……」


老いた拳は次に机上で唸った。 衝撃で墨壷から液体が零れる。
俺は老いた荒巻の顔を依然睨みつける。皺が刻まれた表情には、血の管が幾つも浮き出ていた。


/ ,' 3 「喝!!!!!!!」

/ ,' 3 「ひよっこが!!!! 一度や二度の血生臭でおじげづいたか!? アァ!?」


うっとおしい激昂。義児が組長へと駆け寄る。そして弱弱しい目で俺を見た。
俺は、組長と義児の双方に言い聞かせるように口を開く。


(メ●ω●)「一度や二度じゃねえ」

(メ●ω●)「限界を感じたんだよ」



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:25:46.47 ID:g43m/WO00
/ ,' 3 「ど…… どこぞで落ちぶれていた貴様をここまで育てたのは… 何処の誰だと思ってんじゃ!!!」

爺の紅潮した老顔に逆らうように、冷たい笑みを俺は浮かべた。

(メ●ω●)「ああ。感謝してるよ。お・と・う・さ・ん」

(メ●ω●)「息子は旅立つ日が来たようだ!」


そして銃を再び持つ。銃口を荒巻の眉間に重ねた。
この重み、この一瞬、この冷徹さ。今日で、さよならだ。


/ ,' 3 「な!?」

(メ●ω●)「息子の旅立ちを祝ってくれないとは駄目な父親だ」

/ ,' 3 「き、貴様……」

(メ●ω●)「俺はお前がしてきたあらゆるえげつない事を知っている。
       黙って見送らせてくれないのなら、お前を撃ち殺したあとに、諸々の情報を持って警察に出頭しよう。
       するとどうだろう。義児や佐藤や村田…… 組員全員がねずみ講式にブタ箱行きでここは消滅だ。
       つまり自爆してやる ってことだな。あんた、そういうの、一番嫌がってるよな?」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:31:19.29 ID:g43m/WO00
荒巻は、面白いように紅潮から蒼白へと顔色を移した。
眉尻をすとんと下げ、非常に重たそうな腰をあげ、震えながら隅の金庫へ向かう。
背中を丸めてしゃがみ込み、あくせくとダイヤルを合わせる姿は、驚くほどに小さかった。


数分のち、分厚い封筒が目の前に置かれた。
俺はにやりと笑って銃口を下ろす。


/ ,' 3 「今までよく働いてくれたな…… 受け取れ。そして、二度と戻ってくるな」

(メ●ω●)「ありがとよパパ」

/ ,' 3 「黙れ!!!」



それ以上激昂すると、荒巻の老顔に浮き出た血の管は、途切れそうだった。
その醜い表情を隠すように、回転式座椅子を後ろ向きにして、背中は言った。


「これからどうする気だ。世間の風はてめぇが思ってるより冷たいぜ」

俺は朗らかに答える。



(メ●ω●)「行かなきゃいけないところが、あるのさ」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:34:40.02 ID:g43m/WO00
階段を降りたところで、義児が額に汗を垂らせてやって来た。
困った色を見せるその表情は、やはりまだ幼さを感じる。


(,,゚Д゚)「はぁ…… はぁ…… 内藤さん、どうしてですか!?」

(メ●ω●)「おう。義児か。他の連中によろしく頼む。あと、あのヒヒジジイの世話もな」

(,,゚Д゚)「そんな。 内藤さんがいなくなったらこの組は……」

(メ●ω●)「なくなっちまうってか? そのほうがいっそいいんじゃねーか?
       ヤクザなんぞ、いつの時代も世間の癌だしよ」

(,,゚Д゚)「……」

(,,゚Д゚)「また…… どこかで逢ったら相手してくれますか?」

(メ●ω●)「多分な」



そして俺は歩を進めた。 義児。あいつは、孤立主義の俺が付き従えてしまった唯一の舎弟だった。
屑は屑でもまだ救いようのある屑。
出来る事なら、あいつも組から抜けさせたかったが、まぁ、死なない程度に社会勉強をさせとくのも一案だ。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:38:53.88 ID:g43m/WO00
俺はポケットに手を突っ込んだ。
すると右側で、異質な感触と出会う。拳銃だ。
荒巻を脅したあと、いつもの癖で自分の許に置いてしまっていたのだった。

とはいえ小銭や菓子じゃないのだから、ポケットに突っ込んどくのはどうなのかと、面白く感じた。
銃口を掴み、義児へ差し出す。



(メ●ω●)「やるよ」

(,,゚Д゚)「あ…… これ……」


今度こそさらばだ。 (一人と一つの)相棒よ。


(メ●ω●)「餞別だ。まぁお前にドンパチはあと五年は早いけどな」

(,,゚Д゚)「ありがとうございます! 大事にするっす!」

(メ●ω●)「またな」



そう言って、停めた車の元へ向かった。 
あいつの視線を背中でいつまでも感じていた。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:42:16.76 ID:g43m/WO00
ξ゚听)ξ「用事は終わったんですか?」

