( ・∀・)悪魔戦争のようです
- 19: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 17:31:44.39 ID:2e6uB5RZ0
- ( ・∀・)悪魔戦争のようです
- 第一話:【カラミティ】
- 24: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 17:34:51.15 ID:2e6uB5RZ0
- ( ・∀・)「……ふう。またここか」
- 俺は目の前にそびえ立つ巨大な扉を前に、小さく溜息を吐いた。
- 何度ここに来たかわからない。数えることに意味も感じない。
- ( ・∀・)「毎回毎回同じ風景で、よくも飽きないな。たまにはサービス精神ってもんを見せてみろよ」
- 誰に言うでもなく不満を漏らす。
- そもそも、この空間にいる人間は俺だけだが。
- 上を見る。暗雲垂れ込める空。右と左と後ろには、どこまで続くかわからない荒野。
- そして前には扉、だ。
- ( ・∀・)「行きますか」
- 飾り気の無い鉄扉にそっと手を触れる。
- 一秒か、二秒か。わずかなタイムラグの後、死者の怨み声のような音と共に扉が開く。
- 中に入ると、扉の割には狭い部屋だった。
- 26: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 17:37:13.38 ID:2e6uB5RZ0
- かび臭い部屋の中央。
- 白くて小さい、人形のような男が立っていた。
- 否、彼に性別はない。
- ( ∵)「ようこそ狭間の空間へ。私はビコーズ」
- ( ・∀・)「知ってるよ。相変わらず面白い顔してんな」
- ( ∵)「汝、何を望むか?」
- 会話が成り立っていないが、それは決して俺のせいではない。
- 目の前にいる彼は低級悪魔だ。人間ほどの知識を持ってはいないのだ。
- ( ・∀・)「俺に適合した悪魔に会わせてくれ」
- ( ∵)「汝、契約を望むか。よかろう、ならば緑の扉を選ぶがよい」
- ビコーズは部屋の脇へ退いて、俺に奥へ進むよう指し示す。
- 部屋の奥――鉄扉の反対側――には、三つの扉がある。緑、赤、青。
- ( ・∀・)「じゃあな」
- 軽く手を振って彼の前を通り過ぎるが、返事は無かった。
- 29: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 17:39:39.85 ID:2e6uB5RZ0
- 緑の扉を開けると――驚くべきことに、そこには『何も無かった』。
- 空も、地面も、光も、それどころか今開けたはずの扉までもが消えてしまった。
- (;・∀・)「うわあああああぁぁぁぁぁぁ!?」
- 真っ暗闇の中、俺の身体は自由落下を始める。ということは重力は存在しているわけだ。
- なんて冷静に思考していられるのも、この絶叫体験も既にもう何十回目かになるからだ。
- 声が出てしまうのだけは止められないが。
- ( ・∀・)「ひょおおおぉぉぉぉぉう、下半身のー異常なー浮遊感ッ!!」
- まあ、叫びでもしなければ発狂してしまうかもしれない。
- 何も見えない状況での落下とは、それくらい怖いのだ。
- 五分ほどそうしていると、だんだん落下の速度が緩やかになってきたように感じられてきた。
- 少しだけ辺りに明るさが戻る。
- と言っても、新月の夜くらいの明るさだ。
- ( ・∀・)「……来た来た」
- 無数の手のひら大くらいの光球が俺の周りに集まってきた。
- 30: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 17:41:46.14 ID:2e6uB5RZ0
- ある一つは俺の目の前でくるくると旋回し、ある一つは俺の身体を突き抜けて消えていく。
- 羽虫が街灯に集まるように、俺に群がる光球達。
- Σ(;・∀・)「むぐっ!」
- 唐突に衝撃。
- 地面なのか何なのかわからないが、何かに墜落して俺の落下は止まった。
- 驚いたのか、光球は一斉にどこかへ消えていった。
- (;・∀・)「ああもう! そろそろ底ですよとか標識立てとけよ空中に!」
- ( ∵)「汝、契約を望むか?」
- またもやビコーズ。しかし先程の彼とは別人……別悪魔だ。
- 俺は痛む顔をさすりつつ立ち上がる。
- ( ・∀・)「ああ。望む」
- ( ∵)「ならば我が問いに答えよ」
- ( ∵)「底の無い延髄に沈むは如何なる業火なりや?」
- 31: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 17:44:01.04 ID:2e6uB5RZ0
- ( ・∀・)「星の降らない朝に死せる靴が遺した怨念」
- ( ∵)「了承」
- ( ∵)「崩れ竜使いの黒龍を御し得るのは如何なる深遠なりや?」
- ( ・∀・)「純粋な肩甲骨のみが選択できるソーマの実」
- ( ∵)「了承」
- この問答に全く意味は無い。
- ただ自分が思いついた、とびきり複雑で難解な「それっぽい」答えを返せばいいのだ。
- あとはあっちが勝手に判断する。
- ( ∵)「鈴蘭の想い人を連れ去りし気泡は如何なる空虚を飲み込まんや?」
- ( ・∀・)「血塗られた頂上と融ける銃弾の埋もれた鉱脈」
- ( ∵)
- ――はず、なの、だが。
- ( ∵)「それは駄目だ」
- (;・∀・)!?
