( ゚∀゚)ジョルジュは命を売るようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:01:59.58 ID:4XLoxPHD0
第四話 「デヴィル」
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:04:52.07 ID:4XLoxPHD0
- 夜道に点々と零された血が、街灯に黒々と照らされている。
それらが全て自分の体から流れ出たものだとは、にわかには信じ難かった。
(;^Д^)「血が止まらねえ・・・くそ」
真夜中の住宅街で追い駆けっこを始めて、まだ数十分しか経っていない。
それでも俺はすでにグロッキー状態で、痛みと貧血に耐えかねて路地に座り込んでいた。
奴の姿は見えない。
だいぶ走ったから、追いつかれるまでにまだ時間があるだろう。
(;^Д^)「やっぱりあいつ・・・神の使いって奴か」
自分を追う男の顔を思い出す。
不健康そうな痩せた男で、貧相な顔つきをしていた。
線も細く、押しただけで骨が折れてしまいそうなもやし野郎。
(;^Д^)「くそっ・・・なんなんだよ、あのナイフ」
光の武器。
ジョルジュから聞いて漠然と思い描いていたが、まさかそれを実体験することになるとは、想像もしなかった。
何もない空間に光が集まって、質量を成す反則武器。
それに抉られた肩から、今も血が元気良く流れ出ている。
光のナイフは役目を終えた後、いつの間にやら影も形もなくなっていた。
(;^Д^)「完全犯罪も夢じゃない・・・ってか」
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:06:31.74 ID:4XLoxPHD0
- とにかく。
奴から逃げ切り、完全に撒いたところでジョルジュたちと合流するしかない。
ほとんど音のない暗闇のこの住宅街では、携帯電話の使用も命取りだ。
絶対絶命一歩手前。
(;^Д^)「ナイフさえかわせば・・・勝機はあるはずだ」
子供のころから、この図体のおかげで喧嘩に負けたことは一度もない。
あの草食系なら、リバーブロー一発であばらの一、二本は持って行けるだろう。
( ^Д^)「・・・」
覚悟は出来た。
いつでもこい、クソ野郎。
('A`)「みーっけ」
('A`)「た」
声と共に襲い来る、数本のナイフの投擲。
もしもジョルジュの服が詰まった袋を背中に背負っていなかったら、命に関わる重大なダメージを受けていたはずだ。
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:09:15.78 ID:4XLoxPHD0
- 幸い、左の脹脛に一発めり込んだだけで済んだ。
幸い。
(;^Д^)「うぐっ・・・!!」
('A`)「左足もーらい」
第二波が押し寄せる前に、痛みを無視して駆け出す。
びっくりするほどの量の血が足から漏れ出ているが、気にしている暇はない。
('A`)「おらおらー、逃げろ逃げろー」
さらに一本、二の腕の裏に命中した。
反動で腕が勝手に跳ね上がり、バランスが崩れた。
( Д )「・・・くあっ」
足を踏ん張ろうにも、もはや脹脛の痛みは無視できないレベルに達している。
無事なのは、右腕と右足だけだ。
動きを止めた俺に、男は容赦なく接近してくる。
激痛で霞む視界の向こうに、歪んだ笑いを浮かべた貧相な顔が見えた。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:10:33.14 ID:4XLoxPHD0
- 直接、俺の喉を掻っ切って、止めを刺すつもりのようだ。
馬鹿めが。
(#^Д^)「ああああぁぁぁっ!!」
('A`)「うおっ」
袋の中身を、周囲にぶちまける。
('A`)「ぬっ・・・」
一瞬でよかった。
その大切な一瞬だけ、全身の痛覚を捩じ伏せることができれば。
( Д )「―――!!」
振りかぶった俺の腕に、まるでピンを打ち付けられ標本にされた昆虫のように、ナイフが突き刺さっていった。
俺の腕が、夜空の下、不気味なダンスを踊った。