(メ●ω●)「ああ。これから家に帰る」

ξ゚听)ξ「内藤さんのおうちって、ここからどれくらい離れているんですか?」

(メ●ω●)「うーん。20キロくらいかな」

ξ゚听)ξ「ふぅん……」




「なんか腹減ったな。お前、なんかつくれるか?」


  「ええ。任せてください! 料理のレシピとかは不思議なことに覚えているんですよね〜!」


「それじゃあまずはスーパー行くか。冷蔵庫ん中、多分空っぽだ」


  「はい!」


「つーかよ。敬語使わなくていいよ。堅苦しい」


  「はい! ……あ、すいません」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:44:01.98 ID:g43m/WO00
※ ※ ※


あれから数ヶ月が経っていた。日は短く夜は長い。街はすっかり冬の装いである。
ところで俺は何故こんな格好をしているのだろう。
ゴム手袋に割烹着。頭には三角巾。


ξ゚听)ξ「全然似合ってねぇ…… ウケる」

(メ●ω●)「これは一体なんのつもりだ」

ξ゚听)ξ「あんた、働かないんだから、家の掃除くらいしなさい!
     午前中はとりあえずトイレ掃除ね。昨日洗剤とか色々買ってきたの。はい」

(メ●ω●)「めんどくさいなあ……」

ξ#゚听)ξ「はい100えーーん!」

(メ●ω●)「はぁ?」

ξ゚听)ξ「昨日寝るとき決めたじゃん。
     ”めんどくさい” ”かったるい” ”やりたくない” って口にするごとに罰金百円って」


「そんなの覚えてねぇよ」と言いたいところだが、今の一言でおぼろげながら思い出してしまったのだった。
俺は洗剤を手に、しぶしぶ便所へ向かう。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:47:01.58 ID:g43m/WO00
便所から見える雲は、切れ切れだった。
太陽の光は柔らかく、正午近くの暖かな陽気を運んできてくれる。


ブラシで便器を擦る。
こんなことをしていると、どうしても組での下っ端時代を思い出してしまう。
俺が組に入ったころは、本当に小さな小さなグループで、さして変わらない苦しい暮らしを嘆いていたものだった。

あれは確か二十歳の頃だった。ドヤ街で燻っていた俺に一言をかけたのが荒巻だ。
それまでは何をしていたのだろう? 不思議なことに、何も思い出せない。
ただ分かるのは、いつの間にか刻まれていた頬の傷。

過去のことを思い出そうとすればするほど、その傷はズキズキと痛む。
まるで、「忘れろ、忘れろ、忘れてしまえ」と訴えているように。


ヤクザの世界に足を踏み入れれば、過去は不要になると思った。
傷の痛みに苦しまなくても済む。だから荒巻について行った。


しかし、今、俺が生に執着しようとする所以。
その「過去」に他ならない。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:49:42.52 ID:g43m/WO00
ξ゚听)ξ「終わったー?」

ξ゚听)ξ「って、どうしたの!? うずくまっちゃって」

(メ●ω●)「あ、ああ。 すまん。ちょっと腹が痛くなった」

ξ゚听)ξ「何もしないくせにご飯ばかりバクバク食べるから、体が怒ったんじゃない?
      もしも用足したら、もう一回洗い直すのよ。それじゃ私、美術館行ってくるね」

(メ●ω●)「ああ。昼飯は自分で作る」


「いや、昼までには帰ってくるから!」と言葉を残して、彼女は去った。
痛んだのは頬ではなく腹だと無意識に嘘をついた。
彼女も記憶を取り戻そうと必死だろうが、こっちはこんな障害があるだけ厄介だ。


太陽は、薄い雲に隠れてしまった。
少し冷たい風が、窓の隙間から入ってきた。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:51:48.04 ID:g43m/WO00
※ ※ ※


内藤が買ってくれたマフラーを巻いて歩いていた。
「競馬で勝ったから、なんとなく買ってきてやったんだよ」
なんて無愛想な台詞がついてきても、このマフラーが与えてくれる温みは大きかった。


美術館へ赴く理由は、部屋に飾ったあの絵だ。
あれが記憶を取り戻す手がかりになるのは、間違いない。
鞄の中には、絵の写真がある。これを学芸員に見せて詳細を教えてもらうという魂胆。


ξ--)ξ(でも、ね……)


