('A`)が狭間で生きるようです
- 2: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:11:39.56 ID:DZtCOemQ0
- 第十三話「争いの種、友人の慈しみ」
また、争いだ。
ロマネスクと呼ばれた男、その両脇の男達。
そのどれもが気に食わない、腹が立つ。
貴様等の理想を俺に押し付けるな。
俺の周りの世界を壊そうとするな。
空っぽだと思っていた自分の心に火が点く。
影法師、今だけはお前の力を弱めないでくれよ。
( #ФωФ)「炎の守り人!!!」
ロマネスクがソードを出した。
炎の盾、炎の剣、炎の鎧と兜を纏った大男。
それがお前のソードか。
初対面だけれども納得だよ、その熱そうなソード。
でもな、そいつは人を傷つけるんだ。
俺と同じにな。
- 5: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:13:23.28 ID:DZtCOemQ0
( #ФωФ)「燃えて焼け死ね!! 火炎斬!!」
ロマネスクがそう言った瞬間、炎の守り人は剣を振り下ろした。
振り下ろされた剣からは炎が溢れ、一直線に俺を切り裂こうとする。
それで一体、幾人の命を奪った。
貴様はそうやって躊躇いも無しに剣を振り下ろせるようになるまで幾人の命を奪ったんだ。
(#'A`)「消し去れ、影法師!!」
影法師の刀から、溢れる闇を自分の前に盾のように置く。
その闇に触れた瞬間に、炎はその姿を消す。
だけど、今まで一番強いソードだ。
消し去った余波が場に当り散らし、図書館の棚が何個か崩れる。
( #ФωФ)「ぬう!小癪な!!」
驚くでも隙を見せるわけでもなく、ただただ怒りを見せるロマネスク。
奇遇だよ、俺もお前には怒っている!
お前は、俺のトラウマに触れたんだ!
正義を押し付け、他を排他する貴様は前民族と同じだ!
- 9: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:16:24.81 ID:DZtCOemQ0
( #ФωФ)「ものども! お前等もソードを出せ!!」
ロマネスクの声に促され、他の人間もソードを出す。
レベル4共が。
自然と語り合う術を持ち、なお争おうとする貴様等のソードをとくと見てやる。
| ^o^ |「現れなさい、這う水人形!!!」
(´・_ゝ・`)「青き炎の銃」
/ ゚、。 /「粉砕しなさい、ゴールド・ゴーレム…」
( ∵) 「土犬…」
ミイラのように這う、水で出来た人型の何か。
その手に持つ、銃のようなソード。
体調3メートル余りの金色のゴーレム。
土で出来た、犬と呼ぶにはあまりにも大型な犬状のもの。
その全てが強力であることは、見ただけで分かる。
確かにこれは五人束になったら人たまりも無いだろう。
頼むぞ、ワカッテマス。
レベル5の力を見せてくれ。
- 12: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:20:31.03 ID:DZtCOemQ0
(#'A`)「いくぞ、ワカッテマ…」
(;'A`)「!!!」
そう言い掛けた瞬間だった。
気づいたのは、ロマネスクが最初。
俺は一瞬状況が把握で無かった。
ロマネスクの言葉で俺はようやく何が起きているかを把握した。
( #ФωФ)「どこに行く、ワカッテマス!!!!!」
横にいたワカッテマスがいつの間にか居なかった。
慌てて振り返ると、ワカッテマスは全力疾走で逃げている。
今、反乱分子達が入ってきた場所とは別の階段。
そこに向かって一心不乱に走っている。
(;'A`)「はああああああああ!!??」
事態を飲み込めないが、このままでは自分が死ぬことも分かっている。
一人で相手は無理だ。
おい、待てよワカッテマス。
俺が参加する、しないに関わらずお前は戦うんじゃないのかよ。
裏切りか? いや、違うだろうな。
生贄か? 自分を守るために。
一瞬の間に思考は回るが、行うことはただ一つ。
とにかく、俺は急いでワカッテマスの後を追いかけた。
- 14: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:22:20.15 ID:DZtCOemQ0
- ( #ФωФ)「逃げるなああああああ!!!!!!!」
(;'A`)「うええええええええええええ!!!???」
ロマネスクは益々激昂し、帯状の炎を此方に撃つ。
まずいと思った瞬間に影法師は応え、それを消そうとする。
全てを消すのは不可能だけれど、避ける分には何とかなる。
(´・_ゝ・`)「待ちなさい!!」
しかしかながら、鼻筋が通ったむかつく男も、その手の銃から青い炎の弾を撃つ。
消すのだけに集中すれば、二人の攻撃は何とか阻める。
しかし、何発かに一度はかすってしまう。
反撃する余裕なんて無い。
歯がゆさを噛み締めながら、ただただ走るしか出来なかった。
(;'A`)「どういうことだ!?ワカッテマス!!」
( <●><●>)「…」
無言で走り続けるワカッテマス。
図書館を抜け、道沿いに走り続ける。
お前、本当に逃げているんじゃないだろうな。
余裕の表れも逃げると決めていたからか?