自らの血飛沫が、顔に降りかかる。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:11:53.31 ID:4XLoxPHD0
- 最終手段を失った俺には、もう生き残る術は残っていなかった。
目に映るのは、貧相な顔の男が握るナイフ。
暗闇に不自然な光を放ち、刃先を俺に向けていた。
首を掴まれ、逃げることも抵抗することもできない。
死は、すぐそこだった。
('A`)「!」
('A`)「・・・・・来たな」
('A`)「長岡ジョルジュ・・・!」
( Д )「・・・?」
暗闇から伸びる、一本の腕。
見覚えのあるグロテスクな装甲を持ったその腕が、俺の首元にある光のナイフの刃を、しっかりと握りしめていた。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:14:11.89 ID:4XLoxPHD0
- ('A`)「悪魔の心臓を持つ男」
('A`)「テメーが・・・なるほどね」
涙が流れ落ちそうになるのを、なんとか堪えた。
なるべくいつも通りの声色で、言った。
( Д )「・・・来たのか」
( ゚∀゚)「ああ」
( Д )「べつにいいのに」
( ゚∀゚)「そう言うな」
( Д )「・・・ありがとよ」
( ゚∀゚)「待ってろ。 すぐに終わらせる」
親友はナイフを右手で押さえながら、崩れ落ちようとする俺の体を、左腕で支えた。
視線の先にあるのは漆黒の夜空だというのに、俺の視界は、端の方から白く染まり始めていた。
地面に腰を落とすと、背中に壁が当たる感触がした。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:15:08.29 ID:4XLoxPHD0
- 男の声が聞こえる。
('A`)「すぐ終わらせる・・・そう言ったな? 確かにそう聞こえたぜ」
('A`)「何を終わらせるって? あ? 何を、終わらせるって!?」
今一度意識を呼び起こし、目を薄く開いて、目の前の光景を垣間見た。
ジョルジュが、光のナイフを握り潰したところだった。
( ゚∀゚)「あんたの命だ・・・ここで終わらせてやる」
そこで、俺の思考は途切れた。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:16:02.62 ID:4XLoxPHD0
- *
頭に血が上っているのが、自分でもよくわかる。
視界が赤黒く染まっている。
友達を殺されかけたんだ。
目の前の男を、許すわけにはいかない。
('A`)「初めまして、長岡クン。噂は聞いてるぜ」
('A`)「悪魔と心臓を取引したんだってな」
( ゚∀゚)「・・・」
('A`)「やるねー。 俺には真似できねーぜ」
('∀`)「誰も真似しねーっつの! ぎゃはっ」
拳を固く握りしめる。
硬質な物体が擦れ合う、不吉な音が響く。
殺してやる。
生まれて初めて、心の底から思った。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:16:44.88 ID:4XLoxPHD0
- ('A`)「で・・・」
('A`)「だ。 俺はテメーを殺さなくちゃならん」
('A`)「それが神の使いの掟だ。 命令に従うのは好きじゃねーけど」
( ゚∀゚)「・・・奇遇だな」
('A`)「あ?」
( ゚∀゚)「俺もあんたを殺さなくちゃならない」
吐き捨てるように言う。
男の顔が歪んだ。
('A`)「・・・あまり調子に乗んなよ」
( ゚∀゚)「こっちのセリフだ、不細工が」
('A`)「・・・」
('A`)「もう殺すわ」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:18:28.54 ID:4XLoxPHD0
- (#'A`)「ムカつくよぉ、テメェッ!!」
例によって、男の両手が発光する。
きっと武器が現れるのだろう。
そろそろ飽きたぜ、そのパターンは。
もう、容赦はしないぜ。
(#゚∀゚)「オラァッ!」
