('A`)ドクオと愉快な魔法少女のようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:22:42.75 ID:eHQd7x920


青白い空。太陽はさんさんと輝き、その光の下で子供達はわいわいがやがやと騒ぎながらサッカーをしている。
窓の外からみえる景色は、決して綺麗と呼べるものではなく、ごく普通の田舎の風景だ。
見渡す限りの畑、水田、畑、水田。たまに見えるのは木造建築の家。かくいう俺の家も、木造のボロアパート。

「あっ! ボールが!」

おや、どこかにボールが飛んでしまったらし……

(;(#)A`)「いぶしへああああ!?」

こういうありがちな展開上もうみんな分かってると思うので、言うまでもないが、子供の蹴ったボールが俺の顔面へと直撃した。






                           _
('A`)ドクオと愉快な魔法少女のようです川 ゚ -゚)



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:25:13.92 ID:eHQd7x920


「お、おじさんごめんなさい!」

俺の顔面はいまだに腫れており、脈を打ちながらじくじくと痛む。
怒りより先に、何がなんだかわからないという感じで、謝る子供を見ていた。
つーか待て。誰がおじさんか。こちとらまだぴっちぴちの二十代じゃい畜生。
そりゃ確かに姿格好は黒尽くめだからおじさんに見えるかもしれないが、最悪、前途多難な若者ぐらいの目で見て欲しかったぜ子供よ。
ほら、なら次にお前らがいう言葉は決まっているだろう? さあいえ。お前らが次へと紡ぐ言葉を……!

「ぼ、ボール返してもらえませんか!」

……ああうん。そうだった。そうだったな。ボールが飛んできたんだっけな。
まあ、子供が外で遊ぶのはいいことだ。今時のガキは何が悲しくてか外に出ようがかまわず「おい! モンハンやろうぜ!」だからな。
なんだよ。外に出るだけ出てやる事がゲームかよ。やるならもっとアクロバティックなゲームしろよ。
例えば缶蹴りとか鬼ごっことか、リアル鬼ごっことかよ。あと親指探しとか。楽しいじゃねーか。


('A`)「ちょっと待ってろよー」

部屋の外から見える子供達に呼びかけて、俺は部屋の中を一瞥する。
なるほど。この中にボールがあるわけだな。……いや当然なんだが。

この部屋にボールが飛んでくるということ自体はこれといって珍しいことではない。
何せ、今子供達が遊んでいるのは所謂空き地という、絶好の遊び場なのだ。
ここを近所の奥様方の間では子供達が唯一外で気楽に遊べる場所らしいのだ。
そりゃ公園なんかもあるにはあるが、あそこは本当にただの公園だ。
カップルなんかが屯してたり、会社員なんかが飯を食うために立ち寄ってたりと、まあ子供の遊び場には適していない。

……こんだけ講釈立てる前に、さっさとボール捜してやろう。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:27:40.87 ID:eHQd7x920

('A`)「お、」

探してみれば、すぐに見つかった。そりゃそうだ。俺が少し視線を落とした先にあったのだから。
考えてみれば当然だ。俺の顔面にぶつかって部屋の中に入ったというのなら、すぐそばにあって当然だろう。

だが、だがだ。
なぜ、その横に俺の大事なPCに繋ぐ液晶モニターがある?
そして大事なのは、ココ。まさにココ。何が? といわれればすぐに答えよう。
横の液晶モニターは静かに顔を伏せ、うつ伏せになっているのだ。それも無数のプラスチックの破片と呼ばれる涙を流して。

簡潔にまとめてしまおう。そうだ。

ぶっ壊れた\(^o^)/

(#゚A゚)「おい糞ガキどもそこで待ってろやああああああああああああ」

「う、うわ! 変態おやじがキレた!」

「に、逃げろおー!」

(#゚A゚)「ファッキンベイベー!!」

有頂天と化した俺の怒りは止まることを知らず、部屋を思いっきりに飛び出す。
外の空き地はすぐそこだ。今からガキどもが必死に逃げようと追いつけるだろう。
追いついたら、とりあえずそのガキどもの親から金を巻き上げよう。そして新品で薄型のものを買わせよう。
それでこそ因果応報。奴らがやったことはそれだけの価値があるのだ。俺の液晶は中古でさんきゅっぱだけどな。うほっ! いい作戦。

の、はずだったんだが……。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:29:36.22 ID:eHQd7x920

(;'A`)「のおおおおおおおお!!?」

どうやら急いで出すぎたらしい。
結果、階段を踏み外し、斜め四十五度の角度で思いっきり転げまわる。

(;'A`)「ちょまwwwwうぇwwwwおおwwwwwげふあ」

顔だけはなんとか守りきれたわけだが、腹やら、足やらを打ち回った後、ようやくして着地。
もちろん、悲惨な格好で。片足だけ上げて、両腕で顔を守った形で。

(*゚∀゚)「なんだいアンタ。元気だねぇ」

(;##'A`)「あ、大家さん。どうも」

(*゚∀゚)「どうも」

 (*゚∀゚) つーさん(鶴屋さん)

 俺の住んでいるこの糞オンボロアパート(築十年)鶴屋荘の大家、鶴屋さんである。
 間違ってもスモークチーズが好きな人ではない。俺や周りの人はつーさんで定着している。
 家賃滞納などしている俺を笑いながら「いい加減あきらめて臓器提供でもしたら? 介錯するよ!」と元気余って殺意百倍な人である。
 俺の中の敵に回してはいけない人の五本指に入るような人だ。
 と、人物紹介っぽくやってみたわけだが、恐らく続かない。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:31:36.31 ID:eHQd7x920

(*'∀`)「いやあ、いい天気ですね」

俺に出来る最大限の爽やかスマイル。いうなれば、接客スマイルである。
しかし、この笑顔一度ガラスに映っているのを見たが、自分でも失禁するぐらいに気持ち悪い。これがまた本当に気持ち悪い。
そんな笑顔なので、勿論つーさんの反応は、

(*゚∀゚)「そうだねっ! で、今月の家賃はいつ払ってくれるんだい?」

華麗にスルー。
……で、俺にはスルーできない話題を持ちかけてくると。

(;'A`)「あ、えっと給料日が明後日なんで明後日まで待ってください」

毛穴という毛穴から汗が噴出しながら、つーさんの顔色をうかがう。
特に変化なしのご様子。良かった。命拾いした。一度機嫌が悪い時に同じ展開があったが、その時は包丁を投げられた。
間一髪よけたものの、あれは完全に狙いを定めて投げてきていた。しかもつーさん確実に包丁投げるのに慣れている手つきだった。
おかげさまで、あの日のトラウマから、俺はつーさんにこの手の話を持ちかけられた時は常に心臓をばっくんばっくん言わせながらgkbrしている。

(*゚∀゚)「まあ、慣れっこだしいいよっ!」

ああ。今日は危険日じゃないんですね。あの日じゃなくて良かった。
ついでに自分の思ってることは他人に聞こえなくて良かった。しみじみと思うわ。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:34:01.99 ID:eHQd7x920

('A`)「いやあ、すみません。給料入ったら必ず渡しますハハハ」

なんてほのぼのとした会話だろう。こんな日がずっと続けばいいのに。
そうすれば、世界は平和になって、人工衛星と見せかけた核爆弾を撃つ国もなくなり、
世界中が首脳会談なんかで大あくびをこいても許される世界になるだろう。
日本\(^o^)/ オワタな感じになってしまうが、俺が幸せだからそれでよし。俺がよければ全てよし。

(*゚∀゚)「で、」

('A`)「はい?」

(*゚∀゚)「なんでズボンを穿いていないのかな! かなっ!」

('A`)「え?」

(*゚∀゚)「え?」

幸せの塊の天国。そんなお花畑から、突如落とされる地獄の淵の血の池地獄。待っているは下着もといパンツ一丁の地獄絵図。
ちなみに、俺はコスプレ趣味もあるので、たまに縞パンなんて穿いたりする。
関係ないけどコスプレと女装を一緒にする奴は何なの? 馬鹿なの? 死ぬの?

