('A`)と怪異のようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:08:49.42 ID:PtPa+1Df0
  _
( ゚∀゚)「…その話をどこで知ったか知らねーけどよ」

ジョルジュは居心地悪そうに頭を掻きながら、内藤から視線を外した。
その行為に憤慨した内藤が、外れた視線を合わせようと長岡の前へ移動する。

だがジョルジュは内藤と視線を合わせたくないのか、また外す。
合わせようと内藤がそちらへ飛ぶ。外す。飛ぶ。振り返る。跳躍。エクソシスト。
ずんどこべろんちょ。のーまん。うんこ。はらひれはらほれ。とおりゃんせ。

それを繰り返す内に、内藤が反復横跳びをしているような形になってきた。
そのお陰で、この場所にだけ局地的な地震が起きている。ちなみに直下型。
ジョルジュは顔を高速で上下左右に振り過ぎて、顔が見えない。

('A`)「うわぁ……」

二人とも、某スーパーサイヤ人並の技の応酬を繰り広げている。
それを見守る俺はさながらヤムチャだ。ヤムチャには何もできない。
死ぬしかできない。どうすればいいんだろう、この状況。







('A`)と怪異のようです

     『遊戯しましょうか水場で』の巻(゚、゚トソン



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:12:00.98 ID:PtPa+1Df0

lw´‐ _‐ノv「次に地震起こしたら殺すよ」

戦闘力はヤムチャだが、一発抜いた後は賢者こと孔明である俺。
そんな俺はこの場所で一番の権力者を呼んで、ささっと解決しました。

ああ、画面の前でヤムチャにすら届いてないとか言わないで下さい。
傷つきます。俺のハァトは硝子よりも発砲スチロォルよりも脆いのです。
頭に毛が生えてないように、俺の心臓にも毛が生えてないのです。

まあここで頭に毛が生えてるAAなんてシュールさんくらいしかいないけどな。
眉毛は除外。あとサブタイの奴も除外。耳ついてるキャラは論外。
ブラウン管の向こうは二次元なので、半角仮名の髪の女も除外。
  _
( ゚∀゚)「すみませんでした」

( ^ω^)「すみませんでしたお」

結果として、内藤と長岡の頭にドでかいタンコブができた。
一昔前の漫画のように、串団子みたく積み上がったタンコブが。

('A`)「これは頭頂部に蜜柑を置きたくなるな」

シュールさんと言えば、風も吹いていないのに着物の裾を棚引かせている。
弾を発射した後の銃口のように、拳から白い煙をもくもくとあげる姿がクール。
あの鉄拳制裁を食らって、タンコブで済む二人の強度はどうなってるんだ。

lw´‐ _‐ノv「次はないよん」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:15:32.31 ID:PtPa+1Df0

lw´‐ _‐ノv「それじゃあ何事もないようにね」

('A`)「イエッサー」

お客様は神様だと言う言葉があるが、利益ばかりの客をそう呼ぶ。
地震を起こす奴なんて、ゴッドはゴッドでも疫病神だろう。

疫病神が帰った後は、除霊効果が強い博多の塩でも撒きたいに違いない。
そして祈祷師を呼び、即席の神棚を置き、そこに透明な神酒を添える。
あの子供がテキトゥに切ったような変な白い紙が沢山ついた棒を天に掲げ。
何かよくわからない高速言語を操り、狂ったように振りまくって空に祈るのだ。

( ^ω^)「I'm god!」

('A`)「you're nikudevil!」

目の前の太った悪魔に向かって、俺は右手で十字を切った。
その瞬間「ぐわーやられたー」とか言って、ブリッジの体勢へ移行するデブ。
その体勢で手足をゴキ○ブリのように動かし、こっちに前進してくる。

三m( 。ω。)n「ヴォオオオオオオオオオオオオオ!!」

丸い山のような腹の上に、またんきがちょこんと座っている。
人差し指で俺を指して「行けー王蟲ー」とか言っちゃってる。

やめるんだ。こっちは腐海でも風の谷でもない。
谷なら王蟲自身にあるだろう。その胸のとこに。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:19:20.26 ID:PtPa+1Df0

('A`)「止まれ! 止まるんだオーム!」

俺は両手を広げて、がに股で一人と一匹の前に立ち塞がる。
後ろには守るべきものがあるのだ。それはこの旅館の白黒TV。

もしあいつがぶつかってぶっ壊れたら、弁償するのは俺達だ。
弁償する金を稼ぐ為に、この薄気味悪い旅館で働く事になったら。
ぬるぬるする雑巾両手に、糞長い廊下を掃除する破目になったら。
高枝切り鋏で庭の木を剪定する事になったら、たまったもんじゃない。

('A`;)「shit! 最悪の未来だけは回避せねば……」
  _
( ゚∀゚)「何一人でアツくなってんだよドクオ」

( ´_ゝ`)「そんな事より俺の静止芸を見れくれ、どう思う?」
  _
( ゚∀゚)「すごく…棒立ちです……」

俺の横に存在する男二人と、ダンボールの中の人は別に守らなくてもいい。
ガチムチはスクワットしているし、電柱はその場で直立しているだけだ。
どちらも我関せずの状態を貫いている。引き篭もりは知らん。

