( ^ω^)ブーンは、蒼い宇宙を目指すようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:31:18.18 ID:wYtYTp1m0



海と大地と、生命あふれる蒼き星、VIPスターがその輝きを失い。


人類が宇宙を新たな生活の場所とした、新世界の始まりから、数百年余り。



ロマンチスト達が描き続けた、理想郷の成れの果て、その世界の名は【2チャンネル】



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:32:59.01 ID:wYtYTp1m0


おとぎの国のお話だった異星の生命に、今では自らが成りすまし。
空飛ぶ円盤は、その名を航行機と変え、流れ星となって宇宙を舞う。



この世の物とは思えぬほど美しく輝く銀河でさえ、とうに当たり前の物となり。
もはや、星々に願いをかける者は居ない。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:34:27.69 ID:wYtYTp1m0



だが、そんなある日、銀河の片隅で小さな光が一つ瞬き、二人の男が出会った。




類稀なる操縦技術を持つ男、その名はナイトー。

海賊を裏切り家族を愛する男、その名はギコ。







惑星の引力の中で、一人は彼方の敵を睨み、一人は愛する少女を見つめながら、
共に向かうはかつての蒼き星、そして二人は今、運命の旅へと踏み出すのだった。




4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:35:23.72 ID:wYtYTp1m0



だが、そんなある日、銀河の片隅で小さな光が一つ瞬き、二人の男が出会った。




類稀なる操縦技術を持つ男、その名はナイトー。

海賊を裏切り家族を愛する男、その名はギコ。







惑星の引力の中で、一人は彼方の敵を睨み、一人は愛する少女を見つめながら、
共に向かうはかつての蒼き星、そして二人は今、運命の旅へと踏み出すのだった。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:36:16.60 ID:wYtYTp1m0




            第二話  




8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:37:24.91 ID:wYtYTp1m0

( ・∀・)「そろそろ、磁力線路に乗るよ」

(,,゚Д゚)「うし、んじゃ……ぁー、ぁー、マイクテスマイクテス」


(,,゚Д゚)『総員、これより本艦はKSK状態に入る』


( ´∀`)「モナ?」


『重圧で切ないことにならないよう』

『ちゃんと何かに掴まるよーに! 以上!』


 「「 はーい 」」


( ФωФ)「了解だぉ……了解した」


(,,゚Д゚)「ほらシィ、こっち来な」

(*゚ー゚)「うん!」



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:39:19.89 ID:wYtYTp1m0

ラウンジ星の衛星軌道上、引力が起こす反動を利用した加速を重ね、
航行艦こと、ネコネコハニャーンは引力圏を飛びだした。


惑星の引力を利用し、砲丸投げの原理にも似た方法で加速する、スイングバイ。

そして軌道上に敷かれている、磁力がもつ吸引と反発を利用した電磁式カタパルトレール。


この二つを組み合わせた物が、今も幅広く使われている、リニア=スイング方式である。


これによって、人類はエネルギーを90%以上節約したまま、簡単に最高速を得られるようになった。
しかし、非常に便利である反面、加速による重圧は辛く、注射を嫌う子供のように避ける者もまた多い。


そして現状では、それの明確な解決手段は見つかっておらず、今もその研究は進められている。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:41:29.36 ID:wYtYTp1m0

尚、その話が浮上する際、とくに重力操作などの単語がよく題登するが、
一部の学者達の間ではむしろ、宇宙穴における時空想の乱れが解決の糸口になるのでは、と騒がれている。


(;>ヮ<)「う〜〜っ……つ、潰れちゃうよぉ…」

(,,゚Д゚)「っ……大丈夫か?」

(; ヮ )「シィは……とても……く、くるシィ〜〜……」

(;゚Д゚)「こりゃ駄目そうだ」

( ・∀・)「シィは苦シィ………うまい!!!!」

(,,゚Д゚)「うるせえ」

( ・∀・)「ごめん」


( ФωФ)「……ラウンジが離れていく…」

( ФωФ)(………ツン、待っててくれお、僕が必ず、ブーンを取り戻してみせる)



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:43:22.31 ID:wYtYTp1m0

(,,゚Д゚)(流石に、あいつはピンピンしてんな……)

(,,゚Д゚)(……さてと、目的地VIP星、とは言ったものの……どうすっかねぇ?)


こうして、彼らは外宇宙への一歩を踏み出した。


早くも心はVIP星へと向かい、このまま一直線で行ける物だと考えるナイトーだったが、
どうやら、ギコの思惑はそれとは違うらしく、その翌日には早速、軌道を変えると言い出した。



(,,゚Д゚)「まずはシベリア衛星軌道を目指すことにした」

(;ФωФ)「は!? なんで!? カコログに行くんじゃないのかお!?」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:45:57.83 ID:wYtYTp1m0

ナイトーの言うカコログとは、縦と横のリングを持つ大型惑星の事だ。
そして、その軌道の先には、彼が目指すVIP星へと繋がる宇宙穴がある。

だがシベリア衛星は、そのカコログ方面からは遠く離れた地点にあり、何の関連性も存在しない。
故に、本当にVIP星を目指すのならば、絶対に向かう必要のない航路だった。

まさか知らないのか、と詰め寄るナイトーだったが、ギコは冷静に聞き流す。

( ФωФ)「じゃあ何で…」

(,,゚Д゚)「いや、お前が言ってた強奪の件の話を思い出してさ」

(;ФωФ)「何か気になることでも?」

(,,゚Д゚)「ああ、確かそのドクって奴はお前に撃たれたんだろ? それも二発も」

(;ФωФ)「……そう、だお…なのに、逃げられた……」

(,,゚Д゚)「贅沢言うなって、敵の撃破でなく捕獲が目的、んであまり強い衝撃も与えられず
     おまけに機体スペックも段違いときたら、普通、追う気をなくす場面だぜ?」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:48:30.95 ID:wYtYTp1m0

(;+ω+)「いや、性能なんて関係ないぉ…よ」

(,,゚Д゚)「ほー、言うねぇ」


( ФωФ)「昔、ある人にこう言われた」

( +ω+)「剣があれば剣に頼り、鎧があれば鎧に頼る、ならば、お前がそこに居る意味は何だ、と」

(;゚Д゚)「おお? なんじゃそりゃ?」

( ФωФ)「物の力に頼ってたんじゃ駄目って事……だと、僕は思ってる」

( ФωФ)「だから何とかするのはあくまで自分、要は足りない物があるなら、それを補えばいい」

( ФωФ)「そして現実の戦いなんて、いつも何かが足りない物だ、だからその手段を考えることこそ
       本当の意味でのパイロットの仕事、そして今回は補いきれなかった僕の未熟さが悪い」


(,,゚Д゚)「……未熟ねぇ、お前が言うとちょっと嫌味になるぜ?」

( ФωФ)「別に卑下してる訳じゃないよ、ただ足りなかったってだけで…」

(,,゚Д゚)「ふーん、まあ俺はどっちにしても……なんか違うと思う」



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:50:34.42 ID:wYtYTp1m0

( ФωФ)「…どうして?」

(;゚Д゚)「いや、俺もうまく説明できねーんだが……確かにさ、
     お前にもっと凄い腕があれば何とかなったのかもしれんけど」

(;゚Д゚)「物の力に頼るのは間違ってる、だから操縦の……力が必要ってのは…なんだ
     それだって自分に頼ってるんだし? だからその自分の意味ってのは……あれ?」


(;゚Д゚) ?

