( ^ω^)嘘つきブーンとロボット三原則のようです

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:28:26.41 ID:X0R1SPzmO
第一話「崩壊エクステンション」


もし目覚めにランクを付けられるとしたらこの目覚めは最下位クラスだろう。

川 ゚ -゚)「何か最後に言い遺すことは?」

何故なら就業中の居眠りを社長に叩き起こされたのだから。

(;^ω^)「しゃ、社長。一つ質問が……」

川 ゚ -゚)「む、なんだ?冥土の土産に教えてやるぞ」

(;^ω^)「何故言い“遺す”なんでしょうか?普通は残すでは……」

川 ゚ -゚)「ふふ、それはな……」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:30:12.86 ID:X0R1SPzmO
嫌な予感が冷や汗となって背中を伝う。

川#゚∀゚)「それがお前の遺言になるからだーっ!!」

(;^ω^)「やっぱりか!!そして顔怖っ!!」

僕は椅子から飛び上がり必死で逃げ惑う。

その様はまるで猫から逃げる鼠のようで。

……または現実感剥き出しの鬼ごっこか。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:32:00.01 ID:X0R1SPzmO
o川*゚ー゚)o「まあまあ社長。そろそろ朝礼ですよ。」

川 ゚ -゚)「む、そうか。良し皆の者集まれ。」

キューさんの助け船によじ登りつつ、クー社長の元に歩む。

川 ゚ -゚)「良し全員集まったな。」

と言っても全六人ですけどね。

川 ゚ -゚)「じゃああれやるか。」

そう言って社長はコホンとわざとらしい咳をした。

川 ゚ -゚)「一つ、相手に気付かれる前に殺す。」

ΩΩΩ「一つ、相手に気付かれる前に殺す。」



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:34:00.44 ID:X0R1SPzmO
川 ゚ -゚)「二つ、相手を苦しませずに殺す」

ΩΩΩ「二つ、相手を苦しませずに殺す」

川 ゚ -゚)「三つ、昨日私のプリン食ったやつ殺す」

ΩΩΩ「三つ、プリン一つで済んだだけでも有り難いと思え」

川 ゚ -゚)「なん……だと……。じゃあ今日も一日頑張りましょう」

というわけで挨拶が遅れたけれど、皆さんようこそ株式会社殺し屋VIPへ。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:36:41.15 ID:X0R1SPzmO
24世紀前半、つまり約百年前から量産の始まった万能型ロボット。
それらの発展はすさまじく、あっという間に人間の仕事を奪っていった。

技術開発はもちろんのこと、経営やマーケティングまで……。

もっともスポーツ選手や芸術家などの専門職は、ロボットには行えない。
そういった職業以外の者達は、国家から支給される最低限、
とは言っても充分過ぎる保証された暮らしを営んでいる。

そしてロボットに出来ない仕事はもう一つある。

殺しだ。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:38:51.60 ID:X0R1SPzmO
全てのロボットはロボット三原則に縛られており、

一、人間に危害を加えてはならない
二、一に反するものを除き、人間の命令には従わなくてはならない
三、一と二に反するものを除き、自己を守らなければならない

この三つに忠実に従うように出来ている。
ロボットが感情を持ち権利を求める、などと言うのは
フィクション作家の飯のタネ以外の何ものでもないのだ。

つまり人間は、反乱を起こすことのない奴隷を手に入れたことになる。

めでたしめで……たし……?



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:41:46.34 ID:X0R1SPzmO
そうなると必然的に、僕らのような人間にしか出来ない『仕事』の需要は高まるわけで。

一般的、とまではいかないものの殺し屋という職業は高い知名度を誇っている。

もちろん他人の命を奪うことが法律上認められているはずは無いが、
治安維持隊から政治家等の殺害依頼が来たりするので……つまりはそういうこと。

まあもっとも、最近は生産工場からの煙等による環境被害などの点から、
ロボットの生産数は右肩下がりという話だけれども。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:43:35.69 ID:X0R1SPzmO
そんなことを窓から見える灰色の空を見ながら考えていた。