=三m( 。ω。)n「ヴォアアアアアアアアアア!!」

王蟲はもう、そのでかい体で俺の視界の三分の二を埋め尽くしていた。
君との距離、曖昧三センチといった感じだ。当たったらぷにどころではない。
あと数レスも経たない内に、マウス・トゥ・マウス。ネズミじゃないほう。
唇が裂けるディープなキッス。ああなんて悪夢。ナイトメア。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:22:54.45 ID:PtPa+1Df0

危機的状況に陥ると、脳内麻薬が分泌しスロゥモォションに見える。
奴の顔面が俺の視界いっぱいに広がったところでそれが発動した。


    /       ,  、    ヽ
     |       (_人_)    |
    ヽ   ○     ○ ノ

タタリ神のように、途中にあるものを蹴散らし腐らせながら迫る。
吹き飛ぶ涎、汗、鼻水、先走り汁がスロォでくっきりと見える。
この世には神も仏もいないらしい。いるのは悪魔と俺だけだ。

またんきの顔面どアップならば、嘘偽りなく心から喜ぼう。
だが、肉達磨の拡大画像は受け付けない。受け入れられない。拒絶する。
俺はデブ専でもなければ、男色趣味もない。名字が阿部でもない。
今すぐピンポイントで隕石が落ちてきてほしいが、そうもいかないこの世の中。

こんな話の中で俺が主人公だなんて、チョー狂ってる。
だが主人公ということは、何かしらの打開策があるということだ。

('A`)「止まってくれ!」

俺の服は青くもなんともないが、多分止められるだろう。

なんてったって主人公だからな。
最強の主人公補正がかかるぜ。

そして、俺はどてっ腹に奴の体当たりを喰らった



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:25:58.87 ID:PtPa+1Df0

('A`)「はっ!?」

ところで目が覚めた。



(・∀ ・)「ドクオー何で固まってんだー?」

('A`)「何これ夢オチ?」

(・∀ ・;)「疑問文に疑問文でとかいう問題じゃないぞ」

ああ、夢オチでよかった。ホラゲ並の超展開で焦ってた。
これが一応ホラーであることを忘れていた俺のミスだ。

それにしても、最近、現実と妄想の区別がつかない。どっから夢だ。
奴が突っ込んで来たところからか、またんきがナウシカになったところからか。
内藤に悪魔が乗り移ったところからか、地震が起きたところからか。

('A`)「……」

もしかしたら、軽トラで事故って意識を失ってる間に見てる夢なのかもしれない。
実はこの全てが、俺が布団の中で見た夢なのかもしれない。
半年前に行った激しい自慰で入院し、病院のベッドの上で見てる夢なのかもしれない。
どちらにしろ目が覚めるまではわからないので、考えない事にする。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:29:47.06 ID:PtPa+1Df0

(・∀ ・)「ドクオー何固まってんだよー」

うふぅん、いい子だよまたんき。俺を気にかけてくれるなんて。
俺はまたんきに感謝の気持ちを込めて、小さい頭を撫でる。
小さな頭の上にぷかぷか浮かぶ、でっかいクエスチョンマァクが可愛い。

(・∀ ・)「ドクオー?」

本当いい子だよ、またんき。本当に。大事過ぎて二回以上は言うよ。いい子。
それにしてもいい肌触りだ。幼女って肌ぷるぷるで柔らかくて気持ちいいよね。
思わず息子がスタンダップしそうだと視線をやれば、息子は既に立ち上がっていた。

やるな息子。

( ^ω^)「おい、そこのペド野郎」

('A`)「なんでしょう?」
  _
( ゚∀゚)「引くわ…」

肉達磨に向かって返事したはずなのに、なんでそっちから言葉が来るんだ。
引くとかほざく前に、まず自分の格好を鏡で確認しろよ。お前に引くわ。

('A`)「黙れガチムチネグリジェ、一回ハッテン場でゲイと間違えられた癖に」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:32:23.61 ID:PtPa+1Df0

逆ギレした長岡によって、俺は廊下に放り捨てられた。
ぴしゃんと閉まった襖の向こうから「トイレ行って来い」と怒声が聞こえる。
恐らく、このエレクチオンしたものを沈めて来いという意味だろう。

('A`)「はいはい」

俺はそのように解釈しながら、ケツをぺんと払って立ち上がり部屋に入る。
余談だが、白黒TVはアンティーク品としての価値があるらしい。
  _
( ゚∀゚)「何で戻って来るんだよ」

('A`)「部屋にトイレが設置されてねー旅館なんて聞いた事ねーよ」

丁度トイレも近かったので、素直にトイレに入る。部屋の。

「お前には常識ってものが」と長岡が説教し始めたので、乱暴に扉を閉める。
微妙に冷えた空気の中、わざわざ遠くのトイレまで行ってたら萎えるわ。
萎えたちんこそのままにしておくと白いのがどろって出て来ない?

 こない? 俺だけ? シット!

