( ・∀・)悪魔戦争のようです
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/17(日) 19:12:03.04 ID:1lyHGgzt0
- 声を嗄らして叫ぼうと、雲の上には届かない
- 喉を潰して叫ぼうと、土の底には届かない
- 空を見上げて光を浴びん、素晴らしき世に生まれんと
- 瞳を凝らして闇を読まん、素晴らしき世を分かたんと
- 叫べ、駆けよ、敵を討て
- 護れ、生きよ、意思を持て
- 剣を持つ者は高く掲げよ
- 盾を持つ者は友を助けよ
- 6: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:14:02.37 ID:1lyHGgzt0
- 世界を崩したいなら、泣いた雫を活かせ。
- ( ・∀・)悪魔戦争のようです
- 第三話:【ウォーフェア】
- 7: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:16:03.49 ID:1lyHGgzt0
- 眼前を埋め尽くす――敵、敵、敵。
- 兄者とビロード、加えて弟者とワカッテマス。
- 二人の人間と二体の悪魔を取り囲む下位天使『量産型ブーム』は、気の狂ったような笑顔と共に飛び掛ってきた。
- | ^o^ |「でゅくし でゅくし」
- 鈍重そうな外見とは裏腹に素早い動きで、ブームは短い手を振り回して特攻を仕掛ける。
- 大きさと数だけで言えば、この天使は、四人を圧倒していた。
- | ^o^ |「でゅくし でゅく」
- | ^/ /o/ /^|「しッ!?」
- 最も先行していた数匹のブーム。
- それらは、己の腕が敵を捉えられる距離より遥かに前で、身体を四散させて吹き飛んだ。
- ( ´_ゝ`)「――――『箒星』」
- 傍目から見れば、振り上げた『星駆』を単純に振り下ろしただけ。それだけの動作であった。
- 明らかに刀身より長い攻撃範囲。そして――何故か複数の攻撃直線。
- 9: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:18:02.56 ID:1lyHGgzt0
- (´<_` )「四時方向、五秒前……二、一、放て」
- 兄者の右後ろ側、攻撃後の隙を狙い撃つブームが二匹。
- ( ´_ゝ`)「――――『弐等星』」
- 一筋の煌き。
- 胴体を真っ二つにされて絶命した天使の眼には、ただ輝かしい軌跡のみが映っただろう。
- 兄者が放った斬撃が鞭のようにしなり、数体のブームを両断したのである。
- (´<_` )「キリがないな。いったい何匹いやがるんだこいつら」
- ( ´_ゝ`)「物量作戦は敵さんの常套手段だから、なッ!」
- 仲間の死骸を跳び越え、上空から降ってきたブーム――の顔面に前蹴りを入れ、兄者は声を張る。
- ( ´_ゝ`)「ビロード先生! ワカッテマス! そっちは大丈夫かー!?」
- ( <●><●>)「だぁ〜いじょ〜ぶダァ〜」
- (´<_` )「うわ、すげえ安心できねえ」
- 11: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:20:01.13 ID:1lyHGgzt0
- 兄者達から離れること三十メートルほど、ワカッテマスは舞っていた。
- ( <●><●>)「なんという失礼なことを言うのデスカ、あの道化師は」
- 十六、十七、十八、同時に十九二十。
- ( <●><●>)「私がこの程度の雑魚どもと敵対するに当たって、一片の苦労も必要ないことはワカッテマス」
- 退いて二十五二十六、身を翻し二十七、二十八、二十九。
- 三十体目のブームの息の根を止め、狂風の戦舞を終えた黒騎士は一旦ビロードの側へ戻る。
- 円形に形作られた血溜まりの、その中央へと。
- ( <●><●>)「お怪我ありマセンカ、我が麗しき御主人様」
- (;><)「あるわけないんです……君はもう少し地味に戦えないんですか」
- ひゅ、と風を切り、槍の血払いをするワカッテマス。
- 黒い甲冑に付着した返り血が妖しく艶めいた。
- ( <●><●>)「ほら、私、見た目が地味デショウ? せめて闘技くらいは華々しくと思いマシテ」
- ( ><)「いや……見た目も決して地味だとは思えないんです」
- ( <●><●>)「それが人間のセンスだということはワカッテマス」
- 13: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:22:04.79 ID:1lyHGgzt0
- | ^o^ |「うぬぬ こしゃくな あくまどもめ」
- | ^o^ |「ひるむなものども おしつぶせぇ」
- ワカッテマスの圧倒的な迫力を前に、一度は怯んでいた天使達だが、再び包囲の円を縮めてくる。
- ( <●><●>)「それにしても、緊張感の無い話し方をする者共デス」
- ( ><)「本人たちは至極真剣だと思いますが……」
- ( <●><●>)「フフフ――真剣になるのは結構デスガ、先に遺言状でも書くべきデスヨ」
- 騎士は主人を護るように両手を広げ、黒い長槍を握り締める。
- 小柄な女教師は――護られるだけは性に合わないとでも言いたげに、両手を胸の前で組んで魔法を起動する。
- 背中合わせの二人。顔を合わせずとも、互いの動きは手に取るようにわかった。
- ( <●><●>)「ビロード=デス。貴女が震えているのはワカッテマス」
- (;><)「ううううるさいんです! 集中させてください!」
- ( <●><●>)「本当に可愛らしい人デス」
- 14: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:24:06.83 ID:1lyHGgzt0
- 地を揺らす爆発と、唸りを上げる颶風。
- その二つが同時に起こり、無数のブームが悲鳴と共に宙に舞った。
- (;´_ゝ`)「うお!?」
- 背後から巨大な質量の触撃を受け、兄者は数メートル空を飛ぶ。
- (;´_ゝ`)「ぶべらららららららら!!」
- 地面と長い接吻を交わしながら滑り行き、弟者の足にぶつかって停止する兄者。
- 弟者は腐った生ゴミを見るような目で足下に目をやった。
- (´<_` )「……何やってんだ、兄者」
- (;´_ゝ`)「ちょ、弟者、ヘルプミープリーズ! こいつ重い! 潰れちゃうよ俺!」
- 兄者は、気絶しているらしいブームの下敷きになっていた。
- 弟者がブームを蹴って転がすと、げんなりした表情の兄者が這い出てくる。
- ( ´_ゝ`)「何、俺って『死角からの不意討ち』に好かれてるの? 最近多いんだよねマジで」
- (´<_` )「知らねーよ、注意散漫なだけだろ……頼むから仲間の攻撃の余波で死亡とかやめてくれよ」
- ( ´_ゝ`)「ワカッテマスワカッテマス。つーかあのクソ野郎俺を狙って飛ばしてきたんじゃないか?」
- (´<_` )「見てた限りではビロード先生ぽかったが」
- ( ´_ゝ`)「ならば許す。っていうか見てたんなら教えろよ」
- 18: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:26:08.86 ID:1lyHGgzt0