確かに今日は午後から雨の予報だけれどたも、
この空の色はそれが原因ではない。

先にも触れた工場からの煙が空を覆っているのだ。

それによってこの街では太陽を眩しいと感じることも、
夜に星を数えつつ、ロマンチシズムに浸ることも出来ない。

“光の無い街”

それがこのVIP町につけられた通称だった。

( ^ω^)「まあ希望の光も無い、という意味では合ってる知れないお……」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:45:36.06 ID:X0R1SPzmO
自嘲気味に呟きながら溜め息を一つ。
いつもより重たい溜め息だった。

lw´‐ _‐ノv「どうかしたんですか?」

( ^ω^)「……いや、シューには関係無い話だお」

背後からの声に振り向きもせずに応じる。
彼女は素直シュール。皆からはシューと呼ばれている。

彼女も殺し屋であり、ついでに言うなら僕のパートナーだ。

lw´‐ _‐ノv「そうですか。あと二時間で出動ですから準備の方よろしくです」

事務的に僕に告げるシュー。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:47:18.08 ID:X0R1SPzmO
整った目鼻立ちにすらっとした体躯。
美しい黒のロングヘアー、と彼女は同僚のひいき目無しでも美しい。

そんな彼女に浮いた話が無いのは、その性格によるところだろう。

クールというよりはサバサバ。
まるで猫のようにしなやかに他者を寄せ付けない。

もしも『彼女を動物に例えるなら?』と聞かれたら、
僕は迷わず『黒猫』と答えるだろう。

なるべく簡潔に説明するなら彼女はそういう人物だ。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:49:17.38 ID:X0R1SPzmO
lw´‐ _‐ノv「ああそうそう」

そんなことを考えつつ後ろ姿を見送っていたところ、
彼女が突如として立ち止まり、こちらに向き直った。

( ^ω^)「?」

lw´‐ _‐ノv「私はこんな町でも少しはあると思いますよ、希望」

はにかむように笑いながら彼女は言った。
そんな彼女を僕は直視出来ず、下を向いて赤面した。

僕の顔色付けたのは恥ずかしい独り言を聞かれたからか、
それとも彼女の予想外の笑顔によるものなのかは分からない。

ただこの色はあの灰色の空には映えるだろうな、と
そんな下らないことを僕は考えていた。

lw´‐ _‐ノv「米がおいしいですから。良い土壌してます」

(;^ω^)「…………」

前言撤回を節に願おうか。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:51:56.50 ID:X0R1SPzmO
川 ゚ -゚)「これが今日のターゲットだ」

シューとの会話の後、僕は彼女に頼まれた準備のために社長のデスクに向かった。

……社長のデスクの上には無数のプリンの空き容器が転がっていた。

(;^ω^)「…………」

川 ゚ -゚)「ん?ああこれか」

僕の視線に気付いたのか社長は目線を上げる。

川 ゚ -゚)「少し食べ過ぎたな。飽きたから今日はもう食べん」

(;^ω^)「………」

僕はあなたに呆れてます、とは口が裂けても言えなかった。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:53:54.35 ID:X0R1SPzmO
( ^ω^)「ふむ……中嶋バルケン 48歳、か……」

渡された資料の一枚目に記されたターゲットのプロフィールを小声で読み上げる。

(;^ω^)「家族構成は妻が一人、職業は……ええっ!?モララーロボット研究所副所長!?」

僕は人生最高と言っても良いくらいの大きなリアクションを取った。

川 ゚ -゚)「そうだ。大物だろう?」

どこか誇らしげに笑う社長。

(;^ω^)「い、いや……、モララー研究所って……」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:55:35.16 ID:X0R1SPzmO
川 ゚ -゚)「そうだ。ご存知、世界最大のシェアを誇るラウンジロボ社の研究所だ」

まあ元々はそっちが本業なんだがな、と社長は付け加える。

( ^ω^)「本業?」

川 ゚ -゚)「知らないのか?元々はモララーの祖父のショボンがロボットを受注生産していて……」

( ゚∀゚)「オリジナルのロボット販売のためにラウンジロボ社を創った」

川 ゚ -゚)「ジョルジュか……」

社長の言葉は、割り込みの形で美形の男性に引き継がれた。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/25(木) 23:57:39.39 ID:X0R1SPzmO
( ゚∀゚)「それが大体百年前……。その後の発展はご存知の通りだ。なあドクオ?」

