('A`)さえた1日のようです

34: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 22:54:33.92 ID:OGMEfzDcO
俺の名前は欝田独男。25歳。とある証券会社に勤める平凡なリーマン。
大きなミスもなく、かといって業績も高くなく、可もなく不可もない、毎日をこなす生活。
人生の中で楽しみあるかって?
 
ないよ。
 
趣味も特にない。あると言えばブラウザゲー、ネットで色々なサイト見て遊ぶ?ヲタじゃん。
 
スポーツは全般的に苦手。音楽とか芸術にも疎い。



35: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 22:56:14.46 ID:OGMEfzDcO
 
まして周りの友人のように彼女なんているわけない。
てか生まれてこのかたできたことない。
女運は最悪だよ。職場の女性からは 
 
('、`*川「悪い人じゃないけどさえないダメ男君」
 
みたいに見られて、なんか一線を引かれている。なんか子馬鹿にしたような態度で接してくる。
友達にたまに合コン開いてもらうことはあるけど、成果は全くなし。
上司からは
 
(・∀ ・)「欝田〜お前せめて玄人で捨てとけよ!」 
と言われて風俗店を勧められるも、それで捨てるのもなんかなと思い、ひたすら丁重にお断りしている。
なんか、こう、胸をワクワクさせることはないだろうか。



36: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 22:57:41.48 ID:OGMEfzDcO
 
―――――ある5月の晴れた日…。
 
春風が優しく吹き付け、太陽の日差しが優しく照らす。
俺はいつものように、満員電車に揺られ、ポマードべっとりのオヤジの頭を目の前に、嗅覚が麻痺しそうになり、隣にいるOL風の女性が、ブレーキかけた拍子に、慣性の法則に基づいてこちらに倒れ込まないかなと良からぬ妄想を立て、会社へ向かう。
会社に着き、タイムカードをいつものように押すと、



38: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 22:59:32.30 ID:OGMEfzDcO
 
ミセ*゚ー゚)リ「ちょっと欝田?」
 
後ろから声がした。同僚の女性だ。彼女は入社は俺より後なのだが、どんくさい俺よりも仕事ができるので、役職としてはタメなのだが、なんかナメられている。
 
ミセ*゚ー゚)リ「この前もらった書類、誤字とか多いんだけど。あたしの仕事増えるから勘弁してよね!」
 
('A`)「…はい。」



39: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:00:14.70 ID:OGMEfzDcO
 
いつもこうだ。俺に対する世の女達の見方は。ナメてるか、あからさまに他人行儀か。今まで普通に仲良く接してくれた人なんているわけない。
最近ではもうすっかり慣れてしまった。
そして、今日も平凡に仕事をこなす…
時計の針は5時を指した。今日は与えられた仕事は一通り終わったので残業もなく定時で帰れる。



40: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:01:56.62 ID:OGMEfzDcO
こういう日はパーッと飲みでも行きたい。
酒は入らなくとも、せめてどこか美味い料理のあるレストランに行きたい。
そう思いながら書類を鞄に入れて帰る準備をしていると、一人の男が声をかけてきた。
 
( ゚∀゚)「よおドクオ!お前今日暇か?」
 
彼の名はジョルジュ長岡。
俺と同期でこの会社に入り、同じ部署に配属。歳はタメ。飲み会などを通じて、この会社の中では一番仲のいい友人となった。
社交的で両性に好かれるタイプ。一見今時風の兄ちゃんという感じだが、俺のような男とも気が合う。顔も広く、よく合コンをセッティングしてもらう。でも結局彼がお持ち帰りなどいい思いをして、無論俺は収穫なし。
そんな彼をいつも羨ましく思っていた。



41: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:03:41.57 ID:OGMEfzDcO
('A`)「あ、うん、何もないよ。どうした?」
 
( ゚∀゚)「いやさ、ちょっと行ってみたいイタ飯屋があるからさ。一緒にどうかなって。」
 
('A`)「イタ飯かぁ。いいね。どこにあるの?」
 
( ゚∀゚)「駅から歩いてすぐらしいよ。ここのパスタは種類が豊富なんだとさ。」
 
(*゚ー゚)「へぇ〜。楽しみだな。」
 
長岡と会話をしていると、一人の女性が彼に近付いてきた。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/01(木) 23:09:22.43 ID:OGMEfzDcO
 
(*゚ー゚)「仕事終わったよ。そろそろ行こうよ。」 
女性は椎名という。最近この部署に移動になった二個上の先輩だ。セミロングの髪に、ほのかに香る香水の香り、決してすごい可愛いってわけじゃないけど、素朴で優しそうな人だ。
当然、会話なんて
 