怒りに任せて、扉の前でコマネチコマネチーと筋肉を煽る。
曲げた肘を壁にぶつけ、悶えていたら筋肉の声が聞こえなくなった。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:35:35.12 ID:PtPa+1Df0

多分、これから唐突に怖い事が起きそうな気がする。
もう縦読みもフラグも伏線も超展開も糞もあったもんじゃない。

ここは冷静に、失禁と言う名の最悪の結果を回避しなければ。
この年になってアンモニア臭を撒き散らすのは、恥以外の何物でもない。

  、从/
(|i'A`) そ「ヴッ」

ついでに便意も催してきた。失禁だけではない、脱糞もだ。
肛門がむずむずする。これは寄生虫か? サナダムシか?
春のぎょう虫検査シートに、似てるからとかりんとうを擦り付けた罰か。

('A`)「フン! 俺の糞と共に捻り出してやるぜ
    ソフトクリィムを捩じり出すあの機械のようにな」


以下余談。

小さい頃、ソフトクリィムを買えないくらい貧しかった。
それでも食いたいと駄々をこねた俺に、母親はこう言い放った。

J( '-`)し「あれは白いうんこだよ」

以来、ソフトクリィムを食べようと思った事はない。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:41:01.13 ID:PtPa+1Df0

流石に、大便を小便用便器で出したりはしない。
俺は洋式便所である事を願いながら戸を開けた。
錆びた蝶番がぎぃいと耳を引っ掻くような音を立てる。

ズボンを脱ぐと、ひんやりした空気が尻たぶを撫でた。寒い。
壁の染みが人の顔に見えなくもないが、気の所為としておく。

便器の蓋を開けた時に顔があったが、多分水面に映った俺の顔だろう。
気にせず黄色い水をかけてやったら、ムンクの叫びのような顔になり消えた。

('A`)「全く、便所は地獄だぜ」

うっかり便座をあげるのを忘れて、そのまま用を足してしまった。
が、便座や他の場所に小便が飛び散っている様子はない。
出口がひっついて、尿が2ウェイになってなかったからかな。

('A`)「まあ細かい事はいいか、どうせ自分のだし」

どっこいしょと腰を落として、便座のあまりの冷たさに息をのむ。
出口近くまで出ていたものが、びっくりして引っ込んでしまった。

下腹部を両手で押しながら、出ろ出ろと念じる。
冷えてると、どうも出が悪い。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:45:11.59 ID:PtPa+1Df0

   _____________
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24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:48:58.90 ID:PtPa+1Df0

ケツを拭き、すっきりした俺は回転しながら消えてく紙を見る。
ぐるぐる回る水を見るうち、全自動からから機を作りたい欲求に駆られた。

('A`)「思い立ったら吉日っと」

借りてるアパートのトイレでは、紙と水道代が勿体無くてできない。
そういう問題じゃないと訴えるおばけが出そうだが、あれは架空の存在だ。

俺は渦巻きの中にトイレットペェパァの端を投入し、巻き取りをさせる。
からから巻き取られていく紙に、大きく赤い字でしねと書かれていた。
これはきっと、外人がshineを平仮名で書こうとして頑張ったものだろう。
赤いのは多分、切れ痔から出た血を使ったから赤いんだろうな。

いや、待てよ。それだと酸化して血液は赤じゃなく茶色になるのか。
だとしたら、これは変色しない血糊か赤色ペンキか。
何かのビビらせ系ドッキリで余ったものを使ったお茶目な悪戯か。

('A`)「なかなかユニークな精神の持ち主だ」

その後、難しい漢字が呪詛のように並んでいくが、まあ、お経の類だろう。
お坊さんなら、こんな陰気な場所に入ったら思わず書いてしまうかもしれない。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:52:41.38 ID:PtPa+1Df0

('A`) +「ミッションコンプリィト」

巻き取りも終わり、無事トイレットペーパーも芯だけになった。
芯に黒でころすと字が書かれている。なにこれこわい。
次にこのトイレに入る人の気持ちを代弁したものだと思い込む。

紙がない時の絶望感って、ホント辛いよね。
新しいのを付けてやろうと思ったけど、ここに替えはない。
勝手に用具が入ってる扉を開けるのには抵抗がある。
ここは仕方なく、次の人には絶望を味わってもらうとしよう。

('A`)「次に来る方が、SIRENに打ち勝てますように」

俺は便器に向かって合掌し、黙祷を捧げた。四十秒くらい。
芯に書かれていた字もそれで消えた。きっと成仏してくれたんだろう。

意気揚々とトイレを出ようとし、ノブに手をかける。

('A`)「ん……?」

トイレのドアが開かない。逆に捻っても蹴っても開かない。

これはあれだ。なんだ。上を見上げたら誰かいるパタァンだ。
天井と扉の、あのちょっとした隙間から可愛い女の子が覗いているんだろう。

('A`)「誰だ!?」



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:56:30.62 ID:PtPa+1Df0

ばっと上を見ると、案の定誰かいた。流石にテンプレ過ぎる。
天井にある電灯が逆光になっていて顔が暗い。むしろ黒い。
よく見えないどころではない。全く見えない。俺の視力は左1.2、右0.2だ。
シルエットに耳がある事からして、またんきか兄者だということにしておく。

流石にテンプレ……流石、流石? よし兄者だな。

('A`)「部屋に戻ったら、金玉握り潰してやる」

視線を戻してノブを回したら、呆気なく開いた。
上から覗いてた兄者が外から抑えていたに違いない。

          テ レ ポ ー ト
しかも、開けたら瞬間移動でその場から消えやがった。
その素早さと力強さを生かして、今度SASUKEにでも出とけ。

('A`)「賞金100万は俺が全部貰うけどな」

そして今度は、部屋に続くドアが開かない。
捩じっても殴ってもしゃぶりついても開かない。
両手を広げ、開けゴマと呪文を唱えても開かない。

('A`)「待て俺。考えろ俺。パターンはいくらでもある」

確かこういう展開は、ホラーだけではなく笑える系にもあった。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 17:59:31.62 ID:PtPa+1Df0