良かったな大家よ! 今日がたまたまあの日じゃなくて! もしあの大事な日だったら地獄を見てたぜヒャッハー!
むしろ大家よ! お前があの日じゃなくて良かったな! 俺の保身的な意味でな! イヤッハー!

……なあんて言ってる場合じゃねーな。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:36:08.25 ID:eHQd7x920

(;'A`)「あ、ああっ! すみません。俺はいつでもフリースタイルなんですよハハハ」

(*゚∀゚)「通報しますた」

(;'A`)「あっ、ちょ、冗談! 冗談っすよ!」

「さっさと帰れこの家賃ドロボーがー!」と叫ぶ大家さんの声を背に受けながらそそくさと部屋に戻った。
それにしても足が痛い。つーか全身痛い。もうやめたい。こんな生活もうやめたい。でもやめられないとまらない! だって現実問題お金ないんですもん! へへへ!
あんな階段から転げ落ちて無事な俺も俺だけどな……。 むしろ無事じゃなかったら入院できたのに。実費で。

……あー。いっそ魔法少女とかこねーかな。エロゲ的展開でもおきねーかな。もう何でもいいからこの糞人生に終止符打ってくんねーかな。

('A`)「俺、何で外出たんだろ……」

部屋に戻り、窓から外を見渡してみるが、既に空き地に子供達の姿はない。
そりゃいい大人がいきなり目ん玉ぱっちり開きながら叫んできたらそら逃げるわな。そんなもん俺だって逃げる。
で、このぶっ壊れた液晶どうしよう。うっはー全然見えん。ついでに涙で明日も見えん。ちょっと上手いこといったな俺。……鬱ダ氏ノウ。

……つーかほんとマジにガチで再起不能な液晶とかどうしたらいいんだよ。ゴミ回収するだけでも金かかるってのに、人が必死に遠出して安い液晶探しに行ったってのに。
何よりここでネックだったのは交通費の方が金かかったってことだ。普通に近所の電気屋で十分なもんが買えたという事実に唖然呆然だよ。
んだよ。俺は貧乏神か何かか。うらむぞ神様。恨まれたくなけりゃ俺に何かしらのサイダネくれ。マジで。この際梅干でもいいわ。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:38:17.24 ID:eHQd7x920

('A`)「はぁ……」

……しょうがねえ。家賃を払い終えたら買いなおそう。ちょうどいい機会だよ。何がちょうどいいんだよ。よくねーよ。何もよくねーよ。
つい二ヶ月前に買ったばっかりだっての。なのに何で壊れるんだよ。アホか。ガキの脚力どんだけあんだよ。
俺に当たった上で、パソコンのスクリーン破壊とかどんな馬鹿力だよ。ふざけんなよ。お前はあれか。ジャイアンか何かなのか。
第一……って、もうこんな時間かよ。ふざけろ時間。止まれよ。タイムストップウォッチとかくれよ。
いや、そんなもんより独裁者スイッチくれよ。もうこの世の何もかも俺のものになってしまえばいいんだよな。そうだな。そうなれば何もかも俺の思ってる通りになるのにな。うん。ドラえもん欲しい。ドラちゃん本気で欲しい。

飯とどら焼きがあれば納得のいってるあのアホ青鼠ロボ欲しい。とりあえずタイムマシーンに乗ってロト6でもやろう。

そうすれば一瞬で俺大金持ち! これぞ必勝法! …………。

('A`)「どこまで人任せだよ……。バイト行こ……」



糞重い足取りの中、俺は愛用の自転車に跨った。名前は澪たんである。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:41:30.54 ID:eHQd7x920



……で、バイトに向かう途中、別にこれといって何かあったわけじゃないから説明は省く。
ただまあ、多少なりに俺を苛立たせることはあった。とはいっても、俺の器はそりゃもうお猪口くらい広いので大目に見ることにする。
だが、この時期的にキリスト様の記念日か何かで、
サンタ衣装とかいう頭のイカれた奴等が考案したであろう、
バイト内容劇的改変でビラ配りなんぞをやってるカラオケの店員と、
道端でイチャつくいかにも「俺超悪ッスから(笑)」とか言いそうなDQN野朗と、
「恋空チョー泣ヶル(爆涙)」とか言ってやがりそうなアバズレビッチが歩いていたというまあ、日常的によくある話でありながら、
俺にとって非常に納得のいかない人生で嫌いなものベストに入る奴らが歩いてたわけだ。
そんなもん見ればもちろん俺は怒り狂いそうになるわけだが、俺にそんなあいつらの頭を引っぱたくような勇気はないので軋む自転車を漕いでそのまま職場に向かった。
後ろから俺を罵倒する声が聞こえた気がするが、恐らく気のせいだろう。いや気のせいにさせてくれ。わかってても「あいつキモーイ(笑)」とか言われると傷つくから。

……んでまあ、到着というわけなんだが。

( ・∀・)「今日休みだよドックン」

というわけなのだ。

片道自転車で二十分。必死に来たらこの結果。なんという蛇足というか無駄足というか、うん。
俺、何しにここまで来たんだろう。ただ道端でイチャつくカポーを見るためにか? キリスト様を祝う赤の帽子を被って赤白の服を着ているキチガイを見るためか?
だとしたら、俺はもう発狂してやる。全裸でこの町内を駆け回ってやる。桜新町ばんざーい! 桜新町ばんざーい!
そうなったらめでたく「炊き出しだよ。お食べ」とか言われる村に行けるぜ! 契約切られたわけじゃないけどな! 作者があるまいしな!



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:43:31.79 ID:eHQd7x920

( ・∀・)「どうしたんだい? そんな浮かない顔して」

('A`)「いや、なんでもないっす」

店長の声で正気に戻る俺。もはやアバズレなどどうでもいい。
というか女なんぞどうでもいい。交際とかいう都市伝説もどうでもいい。
つーかもう、人生とかどうでもいい。俺はただ家でぼーっとネトゲでもしながら市販のシーチキンにマヨネーズとかかけて、ビールでも呷っていたい。
それ以上何も望まないんで……。いや、でもやっぱり欲を言えば、すき放題できるだけの金が欲しい。

……ならやっぱバイトなんだよね。うん。明日からバイトだよなー。今日休みだったんだよなー。
やっぱ休みとか全部返上して、シフトぎっちぎちにしてもらおうかな! そうすればお金持ち! やった!

( ・∀・)「まあ、明日も休みだしゆっくりしなよ? その翌日から休みのないシフトだしね」

まさか妄想が現実になるとは。別にそんな自分の妄想どおりの世界になって、
主人公になるとか、厨二病的バトルが待ってるとかそんなオチいらないんで。本当にいらないんで。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:45:36.78 ID:eHQd7x920

ってちょっとまて、今聞き捨てならないセリフが……。

('A`)「えと、休みのないシフトですか?」

( ・∀・)「見てごらん。はい」

('A`)「へい。んーと……?」


12日 どくを 5〜22 
13日 どくを 5〜24 
14日 どくを 5〜23 
15日 どくを 5〜5  ファイト!