武器が形成される前に、接近して拳を放った。
('A`)「バーカ」
(;゚∀゚)「!?」
衝突音がして、腕が止まった。
いや、正確には、阻まれた。
目の前に現れた、薄い光の膜によって。
(;゚∀゚)「・・・!」
('A`)「俺の能力を、武器の形成だけだと思うなよ」
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:20:10.66 ID:4XLoxPHD0
- 光の盾。
そんなこともできるのか。
だが――――
(#゚∀゚)「こんなもん・・・!」
ぶち壊してやる。
腕に力を込め、振り下ろそうとした、その時。
('A`)「トカレフちゃんだ。 銃を見るのは初めてか?」
奴の手に、白く光る自動小銃。
(;゚∀゚)「くそっ・・・!」
油断した。
前回襲ってきた男が使用したのが原始的な武器ばかりだったせいで、
近代武器は使わないだろうと勝手に思い込んでいたのだ。
しかし、あり得ることだった。
(#'A`)「脳漿ぶちまけろォ!」
乾いた発砲音が、鼓膜を震わす。
未知なる弾丸が、咄嗟に構えた右腕にめり込んだ。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:21:45.93 ID:4XLoxPHD0
- (#'A`)「チッ!」
(;゚∀゚)「く・・・」
ダメージは大したことはない。
ただ、右腕以外にくらうのはマズイ。
非常にマズイ。
すぐさま男から距離をとり、防御態勢に入る。
(#'A`)「死ねッ! 死ねッ! 死ねぇッ!!」
(;゚∀゚)「うおおおおぉぉっ!!?」
掲げた右腕に、次々と銃弾が撃ち込まれる。
流れ弾がタカラに当たったらどうするんだ、くそ!
(#'A`)「チッ・・・かてーなぁ、おい!」
(;゚∀゚)「こ・・・」
(;゚∀゚)「ここがどこか・・・分かってんのか!?日本だぞ!!警察が―――」
休みなく飛来する弾丸。
腕から煙が上がり、衝撃で肩が痺れる。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:25:47.63 ID:4XLoxPHD0
- (#'A`)「こねーよ」
(;゚∀゚)「なに!?」
(#'A`)「残念ながら!」
一瞬、銃声が止んだ。
弾切れか?
違う。
奴らの武器に、弾切れなんてあり得ない。
武器の変更。
それしかない。
('∀`)「・・・」
街灯に照らされた男の横顔が、嘲笑に歪んだ。
('∀`)「トンプソン・M1」
('∀`)「ドクオカスタムだ・・・・・耐えられるか?」
男の両手に抱えられた光る短機関銃が、白い火を噴いた。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:28:02.12 ID:4XLoxPHD0
- (; ∀ )「ぐああああぁぁぁぁっ・・・・・!!」
凄まじい数の弾丸が雪崩れ込む。
一発でも右腕以外で受けたら、激痛で正気ではいられないだろう。
(;゚∀゚)「てめ・・・え・・・!!」
('∀`)「ははっ、やるねー」
狂ってやがる。この男。
('∀`)「いいねぇ、この反動! 最近ぶっ放す機会がなくてさぁ!」
('∀`)「嬉しいぜっ、長岡ジョルジュ!」
('∀`)「お前が現れてくれて!」
(;゚∀゚)「・・・くそっ」
二日連続で襲撃してきた神の使い。
奴らの力は、本当に神から授かったものなのだろうか。
無神論者の俺にとって、あまりに信じがたい。
俺の右腕のように。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:29:32.12 ID:4XLoxPHD0
- (;゚∀゚)「なに・・・?」
異変に気づいた。
(;゚∀゚)「・・・マジかよ・・・!」
右腕が崩れている。
甲羅のような肌を持った強固な悪魔の腕が、砕けてきている。
(;゚∀゚)「おいおい、頼むぜ・・・!」
(;゚∀゚)「持ちこたえてくれ・・・・・!」
黒い腕の破片が、周囲に飛び散る。
絶え間なく襲い来る衝撃と振動。
俺は悪魔の力を、過信しすぎたのだろうか?