ホラーかと思ったら失笑系のギャグだったやつ。
女の子がトイレに閉じ込められて助けてーやってたら、恥かくやつ。

最近、ホテルや病院にある手を洗わないと鍵があかない仕組みのトイレ。
それか。それなのか。潔癖症のやつか。この綺麗好きめ。

('A`)「よし、手を洗ってみよう」

俺は石鹸をつけて、肘まで丁寧に洗った。
備え付けられてあったハンドタオルで手を拭く。
ノブを掴もうとして、俺は止まった。

このノブは、俺が手を洗う前に掴んだものだ。
洗った手で触れたら、また俺の手は汚れてしまう。
汚れたら、ドアは開かなくなる。俺はまた手を洗う。

そして出来上がる無限ループだ。
俺は一生トイレで手を洗い続ける。

('A`)「いかん、それはいかんぞ」

俺は手を拭く為にかけてあるハンドタオルを取り、丁寧にノブを拭いた。
光り具合が納得いかなかったので、石鹸をつけてまた拭いた。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:02:47.91 ID:PtPa+1Df0

('A`)「よし」

タオルを元の場所に戻して、もう一度手を洗う。
手を拭くものがなくなったが、ズボンにでもぬぐっときゃいいだろ。

そうして顔を上げた俺の目に映ったのは自分の顔。
どう見てもグロメンです。ありがとうございました。
ではなく、鏡です。ありがとうございました。

その鏡の中には、さっきまで御用していた便所と俺、見知らぬ誰か。
前髪で顔が見えない女、ぶっちゃけると貞子ちゃんのような誰かがいる。
これは、後ろを振り向いたら実は誰もいないよあれれ〜? なパターン。
そして、鏡の中から腕が出て来て、俺を鏡の世界へ連れ去るオチだ。
洒落怖をpart42まで読破したフラグマスターの俺が予測するのだ。間違いない。

俺がこうして愚考に励んでいる間にも、彼女はゆっくり近付いてきている。
骨ばった手が見えた。俺もアバラも骨ばっているが、そこまでじゃない。

取りあえず、背後に立たれたので、お決まりの台詞と一緒に裏拳を繰り出す。

(#'A`)「俺の後ろに立つな!」

川;Д川;゙;:;`「ぺがふ!」

女は北斗の拳の読者だった。それもかなり読み込んでいる。
殴りかかる前に話しかければよかったと後悔しても遅い。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:06:28.47 ID:PtPa+1Df0

後、無事便所脱出。

  _
( ゚∀゚)「随分と長いトイレだったな」

('A`)「激闘だったぜ」

普段は厳しい長岡も、言葉の裏に気遣いを含ませる。
と言うか、暫く書かなかったうちにこのキャラの性格を忘れた。
キャラどころか話も忘れた。どこまで進んでたんだっけ。
最重要点である服装は全部メモしてある。過去ログを見れば完璧だ。
  _
( ゚∀゚)「ここが小学校だったらお前のあだ名がうんこ野郎になってるぜ」

('A`)「お前が小学生なら、じゃないのかよ」

いつものようなやり取りをして、時計を見やる。
長針10、短針7。10時35分。外は暗いので22時35分。

( ´_ゝ`)「お前がトイレに篭ってる間に、大風呂閉まったぞ」

('A`)「mjd? 取りあえず金玉潰させろ」

( ´_ゝ`)「mjd. ならお前の右手を複雑骨折させろ」

(-_-)「篭るのは僕の専売特許なのに……」

('A`)「今の自分が一体どういう状況なのかよく見て考えてから言え」



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:10:06.95 ID:PtPa+1Df0

それから何回か茶番を繰り返し、ようやく風呂に入ろうと言う事になった。
露天風呂は空いてないらしいので、部屋にある室内風呂に入る。
  _
( ゚∀゚)「俺ら風呂済ませてるからトランプでもしとくわ」

('A`)「協調性のない奴らだ」

( ´_ゝ`)「一緒に風呂入るとか修学旅行じゃあるまいし……」

人と合わせることの知らないKYな奴らを無視して、脱衣場に入る。
変な体液が付着した私服(しまむら)を脱ぎ捨て、風呂場の扉を開けた。

(-_-)「ちっさいよ、この風呂」

湯船には、小柄だが筋肉質なドザエもんが仰向けに浮いている。
こんな奴の腹筋が割れてる事に、俺は憤りを覚えた。

('A`)「これは二人入ったら確実に膝を畳む」

水死体の言葉通り、確かに風呂は予想していたものよりかなり小さい。
湯の隅のほうに黒髪が浮かんでいたが、ワカメということにしておこう。
何やら青褪めた物体も髪の下に見えた気がするが、幻覚ということにしておこう。

先に入っていたヒッキーをそのままにして、風呂場から出る。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:12:34.65 ID:PtPa+1Df0