「おはようございます」 
「お疲れ様でした」
 
くらいしかない。
 
('A`)「彼女も…来るの?」
 
と俺は尋ねた。
 
( ゚∀゚)「なんだ?来ちゃ悪いか?」
 
('A`)「あ…いやそんなわけじゃないけど…」
 
( ゚∀゚)「大丈夫だ。周りの女子社員よりかは優しいから。」
 
(*゚ー゚)「え〜。『よりかは』って何よ〜!」
 
椎名が苦笑いした。



44: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:13:56.72 ID:OGMEfzDcO
三人は会社を出た。
外に出ると、夕日がいい感じに差し込み、相も変わらず会社帰りの人やら学校が終わって遊び歩く学生やら、様々な人が入り乱れている。
そんな街中を俺達は歩いていた。
 
('A`)「ねえ…気になったんだけど…」
 
俺は長岡に尋ねた。
 
(;'A`)「二人ってもしかして…?」
 
俺が言いにくそうにしていると、長岡は何を言いたいのか察知し、その直後ニヤニヤしながらこう返した。
 
( ゚∀゚)「もしや付き合ってると思ったか?んなわけないよ!椎名さんにはちゃんと彼氏サンいるからね。
彼女とは普通に友達だよ。彼女からそのイタ飯屋のこと聞いて、行ってみようかって話になったんだよ。」
 
('A`)「…なるほど」



45: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:15:42.44 ID:OGMEfzDcO
しかし、友達とはいうけれど、女性と友達になれること自体俺はすごいと思うのだ。
女性から見向きもされない。会話も事務的なのしかできない。遊びに行くなんてましてない。
携帯の電話帳も9割りは男性。残り1割の女性は、合コンで番号を聞き出したはいいが「何故か」出てくれない女性。
そんなしょぼい男なのだ。
 
('A`)「まぁ、俺を加えて三人にすれば見た目的にいいもんね。二人きりよりはね。」
 
( ゚∀゚)「別にそういうつもりじゃないぜ。な?」 
長岡がそう椎名に振ると、
 
(*゚ー゚)「えっ…!」
 
彼女は慌てていた。その慌てる訳を今は理解できなかった。そうこうしているうちに、
 
(*゚ー゚)「あっ!あそこよ!」
 
車道を挟み反対側にある、木造のように見えるこじゃれた建物を指差し椎名が言った。俺達は期待を胸に横断歩道を渡り店に向かった。



49: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:23:13.32 ID:OGMEfzDcO
 
中に入ると、テーブルや椅子も木造のようで、アンティークな雰囲気が漂う。優雅なクラシックのBGMが流れる。
俺達は手頃な席を見つけ、メニューを見て個々食べたい料理を決め、注文した。
料理が出るまでの間、長岡と椎名は会話を楽しんだ。
 
( ゚∀゚)「椎名ちゃん、昨日の夜、あのお笑いのやつ、見てた?」
 
(*゚ー゚)「んとね、部屋掃除しながらチラチラとは見てたよ。なんか、ウケたよね!」
 
( ゚∀゚)「だよなwwwあのリアクションの痛々しいことwwwww」
 
(*゚ー゚)「多分、今年いっぱいじゃない?ああいうのって一気に売れて、どんどん落ちてくじゃない?」



51: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:28:10.47 ID:OGMEfzDcO
 
俺はひたすら黙って会話を聞いていた。
お笑いは嫌いではないから、ついていけない話題ではない。
しかし、女性が苦手な俺は、女性がいるというだけで会話に入っていけなかった。
これが男性対男性の会話なら入っていけなくもないが。
しかし、不意に椎名が俺に視線を向けた。
 
(*゚ー゚)「欝田君はお笑い好きじゃない?」
 
俺は驚いた。久しぶりに女性に普通に声をかけられた。性格どぎつい同僚の女性に罵声を浴びせられることに慣れていた俺には新鮮な感覚だった。普通の人は何も感じないのだろうが。
 
(;'∀`)「え…あ…いや……見るよ…、一応ね。うん。見るよ!」



53: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:31:43.50 ID:OGMEfzDcO
俺はテンパってしまった。その様子を見て椎名はクスクス笑っていた。
長岡は呆れ顔で言った。 
( ゚∀゚)「お前な〜。椎名ちゃん、こいつこういう奴なんだよ。」
 
(*゚ー゚)「うん。こんな人だろうと思ってたよ☆でも嫌いじゃないよ。」
 
(;'A`)(は?!)
 