- ( ´_ゝ`)「――ええい、ぞろぞろうぞうぞと鬱陶しい」
- 流れるような所作で次々とブームを斬り伏せていく兄者。
- その側に寄り添い立ち、本を片手に指示を出し続ける弟者。
- 二人は――まるで一心同体であるかのように、流麗な足捌きで敵の隙間を潜り抜けていく。
- (´<_` )「そろそろリロードが必要だな、兄者」
- ( ´_ゝ`)「イエァ、じゃあちょっと頼むぜ弟者」
- | ^o^ |「ころすころす てきをころす」
- Σ| ^o⊂ニ(´<_` )≡=-
- グエア アドッコイショー
- 太刀『星駆』の鎬に刻まれた溝。兄者はその溝に軽く指を触れ、目を閉じる。
- ゆっくりと指をスライドさせる――と、その軌跡に淡い光が生まれた。
- 『星駆』の刀身には幾本もの光の筋が描かれ、それらは小さく脈動している。
- 兄者の剣技の秘密は、この特殊な太刀の構造にあった。
- 溝に魔力を注ぐことでそれ自身が魔法を宿し、特殊な斬撃が可能となるのだ。
- ( ´_ゝ`)「充電完了、っと。そろそろ半分くらいか?」
- 20: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:28:09.97 ID:1lyHGgzt0
- 一方、ビロード&ワカッテマス組。
- ( ><)「――月を隠せ砂塵、針を削れ羅刹、我が怨敵は求道者にて」
- 魔法を発動するための詠唱を、かれこれ五分以上も続けるビロード。
- その隙を狙うブームが続々と襲い来るが、その全てはワカッテマスの槍によって肉片と化す。
- ( ><)「レヴィ・ロヴロディエント・ディスティザード――」
- 天に掲げていた手から藍色の光が溢れ出し、ビロードの意思に応じて四方に散っていった。
- ( ><)「――――『ヘルテス・ウアタイル』!!」
- 世界を漂白するかのような、激烈な閃光。
- 浮遊させた魔力の全てを電流に変換し――雷撃を、辺り一面に降らせたのだ。
- ( <●><●>)「……素晴らシイ」
- 神罰のような一撃を受けた者はその場で爆散し、運良く直撃を免れた者も、半分程度は脳を沸騰させて死んでいた。
- 上級悪魔・エリゴスをもってして感嘆させるほどの威力。
- 生徒時代のビロードが常にトップクラスの成績を誇っていたのは、単純に魔法の強力さに因っていた。
- ( ><)「ふう……だいぶ数を減らせたんです?」
- ( <●><●>)「ほとんど全滅させたことはワカッテマス」
- 21: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:30:04.41 ID:1lyHGgzt0
- (´<_` )「本当に凄いな、ビロード先生の魔法は」
- 何やら黒焦げの物体を背負った弟者が、天使の死体を踏み越えて歩いてきた。
- ( <●><●>)「そのゴミは何ですか?」
- (´<_` )「え? ああ、コレ? 兄者」
- (##ゝ#)チーン
- ( ><)「きゃああああ兄者先生ェェェェッ!?」
- ( <●><●>)「これはまたちょうどいいミディアムレア……」
- (´<_` )「大丈夫大丈夫、兄者だし。死なない位置に誘導しといたから」
- (##ゝ#)チーン
- ( ><)(え? これ生きてるの?)
- (´<_` )「さーて、生き残りはどんだけかなー、っと」
- 手に持つ本のページをめくりつつ、ゆっくりと辺りを睥睨する弟者。
- 24: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:32:07.35 ID:1lyHGgzt0
- (´<_` )「……あ?」
- 本の片隅に記載された一節。それが、弟者の視線を釘付けにした。
- 『ヒッキー=ディフォー は 我が旗の下を 去る』
- (´<_`;)「おいおい」
- ダンタリオンの本。それは、未来を予知する魔法を宿す。
- 知りたい事を知れるわけではないが、書かれた事は絶対に実現するのである。
- 『旗の下を去る』という文章が示す未来には――弟者の経験上――二つの種類がある。
- 一つは、裏切り。
- 一つは、死亡。
- いずれにせよ、ヒッキー=ディフォーの身に何かが起こる。あるいは、周囲の人物に、か。
- そして――今、数名の生徒が、ヒッキーと行動を共にしているはずなのである。
- 25: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:34:06.34 ID:1lyHGgzt0
- 弟者は視線を上げ、口を開きかけた。
- そこにいるはずのビロードとワカッテマスに、自身の予言を伝えようと思ったのだ。
- (´<_`;)「――――ッ!!」
- だが、そこに、二人の姿は無かった。
- 巨大な白い立方体。
- (´<_`;)「『空間封鎖』か!? クソ、いつの間に接近されてた!?」
- 一辺五メートルほどの壁。弟者はその壁に拳を叩きつけるが、壊れる気配はない。
- 『空間封鎖』――上位天使、もしくはごく一部の上級悪魔が使用できる『古魔法』の一つである。
- 光・音・熱・重力・圧力・その他、外部からの物理的な影響の一切を無視する空間を作り出す魔法。
- 古魔法を使用できる悪魔は、人間界には存在しない。これは明らかに上位天使の仕業だ。
- 中に篭っているのもまた上位天使であるとは限らないが、少なくともビロードとワカッテマスを始末するつもりなのは間違いない。
- ( ´_ゝ`)「なんと、俺たちの分断を狙ってくるとは」
- (´<_`;)「おわっ! 生き返った!」
- ( ´_ゝ`)「これを壊すのは骨が折れるな……雑魚の生き残りを片付けた後にするか」
- (´<_` )「そうだな……ところで兄者、ちょっとこの本を見てくれ」
- 26: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:36:02.76 ID:1lyHGgzt0
- 【第二学舎一階廊下】
- ( ・∀・)「ふっ、りゃあ!」
- 人気のない廊下。鋼を叩いたような鋭い声が響き渡る。
- ブームの大きな顔をがっしりと掴み、背負い投げるモララー。
- | ^o^ |「ぐあ やられた」
- 激しく壁に叩きつけられたブームは、その言葉を最後に気絶した。
- | ^o^ |「つぎは わたしです」
- (;・∀・)「はぁ……はぁ、ちくしょ、何匹いんだよお前ら……」
- 額、頬、次々と流れ出てくる汗を手の甲で拭う。彼が戦闘を開始してから、既に、三十分が経過していた。
- | ^o^ |「ひゃっふー」
- 新たな敵が突進してくるのを見た。モララーはその場で真上に跳躍する。
- | ^o^ |「おおっと」
- ( ・∀・)「ちょっと失礼っ」
- 敵の頭に手をつき、跳び箱の要領で跳び越えた。
- 31: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:38:09.87 ID:1lyHGgzt0
- ( ・∀・)「飛んでけ!」
- 着地と同時に、ブームの背中の中心点に掌打。
- 渾身の一撃によって、下位天使の巨体は軽々と宙を舞った。
- ( ・∀・)「っていうか何でこんなに侵入されてるんだよ、ここの警備はどうなって」あああああっ!?」
- ( ・∀・)?