(;ФωФ) ?


(;ФωФ)「えーと……?」

(;゚Д゚)「あ、あーと……いやその」

(;-Д-)「考えがまとまらん…」

(;ФωФ)「うん……まあ、ただの教えだからさ、正しいかどうかはわからないよ、確かに」

(;゚Д゚)「あ、ああそっか、だよな…つーか悪い、変な事言っちまったな俺…何も知らんのに」

(;ФωФ)「いや、そんな……それで、どうしてシベリアに?」

(,,゚Д゚)「ああ、えとな」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:53:47.92 ID:wYtYTp1m0

パイロットは大怪我を負い、ユニットは破損して機動力はがた落ち、
そんな状態で、大事なものを積んだまま長距離の航行になんて挑むはずが無い。

必ずどこかに身を隠し、治療なり補給なりを行っているはず。

更には時間を置いたことで、どうしても行動には慎重にならざるを得ない。
カムフラージュの必要性もあるだろうし、時間はこちらよりも倍はかかる。



以上の点から、ドクオという男はまだこの宙域を離れていない、ギコはそう確信していた。







20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:55:43.76 ID:wYtYTp1m0


シベリア星、厚い大気の雲に覆われた惑星であり、軌道上にはリングを持つ。
宇宙からの見た目には真っ白で、雪山を思わせる姿をしているが、
その実、地殻が薄く、自ら熱を発しているため大気圏内は温暖な気候である。

一説では、太陽のなり損ないとも言われたが、ガスには発火成分は存在していない為、燃える事はない。

当然、人が住むことはできないが、空気密度が他星にくらべて桁違いに濃く、空を泳げる程だ。
引力によって吸い寄せられた小型の衛星などは、大気圏内で浮遊し、空中にいくつもの大地が浮かんでいる。


そんな不思議な惑星には、数多くの衛星が存在し、今現在も増え続けている。


その内の一つ、第9衛星ダイワハウス。

ここには地表の7割を占めるシェルターが存在し、
中では動植物が自然の中で営み、人が生活している星だった、そしてギコが目指したのもこの星である。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 18:59:58.84 ID:wYtYTp1m0

『着陸を求めるか?』

(,,゚Д゚)「ああ、頼む」

『では、船の名前と責任者のIDを提示して……ん? この声は…』


当然ながら着陸し、シェルターに入るためには、入り口となる門を通らなければならない。
そして軌道上から許可を得ることで、ようやく航路を告げる電磁レールと着陸用の電磁ネットが展開される。

まずレールで着陸までの進路を、次にネットで減速しながらの降下となる。
とは言え、このダイワハウスには大気がなく、重力も弱いためレールのみで充分なのだが。


『ああ、またあんたか』

『じゃあいいよ、レール出すから勝手に着陸しちゃってくれ』



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:01:31.54 ID:wYtYTp1m0

(,,゚Д゚)「はいはい、どーもっと」

(;ФωФ)「……適当だな」

『信用と言ってくれたまえよ』

(,,゚Д゚)「ここには、よく来るからさ」


そして、着陸は滞りなく無事に終わる。

降下後、コンベアに乗せられたネコネコは、巨大な倉庫めいた格納庫に収納され、
ギコ達は船を降りると、そのまま居住区へと向かった。

その道中には長い空洞が存在し、進むにつれて重力が強まる設定にされている。
これは半重力に慣れてしまった人が、この先の居住区での重力差に耐えられる様にする為だ、

要は、ただのリハビリ用の施設、程度の認識で構わないだろう。

30分ほど歩けば、地下鉄の出入り口のような階段を抜け、活気に溢れる町並みへと辿りついた。

ぞろぞろと歩く一行は、そろって明るい空を見上げ、眩しそうに目を細める。
現地の時刻はちょうどお昼時、まさにそれを示すような快晴の青空と、太陽が彼らを出迎えた。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:03:11.62 ID:wYtYTp1m0

思わず、ここが衛星のシェルターだと忘れてしまうような光景であるが、
実際には、上天に広がる青空も、浮かぶ雲も、輝く太陽も、全ては贋作、作り物である。


だが造り物とはいえ、ただの模造品ではなく、自然を本当に作り出した結果だ。
人類は自然に起こる現象を、すでに自らの手で生み出す事ができていた。

それはつまり、天候を完璧に操れる、という事を意味する。
おかげで今では、その気になれば天気予報は百発百中だった。

しかし、それでは面白みがない、という考えをしているこのシェルターの偉い人々は、
昔のように降水率をさずけ、毎日更新される週の天気図には平気で嘘の情報を載せている。

『今日は雨が降るので傘を持ちましょう』と予報士が言えば、その日は一日中くもり空。

酷いときには、そう、具体的にいうなら先日の4月1日。

一日中晴れですと言いつつ雪を降らせ、夜にはオーロラを発生させたり、とにかくやりたい放題である。

だが、学校の遠足がある日には、必ず晴れにしたりするので、中々どうして、憎めない奴なのだった。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:06:37.24 ID:wYtYTp1m0

( ФωФ)「んで、これから何処へ?」

(*゚ヮ゚)「温泉にいくの!」

(;ФωФ)「お、おんせん…?」


( ・∀・)「んで、俺らは?」

(,,゚Д゚)「あ、あー、そうだな、着いてきたい奴は着いてきな、んで…」


三( ・∀・)ノシ「みんなー!! ギコから自由行動のお許しがでたぞーーい!!」


 「「 やったあーーーーー!!! 」」



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:10:45.66 ID:wYtYTp1m0

(,,゚Д゚)「後…は……」

<なあ、とりあえず飯行こうぜ

<いくいくー! まだあの店あるかなぁ

<もらっちはどうするー?

<俺も行くともさー

<いやー、なんか久々だなこういう休暇は

<ねー、VIP星いくとか言った時はどうなるかと思ったのに


<わいわい

<がやがや


(,,゚Д゚)「……」


そうして、クルーの皆はそれぞれ楽しそうに談笑しつつ、その場を離れていった。
活気付く町の片隅で、残されたギコの正面を、季節外れの木枯らしが吹く。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:11:48.94 ID:wYtYTp1m0

(,,゚Д゚)「……聞けよ、最後まで」

( ФωФ)「人望がないんだな…」

(;゚Д゚)「……ちがうもん」

( ´∀`)「ギコ、一ついいモナ?」


(*゚ー゚)「じんぼーってなに?」

( ФωФ)「不人気ってことかな」


(#゚Д゚)「くっ………なんだ、モナー」

( ´∀`)「実はちょっと船と、ファマスの改造用に欲しいパーツがあるモナ」

(,,゚Д゚)「ん、ああ、そういう事か…いくら欲しいんだ?」

( ´∀`)「えーと」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:14:05.52 ID:wYtYTp1m0