と言う事で、入る順番を決める事にした。

(・∀ ・)「みんなで一緒に入らないのー?」

( ^ω^)「いや、人数と道徳からして無理だお」

内藤の言葉に、俺は力強くうんうんと頷いた。
長岡と流石が屠殺が決定された養豚場の豚を見るような目で見てくる。
ふざけんな、豚はお前らの隣でこの場を仕切ってるそのデブだ。
それとも、俺が服を着ていないからそんな目で見るのか。

( ^ω^)「取りあえず、二人組作って順番に入るお」

('A`)「二人…組……?」


『二人組』


その言葉に、義務教育時代の嫌な記憶が脳裏に蘇る。
聖母マリアのような先生でも、この言葉を呟いた時ばかりはサタンに見えた。

だから今は内藤は、いつにも増してサタン度が増している。
裕福な腹は赤い服に白い髭の爺ィが似合いそうだが、それは偽りだ。
奴の持つ袋の中には、悪い子供達の内臓がぎっちり入っている。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:15:55.77 ID:PtPa+1Df0

しかし、今ばかりはその言葉が神の言葉になった。


('A`)「またんき! 『二人組』を作ろう! 一緒に入ろう!」


悪魔の囁きが、まさかここで天の響きになろうとは。

俺は大声で叫び、両腕を広げてまたんきにルパンダイブ。
しかし、ルパンダイブは不二子ちゃんに阻止されると決まっている。
だがまたんきは不二子ちゃんではない。ボインもないしムチムチでもない。
つまり、またんき≠不二子ちゃんの方程式がここで確立する。
不二子ちゃんの真逆を行くまたんきには阻止されない=ダイブ成功。

('A`*)「うっひょひょぉおおおおおい!」

だが、またんきが俺の腕の中に収まろうとした瞬間。
横から飛んできた風呂桶が、俺の顔にぶち当たった。

(#-_-)「いくらドックンでも、抜け駆けは許さないよ!」

風呂場から生き返ったヒッキーが、仁王立ちで立っていた。
その股間をタオルで隠そうともせず、揺れるままに揺らしている。
頭の後ろに丁度良くある電灯のお陰で、背後から後光が差しているかのよう。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:18:57.19 ID:PtPa+1Df0

('A`)「ヒッキー、男には、譲れない戦いってモンがあるんだぜ……」

風呂桶には湯が入っていた。しかも熱湯だ。熱い。
熱湯プラス重量で威力が倍増している。奴は本気だ。
本気で俺を殺しにかかってる。クックック、いいじゃねぇか。

(・∀ ・)「布団びしょびしょ」

俺は風呂桶を掴み、畳に手をついて立ち上がった。
ヒッキーは、その様を微笑みながら見守る。

               ライバル
(-_-)「それでこそ…僕の親友さ」

なんか、親友の漢字の上にルビをふられた。
それ以前に、俺はお前と親友になったつもりはない。

('A`)「ふん」

惨状となった部屋を見渡す。十時なのに惨事。
ヒッキーが投げた熱湯で、一部の布団がびしょびしょだ。
正直、この光景を見たシュールさんが怖い。

俺はその恐怖を糧に、ヒッキーへ拳を突き出した。

('A`)「行くぞヒッキー!」

(-_-)「来やがれグロメン!」



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:22:19.67 ID:PtPa+1Df0

鬱田と小森が取っ組み合いをしている。小学生の喧嘩だ。
描写としては、互いの両手で互いの首を絞め合っている。
もし片方が絶世の美女で、片方が渋みのあるイケメンなら昼ドラだ。
ただし、今はシリアスパートから外れているのでどちらも死なない。

名字は今決めた。鬱田はよく毒男の名字として使われているからだ。
小森はヒッキーの本名の名字らしい。ググって今初めて知った。
この名付け親は誰なのか気になる。何を思って小森マサオにしたのか。

( ^ω^)「おい…おい、長岡、流石」
  _
( ゚∀゚)「んあ?」

( ´_ゝ`)「何だよ」

内藤が、座椅子でババ抜きに興じる二人に話しかける。
二人で開始したからか、カードは長岡の手元に一枚しか残っていない。
これは確実にジョゥカァだろう。残りのカードは全て真ん中にある。

( ^ω^)「僕らでじゃんけんして、負けたほうがまたんきと入るって事にするお」

( ´_ゝ`)「は?」
  _
( ゚∀゚)「なんじゃそりゃ」

既に配った時点で長岡の負けは確定しているが、彼はカードを持ったままだ。
何がなんでも負けたくないのか、その手を流石の前に差し出している。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:25:27.68 ID:PtPa+1Df0

( ;^ω^)「この場合、入りたがってない男じゃないとまずい気がするんだお」

( ´_ゝ`)「えーめんどくせえ」

カードを引いたら負けが確定している流石は、何がなんでも引きはしない。
と言うか、この時点で長岡が負けているのだから勝者は彼だ。

( ^ω^)「あの二人を見ても、そんな事が言えるかお?」

( ´_ゝ`)「すまん」

長岡が流石の顔にぐいぐいとジョーカーを押し付ける。
ババ抜きとは最後にババを持ってたほうの負けだ。
最初からババを持ってた奴は、ただ運が悪いだけだ。

開始直後に全てのカードがなくなり、手元に一枚だけ残るジョーカー。
それはある意味、運が良いと言えよう。
しかし、ゲームとしては長岡の負けなのだ。
超絶に運が悪かったとしか言えない。
  _
( ゚∀゚)「はあ…でも仕方ねーか」

