( ^ω^)ブーンがギアスを手に入れたようです(クー編)

  
43: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 23:02:23.30 ID:qO+pJhj60
  
クーが命じた。
そして命ぜられた者はクーの命に従い、その場から離れる。
理由は簡単。彼女の歩く先に彼等がいたからだ。ただそれだけのこと。

しかし、その一連の動作を違和感なく見過ごせる者は少なかった。
その理由も簡単だ。
彼らが素直にクーの指示に従うとは思えなかったからだ。

川 ゚ ー゚)「ほう……。これは便利だな……」

クーは満足そうに校舎へと向かう。
その様にその場にいた全員の視線を集めていたことにクーは気付いていない。
いや、気付いた上で気付かないフリをしていたのかもしれない。

川 ゚ ー゚)「確かに、アイツには感謝しなければいけないな」

満足そうに歩くクーの表情から、このとき確かに彼女は満たされていた。
心地よい満腹感と適度な高揚感に包まれ、これ以上無いほどに彼女は満たされていた。

この時の行動を、後に後悔するとも知らずに。



  
45: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 23:19:39.70 ID:qO+pJhj60
  
川 ゚ー゚)「強制的に言うことを利かせることが出来る……。素晴らしいじゃないか、この能力」

自分に与えられた能力を把握すると共に、喜びに震えるクー。
これ以上の力を誰が欲するものか。

川 ゚ー゚)「私はもう、他に何もいらない」

クーは椅子に座り、鞄を机に付属されたフックに掛けると窓を外を眺める。
窓の際は暇つぶしになるから昔から好きだった。
しかしそれが適わない事もある。しかし、そんなことすら、そんな場所すらもこれからは簡単に手に入ってしまう。

そう思うと、虚しくなった。

川 ゚ -゚)「……もとより何も持ってはいないか」

その日、一日中。何もかもが他人事のように感じられた。
実際クーにとっては他人事だったのだが、自分すらも客観視している自分に気付く自分が居た。

川 ゚ -゚)「……何が不満なんだ、私は」

他人のこと以前に自分すら解読不能。
結局その日はそれ以上、能力を使うことは無かった。



  
46: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 23:38:12.92 ID:qO+pJhj60
  
( ^ω^)「君がクーさんだお? おいすー」

彼は笑顔で接しようとするが、クーは一向に振り向こうとはしない。
無視されても構わないとばかりに、少年はその場に留まり続ける。

川 ゚ -゚)「ん? ……君は」

あたかも今気付いたと言わんばかりの口調で、クーは返す。
少年は、無視されていたわけではないのだと溜め息を漏らす。実際にはその通りだ。

( ^ω^)「僕は内藤ホライゾンだお。一応同じクラスなんだから覚えててほしいお」

内藤と名乗る少年の慣れなれしさに、クーは唖然とするばかりだった。
素直に、お前なんか知らんがなと言ってやるべきか。そう考えたが、言ったところで変わらないのだろうと思い、言葉を変えた。

川 ゚ -゚)「その内藤君がどうしたのだ?」

( ^ω^)「別に用があったわけじゃないお。ただ、クーさんがどんな人なのか気になったんだお」

とうとうクーには訳が分からない。
用が無いのなら話しかけるなと苛立ちを覚えたが、知りもしない相手に対して腹を立てることに
デジャヴを感じたため、流すことにした。



  
47: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 23:46:26.93 ID:qO+pJhj60
  