- 32: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 17:46:02.59 ID:2e6uB5RZ0
- ( ∵)「汝、未だ求められし段階に達せず。帰り給え」
- (;・∀・)「おい! ちょっと待てよ! 何回来てると思ってんだ!?」
- ( ∵)「帰り給え」
- (;・∀・)「おい! せめて何が足りないのか教えろよ!」
- ( ∵)「帰り給え!!」
- 唐突にビコーズの身体からとてつもない圧力が発せられ、俺は吹き飛ばされる。
- ( ・∀・)「うああぁぁぁぁ…………」
- 白いビコーズの姿が遠ざかって遠ざかって遠ざかって――――
- 溶暗。
- 35: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 17:48:23.03 ID:2e6uB5RZ0
- (;-∀-)「…………ぁぁぁぁああああッ!?」
- 三方の壁には、中身の詰まった本棚。
- 石畳の床には、十数人の少年少女が横たわっている。
- ウォルクシア国立魔術士養成所の第三実技実験室に大きな声が響き渡り、少年の内の一人・モララーは現実世界に帰還した。
- 「モララー君!? モララー=ロードネス君!? 大丈夫ですか!?」
- 先程まで部屋の中央に立ち、周囲の床に寝そべる生徒を観察していた教師。
- その教師が、生徒の身体を飛び越え飛び越え、慌ててモララーに駆け寄る。
- (;-∀-)「う……あぁ……」
- 「目は見えますか? 耳は聞こえますか? 私の言葉が理解できますか?」
- (;-∀・)「クソ……」
- ずきずきと痛む頭を手で押さえ、モララーは半身を起こした。
- 目を薄く開ける。
- (;><)
- 中性的な顔立ちをした女教師が、心配そうな表情でモララーの顔を覗き込んでいた。
- 37: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 17:50:07.22 ID:2e6uB5RZ0
- ( ・∀・)「大丈夫です……あと顔が近いです。ビロード=デス先生」
- (;><)「こっ、これは失礼したんです!」
- ( ・∀・)(あー……頭いってえ)
- 辺りを見回すと、モララーの絶叫で覚醒してしまったのか、大半の生徒が意識を取り戻していた。
- ぼうっとしている者もいれば、非難の目でモララーを睨む者もいる。
- ( ><)「……また、契約に失敗したんですか? モララー君」
- ( ・∀・)「……はい」
- 認めたくは無かったが、それが事実だった。
- 特別な才能や努力すら必要なく、『召喚術士』であればほぼ誰でも使役できるのが下級悪魔である。
- その下級悪魔とすら契約できず、自分は飛ばし戻されたのだ。
- (;><)「うーん……」
- ( ><)「まあ、そういう生徒もいます。私だって、卒業間際までは最下級の『エレメント』しか扱えなかったんです」
- ( ・∀・)「俺はその『エレメント』すら手に入れてないんですけど」
- ( ><)「いえ、ですから、才能は遅咲きの場合もあると……」
- 38: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 17:52:01.55 ID:2e6uB5RZ0
- (#^Д^)「うるせえんだよまたお前か、モララー! その口を鎖で縫い付けとけや!」
- 部屋の隅、本棚の側で横になっていた男子生徒が一人、立ち上がった。
- プギャー=アコロ。モララーと同じ召喚術学科の生徒である。
- m9( ^Д^)「この『マッドロード』がwwwww」
- (#・∀・)「あ? お前なんつった? 言っとくけど今の俺は普段の5040倍機嫌悪いよ?」
- ( ^Д^)「まともに契約も出来ないカスwwwwwwwwww」
- (#・∀・)「よーし歯ァ食い縛れ。てめえはいつかぶちのめしたいと思ってたんだ」
- (;><)アワアワアワワ
- (;><))
- (;><)●> )
- (;><)●><●> )
- Σ(;><) (<●><●> )
- モララーとプギャーの間で不審な動きをしていた、ビロードの後ろに。
- ――――いつの間にか、全身を漆黒の鎧で包んだ騎士が立っていた。
- 40: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 17:54:01.40 ID:2e6uB5RZ0
