('A`)が狭間で生きるようです

3: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 21:51:48.49 ID:vME1njrC0
第20話「嘘つきな暗殺者」




「ぎゃあ…!」

深夜に、誰かが事切れる声が響く。
胸に刀を差し込まれ、血を吐きながら声にならない声を出す。
その下には、たった今犯されそうになっていた女がいる。
男が吐き出す血に汚れながら、震えている。

('A`)「さて…」

この女をどうしたものか。
いつものように顔は見られていない。
だが、手口は見られている。
このことが公になったら。
そう考えると一瞬、殺意が芽生える。

「ひい…」

しかしながら、がたがた震える女を殺す気は無い。
どうせ、いつかは白日の下に晒されるなら少しでも良い評判にしなければ。
ブーンのためにも。
俺のためにも。



5: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 21:53:07.07 ID:vME1njrC0

('A`)「逃げるか」

そう言って、走り出す。
死体を抱えて。
いつもの場所に投げ捨てて、渡辺が隣にいる自分の部屋にまで走る。
あの日から一ヶ月が経ったあの部屋に。

('A`)「ただいま」

从'ー'从「おかえり〜」

そう渡辺に言う。
渡辺の部屋は隣にある。
だけども、もうほとんど一緒にいる。
皆は、未だに五人で一つの部屋に住んでいる。
なぜかと聞くと、ブーンがそうしたいからだと言う。
それならば仕方が無い、と思いながらも少し寂しさを覚えた。
一度、ブーンに一緒に住まないかと聞かれたが断った。
なのに、寂しい。
心は本当に勝手気ままだ。



7: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 21:53:53.37 ID:vME1njrC0

从'ー'从「今日も…?」

('A`)「ああ、殺したよ」

从'ー'从「なんで、あの人たちのためにそんなことをするの?」

('A`)「別に…ブーンたちのためじゃないよ」

从'ー'从「そう…」

渡辺はそう言い、ベッドに潜り込む。
寝巻きに着替えて、俺も潜り込む。
渡辺の頭の下に自分の腕を置き眠る。
また、明日が始まる。
終わりの無い明日が。

翌朝になり、目が覚める。
そして、ブーンの下へと足を運ぶ。
ただ、それだけのことに二時間を費やす。
葛藤と、恐れが入り混じる。
いつか、彼は俺を見捨てないか。
その日が来るのをいつも恐れていた。



9: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 21:56:40.72 ID:vME1njrC0

コンコン

('A`)「俺だ」

「どうぞだお!」

ガチャリ

いつも通りの挨拶。
そして、入場。
昼からの会議。
レジスタンスの幹部会議が始まる。

( ^ω^)「おはようだお、ドクオ!」

('A`)「もう、昼過ぎだってw」

ξ゚听)ξ「ご飯は食べた?」

('A`)「ああ、もう食べてきた」

川 ゚ -゚)「むう…せっかくショボンがドクオの分も作っていたのに」

(;'A`)「マジすか!? それは食べますよ」



10: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 21:58:11.39 ID:vME1njrC0

(´・ω・`)「いやいや、無理はするなよ」

('A`)「ショボン先輩の料理久しぶりですもん!」

( ゚∀゚)「まあ、いつもは彼女の手料理だもんなwww」

(;'A`)「彼女じゃないし、基本的に僕が作ってますよ…」

こうやって、微笑ましく喋ることが出来るまで一ヶ月かかった。
ワカッテマスを殺してから一ヶ月。
皆を騙し始めてからの一ヶ月。
辛くて、心地よくて。
それが、俺の心に影を落とす。