( ФωФ)「でもほら、ああやって金でつれば人気もうなぎ上り」

(*゚ヮ゚)「すごーい」


(# Д )「あああああもおおお!! いいよ! 好きにしていいよ! 早く行け!!」

(;´∀`)「え!? 本当にいいモナ!? で、でも、これ結構な値段に…」

(#゚Д゚)「うるせえな、好きにしろってんだろ!」

(*´∀`)「おお、流石ギコだモナ! ありがとうだモナ!」



(*゚ヮ゚)「ほんとだー、ギコ大人気だよ!」

( ФωФ)「けど、油断しちゃいけない、金というのは人を付け上がらせるからね」



( ´∀`)「じゃあついでにもう一つお願いが……」

(# Д )「…………」



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:16:13.42 ID:wYtYTp1m0



  「だからお前ちょっとは空気をよめゴルァアアアアアアアア!!!」



天下の往来にて、ギコの叫びがこだまする。

そしてモナーは不思議そうに首をかしげ。
ナイトーとシィは、そんな様子を微笑ましく見守っていた。

そうして、残ったギコとシィとナイトーの三人は、目的の場所へ向かって歩き出した。

電磁レールが敷かれた道路を中心に、歩道と高層ビルの群れが立ち並ぶ。
そんな街並みでは、今もたくさんの人々が行き交っていた。

更にはその内週と外周を囲うように、何本もの列車が走っている。
ギコ達はまず、駅へと向かうと列車に乗り込んだ。

流れるビル郡、ゆっくりと流れていく街並みにシィは目を輝かせて夢中になり。
ナイトーとギコは先ほどの事をからかいあっていた。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:17:11.60 ID:wYtYTp1m0

(*゚ヮ゚)「〜♪」

( ФωФ)「あんなとこで叫ぶから…めっちゃ見られてたよ」

(;゚Д゚)「うるせえなぁ……つーかお前、随分と余裕だな」


(*^ー^)「♪」

( ФωФ)「どういう事?」

(,,゚Д゚)「早く追いかけるべき、とかもっと騒ぐと思ってたんだがな、って話」


(*゚ -゚)「?」

( ФωФ)「ああ…何ていうか、慌ててもあれだし、あの話も納得できるし」

(,,゚Д゚)「パイロットは冷静さが命ってか?」


Σ(;゚ヮ゚)「!?」

( ФωФ)「どうだろう……それに、情報が必要なのも間違いないでしょ?」

(,,-Д゚)「そうかい、ま、物分りがいいのは助かるがね」



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:30:32.23 ID:wYtYTp1m0

(*゚ヮ゚)「ねえ! 見て! なんか飛んでるよ!!」

(;゚Д゚)「ん、どれどれ? おおー、あれはークックルじゃないかー! 凄いぞシィ!!」

(;゚ー゚)「え、え、凄いの?」

(;ФωФ)「もちろん、あれは鳥の中でも特別な鳥…! 見つけた人はその日、すごくラッキーなんだよ」

Σ(*゚ヮ゚)「らっきー!」

その後、シィにはソフトクリームが進呈された。
何はともあれ、少女に弱い二人なのであった。


それからしばらく列車に揺られ、たどり着いたのは川沿いにある大きな駅。

降りると、ほのかに硫黄の香りが漂い、そこら中から湯気がたち昇っている。
見れば、シベリア温泉街、なんて垂れ幕もそこかしこに下がっていた。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:33:12.63 ID:wYtYTp1m0

何故か肌寒さを感じるこの一帯は、やはり人工的に造られた観光地である。
そしてギコ達が目指すのはこの先にある、とある場所。

他の宿屋に紛れるように、至って普通の外装をしたその場所の名を、房津の湯。


(*゚ヮ゚)「とーちゃくぅ」

( ФωФ)「ここがそうなのか……」

ミ,,゚Д゚彡「あ、いらっしゃーい、何名さまでしょ」

(,,゚Д゚)「よお、邪魔すんぜ」

ミ;゚Д゚彡「ってうわ!? ギギギギコォ!?」

(;゚Д゚)「だから、そのファイナルフォームライドみたいな呼び方はやめろっつーに」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:35:58.09 ID:wYtYTp1m0

ミ;゚Д゚彡「な、なんだよいきなり……連絡もよこさずに」

(,,゚Д゚)「ああ、ちょっとな…んで、タクアン眉毛は下か?」

ミ;゚Д゚彡「タクアンて……あー、まあ、うん、いつも通りさ」

ミ,,-Д-彡「なんだ、また何か調べ物か? 今度は何やらかす気だい、請負いのギコさん?」

(,,゚Д゚)「おおっと今の俺は、星追いのギコだぜ?」

ミ;゚Д゚彡「はあ…なんでもいいけど、あんまり変な話持ち込まないでくれよぉ?」

ミ,,-Д-彡「苦労すんの俺なんだから…」

(,,゚Д゚)「さぁてね」

男の名はフサ=R=ギィコック、一応はこの宿の主である。
だが、よく宿を留守にするのに加え、その素振りからバイトの類に見られやすいのが特徴だった。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:38:08.32 ID:wYtYTp1m0

(*゚ヮ゚)「どこかなどこかな」

( ФωФ)「ん、探し物?」

そして、話し込む二人を他所に、シィは何故かキョロキョロと辺りを見回している。
とその時、フロントの扉が勢いよく開き、誰かが飛び出してきた。


(*゚ヮ゚)「あ!」

(*゚∀゚)ノシ「おーーーーすファーストお!!」

(*^ヮ^)ノシ「ツーちゃぁん!」

(;ФωФ)「え!? シィが二人!?」

陽気に手を振りながら駆けて来るのは、シィに瓜二つの悟りっ子だった。
そして、二人は嬉しそうにお互いを見据え、抱きしめることで喜びを分かち合っていた。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:44:07.18 ID:wYtYTp1m0

_____________________
CAUTION!! CAUTION!! CAUTION!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_____________________
   このレスは本編とは無関係の補足です
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


       いいか、みんな
          (゚д゚ )
          (| y |)

     小五とロリでは変態だが、
        小五 ( ゚д゚) ロリ
         \/| y |\/

     二つ合わされば悟りとなる。
          ( ゚д゚) 悟り
          (\/\/



_____________________
CAUTION!! CAUTION!! CAUTION!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:46:43.01 ID:wYtYTp1m0

少女の名はツー=R=ブルーム、この宿の店員の一人で、マスコット的存在である。
その外見はシィそのものだが双子の類ではなく、何故似ているのかは不明。
尚、シィに言わせると全然違うらしく、アヒャっている方がツーだと言う。

(*゚ー゚)「久しぶりだね」

(*゚∀゚)「だな!」

( ФωФ)「しかしほんとに似てるなぁ」

(*゚ヮ゚)「でしょー」

(*゚∀゚)「あたし様はにばんめ、シィのクローンなのだぁ!!」

(*>∀<)「うきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!」

( ФωФ)「ふむ、テンション的な違いはわかる気がする」

(;゚Д゚)「テンションておま、今さりげなく凄いスルーちからを見たぞ」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:49:21.28 ID:wYtYTp1m0

ミ,,゚Д゚彡「こちらは?」

(,,゚Д゚)「ああ、うちの新顔でな、航行機乗りのナイト=O=ホライゾンってんだ」

ミ,,゚Д゚彡「へぇ……って、ホライゾン……?」

ミ;゚Д゚彡「あっ!!!! あんた、オリオン杯三連覇の!?」

( ФωФ)「ええ、僭越ながら」

ミ;゚Д゚彡「どっひぇー……おいおい、俺、あれ三回とも見てたんだぜ? なんでこんな大物がギコの船に……」

(,,゚∀゚)(うは、やべえ超鼻高いんですけど、有名人メシウマ!)

ミ;゚Д゚彡(しかもなんでギコが誇らしげなんだ)


(*゚ヮ゚)「またアヒャってるぅ」

(*゚∀゚)「あたし様とおそろいなのだ」


ミ;゚Д゚彡「と、とりあえず……サインください」

( ФωФ)「いいですぉ……よ」

(;゚Д゚)(こいつ慣れてやがる……ッ、恐ろしい子!!)