('A`)「ンググ……、あ、そう……だね……ググ……」

話を振られた病的なまでに痩せた男性は、

(;゚∀゚)「お、おい何やってんだ?」

('A`)「あ、新しい自殺の仕方を考えてて……ウググ……」

自分で自分の首を絞めていた。

('A`)「あっ、ああ……思わず手を放してしまった……」

( ゚∀゚)「自分で自分を絞め殺せるわけないだろうが」

('∀`)「あ、それもそうか……フヒヒ……」

(;^ω^)「…………」

この情況にわずかながら慣れ始めている自分が恐ろしい。

この美形の男性と自殺未遂を繰り返す男性はジョルジュさんとドクオさん。
僕ら以外では唯一の実働部隊である。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:00:18.28 ID:k4EpO4gYO
(;^ω^)「そ、そんなことがあったなんて知りませんでしたお〜」

なんとか気を取り直して話を戻す。

川 ゚ -゚)「まあ何はともあれ大きな仕事だ。しっかり頼むぞ」

( ^ω^)「分かりましたお。それじゃあ詳しい指示を……」

川 ゚ -゚)「うむ。出動は正午ジャスト。場所は奴の自宅。約一時間程で到着する」

( ^ω^)「警備体制は?」

川 ゚ -゚)「ガードマンが複数だ。なので二時に行われる交代の時を狙う」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:02:30.98 ID:k4EpO4gYO
( ^ω^)「交代にかかる時間は?」

川 ゚ -゚)「10分だ」

( ^ω^)「充分ですお」

( ゚∀゚)「な〜にが充分ですお、だ。お前は後方支援だろうが」

言いながらジョルジュさんが僕の頭をはたく。

(;^ω^)「た、確かに実際に仕留めるのはシューだけどそれならジョルジュさんも……」

後方支援じゃないですかお、と続けようとした口は、
二度目の頭はたきによって止められた。

(#゚∀゚)「無駄口叩いてねぇでさっさと行ってこい!」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:04:37.39 ID:k4EpO4gYO
( ^ω^)「あ、もうそんな時間ですかお」

慌てて見た時計は十一時五十分少し前を指していた。

( ^ω^)「シュー、そろそろ行くお」

lw´‐ _‐ノv「…………」

(;^ω^)「シュー……?あっ、寝てやがるお!!」

常に目を閉じてるから気付かなかったぜジョニー。HAHAHA!!

(;^ω^)「シュー起きるお、出動だお〜」

lw´‐ _‐ノv「う〜んもう一俵だけ……」

(;^ω^)「そんなに米食ってたら日が暮れるお!!」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:06:36.31 ID:k4EpO4gYO
lw´‐ _‐ノv「あ……ブーンs、じゃないなコシヒカリか」

(;^ω^)「逆だお。というかコシヒカリって何だお」

lw´‐ _‐ノv「古米の一種です」

(;^ω^)「ああそう……」

なんか古米の意味とか色々突っ込みたいけど、なにはともあれ

( ^ω^)「そろそろ行って来ますお」

川 ゚ -゚)「ああしっかり頼むぞ」

( ゚∀゚)「まあせいぜい頑張れよ」

('A`)「あ、頑張って……」

o川*゚ー゚)o「お気をつけて」

キューさんいたのか。
あまりに真面目に働いてるから気付かなかった……



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:09:13.76 ID:k4EpO4gYO
いつも通りに挨拶をした後事務所の外に出て駐車場へ。

(;^ω^)「しっかしこれはなんとかならないものかお……」

振り返るとそこには建物と読んで良いのかも疑問なボロ小屋が一つ。
そして僕らが移動のために乗り込むのは……

(;^ω^)「軽自動車……」

昔の人たちの未来予想では車が空を飛んでいたらしいが……
ご先祖様に少し申し訳無い。

lw´‐ _‐ノv「まあ私たちが稼ぐしか無いですよ」

ごもっともなのでふて腐れ気味に車に乗る。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:11:13.36 ID:k4EpO4gYO
lw´‐ _‐ノv「しかしモララー研究所とは……」