- 微かに女の悲鳴のようなものが聞こえた。ブームを殴り飛ばした方向からだ。
- ( ・∀・)「……逃げ遅れか? 面倒だなー」
- 辺りを見回す。今のところ新手はいないように見えた。
- 声が聞こえた方向へ向かってゆっくりと歩くモララー。
- ( ・∀・)「おーい、誰かいるのか?」
- 気を失っているブーム達の間を、大きな声を張り上げながら探すが、一向に返事はない。
- 幻聴か何かかとモララーが考え始めたその時、一人の女生徒が床に倒れているのを見つけた。
- ξ--)ξ
- 32: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:40:02.25 ID:1lyHGgzt0
- (;・∀・)(うわあ……なんだコイツ……なんでこんな暑苦しい格好してんの?)
- ξ--)ξ
- ツン=D=パキッシュ、その人であった。もっとも、モララーが彼女の顔を見たのは初めてである。
- 彼女の冷気に対する完全武装を目にしたモララーは、自分まで体温が上昇するような気がした。
- ( ・∀・)(生徒みたいだな。関わりたくないなー出来れば)
- ( ・∀・)(つーか暑くて気絶してるんじゃね? 服脱がしてやるべきかな)
- 彼女の分厚いコートの端を、モララーは引っ張った。
- ξ-听)ξパチリ
- ξ゚听)ξ(・∀・;)
- ξ゚听)ξ「……強姦魔?」
- (;・∀・)「……いいえ、ケフィアです」
- ξ゚听)ξ「あら、そう」
- ( ・∀・)(あっれーおかしいなーこういうのは兄者先生の役目じゃないかなー)
- 34: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:42:01.44 ID:1lyHGgzt0
- ツンはむくりと起き上がる。モララーはあわてて彼女の服を放した。
- ξ゚听)ξ「あいたたた……」
- ( ・∀・)「悪いな、まさか人がいるなんて知らなかったんだよ。事故だかんな」
- ξ゚听)ξ「許すわ。ここまで延々と死体が落ちてたんだけど、あんたがやったの?」
- ( ・∀・)「死体?」
- モララーはその単語に首を傾げる。
- ( ・∀・)「いや、俺は気絶させて放置しといただけだぜ」
- ξ゚听)ξ「え……でも、相当にスプラッタな状態で転がってたわよ、あっちの方」
- そう言って、ツンは廊下の一方を指差す。
- それは確かにモララーが進んできた道であった。
- ξ゚听)ξ「ばらばらに引き裂かれてたり。あんたじゃないの?」
- ( ・∀・)「よく考えろよ、俺は人間だって。そんな力が出るように見えるか?」
- ξ゚听)ξ「え? 人間なの?」
- ( ・∀・)「えっ」
- 36: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:44:04.48 ID:1lyHGgzt0
- ( ・∀・)「どう見ても人間じゃん」
- ξ゚听)ξ「じゃあなんで素手で戦ってるわけ? 魔法は? 召喚術は?」
- (#・∀・)イラッ
- (#・∀・)「うっせーな、素手じゃねーよ。このナックルが見えないのか」
- ξ゚听)ξ「素手みたいなもんじゃない」
- (#・∀・)イライラッ
- (#・∀・)「悪かったな、俺は魔法も召喚術もほとんど使えないんだよ」
- ξ゚听)ξ「え? じゃあなんで魔術士養成所にいるの?」
- (#・∀・)イライライラッ
- ξ゚听)ξ「あ……そうか、あんたが噂の『マッドロード』ね」
- ( ・∀・)プッツーン
- 38: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:46:06.09 ID:1lyHGgzt0
- ( ・∀・)「あのさ、お前もうどっか行けよ。邪魔極まりないから」
- ξ゚听)ξ「なんでよ。あたしも戦うわ」
- (;・∀・)(このウザさはどうやって鍛えたんだ? 天然か?)
- ξ゚听)ξ「言っておくけど、あたし、魔法の成績は結構いいのよ?」
- ( ・∀・)「知らねーよ。俺はお前と組む気は無いぜ」
- ξ゚听)ξ「じゃあ誰があんたを護るの?」
- ( ・∀・)「え? 何様?」
- ξ゚听)ξ「今はいいだろうけど、あっちが魔法を使ってきたらどうするのよ。対抗要員が必要でしょ?」
- モララーは頭を抱えた。
- 目の前のこの女、性格は最悪だが、言う事にはいちいち筋が通っている。
- ( ・∀・)「仕方ねーな……」
- ξ゚听)ξ「じゃあ決定ね。あたしは魔法学科三回生、ツン=D=パキッシュよ」
- ( ・∀・)「俺は――知ってるみたいだが――召喚術学科三回生、モララー=ロードネス」
- それと、とモララーは付け加えて。
- ( ・∀・)「二度と俺を『マッドロード』と呼ぶな。次言ったら女でも殴るぞ」
- 39: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:48:07.18 ID:1lyHGgzt0
- 【第三学舎二階】
- ( "ゞ)「明るいときに見えないものが暗闇では見える――とは言うけれど、ここまでくると過剰演出だね」
- 塗り潰されそうな漆黒の中で、困ったようにデルタは呟いた。
- 試しに右手を小さく上げて掌を見つめてみるが、うっすらと輪郭がわかる程度にしか視認できない。
- ( "ゞ)「空間封鎖。上位天使か――何だよ、片付けられてないじゃないか。弟者も嘘吐きだなあ、僕には劣るけれど」
- 遡ること十分。
- デルタとヒッキーは、持ち出した武具を生徒達に分けるため、構内を奔走していた。
- ほとんどの生徒は避難済みであり、戦闘を行っている者は非常に少なかったが、それでも上級生の何人かに接触できた。
- ヒッキーの精確無比な魔法、そしてデルタの戦術。道中の下位天使などは問題にならなかった。
- 『それ』は、廊下の真ん中に立っていた。
- (*゚ー゚)
- 小さい女の子に見えた。もし生徒だとすれば、おそらくは一回生。
- 二人は大した疑念も抱かず、彼女に接近した。
- 次の瞬間には、闇の中だ。
- 41: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:50:03.43 ID:1lyHGgzt0
- ( "ゞ)「思わないよ……まさか学舎内に上位天使がいるなんて、さ」
- もちろんあの天使が上位だとは限らない。
- 詳しくは知らないが、空間封鎖は自分からかなり離れた場所にも発動できるらしいからだ。
- しかし、視界が黒に閉ざされる寸前に、彼女の声を聞いたのだ。
- (*゚ー゚)『私の名はC=キスノック=オファニエル』
- ――名乗りを挙げた。
- 中位以上であることは間違いない。
- ( "ゞ)「さて……襲われないということは、彼女はこの中にいないのかな? 何が目的なんだろう」
- デルタは手を振って空気を掻き混ぜてみる。近くに壁があるような感じではない。
- どうやら、封鎖された空間内は、完全に外界から隔離されている。内側からは壊せなさそうだ。
- ( "ゞ)「契約履行、『エレメント』具現化」
- デルタがそう詠唱すると、「ぽわん」という軽い音と共に、中空に炎が現れた。
- 炎、と表現したが、その形状は単純な火炎のそれではない。
- 蒼く輝く人魂。そう言い表すのが適当だろう。
- 下級悪魔――エレメント。他の全ての悪魔よりも弱い、最下級悪魔とも言えるちっぽけな存在である。
- 攻撃力、特になし。知能、特になし。用途、特になし。強いて言えば、明かりに使われるくらいだ。
- 周囲の熱を吸収する性質があるため、一時間ほども敵と密着させれば凍死を狙えるが――そんな戦法に意味は無い。
- ( "ゞ)「これで少しは明るくなったね」
- 43: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:52:02.30 ID:1lyHGgzt0
- 浮遊するエレメントによって明るくはなったが、状況は改善されていない。
- 自分の姿が良く見えるようになっただけだ。
- ( "ゞ)「ヒッキー君もこの中かな。彼が外にいれば助けも呼べるだろうに」
- 冷静沈着を信条としているデルタにしては珍しく、焦ったような表情で唇を噛む。
- ( "ゞ)「早いとこモララー君に合流しなくちゃ……」
- その時、視界の片隅で小さな光が灯るのが見えた。
- デルタは何者かの目に留まることを警戒し、エレメントに小声で指示を出して光度を抑えさせた。
- ( "ゞ)(……誰だろう)
- こつ、こつ、こつ、と靴音を響かせながら、光は真っ直ぐにデルタの方へ向かってくる。
- (-_-)「あ」
- 顔を判別できる位置まで来て、その人物は声を上げた。掌に魔法の光を携え、不安げな顔をした青年。
- デルタにとっては望ましいことに、それは見慣れた友であった。
- ( "ゞ)「ヒッキー君か……良かった。怪我はない?」
- (-_-)「うん。天使はこの中にはいないみたい」
- 46: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:54:01.28 ID:1lyHGgzt0
- 再び指示を出し、エレメントの出力を強くするデルタ。
- 蒼い光と、ヒッキーの魔法による緑色の光が混ざり合い、幻想的な灯火を作り出した。
- (-_-)「空間封鎖……」
- ( "ゞ)「内側からは絶対に出られない。誰かが気付いてくれるといいんだけど」
- ( "ゞ)(それにしても、僕達を閉じ込めて何がしたいんだろう?)