哀れんだ内藤が、長岡の手からジョーカーを取った。
ジョーカーは長岡の手汗で少々ふやけている。
内藤はすぐさまそのジョーカーをゴミ箱へ捨てた。

( ^ω^)「よおし、それじゃあ、じゃん! けん!」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:29:23.40 ID:PtPa+1Df0
  _
( ゚∀゚)( ´_ゝ`)「「「 ぽ ん ! ! 」」」(^ω^ )

  _
( ゚∀゚) ←無敵 ( ´_ゝ`) ←両手 ( ^ω^) ←出してない

  _
( ゚∀゚)「……」

( ´_ゝ`)「……」

( ^ω^)「……」

(・∀ ・)「……」

( ´_ゝ`)「人は皆、時の定まらない死刑囚…」

( ^ω^)「かっこいいこと言えばどうにかなるって状況じゃないお」



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:32:43.36 ID:PtPa+1Df0

一方、ペド組。


('A`)「おい、話が進まないぞ」

(-_-)「僕に言われても」

('A`)「見返せば3話の辺りからずっと進展がない」

(-_-)「だってもう昔の自分に強制的に書かされてるようなものだし」

('A`)「このままじゃいかん、いかんぞ」

(-_-)「どうすんのさ?」

('A`)「ここは誰かがこの争いから一歩引くべきなんだ、またんきを巡る争いから」

(-_-)「だね」

('A`)「だから誰かが譲らないといけないんだ」

(-_-)「言いだしっぺの法則」

('A`)「誰かが譲らなきゃ話が進まないだろ、だから俺以外の誰かが譲れ」

(-_-)「だが断る」



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:35:07.31 ID:PtPa+1Df0

内藤はよくジャンケン前によくやるあの手の動きをした。
それをやると勝つとかなんとか。勝てないけど。
それを実行している奴は、本当に勝てると思っているのか。

( ^ω^)「よし…よおし、ズルは無しって事にしようじゃあないか」
  _
( ゚∀゚)「お前が言うな」

( ´_ゝ`)「お前も言うな」

(・∀ ・)「全員言うな」

( ^ω^)「気を取り直して、じゃーんけーん、ぽん!」

                           _
( ^ω^) ←無敵 ( ´_ゝ`) ←無敵 ( ゚∀゚) ←無敵


(・∀ ・)「泣くぞ」

そして宣言通り涙目になり、涙を溢れさせたまたんきを全員で慰める。
幼女の泣き声に二人ほど覚醒したペドがいたが、三人でフルボッコにした。

( ^ω^)「三次元に! 手を出す奴は! 紳士の! 端くれにも! 置けん!」

正論を言いながら、二人の顔を右で左で殴る殴る。
何故か長岡と流石もここぞとばかりにケルナ・グール。

後、畳の上にアンパンマンが二つ出来上がった。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:38:12.52 ID:PtPa+1Df0

視点変更。

大乱闘ロリペドバスターズの末、俺達は畳に倒れ伏した。
五人同時チート対戦で、三対二のチィムバトル。
こっちは吹っ飛び率二百%の上、相手はずっと無敵状態だった。

( _ )「げふぅ」

いぐさのかほりが鼻孔に広がる。
ささくれが肌に刺さってちくちく痛い。

( A )「ぐふぅ」

それでも、悔いはない。
精一杯闘ったのだから。

( ^ω^)「はーいそれじゃまず先に長岡とまたんきでーす」
  _
( ;゚∀゚)「体くらいは自分で洗えるよな?」

(・∀ ・)「背中は洗って!」
  _
( ;゚∀゚)「うん、うん、よし、前は自分で洗おうか」

ジョルジュ死ねばいいのに。

( _ )「長岡死ねばいいのに…」

仲間がいた。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:41:15.68 ID:PtPa+1Df0

結局、先に入浴したヒッキーを除外し、俺と兄者と内藤がまとめて入る事になった。
長岡がまたんきを上手く扱ず、無駄に入浴時間が延びてしまったからだ。

俺は風呂に一時間も入っていたらのぼせる。
一時間半も入っていたこいつらが信じられない。

(>∀ <)「さっぱりー」

内藤にごっしごっしと頭を拭いてもらっているまたんき。
頭上には日の丸を描いた扇子を持った、さっぱり妖精が見える。
はあ〜さっぱりさっぱり。俺の心もさっぱりさせてくれ。

('A`)「まあ、またんきの残り湯だと思えば多少は…」

俺はそう考えて、長岡の逞しい肉体を頭の中から追い出す事に集中した。
 _
( ゚∀゚)「おいドクオ」

現実が話しかけて来た。追い出せなかった。

('A`)「あ?」
  _
( ゚∀゚)「だるまさんが転んだ」

('A`)「死ね」



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:44:20.46 ID:PtPa+1Df0

有名なだるまさんコピペは嘘だというのが最近どこからか沸いてきた。
しかし、どちらもソース無しなので真偽はわからない。
多分、どちらも信じたほうの負けだ。知らない奴が勝つ。