('∀`)「・・・おう?」
('∀`)「ほうほう・・・」
('∀`)「効いてるな・・・俺の攻撃が」
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:30:32.83 ID:4XLoxPHD0
- ('A`)「それじゃあ」
銃声が止む。
短機関銃が、形を変えていく。
光の塊が、質量を増やしていく。
(;゚∀゚)「・・・」
悪魔の腕が、震えた。
('A`)「トドメだ」
ひし形の弾頭を持つ爆弾が、長細い筒に装着されている。
('A`)「ロケットランチャー」
ゲームの中にしか、存在しない代物だと思っていた。
('A`)「避けたらそいつが死ぬぞ」
傷だらけのタカラが、すぐそばで気を失っている。
悪魔の腕はボロボロで、避けることもできない。
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:33:28.76 ID:4XLoxPHD0
- どうしようもない。
こいつは強過ぎる。
諦める以外に道はない。
そうだろう?
('A`)「楽しかったよ、長岡ジョルジュ」
('A`)「じゃあ、な」
とてつもないエネルギーを秘めた鉄の魔物が、煙を吹いて発射された。
躊躇も遠慮もない。あるのは殺気だけだ。
迫りくるロケット弾を前に、俺は歯を食いしばるしかなかった。
他に何ができる?
なあ、誰か教えてくれよ。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:34:17.75 ID:4XLoxPHD0
- 着弾する寸前、暗闇のどこかから、あの声が聞こえた。
『―――何をしている』
『こんな小僧を相手に』
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:36:28.06 ID:4XLoxPHD0
- *
(メ ∀ )「・・・」
(メ ∀ )「う・・・・・ぐ・・・」
(メ ∀ )「ガハッ! うぅ・・・」
右半身が、焼けるように痛む。
(メ゚∀゚)「・・・」
(メ゚∀゚)「生きて・・・る・・・」
鼓膜が破けていのだろうか。
声を出してみたものの、ほとんど聞こえない。
目に映るのは、街灯の光と星の光。
そして、あの男。
('A`)「―――!」
何かしゃべっている。
が、聞こえない。
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:38:16.71 ID:4XLoxPHD0
- 視線を自分の身体に移す。
右腕がない。
右肩から、一切をもぎ取られている。
失った腕は、どこにも落ちていない。
粉微塵に砕け散ったのだろう。
(メ゚∀゚)「・・・」
タカラの姿を探した。
自分から数十メートル離れた所に、さっきと変らぬ様子で転がっている。
まだ、死なないでくれよ。
( ∀ )「すぐに終わらせるから―――」
今度はちゃんと聞こえた。
鼓膜が再生された。
いや、“取り換えられ”た。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:41:00.79 ID:4XLoxPHD0
- (#'A`)「―――ふざけやがって」
男が、何か喚いている。
(#'A`)「アレを喰らって片腕一本だと? そんなはずねえ―――」
(#'A`)「消し飛ぶはずだった! 細胞のカスも残らず!」
肩の傷口が疼く。
俺の身体の中から、何かが這い出ようとしている。
黒い血が溢れる。
心臓の鼓動に合わせて、ボタボタと、滴り落ちる。
( ∀ )「・・・」
嫌だ。また悪魔に体を取られるのは。
もうたくさんだ。
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:41:58.19 ID:4XLoxPHD0
『―――本当にそう思っているのか?』
( ∀ )「・・・」
『長岡ジョルジュ』
( ∀ )「そうだ・・・」
( ∀ )「俺は―――」
『違うな。 君は欲している』
『私の力を』
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:43:36.74 ID:4XLoxPHD0
『取引しただろう? 私の心臓は―――』
『力を与える。 君に』
( ∀ )「・・・悪魔め」
ドクン。
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:44:58.04 ID:4XLoxPHD0
- *
痛みで、目が覚めた。
(メ^Д^)「・・・ぐ」
どれくらい気を失っていたのか。
腕時計で確認しようと、腕を持ち上げる。
上がらない。
(メ^Д^)「・・・」
地面が妙に湿っていると思ったら、自分の血だまりに倒れ込んでいた。
意識が定まらない。
死の予感がする。
(メ^Д^)「悪いね・・・伊藤」
脳裏に浮かび上がった伊藤の顔に、わけもなく謝った。
きっともう会うことはないだろう。
この出血だ。奇跡は起きない。
でも、もういいさ。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:47:23.44 ID:4XLoxPHD0
- (メ^Д^)「・・・一生懸命、生きた」
呟いた時、少し離れたところで、動くものが見えた。
暗闇でも分かるほどに、大量の粉塵が舞っている。
揺れる人影。
その影に、右腕はない。
傷口から、多量の血があふれ出ている。
ジョルジュだった。
( ∀ )「・・・終わらせてやるよ」
ジョルジュ・・・・・か?