しかし、その歩みはなぜか勇んでいなかった。
絵の詳細が明らかになったところで、記憶を完全に取り戻すとは限らず、逆に私を苦しめる存在になるかもしれない。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:52:43.41 ID:g43m/WO00
それに…… 内藤との生活に楽しさを見出せてきた最近は、
本当の自分を取り戻すことに、ほんのりと恐怖さえ覚えてきたのだった。


そんなことを思っているうち、美術館の前に着いていた。
足元で落ち葉は風に唆されて踊る。
そのうち、もっと強い風が吹いて、彼ら、何処かへ吹き飛ばされた。


※ ※ ※

美術館内は、平日といえども疎らに客は来ていた。
清潔な雰囲気の中に立ちこめる絵の具の匂いが、私の鼻腔をくすぐる。

「こんにちは。17世紀ヨーロッパ展はこちらで……」

ξ゚听)ξ「あの、展覧会を見に来たんじゃないんです。ちょっとお願いがあって」

「はい。なんでしょうか?」


私は鞄から一枚の写真を取り出した。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:53:37.39 ID:g43m/WO00
ξ゚听)ξ「誰の作品か分からないままに、偶然手に入れた油絵なんです」

「ああ、この絵を描いた画家をお知りになりたいのですね?」

ξ゚听)ξ「はい。すみません」

「無名画家なら残念でした。ですが、えーと…… こういうのに詳しい人がいるんです」


そう言って受付の男は、写真を手に奥へ引っ込んだ。
交代でもう一人の男がやって来る。彼はドアを開け、髭を擦りながらこちらへ近づいてきた。
まるで落書きみたいな顔だ。

(‘_L’)「どうも。学芸員の府院です」

ξ゚听)ξ「はじめまして。ところで絵は……」

(‘_L’)「多分、これではないかと」


そう言って府院は、脇に抱えていたファイリングを広げた。
四隅に印刷された絵画のうち、左上のを指差す。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:54:25.35 ID:g43m/WO00

ξ゚听)ξ「あっ……」


暖色を基調とした雰囲気。「カサブタ」を極力抑えた、油絵としては珍しい滑らかな筆の運び。
そして、絵の向こうの古い建物。 紛れも無く、部屋に飾られてあるものと同一だった。


ξ゚听)ξ「これです! 良かった! ちゃんと作品として登録されていたんだ!」

(‘_L’)「画家名は下に記されていますよ。どうぞ手にとってお確かめください」


ファイルを府院から受け取ると、予想以上の重さが腕に伝わった。
しかし、それを跳ね除けるかのように、印刷された絵の下にある文字をなぞる。

なぞり終わると、頭の中で、何か小さな爆発が起きた。


ξ )ξ「か、確認しました。お返しします」



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:55:19.29 ID:g43m/WO00
(‘_L’)「……”夕陽丘の孤児院” 画家名は、津出麗羅ですな」

(‘_L’)「最近寡作気味ですが、中々人気のある人ですよ」


私は顔を引き攣らせたように笑って答える。





ξ;゚听)ξ「そ、そうなんですかぁー。わ、私も津出っていう苗字なんですよ
      あはは。珍しい苗字ですよね〜………」





口座に残っていた資産の内容は把握できたものの、失くした記憶を引っ張り出すまでには至らず。
帰り道、私は自分の小さな白い掌を見つめた。 この掌から造り出された絵達が、あの日までの自分を生かしていたのか。
炊事洗濯しかこなせそうにないこのか細い指は、数ヶ月前までは絵筆を握っていたのだ。
ふと空を見上げてみる。 秋の寒空は、まるで自分の不透明な身分を投射しているようだった。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:56:29.91 ID:g43m/WO00
※ ※ ※


まだ16時だというのに、窓の外から橙の光が差し込んでいた。
石油ストーブがコトコトと情緒的に鳴り、麗羅はその周りを鉄網で囲んだ。
そして次に何をするかと思えば、テーブルをひっくり返し、隅に寄せたのだ。


(メ●ω●)「おい、何やってんだよ」

ξ゚听)ξ「コレよ。帰りに画材屋寄ってきたの」


麗羅は筆を握っていた。その絵筆に夕陽が射して、まるで後光のように見える。


(メ●ω●)「絵? そんなのより、腹減ったからメシ作ってくれよ」

ξ゚听)ξ「その前にどうしても描いてみたくて」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:57:36.77 ID:g43m/WO00
支度をしながら、麗羅は午前中の出来事を俺に説明した。
どうやら壁の絵画はやはり彼女が描いたものらしい。

しかし、自分は絵描きだったという情報を手にいれても、依然記憶は戻らず、
ならばこうして筆を取れば、おのずと以前の生活のことを思い出してくるのではないか。と考えたのだ。