( ^ω^)「さて、今日の議題だお」

ξ゚听)ξ「レジスタンスの治安はほぼ回復したわ」

( ゚∀゚)「内乱は回復。ってことは、次は外敵への対処だ」

川 ゚ -゚)「ソード同盟との関係だな」

(´・ω・`)「完全な独立は無理だろう。自治区として求めるのが妥当じゃないか」

('A`)「完全な平和を目的とするあいつらそれで済ませますかね」

ξ゚听)ξ「今のレジスタンスの方が、治安は良いわ」



12: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:01:11.47 ID:vME1njrC0

( ^ω^)「そう、彼らの言う平和は僕達が作り始めているお」

('A`)「…」

(´・ω・`)「また、武力もレベル5のブーンが一人。
そして、ドクオ。お前がいる。交渉は可能だろう」

('A`)「しかし…」

川 ゚ -゚)「とりあえず、やってみよう。
と言っても、交渉にはお前とブーンが臨むことになるだろうが…」

内乱の鎮圧。
これは、本当に苦労した。
今まで、ソードが一般人を搾取していた世界。
そこに、平等を持ち込んだのだから。
誰しもが平等に。
自由に。
そして、平和に。
それがブーンが掲げた政略だった。
実際は、ツンの思想やショボン先輩のアドバイスが入っている。
しかし、ブーンはそれを声明して支持を得た。
特に、ヒートと言う名の少女に。



14: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:02:38.07 ID:vME1njrC0

( ^ω^)「では、自治区を認めて欲しいということでソード同盟に申し込みますお」

('A`)「交渉の場には、俺も行った方がいいか?」

( ^ω^)「お、頼むお! ドクオが頼りだお!」

(;'A`)「いや、今はブーンの方が遥かに強いよ…」

川 ゚ -゚)「それでも、ソード同盟には脅威に映るだろう」

(´・ω・`)「ああ、頼む」

('A`)「分かりました。任せてください。」

そう言った形で今回の会議は終了した。
穏やかである。
とても、穏やかである。
それだけに不安になる。
これほどまでに安らかでいいのかと。
薄氷がいつか割れるんじゃないかと。
ストレスだけが溜まっていく。



16: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:04:53.83 ID:vME1njrC0

('A`)「さてと」

会議が終わった後は、晩飯を作る。
材料は、倉庫から勝手に持っていく。
ワカッテマス時代のレジスタンスが略奪した食料。
結局は、それに頼っている。
しかし、春からは広大なグラウンドを使って農業を始めることにした。
また、牛達も残っているから酪農も可能。
農学部の生徒が残っていたのが幸いした。
まったく、今更ながらこの大学の規模には驚かされる。

('A`)「ただいま」

そう言って、部屋に入る。

*(‘‘)*「おかえりー!」

从'ー'从「おかえり〜」

そこにいたのは、渡辺とヘリカルだった。

('A`)「ただいま。ヘリカルは今日はこっちか」

*(‘‘)*「うん! クー姉ちゃんは、今日はショボンといちゃつきたいんだって!」

(;'A`)「あ、そう」

まったく、あの人は素直だな。
ショボン先輩といちゃつくって、ちゃんと避妊はしてくださいね。



17: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:06:52.51 ID:vME1njrC0

*(‘‘)*「ねーねー! 今日のご飯は何!?」

('A`)「今日はキムチチャーハンだよ」

*(‘‘)*「やったー!」

从'ー'从「ドッくん、お腹空いた〜」

(;'A`)「ねえ、少しは手伝ってよ」

そうやって、三人でご飯を食べる。
まるで親子みたいだな。
他愛も無い話をしながら、食卓を囲む。
楽しい時間。
守りたい時間。
嘘つきの時間。

('A`)「さ、寝るか」

*(‘‘)*「歯磨きしなきゃー!」

从'ー'从「一緒に歯磨きしよう〜!」

天真爛漫なヘリカル。
彼女が、俺達に懐くのは時間はそうはかからなかった。
思ったよりも、聡明な彼女はニダーの死を受け入れた。
未だ、ブーンとは確執を持つものの。
まるで、子供らしくないその素直さにソードとは凄いものだと感じた。
彼女はその年で、自我を確立させていた。