それに、今回は俺の他に入浴者が二人いる。
大浴場で幽霊が出たなんて話は聞いた事がない。
ホラーでは、大抵一人で入浴している時に出る。

大勢がいるところでは、幽霊はあまり出て来ないのだ。

('A`)「お前ら、俺が頭を洗ってる間に目の前に移動したりすんなよ」

( ^ω^)「チッ」

生きている奴の方が油断できない。

( ´_ゝ`)「つか、なんで俺も一緒に入らにゃならんわけ?」

( ^ω^)「乱闘に参加しただろ、汗臭いだろ、風呂入れ」

二人が口論している間に、腰にタオルを巻いて風呂場に入る。
軽く体を流して、それから念入りに股間を洗ってから浴槽にダイブ。
カスをつけたまま入るのは衛生上良くない。健康的にも、精神的にも。

にしても、この風呂は本当に狭い。マジで狭い。ヤバイくらい狭い。
内藤が浴槽にダイビングすると、湯が全部出るとかそんな問題じゃない。

('A`)「お、チン毛浮いとる」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:47:33.94 ID:PtPa+1Df0

俺がキィボゥドの隙間や冷蔵庫に入るチン毛の機動力について考えていると、
内藤がそのふくよかな腹をたぷんたぷんと揺らしながら風呂場に入ってきた。

いつも猥褻物陳列罪ぎりぎりな格好をしているが、こうして見ると何か新鮮だ。
奴の格好は、鬼畜米英によくいる人間の限界を超えたデブに似ている。
と言うかそのまんまだ。まさか、ジャパンで目にするとは思っていなかった。

( ^ω^)「ドクオ……その無意味に熱くねっとりとした視線は何だお
      なんで僕から視線を外さないんだお……っまさか!?」

('A`)「流石にねーよ」

( ´_ゝ`)「呼んだ?」

('A`)「ちげーよ」

俺が風呂桶に入れてた湯を肩から被り、そのまま体を洗い始める内藤。
軽く体を流しもせずに浴槽へ直行し、体育座りで湯船に浸かる流石。
狭い風呂で、男三人が寿司詰め状態になりながら入るのは地獄。

……風呂の入り方なんてのは、人それぞれだ。
ただ、兄者のような入り方には異議を申し立てたい。

( ^ω^)「詰まった」

('A`)「今度は何やってんだピザ」

( ^ω^)「排水溝に左足詰まった、ヘルプ」



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:51:58.86 ID:PtPa+1Df0

('A`)「内藤を引っこ抜き、一レスで風呂は終わりました」

( ^ω^)「何を言ってるんだお」

野郎共の汗くっさい入浴シィンを長々と書いても、喜ぶ奴はおるまい。
その割に野郎のトイレで八レス占領したが、それはそれ、これはこれだ。

( ´_ゝ`)「ところでこの布団どうするんだ、寝小便した跡みたいになってるぞ」

( ^ω^)「幼女いるから大丈夫だお」

(・∀ ・;)「どーゆー意味だ!」
  _
( ゚∀゚)「1.幼女だから
      2.おねしょくらい
      3.許されるって」

(;∀ ;)「ねーよ!!」

('A(;#)「えばら!」

何故かまたんきの平手打ちは俺にきた。レフトなのに中々の威力。
俺の言葉の後に誰かが「焼肉のたれ」と続けた。ふざけるな社員め。
こんな時にまでCMの宣伝か。派遣社員ごと横浜地裁に訴えてやる。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 18:55:26.22 ID:PtPa+1Df0

俺はアバラ食品に対する怒りに震えながら、濡れた布団を縁側に干した。
女将ではなく女中さんを呼び、新しい布団を用意してもらう。

('A`)「布団の数は足りてるが、布団を敷くスペースが足りない」

( ´_ゝ`)「誰か廊下で寝ろよ」

(・∀ ・)「言い出しっぺの法則」

('A`)「お前が寝やがれ、どうせ布団から頭も足もはみ出すだろ」

誰も廊下で寝たい奴なんていない。兄者は手足を丸めて布団に潜った。
確かに、いつも家にいる時は布団の中に入っている。
頑張れば、エスパァ少年みたく旅行鞄の中に体を折り畳んで入れそうだ。

( ^ω^)「この布団ちっさいお」

('A`)「お前の横幅大き過ぎるんだよデブが」

結局、内藤は二人分の布団を占領して寝静まった。

長岡は布団の中から顔だけ出して、朝まで起きてようぜとほざいている。
お前はどこの修学旅行生かと小一時間問いたい。問い詰めたい。
こんな事を言う奴に限って、真っ先に寝るのだ。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 19:00:31.01 ID:PtPa+1Df0
  _
( -∀-)「zzzzzz...」

案の定寝た。徹夜宣言をしてから約三秒。のび太レベル。
寝ながらゼットぜっとゼットと呟いている。これは寝言なのか。
目を閉じながら枕元のペットボトルを開け、水を飲んだ。
こいつ起きてるんじゃなかろうか。額に肉とでも書いてやるか。