- 各個撃破、にしては攻撃がない。単なる隔離、にしては自分達はそれほどの脅威とは思えない。
- ( "ゞ)「使用した本人が許可した者だけは、自由に出入りできるらしいよ。古魔法って結構便利だね」
- (-_-)「へえ……そうなんだ」
- ( "ゞ)「聞いた話では、使用者の性別を転換する古魔法もあるとか」
- (-_-)「本当?」
- ( "ゞ)「嘘だけどね。そもそも人間だけじゃないかな、性別転換したいなんて考えるのは」
- 魔法や召喚術については研究され尽くしたと言っても過言ではない現在、未だに古魔法だけは人間の手に余る存在である。
- ( "ゞ)「どうする、しりとりでもして気長に救助を待つ?」
- デルタがそう言った時、甲高いノイズと共に空気が粉々に割れ、薄い硝子のような破片が煌いた。
- 48: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:56:04.08 ID:1lyHGgzt0
- 一刹那。空間封鎖が破壊されるのに要した時間は、瞬きにも満たぬほどであっただろう。
- それはシャボン玉が割れるのにも似た、美しき崩壊だった。
- 風鈴のように涼やかな音が静まると、眼前には元通りの風景があった。
- レンガの壁に天井、石畳の床。見慣れた学舎の色。
- そして、そこに立つのは二人の人物。
- ξ゚听)ξ「あら、以外にあっさり壊れたわ」
- 黒いマフラーと帽子の隙間から白い顔を覗かせ、巨大なハンマーを手にしたツン=D=パキッシュ。
- ( ・∀・)「おー、しかも見た顔が二人も」
- そして、ツンの後ろでにやにやと笑うモララー=ロードネス。
- ( "ゞ)「助かったよ、っと……異常に暑苦い格好の君は誰だい?」
- デルタが問うと、ツンは鉄槌を分解して消滅させ、答える。
- ξ゚听)ξ「どんな服着ようがあたしの勝手でしょ。先に名乗るのが礼儀ってもんじゃないの?」
- ( "ゞ)「悪いけど、見知らぬ他人のための礼儀は持ち合わせてなくってね」
- ξ゚听)ξ「なんて器のちっちゃい男かしら。本当は女なの? 妙に綺麗な顔してるし」
- ( ・∀・)「あーもー面倒くせーなお前ら。自己紹介くらいちゃっちゃと済ませろよ」
- 50: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 19:58:05.08 ID:1lyHGgzt0
- お互いに自己紹介を終え、ヒッキーの提案で一旦大職員室へ向かうことにした四人。
- やはり自分の好きに動いていても効率が悪い、きちんと作戦を立てた上で行動をしようということになったからだ。
- ( ・∀・)「適当に進んでたら、妙な壁で廊下が塞がってたから」
- とりあえず壊してみることにしたのだ、とモララーは語った。
- ( ・∀・)「殴ってもびくともしねーし、試しにこの女に魔法撃たせてみたわけ」
- ξ゚听)ξ「この女って何よ」
- (-_-)「凄いね……そう簡単には壊せないと思うよ」
- ( ・∀・)「そうなん?」
- ( "ゞ)「……まあ君は知らないだろうけど、あれは古魔法の一つだからね」
- ( ・∀・)「何だ古魔法って……お?」
- 先頭を歩いていたモララーが足を止める。
- 角を曲がってきた人物と鉢合わせたが故にである。
- ( ^Д^)「お、モララー」
- 52: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:00:16.23 ID:1lyHGgzt0
- すらりと高い背の丈。全方位に尖った、反逆精神を表すかのような髪の毛。
- プギャー=アコロであることがわかった瞬間、モララーは壮絶に嫌な顔をした。
- ( ・∀・)「うわ、この状況でコイツと遭っちゃうかね」
- ( ^Д^)「何だそれ。っつーか随分大所帯だなお前ら」
- ( "ゞ)「プギャー君も戦ってるのかい?」
- ( ^Д^)「まあな……ちょうどいいや、デルタ、少し手伝って欲しい事があるんだが」
- ( "ゞ)「僕に?」
- ( ^Д^)「ああ、大講義室に何人か下級生が取り残されてるらしくてよぉ」
- ( ・∀・)「てめえ一人で行けばいいじゃねーか」
- ( "ゞ)「…………わかった、いいよ」
- ( ・∀・)「おいおい」
- ξ゚听)ξ「ちょっと、二人だけで大丈夫なの?」
- ( ^Д^)「心配いらねーよ、ツン。行くぞ――デルタ」
- 54: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:02:04.26 ID:1lyHGgzt0
- さっさと走り去っていった二人の背中を見送りながら、ツンは呟く。
- ξ゚听)ξ「あたしはあの人の名前を知らないけど、あの人はあたしを知ってるみたいね」
- モララーにヒッキー、デルタまでが自分を知らなかったのに、あの生徒は知っていた。
- ほとんどまともに授業に出ない自分を、だ。これはツンにとって新鮮な衝撃であった。
- ( ・∀・)「クソ、なんとなく釈然としないな」
- (-_-)「とりあえず急ごう。大職員室へ」
- ( ・∀・)「ああ……。ヒッキー、何か今日はやけにハッキリ喋るな。いいことでもあった?」
- (-_-)「いや……今のところ悪いことしか無いと思う」
- ( ・∀・)「そっか」
- 階段を下る。あと五十メートルも進めば大職員室だ。
- ( ・∀・)「そういえばツン、そろそろその異常な厚着の理由を教え――」
- 踊り場。次の瞬間、「開いた口が塞がらない」という慣用句の意味を、モララーは身をもって知ることになった。
- (/ナД爻)
- 先程見送ったはずのプギャーが、見るも無残な姿で倒れていた。
- 56: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:04:09.29 ID:1lyHGgzt0
- (;・∀・)「プギャー!? おい、大丈夫か!?」
- 即座に駆け寄り、プギャーの身体に触れるモララー。
- 全身に無数の裂傷や打撲痕、呼吸は薄弱。流血が床に紅い模様を描いていた。
- (/ナД爻)「あ……モララー……」
- (;・∀・)「喋んな馬鹿!!」
- 急いでプギャーのシャツを細く裂き、きつく巻いて大きな傷の止血を試みる。
- すぐに布が足りなくなったので、モララーは自分の服も破いた。
- ξ;゚听)ξ「ちょっと、あんた治癒魔法使えないの?」
- (;-_-)「無理だよ。君は?」
- ξ;゚听)ξ「疲れ目とか胃もたれなら治せるけど、それじゃダメよね?」
- (;・∀・)「駄目に決まってんだろ! ああもう、職員室から誰か呼んで来い!!」
- ξ;゚听)ξ「仕方ないわね……」
- 57: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:06:08.81 ID:1lyHGgzt0
- コートを翻して階段を駆け下りようとする。が、そこでツンの動きはピタリと止まった。
- ξ;゚听)ξ「え……どうしてあんたが?」
- 階下にはデルタ=S=オルタナがいた。
- プギャーと行動を共にしていたはずの、彼が。
- ( "ゞ)「どうかしたのかい?」
- 凛と響く声を聞き、モララーとヒッキーもその方向を見る。
- 普段と変わらず超然とした様子で――デルタは一段ずつ階段を上って来る。
- (;・∀・)「デルタ……?」
- 何故、デルタがここにいるのか。
- 何故、プギャーはこれほどの大怪我を負っているのか。
- ――何故だ?