- ヘルムから覗く大きな眼が、ビロードの後頭部を見つめる。
- ( <●><●>)「呼びマシタ?」
- (;><)「呼んでないんです!」
- ( <●><●>)「でも今から呼ぼうと思ってましたよね、ワカッテマス」
- (;><)「思ってないんです! あと勝手に出てこないで下さい!」
- ( <●><●>)「フフフ……貴女が可愛らしいのはワカッテマス」
- 女教師の影であるかのように背後に立つ彼は、自身の背の丈程もあろうかという長槍を携えている。
- 上級悪魔の一派、『ソロモン72柱』の一柱――エリゴス。
- ビロードはこの黒騎士、エリゴスに『ワカッテマス』という名をつけていた。
- (;・∀・)「げ。ちょい待てプギャー」
- ( ^Д^)「臆したかモララー! 先手必勝ッ!」
- 頭に血が上り、ワカッテマスの姿が目に入っていないのか。
- プギャーは拳を握り締めてモララーに殴り掛かってきた。
- 42: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 17:56:03.64 ID:2e6uB5RZ0
- ( <●><●>)つ⊂(^Д^ )≡=-
- ガシィッ
- (;^Д^)「…………あ」
- ( <●><●>)「若いというのは良いことデス。人間にとってはネ」
- (;^Д^)
- ( <●><●>)「しかし、若いからといって喧嘩が良くないことはワカッテマス」
- (;^Д^)「ぬあっ!?」
- ワカッテマスが腕を一振りすると、プギャーは部屋の隅までぶっ飛んでいった。
- 彼の身体は本棚に激突し、隙間無く詰め込まれた本がばらばらと床に崩れ落ちてきた。
- ( <●><●>)「プギャー=アコロ。モララー=ロードネス。罰としてその本を片付けておくようニ」
- ( ・∀・)「俺もですか!?」
- ( ><)「ちょっとちょっとワカッテマス! 勝手に生徒に指示を出さないでください!」
- ( <●><●>)「じゃあ貴女が片付けますか?」
- (;><)「あうあう」
- ( ^Д^)(お前が片付けろよ)
- 43: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 17:58:13.88 ID:2e6uB5RZ0
- ( <●><●>)「では、帰りマス」
- ( < >)フッ
- そう言い残し、ワカッテマスの姿は煙のように掻き消えた。
- ( ><)「うーん……ちょうど授業も終わりの時間なんです……」
- ( ><)「じゃあ、モララー君とプギャー君には本の片付けを頼みます」
- ( ・∀・)( ^Д^)「マジかよ……」
- 落ち込む二人を尻目に、ビロードはてきぱきと荷物を片付け始める。
- ( ><)「残りの生徒は、次の契約実技の授業までに今回の成果をレポートにまとめておくように」
- ( ><)「特に、中級悪魔と契約できた生徒は丁寧に作成しなさい」
- そんな奴いねーよ、という小さな呟きが誰とも無く聞こえた。
- ( ><)「では、解散」
- 45: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 18:00:11.78 ID:2e6uB5RZ0
- 授業と授業の合間にある休み時間はわずかに二十分のみ。
- プギャーとモララーが残った第三実技実験室に、西日が差し込み始めた。
- ( ^Д^)「……ったく……おい、『リリス学』の第三巻は?」
- ( ・∀・)「ここだ。ほらよ」
- モララーが放り投げた分厚い本をキャッチし、プギャーが本棚に戻す。
- プギャーの方が背が高く、本棚の上方まで手が届くため、このような共同作業が成立していた。
- ( ・∀・)「なあ、お前は今日契約できたのか?」
- ( ^Д^)「んあ? 当たり前だろ。第四巻」
- ( ・∀・)「ほっ、と。何と契約した?」
- ( ^Д^)「え? 何? 教えて欲しいの? 土下座しなwwwwwww」
- Σ( ^Д■}≡=-
- ゲボラァッ ガスーン
- ( ・∀・)「それが第五巻……あとは一人で出来るな。じゃあ俺は次の授業があるから」
- 47: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 18:02:02.61 ID:2e6uB5RZ0
- プギャーが何やらわめいていたが――完全に無視し、モララーは実技実験室を後にした。
- 既に始業時間を過ぎているため、廊下に人気は無い。