油の匂いが鼻腔を突く。俺は小さなパイプ椅子に腰を下ろした。
彼女の記憶が戻るというのは、俺自身も真実に肉薄できて良いことなのだが……


(メ●ω●)「どうして俺なんだよ。そこらへんの花でも描けばいいじゃねぇか」

ξ゚听)ξ「あなたを描きたいの」

(メ●ω●)「だからなんで?」

ξ;゚听)ξ「それはその……」

ξ*゚听)ξ「ほらほら! だらーんとしてないで顔こっちに向けてよ!」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 01:59:27.67 ID:g43m/WO00

(メ●ω●)「かったるいなー。モデル代100円な?」

ξ゚听)ξ「かったるい って言った! 罰金100円! よってモデル代はチャラ!
     さて、始めるよ!」

(メ●ω●)「あ゛〜」


※ ※ ※


(メ●ω●)ゝ ぼりぼり

ξ#゚听)ξ「頭かかないで!」

(●ω● )「……」

ξ#゚听)ξ「余所見ダメっ!」

\(メ●ω●)/ 「ふぁー」

ξ#゚听)ξ「わざとおっきく欠伸すんなぁーー!!!」



窓の外はもう暗い。いつになったら飯が食べられるのだろうか。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 02:02:15.41 ID:g43m/WO00
(メ●ω●)「……」

(メ●ω●)ぎゅるる

(メ●ω●)「腹鳴っちまった」

ξ゚听)ξ「別にそれはいいわよ」

ξ;--)ξ「うーん」

(メ●ω●)「どうしたんだい画家先生よ」

ξ゚听)ξ「何かが足りないのよ! 何かが!」


我ながら一丁前に文句を言っていると感じた。無意識下に潜む画家の性格が表れてきたのだろう。 
それにしても、この人物画は決定的に違う。
足りないと口では言ったが、逆だ。 何かが足を引っ張っている。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 02:04:24.78 ID:g43m/WO00
私は内藤の顔をじっと見つめてみる。
無精髭、違う。 古傷の跡、違う。 唇の上の黒子、違う。 寝癖みたいな癖っ毛、違う。
ああ、そうか、分かった。


ξ゚听)ξ「サングラスとってよ」

(メ●ω●)「やだね」


あの大きくて真っ黒いサングラスのせいで、私は本当の彼を描き切れずにいる。
こうして改めて見てみれば、左耳から右耳に亘って彼の目周辺を覆うあの黒は、とても異質なものだ。


ξ゚听)ξ「なんで? 別にどんな顔だって笑いはしないわよ」

私は両目尻を引っ張る。

ξー凵[)ξ「こーんな目だってね」


(メ●ω●)「ふん」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 02:07:48.36 ID:g43m/WO00
ξ゚听)ξ「どうしても取らないの?」

(メ●ω●)「ああ」

そろりと立ち上がり、内藤に歩み寄る。

ξ゚听)ξ「なら…… 実力行使よ!」

「ぬあっ!」


もみくちゃになるのも覚悟したが、
最初の一手で、簡単にサングラスを取り外すことができた。腹が減って油断していたのだろうか?

ξ゚听)ξ「あっ……」



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 02:10:12.75 ID:g43m/WO00

(;^ω^)「……」



露になった彼の顔を見て、また私の中で爆発が起る。
しかもその規模は、昼間のそれと比にならない。
今までだらしなく解れていた背中を、ちくりちくりと記憶の糸が縫い合わせているような感覚も瞬時に覚えた。

そして、ふと一言を漏らす。



ξ;゚听)ξ「あなた…… いつでもにこにこの水平君?」

(メ^ω^)「!?」



        『あんたのニヤついた顔見てるとね、あたしゃその顔包丁で切り刻みたくなってくるんだよ!!!』


(; ω )「お、俺は……」

(;^ω^)「痛い! いてぇえええええ!!!!」

ξ;゚听)ξ「ど、どうしたの!?」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/11/29(土) 02:12:30.46 ID:g43m/WO00

がたり。大きな音が部屋に響いた。



内藤は頬を押さえて椅子から崩れ落ちた。
既に意識は混濁している。私は急いで救急車を呼ぶ。


記憶の糸が、少しずつ私の体を縫い合わせていくのが、ありありと分かる。
そして彼もきっと、心の中で忘れようとしていた過去の記憶と対峙しているのだ。今。







貴方が目覚めたら訊かなくちゃ。 

お嫁さんにしてもらうって約束したでしょ?

どうして貴方はみんなにさよならも言わないで、どこかへ行っちゃったの?



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