ほう。なるほど。鬼シフト。
ってこれおま、ちょ、え? いや、寝る時間含めてバイト以外の時間って7時間しかないってちょ、え?
いや、帰りの時間を考えて、となると? 六時間寝れればいいところってことか? いや往復で考えたら間違いなく六時間寝れないよな。
ちょ、いやいや。いやいやいや。これはない。絶対にない。アルファベットAでZに挑むくらい有り得ない。酢豚にパイナップルくらい有り得ない。
やっぱ休み欲しい。休みなしとか考えられない。何が悲しくてこんな糞シフトに入らなきゃならんのだ。贅沢言ってすみませんでした神様。お願いだから俺に猶予あるシフトを下さい。人生に猶予を下さい。

(;'A`)「労働基準法に真っ向から勝負しますね」

でも言い返せない俺。あーなんかもう嫌だな俺。もし俺が女だったら俺みたいな奴には絶対話しかけもしないな。断固として無視するわ。
んでもって陰口叩きまくるな。「今日もドクオ気持ち悪かったよねー」とか言うわ。
でも俺が女だったらそれはそれは顔面障害者だろうから「お前の方が気持ち悪いっつーの」とか真顔で言われそうだから多分言わない。
……自分を卑下し過ぎだと思うが、まあ事実だからなぁ……はは。明日樹海ツアーでもしようかな。
つーか待て待て。今普通に見落としていたが、お前、5〜5ってなんだ。24時間労働じゃねーか。
何が悲しくて接客業でそんな一日中いなきゃなんねーんだ。おかしいだろ。つーかおかしくないわけないだろ。
なんじゃそりゃ。ふざけろ馬鹿野朗。……でも真っ向からいえない。運命には抗えないのよ……。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:48:26.28 ID:eHQd7x920

('A`)「じゃねーよ。運命に抗うも糞もあるか。やい店長この野朗。お前最後のシフトこれどういうことだよ。
   それでなくとも今まで突っ込まなかったが、誰だよこのファイト! って書いた奴。下にはぁととか薄く書いてんじゃねーよ。
   しまいにゃどっかのパンクロッカーみたいに糞ビッチとかファッキューとか連発するぞええおい」

( ・∀・)「そうだね。確かにこれは酷いシフトだ。だがねどっくんよ。
      僕 は 法 律 に 縛 ら れ て 生 き た り は し な い !」

……ああ。そうだね。確かにあんたはそういう奴だ。
そういう自由奔放っぷりに惹かれて俺はこの職場についてるんだ。だがな、今時そんな厨二病じゃ生きられないんだよ。
確かにあんたのセリフはかっこいい。かっこいいけどな……。

(゚A゚)「そういう問題じゃねーよ! ちったぁ俺の身を労われ厨二病畜生野朗!」

( ・∀・)「はっはっは。無理だねー。何せ、バイトが君と内藤君しかいないんだからはっはっは……。 はは、は……」

('A`)「……駄目だこの店、早くなんとかしないと」

そうである。ここはバイトが二人しかいないコンビニなのだ。
なぜそんなバイト不足に苛まれているのかといえば、答えは簡単だ。店長がコレだからだ。
そりゃ一般人はついていけないだろう。挙句、判断能力やら色々乏しいため、
バイトの内藤や、俺の方が動けるというオマケ付きだ。
そんな店長についてくる人材がいるだろうか。……いたわ。ここに。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:51:11.40 ID:eHQd7x920

( ・∀・)「……は、はは。まあ、というわけだから余命一日楽しみたまえ。はっはっは」

余命ですか。死ぬんですか。いや確かに倒れるかもしれんが。倒れたら働いた金が全く無意味だが。保険かけてないしな。
やっぱ明日は樹海ツアーだな。うん。もう俺の百万ドルのスマイルとか出したくないんだよ。
未成年に煙草売って何が悪いんじゃい。そりゃ未成年でも煙草のひとつや二つ吸うっての。
いやまあそりゃ俺だって最初はまともに聞いてたよ。でもな、暴れまわるDQNがいるのさ。そいつらに煙草を売らなかったらどうされたと思うよ。
決まってるだろ。武力行使さ。そりゃ結局売らずに済む。プラスαで警察沙汰になれば慰謝料も貰える。
でもな。結局殴られるだろ? やっぱり痛いのってのは嫌なわけだ。
だって目の前に金髪でツンツンの頭の兄ちゃんが「御どりゃwskrpgぁあl!!」とか言いながら殴りかかってくるんだぜ? 怖くない? これすっごく怖くない?
となると、やっぱり穏便に売ってしまうのがバイトとして、そう、バイトとして正しい姿なわけだ。日本語でおkとか口が裂けても言えない。
店長黙認だしな。つーかあの人も結局明らかにガラの悪いのが来たら売ってるしな。

( ・∀・)「じゃ、よろしく」

そういってぽん、と俺の方に手を置きバックへと消える店長。

……畜生。最高に、最悪な俺の人生に夜の帳が降りた。ちょっとカッコよく言ってみたけど不自然だ。でも言ってみたかったんだこのセリフ。
一度でいいから夜の帳が降りるとか言ってみたかったんだ。だってこの言い回しカッコいいじゃないか。そりゃ使いたくなるよ。わかるよな! みんなもわかるよな!

いやまて、つーか大体なんだよ5〜22って。途中で微妙に時間変更すんなよ。どうせ一時間早いから楽になるでしょ!とか言うんだろ? 楽になるかよ。
半日以上何が悲しくてコンビニだよバーロ。お前には俺がそんなに暇に見えるか?見えるんだろうな。そりゃそうさ。彼女イナイ暦=年齢=童貞だし。
いやいやいや、しかしそれでも童貞であることは誇りである。童貞も守れない奴に何が守れるってんだ!
それに加えて最後なんじゃこりゃ。24時間は流石におかしいだろうが。暇だろうが暇じゃなかろうが関係ありゃしねえ。

……もうやめよう。これ以上俺のライフポイントを削っても仕方ない。あー。なんかこう非日常的イベントでもおきないかな。おきねーよな。現実だしな。

よし! 気を持ち直して今日も頑張ろう! イッツマイライフ!



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:52:29.53 ID:eHQd7x920





('A`)ドクオと愉快な魔法少女のようです




 第一話 昨日までのいえすたでー



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:55:06.99 ID:eHQd7x920

(ll*'∀`)「いらっしゃいませー」

何がマイライフだこのやろう。
待ってるのは糞現実だけじゃねーか。馬鹿か。何が悲しくてマイライフを営業スマイル全開でお客様をお出迎えしなきゃならないんだっつの。
大体なんだよこのシフト。明日休みがあるからまだ余裕があるものの、おかしいだろうが。
家に帰っても六時間と寝れないってどういうことだよこんちくしょう。

適当に休憩とって飯食って……いや、それにしてもおかしいだろうこのシフト。
とりあえず、滋養強壮剤と湿布はあの糞店長からふんだくるとして……。畜生め……。

( ・∀・)「からあげ棒十個」

('A`)「お帰り下さいませお客様」

突然現れるのはとんがり唇の歳に似合わない長髪茶髪の店長様。
そもそもあんたは本当にからあげ棒十個差し出したら食うのか? と脳内でマジレスしながら、
そんなことあくまでも上司であるこな畜生にいえるわけもなし。悲しいよね、現実って。

( ・∀・)「なんて失礼な店員だ。店長を呼べ! 店長を!」

そんな俺の心境を知ってか知るまいか、というか知るわけもなしに店長出せと発狂する店長。
俺なんでこんなところで働いてるんだろう。こういうノリ得意じゃないのに。
思い出したらキリがないものの、強いていうなら普通のコンビニより自給がいいからだ。そんなリアルな情報誰も求めないですよね。サーセン。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:56:58.29 ID:eHQd7x920

('A`)「……帰りますよ?」

( ・∀・)「ごめん」

しょぼくれた顔をして、店長は肉まんを一つ買ってバックスペースへと消えていった。
つーかあのおっさんからあげ棒食ったことないじゃん。いつもなんか肉まんかピザまんじゃん。で、飲み物は毎回雪印のコーヒーじゃん。

なんというか……贅沢を知らない大人ってこういうことを言うんだろうな。
あのおっさん絶対女遊びとか知らないよ。俺も知らないけど。

('A`)「いらっしゃいませー」

川 ゚ -゚)「よう。魔法少女クーと申す。ウェブマネーカード三千円分くれ」

……。うん?

