l从・∀・ノ!リ人 夜は短し歩けよ妹者のようです

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/26(月) 00:12:36.36 ID:1Em3/Jcd0
  

ζ(゚ー゚*ζ


 読者初見の皆様方こんばんは、はじめまして。

 私の名はデレといいます。
 別名、悩めるおっぱい大きくなりたいガールと申すものです。

 私をみて読者諸賢の皆様は「なにを悩む事がある、君は十二分に可愛いじゃあないか」

 と、仰られるかもしれません、ええ、そうです、なにを隠そう私はかわいいのです。


 くるくると、緩めにかけられた私を彩るパーマ・ネント。
 整った顔立ち、大きく、潤んだ瞳。深紅の大輪が咲いたように艶かしい、唇。
 人形のような静香な雰囲気を纏っている美少女オーラ。


 そんな可愛いらしく完璧に近い私にも、
 はあ、と溜息をつきたくなる悩み事が2つございます。


 一つはそう、何を隠そう私は貧乳なのです。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/26(月) 00:24:24.91 ID:1Em3/Jcd0

ε=ζ(´д`*ζ



 今日もその事に頭を悩ませながら、私はグラスを拭きながら
 奥ゆかしい自身のお胸に手を当てて、溜息を吐きます。


 同じ、年頃の乙女であるならそこには、ささやかながら女性を主張する柔らかなお胸があるはずです。
 ですが、私のそこにあるのは隆起なき、ペタンとヘコむ私のお胸。

 揉めば大きくなると聞き、ここぞとばかりで自分で揉んでみたりもしましたが

 自分で自分のお胸を揉むのは、とても寂しいことです。

 揉んでくれる殿方がいない辛さと、あまりに頼りないゆふゆふとした感覚に耐え切れなくなり
 より哀しさに苛まれ、己の不甲斐なさに張り裂けそうになるのです。


 殿方は皆、頭の中におっぱいを溢れさせていると聞きます。
 大きいお乳に挟まれ暮す妄想を、みんなしているのでしょう。

 このままでは、私はそんなおっぱい大好き殿方から相手をされない
 かわいいだけが取り得の貧乳美少女になってしまうのではないでしょうか。


 「はあ」とまた一つ溜息が紫煙立ち込める赤猫バーに溶け込みゆきました。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/26(月) 00:54:23.23 ID:1Em3/Jcd0
 

 赤猫バーというはVIP市駅の近くの路地裏をくねにくねった先にある
 今、私が勤めている怪しげで小さなヘンテコ居酒屋です。

 所々にニンマリと艶のある笑みを浮かべた小さく赤い招き猫が並べられており、
 店内は常に、怪しげな客とぷうんと甘いお香の匂いで立ち込めている
 雑然とした、ナントモ言えない怪しい雰囲気を醸し出しているのです。


 私はというと、この赤猫バーで今日も溜息をつきながらも
 チャイナドレスに身を包みせっせと働いていたのでした。


 怪しげな店内の雰囲気に、怪しげな客層
 メニューも「ハムスター丼」や「偽電気ブラン」と言ったよくわからないものばかり。
 制服も、何故かチャイナドレスだし。


 戸惑いながらもここで働いているのは
 「バーの店員ってなんだかオトナ、働けばお胸もオトナになるやも!」
 と言った希望的観測によるものなのですが、肝心のお胸は一向に大きくなる気配を感じません。


ε=ζ(´д`*ζ 。o(ほんと変な店だよなー)


 本日何度目かわからない溜息を手元の招き猫に吹きかけながら
 私は転職について、濛々と頭を悩ますのでした。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/26(月) 01:16:24.59 ID:1Em3/Jcd0
  

「カランカラーン」


 溜息をつきについていると、入店を知らせる鐘が鳴りました。


ζ(゚ー゚*ζ「あっいらっしゃー…」


 私は面を擡げ、接客しようとお客さんの方を向きました
 が、そこにいたのは


ζ(゚д゚;ζ「げ」


( ゚∀゚)「よう」


 私のもう一つの悩みの種、この赤猫バーの店長である
 私の天敵ジョルジュさんだったのです。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/26(月) 01:25:38.42 ID:1Em3/Jcd0


 この温厚な私が「ううむ」と悩むくらいですから

 このジョルジュ店長というのがかなりの厄介者であることは、
 読者諸賢の皆様なら察するに余る事かと存じます。


 何故こんな赤く怪しい招き猫が並べられてるの?と聞けば

「赤が好きなんだよ、あと猫も好きだ、かわいいじゃねえか
 じゃあもう招き猫を飾るしかねーじゃねえかよ、赤い招き猫をよ」

 と、訳のわからない屁理屈をこね。


「昨日香港映画で見たチャイナドレスの女が
 かわいかったから明日から制服チャイナドレスな」

 と、同じく訳のわからない理由で制服にチャイナドレスを強要し


「お前は貧乳だから時給ダウンな、あれだ、乳には夢がつまってんだよ
 だけどお前は貧乳じゃねえか、夢がねえ、現代日本と同じだよ、つまんねー女だ」


 と、いらだち訳のわからない理由で時給を下げてくるどうしようもないお人なのです。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/26(月) 01:33:17.52 ID:1Em3/Jcd0
   