ああ、やっぱり選択を間違えたかな。
- 17: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:25:42.53 ID:DZtCOemQ0
- (;'A`)「おい、戦わないのかよ!」
( <●><●>)「…」
尚も無言で走り続けるワカッテマス。
後ろには反乱分子、レジスタンスのレジスタンスが迫っている。
攻撃を避けるのだけで、精一杯だぞこっちは。
体力にだって限界がある。
(;'A`)「おい、ワカッテマス!!」
( <●><●>)「…」
そろそろ怒るぞ、この野郎。
あいつらより、お前を消してやろうか。
そう、思ったときにワカッテマスはその歩みを止めた。
( <●><●>)「ここなら、いいでしょう」
ワカッテマスが止まった場所はグラウンド。
馬鹿でかいホロカード大学には、いくつかグラウンドがあるがその中でもこれはかなり大型だ。
陸上大会でも開けるのではとないぐらい広く、校舎からも遠く離れていた。
- 19: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:29:03.51 ID:DZtCOemQ0
( <●><●>)「本が燃えるのは困りますからね」
(;'A`)「だったらそう言えよ…」
( <●><●>)「体力が無いもので、喋る余裕がありませんでした」
絶対嘘だろ、お前息切れてないじゃないか。
しかしながら、案外逃げ切れたんじゃないか?
大所帯の反乱分子達は、少し遅れて到着した。
そら、そうか。
逃げるのに必死なのと、攻撃しながら追うのでは差がつくもんな。
( #ФωФ)「周りに人がいないところを貴様の墓場に選んだのは良い心がけだ!!」
/ ゚、。 /「存分に殺してあげます…」
| ^o^ |「さあ、覚悟するのです」
三者三様の意見を言い、言葉を口にする反乱分子。
その言葉を聞いても全く動じないワカッテマス。
全てを見透かすような目、その所業。
あまりにも不気味な感情の排し方。
俺は、こいつは生まれたときからそんなものなんだろうと思っていた。
だけども、ワカッテマスはその時初めて自分の意見を口にした。
- 22: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:32:29.69 ID:DZtCOemQ0
- ( <●><●>)「ロマネスク」
( #ФωФ)「何だ!!」
( <●><●>)「あなたは図書館を燃やそうとした」
( #ФωФ)「貴様の所業に比べたら、それがなんだと言うのだ!!」
( <●><●>)「本とは知識の集まり、知恵の結晶。
それを灰にするのは先人達の想いや努力を灰にすること」
( <●><●>)「あなたに平和を語る資格はありません」
( #ФωФ)「戯言をおおおおおおお!!!!!!」
ワカッテマスはあくまでも冷静にそう言い放った。
その言葉に激昂を益々強めるロマネスク。
そして、その想いに応えるかのように炎を猛らせるソード。
周りの雪が一瞬にして溶ける。
おいおい、敵をより強力にしてどうするんだよ。
だけども、これでもう逃げ道は無い。
後は戦うだけ、殺すだけ。
それが始まろうとする。
震える口、笑う膝、歪んだ笑顔。
ああ、これから殺し合いが始まるのか。
- 25: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:35:10.80 ID:DZtCOemQ0
( <●><●>)「おいでなさい」
ワカッテマスがソードを出そうとする。
レベル5の力。
神や精霊を移すその姿。
こいつのソードは一体何なんだ。
この殺し合いの場だというのに、好奇心を抑えられない自分がいる。
さあ、お出ましだ。
( <●><●>)「千手千眼観音」
42臂の腕を持つ五メートル余りの観音様が姿を現す。
その姿に、思わず体が一瞬止まる。
ますか、そんな。
まさか、そんなソードがあるものなのか。
自然と語り合えて、なおかつ神や精霊がレベル5なんじゃないのか?