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:52:55.33 ID:wYtYTp1m0

ミ*゚Д゚彡「うひょー! やった店に飾れる! これでうちも有名人ご用達だぁ!!」

(;゚Д゚)「待て! この有名人はうちのだ!」

(;ФωФ)「あんたら……」

そろそろ収集がつかなくなってきた所で、悟りの二人を残してギコはフロントを抜けて廊下を進む。
更に階段を下りると、薄明かりに照らされるモダンな雰囲気の空間に出た。
空席の椅子が並ぶその様はバーのようだが、空席が並び人気はない。

入り口らしき場所にかけられた看板には、こう書かれている。


( ФωФ)「バーボン…ハウス?」

(,,゚Д゚)「おい、居ねえぞ」

ミ,,゚Д゚彡「あれ……おぉーい! お客さんですよーーーっと」



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 19:55:22.19 ID:wYtYTp1m0

(´・ω・`)「ん、やっと来たかギコ」

(;゚Д゚)「おう、って……なんだ、またバレてんのか…」

(´・ω・`)「それと、ナイト君だね……新型機を追って事故ったって聞いたけど、無事で何よりだ」

(;ФωФ)「あ、どうもありが、って、え!? なんでそれを!?」

(´・ω・`)「うん、それについてだけど…今のところVIP行きの宇宙穴にそれらしき機体は現われてないっぽいな」

(;ФωФ)「……えーと、ギコ? もしかして、もう連絡済みだったのか?」

(,,゚Д゚)「んな訳ないだろ…」

(;ФωФ)「じ、じゃあなんで」

(,,゚Д゚)「ナイトー、言っておくが、このタクアン眉毛が何を言ったとしても驚くな」

(;ФωФ)「お?」

(;-Д゚)「そういう奴なんだよ、どういうチートじみた情報入手ルートがあんのか知らねえが…」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 20:00:04.56 ID:wYtYTp1m0

情報屋、バーボンハウスが店主ショボン=Q=ブルーム。

その特徴的な太い眉毛と、優しげな雰囲気とは裏腹に、世のあらゆる動きを知り尽くす、
とまで言われる程の情報通であり、その筋ではかなり高名な人物である。

訪ねれば、宇宙の財宝はどこに在るのか、なんておかしな質問にさえ容易く答えそうだが、
その人物はかなりの変わり者で、自分が気に入った人間の依頼しか受けないと言う偏屈者でも有名だった。

( ФωФ)「それで……ドクオの居場所、とかについては…」

(´・ω・`)「さあ、そこまでは俺にもわからないな」

(,,゚Д゚)「あー? なんだい、さっきまで物知り顔で居たくせに」

(´・ω・`)「あのね、何度も言ってるけど俺は神様じゃないんだ」

(´・ω・`)「そりゃ他人より情報力は優れてるつもりだけど、全知全能を名乗った覚えはないよ
      何だかやたら過大評価されるからさ、こっちだって迷惑してるんだ」



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 20:06:06.76 ID:wYtYTp1m0

(,,゚Д゚)「だったらそれっぽい態度を取らなきゃいいだろうに」

(´・ω・`)「謙虚にしろとでも? 冗談、こりゃ性分だ、変えようがないね」

( ФωФ)「じゃあ……他に何か…」

(´・ω・`)「そうだね、これから間違いなく来るであろう場所なら知ってるよ」

(;ФωФ)「え!? それはどこなんだお!?」

(´・ω・`)「おっと、ストップ、サービスはここまでだよ」

(;ФωФ)「へ…」

ショボンはそう言うと、ナイトーの前にコップを置いた。
すると、ギコは溜め息を一つにカウンターへ身を乗り出す。

(,,-Д-)「報酬は…いつものでいいのか?」

(´・ω・`)「ああ、もちろん」


(´・ω・`)「それじゃ、注文を聞いてもらおうか」



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 20:09:51.98 ID:wYtYTp1m0


本来、情報屋との取引いうのは情報の代わりに情報料を払うものである。
ギコは、お金の代わりにとある依頼を受ける事でそれを支払っていた。


そして今回の依頼とは、とある水であった。


(;ФωФ)「水?」

(´・ω・`)「そう、このシベリアにはユーロパという衛星があるんだけど、そこの水が欲しいんだ」

(;゚Д゚)「ユーロの水か……引き受けるのはいいが、タンクなんかねーぞうちは」

(´・ω・`)「ああ勿論、その為の資材はこっちで用意する」

(,,゚Д゚)「気前がいいねぇ?」

(´・ω・`)「お客に出すための物だからね、品質は大事だろ」



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 20:13:01.19 ID:wYtYTp1m0

ミ*゚Д゚彡「まさか……この宿の為に!?」

(´・ω・`)「ふん、潰れでもしたら俺も困るからな、それくらいの客寄せは必要だろ」


ミ*゚Д゚彡「タクアンさん……」

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」










60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 20:14:22.87 ID:wYtYTp1m0





宇宙穴のある宙域には、いくつかの関所が設けられている。
これは、航行者の安全のためも然ることながら、犯罪防止の為でもある。
特に、先日も強奪事件があったばかりなので、警戒は余計に強まっていた。


その内の一つにある、中継ステーションにて、スタッフと何やら難しいことを話し合う女性が居た。


ξ゚ー゚)ξ「…そうですか、やはり例の新型機は見つかっていませんか」

「ええ、こちらとしても逐一チェックは怠っていないのですが、未だそれらしき者は…」

ξ゚ー゚)ξ「そう、ありがとう」

「いえ」



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 20:18:37.18 ID:wYtYTp1m0

ξ゚听)ξ「あ、それから……」

「まだ何か?」

ξ;゚ー゚)ξ「ナイt………例の、それを追いかけたっていうパイロットについては…」

「未だなんの報告もありません、目撃例もありませんし……これはもう」

ξ゚ー゚)ξ「そう……そう、ですね」



彼女こと、ツンはあれから自分の足でも色々な場所を探し回っていた。
目的はもちろん、奪われた新型機ブーンと、それを追いかけた一人の男の安否を求めて。


ξ゚听)ξ「……ここなら、何かしら分かると思ったけど…駄目ね」

ξ )ξ(でも……どこに居るの……違うよね、嘘だよね……)



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 20:25:05.07 ID:wYtYTp1m0

ツンは熱くなる目頭と、こみ上げる嗚咽を必死にこらえ、気丈に振舞った。

彼女の下に最後に送られてきた情報は、彼が、撃墜されたと言う事。
おかしな冗談だと最初は鼻で笑った、ツンはナイトーと言う男をよく知っていたから。

だから、あり得るはずがない、あれほどの人が、少しばかり腕のきく程度の相手に遅れなど取る筈がない。

もしかしたら、本当に失敗したのかもしれない、少し抜けている部分もあったから、そうかもしれない、
だけど、撃墜され、そのまま機体ごと行方不明になる、なんて事は何かの間違いだと思った。

思おうとした、だが時と共に、残酷なまでに冷静さは彼という存在の消失を理解させていく。

あの状況下だ、冷静さを失うこともあり得る。
あれ自体、何かしらの作戦で待ち伏せを受けたのでは。

そもそも、盗まれたのは、あのブーンだ。

彼女自身が手塩にかけ、笑みが漏れるほどの完成度を誇った、あの最新鋭機なのだ。

それらの点をふまえて、あの人が無事に生きている、と楽観視できるほど、彼女は強くなかった。



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 20:30:59.75 ID:wYtYTp1m0


ξ - )ξ(こんな事になるなら……あの時、せめてもう少し一緒に…)