- その疑念に決着がつく前に、視界の隅で影が走った。
- (-_-)
- ヒッキーだ。
- どこから取り出したのか、羽のような装飾のついた片刃剣を握っている。
- 60: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:08:07.95 ID:1lyHGgzt0
- (;・∀・)!?
- 素早い動きでヒッキーは階段を駆け下り、デルタとの距離を詰め――。
- 右手を一閃した。
- ( "ゞ)「え?」
- ヒッキーの片刃剣は綺麗な軌道でデルタの首を掻き切っていた。
- 驚きの表情のまま、彼の頭部は胴体から切り離される。
- ξ;゚听)ξ「――――!!?」
- 空中でくるくると回転する生首。
- 思わず叫び声を上げそうになり、ツンは慌てて自身の口を手で塞いだ。
- (;・∀・)「おい、ヒッキー!? 何やってんだ!?」
- 落下してきたデルタの頭を手掴みで受け止めたヒッキーは、モララーの方へ向き返る。
- どさりと音がして、ヒッキーの背後でデルタの胴体が倒れ伏した。
- (-_-)「これをよく見て」
- 62: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:10:01.56 ID:1lyHGgzt0
- ヒッキーは左手を挙げてデルタの生首を示し、右手の剣でデルタの胴体を示す。
- (-_-)「血が出てないよ」
- 通常――首を切断されたら、胴体からは大量の血液が噴出する。それこそ、天井まで届くような勢いで。
- しかし、デルタの遺体からは、一滴の血も流れ出ていなかった。
- 切断面は間違いなく本物に見えるが、どう考えてもありえない状態である。
- ξ;゚听)ξ「え……どういうこと?」
- (-_-)「人間じゃない。これはきっと天使だ」
- ( ・∀・)「……なーる。デルタを連れて行ったプギャーは偽物か」
- (-_-)「多分、僕達に声をかけてきた彼がデルタ君を殺し、デルタ君に化けて戻ってきたんだろう」
- ξ;゚听)ξ「変身能力――ここで倒せて良かったわね。じゃ、あたしは人を呼んでくるから」
- デルタ(の偽物)の死骸を乗り越え、ツンは走り去っていった。
- ( ・∀・)「…………」
- ( "ゞ)
- ヒッキーが持っているデルタの顔と、目が合った。
- 65: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:12:05.36 ID:1lyHGgzt0
- ( ・∀・)「…………」
- ( "ゞ)
- デルタが死んだ。無二の親友だったが、不思議と悲哀は感じない。
- 信じられないのだ。デルタ=S=オルタナという存在が永遠に失われたという事実が。
- もちろんこの死骸は名も知らぬ天使の物で、デルタではない。
- だが、この学舎のどこかで、同じように骸となって転がっていることは間違いない。
- ( ・∀・)(……名も知らぬ?)
- 違和感。何かがおかしい、道理に反しているという、微かな疑念。
- ( ・∀・)(何だ、何だ、何だ? 考えろ、俺)
- ( "ゞ)
- プギャーの応急手当を終えた。恐らく命に別状は無いだろう。
- 毎度毎度『マッドロード』と、モララーが最も呼ばれたくない名前を口にする宿敵だが――
- ( ・∀・)(名前?)
- ――名前。そう、そういえば、デルタを連れて行ったときのプギャーは、確かこう言っていなかったか。
- ( ^Д^)『お、モララー』
- 68: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:14:02.77 ID:1lyHGgzt0
- ( ・∀・)(……となると、どうなるんだ?)
- 天使がモララーの名前を知っていた可能性もあるが、それは無視できるほどの小ささだ。
- 一介の召喚術士『見習い』に過ぎない自分の名が天使たちに広まっているはずはない。
- あの時のプギャーと、今倒れているプギャーが、同一人物かつ本物だった?
- それならば、重傷のプギャーを放っておいてデルタはどこへ消えたのか。
- 天使がプギャーだけを痛めつけ、デルタは連れ去った? その思考は不自然だし不可解だ。
- 何より、大講義室へ向かったはずの二人が自分達を追い抜けるわけがない。
- (-_-)「ふう……応急処置は済んだ?」
- 手に持っていた生首を放り投げるヒッキー。
- ( "ゞ)
- ( ・∀・)「――ああ」
- ごろごろと転がり、デルタではない首はモララーの足にぶつかり、
- ( "ゞ)「見下されるって新感覚だな」
- そして、口を開いた。
- 72: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:17:17.17 ID:1lyHGgzt0
- ( ・∀・)
- ( ・∀・)
- ( ・∀・)?
- ( "ゞ)「おい、拾えよ。俺をよ。ヒッキーに気付かれる前に」
- ( ・∀・)
- ( ・∀・)
- ( ・∀・)?