( ∀ )「お前の命を」
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:51:25.33 ID:4XLoxPHD0
- 目を疑った。
ジョルジュの右肩から、何かが這い出そうとしていた。
鋭利で、残酷な形をしている。
俺は今、見てはいけないものを見ている。
だが、あれは一体何だ?
( ∀ )「ああ―――――」
ゴキゴキ、バキバキ。
この世のものとは思えない不気味な音が、夜の住宅街に響き渡る。
耳を塞ぎたくなったが、俺の穴だらけの腕はピクリとも動かなかった。
ジョルジュの右腕が、再生していく。
より強力に、より凶悪に。
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:54:02.57 ID:4XLoxPHD0
- (;'A`)「ひ・・・」
(;'A`)「卑怯くせえぞっ・・・そんな」
(;'A`)「失っただろうが! 悪魔の腕を!」
(;'A`)「壊したんだ・・・俺が!」
彼は――――
あの悪魔のような笑いを浮かべる男は果たして・・・
ジョルジュなのか?
( ゚∀゚)「喚けよ、今のうちに」
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 19:55:22.07 ID:4XLoxPHD0
- *
(;'A`)「ちくしょおぉぉぉぉ!!」
男が筒のようなものを肩に抱え上げ、先端に付けられた楕円形の物体をジョルジュに向けた。
目を見開いて、画面の向こう以外で初めて見るそれを凝視した。
マジかよ。初めて見た。
( ^Д^)「ロケット・・・ランチャー・・・?」
(#'A`)「消し飛べえぇぇ!!」
弾頭が放たれる。
筒の後方から勢いよく煙が排出され、発射の反動で男が仰け反った。
(;^Д^)「ジョルジュ!」
着弾。
爆発。
耳を聾す爆発音。
爆風にのまれる親友の姿。
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 20:00:45.59 ID:4XLoxPHD0
- (;^Д^)「・・・!」
('∀`)「ぎゃは、ぎゃははっ!」
('∀`)「何度でも再生するっていうならさぁ!」
('∀`)「何度でもぶっ壊してやんよ! くそ悪魔が―――」
嗤う男。
一瞬の後、その目が驚愕に見開かれた。
(;'A`)「!?」
吹き上がる爆炎から、黒い右腕が飛び出した。
悪魔の腕は男の右腕を拘束。
そしてまるで枯れ枝でも折るように、息をつく間もなく握りつぶした。
(;゚A゚)「・・・ゴッ・・・ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
男のランチャーを握る腕が、ボトリと音を立てて地面に落ちる。
光の兵器が、瞬く間に消滅していった。
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 20:01:57.99 ID:4XLoxPHD0
- (;゚A゚)「あああああああ・・・」
(;゚A゚)「俺の! おれの腕があぁ・・・」
握られた悪魔の拳が、次の獲物を狙うかのように、ゆっくりと開かれる。
ナイフのように鋭利な爪が、五本の節くれだった指の先で、光った。
( ゚∀゚)「・・・あんたは・・・」
粉塵から現れたジョルジュ。
身体には傷一つ見受けられない。
肩まである悪魔の体を、だらりとぶら下げている。
( ゚∀゚)「死ぬだろうな」
(;゚A゚)「ひっ・・・!」
( ゚∀゚)「死ぬ前に聞かせてほしい」
(;゚A゚)「よ、よる、寄るな・・・!」
( ゚∀゚)「神の使いは何人いる?」
(;゚A゚)「近寄るなあぁぁぁッ!」
- 60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 20:05:46.71 ID:4XLoxPHD0
- ジョルジュと男の間に、光が形作られていく。
盾だろうか、あれは。
そういう使用法もあったのか。
ジョルジュはそれでも怯まず、ゆっくりと光の盾に近付いて行った。