ξ - )ξ(ううん、違う、私だ、私があの時、行かせたりしなければ)

ξ - )ξ(もっと話したいこと……伝えたいことがあったのに……)


ξ - )ξ(私が……私が……ナイトーを………)


「なあ、聞いてないぞ!」

思い返せば自分の身体を這い回る、あの虫唾が走るような感覚が蘇りそうになるが、
それ以上に、ナイトーに抱かれた温もりを忘れられなかった。

「あ、あのー?」

ξ--)ξ(……駄目だ、こんなの考えるな)

ξ゚听)ξ(まだ、何も見つけてないんだから)



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 20:35:14.06 ID:wYtYTp1m0


ミ;゚Д゚彡「あの!! すいません、そこの綺麗なお譲さん!!」

(*゚∀゚)「かわいこちゃぁん」


ξ゚听)ξ「………」

ミ,,゚Д゚彡「………」

(*゚∀゚)「?」


Σξ;゚听)ξ「ふえ!? 私!?」

ミ,,゚Д゚彡「そうです、いきなりすいません、一つお聞きしたいのですが大丈夫でしょうか?」

ξ;゚听)ξ「え、ええ、構いませんが」

ミ,,゚Д゚彡「実はさっき話してたのを小耳に挟んだのですが、あなた、軍の関係者ですよね?」

ミ,,゚Д゚彡「それも、例の強奪事件関係者……違いますか?」



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 20:41:39.09 ID:wYtYTp1m0

ξ; )ξ「!!!」

ξ;゚听)ξ「な、何か知っているのですか!?」

ミ;゚Д゚彡「お、おお? いや、というか、それについて、ちょっと聞きたいことがあるのですが…」

ξ;゚听)ξ「はい、構いません、私にできる限りの事は全て答えます…!」


ξ;゚听)ξ(わざわざ聞いてくるからには、もしかしたら……何かわかるのかもしれない)

ミ;゚Д゚彡(うーん……なんか知らない臭いけど…一応、聞いておこうかなぁ)


ξ゚听)ξ(ナイトーの事が)
ミ,,゚Д゚彡(ナイトーさんの為にも)




遥か遠い宇宙の片隅で、この時、二つの思惑が重なった。



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 20:48:38.53 ID:wYtYTp1m0

場所は変わって、こちらはシベリア軌道上、第5衛星ユーロパ。

全体の9割を海が占める事から、水の星とも呼ばれている。

同時に、ここは人類から最も注目を集めたことでも有名である。
何故ならこの星は、地底からの活火山の影響により海は温暖で栄養に富み、
ついには宇宙史上において初の、VIP外生命体が発見された星だからだ。

あれから三人は中クラス航行艦に乗り込み、早速その星を目指し。
航行を始めてから半日と少し経った頃には到着し、無事に降下までも済ませた。


衛星同士の距離がわりと近いせいだろう、貝殻の一つもない、黒い砂浜には、
深い藍色のさざ波が音を立て寄せては、音をその場に置き去りにまた引いていく。

そして、ギコは宇宙服をまとい、船外へと躍り出た。


(,,゚ ゚)『んじゃ、行って来るかね』



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 20:56:03.24 ID:wYtYTp1m0

( ФωФ)『気をつけて』

(*゚ー゚)『はやく帰ってきてね』

(,,゚ ゚)『うーい』

ちなみに今着ている物は、耐水性にも強い優れものである。
ギコはこれより、ホースを片手に海へと歩いていく。

そんなギコの足元を、魚のような形をしながら、トカゲの様な足を持つ生き物が泳いでいた。
もしかしたら、どこぞの学者が名を与えたのかもしれないが、それを知る者は今、この場には居ない。

そして浅瀬をしばらく進むと、大きな洞穴があった。

ギコは一度振り向き、ホースがちゃんと繋がっているのを確認してから先へ進んだ。
そして、一度マスクの横にある何かの計器を弄ると、顔を隠していた部分が開く。

(,,゚Д゚)「ふぅ、すっきりし……」

(; Д )「げふぉっ!! ごほっ!! ごほっ!!」


(;゚Д゚)「ぜっ、ぜっ……ぬぅ、空気が濃すぎる……」



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 21:00:24.27 ID:wYtYTp1m0

悪態をつきながら、ギコは薄暗い洞穴ちいさなライトで照らしながら更に進んでいく。
内部には青々とした妙な色の光苔がしげり、僅かな光でさえ吸収し、うっすらと先を照らしていた。

それから、どれほど歩いただろう。

ギコは洞窟の奥地にて、底から青白い光が漏れる、不思議な湖にたどりついた。
その美しさにまず目を奪われ、ギコは呆然と立ちすくむ。

光の揺らめきが幾重もの影をつくり、影は洞窟を立体化させる。
そして見つめていても、眩しさを感じない光はどこか優しく、しばし呼吸も忘れた。


(,,゚Д゚)「っと、見入ってる場合じゃないな」

ギコが目指すのは、この光の湖のどこからか湧き出ているという水である。
その水は飲めば絶品、触れればお肌はかつての若さを取り戻すという奇跡の水だ。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 21:05:19.71 ID:wYtYTp1m0