('A`)「もう一度お願いしてもよろしいですか?」

どうした、とうとう俺の耳は腐り落ちたか? いや、落ちてないな。ちゃんとついてるな。
何よりも、こんな展開があるわけがない。というか、そんなガイキチの発言をするような人がいるはずがない。
そうだ。そうに決まってる。

川 ゚ -゚)「む。私は魔法少女クーだ。そして用件はウェブマネーカード三千円分だ。よこせ」



('A`)「あ、はい」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 04:59:20.34 ID:eHQd7x920

川 ゚ -゚)「ひどい扱いだ」

酷い扱いも糞もあるか。何いきなりトチ狂ってやがるこのアマ。
こちらと暇じゃねーんだよ畜生が。いきなり現れて魔法少女だと。かつ用件がWMかよ。
ゲーム内では魔法少女かも知れんが、ここは現実です。どうぞお家にお帰り下さい。

('A`)「るせー。腐れヲタ野郎に用はねーんだよ」

川 ゚ -゚)「何を言う。正真正銘魔法少女だ」

……ちなみにこんな対応こそしているが、この女性とは初対面だ。
身長は大体160センチくらいだろうか。胸は……触れないでおこう。綺麗な黒髪の長髪が特徴的だが普通に美人さんだな。
可愛いのに何か残念。内面的な意味で。こちらと暇な時間くらいはゆっくりしたいんだよ。バックで休憩取りたいんだよ。
だというのに、この女ときたらだ。深夜に徘徊して、挙句の果てWMをほしがって、かつ自分を魔法少女だと言う。
面倒なことこの上ないというのに、引き下がる気もないときたもんだ。……いいから休ませろよ畜生。

('A`)「……はいはい。魔法少女ね。で? 何? なんでその魔法少女がウェブマネーカードなの? 馬鹿なの? 死ぬの?」

流石の俺も、脳内で処理が追いつかない。おかげさまでお客様に対する態度が酷い有様。
でもね、間違ってるとは一切思わないの。だって相手が相手なんですもの。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:01:18.68 ID:eHQd7x920

川 ゚ -゚)「うるさいお前が氏ね。私だってモンハンやりたいんだ」

('A`)「何で魔法少女がモンハンだよ馬鹿か。現実で戦えアホ」

川 ゚ -゚)「んなことはいい。というかさっさとウェブマネーカード出せ。あとなんだ、客に対してなんだその口調は。
     店長呼べー! 店長!」

('A`)「店長お呼びですけどー」

川 ゚ -゚)「ちょ、まって。心の準備が……。え、何? 本当に呼ぶの? 嘘、ちょっと」

( ・∀・)「呼ばれて飛び出て!」

川 ゚ -゚)「あ、はい。で、あの店員さんがほしいんですけど、どうしても売ってくれないんです」

( ・∀・)「なんだって……! ドクオ君……。
      君程度の子がなんでこんな美人さんにつかまってるのかは納得いかないからkwsk話せコラ」

('A`)「kwskも糞もねーよとんがり唇野郎。魔法少女だとかいう脳内沸騰してる輩に絡まれてるんだよ」

( ・∀・)「いや、待て。とんがり唇野郎だと? お前は俺に一番言ってはいけないことを言った。
      そうだ。俺にとんがり唇野郎って言ったことだ」

('A`)「いや、そこは軽く受け流して魔法少女に触れろよ。認めとけよ」

( ・∀・)「るせいやい! こちらと長年とんがり唇を気にしてんだよ!」

川 ゚ -゚)「あ、あの」



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:03:12.95 ID:eHQd7x920

('A`)「じゃあ整形でもすればいいだろ!」

( ・∀・)「整形とか親に対する冒涜だろ!」

川 ゚ -゚)「あのー」

('A`)「俺より絶対モテないだろ! なんだよその髪型! 前髪ちょっと残してあとは丸刈りとか馬鹿だろ!」

( ・∀・)「うるせい! 店員の女性が可愛いから適当に頼んだ結果なんだよ!」

川 ゚ -゚)「私を……」

('A`)「サンタ帽子でも被って隠しとけよハゲ!」

( ・∀・)「黙れ顔面障害者!」

(゚A゚)「顔面障害者とは何様のつもりじゃい!」

川#゚ -゚)「無視するなあああああ!!」

(;;´゚∀゚`)「もぎゃあああああああああ!!」

(;'A`)「て、てんちょおおおおおおおお!!」

突如ぶち切れた魔法少女さん。その行動にはオブラートに包んでも魔法を使って敵をなぎ倒すような綺麗さは全くといってない。
今目の前で行われている所業は暴力である。全力で店長の腹を蹴り上げている。
最早これのどこに魔法が使われているのだろうか。
そして皆さん気づいただろうか。この会話中に地の文が一気に消えたことに。
どうみても地文を書くのに疲れた私の手抜きです本当にありがとうございました。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:05:11.15 ID:eHQd7x920

川#゚ -゚)「てめーらさっきから散々私のこと無視しやがって! 死ね! お前は今すぐ死ね! この万年喪男どもが!」


 (##゚∀゚##)

そんな諸事情はさておき、現実では、顔面まで蹴り上げられて無残な店長の姿が目の前にある。
この少女の言動と行動に一体どう萌えろというのだろうか。
俺が想像する魔法少女というのはステッキをくるくると回しながら、
魔法の呪文なんか口ずさみながらピンクの光なんか散らして華麗にその場を丸く治めるってのに……。
なぜにこの女のやってることは、どっかの大魔法峠の如く肉体言語なんだよ。俺のイメージ返せ。
つーかまだなだやるか。……あれ、店長もう動いてなくね? 流石にそろそろ危なくないか?

(;'A`)「あ、あのもうその辺で……」

川#゚ -゚)「死ね! 死ね!」

返ってくるのは罵詈雑言。ああ。止まらない。この魔法少女(自称)は止まらないわ。
店長……。ああ、南無三。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:07:49.63 ID:eHQd7x920

……。

…………。

……………………。




('A`)「で、お前は魔法少女というわけか」

川 ゚ -゚)「そうだ。最初にも言ったじゃないか」

場所は変わってコンビニの裏方。
流石にこの状況化で店を開けるわけにはいかないので鍵を閉めて一時閉鎖中である。
店長はさっきの一件により満身創痍だし、何より嘔吐物やら排出物で溢れかえっているのでどちらにしろ客を入れられない。というか入ってこない。だって店先で起きてますもん。

で、まあ、今この女と二人で裏方にいるわけだが。

('A`)「んで、どうしてくれるんだ。この状況」

川 ゚ -゚)「どうしてくれる、と言われても困る」

('A`)「店長がこのザマじゃ働けないし、店開けられないだろうが」

本来なら既に「あ、もしもし、不審者がいるんで●●コンビニまで来て貰えますか?」と即座にピーポー君なのだが、
なんか警察に突き出すのも面倒だと勝手に判断したというか、話が進まないのでとりあえず個人的な事情聴取中なわけだ。
しかし、このビッチ。自分は悪くないと思っているらしく、全くもってあっけらかんとしている。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:10:09.80 ID:eHQd7x920