こいつは、何の自然と関係があるんだ?
しかしながら、神は神。いや、観音様だ。
こいつのソードは確かにレベル5だ。
全くの予想外だけどな。
- 28: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:38:19.07 ID:DZtCOemQ0
- ( #ФωФ)「貴様のそのソードに何度騙されたことか!!」
( #ФωФ)「今、我輩は貴様を殺す!! そして、新しい平和を作るのだ!!」
( #ФωФ)「かかれえええええええええ!!!!」
ロマネスクがそう言った瞬間に、全員が一斉に飛び掛る。
なかなか、騒然とした光景だ。
烏合の衆が気合を入れていることで。
そんなに英雄になりたいものなのか。
( <●><●>)「行きますよ、ドクオくん。手に負えない部分は私が何とかします」
('A`)「ああ、頼んだよ」
いよいよ、本格的な殺し合いか。
走ったからか、麻痺しているのか頭が冷えている。
そのお陰で、周りがよく見える自分に気が付く。
一斉に飛び掛ってきているが、それは言い方を変えれば的が一塊になっていること。
それならば、話は早い。
殺すだけだ。
- 32: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:40:26.28 ID:DZtCOemQ0
('A`)「闇一文字!!」
地面と平行に、闇の斬撃を放つ。
範囲はせいぜい十数メートル。
だけど、的がでかいから当たること当たること。
こいつは愉快だ。
愉快なんかじゃないけどな。
「ぐあああ!!!」
「ぎゃああああああ!!!!」
「ああ…!!!!」
前に出てきた十人余りが、息絶える。
最前列のレベル4共が、さすがに避けたからだ。
大丈夫、安心しろ。
後でちゃんと全員消し去ってやるから。
/ #゚、。 /「よくも仲間を…」
| #^o^ |「許しません!!」
俺の方に来たのは、二人。
二人とも勝手なことを言っている。
お前等も今、俺を殺そうとしているだろうが。
- 35: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:44:01.77 ID:DZtCOemQ0
- / #゚、。 /「ゴールド・パニッシュメント!!!!」
| #^o^ |「水人形!! 溺れさせなさい!!!」
金色のゴーレムは巨体をさらに大きくさせ、光る拳を俺に向ける。
ミイラのような水人形は、こちらも溢れんばかりの水流を体から出し俺に放ってきた。
まずいな、二つを一度には消しきれない。
さて、どうしたものか。
('A`)「…」
ドグシャ!!