- ( ・∀・)(そもそも俺は悪くないしなー)
- 簡素な造りの廊下には石畳が敷かれており、壁はレンガが積み上げられて出来ている。
- これでも、ウォルクシア国内では指折りの名匠による建造物なのだ。
- 世界最大の国家、ウォルクシア。
- 一つしか大陸の存在しないこの世界において、その大陸の四割を領土として所有している国家。
- それだけでもこの国の強大さが伺えるが、真にウォルクシアを大国たらしめているのはその教育水準の高さである。
- 識字率は90%を超えており、この数値は年々上昇を続けている。
- 科学技術を封印された世界でこれほどの教育を施せるのは――今のところ、ウォルクシアのみであった。
- そして、魔技術力の高度さでも、ウォルクシアは世界の頂上に立つ存在であった。
- 国立魔術士養成所。あらゆる分野で活躍する『魔法士』あるいは『召喚術士』を育成するための、この施設。
- ウォルクシアのみならず周辺諸国からも生徒を採用し、通年で鍛錬を続ける場である。
- 49: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 18:04:04.95 ID:2e6uB5RZ0
- ( ・∀・)「すんませーん。本片付けてて遅れました」
- ( ´_ゝ`)「おう、やっと来たか。お前が来ないと張り合いが無くて困る」
- 遊戯室の重い扉を開けたモララーを、筋肉質な身体の男性が迎えた。
- 生徒から『兄者先生』と呼ばれている、体育担当の中年教師である。
- 東方の島国生まれらしいだとか双子らしいだとか、様々な噂があったが、本名を含む確かな事は誰も知らない。
- 他の教室と使用目的が大きく異なるため、比較的広い空間を有している遊戯室。
- 中で忙しく動いているのは十人程の男子生徒。彼らは手に手にそれぞれの模造武器を持ち、二人組になっている。
- ( ・∀・)「あれ、今日って体術戦闘の日でしたっけ?」
- ( ´_ゝ`)「何だよ忘れてたのか。早く入れ、デルタが可哀相だろ」
- ( "ゞ)「いえいえ、先生。僕ならまだまだやれますよ……嘘ですけど」
- 木刀を手にした兄者の足下。よく見ると、柔和な顔立ちの男子生徒がうずくまっていた。
- 小さな偽ナイフを両手に持った彼は運動着の埃を払いながら立ち上がる。
- ( ・∀・)「おー、デルタ。なんでカタナ相手にナイフを選んだのかわからんが、仇はとってやるよ」
- ( "ゞ)「大きい武器では扱いきれないからね。君ほどの膂力は持ち合わせていない」
- デルタ=S=オルタナ。
- モララーの同級生であり親友でもある彼は、兄者に恭しく一礼をして歩き去っていった。
- 50: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 18:06:05.24 ID:2e6uB5RZ0
- ( ´_ゝ`)「ああ言ってるが、デルタもなかなかやるぜ。そうだな、プギャーとヒッキーの間くらいだ」
- ( ・∀・)「それほとんどの人が入ってますから」
- ( ´_ゝ`)「やっぱ俺の相手はお前じゃなきゃな……得物は何がいい?」
- 器具室へ続く扉を開けながら、モララーに問いかける兄者。
- それを聞いたモララーは不適な笑みを浮かべる。
- ( ・∀・)「いつもどおりでお願いします」
- ( ´_ゝ`)「ナックルダスターだな。これだけ金属製ってやっぱおかしいよな」
- 兄者は取り出した武具を放り投げる。
- ナックルダスター。メリケンサックやセスタスなど、拳に装着する武具の総称である。
- ( ・∀・)「刃がついてないだけマシじゃないですか?」
- 宙に弧を描いた銀色を受け取り、両手に装着するモララー。
- ( ´_ゝ`)「俺は木刀でいくぞ。いいな?」
- もちろん、とモララーは答えた。
- 52: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 18:08:04.79 ID:2e6uB5RZ0
- ( ´_ゝ`) (・∀・ )
- 適当な間合いをとって向かい合う二人。
- 生徒達が放つ衝突音や蛮声で騒がしい遊戯室において、二人の周囲だけは奇妙に静まって見えた。
- ( ・∀・)「いつでもどうぞ」
- 半身で構えるモララーが言う。
- ( ´_ゝ`)「じゃ、お言葉に甘えて」
- 言うが早いか、上段構えの兄者が一足でモララーとの距離を詰めた。
- その勢いを活かしたまま――モララーの左肩から斜めに、袈裟斬りを仕掛ける。