川 ゚ -゚)「……むう。つまり店長をなんとかしたらいいんだな?」

('A`)「なんとかって……、何が出来るんだ」

川 ゚ -゚)「なあに、簡単なことよ」

('A`)「簡単なことって……」

ふふん、と笑い、俺を流し目で見るや否や……。

川#゚ -゚)「憤怒!」

(;'A`)「ちょいおまうぇっ」

店長の顔面をぶん殴った。
するとそこから飛び出る鮮血。バックミュージックに「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪」とか流れてきそうな勢いである。
そして店長のお世辞にも綺麗とは呼べない制服に血が飛び散り、染み込んでいく。
死人に鞭を打ったこのマジカルガールはなぜかどや顔で、

川 ゚ -゚)「な? これで万事解決だろう?」

などと言ってる始末。全く持ってここにはボケしかいない。それも天然が入っている。素でぼけていやがる。
こいつに少しでも期待した俺が馬鹿だった。考えればわかることだろう。自分のことを自身満々に魔法少女と言うぐらいだぞ。
そんな奴がまともな思考回路をしているわけがない。そうだよな。そりゃそうだ。俺は何を期待してたんだ。もう、俺ったらお茶目なんだから。ばかばかん☆



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:12:31.34 ID:eHQd7x920

川 ゚ -゚)「なんだ。不満でもあるのか。どう見ても一件落着、万事解決じゃないか」

(゚A゚)「どこが解決じゃいボケ! ぷにえでもこんなことしねえよ!」

川 ゚ -゚)「よく目玉見開いて店長様とやらを見ろ馬鹿」

(;'A`)「はあ!?」

意味がわからない。が、とにかく自信満々なので店長を見てみる。
するとそこには七色に光る円陣が店長を囲っており、突然強烈に光始めた。
一瞬目を閉じてしまったが、目を開いた次の瞬間――――

(#゚∀゚#)++

(゚∀゚#)+++


( ゚∀゚)オッパイガイッパイ


( ・∀・)「あ、おばあちゃん、ちょっとお茶入れてくるよ」

(;'A`)「はあ!?」

川 ゚ -゚)「な?」

この有様。
まさに魔術。摩訶不思議な展開である。だがしかしこの一コマ前にやっていた行動はただの暴挙である。
何故殴って「はい元通り!」みたいな展開になってんだよ。突っ込みどころ満載過ぎて処理しきれねえ。お前はあれか、右手が幻想殺しか何かか。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:15:01.17 ID:eHQd7x920

……だがしかしとりあえず、今現在やらなくてはならないことは、

( ・∀・)「おばーちゃあーん! 待ってよおーう!」

と、遠い目をしながら何処かに渡ろうとしている人を止めることである。

('A`)「店長ー。河渡っちゃ駄目ですよー」

( ・∀・)「……はっ。 ……。ああ、ドクオ君。ここは……、店内か。
      はは、情けないな。俺としたことがやられちまったようだ。邪鬼眼を持つものは俺だけじゃないみたいだぜ。ふっ……」

('A`)「やっぱ渡っとけよ」

( ・∀・)「復活した手前酷い扱いだ」

邪鬼眼厨二病患者には当然の反応です。
少しでも、ほんの一ミリでも心配した俺が馬鹿だった。
そんな店長から目を離し、かつスルーしながら、視線を別の方向へと向ける。
……するとそこには、腕を組み、自信満々な顔をして仁王立ちしていやがる腐れビッチがいた。

川 ゚ -゚)「ふふん。これで魔法が使えることは証明できただろう」

どう対処すべきか。こういうとき、せめて選択肢が三つぐらい出てきてくれれば個人的に凄く楽なんだが。
だがしかし世の中そんな甘いものではなく、勿論のことだが、自分で必死に考えて答えを出さなきゃならない。
しかしまあ、事実この女は魔法を使えるわけであって、それもわざわざ俺に見せてきたのだ。何か用件でもあるのだろう。
となれば、答えは一つ。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:16:54.92 ID:eHQd7x920

('A`)「ああ、わかった。 ……で? 何か用事でもあるのか? わざわざ魔法少女なんざと名乗ってよ」

妥当かつ無難だが、一番効果的な問いかけだろう。今一番に願うことは、ここから大きな発展がないことだ。
こんなエロゲ的展開とか本当に必要ないんで……。穏便に過ごさせてください。ゲームだけでいいですこんなの。

川 ゚ -゚)「ん、ああ。そういえばそうだ。ドクオでいいか? お前の名前は」

('A`)「あ、ああ。そうだけど……。なんだよ突然だな」

川 ゚ -゚)「よし。間違いない。じゃ、私について来い」

そういうや否や、俺の手を掴みぐいっと引っ張る。
待て待て。いきなり何しやがるこのビッチ。
……そりゃ確かに手は柔らかくて、かつすべすべで触ってて気持ちいいというか、初めて女性と手を繋いだというか。
だが、今はそんなことを考えている場合じゃないだろう俺。

(;'A`)「はあ? いや、俺バイトだし。つーか何で見ず知らずの今日であったばかりの赤の他人様についていかなきゃなんねぇんだよ」

川 ゚ -゚)「バイト? ああ、つまりバイトを休めればいいんだな? だな?」

(;'A`)「いや、そうじゃなくて……」

駄目だ。人の話を聞いちゃいねえ。俺の質問が全く通じてねえ。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:19:24.87 ID:eHQd7x920

川 ゚ -゚)「おい店長」

( ・∀・)「随分放置されて寂しかったよママン。で、何の用件かね?」

俺を完全に無視しきった態度を取りながら、部屋の隅で三角座りをしていた店長に矛先を向けはじめるビッチ。
……。神様仏様誰でもいいからこの女を止めてください。

川 ゚ -゚)「何、簡単だ。こいつのバイトを休ませろ」

( ・∀・)「流石にそれは無理だ。僕一人じゃ店を回すなんてとても無理だからね」

川 ゚ -゚)「……ふん!」

(;・∀・)「もげっぷ!」

(;'A`)「(また殴られてるよ……)」

川 ゚ -゚)「再度問おう。こいつのバイトを休ませていいな?」

( ・∀・)「いいよ」

('A`)「ね、無理ですよ……ね、え?」

無理難題を押し付けてくるこのビッチに対して、正論を述べた店長が殴られるという事態。
その後、聞かれた問いにまさかのイエス発言。……ああ店長、結局圧倒的な武力に意志を捻じ曲げられてしまったのね。
……いや違う。そういやこいつ人を殴ることで魔法が使えるんだ。なんて能力乱用しやがる。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:21:56.66 ID:eHQd7x920

川 ゚ -゚)「決まりだ。ついて来い」

(;'A`)「いやいやいやいやいや! 納得行くか! んなことでモルスァ!」

必死の抗議も空しく、鈍い感触が腹部に広がり、それは全身へと響き渡り、意識が……遠のい……て。
訳のわからぬ展開についていけない頭と、現実から、遠のく意識。

ああ……。前略天国のお母様。私はこれからどうなるでしょうか。全く流れも読み取れません。
ごめんなさい母さん。死んでませんでした。

あ、やべ、意識が……。




―――――――――――

―――――――

――――

……。


散々引っ張ってきたんだ。
そりゃ当然、ド派手な展開が待ってるだろう。
誰もがびっくりするような、納得の行くような、魔法少女的展開が待っているのだろう。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:24:41.40 ID:eHQd7x920