21: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:10:00.51 ID:vME1njrC0

('A`)「さあ、寝るぞー!」

*(‘‘)*「寝るぞー!」

从'ー'从「寝るぞー!」

そう言って、部屋の電気を消す。
三人で川の字になって寝る。
昼間はクー先輩とたくさん遊んだんだろう。
ヘリカルは直ぐに、すやすやと寝息を立てた。

从'ー'从「ふふ、可愛いね」

('A`)「ああ、そうだな」

そんな会話を渡辺と交わす。
まだ、一度も女を抱いたこと無い。
そんな俺がまるで父親のような気持ちになる。
この子の育つ世界が良いものでありますように。
そう、願っている自分に驚く。

('A`)「さて、と」

しかし、それだけで一日を終わらせることが出来るほど運命は優しくない。
寝巻きから、普段着に着替える。
黒のカーゴパンツと、黒のロングTシャツ。
もう、それが制服みたいになってしまった。



22: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:12:15.18 ID:vME1njrC0

从'ー'从「行くの?」

('A`)「うん」

从'ー'从「行ってらっしゃい…」

('A`)「ああ」

そう言い、部屋を後にする。
そして、図書室に向かう。
純粋に本を読みたいわけじゃない。
ここが、よく「使われる」から。

('A`)「さて」

('A`)「出て来い、影法師」

影法師を呼び出す。
もう、俺には闇の力は無い。
消えてしまった。
自分の中にある希望。
それを見ないことで作れていた力だったのだろう。
今、使えるのは影の力だけだ。



24: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:13:53.65 ID:vME1njrC0

('A`)「広げろ」

そう言い、影を広げる。
闇の力が消えた代わりに影の力が強まった。
本気を出せば、この広大な大学の半分までは広げることが出来る気がする。
しかし、それをすれば気づかれる。
だから、しない。

('A`)「さ、本でも読むか」

影の中にいれば暗闇でも本を読める。
奇妙だけど、便利な能力だ。
今日は誰も何もしませんように。
血に染まった手でヘリカルに触りたくは無い。

('A`)「ワカッテマス…」

そう呟きながら本を読む。
あいつが読んでいたであろう本。
それを読み漁る。
そして、思い出す。
彼が死んだ後を。
あいつとの最後の会話を。
そして、ブーンのことを。



27: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:17:19.65 ID:vME1njrC0









―――――

( ;^ω^)「僕が…レジスタンスのリーダー?」

首が無いワカッテマスの体を見ながらブーンはそう言った。
そう、お前がリーダーなんだよ。
それが、運命らしいんだ。
抗えないな。

( ;^ω^)「無理だお…!」

('A`)「無理じゃない」

拒否しようとするブーンを、嗜める。
ブーン、お前がやるしか無いんだ。
それ以外の道は無いらしいんだよ。



28: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:20:10.91 ID:vME1njrC0

ξ#゚听)ξ「ちょっと、待ってよ!」

('A`)「なんだよ」

ブーンを説得しようとする時にツンが邪魔をする。
まあ、それくらいは予想通りだよ。
どうやって、言いくるめたものか。

ξ#゚听)ξ「説明しなさいよ!」

('A`)「…」

ξ#゚听)ξ「なんで、あんたがあの男と一緒にいたのか!
そして、あんたが殺したのか!
全部説明しなさいよ!」

('A`)「…」

ああ、ごめん。
そいつは無理な相談だ。
ワカッテマスとのことを全部は説明できない。
というよりも、それはどこから話せばいいんだ?
お前達と袂を分かった時からの話になるよ。
でも、それは別に必要ないんだ。



30: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:22:07.49 ID:vME1njrC0

('A`)「ワカッテマスのことか…」

ξ#゚听)ξ「随分と仲良くなったものね! あの殺人鬼と!」

殺人鬼…。
ああ、そうか。
テレビ放送の時に殺していたな。
今思えば、あれもあいつが言う運命の一つだったんだろうな。
あいつの感情はどこにあったのだろう。
自分で抗えないと悟った後のあいつはどこにいたんだろう。