地面が潰れる音が聞こえる。
しかしながら、何とか避けれた。
闇を地面に放ち、その中に逃げ込む。
ソウルを纏ったソードならまだしも、普通の地面ならいくらでも消せるからな。
十メートル程度地下に潜り、相手の攻撃を避ける。
良い頭脳プレーだ。
自分で自分を褒めてやりたいよ。
後は、影法師の腕に掴まり適当な場所から出てくればいい。
もぐら叩きの要領だな。
虚を突けば案外一人くらいなら殺せるかもしれない。
- 38: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:47:49.28 ID:DZtCOemQ0
(;'A`)「な!? 土が…!?」
しかしながらそんな作戦がうまくいくはずもなく、今度は土自体が俺を襲い始める。
ああ、そういえば土のソードがいたっけな。
まずいなあ、このままじゃ生き埋めにされてしまうよ。
「…!」
無言の殺意が肌を刺す。
さすがにレベル4は伊達じゃない。
余裕では乗り切れないようだ。
こうなったら覚悟を決めるしかないな。
一回、全力で闇を放とう。
一度も見せたことの無い闇。
それを貴様らに見せてやる。
(#'A`)「闇柱あああああああああ!!!」
自分を中心に、真上に向かって柱状に闇を放つ。
全力、自分の限界まで消し去る。
俺の周り円周十センチから柱状に地面十数メートル頭上には何も残らない。
地面にぽっかりと穴を開けて上を見上げる。
よし、驚いているか知らないが攻撃の手は止んでいる。
脱出するなら今のうちだな。
- 41: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:49:45.98 ID:DZtCOemQ0
- / #゚、。 /「貴様あああ!!!!」
| #^o^ |「おのれえええええええええ!!!!!!!!!」
( #∵)「…!!!」
穴から脱出すると、三人が叫ぶ。
どうやら、またも数人巻き添えにしたようで三人とも相当怒っている。
攻撃は、益々強くなるだろうな、どうでも良いけど。
駄目だな、闇の力を使うとどうしても心が虚無感に襲われる。
('A`)「仲間が大切ねえ…」
こいつらが仲間を大切にしていることに、少しばかりの怒りが芽生える。
戦いに誘うのと、逃げるのとではどっちが正しいのだろうな。
答えなんか無いのは分かっている。
今は、その友情を利用するだけだよ。
('A`)「切り裂け、影法師!」
そう言って闇を地面と垂直に放ち、四角い男の隣の下級兵を狙う。
もちろん、その雑魚は一瞬で死に絶える。
さあ、どうする。
- 44: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:52:56.43 ID:DZtCOemQ0
| #^o^ |「貴様!! 狙うなら私を狙いなさい!!」
('A`)「やなこった」
男の要求を拒否し、尚も男の横の雑魚を狙う。
一人、二人、さあ、どんどん増えてくぞ。
お前が自慢のレベル4で助けない限り、死体はどんどん増えていく。
| #^o^ |「やめろおおおおおお!!!!!!!!!!」
耐え切れなくなった男は、とうとう仲間を庇い始めた。
己のソードを使って。
溢れんばかりの水流を仲間たちの前に出し、全員を守ろうとする。
美しくも憎らしいよ、その姿は。
それでも、俺はお前を斬るよ。
ああ、心が痛むな。
自分を悪と思っていない人間を斬るのは辛いんだな。
/ ;゚、。 /「お待ちなさい!ブーム!!」
仲間の制止も耳に入らず、男は仲間を守ろうとする。
そうか、お前の名前はブームか。
さようなら、ブーム。
- 47: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:55:36.01 ID:DZtCOemQ0
('A`)「切り裂け、影法師」
雑魚を庇ったブーム。
その分、隙が出来る。その隙を逃がしはしないよ、俺は。
雑魚を庇わせるために放った一撃と、ほぼ同時に放つ二撃目。
それは、無常にブームを切り裂いた。
| ;^o^ |「が…ああ…」
事切れていくブーム。
人が命を落とす光景にも慣れてきた自分。
後でまたきっと後悔するのかな。
/ #゚、。 /「貴様あああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
( #∵)「…!!!!!!」
益々激昂する二人。
冷静さが冴え渡る俺。
さあ、人間として正しいのはどちらかな。
俺はどちらも間違っている方に賭けるよ。
お前らは、自分を正しいと思っているんだろう?
- 52: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/11(水) 23:58:06.15 ID:DZtCOemQ0
/ #゚、。 /「踏み潰せえええええ!!!!! ゴールド・ゴーレム!!!!!」
( #∵)「膨張しろ…!!!」
二人のソードがその姿をさらに巨大化させた。
ゴールド・ゴーレムはその姿を約10メートル近くにまで。
土犬に至っては、羽まで生やしてやがる。
両方ともビルじゃねえか。
やばいな、これは避けられない。
/ #゚、。 /「死ねええええええええ!!!!!!」
( #∵)「…!!!!!!」
ゴールド・ゴーレムの足が俺の真上に迫る。
横には、土で出来た犬の牙が迫っている。
絶対絶命って奴か。
全く、頼むよ。
- 55: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:01:12.62 ID:BY4mrbVv0
('A`)「…」
このまま何もしなかったら死ぬのかなあ。
虚無感に襲われた心に、ふと後悔がよぎる。
まだ、何も満足していない。
渡辺や仲間に別れを告げたいな。
心ではそう語りかけるが、体は動かない。
おいおい、早くしてくれよ。
ドガ!!