(,,゚Д゚)「お、それっぽいの発見」

見つけたのは、氷のつららが地面から生えたような、半透明な結晶体。
そして先端からは今も、極めて透明度の高いただの水が湧き出ていた。

(;゚Д゚)「こんなのがそうなのかねぇ……どれどれ」

(,, Д )「うっ……」

ギコは危険もかえり見ず、その水を指ですくい、ぺろりと舐めた。
すると、目を見開き、呻き声を漏らしながら身体を震わせ。

(,,゚Д゚)+「ウマあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいッ!!!!!」


これでもか、という声量でそのおいしさを叫んだのだった。



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 21:12:28.67 ID:wYtYTp1m0


<うまあーーーーーーーい

<うまあああい

<マアアアアイ

<ァーーイ


ついでに、声は洞窟内を反響し、どこまでも響いていった。
これは早速持ち帰らねば、と意気揚々に準備を進めるギコ。

だが、ちょうど準備を終え、吸水を始めたのと同時に、どこからか地鳴りが響く。


(;゚Д゚)「なんだ……地震、か?」

とまで考えた所で、ふとギコはここに来る前のことを思い出した。
こんな素晴らしい物がありながら、何故誰も取りに来ないのか、という事。


それは、この星には独自の進化を遂げた、巨大肉食魚が生息している為だ、と。



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 21:18:01.71 ID:wYtYTp1m0

(;゚Д゚)「……何か、湖から登ってくる…」

目視でさえ、その影は明らかにギコの数十倍はくだらない大きさだった。

尚も地鳴りは続き、天井からは粉塵が落ち、水面は激しく波打つ。
ギコの頬を冷や汗がつたう、もしかしたら、さっきの自分の雄叫びのせいだろうか。

まずい、まずい、と頭の中で思考が渦を巻く。

だが、そんな思いなど知る由もなく、影はついに水面を越え、
湖の平面を大きく膨らませながら、浮上した。


巨大な眼光が、スポットライトのようにギコを照らす。


(; Д )「なっ……あっ……」


その姿を前にして、ギコは絶句した。
続けて、その現われた影から、甲高い声が響く。


ギコは、身じろぎ一つさえ取れなかった。



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 21:25:11.65 ID:wYtYTp1m0


『ハーーーーッハハハハインリィーーーーーーーッヒ!!!』


(; Д )「こ、この……馬鹿げた笑い声は……」

从 ゚∀从「久しぶりだねぇギコ、元気だったかな、私は元気です」

(;-Д-)「……なんで、あんたがここに居るんだ……」

そう、現われたのは何と、水中用にチューンされた航行機であった。
しかもその船の先端にはメガホンを片手に、何故かハインが立っている。

やがてギコは酷い脱力感に襲われ、深く肩を落とした。


从 ゚∀从「何にせよ、ここで会ったが百年目ぇー!!」

(,,-Д-)「ーぁ…………はあ……」

从#゚∀从「むぃ、なんかその反応むかちーん」



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 21:33:40.05 ID:wYtYTp1m0

(,,゚Д゚)「……む」

从 ゚∀从「こんな所で会ったが運の尽き!!」

と、そこで不意にギコは表情を強め、腰元からグリップの異常に長い銃を抜き放つと、
鋭い眼光で見据えたまま、構えを取る、ハインはそれを見るなり、口元を歪めて微笑み返す。

从 ゚∀从「ガンソードか……懐かしい武器だ、いやぁいいねぇ、やる気満々みたいじゃないか」

(,,゚Д゚)「……なあ、一つ、いいか?」

从 ゚∀从「ああ、なんでも聞けい」









(,,゚Д゚)「後ろ、なんかいるぞ」



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 21:39:26.79 ID:wYtYTp1m0

从 ゚∀从「そうやって振り向かせてズドン、かい? バックが好きとは野生的な奴だ」

从*-∀从「でも〜、ちょっぴりそんな所が、す、て、き、なんて思ってないんだからねっ」

(,,゚Д゚)「いや、そういういいからさ、マジで見た方がいいって」

ギコが呆れ気味に忠告するも、一向に聞こうとしないハインだったが、
やがて彼女の肩のあたりに、大量の粘着質な雨がふりそそぐ。

从;゚∀从「お、なんだこの…糸を引く液体……」

そして、ゆっくりと振り返った先に居たのは。


从 ゚∀从「は」


从 ゚Д从


居たのは、胴体から大量のひれを生やし、それを使って器用に天井を這い回る、
とても奇怪で、あえて言うなら船虫とカジキマグロを混ぜたようなフォルム。

そんな巨大で、とってもプリティなお魚ちゃんでした。



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 21:44:35.39 ID:wYtYTp1m0


从 ;Д从「はわぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

しかも、お魚ちゃんは大口を開き、今にも『ぐさっ』もしくは『かぷっ』しようとしている。
魚独特の、あの無機質で感情のない瞳は、何故かいように爛々と輝いて見えた。

『ピビィィィィィィィィ』

(;゚Д゚)「おお、鳴きやがった、魚のくせに」

泣き叫ぶハインに対抗するかのように、魚ちゃんは奇怪で不快な高音を発する。
耳の奥がしびれ、喉の奥をくすぐられるような音は、お皿をフォークで擦るような音だった。

若干のめまいがギコを襲ったが、すぐにマスクを着用し、どうにか堪える。
だが、防御手段もなく、もろに喰らったハインはその場で崩れ落ちた。


从; д从「はうん……」

(,,゚ ゚)「遠距離攻撃までもってるのか、最近の魚は……」



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 21:51:27.74 ID:wYtYTp1m0

シャチという海のギャングが、かつてVIP星に居たという。

彼らは知能が他の魚にくらべて桁違いに高く、そして実際に、超音波を相手に叩きつけ、
それによって弱った魚を捕らえ、食していたと言う、ギコは今の攻防にその姿を垣間見た気がした。


<ああっ、キャプテンがやられた!!>

<え、えらいこっちゃ!>

<エラ呼吸だけに>

<うまい!>


从 ;Д从「うあああああああん、ふざけてないで早く撤収してよおおおおおお!!」


<<アイアイサー!!>>


そして、ハインを回収すると、船は脱兎のごとき速さで湖の底へと潜っていった。
果たして、そっちは本当に安全なのだろうか、それは誰にもわからない



93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 21:57:20.72 ID:wYtYTp1m0

(;゚ ゚)「……あいつら、マジで何しにきたんだ…?」

『びちびちびちッ』

(,,゚ ゚)「ああ、しかし、人の身のなんと無力なことか……」

何のつもりか、魚は尾びれを天井に叩きつけている。
さて、とくれば、次の標的は自分だろうと、ギコは身構えるが魚は一向に動かない。

(,,゚ ゚)「……?」

『……』


互いに動かぬまま、長い沈黙が訪れ、やがてギコはふとした事に気がついた。


(,,゚Д゚)「……こいつの目…優しい目をしている」

(,,゚Д゚)「気がする」

しばらく見合っているうちに、ギコは何だか愛着が沸いてしまったらしい。
あの無機質な黒い瞳も、よくみればピカチュウみたいで可愛いかもしれない。



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 22:04:33.56 ID:wYtYTp1m0

それに、だ、冷静になって考えればあのタイミング。
もし魚が来なければギコは今頃、蜂の巣だった筈なのだ。

そこから導き出される推論は、つまり。


(,,゚Д゚)「俺を…助けた、のか?」


魚が、もう一度尾びれで天井を叩く。
そして口を開き、小さく鳴いた。


ギコには、それが笑い声に聞こえた……気がした。


(*゚Д゚)「……魚…お前ってやつは…」


 __л_
煤@ ∈ヽ゚< 『……びちびちっ』
 爪爪爪爪


今ここに、種族も環境も惑星さえも違えた一人と一匹に、友情が芽生えた。



97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 22:11:23.11 ID:wYtYTp1m0

かと思えた、その時、周囲をさっきの鳴き声が反響し始める。
それも声の反響具合からして、一匹二匹じゃない、かなりの数だった。


(;゚Д゚)「あ、あららら……?」

そこら中の穴と言う穴から這い出てきたのは、同じ姿をした大量の魚たち。
しかも、その全てがある一点を目指していた、ギコの額を冷や汗がつたう。


(;゚Д゚)「……ま、まさか…」


そして、魚達が一斉に牙をむき、先の超音波をぶちまけながら、
大きな群れとなり、ギコに向かって一直線に向かってきた。


『『『ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!』』』

(;゚Д゚)「ぐわーーーーーーーっ!! 喰う気まんまんだこいつーーー!!」



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 22:18:07.39 ID:wYtYTp1m0

その姿は、まさにテトラポットに群がる船虫そのものだった。
見るだけで最早、嫌悪感しかわいてこない。

ギコは電磁銃、電磁剣の二つの特性をもった特殊な武装、ガンソードを構えなおし、
まず、先頭の集団に向けて数発、とくに狙いも定めずに撃ちまくった。

手拍子を打つような音が洞窟内に反響する。

それと同時に、数匹の魚が青白い閃光につつまれ、のたうち回って仰向けに倒れた。
しかし、大群はそんな事では怯みもせず、倒れた魚さえ足場にして更に迫る。

(;゚Д゚)「くそっ…!」

どうにか逃げようとするが、連中は壁も天井も水中も、とにかく場所をいとわない。
しかし、ギコはどうにか繋がっている地上を駆け回るのみ、しかも群れよりも若干遅い。

撃てども撃てども、群れは止まらない。

囲まれたら終わりだと、ブレードを展開し、無理矢理に切り開く。
しかしそれでも回り込まれ、横へ逃げれば更に追ってくる。


(;゚Д゚)「ちょっ……これ、やべえ!!」



101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 22:24:37.63 ID:wYtYTp1m0

(,, Д )(死ぬ!? マジでこれ死ぬ!!)