('A`)「あいつは…」

(´・ω・`)「待った、ドクオ」

('A`)「はい…?」

(´・ω・`)「日を改めよう。今のままじゃ皆冷静にはなれない」

川 ゚ -゚)「そうだな。それと、この子はお前に返すよ。
どうやら、私達といるよりお前に懐いているようだ。」

( ゚∀゚)「ツンも今は落ち着け。
俺達も頭の中がこんがらがっている。少し時間をくれ」



33: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:24:17.67 ID:vME1njrC0

('A`)「分かりました…。明日、皆の部屋に行きます」

ξ#゚听)ξ「分かったわ…」

そう言って、その日は解散した。
晴れやかな心だった。
自分の運命とやら、そう言えるものがクソに思えて。
そうして、これから自分がどうなるのか。
それを考えて、俺は次の日に望んだ。
ヘリカルを渡辺の下に預けて。

コンコン

('A`)「俺だ」

「どうぞだお…」

ガチャリ

('A`)「どうも」

そう言って部屋に入ってきたときの皆の顔。
それだけは忘れない。
敵を見るかのような、疑いの目。
うん、まあ、敵と言えば敵になってるのかな。
俺は、ワカッテマスと同じく皆を利用しているだけだもの。



35: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:26:00.33 ID:vME1njrC0

(´・ω・`)「よう。とりあえず座ってくれ」

('A`)「はい」

(´・ω・`)「じゃあ、聞かせてくれるか? これまでの経緯を」

('A`)「分かりました…」

そうして、俺は話した。
ワカッテマスとの図書館での語らい。
そして、ワカッテマスのソードのこと。
それに苦しんだワカッテマスのこと。
昨日、死ぬまでワカッテマスは全て自らのソードに振り回されていたこと。
最後の二人の会話以外は全て話した。

(;´・ω・`)「それは…なんて言ったらいいんだ?」

('A`)「僕にも分かりませんよ…」

川 ゚ -゚)「…」

(  ω )「…」



38: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:30:40.47 ID:vME1njrC0

多くが沈黙する。
自分達の想像外の話をされてしまっている。
それを見越して、俺も話している。
皆に共感できるようになんて話していない
わざと、ブーンにしか伝わらないように話している。

ξ#゚听)ξ「彼が苦しんでいたのは分かるわ…。
でも、それでも結局多くの人を苦しめる原因を作ったのは彼よね?」

話を聞けよ。
運命だよ。
あいつの意思じゃないとは言っただろう?
未来を作り出すほどのソードならあいつもそこまで苦しまなかったろうさ。

( ゚∀゚)「ツン、それは違う」

ξ#゚听)ξ「どういうことですか?」

激昂しかけるツンをなだめるジョルジュ先輩。
この中で一番冷静な人。
そして、なぜだか不思議に落ちついている。



40: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:32:25.64 ID:vME1njrC0

( ゚∀゚)「ドクオの話だと、彼は運命に逆らおうともした。
しかし、それさえも予定調和の中だった。
しかも、彼はレベル5だ。彼だけの力じゃない。
言うなれば、ワカッテマスのソードを形作るソウル、さらに俺達の存在が創った未来だ。
彼だけを責めることは出来ない」

ξ#゚听)ξ「でも…!」

('A`)「ツン…!!!」

ξ#゚听)ξ「何よ!」

怒り出すツン。
しかし、言葉を続ける。
なぜ?
ワカッテマスのことがそれほど大事か?
いや、違う。
人を殺した自分を認めて欲しいからだ。

('A`)「お前の定規で人を測るのは勝手だ。
だけど、それを俺達に押し付けるな」

ξ#゚听)ξ「な!! なんですって!?」



42: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:34:19.86 ID:vME1njrC0

('A`)「あいつを何の罪で裁く? 人殺しか?
だけどな、あいつは自分の意思じゃ無かったんだ。
普通の裁判でも、心神喪失とやらになるんじゃないのか?」

ξ#゚听)ξ「それは…!!!」

('A`)「分かれとは言わない。
だが、お前も俺達に全てを分かれとは言わないでくれ。
俺達は、もう手を汚したんだ。
お前がワカッテマスを許さないのなら、俺も死ななきゃいけなくなる」