('A(#)「モゲラ!!!」
ワカッテマスのソードに左頬を殴られる。
そのおかげで体が飛ばされて、攻撃を避けることが出来た。
ちくしょう、何だよ。
遅いし、何より痛い。
( <●><●>)「遅くなりました」
ワカッテマスは事も無げにそう言った。
本当だよ、全く。
もう少しスマートに助けてくれ。
お前と違ってこっちはお前を当てにしているんだから。
- 60: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:03:07.00 ID:BY4mrbVv0
( <●><●>)「一人倒しましたか、さすがですね。こっちは攻撃力が弱いから大変ですよ」
おいおい、とんでもないことさらっと言うなよ。
千手千眼観音って確かたくさん武器持ってただろ。
お前の攻撃力が弱いって、俺の負担が増えるということだろうが。
( <●><●>)「ということで、私のソードでかわす。あなたが攻撃するでお願いします」
('A`)「了解」
攻防分担か。
攻撃だけに専念できるなら負ける気がしない。
だけども、そう思うとより心が重くなる。
ああ、駄目だな。
楽しむことすら出来やしないよ。
( #ФωФ)「ワカッテマスゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」
おいおい、敵さん此方にも来ているよ。
面倒くさいのは片付けてきてから来てくれよ。
まあ、愚痴を言っても始まらない。
さあ、始めるかワカッテマス。
- 63: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:05:50.64 ID:BY4mrbVv0
( <●><●>)「お掴まりください」
('A`)「はいよ」
ワカッテマスのソード、千手千眼観音の腕の一つに掴まる。
こうすれば自動的にワカッテマスが攻撃を避けてくれる。
こいつはチートだ。
すまないな、皆。
('A`)「闇時雨!!!」
闇の連続斬撃を放ち、敵をかく乱させようとする。
レベル4は何とか耐えているが、それ以外の雑魚は死んでいく。
「ぎゃあああ!!!」
「ありえない…!!!!!」
「何だこいつは…!? ああ…!!!」
次々に死んでいくロマネスクの配下達。
五十人近くいた兵隊は、今では半分以下。
レベル4が一人死んでいるこの状況じゃお前等の負けだろう。
今の内に退いてくれればこれ以上殺さなくて済むのに。
だけども止まれないんだろう?
俺も同じさ、お前らを殺すのを止めれない。
- 67: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:08:56.87 ID:BY4mrbVv0
( #ФωФ)「貴様あああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
(;´・_ゝ・`)「くそ! 死ね! 死ねええええええ!!!!!」
ロマネスクの火炎が何度も何度も俺達を襲う。
ロマネスクだけじゃない。
レベル4の四人は、あらん限りの攻撃で俺達を殺そうとする。
その一つ一つを避けるワカッテマス。
そして、構わなく配下を殺す俺。
愚かだな、俺とお前たちは。
('A`)「二人目だ…」
こうしてみるとまるで車の運転みたいだな。
最初はスピードに慣れずに焦ってしまうが慣れてしまうと周りが見える。
それはすなわち隙がある奴が見えるということ。
免許なんざ持ってないけどな。
('A`)「闇一文字」
闇の斬撃を放つ。
かわせない一撃、命を奪う死神の鎌。
(´゚_ゝ゚`)「馬鹿な…」
鼻筋の通ったむかつく男がまた一人息絶えた。
なあ、お前の名前は何ていうんだい?
- 70: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:12:04.27 ID:BY4mrbVv0
( #ФωФ)「デミタスうううううううう!!!!!!」
デミタスか。
デミタス、デミタス、デミタス。
ああ、名前を聞くと本当に殺したと思うよ。
('A`)「三人…四人…」
同じ要領で、一人また一人と命を奪っていく。
俺を殺そうとした。
だから、殺す。
余りにもシンプルな弱肉強食。
お前等はそれを否定しようとしたんだっけ?