目を開ければ、きっとそこにはラブリーな杖を振り回しながら可愛らしい仕草で魔法を唱えているだろう。
そして、それを援護するのが俺の役目。そう、きっとこんなエロゲ的展開が待っていて、俺は内に眠る力に目覚めるんだ。
そして物語が始まって、俺はこの魔法少女と一緒に討伐の旅に出るんだ。そんな展開が……。


('A`)「本当に待っているとは思いもしませんでした」

川 ゚ -゚)「エターナルフォースブリザード!!」

もっともラブリーな杖などが入る隙間は欠片ほどにもないんですけどね。畜生。
スーパー厨二病代名詞のセリフをクール氏が叫んだ後、瞬間的に視界が白銀に染まる。
まさかの正真正銘の魔法が展開されていた。
ああ、なんだろう。自分で想定しておいて、こんな状況になれば何をしていいのか。

ξ゚听)ξ「ハッ……。流石氷の使い手、白銀のクーね! 簡単にはやられてくれないようだわ!」

川 ゚ -゚)「ほざけ。 お前如きにやれる私ではないわ」

交差する互いの武器。一方は刀。もう一方は綺麗な曲線を描くナイフを両方の手で握っている。
火花を飛び散らせ、振り降ろされた刀を片方のナイフで防ぎ、もう一方で攻撃をけしかける。それを読んでか、一瞬でクーは後退する。
そして、向こうもその瞬間に距離を取るために、バックステップ。
こんな説明を冷静に淡々としているものの、内心dkdkgkbrなわけで、
それに加えて、この状況を冷静に受け止めると、出てくる答えはただ一つ。

('A`)「どう見ても非現実的展開でした。本当にありがとうございました」



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:26:33.86 ID:eHQd7x920

なんだよ。こんな立派な魔法戦見せられて、俺に何が出来るってんだよ。
そりゃせめて俺に、武器を具現化する指輪とかあれば話は別だけどよ。肉体強化出来るグローブだったり、青色の大剣だったり、超高速で動ける靴だったり、
それこそキーボードが出てきて、そこから弾丸が放てたりするもんでもいいわ。
そういう特別な武具の類があれば話は別だけど、ねえ。
とかなんとか言ってるうちにクーさんが何かしら呪文を唱えている始末。
その瞬間、向こう側さんの足元から空にかけて10メートルぐらいだろうか、大きな氷柱が出来上がる。
が、その氷柱の中にはお相手さんはいない。更に追い討ちをかけるかの如くクーさんの足元に円陣が出来上がる。

川 ゚ -゚)「ちぃっ!」

ξ;゚听)ξ「流石に今のは危なかったわ……」

突如俺の前方が大爆発。思わず両腕で顔を隠す。
……なんだあれ。メラゾーマとか? そうかー。魔法少女ってのはこういう爆発を起こすような魔法も使えるんだ。
おいおいおい。冷静に考えている場合か。よく考えろよ俺。今この時、この場所は超危険なんじゃないのか?
というか、なんてところで目覚ましちゃってるの? 死ぬよ? 下手に動いたら俺死ぬよ?

川 ゚ -゚)「……で、お前は何突っ立っている。お前の役目はナイト。私を守る盾であり剣だろうが」

('A`)「はい?」

何を言い出すんだこの二次元女。そんな三次元の世界の人間にそのようなご要望を申し立てられても。
俺に出来るのはレジ打ちとか発注とか、そんな魔法ぐらいですよ?



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:29:23.82 ID:eHQd7x920

川 ゚ -゚)「……ああ。すまなかった。そうだな。武器がないか」

('A`)「え? あ、はい。そりゃ武器はないけど」

川 ゚ -゚)「ほれ」

唐突に投げ渡された一本の武器。
それは写真や、観光スポットなどでは見慣れたもので、そう、所謂刀というものだ。

('A`)「あの、もしやこれを俺に使えと?」

川 ゚ -゚)「それ以外に何の使い道がある」

…………。うん。そうだな。この場合は俺が正しいんだよな。
俺の思ってることと、俺の考えていることこそ正義だよな。そうだな。違いない。

(#゚A゚)「馬鹿言ってんじゃねーぞ畜生! こちとら意識が戻ったと思えばいきなり火が飛んでたり辺り一面銀世界になったりと思考がついていってねーんだよ!
    そんで状況整理してたらお前、何がお前、こらお前、第一お前、お前いきなりお前俺に刀なんか渡してお前、戦えってか!
    そんな無茶が通るような、お前、優しい人物じゃねーぞ俺は!」

川 ゚ -゚)「お前お前うるさい。それに私はお前をずっと探していたんだ。才能ある者を」


('A`)「はい? 才能? ずっと探していた?」

川 ゚ -゚)「そうだ。お前は魔力がある。魔法も使え、そして魔法具も使える。そんな人材を私は探していたんだ」

('A`)「……」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:30:52.80 ID:eHQd7x920

駄目だ。頭が痛い。何がなんだかわからない。
俺を探していた? 誰が? こいつが。 何のために? 戦うために? 魔法を使うために?
……よくわからないが、とにかく今はこいつを握ればいいのか? この刀を?

川 ゚ -゚)「さあ握れ。お前の武器を!」

('A`)「……」

やるべきことは決まったか?

俺の今すべきことは?
俺は今何故ここにたっている?

―――――俺は

この女を、守るためにここに立っている―――――!!

(#'A`)「ちくしょおおおおお!! 戦えばいいんだろうがよおおお!!」



……………。

………。

……。

…。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:32:23.79 ID:eHQd7x920



川 ゚ -゚)「という物語を想定しているんだ」

(#'A`)「長い夢落ちをそりゃどうも」

そんな非現実な展開が待っているわけもなく、ましてやこいつにそんな魔法が使えるわけもなかった。
こいつがやってのけているのはあくまで肉体言語。相手を殴ったり蹴ったりしてそこで魔法を発動させるというヒロインらしからぬ魔法だ。

(#'A`)「で? 俺はどうしたらいいわけだ? バイトを休んで、家に戻って。何するんだ?」

ふと横を見れば相変わらず横たわった液晶。勿論破損されている。
ちなみに俺は超不機嫌だ。いきなり気絶して、気が付けば俺の家に戻っていたのだから。
つーかそもそも何故俺の家を知っているコイツ。ストーカーか何かか。
魔法少女ってのは勝手に住所特定して、不法侵入しやがるってのか。

川 ゚ -゚)「中々話が見えない展開が続いているからな。混乱して、苛立つのも仕方ない。
     そろそろ本題を話そう。私が魔法少女ということはわかっているな?」

('A`)「ああん? ……そんなもん未だに半信半疑だが、
   お前が血まみれの店長を回復させたってのを見りゃそりゃ信じざるを得ないが……」

急な真面目展開に動揺が隠せない俺。当然だ。今まで散々振り回されて、待っていた展開が夢落ちだったり、そんなのばっかりだ。
いきなりの現れて魔法少女発言、加えてその後にウェブマネーをご所望。しかも三千円分ときたもんだ。
カプ蓄に加えて、挙句スペシャルクエストまで求めるってのか。どう考えてもきがくるっとる。

そんな急展開の後で、真顔で「私が魔法少女だということはわかっているな?」だぞ。
通常の神経なら「いや、そもそも少女じゃないだろ」と、突っ込むのだが、生憎もうそんな力も残っていない。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:34:58.63 ID:eHQd7x920