(,, Д )(どうしようもねえじゃん! 無理だってこれ、逃げ切れねぇよ!)


音が、不思議と遠のいていく、自分が撃った銃の反響音も、息を切らす声も、心臓の音さえも。

身体中が痺れて、段々と感覚がなくなっていく、手から血が出ていたが痛みは感じなかった。

やがて、ついには目も見えているのかどうか分からなくなった。

視界がぐるぐる回りすぎて、最早混乱し、狂ったように剣を振り回す。


死ぬ、という単語が、頭をやけに巡って。

その度に、死にたくない、心が叫ぶ。


何故ならば。



(*゚ヮ゚)「ギコ」



102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 22:31:18.92 ID:wYtYTp1m0

(# Д )「っっっ……!!!」

(#゚Д゚)「ばあああっか! お前を残して……死ぬわけねえだろおおおお!!!」

何のために、海賊から命を狙われてまでこの生活を選んだのか。
それが、その答えが、ギコの心を支え続け、決して折れることなく、立ち上がらせた。


しかし、それも限界。


(,, Д )「ごふっ!!」


動きに精彩を欠き始めた所を狙われ、魚の体当たりをもろに受け、
ギコは吹き飛ばされ、壁に背中から叩きつけられた。


(; Д )「おおぅ、めめめ、眩暈ががががが」

すぐに立ち上がるが、ろくに目も見えず、ふらふらと立ちすくむ。
魚の群れは、先ほどから同じように、ひた進み続ける。

そして、ギコはその大きな波に飲み込まれ



105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 22:39:31.47 ID:wYtYTp1m0


る、寸前。


強烈な閃光と共に、魚達が一斉に宙へと舞い上がった。

それも、一度ではなく、数にして8回。
正確無比にして、無慈悲なるレーザー光が群れを貫き。
遅れて小さな爆発が、魚の大きな体を吹き飛ばしていく。

(;゚Д )「な、なんじゃ今度は!?」

(;ФωФ)「ギコ!! 無事か!?」

(;゚Д゚)「な、ナイトー!? おま、なんで!?」

しばらくの間を置いて、呆然とするギコがようやく気付き、前に見れば、
そこには、輝く湖の上、ホバー状態の航行機から身を乗り出すナイトーの姿があった。

(;ФωФ)「つーか、なに、この変な生き物、しかもなにこの状況……」

(,,゚Д゚)「……」



107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 22:48:16.80 ID:wYtYTp1m0

(,,゚Д゚)「た……」

(;ФωФ)「た?」

(,,;Д;)「助かった……ぁ…」

(;ФωФ)(泣いてるし……)

( ФωФ)「…とにかく、早いとこ出よう、水も満タンになったし」

そうして、ギコは航行機に乗り込み、己が命をかみ締めるように深い溜め息を吐いた。

ちなみにあの魚は全滅したわけではなく、突然の襲撃で逃げ出しただけらしく、
穴から覗き見えたいくつもの尾びれに、ギコは小さく悲鳴をこぼした。

( ФωФ)「でも本当に危なかったね、さっきのは……」

(,,゚Д゚)「死ぬかと、いや、死ぬと思いました」

(,,゚Д゚)「……てか、何でわかったんだ? 危ないって」

( ФωФ)「シィが教えてくれたんだ」



108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 22:53:17.05 ID:wYtYTp1m0


(;゚ -゚)(っっ!!!!!)

( ФωФ)(どうしたの?)

(;゚ -゚)(どうしよう、どうしよう…!? ギコが死んじゃう!!)

(;ФωФ)(ええ!?)

(*;Д;)(やだ!! そんなのやだよ!! 助けて! ナイトーお願い! ギコを――――)



( ФωФ)「ってさ、いきなり凄い必死に叫んでくるから驚いたよ」

(,, Д )「そうか………シィが……」

( ФωФ)「……あの子、一体何者なんだ?」

(,,゚Д゚)「……それは」

(,,-Д-)「………その内、教えてやるよ」

( ФωФ)「………そっか」



112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 23:01:24.03 ID:wYtYTp1m0

(;-Д゚)「おえっぷ……それよりナイトーくん?」

( ФωФ)「なに?」

(;-Д゚)「すまんが……もう少し、穏やかに運転ぅをおおお!!!??」

(;ФωФ)「おっとと、ちょっと掠ったかな」

(;゚Д゚)「ひぃいいいい!!! お、降ろしてえええええええええ!!!」

洞窟は狭くはないが、そう広くもない、航行機がギリギリ通れるか、という程度。
にも関わらず、ナイトーは平然とスピードを出し続ける、急カーブでもお構いなしだ。

どっちにしても、ギコの悲鳴と、命の危機は続く。

それからほどなくして、高速飛行の甲斐あってかすぐに地上へと躍り出た。


(,,;Д;)「ぎゃああああああああああああああああああ!!!」

( ФωФ)「はははははははははははははははははは!!!」



113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 23:05:28.06 ID:wYtYTp1m0

そして、フラフラになりながら、どうにか船を降りたギコは、
すぐに息絶えるように地面に突っ伏した。

( ФωФ)「大丈夫かギコ」

(,, Д )「くそ、このスピード狂め、覚えてろ……」

(*゚ヮ゚)「ギコ!!」

(,,゚Д゚)「む、シィか……」

(*゚ー゚)「よかった……ギコ生きてて…」

(,,゚Д゚)「…お前がこいつ寄越してくれたんだって? ありがとうな」

(*^ヮ^)「うん!」


「あれ、こっちにはお礼なしなの?」


(,,゚Д゚)「ん?」



115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/19(日) 23:13:24.75 ID:wYtYTp1m0

ここに来たのは、今この場に居る三人だけだった筈。
だが、今の声は明らかにギコの視界の外から聞こえてきた。

戸惑いながらも振り返れば、そこにはネコネコの本艦と、そのクルーが揃っている。
そして、ようやく気付いたと悪態をつきながら、それぞれ集まってきた。

(;゚Д゚)「え……何で、お前ら…」

( ФωФ)「自分も今まで乗ってたのに、気付いてなかったの?」

(;゚Д゚)「乗って…って、あ、ああ! これ、ファマスじゃん!!」

( ´∀`)「ギコに許しを貰ったおかげで、かなりパワーアップできたモナ!」

(,,゚Д゚)「あ、ああ……そういえば……」

( ФωФ)「うん、おかげで間に合ったんだよね、それにあの光学兵器とか凄かったし」

( ・∀・)「しっかし、相変わらず無茶する船長だ」

(;ФωФ)「前からこうなのか……」

そんなナイトーの一言に、一同、しみじみと頷いた。



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/20(月) 01:24:40.07 ID:Ea24r9Ol0


( ・∀・)「駄目だよナイトー、ちゃんとこういうのは止めてくれないと」

(;ФωФ)「あ、いや、ごめん…不慣れなもんで」

(;゚Д゚)「ていうか、だってお前等、休暇は……」

( ・∀・)「取りましたとも、でも仕事が始まったら終わるのは当然でしょ?」

「ていうか、どっちにしたって放っておけませんって」

「一言あればいいのにねぇ、変に理解ある上司ぶろうとするからこうなるんだ」


(;゚Д゚)「……」

( ФωФ)「……つまり、皆、あんたの事が心配でしょうがないってさ」


Σ(,, Д )「!!」



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/20(月) 01:25:35.48 ID:Ea24r9Ol0
しばらく、ギコは少しばかり震えながら、俯いてしまった。
けれど、やがて立ち上がると、すぐにいつもの調子で声を張り上げた。