川 ゚ -゚)「そうか。……君が思ったとおりでいい」

この学校に入学して数ヶ月。
クラスメートとはロクに会話をしたことのない彼女のイメージと言えば、とても良いものとは言えない。
しかし、内藤は違っていた。

( ^ω^)「本当かお? それじゃクーさんは優しい人だお」

予想外の言葉だった。
彼女にとって、それは期待する言葉でもなければ予想した言葉でもなく。

川;゚ -゚)「そんな嘘をつかなくていい。他にもあるだろう? 根暗とか、友達が居ないとか……」

( ^ω^)「友達居ないのかお?」

川 ゚ -゚)「……そう呼べる者は居ないな。欲しいとも思わない」

欲しいとも思わない。それはクーの本心から出た言葉だった。
求め続けるのはもう止めた、彼女の長かったがやっと出せた結論。

それを彼はあっけなく、それも簡単に壊してしまう。

( ^ω^)「なら僕が友達だお!」



  
48: 愛のVIP戦士 :2007/03/04(日) 23:56:29.45 ID:qO+pJhj60
  
川;゚ -゚)「いや、だから、いらないって……」

( ^ω^)「僕がなりたいんだお。ダメかお?」

川 ゚ -゚)「…………」

(;^ω^)「…………」

クーは立ち上がると、内藤の顔を覗き込むように見つめる。
彼女の行動に驚いたのか、内藤の顔が強張る。しかし彼女は見つめることを止めようとはしない。

川 ゚ -゚)「……いいぞ」

何故そう言ってしまったのか、自分自身でも分からなかった。
それでも、期待してしまったのは確かだった。
初めての友達という言葉に、少なからず踊らされていたのは確かで――

( ^ω^)「……お?」

(*^ω^)「本当かお? やったお!」

喜ぶ内藤を嬉しそうに見守るクー。
自らの笑顔に、やっぱり嬉しいんだなと気付く。



  
50: 愛のVIP戦士 :2007/03/05(月) 00:06:35.74 ID:X5W1isYW0
  
そこでクーに一つ、疑問が湧く。
まず、それを聞くべきだった。しかし聞けば折角出来そうな関係を壊してしまいそうで出来なかったのだ。

それを聞きだす方法なら持ってるじゃないか。
手っ取り早い方法が。
願えばいい。求めればいい。そうすれば、事は一瞬だ。彼の本音を聞くことが出来る。

そう思ったところで、我に返る。

( ^ω^)「クーさん、この前苛められてる子を助けてたお?」

急に話しかけられ、返事すらままならない。
苛められている子。助けた記憶などない。人違いではないだろうか。そう思い口を開こうとすると、またも内藤に遮られる。

( ^ω^)「校門のところでのやつだお。覚えてないかお?」

クーは急いで校門での出来事を思い出す。
何かあっただろうか。

川 ゚ -゚)「あっ……。あのデカいのか」

クーが思い出したことで、内藤は嬉しそうに笑顔になる。



  
52: 愛のVIP戦士 :2007/03/05(月) 00:18:34.26 ID:X5W1isYW0
  
( ^ω^)「クーさんは強いお。憧れるお」

川 ゚ -゚)「あれは……。その……」

勘違いだ。そう言えずにクーは口を噤んだ。
あれはただ、邪魔だったから。たまたま自分の前で立ち往生している彼らが邪魔だったから。

自分で彼らを追い払ったわけではないのが気がかりでしょうがなかった。
能力を試したかった。自分にとって都合がよかったから、能力に頼っていただけ。

しかしそれを彼に話すことなど出来ず、話したところで信じてもらえる保証など何処にもないのだ。

結局その日は本当のことは何も言えず、クーは帰宅した。

川 ゚ -゚)「私は……。どうすればいい……」

川 ゚ -゚)「この能力には確かに感謝している。これからも手放したいとは思わない」

川 ゚ -゚)「しかし、彼は。内藤は能力を知らずに私と友達になりたいと……」

川 ゚ -゚)「私は……」

何も結論は出ないまま、まぶたは落ち睡魔に襲われる。
その日は久し振りに嫌な夢を見た。



  
53: 愛のVIP戦士 :2007/03/05(月) 00:32:38.43 ID:X5W1isYW0
  
ξ゚−゚)ξ「お久し振り、ね」

ツンデレ。彼女の名前を口に出そうとしたが、やはりそれは適わない。
しかし呼びかけに気付いたことはツンデレにも伝わっているようだ。

ξ゚−゚)ξ「どうしちゃった訳? 使わないの? 私があげた能力」

「感謝はしてる。しかし彼には使いたくない。別に構わないだろう?」

ξ゚−゚)ξ「……つまんないの。面白くないわね」

「すまなかったな」

ξ゚−゚)ξ「困るのよね、今更そんな情緒出されても」

「そうは言うが、元々この能力は貴様が勝手に私に植え付けたものだ。どうしようと私の勝手だろう」

ξ゚−゚)ξ「へぇ……。言うようになったじゃない」

ツンデレの機嫌が悪くなった。それが手にとるように分かる。
元々、感情の移り変わりの激しい女だ。都合よく行かなければあからさまにも不機嫌になる。

「ちょっと意地悪しちゃおう」

「明日、楽しみにしてなさい」



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