ξ#゚听)ξ「そういうことじゃないでしょ!! 私が言いたいのは!!」

('A`)「だから…!!!」

(  ω )「やめるお!!!」

俺とツンが言い争っているときに、ブーンが俺達を止めた。
その言葉には、弱い決意が感じられた。

(  ω )「ワカッテマスとかいう人のことわかるんだお…」

ξ;゚听)ξ「え?」

(  ω )「僕の中にも、声が聞こえるんだお…。
コロポックルを形作るソウルの声が聞こえるんだお…」

('A`)「ブーン…」



43: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:36:38.65 ID:vME1njrC0

(  ω )「その声は綺麗なものだけじゃないお…。
むしろ、憎しみの方が多いくらいだお…。
自分でも、抵抗出来なくなりそうな時があるお…」

(  ω )「未来を見えない僕でさえ、こうだお・・・。
ワカッテマスさんが、見た世界がどういう風に映ったのか…。
考えただけでも、恐ろしいお…」

ξ;゚听)ξ「ブーン…?」

そう言うブーン。
レベル5の力は俺には分からない。
でも、数多のソウルの声が聞こえるということは分かっている。
だからこそ、ワカッテマスのことをこの場で話した。
お前がそう言うであろうことを見越して。

(  ω )「ドクオ…僕はレジスタンスのリーダーになるのかお?」

('A`)「ワカッテマスが見た未来によるとだけどな…。
だが、自分が死んだ後は見えなかったらしい。
だから、これから先は分からない」

嘘はついていない。
少し、隠しているだけで。



45: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:38:44.45 ID:vME1njrC0

ξ;゚听)ξ「じゃあ、何もブーンがなることは…!」

(  ω )「いや、やるお」

ξ;゚听)ξ「ブーン!?」

(  ω )「今まで、僕は悪いことを全部周りのせいにしていたお。
でも、今は力がある。
だったら、皆が笑い合える世界を作りたいんだお」

( ^ω^)「ツン、君のためにも」

ξ゚听)ξ「ブーン…」

そう言うブーン。
計算どおりなんだろうな。
これで、ワカッテマスが見た未来までは全て完了した。
これから先はどうなるのか。
俺はどうしたいのか。
そこまでは、よく分からない。
ただ、皆が笑い合える世界をブーン達が望むなら。
俺はいくらでも、手を汚そう。
なにせ、未来なんてどうなるか分からないのだから。



49: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:42:23.49 ID:vME1njrC0

('A`)「ブーン、俺も協力する」

( ^ω^)「ドクオ…」

そう、この時だ。
俺があの時の答えを伝えるときは。

('A`)「俺は…」

言葉も真実。
想いも真実。
なのに。

('A`)「お前の友達だからな」


なんで、嘘に塗れているんだろう。


( ^ω^)「ドクオ…!」

ξ゚听)ξ「ドクオ…」



52: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:44:32.99 ID:vME1njrC0

二人の目が変わる。
さっきまで、敵を見ていたような顔が変わる。
和解だ。
俺達は、今和解した。
だけど、悲しいのはなぜだろう。
分かっている。
俺は皆に隠し事をしているから。