だけど、お前等は俺を殺そうとしているじゃないか。
だから、俺はお前らを殺すよ。
お前らの理想よりも、お前らの言動のほうが遥かに分かりやすかった。
だから、俺はお前らを殺すよ。
/ #゚、。 /「ぐああ…」
( #∵)「・・・・・・・・・・・・」
倒れ行く命。
叶わない祈り。
悲しいな。
- 75: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:17:29.97 ID:BY4mrbVv0
( #ФωФ)「貴様…!!!!」
('A`)「…」
とうとう残ったのはロマネスク一人。
他のものは俺が殺した。全て、俺が殺した。
五十四人か、前のを合わせると五十九人。
随分と、人殺しに成り下がったものだ。
( #ФωФ)「許さん!! 許さん!! 許さんぞおおおおおおおおお!!!!!!」
怒号を繰り返すロマネスク。
勝ち目は無い戦いに挑んだ無謀な男。
それでも戦意を失わないその様は尊敬に値する。
だけど、なんでだろう。
怒りしか感じない。
貴様は一体、何がしたかった。
平和が作りたかったのか。
なのに殺し合いに発展させたのは、何でだい。
なあ、何でなんだい。
( #ФωФ)「殺してやる!!!!!!!!!」
今までで一番大きな声でそう言い放ったロマネスク。
何度もその台詞は聞いているよ。
でも、もう説得力が無いんだよ。
お前の言葉は何一つ承れない。
- 79: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:21:38.64 ID:BY4mrbVv0
( <●><●>)「まずいですよ」
('A`)「何がだ?」
( <●><●>)「避けられない一撃が来ます」
(;'A`)「はあ!?」
軽々とそう言うワカッテマス。
おい、どういうことだ?
避けられない一撃ってどういうことだよ。
( #ФωФ)「灼 熱 煉 獄 ! ! ! ! ! ! ! !」
ロマネスクがそう言うと、奴のソードを中心にドーム状に炎が広がっていく。
勢いを増し威力を増し、徐々に巨大化しながらこちらに近づいてくる。
さながら、火球が意思を持ち膨張していくかのように。
ちくしょう、確かにこれは避けられない。
- 82: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:24:23.74 ID:BY4mrbVv0
- ( <●><●>)「じゃあ、宜しくお願いします」
(;'A`)「俺がなんとかすんの!?」
( <●><●>)「当たり前でしょう?」
ぬけぬけと言うワカッテマス。
ああ、分かりましたよ、分かりました。
俺だって死にたくないもの。
やってやればいいんだろう!?
(#'A`)「闇柱あああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
ワカッテマスを後ろに下げて全力の闇柱。
これで、なんとかやり過ごしたい。
自分の周囲にだけ闇を全力で放てば、数秒間は持つはずだ。
後は、俺とあいつの根性比べ。
さあ、生きるか死ぬかの根性比べだ。
( #ФωФ)「小癪なああああああ!!!!!!!!!!」
(#'A`)「あああああああああ!!!!!!!!!!!!」
お互いがお互いの死力を出し尽くす。
この瞬間だけは、相手と同じ時間を共有しているのだと感じる。
ロマネスク、貴様は今一体何を考えているんだい。
- 86: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:29:20.97 ID:BY4mrbVv0
( #ФωФ)「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
(#'A`)「影法師いいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!」
あと数秒でつく決着。
しかし、その数秒はまるで人生のように長かった。
ロマネスクの気迫、俺の意地。
ロマネスクの理想、俺の欲望。
どちらも俺が劣っているはずなのに、互角の戦い。
ソードが優秀な証明にならないのはこれで分かったろう?