川 ゚ -゚)「よし。そこまで理解していれば大丈夫だ。
     私たち魔法少女というのは、いうなれば一つの職業だ。勿論、給料もある」

(;'A`)「……職業っすか」

今度は『魔法少女』は職業だといい始めた。何なの、とうとうドラクエなのこの世界。
ルイーダの酒場みたいなのがあって、そこで魔法少女とかに申請したら今日から俺も! みたいな展開が待ってるわけ?
かつあれなの? 敵を倒したらお金が貰えて、経験地を貰ってレベルアップ! みたいな。
ああもういいや。考えるのも面倒くせー。

川 ゚ -゚)「そうだ。何故魔法少女なんて職業が必要かわかるか?」

('A`)「わかんねーけど、なんか悪い魔法使いとか倒すためじゃねーの」

鼻くそほじりながら、フィギュアのパンツを凝視する。いいパンツはいてるなコイツ。
そういえば、今週号の少女天国買ってなかったな。PCでもあれば、別にいらないかなとか思うが、今現在はないからな。買わないとだ。
で、なんだっけ。悪い魔法使いでも倒すんだっけ? 別に俺は右手で異能の力を打ち消したり出来ませんよ?
まあいいや。適当にあしらいながら、相槌でも打ってればなんとかなるだろ。
……しかしながら、でっかい鼻くそが取れた。うわ、血がついてるし。ほじりすぎたかな。

('A`)ノ' ポイッ「で? どうすんの?」

川' ゚ -゚)ペチャ「正解だ。悪い魔法使いを倒すためにある」

('A`)「そうか、正解か(やべえついた)」



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:38:09.28 ID:eHQd7x920

沈黙。
そうか、やっぱり悪い魔法使いとかを倒すためにあったのか。
……。

…………。

…………………ちょっと待て。

(#'A`)「んなもん誰が納得するんだよ! だったらさっきの夢落ちをそのまま使えばよかっただろうが!」

川' ゚ -゚)「いいから聞け。全部話してないだろう。勝手に暴走されては話が進まないだろう」

('A`)「どう見ても空気が読めてません。本当にありがとうございました」

川' ゚ -゚)「いいか、第一悪い魔法使いなどと、そんな幅広く取り巻いては頭がこんがらがるだけだ」

('A`)「じゃあどうすんだよ」

川' ゚ -゚)「さっき言ったように、魔法少女というのは職業だ。つまり、悪い魔法使いというのも職業なわけだ」

('A`)「仮面ライダーとショッカーみたいなもんか」

川' ゚ -゚)「……まあそうだな。私達魔法少女はそいつらと戦う運命にあるわけだ」

('A`)「で、魔法も使えなければ別に少女でも幼女でも女ですらない俺はどうすればいいわけですかね」

「簡単よ」

(#'A`)「だから何が簡単か説明してくれって言って――――」



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:40:38.28 ID:eHQd7x920

爆発。
突然だった。いきなり辺りが発光して、その瞬間何かが破裂して、炎上した。
廃棄処理する予定だったPCの液晶がバチバチと痛々しい音を立てながら燃えていく。

(;'A`)「な、なんだよ一体……」

ξ゚听)ξ「参上!」

こっちは酷い惨状だよ。何が参上だよ。変にかっこつけやがって。
それ以前に、どうすんだよこの部屋。突然現れた奴より、この後大家さんに怒られることが一番恐怖だっての。
……って、

(;'A`)「お前は回想の女!」

ξ#゚听)ξ「何よその失礼な名前」

実在しているとは……。しかも結構な容姿でいらっしゃる。
金髪縦ロールで、全体的に細く、シャープな体つき。胸の方も勿論シャープだが。
特徴的な釣り目で、それでいて、大きな瞳。だが、整っているせいで可愛らしさを引き立てている。
そして極めつけは八重歯である。まるで絵に描いたようなツンデレ美少女である。だが、さっきの爆発といい、間違いなくメラゾーマの使い手。
こういう子は得てして馬鹿だから氷でも使わせていればそれで絵になるというのに、どうして炎なのだろうか。

ξ#゚听)ξ「無視してんじゃないわよ! この真性包茎!」

再び爆発。前言撤回しよう。やっぱり炎がお似合いだ。この誰にでも食って掛かりそうな行動といい言動といい、間違いなく炎だ。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:42:32.40 ID:eHQd7x920

(;'A`)「冷静に分析してる場合じゃねー! どうすんだよ! 現実で非現実展開起きてるじゃねえか!」

川 ゚ -゚)「だって魔法少女だもん。当然じゃないか」

(;'A`)「だもん。じゃねーよ! どうすんだよこれ!」

川 ゚ -゚)「戦うしかあるまい」

そういったクーさんの顔は至って真面目で、冗談を言う雰囲気など欠片にも存在していなかった。
DQN見たら両手を挙げて逃げ出す俺に戦えと? しかも武力派よりも性質が悪い魔法使いとかいう奴と?
いやいやいやいや。百歩譲って俺に力があったとしても戦えねえよ。……ん? そうか、俺には力がないんじゃないか。

('A`)「あの、俺力とか何もないんですけど……。あ、そうだ。だったら戦いに参加するだけ足手まといですよね。僕、後ろで見てますね」

我ながら酷い逃げ腰だと思う。でもね、当然だよね。きっとみんなが納得できる言い訳だと思うんだ。
あんなロイヤルフレアを使える子と戦うなんてどうあがいても無理ですもの。だって何も魔法とか使えないんだぜ?
そりゃ、せめてぎるみるきれる指輪とか、大剣が具現化される指輪とか、それこそ弾丸とか発射できるキーボードとかあるなら話は少し変わって……、
あれ、何かこれデジャブじゃないか? ちょっとまて、何か展開が変わりそうな気がするぞ?

川 ゚ -゚)「ふふふ、そういうと思っていたぞ。ならば武器をやろう。受け取れ!」

超至近距離から投げつけられる一本の長物。
紛れもなく、それはあの時回想シーンで描写された刀である。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:44:34.63 ID:eHQd7x920

(;'A`)「ば、バッキャロー! 仮にこんなもんあっても炎相手じゃ勝ち目がないだろうが!」

川 ゚ -゚)「正論だ。だが、その刀は選ばれたものしか抜けない不思議な刀なんだ。
     普通の奴が抜いても、刀身は現れないものでな、特別な魔力がないと刀身が出ない仕組みになっている」

ξ゚听)ξ「―――――おしゃべりはそこまででいいかしら?」

川;゚ -゚)「しまっ――――――!! ドクオ! 後ろだ!」

(#'A`)「ええい畜生が! どうにでもなれやああああああああああ!!」

渡されたその特別な刀の柄を思いっきり掴み、鞘から一気に引き抜く。
その勢いに身を任せ、そのまま後ろにいるであろうツンデレ少女へと振り下ろす。

ξ;゚听)ξ「しまっ……」

(#'A`)「るあああああああああああああああ!!」




……。



…………。


………………。



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:46:25.44 ID:eHQd7x920


沈黙があたりを襲う。勝負は終わった。
犠牲者を一人も出さず、誰しもが望むハッピーエンドという形で。
だが、それはあくまでも建前上の話で、誰も死なず、誰も傷つけずという形というのは即ち。

('A`)「……」

川 ゚ -゚)「……」

ξ゚听)ξ「……」

('A`)「なあおいクーさんよ」

川 ゚ -゚)「……その、なんだ。……ごめん」

(;A;)「刀身……出てないんじゃん……」

ξ;゚听)ξ「その、何というか、私も思わせぶりな発言してごめんなさい……」

こういうことだった。

(;A;)「何この思わせぶりな展開。俺ちょっとやったと思ったじゃん。
    せめて二段階式の夢落ちとかだったらまだ笑えたのに、何これ。どうしたらいいんだよ……」