(´・ω・`)「やっと…戻ってきたな」

川 ゚ -゚)「ドクオ…」

( ゚∀゚)「ドクオ! おかえり!
ところで、あの子何カップ??」

先輩とも和解。
ジョルジュ先輩は相変わらず。
ああ、この人に聞きたいことがあったんだ。
でも、今はこの和解を楽しもう。



54: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:46:59.85 ID:vME1njrC0

( ^ω^)「ドクオ…あの男の人のこと…僕は…」

そう言うブーン。
心にひっかかっていたのだろう。
今、一番尊い瞬間に彼は話題をぶり返す。
だからこそ、俺も答える。

('A`)「ニダーを殺したのは俺だ」

( ;ω;)「違うお…!! 僕が…!!」

('A`)「申し訳ないと思うのなら、平和を作ろう。
俺達には、もうそれしか償いの道は無いよ」

( ;ω;)「ドクオ…!!」

そう言って、俺達はレジスタンスを新しくすることに決めた。
どんな組織にしたいのか。
決まっている。
平和だ。
皆が笑い合える世界。
「皆」が…。



56: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:49:22.74 ID:vME1njrC0

('A`)「…」

そう、俺は嘘をついている。
俺は別に誰もが笑い合えなくてもいい。
ブーン、ツン、ショボン先輩、クー先輩、ジョルジュ先輩。
そして、渡辺とヘリカル。
この7人だけが、笑っていればそれでいい。

ξ゚听)ξ「まずは、治安の復興を急ぎましょう」

(´・ω・`)「次は、食料だ」

( ゚∀゚)「両方共に急務ですね」

川 ゚ -゚)「住居の問題もある。ソードではないものも今はこの学園には多い」

( ^ω^)「食料の問題は、ショボン先輩達に考えを出してもらいたいですお
僕は治安復興にまず、力を注ぎますお」

('A`)「俺も、治安復興に協力する」

川 ゚ -゚)「住居はとりあえず、後回しだな。
寝床があればなんとかなる」

そうやって、最初の会議を終えた。
その何日か後にブーンは声明を出した。
ワカッテマスのような力を持っていないブーンがどうしたか。
その方法はさすがにレベル5だと思ったものだ。



59: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:53:12.31 ID:vME1njrC0

( ^ω^)「コロポックル!」

そう言って、ソードを出すブーン。
そして、空に氷の文字を描いた。
「レジスタンスは全員、第三グラウンドに集合せよ、と」
その力に恐れたのか。
ほぼ、全員が揃っていたと思う。

そして、ブーンの出した声明。
自由と平等。
そして、平和を原則としたものだった。
文面はツンが考えたのだろう。
ブーンらしくない言葉で、レジスタンスのリーダーらしい言葉だった。

その、声明にヒートをはじめ多くのものが賛同した。
皆はその光景をほほえましく見ていた。
俺は、不満げな顔をしている奴らを探していた。
クソが。
そう思っている何人もの顔を目に焼き付けていた。



60: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:55:42.32 ID:vME1njrC0

( ^ω^)「さて…」

その日から、俺はブーンとパトロールを始めた。
いくら、多くのものが賛同したとはいえ、どうせ罪を犯すものは出る。
ただ、少ないだろう。
ソード同盟のあの男もそういった輩から殺していったはずだから。
レジスタンスのソードは半分ほどになっている。
しかし、ブーンに賛同するものが大半だ。
つまり、あの男は外道を真っ先に殺した。
都合が良い。

( ^ω^)「案外、平和なものだおね」

('A`)「そうだな」

そう言いながらパトロールをするブーン。
ううん、多分俺達が気づいていないだけだよ。
悪党は、身を隠すのがうまいんだ。
誰かが今も犯されているかもしれないよ。



64: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 22:57:32.09 ID:vME1njrC0

( ^ω^)「とりあえず、今日はこのあたりにしておくかお」

('A`)「まあ、初日はさすがに誰も何もしないだろう」

そう言って解散した。
俺はその足でまっすぐ自分の部屋に戻る。
そして、晩飯を食べる。

('A`)「さてと…」

夜のパトロールの開始だ。
ブーンと一緒には出来ないパトロール。
さあ、嘘つきの時間の始まりだ。

「たとえ、悪人であってもまずは更生を促しましょう。
私達が殺人を犯せば、その考えは一般のソードにも伝わるわ」

そう言ったツン。
それに賛同するブーンと、皆。
口で賛同して、心は賛同しない俺。

('A`)「影法師」



66: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 23:00:37.06 ID:vME1njrC0