- ( "ゞ)「あ、何、混乱してんのお前? やべーおもしれー、じゃあもっと面白くしてやるよ」
- ( "ゝ)スッ
- ( ´>`)スッ
- ( ´_>`)キュッ
- (´<_` )クルッ
- ( ・∀・)「兄……じゃない、弟者!?」
- (´<_` )「はいおr……なんだよ……先に言うなよ……」
- 74: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:19:32.64 ID:1lyHGgzt0
- (´<_` )「とにかく早く拾え。ヒッキーに気付かれるな」
- 何がどうなっているのかモララーにはわからなかったが、とりあえず言われた通りに弟者の頭を拾い上げる。
- 一応、ヒッキーから見えないように顔を自分側に向けた。
- (-_-)「?」
- (;・∀・)(怪しまれて……ない、か?)
- (´<_` )「モララー。どうにかして俺の身体に俺の頭をくっつけろ」
- (;・∀・)(難易度たけえええええええ!)
- (-_-)「なんと、生きていましたか」
- (;・∀・)「ばれてたああああああああ!」
- と、そこでモララーは気付く。
- ヒッキーの顔、体格、服装、全ての輪郭がぼやけていた。
- 77: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:21:16.01 ID:1lyHGgzt0
- (-_-)
- (゚_゚)
- (゚ー゚)
- (*゚ー゚)
- そこに現れたのは、外見十三歳くらいの少女。
- (*゚ー゚)「私はC=キスノック=オファニエル、中位天使です。騙しててごめんなさいね」
- にこりと微笑んだ彼女は――妙に蟲惑的に見えた。
- ( ・∀・)
- (´<_`;)「ボケっとしてんなコラ、相手が名乗ったって意味はわかってんだろうな?」
- オファニエルの高く掲げた手、その可憐な掌で風が渦を巻く。
- (*゚ー゚)「空を――走る――雲を――吹き消せ――」
- 唄うように言葉を紡ぎ出す、天使独特の詠唱。
- 風は小さな嵐となり、唸りを上げる塊と化す。
- 78: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:23:04.58 ID:1lyHGgzt0
- (*゚ー゚)「リヴィ・セオウィギア・スィオンコード――」
- (´<_`;)「――来るぞ!!」
- (*゚ー゚)「『シュヴェヒャ・ヴィント』!」
- 詠唱の終了と共に――天使は腕を振り下ろした。
- 突風が石の階段を駆ける。
- (;・∀・)「う、お、おわっ!?」
- 襲い来る幾筋もの真空の刃をしゃがんでやり過ごし、風圧に耐えるモララー。
- 弟者の頭が飛ばされそうになったが、髪の毛を掴んで引き戻した。
- (´<_` )「おいおい、頭を割られたら流石の俺も死ぬんだぜ?」
- (;・∀・)「だったら早く再生しやがれ!」
- (´<_` )「えー、一から生やすの疲れるんだがな……仕方ない」
- ぐちゅぐちゅ、と気持ち悪い音がして、弟者の首から濡れた触手が飛び出す。
- その触手が互いに絡まり合い固まり合い、数瞬の後には人間にそっくりの身体が完成していた。
- (*゚ー゚)「…………ッ!」
- (´<_` )「? ……あ、服忘れてた」
- 82: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:25:20.39 ID:1lyHGgzt0
- ( ・∀・)「敵にすらセクハラを忘れない精神……ある意味尊敬に値するぜ……」
- (´<_` )「いやいや違うぞ? わざとじゃないぞ? あといつもセクハラしてるみたいな発言はやめろ」
- (*゚ー゚)「死んで下さい!!」
- 顔を真っ赤にしたオファニエルが叫び、『シュヴェヒャ・ヴィント』を連発する。
- 鎌鼬が床や天井や壁を削り取り、無数の石の破片が爆散した。
- ( ・∀・)「っち、クソ、この変態のせいで……!」
- (´<_` )「俺は悪くない」
- (´<_` )「……にしても、このままだとプギャーが死ぬな」
- 軽い身のこなしで攻撃を避けつつ、細い目でプギャーを見る弟者。
- 床に伏しているが故に風の刃は直撃していないが、時間の問題に思われた。
- (´<_` )「本も置いてきちまったしなあ」
- ( ・∀・)「さっぱり状況がわかんねえ……説明しろ説明」
- (´<_` )「後でたっぷりしてやるよ。とりあえずデルタは生きてる」
- ( ・∀・)「え? マジで?」
- 84: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:27:23.23 ID:1lyHGgzt0
- 弟者は考える。
- 大職員室に近いのは自分達のほうだ。退く事は容易い。あそこには十名近くの教師が控えているはず。
- しかし、彼らは上級悪魔を召喚できない。召喚できる四人(兄者・ビロード・ダイオード・モナー)は出撃中だ。
- 加えて、数百人はいるであろう、避難した生徒の存在。
- 中位天使の一体程度、何も恐れることはないが、何人かは犠牲になってしまうかもしれない。
- (´<_` )「生きるべきか、死ぬべきか――なんて問うのは、それこそ神にしか許されないだろうな」
- 間も無くツンが誰かを連れて戻ってくるだろう。時間は残されていない。
- ならば、ここで自分が採るべき行動とは?
- 後退が――許されないとしたら?
- (´<_` )「よく聞け、C=キスノック=オファニエル!!」
- モララーを背後にかばいつつ、弟者は精一杯胸を張って宣言する。
- (´<_` )「俺の名は弟者! 千の貌を持つ『ダンタリオン』だ!」
- (*゚ー゚)「これはどうもご丁寧に。ちなみに私も変身を得意としてい」
- (´<_` )「聞かん!!」
- 弟者はモララーを強引に背負い、跳躍。手摺、窓枠を蹴ってさらに上昇。
- (*゚ー゚)「まして……ってちょっと!」
- 85: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:29:42.90 ID:1lyHGgzt0
- (´<_` )「モララー! 天井を崩せ!」
- (;・∀・)「ちょっおまそれマジで言ってんのか!?」
- 仰天したモララーは上を向く。既に目と鼻の先にまで冷たい質量が迫っていた。
- (;・∀・)「うおああああ!?」
- 力任せに拳を突き出す。石とレンガで造られた天井は存外にもろく、不十分な姿勢からの一撃にすら大きな穴が開いた。
- ( ・∀・)「おおおおお! 何、俺ってすげえ!」
- (´<_` )「実は相手の魔法で傷付いた部分を狙っただけでしたー、残念!」
- ( ・∀・)「えぇ……そこは黙っといてくれよ……」
- 穴をくぐり、二階の床に着地。モララーを放り投げる弟者。