ξ;゚听)ξ「あ、私帰るね……」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:48:27.70 ID:eHQd7x920

そういって金髪の美少女は帰っていった。
残ったのは空しさと悲しさと、燃えていくPCの液晶と、自称魔法少女と俺だけである。気を使って帰ったおかげで、こっちは救われたという嬉しさ余って悲しみと空しさ全開なわけで……。
もうね、何なんだろうね今日という日は。魔法少女とかいうわけのわからん奴に捕まって、バイト休まされて、
挙句こんな厨二戦闘に参加させられて、思わせぶりな展開があった後にこのオチ。
普通覚醒フラグだろう今のは。だというのに、なんで俺ばっかりこんな目に。
畜生。忌々しきは腐れ魔法少女クーだ。そう思い、振り返ってみれば静かに笑い、俺の肩に手を置いて、空いた手で親指を立てている。

川 ゚ -゚)b「明日があるさ」

(;A;)「うるせえ……」

頬を伝い、ぼろぼろと涙が落ちていく。
そのうちの一粒の涙が、刃の見えない刀へと滑り落ちる
すると、刀がいきなり発光を始める。思わず目を瞑るが、再び開いた時には、

('A`)「……」

川 ゚ -゚)「……」

白銀に光り、見続けているとそのまま吸い込まれそうなまでに研ぎ澄まされた刃が目の前にあった。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:50:57.08 ID:eHQd7x920

('A`)「出ましたね、刀身」

川 ゚ -゚)「見えましたね、刀身」

('A`)「ちょっと聞いていいか?」

川 ゚ -゚)「なんでしょうか」

('A`)「涙で反応するとかそんなベタな展開はいいとして、何で敵もいない今に限ってこんなことになるの? 馬鹿なの? 死ぬの?」

少し黙り込み、考えるクールさん。
そして何事もなかったかのようにまた無表情に戻り、真剣な顔付きで俺を見つめる。

川 ゚ -゚)「やはり、選ばれし者だったか……」

そんな全然クールじゃないクールさんを無視して、俺は燃え尽きた液晶を適当に除けて、横になる。
ついでに鼻くそをほじり、クーに投げつける。

('A`)ノ',',ポイッ「一応聞くけどさ」

寝転びながら、顔だけ向けて話しかける。

川','ー',')ベチャチャ「なんだ」

('A`)「この刀って何か特殊能力とかあんのか?」

選ばれた者しか抜けないっていうぐらいだから、恐らく何かあるんだろう。つーかクーさんきめえ。
それはともかく例えば、念じれば炎が出たり、氷が出たり、雷が出たり、水が出たりと、自然現象をまるで超能力かの如く自在に操れたりするかもしれない。
何れにしろ、能力はあるだろう。魔力を込めることで具現化するというのだから。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:52:28.59 ID:eHQd7x920

川' ゚ -゚')ポトポト「その話か……。その刀はな」

('A`)「おう(残ってるし)」

川 ゚ -゚)ポト「相手の能力がコピーできる」

やっぱりな。何も能力がないってオチだと思って……え? 鼻くそ全部取れてる? 違うそうじゃない。

('A`)「え、嘘。あるの? こいつ特殊能力あるの? しかも相手の能力コピー?」

川 ゚ -゚)「ああ。さっき言っただろう? 選ばれし者しか扱えないと。それぐらいの能力当然だろう」

('A`)「え、じゃあやっぱり何? 戦いとか、そういう展開が待ってるわけなの?」

川 ゚ -゚)「そりゃそうだ。そのために私はお前を探していたんだから」

('A`)「……これは決めセリフとか考えとかなきゃいけないな」

川 ゚ -゚)「アホか。それより腕を磨くことが先だろ」

('A`)「アホ抜かせ。それより仕事することが先だろうが」

川 ゚ -゚)「なら私の職場に来い。一石二鳥だろう」

(;'A`)「……お前はアホの子か? 魔法『少女』の仕事だろ。俺は魔法使いでもなければ、強調するが、少女でもないぞ」

何を狂ったか、この成人男性+コスプレ趣味の俺にそんな話を吹っかけてきやがるクールさん。
いやね、職場提供はありがたいよ。でもね、リアルで『魔法少女の仕事やりませんか?』って誘われて「喜んで!」っていう奴がいるかっての。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 05:54:10.93 ID:eHQd7x920

川 ゚ -゚)「いや、別に少女じゃなくてもいいし」

('A`)「何でそんな投げやりなんだよこの畜生」

川 ゚ -゚)「事実だしな。それにお前なら問題ない。何も気にするな」

('A`)「ありがとう。でもな」

川 ゚ -゚)「なんだ」

(゚A゚)「 全 力 で 断 る ! 」

そう叫び、思いっきり布団にダイブする。だが、下はただの畳である。
勿論のことだが、素布団なので顔面を派手に打ち付けるわけだ。糞……ノリに任せて飛び込むんじゃなかった。素で痛い。

「あんたらさっきからうるさいんだよっ!」

俺が叫んだ後に、更に俺より大きな声で叫び、荒々しく扉を開ける音。
そしてこれは聞き覚えのある、かつ俺が一番恐れる人。

(*゚∀゚)「何やってんのさこんな真昼間かr……え、何この部屋」

つーさんである。
そして今、俺は非常にまずい状況であることに気づいた。
先刻、俺の部屋は回想シーンに出てきたツンデレ少女によって部屋をめちゃくちゃに荒らされたのである。
それも、動物が跳ね回ったなどという非ではなく、直接火炎という名の溶解能力を使われ、絨毯+畳が煤けてしまっている事態。
更に更に、タンスや、机など、俺の家具が所々黒く焦げてしまっているという有様。

……どう考えても危機的状況です。本当にありがとうございました。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 06:07:04.78 ID:eHQd7x920

(;'A`)「いや、その、あの、あ! そうだ、クールさんよ説明してやって下さ……っていねえ!」

あの野朗、大家さんが入ってくる瞬間逃げやがったな! どうすんだよ! 状況の説明が出来ないだろうが!

(*゚∀゚)「ドクオさん」

(;'A`)「は、はい」

(*゚∀゚)「いっぺん死んでみる?」

(;'A`)「で、できればご遠慮願いたいんですけど……」

(#*゚∀゚)「うるさいよっ! つべこべ抜かすんじゃないっ!」


……あれから地獄少女どころの騒ぎじゃないつーさんに散々顔面を殴られ、
加えて腕やら、肌を露出させている場所は引っ掻かれ、綺麗に蚯蚓腫れになっている。
ある程度落ち着いた後に、状況の説明をしてみたわけだが、勿論つーさんの目は異端者を見る目をしていた。
俺が何をしたんだと、内心思いながらも、そこに当事者がいないので証明することも出来ないわけで。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/04/09(木) 06:08:19.87 ID:eHQd7x920
まあ一応納得して、状況を理解はしてくれたんだけどな。そりゃ不自然に焦げている家具や、床を冷静に見ればわかってもらえるだろう。
まあ……あくまで理解してくれただけの話であって、この部屋の修繕費が更に加わる羽目になったわけだが。
……PCの液晶、買い換えるのは当分先になりそうだな。

そんなことを考えながら、部屋の後片付けをしていると、

川 ゚ -゚)ノ「いよう」

状況が落ち着いた瞬間のこのこ現れやがった魔法少女さま。
……放置された職場。こげまくった俺の部屋。明らかにインテリアにもなりえない真剣。
今までありふれた日常を送っていた俺の人生は一体どこに向かっているのやら……?

(#'A`)「いようじゃねえよ!!」


ああさようなら日常生活。そしてはじめまして、非日常生活。



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