部屋には小さい豆電球がついている。
その明りを頼りにして、机の上からマジックペンを取る。

ペン先で額をちょんと突っつく。
起きてたらここで反応があるハズだ。
  _
( -∀-)「zzzzzz...」

('A`)「なんだ、本当に寝てたのかよ……」

安堵した俺は、額に肉と書いた。ついでに髭も書いた。目の丸で覆った。
水性ペンなので、インクが落ちなくて長岡激怒なんて事にはならないだろう。



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 19:05:27.93 ID:PtPa+1Df0

('A`)「って、起きてんの俺だけかい」

部屋を見渡せば、動くものは何もない。全部静物だ。
六つの布団の上では、俺以外の全員が夢の世界へ出掛けている。

('A`)「これは明日、俺だけ寝坊フラグ」

そして、先に起きた全員からこの旅館に置いてかれるフラグだ。
ホラーでもギャグでも何でも、こういったのはジャンル問わず結構多い。

布団を頭から被り、豆電球の明りを遮る。
少しでも光があると、寝れない質なのだ。

('A`)「しかし寝れぬ」

いつもなら睡魔は容赦なく襲ってくるのに、こんな時だけ遠征中だ。
眠れないのは仕方ないので、睡魔さんが来るまで携帯を開く。
何か曲でも聞いてれば、勝手に夢の中に入るだろう。

アニソンとゲーソンしかないけど。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 19:24:25.24 ID:SdtYMOJy0

そして唐突に金縛りが起こった。
流石にこの展開はない。

('A`)「睡魔さん…いや、サキュバスさん……?」

そんな都合のいい出来事じゃないのはよくわかってる。
サキュバスが来訪するのはイケメンだけだ。

それに、睡魔さんが金縛りをするわけがない。

('A`)「これは俺他界フラグ?」

金縛りなのに、何故か口と目だけは動く。
怖いので目は閉じたままだ。トラウマなんて見たくない。

いや、待て。このネガティブ思考はヤバイぞ。
例は暗いものや負の感情に引かれるとよく聞く。

ここは思考を何か別のものに逸らさなければ。



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 19:27:48.33 ID:SdtYMOJy0

金縛りは肉体的、精神的な疲れからもくるという。
今日、俺は大いに疲れた。霊なんて関係ない。

そうさ関係ないと目を開ければ、誰かいる。
ネガらないと一レス前で思ったじゃないか。その矢先にこれとか。

(゚A゚)「あばばば」

うつ伏せに寝ていたはずなのに、何故か仰向けになっている。
携帯はしっかり手の中にある。左手の中に。

ホラーとかでよくあるが、なんで金縛り中に目を開ける人が多いのか。
怖いものや見たくないものがいるのをわかってて、何故開けてしまうのか。

なんとなく理解できた。
これ多分無意識か、洗脳だ。

現に、俺だって見たくないのに、普通に目ぇ開けちまった。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 19:31:13.34 ID:SdtYMOJy0

グロ画像スレに貼られていそうな女性の方が、俺の上にいる。
エロだったら「なんだ騎乗位か」で済むが、そうはいかん。
これはグリーン姉さんの上を行く。精神的ブラクラじゃ済まない。

ネット上の画像はただグロいキモいだけで済むが、これは現実。
夢と思いたいが、手が動かせないので頬を抓れない。
握り締めた携帯は、俺の手汗でコーティングされている。

(゚A゚)「あばば、あばば」

タイム、セット、落ち着け、餅つくんだ俺。
この人は意外と優しい。パニクる俺を冷静に見つめている。
そう、怖いと思うから怖いんだ。他の事を考えるんだ。

他の事。怖い。恐怖。恐怖感。フィアー。


そう言えば、どっかのコピペアフィブログで

『女性は出産などから、男性よりも苦痛や恐怖感に耐えれるようにできている』

という書き込みを見た。



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 19:37:53.78 ID:SdtYMOJy0

つまり世の中にある、お化け屋敷のキャーコワーイで男の腕に抱きつくアレは、
女性のヤラセと男性の願望の中にのみ存在するということだ。

('A`)「つまり…」

ああ、なんてことだ。生きる気力が少し失われた。
ネットでのソゥスもない書き込みを信じたわけじゃないが、それでもショックだ。
もう何もかもどうでもいい。俺の愚かな夢が一つ潰えた。

溜息を吐く。上を見る。
幽霊は哀れむようにこちらを見ている。
その哀れみは同情などではなく、愚者に対する哀れみに近い。

豆電球がちかちかと点滅して、動画のカットみたく幽霊は消えた。

('A`)「……」

俺以外の四人は爆睡している。
なんで俺だけがと呟く。吐く。悪態くらい許せ。
この理不尽補正は、きっと主人公だからなのだろうか。



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 19:41:33.99 ID:SdtYMOJy0

思い起こせば、トラックを降りた時にジョルジュが、
  _
( ゚∀゚)「ここ知り合いの旅館だぜ、曰くつきだけど」

みたいな事を言ってたような気もする。御都合主義にも程がある。
と言うか、うっかり書き溜めからコピペミスって抜けてた。もう駄目だ。




('A`)「……寝るか」




理不尽な夜は更けていく。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/28(木) 19:45:33.14 ID:SdtYMOJy0

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コンセントの前に、一人の人がシャーペンの芯を持って座っていました。
それを見た通りすがりは、まさか命を捨てる気なのか、と思いました。

引き留めようと声をかけます。
それに人は応えました。

「俺ってばskeletal preparations」

そう言って、人はコンセントに芯を突っ込みました。
通りすがりは、人の言った英語の意味が分かりませんでした。

____________________________


6” 『遊戯しましょうか水場で』
                     おしまい



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