- (´<_` )「屋上だ! ゴーゴーゴー!」
- 二人が階段を駆け上り始めると、背後で轟音が鳴り響いた。
- (*゚ー゚)「――逃がしませんよ?」
- 身体を旋風で包んだオファニエルが、二人が開けた穴をくぐり、追ってきたのだ。
- 90: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:32:38.11 ID:1lyHGgzt0
- (;・∀・)「っんだよ飛べんのかよ! 弟者、屋上行ったらやばいんじゃないのか!?」
- (´<_` )「信じろ! 俺を信じる俺を信じろ!」
- (;・∀・)「それ要するに『信じろ』だろうが!」
- 四段飛ばしで走るモララー。背筋が総毛立つ。跳び込み前転。
- 一瞬前まで彼の身体があった空間を、天使が放つ不可視の死神が灼いて行った。
- (´<_` )「いい勘してるな」
- (;・∀・)「つーかアレは? 予知本は?」
- (´<_` )「だから兄者に渡してきたんだって」
- 猛攻をなんとか躱し続け、二人は屋上へと繋がる鉄扉の前まで辿り着く。
- (´<_` )「『ブールローカ』」
- 弟者が開錠コードを口にすると、何重にも掛けられていた鍵が、次々と連鎖して解けていく音がした。
- (´<_` )「言っておくが、コードは毎日変わるからな」
- 屋上へ出る。急いで扉を閉めると、自動的に再び施錠された。
- 大きな煙突が中央にそびえ立ち、今出てきた階段の出口とそれ以外に目に付く物は全くない。
- 92: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:34:47.06 ID:1lyHGgzt0
- 時は夕刻。空は一面が紅に染まっている。
- この場所へ来た意味をモララーが問おうとした時、盛大な爆発が巻き起こった。
- 屋上に突き出た箱を粉々に吹き飛ばして登場したのは――。
- (*゚ー゚)「諦めて下さい」
- ――強い光を瞳に宿した、C=キスノック=オファニエル。
- ( ・∀・)(鍵意味ねえ……っていうか逃げた意味ねえ……)
- (´<_` )「諦めろ……か」
- それはこちらの台詞だ、と弟者は嘯く。
- (´<_` )「オファニエル、俺が何の策も無しにここまで来たと思ってるのか?」
- (´<_` )「上級悪魔たるこの俺が? 賤しくも『ソロモン72柱』に名を連ねるこの俺が?」
- (´<_` )「――それは少しばかり、ご都合主義的ってもんだよな」
- 「契約履行、『プリヴィ・アイヴィ』具現化、拘束せよ!」
- どこからとも無く、鋭い声が響いた。
- 94: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:37:03.25 ID:1lyHGgzt0
- (*゚ー゚)「何ですか!?」
- オファニエルを囲むように、円形に。
- 屋上の石畳を割り、大人の腕ほどもあろうかという太い蔦が飛び出した。
- 驚くべき速度で伸び上がる無数のそれは、空中の天使を捕縛せんという強靭な意志を見せつける。
- (*゚ー゚)「くっ……こんなもの……!」
- 瞬く間に茶褐色の蔦は彼女の身体まで達し、足首に巻きつき始めていた。
- 迷惑な触手を一掃しようと、オファニエルは魔法の詠唱を始める。
- (*゚ー゚)「水平線の――疾風雲――むぐっ!?」
- が、口の中に侵入してきた蔦によって、詠唱は無理矢理中断させられる。
- (*゚ー゚)「むぐー! むぐぐー!」
- 蔦を手で引き千切ろうとして、オファニエルは気付く。
- 既に彼女の身体は蔦に覆われ、自由に動かせる部位が一つもない、という事実に。
- (*゚ー゚)「――――ッ!」
- 97: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:39:12.39 ID:1lyHGgzt0
- ( ・∀・)「……この場に兄者がいなくて良かった。煩悩的な意味で」
- (´<_` )「確かにな。さて、よくやったぞ――デルタ」
- 煙突の影から得意げな顔が覗く。
- ( "ゞ)「待ちくたびれたよ、全く――。嘘だけどね」
- 全く変わる事無く、もちろん首が切れてもいない、デルタだった。
- ( ・∀・)「おおう……本当に生きてやがったよ」
- ( "ゞ)「何だいそれは、新手の愛情表現かい?」
- ( ・∀・)「それとは真逆の感情だということだけ伝えておくぜ」
- ――まあ、嬉しくなくもないけどよ、とモララーは小さく呟いた。
- (´<_` )「じゃあ、そろそろ説明してやろうか?」
- ( ・∀・)「ああ、頼む」
- 99: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:41:03.28 ID:1lyHGgzt0
- 兄者に本を託し、学舎内に戻った弟者が最初にした事は、変化。
- 誰に化けたものか少し悩んだが、確実に単独行動をしているであろうプギャー=アコロに決めた。
- 誰かに見られたとしても矛盾が生じにくい上に、下位天使くらいなら単身で撃破する力はある。
- 一人で構内をうろついていても怪しまれることはないだろう、と考えての判断だった。
- 最優先されるべき事項は――ヒッキーとの接触。
- 『我が旗の下を去る』がヒッキーの死を暗示しているのか、あるいは裏切りを暗示しているのかはわからなかった。
- どちらにしたところで、そこには中位以上の天使が関与しているはずである。
- 下位程度にヒッキー達が敗れるとは思えないし、裏切るためには裏切り先が必要になってくる。
- 再就職先が。
- 天使側が人間を受け入れるかという事柄には大いに疑問が残るが、しかし問題にすべきはそこではない。
- ヒッキーの安否――でも、ない。
- 未来予知は覆らないのだ。
- 上級悪魔を遥かに超える魔力でもって干渉すれば運命を捻じ曲げる事も可能だろうが、そのような存在は見たことがない。
- 問題にすべきは――愛すべき『ヒッキー以外の』生徒の、安否であった。
- 101: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:43:07.72 ID:1lyHGgzt0
- 弟者は後方支援の担当であり、戦闘が得意ではない。だから兄者と組んでいる。
- とはいえ、彼も上級悪魔の一体。量産型の下位天使などは相手にならない。
- 道中のブームを軽くあしらいつつ、弟者は広い学舎内を駆け抜けていた。
- ( ^Д^)(……あれは)
- 目にしたのは白い立方体――空間封鎖。
- 正門前の荒地でも見た覚えのある、忌々しい古魔法の結界。
- それが、廊下のど真ん中に鎮座していた。
- (;^Д^)(馬鹿な……上位天使の侵入を許したというのか! ここの魔法防御壁が……!?)
- (;^Д^)(……空間操作……!)