シューがそう口を開いたのは、出発して十分ほど経った頃だった。

( ^ω^)「僕も驚いたお」

lw´‐ _‐ノv「少し変だとは思いませんか?」

( ^ω^)「変ってどこがだお?」

lw´‐ _‐ノv「確かにモララー研究所の規模的に考えても、妬み等は持たれても仕方無いでしょう」

lw´‐ _‐ノv「でもそれならば狙うのはモララー所長のはず」

lw´‐ _‐ノv「なのに副所長ということは……」

( ^ω^)「……シュー、その辺にしておくお。その先は僕らの関知すべきことじゃないお」

lw´‐ _‐ノv「……了解です」

それっきり車内は無音になった。
目的地に着くまでその静寂が破られることも無かった。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:14:15.52 ID:k4EpO4gYO
( ^ω^)「……ここら辺が丁度良いお」

僕が久方ぶりに喋ったのは、正門の見える位置に車を止める時だった。

lw´‐ _‐ノv「ここならあまり目立たないでしょうね」

( ^ω^)「まだ少し時間があるようだし、事前確認でもするお」

そう言って僕は鞄からメモ帳を取り出した。

( ^ω^)「突入は堂々正門から。タイミング的には警備の連中が退いてすぐだお」

毎度社長の考えた作戦には疑問が残るが、今まで失敗も無いので……でも正門て。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:16:52.37 ID:k4EpO4gYO
( ^ω^)「それからこれが家の間取り図だお」

lw´‐ _‐ノv「どうも、……かなり広いですね」

そう言って顔を上げたシューを追うように少し遠くを見る。

さすがにモララー研究所の副所長とあって、かなり良い家に住んでいるようだ。

( ^ω^)「僕なんかには確実に無理な生活だお……」

lw´‐ _‐ノv「甲斐性無し、という称号を汝に与えよう」

( ^ω^)「それは嫁さんが言うセリフだお」

lw´‐ _‐ノv「……それは求婚と捉えてよろしいですか」

( ^ω^)「どういう思考回路なんだお」

lw///ノv「こうさせたのはあんたなんだから!」

(;^ω^)「僕はお前のなんなんだお!」

そしてそれはツンデレかどうかも微妙だ。
とまあそんなこんなでしばらく経った頃



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:20:12.20 ID:k4EpO4gYO
lw´‐ _‐ノv「あ、ガードマンいなくなりましたよ」

シューが不意にそう言った。
僕も慌ててそれを確認する。

( ^ω^)「それじゃあ行ってらっしゃいだお」

lw´‐ _‐ノv「これ苦手なんですよね……」

頭にヘアバンドのようなものを巻きながら言う。

( ^ω^)「なら指示はいらないかお?」

なんて意地悪を言ってみたり。

lw´‐ _‐ノv「正直なくても……」

(;^ω^)「僕の存在価値は!?」

lw´‐ _‐ノv「冗談……ですよ?」

( ^ω^)「……何故聞く?」

こういうのはホントに勘弁してほしい。
今日も枕を濡らすことになりそうだ……



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:23:28.45 ID:k4EpO4gYO
lw´‐ _‐ノv「まあいっちょ頑張りますか」

車から降りながらシューが言う。

( ^ω^)「気をつけて、だお」

lw´‐ _‐ノv「はいはい稼いできますね」

まあそういう心配はいらないんだけどね。
だって彼女とてつもなく強いんですもの



…………
………
……




51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:26:05.56 ID:k4EpO4gYO
( ^ω^)「あー、派手にやってるおねー」

ヘアバンドに取り付けられたカメラからの映像を見ても、
そんな間の抜けた感想しか出てこない。

lw´‐ _‐ノv「はい、一丁上がり!はいもう一丁!」

彼女は不審者として自らを扱う警備ロボをテンポ良く行動不能にしていく。
そもそも他人に攻撃出来ないガードマンなど、ただの気休めなのだが。

また一体の警備ロボが、彼女によってジャンクへと姿を変えた。

稼動部へと正確にハンドガンの弾を打ち込む技術には、ただただ感心するばかりである。
それこそロボットのような精度を誇る弾丸は、あまりにも鋭い死に神の鎌のようで。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:29:17.17 ID:k4EpO4gYO
( ^ω^)「そこの右手の扉の中だお」