 
(*゚ー゚)『嫌いじゃないよ』
 
って…そんな言葉言われたことない。周りの女性達はあからさまに俺を嫌っているのに。
いや、単に気を使っているのでは。色々考えてしまう。
 
( ゚∀゚)「お前も会話しろよ。ほら!」
長岡に促され、必死に彼女に向けた話題を頭をフル回転させて絞り出す。 
(;'A`)「…この部署には慣れました?」
 
俺の精一杯だ。まずは仕事関連の無難な話題が出た。



56: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:37:27.95 ID:OGMEfzDcO
 
(*゚ー゚)「周りの人達がとても協力的だったからすぐ慣れたよ。
私ね、本当はすごい人見知りで、最初はすごい不安だった。
まともに人と喋れなかったよ。というよりは周りの人達がどういう人なのか、自分と馬の合う人は誰なのか見極めてたね。」
 
椎名は快く答えてくれた。俺は更にきいた。
 
('A`)「じゃあ…長岡とは馬が合うと思ったんだ?」



57: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:38:55.09 ID:OGMEfzDcO
 
(*゚ー゚)「そうだね。一見チャラ男っぽいとこあるけど、
意外にしっかりしてて、私が困ってるときに手を貸してくれたりしてね。好感持てたね。」
 
やっぱり。見た目もダサくてどんくさい。仕事もできる方ではない。そんな俺とは大違いだ。しかし、次の言葉に耳を疑った。
 
(*゚ー゚)「でもね、私は欝田君は…気が合うかはまだあまりお話してないからわからないけど、
すごく優しくてひたむきに頑張っているなって思うよ。
私そういう人いいと思うな。」
 
いや、なんかの冗談だろ、と思って聞いていた。



58: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:40:07.07 ID:OGMEfzDcO
 
(*゚ー゚)「あのとき覚えてる?私が仕事中体調崩したときに、
医務室まで私に付き添ってくれて、その後私の仕事代わりにやってくれて。優しいなって思ったんだ。」
 
そういえば過去に一回そういうことがあった。4月頭だったか。
季節の変わり目で風邪とかで体調を崩しやすい時期だった。
俺が社内の廊下を歩いていると、反対側から歩いてきた彼女が急にふらついた。寒気と頭痛を訴えた。
周りに人がいなかったので当然俺が連れていった。



59: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:41:35.12 ID:OGMEfzDcO
 
そして彼女が課せられていた業務をなんか成り行きで俺がやる羽目になって、
でも慣れない内容の業務だったので失敗しまくり。
上司や女子社員からボロクソに言われ、当時はすごく凹んでいた。
それ以来そのときのことは考えないようにしていた。
むしろなんであのとき助けちまったんだと、ちょっと後悔していた。
 
 
しかし、彼女にこうして喜んでもらえると、やって良かったのかなと前向きに捉えられる。



60: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:43:54.30 ID:OGMEfzDcO
 
( ゚∀゚)「椎名ちゃんね、ドクオと話してみたかったんだってよ!」
 
長岡は冷やかすように言った。
 
('A`)「はぁ?!」
 
俺は理解できなかった。この俺と話したいなんてなんて物好きなんだと思った。
しかし、椎名は意外にもこんなことを口にした。 
(*゚ー゚)「欝田君はいつも色々言われてるけど、悪い人ではもちろんないし、
周りの人達が言うほどの人じゃないよ。自信持っていいと思うよ。」
 
自分にここまで暖かい言葉をかけてくれる女性が、25年間の人生の中であっただろうか!
そうこうしているうちに、料理が来た。
色鮮やかな料理に舌鼓を打ちながら会話に花を咲かせた。いつのまにやら俺は彼女に馴染み、自然と話せていた。



61: ('A`)さえた1日のようです :2009/01/01(木) 23:51:32.77 ID:OGMEfzDcO
 
予想以上の美味しかった料理に満面の笑みを浮かべ店を後にした。
 
( ゚∀゚)「こんなに美味しいとは思わなかった。ありがとね。」
 
長岡が椎名に言った。
 
(*゚ー゚)「ううん、こちらこそ。三人で話できて良かったよ。またこうしてお食事とか行こうよ!」 
と椎名は言った。
俺は今までにない充実感があった。ここまで俺を受け入れてくれる人がいたとは!
この子ならいい友達になれるだろう。そう確信しながら、帰宅のため駅へと足を運んだ。
 
第一話 出会い
 
終わり



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