( ゚∀゚)「薄い・・・紙みたいなもんだ・・・」
悪魔の爪が、何の抵抗もなくそれを引き裂いた。
男の悲鳴が響き渡る。
(;゚A゚)「クソッ! クソッ!」
(;゚A゚)「クソダボがあああぁぁッ! 俺の腕を・・・!」
(;゚A゚)「しぃ! いるんだろ!? 治せよッ! 今すぐに!」
( ゚∀゚)「しぃ・・・?」
(;゚A゚)「俺の腕を治せ! 早くしろよォォ!」
血の噴き出る腕を押さえながら、男は叫んだ。
壁に寄りかかり、おぼつかない足取りでジョルジュから逃げる。
ジョルジュにはもちろん、見逃す気はないようだった。
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 20:07:43.46 ID:4XLoxPHD0
- ( ゚∀゚)「しぃってのは・・・」
(;゚A゚)「血が止まらねえんだよッ! 治せよォ!」
( ゚∀゚)「仲間か? 仲間なんだな?」
(;゚A゚)「どこにいる!? しぃ・・・!」
( ゚∀゚)「聞けよ」
ジョルジュの腕が、男の左腕に絡みついた。
肉が潰れる音、骨が砕ける音。
そして悲鳴。
(;゚A゚)「ぐァァァ・・・!」
( ゚∀゚)「そうか、やっぱり仲間がいるんだな」
( ゚∀゚)「そいつは治すことができるんだ・・・傷を」
(#;A;)「グギィィィッ・・・」
血と涙と鼻水、その他いろんな体液を滴らせ、男はもがく。
俺はその光景を離れた場所から見て、体を震わせていた。
ジョルジュが、恐ろしかった。
あのジョルジュが。
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 20:08:32.01 ID:4XLoxPHD0
- (; Д )「どうなってるんだよ・・・勘弁してくれよ・・・」
俺はただ漏れ出てきそうな小便を必死に耐えながら、意味のない言葉を呟いていた。
悪夢と現実が溶けて混ざっていく。
何一つ理解できない。
どうなってる?
( ゚∀゚)「そうだな・・・殺さないよ。お前は死ぬべきだが、まだ殺さない」
(#;A;)「ギィッ!いでぇ・・・・・助けろ・・・!俺を助けろ!」
( ゚∀゚)「その調子だ。助けを呼べ。傷を癒せる仲間を、ここに呼ぶんだよ」
(#;A;)「黙れ・・・!悪魔め・・・俺に命令するんじゃねえッ!」
ジョルジュは悪態をつく男の髪を掴み、無理やり顔を仰がせた。
毛根が千切れるぶちぶちという音が、俺の倒れているところまで聞こえてきた。
(#;A;)「あ゛あ゛ッ・・・!!」
( ゚∀゚)「早くしろよ・・・俺の友達が危ないんだ・・・お前のせいで」
( ゚∀゚)「タカラが死んだら、俺はお前らを一人残らず殺してやる。男だろうと、女だろうと、子供だろうと」
( ゚∀゚)「首をもぎ取ってやるからな・・・人形のように」
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 20:10:17.40 ID:4XLoxPHD0
- もうやめてくれ―――――
俺の願いは声にならず、体中から流れ出る血液と共に闇へ消えていった。
頭が重い。寒くて、体の震えが止まらない。
唇は乾ききっている。
俺はもう助からない。
覚悟していたことなのに、この恐怖だけはどうしようもなかった。
俺は死ぬ。
(*゚ー゚)「大丈夫?」
女の子の声が聞こえた。
幻聴だと思った。
この酷過ぎる光景の中にあって、その声は、あまりにも温かくて場違いだった。
(*゚ー゚)「長岡くんの友達ね?」
(*゚ー゚)「可哀想に」
いよいよ天国への階段を登り始めたのだと確信した。
手足の先が暖かくなり、ぼやけた頭の中が洗い流されていくようだった。
ぬめった血の感触も、もうない。
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 20:11:31.42 ID:4XLoxPHD0
- ( ^Д^)「・・・?」
次第に感覚が蘇っていく。
体の下にある硬いコンクリートは、何よりも冷たいままだ。
街灯が、夜の通りを乱暴に照らしている。
痛みがない。
どういうことだ?