(,, Д )「それじゃ!! 依頼も果たしたし、戻るぞ! 持ち場につけ!!」

号令の合図が、空に向かって響く。
応える声が、もう一度響いて、ギコは一度、目元を拭った。










4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/20(月) 01:28:03.35 ID:Ea24r9Ol0

(´・ω・`)「うん、ちゃんと本物の神のアクアだね」

(;゚Д゚)「神のアクアぁ? なんだよそれ」

あれから、無事に房津の湯へと戻ってきたギコ一行は、早速水の受け渡しを行った。

話に聞けば、どうやら人間の体を一時的に強化してくれるという、魔法の水らしい、
それはヤバイ薬の一種なのではないか、という疑問もあったが、ギコは見なかった事にした。
しかし考えてみれば、洞窟内の攻防であの数を相手に生き残れたのも、その水のおかげだったのかもしれない。

(´・ω・`)「しかし一人で乗り込むとは驚いた、サイギョが居ただろうに」

(;-Д-)「ああ、サイギョってーのか、あれ」

(´・ω・`)「うん、でもまあ、別に襲われなかったでしょ?」

(;゚Д゚)「ハア!? めっちゃ殺されかけましたが何か!?」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/20(月) 01:30:24.88 ID:Ea24r9Ol0

(´・ω・`)「む、そりゃ変だな、あれは肉食と言っても魚が主食だし、人は襲わないんだけど……」

(´・ω・`)「もしかして、何かしたんじゃないの? 彼らを刺激するような事をさ」

(,,゚Д゚)「してねぇよそん……」


『ハーッハッハインリーーーッヒ!!』


(;-Д-)「いや、したかも……」

( ФωФ)「ところで…気になってたんだけど、宿に、あの二人が居なくない?」

(´・ω・`)「ああ、フサとツーの事か、あいつらは今情報集めに出払ってるよ」

(´・ω・`)「その結果、やはり正規のルートは通っていない事がわかった
      まあ、当然っちゃ当然だけどね、検問されるのは目に見えてるし」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/20(月) 01:32:43.75 ID:Ea24r9Ol0

(;ФωФ)「……もしかして、この依頼自体、それを調べるまでの時間つぶs」

(´・ω・`)「さあーてねぇ…んで、んなことより続きだけど」

宇宙穴とは、今も謎の多い存在ではあるが、少なくとも存在は確認されている。
だが、その位置の全てを確認している訳ではなく、まだ公式には未確認の穴も数多く存在した。

しかし移送される位置ばかりは、こちらでは手が出せないのが現状であり、
未確認に手を出して、下手をすれば遠い銀河の端に投げ落とされ兼ねないのだ。


(´・ω・`)「けど、それはあくまで表向きの話だ」

(´・ω・`)「世の中、命知らずの馬鹿から、金の為なら何でもやる馬鹿まで居てね…
       もうとっくに、裏道って言うのは出来上がっているんだよ」


(;ФωФ)「じゃあ、それを辿ればVIP星に?」

(´・ω・`)「まあ、端的にはね」



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/20(月) 01:34:55.77 ID:Ea24r9Ol0

(;ФωФ)「じゃあドクオも、そこに…! そこへ行けば!」

(´・ω・`)「早とちりしないの、事はそう簡単じゃないんだよ」

(´・ω・`)「そういった野良にできた宇宙穴っていうのは、酷く不安定な代物でね
      いつも同じとこに繋がってるとは限らないし、天体の位置や、磁場でも変化する」


(,,゚Д゚)「不安定で、つまりどうなるんだ?」

(´・ω・`)「分かりやすく言えば、運がよければ一発で着くし、悪ければ一生たどり着けない、そういう手段さ」

(;゚Д゚)「つっかえねえーーーー!!」

(´・ω・`)「そう言わない、大体、元々は君のような人が好んで使うものなんだよ?
      海賊とか、そういう心にやましい部分を持ってる人がね」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/20(月) 01:38:15.32 ID:Ea24r9Ol0


ギコは訝しげに見据える、しかし意にも介さぬ様子でショボンは続けた。

つまり、宇宙穴の繋がる先、行く先がランダムに変わるという事は、
海賊などが単純に逃げる道をえらぶ場合、逃亡成功率を桁違いに上がる結果になるのだ。

それについては、もはや語るまでも無いだろう、それほどに、裏家業の人間にとっては都合の良い存在だった。


(;゚Д゚)「まあ、便利っちゃあ便利だけどよ」

( ФωФ)「ショボン……じゃあ、裏のルートって言うのは使えないって事なのかぉ…?」

(´・ω・`)「うん、普通なら無理だ、けど……」

(´・ω・`)「さっきも言ったでしょ、色んな馬鹿が世の中居るってさ」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/20(月) 01:40:39.39 ID:Ea24r9Ol0



 「ちょ、あのこはやすぎワロタ」

 「このあたし様が負けるとは・・・乾杯だわ」

 「うん…完敗、ね」



 その時、一人の女性が息を切らせ、宿の入り口に駆け込んできた。
 後を追うように、男が、続いて悟りの少女が並んで駆け込む。

 奥に居るギコ達は、まだ知る由もない。





 「……っ」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/20(月) 01:42:09.50 ID:Ea24r9Ol0

(´・ω・`)「これを」

そう言ってショボンが差し出したのは、とある宙域を示す座標を記した紙であった。
ナイトーは不思議そうにギコへと視線を向けるが、ギコも知らないらしく、首を振っている。


( ФωФ)「これは…?」

(´・ω・`)「ここには、裏穴についての記録を行っている科学者が居る」

(´・ω・`)「彼に聞けば……あるいは、行き先くらいはわかるかもしれないよ?」


その言葉に、顔を見合わせて頷きあう男二人。

 その一方で。


 廊下を走る女性の目には、いつしか涙が溜まっていた。
 そして階段を下って扉の前、この先に。



 彼女は。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/20(月) 01:44:20.02 ID:Ea24r9Ol0


 ツンは、迷わずその扉を開け放った。




 ξ゚听)ξ



 (;ФωФ)「………え、つ…」



 ξ;凵G)ξ


 
こうして、自分勝手な理想を求める馬鹿の下に、ようやく、その間違いを教える者がやってきた。
その再会は果たして、双方にとっての分岐点か、あるいは始点だったのか。




分かるのはただ、終点ではない事のみ――――。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/20(月) 01:46:59.77 ID:Ea24r9Ol0





ここはかつてのロマンチスト達が描いた、理想郷の成れの果て、世界の名を2チャンネル。

そこは失くしたロマンを模索する願いが飛び交う、星追い人たちにとっての広すぎた宇宙。



男は川の向こうで前だけを見据えて、ただ歩くことを決めた。


女は暗闇の中、迷いながらもやがて一歩を踏み出して、わずかに見える灯りを信じて川を渡る。



やがて、女が渡り終えたとき。


男はようやく、振り返ることを知るのであった。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/20(月) 01:49:31.69 ID:Ea24r9Ol0





            第二話



       「水の星から愛を込めて」



             つづく



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