- タイミング的に考えて、視認した二つの古魔法は同一使用者によるもの。
- 恐らくその使用者は、空間を操る能力に長けているのであろう。それならば防御壁も関係ない。
- 明らかに多すぎる下位天使の侵入も、それで説明がつくというものである。
- ( ^Д^)(だが……)
- 上位天使が侵入しているなら、既に大量の犠牲者がそこかしこに転がっていてもおかしくない。
- しかし、弟者はここに到達するまでに、下位天使と闘う生徒や教師を見ていた。
- 怪我をしている者もいたが、死体は一つも見ていない。
- ( ^Д^)(意味が、わからん……)
- 103: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:45:33.50 ID:1lyHGgzt0
- そう考えていると、廊下の向こうから二人組が歩いてきた。
- ξ゚听)ξ
- ( ・∀・)
- ( ^Д^)(モララーに……あれは、ツン=D=パキッシュだったか)
- 何故モララーがヒッキーやデルタと行動していないのかは謎だったが、どうでもいいことだった。
- とりあえず、身を隠した。ヒッキーと接触するまでは誰にも遭わない方がよい、と考えた。
- しばらく息を潜めていると、ツンが魔法の詠唱を開始したのがわかった。
- どうやら封鎖を破壊するつもりらしかった。
- ( ^Д^)(『ローテス・アイゼン』か。その程度で古魔法に対抗できるはずが――)
- ツンが虚空から巨大な鉄槌を取り出し、構え、殴った。
- 魔力を借りた一撃が炸裂すると、白い立方体が粉々に砕けた。
- ( ^Д^)(うそーん)
- 中から出てきたのはデルタ、ヒッキー。天使はいない。
- ――と、最初こそ、そう思っていたのだが。
- (-_-)
- 何かしらの違和感。上手く言い表すことは出来ないが、そこにいるヒッキーはどこか変だ。
- ( ^Д^)(そろそろ接触するか……)
- 105: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:47:07.50 ID:1lyHGgzt0
- (´<_` )「その後は、まあ、わかるだろう。デルタだけ引き抜いて屋上に待機させた」
- (´<_` )「偽物だった場合、不意をつくことができるようにな」
- ( ・∀・)「待て待てちょっとマテ。いつの間にヒッキーがこいつに入れ替わったんだよ」
- 緊縛状態のオファニエルを指差し、モララーが言った。
- ( "ゞ)「恐らくは――空間封鎖を発動した瞬間、かな……? 使用者が認めた者に限り、封鎖を突破できるらしいから」
- (´<_` )「多分そうだろうな」
- ならば別の問題が出てくる事になる、とモララーは思った。
- 天使がヒッキーに化け、自分達に同行していた、そこまではいい。
- しかし――――本当にそうなら。
- ( ・∀・)「本物のヒッキーは、ヒッキー=ディフォーは、どこにいるんだよ?」
- ( "ゞ)「……残念だけど……」
- (´<_` )「死んだと考えるのが妥当だな」
- 108: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:49:20.83 ID:1lyHGgzt0
- ( ・∀・)「死んだ? 本気で言ってんのか?」
- (´<_` )「俺の予知に間違いはない」
- ( "ゞ)「本人に聞いてみるのが、一番早いんじゃないかな。『プリヴィ・アイヴィ』」
- デルタが蔦に指示を出し、オファニエルの口から猿轡を外させる。
- (*゚ー゚)「っぷぁ……けほ、けほ」
- 彼女の溜まっていた唾液が口の端から垂れ、石の床に滴った。
- ( "ゞ)「詠唱しようなんて考えないほうがいいよ。僕はサディストじゃないからね」
- (´<_` )「で、どうなんだ? ヒッキーをどうしたか――答えろ」
- (*゚ー゚)「……決まっているでしょう。私が彼を生かしておく理由が、ありますか?」
- (*゚ー゚)「たかが人間ごときに与える慈悲は、どのような天使も有していません」
- ( ・∀・)「…………」
- 夕焼け色が濃くなってゆく。
- 日が落ちるまであと二十分といったところだろうか。
- ( "ゞ)「モララー君……」
- 111: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:51:03.14 ID:1lyHGgzt0
- (´<_` )「その台詞はそのまま返させてもらう」
- (´<_` )「調子に乗るなよ、たかが中位天使ごときが」
- オファニエルはにっこりと笑う。
- 物心もついていない幼子のような、純真な笑みで、下界を見下ろす。
- (*゚ー゚)「これ以上は、何の質問にも答えません」
- (*゚ー゚)「どうぞ、殺して下さい。神に創られし命、神のために尽くすが本望」
- ですが覚えておきなさい、と言って。
- 「罪深き悪魔どもよ、裁きの時は迫っています」
- せいぜい気をつける事ですね。
- それが、中位天使『C=キスノック=オファニエル』の、最期の言葉となった。
- 113: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:53:29.07 ID:1lyHGgzt0
- 爪'ー`)y‐「ん」
- 爪'ー`)y‐「二人とも、死んだ――か」
- 爪'ー`)y‐「やだなあ、またギコ君に怒られるんだよ。いや、殴られるかな?」
- 爪'ー`)y‐「ん。しかしまあ、大目的は達成できたようだね」
- ふわりと煙を吐き出し、天使は嗤う。
- 爪'ー`)y‐「結局誰も気付かなかった。気付けなかった。私の崇高な戦争の意図に」
- 爪'ー`)y‐「それでいいさ。君達はいつだってそうやってきたんだよ」
- 爪'ー`)y‐「敵を殺せば、とりあえず自分は殺されない。悪くない。決して悪いとは言わないさ」
- 爪'ー`)y‐「でもね――これからは、そんな考えでは生き残っていけないよ?」
- 爪'ー`)y‐
- 爪'ー`)y‐「おっと。今のは問題発言だな……彼らに生き残ってほしいかのようだよ」
- 116: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:55:40.06 ID:1lyHGgzt0
- それは突然のことだった。
- 魔術士養成所上空に――その男は現れた。
- 爪'ー`)y‐『あーあー、マイクテストマイクテスト。本日は晴天なり』
- 何か特殊な魔法を使用しているのだろう、男の声は辺り一帯に響き渡った。
- (;><)「あ、あれは……!」
- ( <●><●>)「ふむ……上位天使だという事はワカッテマス」
- 苦も無く中位天使を殺戮した二人は、天を見上げた。
- 爪'ー`)y‐『私の名前はフォックス=アドラー=サハクィエル。以後お見知りおきを……』
- 爪'ー`)y‐『っていうか、もう会わないかもしれないけどね』
- 空間封鎖の破壊で力を使い果たし、大の字に倒れていた兄者は、眉を寄せて呟く。
- ( ´_ゝ`)「なんだあいつは……目立ちやがって」
- 紅い雲を背景に、サハクィエルは演説を続けている。
- 118: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:57:33.31 ID:1lyHGgzt0
- 爪'ー`)y‐『いやあ、今回の襲撃は失敗だった。君達の強さを思い知った気分だよ』
- 屋上の三人――モララー・デルタ・弟者――も、揃って上空を睨んでいた。
- (;・∀・)「何なんだよアイツは! デルタ、こっからなら魔法が届くんじゃねえのか!?」
- (;"ゞ)「駄目だ。魔法防御壁の外にいるようだから、手は出せないよ」
- (´<_` )「サハクィエル、か」
- 爪'ー`)y‐『次はこうはいかない。首を洗って待っていろ』
- 爪'ー`)y‐『と悪役っぽい捨て台詞を吐いて、私は帰ることにするよ』
- 爪'ー`)y‐『さようなら――諸君。お元気で』
- その言葉を最後に。
- ふ、と上位天使の姿は掻き消え――――
- 騒乱の幕は、あっけなく切れた。
- 120: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 20:59:15.69 ID:1lyHGgzt0
- 今回の事変は、規模的には極めて小さかったと断言できるだろう。
- しかし、悪魔戦争の始末を語る上では、極めて重要な事件であることも、同じく断言できる。
- その事実をモララーが知るのはもう少し後になる。
- 以下は蛇足である。
- ウォルクシア国立魔術士養成所の被害概要を、簡潔に記す。
- 学舎建物の10%が倒壊。
- 負傷者、三十二名。うち五名は重体。
- 死者、一名。
- ヒッキー=ディフォー。
- 122: ◆BR8k8yVhqg :2009/05/17(日) 21:01:30.46 ID:1lyHGgzt0
- 悪魔戦争。
- それは、誰もが覚めたがっている、永遠の悪夢である。
- 第三話:【ウォーフェア】 了
戻る/第四話