(*゚ー゚)「巻き込むつもりなんて、私にはなかった。でも、私は彼を止めることも出来なかったわ」
見覚えのない女の子が、俺の前にかがみ込んでいた。
( ^Д^)「・・・あ、あんた――――」
(*゚ー゚)「傷はもうほとんど塞がっているはず。失われた血も、すぐに戻ってくるわ」
(*゚ー゚)「ごめんなさい。苦しかったわよね?」
( ^Д^)「なあ――――」
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 20:13:27.99 ID:4XLoxPHD0
- 叫び声だ。
黒い空気を切り裂くような怒号が、男の口から絞り出された。
(#;A;)「しぃ!!てめえ・・・何やってんだゴラァッ!!!」
全身が切り傷に覆われたその男は、背後から歩み寄るジョルジュから必死に距離をとりつつ、こちらへ向かってくる。
両腕は捩じ切られ、片眼が抉られ、胴に地下鉄の路線図のような深い溝が、いくつも走っている。
まるで血のシャワーを浴びた後のようだった。
(#;A;)「なぜそいつを治したッ!!?ふ、ふざけんなよッ!!!ぶっ殺すぞ糞アマがァッ!!!」
(*゚ー゚)「一般人を攻撃するなんて、許されることではないわ」
(#;A;)「うっせえッ!!!許されるんだよォ・・・・・俺たちが誰を殺そうが、神はどうでもいいんだ!!!」
(#;A;)「悪魔さえ・・・悪魔さえ殺せば、それでいいんだよッ!!!!」
(*゚ー゚)「神が許しても、私は許さない。それに」
男の頭を、悪魔の長く鋭い指が覆った。
あたり一帯が、一層闇に沈んだように感じられた。
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 20:15:02.85 ID:4XLoxPHD0
- (#;A;)「あ・・・・・」
(*゚ー゚)「悪魔はもっと許さないわ」
(#;A;)「た・・・」
(#;A;)「・・・助けろよ・・・・・」
男の頭部が爆ぜた。
頭髪の残った皮膚や奇妙に白い骨、小難しい名称が付けられているだろう脳のパーツが細切れになって、俺の目の前にボトボトと落下していった。
形容しがたい音と臭いだった。
目玉が一つ、形を保ったまま地面を転がった。
それは俺の方を向いて止まり、最後の一瞥を残して、ジョルジュの靴底に踏みつぶされた。
グチャッ。
- 71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 20:18:58.98 ID:4XLoxPHD0
- (*゚ー゚)「こんばんは。長岡ジョルジュくん」
( ゚∀゚)「・・・タカラ、大丈夫か?」
(;^Д^)「え?あ、お、おう・・・」
俺は無意識のうちに後ずさった。
ジョルジュの伸ばした左手は、確かに人間のものだった。
だがその腕も、いつ悪魔のものとすげ変わるかわからない。
だが俺が見る限り、今のジョルジュはいつものあいつだった。
さっきまでの悪魔の影は、どこにも見当たらない。
地面にぶちまけられた、人間の頭の中身にさえ目を向けなければ。
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/25(日) 20:21:06.89 ID:4XLoxPHD0
- ( ゚∀゚)「よかった・・・死んじまったかと思ったぜ」
(;^Д^)「は、は・・・・・」
(;^Д^)「そ、それより、この人は・・・」
( ゚∀゚)「神の使いだ」
またしても緊張が走る。
俺は反射的に少女から距離をとった。
少女は哀しそうに笑い、言った。
(*゚ー゚)「お話をしに来たの。聞いてくれるかしら?」
長い夜は、まだ終わってはいない。
いや、終わることなど、ないのかもしれない。
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