警備ロボを殲滅した彼女に僕が初めてまともな指示を送る。

lw´‐ _‐ノv「ラジャです」

ノイズ交じりにシューが返答した。
出来ればもう少し良質な通信機器が欲しいものだ。

lw´‐ _‐ノv「じゃ突入します」

僕が注意をする間も無くシューが扉を開く。
……後で説教してやろうと思う。

lw´‐ _‐ノv「はいどーもー」

(;,'3 )「だ、誰だ!?」

中にいたのはターゲット一人。
見た目は年相応と言った感じだ。

lw´‐ _‐ノv「私は殺し屋ですよー」



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:30:38.35 ID:k4EpO4gYO
シューが異常なまでに軽いのは置いておいて、
実際のところこの情況ならば確実に仕事は完了するだろう。

部屋の中にターゲット一人ならば、シューは間違いなく殺せる。

経験上こういう場合の相手の出方は大きく分けて二つある。
泣いて同情を誘う者、こちらに立ち向かう者。

( ,'3 )「殺し屋、か……なら最後に一つ良いかな」

lw´‐ _‐ノv「……手短になら」

( ,'3 )「依頼主に伝えておいてくれ。『あなたは間違っている。』と」



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:33:58.54 ID:k4EpO4gYO
しかしこの男の場合はそのどちらでも無いようだ。

lw´‐ _‐ノv「依頼主は誰か分からないので……」

( ,'3 )「……そうか、残念だ」

諦め、更には安堵のようなものがその表情には満ちている。

死を前にあそこまで落ちついている人を見たことは未だかつて無い。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:36:33.63 ID:k4EpO4gYO
lw´‐ _‐ノv「それでは……」

シューが銃を構える。

lw´‐ _‐ノv「あなたは今の状況を神のせいだと嘆きますか?」

lw´‐ _‐ノv「それとも来世について神に期待しますか?」

lw´‐ _‐ノv「もし神のイタズラで陥った不幸な状況でも、神に救いを求めるなら――」

シューがいつもの決まり口上を述べる。

( ,'3 )「……私に神を信じる権利など……」

lw´‐ _‐ノv「――あなたは馬鹿な幸せ者です。」


            パン


これ以上無いほどシンプルな音が響いた。

人の命を奪ったという事実に対してあまりに淡泊過ぎるその音は、
『人間』が一人しかいない部屋では木霊することも無かった。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:39:39.11 ID:k4EpO4gYO
( ^ω^)「お疲れ様だお」

余りにこの静けさがはかなく感じてしまって、声を出すのが躊躇われた。
この仕事の中でこの瞬間だけは本当に苦手だ。

lw´‐ _‐ノv「ふう……変わったターゲットでしたね」

( ^ω^)「……まあ僕らには関係無い話だお」

lw´‐ _‐ノv「……ですね。戻るんで移動よろしくです」

( ^ω^)「了解だお」

シューの頼み通り車を正門近くに寄せ、目印になるように外へ出て手を振る。

( ^ω^)「こっちだおー」

lw´‐ _‐ノv「あ、いたいた。そろそろガードマンが戻るので急ぎましょう」

( ^ω^)「了解だお。……ん?」



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/26(金) 00:41:56.73 ID:k4EpO4gYO
lw´‐ _‐ノv「どうしました?」

( ^ω^)「いやなんか足元に……」

そう言って足元の丸いカプセルのようなものを拾う。

lw´‐ _‐ノv「なんですかそれ」

ピンク色のそれは少し透けている気もする。
目を凝らすと何か中にあるような……?

( ^ω^)「まあ綺麗だから持って帰るお」

ロマンチストなんですね、とシューが笑った。
女々しいだけだよ、と僕は笑わなかった。
空は相変わらず灰色だった。


第一話 終わり



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