影法師を出して、影を広げる。
闇の力が無くなった代わりに、影の能力は力を増した。
影を広げるときも、自由に動かせる。
円状ではなく、地面に這わせるように影を広げる。
誰かが、何かしようとしたら。
直ちに暗闇のプレゼントだ。

('A`)「さて、誰も何もするなよ…」

そう呟くが、希望は砕かれる。
誰かが地面に人を引きずる。
引きずられる方は、手足をばたつかせている。
その力も弱い。
女か。
やれやれ、クソが。

('A`)「包め!」

直ちに、その二人を影で包む。
そして、走り出す。
その現場まで。



67: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 23:03:53.24 ID:vME1njrC0

('A`)「あそこか…」

場所を目視で特定する。
そして、影の中の男がソードを出すのを感じる。
何もさせやしないよ。
死ね。

('A`)「突き刺せ!」

影法師にそう命令する。
そうすれば、ほら。
串刺しの出来上がりだ。
被害者の女は、影の中で叫んでいる。

ズボ

影の中に手を突っ込み、男の死体を取り出す。
死体が残るのはまずいんだ。

('A`)「後は、これの処理だけか…」

死体を引きずりながら、川に到着。
そして、川に捨てる。
もともと、ソード同盟が殺した人を捨てるような場所。
男の顔は見ない。
誰であっても、もうかまわない。



70: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 23:05:42.48 ID:vME1njrC0

('A`)「悪く思うなよ」

そう言って、投げ捨てる。
矛盾を感じながら。
ブーン、ツン。
お前達の言っていることは理想だよ。
その理想を貫いてくれ。
だけど、その理想を達成するのに何年かかる?
一人一人が、本当に成長するのを待っていたら何百年待つんだ?

俺は無理だ。
誰かソードがお前らを傷つけるかと思ったら。
お前の理想を傷つけつるとしたら。
俺は、そいつを殺すよ。
おかしいと思うだろう。
俺もそう思う。
だけど、殺したいんだ。
悪く思うなよ。
レジスタンスはお前が思っているより、深刻なんだ。
そして、俺も。



72: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 23:07:55.11 ID:vME1njrC0

憎くて憎くてたまらないんだ。
全員を愛せないんだ。
自分の心を認めたよ。
そうしたら、憎しみは前よりも強くなったんだ。
愛したいと思うよ、お前らは。
だけど、憎いんだ。
レジスタンスが憎いんだ。
ソード同盟も憎いんだ。
平和なんて…。
あればいいよな。

('A`)「帰るか…」

そして、自分の部屋に帰る。
きっと、また渡辺がいる。
一緒に寝よう。
そうしている時は、何も考えずにすむ。



74: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 23:09:41.07 ID:vME1njrC0

俺は何でこんなことをしているんだろう。
暗殺者。
何かが壊れている。
俺の心の何かが。
それが何かは分からない。
だけど、もう戻れない
俺は、きっとこれからも殺し続けるのだろうな。

なあ、ワカッテマス。
なんでお前はあの時あんなことを…。













―――――



76: ('A`)が狭間で生きるようです ◆7L4wbnWE/1bE :2009/07/15(水) 23:11:08.52 ID:vME1njrC0

('A`)「クソが…」

また、今日もここを使おうとする馬鹿が来た。
なんで、お前らは人を傷つける?
分からないよな。
俺もお前らを殺す理由が分からないもの。
感情に任せているだけさ。
俺と同じだろ。

さあ、行くか。
今日も誰かが闇に消える。
皆と笑いたいのに、笑えない。
優しくしたいのに出来ない。
憎むことは出来るのに。

クソッタレ。











第20話「嘘つきな暗殺者」 終



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