- ( ・∀・)「ぅお、っと!」
- 上段の構えから放たれる斬撃は基本的に片手打ちとなる。
- そのために重みは無いが、速く鋭い直線で相手を切り裂くことができるのだ。
- 後ろに避けるのは困難だと判断したモララーは、右手の甲で木刀の鎬を擦り上げ、大きく上半身を反らす事で回避する。
- ナックルダスターで保護している、ダメージは極微だ。
- ( ´_ゝ`)「まだまだ!」
- 54: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 18:10:10.25 ID:2e6uB5RZ0
- 下げた剣先を捻り、今度は斬り上げてきた。
- 身体の慣性エネルギーを利用していない分、先程よりは力がこもっていない一撃。
- 喰らっても大した威力はないと判断したモララーは、逆に兄者の懐に飛び込む。
- ( ´_ゝ`)「おりゃあ!」
- (;・∀・)「ぐっ」
- 右の脇腹に木刀がめり込む。一瞬呼吸が止まる、が。
- ( ´_ゝ`)「お?」
- 退こうとした兄者は違和感を覚える。
- ――兄者の木刀は、モララーの右腕と胴体で固定されていた。
- ( ・∀・)「もらったぁ!」
- そして、左手は、自由。
- 渾身裂帛、乾坤一擲――モララーの拳が、兄者の顔を狙う。
- 56: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 18:12:38.48 ID:2e6uB5RZ0
- ( ´_ゝ`)「あぶねえなー、お前。手加減する気ある?」
- (;・∀・)「……あ!?」
- ナックルダスターは教師の顔面を捉えてはいなかった。
- 同じく左手――兄者の大きな掌が、モララーの拳を包み込んでいたのだ。
- (;・∀・)「げげげぇ」
- 失念していた。上段の構えは片手打ち――ならば、当然、片手が余る。
- 木刀に添えていたために気がつかなかったが、兄者も左手が空いていたのだった。
- ( ´_ゝ`)「今日は俺の勝――――」
- ( ´_ゝ`)「ぐぶぇ!!」
- モララーを投げ飛ばそうとした瞬間、兄者の身体に何かが激突した。
- ( "ゞ)「あ、すいません兄者先生。周囲に注意を払っていませんでした」
- ( "ゞ)(……嘘ですけど、ね)
- デルタに突き飛ばされる格好になった兄者は、前のめりに転んだ。
- 隙を見て手を振り払い、モララーは跳び退る。
- 57: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 18:14:13.96 ID:2e6uB5RZ0
- ( ・∀・)「サンキュー、デルタ!」
- ( "ゞ)「嫌だなあ、わざと先生を突き飛ばしたみたいに言わないでくれよ」
- ( ´_ゝ`)「いててて……おいおいモララー、今のは俺の勝ちだろう?」
- ( ・∀・)「戦闘時に外的要因が無いわけないでしょう?」
- ( ´_ゝ`)「くそ……せっかく寝ないで編み出した奥義だったのに……」
- 地団駄を踏む兄者。
- 今までのモララーとの戦績は、ほぼ五分と五分であった。
- ( ・∀・)「どうせ二回は喰らいませんし、一緒ですよ」
- ( ´_ゝ`)「ぐぬぬ……じゃあもう本気出しちゃうもんね! 後で泣いて謝っても許してやんねーぞ!」
- ( ・∀・)( "ゞ)(うわぁ)
- ( ´_ゝ`)「サムライの意地を見せてや……ん?」
- 星を見るように兄者が顔を上げた。
- 60: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 18:16:08.77 ID:2e6uB5RZ0
- 刹那――――。
- 地を揺らす轟音が空気を支配した。
- (;・∀・)「何だ!?」
- 地震、ではない。この大陸は安定陸塊に属している。
- 落雷? 否、今日の天気は晴れもいいところで――。
- (;"ゞ)「……揺れてる!?」
- モララーがそんなことを考えている間も、謎の震動は遊戯室を襲い続けている。
- ( ´_ゝ`)「これは自然現象じゃないな」
- ( ´_ゝ`)「――――天使だ」
- 63: ◆BR8k8yVhqg :2009/04/05(日) 18:18:37.29 ID:2e6uB5RZ0
- 悪魔戦争。
- それは、調停者の存在しない、永遠の悪夢である。
- 第一話:【カラミティ】 了
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