 
ζ(´д`;ζ。o(ええーなんでくるかなー店長)



 店長は露骨に嫌がる私を尻目にズカズカと店内に入ってまいりました。
 よくよく見るとひよこ豆のような小さな女の子がサンタの衣装に身を包み 
 とてとてと店長の後についてきてるじゃありませんか。



ζ(゚o゚*ζ「…………」


 私はしげしげと、見るからに怪しそうな店長と、
 ビオレの泡から生まれてきたような、無垢な少女を見比べ、一寸置いて叫びました。


ζ(´д`;ζ「ゆ、誘拐したんですかあああ!?」



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/26(月) 01:47:00.33 ID:1Em3/Jcd0

 「は?ちげーよ」という言葉を吐く店長を押しのけ、私は女の子に近寄り、声をかけました。 

ζ(゚ー゚;ζ「だめじゃないですか、メロンパンのような怪しい人についてきちゃ
       誘拐されたのですか?」

l从・∀・ノ!リ人「のじゃ?メロンパン?
        メロンパンなら美味しそうで良きかな、なのじゃー」

ζ(゚ー゚;ζ「違いますよ、メロンパンというのは地上最高の詐欺師なのです
      フランク・ウィリアム・アバグネイル、畑隆なんかより、もっともっと」


ζ(゚ー゚*ζ「果物の王メロンの名を冠しておきながら
       その実メロンパンにはメロンの果肉やなど、一片も入っていないのです
 
       姿かたちもまったくメロンには似ててなどいないし。
       緑でもないし、ヘタもないし、大きさも、全然違います

       申し訳程度に、「似せてみましたよ!ホラ!」
       と、言わんばかりに、表皮に網目のようなものが、確認されるばかり
 
       どこが‘メロン’パンというのでしょうか。
   
       この人心の期待に対する裏切り!
       子供に人気のパンとしてあるまじき不誠実!詐欺師に相応しいのです」


ζ(゚ー゚*ζ「そのくせ妙に美味しいから余計腹が立つ、名前がメロンパンでなければ素直に賞賛できるのに
       悔しい、人の心を逆撫でて撫でて、撫で付ける、そんなメロンパンのような男なのですよ、この人は」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/26(月) 01:58:15.61 ID:1Em3/Jcd0
    

( ゚∀゚)「いいじゃねーかよ、美味しいなら」


 そういうと店長は女の子をカウンター席に座らせました。
 女の子は赤いサンタ服を翻しながらカウンター席に飾ってある招き赤猫に夢中になってました。
 

ζ(゚ー゚;ζ「なんのつもりですか店長!
       こんな小さい女の子誘拐してきてサンタごっこだなんて……」


( ゚∀゚)「サンタごっこじゃねーよ、泥棒だよ泥棒
     クリスマスにさ、サンタの格好したちっさい女の子が泥棒するってなんか面白そうじゃねーか」

ζ(゚д゚;ζ「面白そうって」


ζ(゚ー゚;ζ「貴女はそれでいいの?」


l从・∀・ノ!リ人「のじゃー、初めは嫌だったけど
        ジョルジュさんの話を聞いていたら妹者も楽しそうだと思い始めたのじゃー」

ζ(゚ー゚;ζ。o(うまく丸め込みましたねジョルジュさん...)



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/26(月) 02:16:16.99 ID:1Em3/Jcd0

( ゚∀゚)「年に一度のクリスマスだしいいじゃねーか、いいんだよ
    それでよ、お前なにか盗みたいものはあるか?
    せっかくなんだからつまんねーもんはいうなよ」

l从・∀・ノ!リ人「うーん、そうじゃなー
        じゃあ‘恋’を盗みたいのじゃー、
        元々恋をするために夜の街にでてみたのだけど、どうしていいかわかんなくて」

( ゚∀゚)「‘恋’とは洒落てるじゃねーか、面白そうだ 
     そうだな、今日はクリスマスだ、カップルどもがうようよいるだろうよ
     そいつらからかたっぱしから‘恋’でもぬすんでみようじゃねーか」

l从*・∀・ノ!リ人「のじゃー!」


( ゚∀゚)「よし、お前もいくぞデレ、店長命令だ」

ζ(゚ー゚;ζ「ええっ!?なんで!私もですか?」

( ゚∀゚)「ものはついでだ、それにほら
    そのペタンコな胸もなんか膨らむかもしんねーじゃねーか」

ζ(;ー;ζ「いやあああ」


 こうして悩み多き私もまた
 クリスマスの夜に、‘恋’を盗む大層な計画に組み込まれてしまったのでした。

 この一連の事件で、私のお胸が膨らむ事になるのですが、それはまた後の話。



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