なあ、ロマネスク。
( #ФωФ)「ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
(#'A`)「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
それでも止まれない。
俺たちは止まれない。
殺し合いの先に何があるって言うんだ。
貴様の言う平和が待っているとしたら。
俺は、あらんばかりの憎しみをお前に向けながら首をくれてやったかもな。
- 90: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:33:00.17 ID:BY4mrbVv0
( #ФωФ)「!!!」
( A )「!!!」
その瞬間。
何かが弾けるような音が聞こえた。
そして、全てが消えるような感覚。
ロマネスクの炎と俺の闇が相殺した結果だ。
そこに残るのは一筋の静寂、一切の無。
それは俺たちの勝利、ロマネスクの敗北を意味していた。
( #ФωФ)「…」
( A )「…」
( <●><●>)「…」
お互いがもう何も出来ない決着。
体に少しばかりの火傷を負いながら、力を使い果たし満身創痍ながら生きている俺。
力を出し尽くし、同じように満身創痍なロマネスク。
俺とロマネスクに、ソードを出す余裕は無い。
違うのは、こっちが二人であっちが一人なだけだ。
- 93: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:37:51.88 ID:BY4mrbVv0
( <●><●>)「ロマネスク…」
( ФωФ)「殺せ…」
落ち着いた声でそう言うワカッテマス。
全てを受け入れたかのように、穏やかな声で言葉を返すロマネスク。
勝者が罵るでも無く敗北を認めるでもなく言葉を呟く。
('A`)「…」
その光景をただただ見ている俺。
手の一本も動かせずに二人を見つめる。
お互いが自分の運命を受け入れている瞬間。
俺にはそう見えた。
さっきまで当事者だった俺が部外者になる瞬間だ。
( <●><●>)「すまない…」
( ФωФ)「謝るな…」
優しげな声でそう呟くワカッテマス。
ワカッテマスを励ますかのように、応えるロマネスク。
この光景は何だ?
分かっている、友情だ。
殺し合いの果ての殺人の前にある友情。
俺は理解できないよ、お前らを。
ただただ羨ましい。
- 96: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:41:16.77 ID:BY4mrbVv0
( <●><●>)「さよなら…」
( ФωФ)「…ああ」
二人はそう言い、ワカッテマスがロマネスクの胸に刀を突き立てる。
仲間、なんだろうな今のこいつらは。
仲間の胸に、ソードの刀を刺すワカッテマス。
悲しみを湛えた瞳が、ワカッテマスの感傷を物語る。
この戦いに何の意味があったんだ。
ただ、気に食わないという理由で殺した俺には分からない。
仲間同士で殺しあうこいつらの気持ちなんて分からない。
ただ言えるのは、俺はこいつらとは違う。
心を空虚にして逃げ続けていた俺。
理想を胸に持ち、走り続けたこいつら。
どちらも正しいなんてことは言えない。
だけども、最後に人の心を現したのは、こいつらだった。
- 98: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:45:16.45 ID:BY4mrbVv0
( <●><●>)「行きますか」
('A`)「あ、ああ…」
ワカッテマスの隣を歩き図書館に歩き出す。
なぜ、俺が隣にいるんだろう。
目的の無い力を行使する、空っぽな心。
空虚な想い、残酷な行為。
人を殺すことに慣れた自分。
なぜ、俺はこの場所にいるんだろう。
( <●><●>)「今日は、何を勉強しましょうかね」
('A`)「決めてないのかよ…」
( <●><●>)「忘れてしまいました…」
初めて見たワカッテマスの感情。
それはとても人間らしいものだった。
レジスタンスのリーダーのワカッテマスが別人と思えるほどに。
父さん、人間って何で殺しあうんだい。
殺さなきゃ、殺される。
だけど、そうしないと生きていけないんだ。
どうやったら、殺さずに済むんだろうな。
- 101: ('A`)が狭間で生きるようです :2009/03/12(木) 00:50:21.53 ID:BY4mrbVv0
これから、数日後にはソード同盟か。
つくづく嫌になる、この争いの連鎖が。
影法師よ、お前の真意は何なんだい。
俺は一体何をしたいんだい?
もう、怒らないから教えておくれ。
何だって誰も彼もが殺しあうんだ。
人を救おうとして、殺しあうんだ。
ロマネスクの心、ワカッテマスの心。
その二つともに間違っているものなんて無かった。
ただ、それが正しくなかっただけなのに。
俺の心には何がある?
何も無い。
なぜ殺したのかも分からない。
思想や信念なんか知ったことじゃない。
だけど、俺は今日初めてワカッテマスやロマネスクみたいな人間を羨ましく思った。
ああ、認めるよ。
俺はああなりたいのさ、何かに確信を得たいのさ。
なあ、そうだろう影法師。
分かっているよ、これから自分のすることなんて。
その日から、俺は自分の心を探し始めた。
第十三話「争いの種、友人の慈しみ」 終
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